説明

ジェットエンジン

【課題】ジェット噴流ノズルの開口周りに騒音低減構造を備えるジェットエンジンにおいて、騒音を低減させつつ燃費の向上を図る。
【解決手段】騒音低減構造1の設置位置に配置されると共に当該騒音低減構造1がおこすジェット噴流の流れ場の変化を助長する体積力を発生するプラズマアクチュエータ70を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、航空機に搭載されるジェットエンジンの騒音対策として、特許文献1や特許文献2に示すように、ジェット噴流を噴出するノズル(ジェット噴流ノズル)の開口周りに騒音低減構造を有するジェットエンジンが提案されている。
このような騒音低減構造を有するジェットエンジンによれば、例えば、騒音低減構造によってジェット噴流と外部流との混合が助長され、これによって騒音の低減が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7246481号明細書
【特許文献2】特開2003−172205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、騒音低減構造がジェット噴流の流れ場を変化させるものであることから、当該騒音低減構造は、ジェット噴流の流れ中に配置する必要がある。
このため、騒音低減構造を備えるノズルにおけるエンジンスロート面や出口有効面積が、騒音低減構造を備えないノズルと著しく異なることとなり、流量係数が低減してしまう。よって、当該流量係数の低減をカバーするためには、ノズルの開口径を大きくする必要が生じ、ジェットエンジンの重量増加を招く。
また、騒音低減構造の形状が複雑となるほど、設計点以外でのノズル性能の悪化が顕著となって推力が低減するため、騒音低減構造を備えないノズルと同程度の推力を得ようとした場合には、エンジン出力を従来よりも増大させる必要が生じる。
また、騒音の低減は、特に地表面に近いクライム時(停止から加速して巡航状態に至るまでの)において行えれば良いが、従来の騒音低減構造は、巡航時であってもジェット噴流の流れ中に配置される。このため、騒音の低減が必要とされない巡航時における推力も意図せずに低下してしまう。
つまり、騒音低減構造を設けることによって、騒音の低減が図れるものの、推力の低下等に起因して必要とされる燃料が増大し、燃費の悪化につながる。
【0005】
また、騒音低構造のなかには、ジェット噴流と外部流との混合層を噴射方向から見て湾曲させることによって騒音の低減を図るものも提案されている。
このような騒音低減構造であっても、混合層を湾曲させるために騒音低減構造がジェット噴流の流れ中に配置されるため、同様の問題が生じる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ジェット噴流ノズルの開口周りに騒音低減構造を備えるジェットエンジンにおいて、騒音を低減させつつ燃費の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、ジェット噴流を外部に噴射するジェット噴流ノズルが噴射開口周りに上記ジェット噴流の流れ場を変化させることによって騒音を低減する騒音低減構造を有するジェットエンジンであって、上記騒音低減構造の設置位置に配置されると共に当該騒音低減構造がおこす上記ジェット噴流の流れ場の変化を助長する体積力を発生するプラズマアクチュエータを備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ジェット噴流ノズルが、上記騒音低減構造として上記噴射開口中心に向けて突出する突起部を複数備えるノッチノズルであるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記ジェット噴流ノズルが、上記騒音低減構造として、噴射開口を形成する縁部に形成された三角形状の切欠きを複数備えるシェブロンノズルであるという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記プラズマアクチュエータが、上記ジェット噴流ノズルの外壁面に設置されるという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記プラズマアクチュエータが、上記ジェット噴流ノズルの内壁面に設置されるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記プラズマアクチュエータが、上記ジェットエンジンで発生する余剰電力にて作動されるという構成を採用する。
【0014】
第7の発明は、第1〜第6いずれかの発明において、上記プラズマアクチュエータは、上記ジェットエンジンが搭載される航空機が停止状態から加速して巡航状態に至るまでの間のみ作動されるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プラズマアクチュエータが発生する体積力によって、騒音低減構造がおこすジェット噴流の流れ場の変化が助長される。
このため、例えば、騒音低減構造が小さくなって騒音低減構造のみではジェット噴流の流れ場の変化が十分でない場合であっても、プラズマアクチュエータが発生する体積力によってジェット噴流の流れ場の変化を助長させることで、大きな騒音低減効果を得ることができる。
つまり、本発明によれば、プラズマアクチュエータを備えることによって、騒音低減構造の大きさを小さくすることができ、ジェット噴流を遮る領域を低減することができる。この結果、上述した、ジェットエンジンの重量増加、エンジン出力の増大、及び巡航時における推力低下を抑制することができる。
したがって、本発明によれば、ジェット噴流ノズルの開口周りに騒音低減構造を備えるジェットエンジンにおいて、騒音を低減させつつ燃費の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態におけるジェットエンジンの概略構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるジェットエンジンが備えるジェット噴流ノズルをジェット噴流が噴射される側から見た正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるジェットエンジンが備える突起部を含む領域を模式的に示す拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるジェットエンジンが備えるプラズマアクチュエータの模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態におけるジェットエンジンが備える突起部周囲の圧力を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態におけるジェットエンジンが備えるプラズマアクチュエータの配置例を示す模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態におけるジェットエンジンが備えるプラズマアクチュエータの配置例を示す模式図である。
【図8】本発明の第1実施形態におけるジェットエンジンが備えるプラズマアクチュエータの配置例を示す模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態におけるジェットエンジンの概略構成を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態におけるジェットエンジンが備えるプラズマアクチュエータの配置例を示す模式図である。
【図11】本発明の第2実施形態におけるジェットエンジンが備えるプラズマアクチュエータの配置例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るジェットエンジンの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のジェットエンジン10の概略構成を模式的に示す断面図である。
この図に示すように、本実施形態のジェットエンジン10は、ファン20と、圧縮機30と、燃焼器40と、タービン50と、ジェット噴流ノズル60と、プラズマアクチュエータ70(図3参照)とを備えている。
なお、これらのファン20と、圧縮機30と、燃焼器40と、タービン50と、ジェット噴流ノズル60とが空気の流れ方向に配列されている。
【0019】
ファン20は、外部からジェットエンジン10の内部に空気を取り込むためのものであり、後段に配置されるタービン50から動力が伝達されることによって駆動される。
圧縮機30は、ファン20によって取り込まれた空気を圧縮するものであり、ファン20と同様に後段に配置されるタービン50から動力が伝達されることによって駆動される。
燃焼器40は、圧縮機30によって圧縮された空気と燃料とを燃焼することによって高温高圧ガスを生成するものである。
タービン50は、燃焼器40から供給される高温高圧ガスのエネルギの一部を回転動力に変換するものであり、ファン20及び圧縮機30に物理的に接続されている。
ジェット噴流ノズル60は、タービン50を介して供給される高温高圧ガスをジェット噴流として外部に噴射するものである。
【0020】
図2は、ジェット噴流ノズル60をジェット噴流が噴射される側から見た図であり、(a)がジェット噴流ノズル60の全体を示す図であり、(b)が(a)の領域αを拡大した拡大図である。また、図3は、ジェット噴流ノズル60を含む拡大斜視図である。
【0021】
これらの図に示すように、本実施形態におけるジェット噴流ノズル60は、ノズル出口端61を有する円筒隔壁によって形成されており、ノズル出口端61(噴出開口)からジェット噴流を噴射する。
そして、本実施形態におけるジェット噴流ノズル60は、ノズル出口端61周りに等間隔で複数設けられた突起部1を備えるノッチノズルとされている。
【0022】
突起部1は、ジェット噴流が噴射される側から見て、ジェット噴流と外部気流(ジェット噴流ノズル60の外側から流れてくる外気の流れ)との境界領域に形成される混合層を湾曲させることにより、混合層における流体の速度勾配が大きくなることを妨げるものである。
より詳細には、突起部1が存在しない場合には、混合層の形状は、ノズル出口端61と同様に円形となるが、突起部1が存在することによって、突起部1周り部位が当該円周から円形の内側に入り込むように湾曲する。突起部1によって混合層が湾曲されることによって、ジェット噴流が噴出される側から見た混合層が見かけ上厚くなる。このようにジェット噴流が噴出される側から見た混合層が厚くなることにより、突起部1が存在せずに混合層が湾曲しない場合と比較して、混合層における速度勾配が緩やかとなり速度勾配が大きくなることを妨げることとなり、混合層における剪断力が低減する。
この結果、ジェット噴流と外部流とが混合する際の騒音を低減させることができる。つまり、本実施形態においては、突起部1が本発明における騒音低減構造に相当する。
【0023】
なお、本実施形態においては、突起部1がノズル出口端61周りに等間隔で複数設けられているため、混合層の形状は、本来のノズル出口端61に沿う円周に沿う波状に繰り返し湾曲した形状となる。
【0024】
そして、本実施形態においては、突起部1は、ジェット噴流が噴射される側から見て、混合層が全周の全領域で湾曲される数だけ配置されており、具体的には等間隔で配置されている。
【0025】
各突起部1は、ジェット噴流が噴射される側から見たノズル出口端61の中心に向けて半径方向に突出した三角錐形状を有している。
また、本実施形態におけるジェット噴流ノズル60は、図2(b)に示すように、円筒隔壁の外側に各突起部1に合わせて、ノズル出口端61まで連続して到達する溝部2を備えている。つまり、溝部2は、ノズル出口端61の半径方向において、突起部1の外側(すなわちジェット噴流ノズル60の外壁面)に設けられている。
【0026】
図3は、突起部1を含む領域を模式的に示す拡大図であり、(a)が図1と同一の方向から見た図であり、(b)が図2と同一方向から見た図である。そして、図3に示すように、本実施形態においては、図3の突起部1の裏側に形成された溝部2に対してプラズマアクチュエータ70が設置されている。
つまり、本実施形態においては、プラズマアクチュエータ70は、突起部1ごとに設けられており、ジェット噴流ノズル60の外壁面に配置されている。
【0027】
プラズマアクチュエータ70は、突起部1の設置位置に配置されると共に当該突起部1がおこすジェット噴流の流れ場の変化を助長するものである。より詳細には、本実施形態においては、プラズマアクチュエータ70は、突起部1によって形成される混合層の湾曲が助長されるように、ジェット噴流ノズル60の外壁面側の空気の一部が図3に示す渦流Bが形成されるように体積力を発生させる。
【0028】
図4は、プラズマアクチュエータ70の模式図である。この図に示すように、プラズマアクチュエータ70は、絶縁層71と、絶縁層71の上面に配置される第1電極板72と、絶縁層71の下面に配置される第2電極板73とを備えている。
そして、図4に示すように、第1電極板72と第2電極板73とが、絶縁層71の厚さ方向から見て変位して配置された構成を有している。
このようなプラズマアクチュエータ70の第1電極板72と第2電極板73とに交流電源100に接続して電力を供給すると、第2電極板72の側方であって絶縁層71の厚さ方向から見て第2電極板73と重なる領域にプラズマが生成される。この結果、プラズマが生成された領域の空気がイオン化されて体積力が発生し、矢印で示す空気流が形成される。
【0029】
このようなプラズマアクチュエータ70を用いることによって、ジェット噴流ノズル60の外壁面側の空気の一部が、図3に示す矢印Aのように、ジェット噴流側に流され、これによって渦流Bが形成される。
ここで、図5に示すように、突起部1の存在によって、突起部1の先端と根元において大きな圧力差が生じる。この圧力差によって生じる縦渦が強いほど混合層を湾曲させる作用が大きく働く。
そして、本実施形態では、プラズマアクチュエータ70にて形成された渦流Bによって、突起部1における圧力差を増大させて上記縦渦を強くすることができ、突起部1によって形成される混合層の湾曲を助長することができる。
【0030】
なお、プラズマアクチュエータ70は、本実施形態のジェットエンジン10が搭載される航空機の発電機に電気的に接続されており、発電機にて生成された電力が供給されることによって作動する。
ここで、周辺環境に配慮し、特に騒音を低減させる必要があるのは、航空機が停止状態から加速を開始し、上昇が完了して巡航状態に至るまでである。
したがって、本実施形態のジェットエンジン10においては、当該ジェットエンジン10が搭載される航空機が停止状態から加速して巡航状態に至るまでの間のみ作動される。
【0031】
なお、通常、航空機においては、停止状態から加速して巡航状態に至るまでの間は、エンジンの回転数が高いため、多くの電力が生成されて余剰電力が発生する。
そして、本実施形態のジェットエンジン10においては、当該余剰電力が供給されて作動する。
【0032】
また、一般的に航空機においては、燃焼室に設置されるエキサイタに電力を供給するための配線が配設されている。
このため、エキサイタに接続される配線を分岐して各プラズマアクチュエータ70と接続し、当該配線を介してプラズマアクチュエータ70に電力を供給することができる。
【0033】
本実施形態のジェットエンジン10によれば、プラズマアクチュエータ70が発生する体積力によって、突起部1がおこすジェット噴流の流れ場の変化が助長される。
このため、例えば、突起部1が小さくなって突起部1のみではジェット噴流の流れ場の変化が十分でない場合であっても、プラズマアクチュエータ70が発生する体積力によってジェット噴流の流れ場の変化を助長させることで、大きな騒音低減効果を得ることができる。
つまり、本実施形態のジェットエンジン10によれば、プラズマアクチュエータ70を備えることによって、突起部1の大きさを小さくすることができ、ジェット噴流を遮る領域を低減することができる。この結果、ジェットエンジンの重量増加、エンジン出力の増大、及び巡航時における推力低下を抑制することができる。
したがって、本実施形態のジェットエンジン10によれば、騒音を低減させつつ燃費の向上を図ることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態のジェットエンジン10によれば、プラズマアクチュエータ70が記ジェット噴流ノズル60の外壁面に設置されている。
このため、プラズマアクチュエータ70がジェット噴流ノズル60の開口面積を狭める要因となることを防止することができる。
また、プラズマアクチュエータ70がジェット噴流中に晒されることがないため、プラズマアクチュエータ70の経時劣化を遅らせることができる。
【0035】
また、本実施形態のジェットエンジン10によれば、プラズマアクチュエータ70が、ジェットエンジン10で発生する余剰電力にて作動される。
このため、プラズマアクチュエータ70を作動するための電源を別途備える必要がなく、低コストにてプラズマアクチュエータ70の設置が可能となる。
【0036】
また、本実施形態のジェットエンジン10によれば、プラズマアクチュエータ70が、ジェットエンジン10が搭載される航空機が停止状態から加速して巡航状態に至るまでの間のみ作動される。
このため、本実施形態のジェットエンジン10によれば、騒音の低減が必要とされる航空機が停止状態から加速して巡航状態に至るまでの間において騒音が低減され、騒音の低減があまり必要とされない巡航状態では混合層の湾曲の程度が緩和されて推力の向上が図られる。
したがって、本実施形態のジェットエンジン10によれば、必要とされる場合のみ騒音の低減を図ることによって、効率的に燃費の向上を図ることができる。
【0037】
なお、本実施形態のジェットエンジン10においては、プラズマアクチュエータ70を溝部2に配置する構成を採用した。
しかしながら、例えば、図6及び図7に示すように、突起部1の外壁面(ジェット噴流ノズル60の内壁面)にプラズマアクチュエータ70を設置しても良い。
このように、プラズマアクチュエータ70をジェット噴流ノズル60の内壁面に設置することによって、プラズマアクチュエータ70によって形成される渦流Bのジェット噴流に与える変化が大きくなり、突起部1によって形成される混合層の湾曲を強く助長することができる。
なお、効率的に渦流Bを形成するために、プラズマアクチュエータ70によって形成される流れ方向を図6及び図7の矢印Cに示すように、ジェット噴流と反対側に向く方向であることが好ましい。
【0038】
なお、図6に示すように、プラズマアクチュエータ70を突起部1の先端側に配置することによって、ジェット噴流のより中央寄りに渦流Bが形成されて混合層の湾曲をより強く助長することができる。
ただし、混合層の湾曲が助長されすぎると、ジェットエンジン10の推力低下が大きくなるため、これを回避するために、図7に示すように、プラズマアクチュエータ70を突起部1の根元側に配置しても良い。
【0039】
また、図8に示すように、プラズマアクチュエータ70を突起部1の側方に配置しても良い。
この場合、図8(a)に示すように、ジェット噴流ノズル60の内壁面にプラズマアクチュエータ70を設置することによって、プラズマアクチュエータ70によって形成される渦流のジェット噴流に与える変化が大きくなり、突起部1によって形成される混合層の湾曲を強く助長することができる。
また、図8(b)に示すように、ジェット噴流ノズル60の外壁面にプラズマアクチュエータ70を設置することによって、プラズマアクチュエータ70がジェット噴流ノズル60の開口面積を狭める要因となることを防止することができ、プラズマアクチュエータ70の経時劣化を遅らせることができる。
このとき、プラズマアクチュエータ70の電極板は、突起部へ向かう渦流を形成するように配置される。プラズマアクチュエータ70自体を渦流の方向に向けても良いし、電極板をプラズマアクチュエータ70内で対角線上に配置しても良い。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0041】
図9は、本実施形態のジェットエンジン10Aの概略構成を模式的に示す断面図である。
この図に示すように、本実施形態のジェットエンジン10Aは、上記第1実施形態のジェットエンジン10が備えたジェット噴流ノズル60に換えてジェット噴流ノズル80を備えている。
そして、本実施形態のジェット噴流ノズル80は、ノズル出口端81(噴射開口)を形成する縁部に等間隔で三角形状の切欠き3を複数備えるシェブロンノズルとされている。
【0042】
切欠き3は、境界領域におけるジェット噴流と外部気流とミキシング効果を高め、素早くジェット噴流と外部気流とを混合することによって騒音の低減を図るものである。
つまり、本実施形態においては、切欠き3が本発明における騒音低減構造に相当する。
【0043】
このような本実施形態のジェットエンジン10Aにおいては、切欠き3が縦渦を形成し、この縦渦によって境界領域におけるジェット噴流と外部気流とミキシング効果を高められる。
そして、本実施形態のジェットエンジン10Aにおいても、図10及び図11に示すように、切欠き3に応じてプラズマアクチュエータ70を設置することによって、上記第1実施形態と同様に上記縦渦を強め、これによって境界領域におけるジェット噴流と外部気流とミキシング効果をより高められる。
【0044】
このような本実施形態のジェットエンジン10Aによれば、プラズマアクチュエータ70が発生する体積力によって、切欠き3がおこすジェット噴流の流れ場の変化が助長される。
このため、例えば、切欠き3が小さくなって切欠き3のみではジェット噴流の流れ場の変化が十分でない場合であっても、プラズマアクチュエータ70が発生する体積力によってジェット噴流の流れ場の変化を助長させることで、大きな騒音低減効果を得ることができる。
つまり、本実施形態のジェットエンジン10Aによれば、プラズマアクチュエータ70を備えることによって、切欠き3の大きさを小さくすることができ、巡航時における境界領域でのジェット噴流と外部気流とミキシング効果を低減し、エンジン出力の増大、及び巡航時における推力低下を抑制することができる。
したがって、本実施形態のジェットエンジン10Aによれば、騒音を低減させつつ燃費の向上を図ることが可能となる。
【0045】
なお、この場合、図10に示すように、ジェット噴流ノズル80の内壁面にプラズマアクチュエータ70を設置することによって、プラズマアクチュエータ70によって形成される渦流のジェット噴流に与える変化が大きくなり、境界領域でのジェット噴流と外部気流とミキシング効果をより高めることができる。
また、図11に示すように、ジェット噴流ノズル80の外壁面にプラズマアクチュエータ70を設置することによって、プラズマアクチュエータ70がジェット噴流ノズル80の開口面積を狭める要因となることを防止することができ、プラズマアクチュエータ70の経時劣化を遅らせることができる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、本発明のジェットエンジンを、取り込んだ空気の一部を燃焼室に供給せずにバイパス流として外部に噴射するターボファンエンジンに適用することもできる。
この場合、プラズマアクチュエータ及び騒音低減構造は、燃焼器から排出されるコア流を噴射するコアノズル及びバイパス流を噴射するバイパスノズルとのいずれかあるいは両方に設置される。
なお、コアノズルにプラズマアクチュエータ及び騒音低減構造を設ける場合には、上記実施形態のジェット噴流をコア流、外部流をバイパス流として捉えることによって、上記実施形態と同様の説明を行うことができる。
また、バイパスノズルにはプラズマアクチュエータ及び騒音低減構造を設ける場合には、上記実施形態のジェット噴流をバイパス流、外部流をバイパスノズルの外側の空気流れとして捉えることによって、上記実施形態と同様の説明を行うことができる。
つまり、本発明におけるジェット噴流は、バイパス流も含む概念である。
【0048】
また、上記実施形態においては、全ての騒音低減構造に応じて、プラズマアクチュエータを設置する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、一部の騒音低減構造に対応してプラズマアクチュエータを設置することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1……突起部(騒音低減構造)、3……切欠き(騒音低減構造)、10,10A……ジェットエンジン、60,80……ジェット噴流ノズル、61,81……ノズル出口端(噴射開口)、70……プラズマアクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェット噴流を外部に噴射するジェット噴流ノズルの噴射開口周りの壁面に騒音低減構造を有するジェットエンジンであって、
前記騒音低減構造の設置位置にプラズマアクチュエータを備えることを特徴とするジェットエンジン。
【請求項2】
前記ジェット噴流ノズルは、前記騒音低減構造として前記噴射開口中心に向けて突出する突起部を複数備えるノッチノズルであることを特徴とする請求項1記載のジェットエンジン。
【請求項3】
前記ジェット噴流ノズルは、前記騒音低減構造として、噴射開口を形成する縁部に形成された三角形状の切欠きを複数備えるシェブロンノズルであることを特徴とする請求項1記載のジェットエンジン。
【請求項4】
前記プラズマアクチュエータは、前記ジェットエンジンで発生する余剰電力にて作動されることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のジェットエンジン。
【請求項5】
前記プラズマアクチュエータは、前記ジェットエンジンが搭載される航空機が停止状態から加速して巡航状態に至るまでの間のみ作動されることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のジェットエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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