説明

ジエン系ゴム組成物

【課題】従来の廃タイヤリサイクル粉末ゴムに比べて、高い強度および補強性を有する粉砕加硫ゴムを一成分(リサイクルゴム成分)として配合したカーボンブラック配合ジエン系ゴム組成物を提供する。
【解決手段】天然ゴムを30重量%以上含有するジエン系ゴム100重量部当り、ニトロキシドフリーラジカルを有する化合物で変性された粉砕加硫ゴム3〜30重量部および窒素吸着比表面積(N2SA)が90m2/g以上のカーボンブラック40重量部以上を配合してなるジエン系ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエン系ゴム組成物に関する。さらに詳しくは、廃タイヤリサイクル粉末ゴムを一成分として配合したジエン系ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷低減という観点からは、廃タイヤの有効利用はタイヤ製造業において重要な課題の一つである。加硫ゴムをマテリアルリサイクル(タイヤのゴム片またはゴム粉末をそのまま再使用)するためには、加硫ゴムの可塑化が必要とされており、可塑化方法としては、炭化水素の分解や硫黄架橋の分解が挙げられる。
【0003】
炭化水素分解の例としては、パーオキサイド/レドックス系による自動酸化促進が挙げられ、また硫黄架橋分解の例としては、酸化、熱、せん断、求核剤使用、再配置、置換反応による促進機構などが、一般的に知られている。しかしながら、このような方法による可塑化だけでは、それを新ゴムに配合した場合、ゴムの強度や補強性が不足する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4046734号公報
【特許文献2】特許第4101242号公報
【特許文献3】特許第4243320号公報
【特許文献4】特開2008−297559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来の廃タイヤリサイクル粉末ゴムに比べて、高い強度および補強性を有する粉砕加硫ゴムを一成分(リサイクルゴム成分)として配合したカーボンブラック配合ジエン系ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の目的は、天然ゴムを30重量%以上含有するジエン系ゴム100重量部当り、ニトロキシドフリーラジカルを有する化合物で変性された粉砕加硫ゴム3〜30重量部および窒素吸着比表面積(N2SA)が90m2/g以上のカーボンブラック40重量部以上を配合してなるジエン系ゴム組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るジエン系ゴム組成物は、天然ゴムを30重量%以上含有するジエン系ゴムに対し、変性粉砕加硫ゴムおよびN2SA値が特定されたカーボンブラックをそれぞれ特定量配合してなり、ジエン系ゴム中に占める特定割合の天然ゴムは、変性粉砕加硫ゴムとの親和性を高めるため、一定割合以上であることが必要である。
【0008】
変性粉砕加硫ゴムは、一般に廃タイヤリサイクル粉末が用いられる粉砕加硫ゴムを、ニトロキシドフリーラジカルを有する化合物、好ましくは2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル〔TEMPO〕またはその誘導体で変性したものであり、TEMPOまたはその誘導体に由来する官能基を粉砕加硫ゴムに付与することにより、フィラーとの親和性を向上せしめるので、従来の廃タイヤリサイクル粉末と比べて、高い硬度および補強性を有する粉砕加硫ゴムを提供することができる。この変性粉砕加硫ゴムは、空気入りタイヤ製造などに用いられるカーボンブラック配合ジエン系ゴム組成物の一成分(リサイクルゴム成分)として配合されて用いられる。
【0009】
また、N2SA値が特定されたカーボンブラックは、変性粉砕加硫ゴムのTEMPO(誘導体)部位との反応部位となるために一定の値を有することが必要であり、N2SA値がより小さいカーボンブラック、換言すれば平均粒子径のより大きいカーボンブラックを用いると、カーボンブラック側の反応部位が少なくなるため、一定量以上のN2SAを有するカーボンブラックが配合され、それによって加硫ジエン系ゴムの強度や補強性を確保させる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム等の空気入りタイヤの各部を構成するジエン系ゴムが用いられ、その際、ジエン系ゴム中天然ゴムが30重量%以上、好ましくは35〜100重量%を占めるような割合で用いられる。天然ゴムの割合がこれよりも少ないと、変性粉砕加硫ゴムとの親和性が低下し、加硫ゴム強度が低下するようになる。なお、スチレンブタジエンゴムとしては、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)のいずれをも用いることができる。
【0011】
粉砕加硫ゴムとしては、一般に廃タイヤリサイクル粉末が用いられる。廃タイヤリサイクル粉末は、例えば廃タイヤを破砕(粗破砕→細砕)し、繊維、スチール、ワイヤ等ゴム成分以外のものを除去した後、再生剤(有機ジサルファイド、エステル酸など)とオイル(アロマテック油など)を混合、加熱し、ロールでシート状にして製品としており、それは市販品であってよい。
【0012】
その原料は、主に廃タイヤであり、他にタイヤ製造時に発生する未加硫スクラップ、タイヤ加硫時に発生するスピュー片などであるので、天然ゴム、合成イソプレンゴム、SBR、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムの加硫物であり、そこにはカーボンブラック等の充填剤を始め、各種配合剤が含有されている。その平均粒子径は、約500μm以下、好ましくは約200μm以下程度であり、外観および触感は小麦粉状に近い。平均粒子径がこれよりも大きいものは、ゴムの強度および補強性の点からみて好ましくない。
【0013】
ニトロキシドフリーラジカル(-N-O・)を有する化合物については、特許文献1〜4に詳細に記載されており、好ましくは2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル〔TEMPO〕

またはその誘導体が用いられる。
【0014】
TEMPOの誘導体として、4-位が置換された誘導体、例えばオキソ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、クロロ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシル、イソシアネート、グリシジルエーテル、チオグリシジルエーテル、フェニル、フェノキシ、メチルカルボニル、エチルカルボニル、ベンゾイル、ベンゾイルオキシ、アセトキシ、エトキシカルボニル、N-メチルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ等が挙げられ、またメチル(4-TEMPO)サルフェイト、エチル(4-TEMPO)サルフェイト、フェニル(4-TEMPO)サルフェイト等も挙げられる。
【0015】
本出願人は、構成単位中にイソモノオレフィン単位を有するポリマーあるいはジエン系ゴムをニトロキシドフリーラジカルを有する化合物で変性した変性ポリマーについての種々の提案を行っている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0016】
特許文献1には、(A)イソモノオレフィン単位を有するポリマー、(B)特定のニトロキシドフリーラジカルを有する化合物および(C)有機過酸化物ラジカル開始剤を混練機中で混合反応させ、次いで(D)アクリル系モノマーまたは芳香族ビニルモノマーをグラフトさせて、ポリマーを変性させる方法が記載されている。
【0017】
特許文献2には、(A)イソモノオレフィン単位を有するポリマー、(B)ニトロキシドフリーラジカルを有する化合物および(C)有機過酸化物ラジカル開始剤を(B)/(C)モル比を1より大きい比率で用い、ポリマー(A)の分子量の低下を抑制しつつ変性させることによって、ポリマー(A)中にニトロキシドフリーラジカルを有する化合物に由来する有機基を導入するポリマーの変性方法が記載されている。
【0018】
以上の特許文献1〜2では、(A)成分のイソモノオレフィン単位を有するポリマーとして、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体、臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン3元共重合体、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS、SEPS)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン、プロピレン共重合体、フッ素ゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム等が挙げられている。
【0019】
また、特許文献3には、(A)特定のジエン系ゴムに、(B)ニトロキシドフリーラジカルを分子中に有する化合物、(C)ラジカル開始剤および(D)分子中にアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(アルコキシシリル基を有するアクリレートまたはメタクリレート、ビニルトリアルコキシシラン等)を添加し、グラフト反応させることによって得られる変性ジエン系ゴムを5重量%以上含むゴム成分に、シリカを10〜100重量%含む補強性充填剤を含有させたゴム組成物が記載されている。
【0020】
なお、特許文献3記載のゴム組成物において、シリカを含有しない変性ジエン系ゴムについては、特許文献4に記載されている。
【0021】
特許文献3〜4では、(A)成分のジエン系ゴムとして、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴムが用いられている。
【0022】
しかしながら、これらの特許文献1〜4に記載された変性ポリマーは、構成単位中にイソモノオレフィン単位を有するポリマーあるいはジエン系ゴムである新ゴムのニトロキシドフリーラジカルを有する化合物による変性に向けられており、粉砕加硫ゴムに関するものではない。また、カーボンブラックについては、その性状について何らの特定も行われていない。
【0023】
TEMPOまたはその誘導体を変性剤とする変性反応に用いられるラジカル開始剤としては、一般に有機過酸化物が用いられ、例えばベンゾイルパーオキサイド、第3ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ第3ブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ第3ブチルヘキシン-3、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ第3ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、1,1-ビス(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(第3ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(第3ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。
【0024】
これらのラジカル開始剤は、ニトロキシドラジカルを有する化合物との反応系に添加することによって、ポリマーに炭素ラジカルを発生させることができる。
【0025】
以上の各成分は、粉砕加硫ゴム100重量部に対して、ニトロキシドラジカルを有する化合物が2重量部以上、好ましくは5〜20重量部の割合で、ラジカル開始剤が0.1〜15重量部、好ましくは0.2〜10重量部の割合で、かつラジカル開始剤に対するニトロキシドラジカルを有する化合物のモル比が1以上、好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.7〜2.0の割合で用いられる。
【0026】
ニトロキシドラジカルを有する化合物の使用割合がこれよりも少ないと、所望の粉砕加硫ゴムの変性が得られず、一方これよりも多い割合で用いられると、未反応のニトロキシドラジカルを有する化合物が系内に多量の残存するため、配合物の物性を低下させる可能性がある。ラジカル開始剤の使用割合がこれより少ないと、所望の粉砕加硫ゴムの変性を達成させることができず、一方これよりも多い割合で用いられると、粉末ゴムの分解もしくは劣化が促進されてしまい、配合物の物性を低下させる原因となる。また、ラジカル開始剤に対するニトロキシドラジカルを有する化合物のモル比がこれよりも少ないと、変性さるべき粉砕加硫ゴムのポリマー鎖の分解もしくは劣化が抑えられず、分子量が低下するおそれがある。
【0027】
このような割合で用いられる以上の各成分は、加熱混合機を用いて160〜190℃の温度で混合し、反応させることによって、粉砕加硫ゴムの変性が行われる。加熱混合機としては、ゴムの加熱混合機として一般に用いられているニーダ、バンバリーミキサ、2軸混練機、ヘンシェルミキサ等が用いられる。
【0028】
これらの加熱混合機を用いての加熱混合は、粉砕加硫ゴム、ニトロキシドフリーラジカルを有する化合物およびラジカル開始剤を加熱混合機に投入し、室温乃至約100℃で約5分間程度攪拌した後、加熱混合による可塑化を容易にするためアロマ系オイル等を添加し、この温度で約1〜5分間程度加熱攪拌した後、混合物温度を上昇させて160〜190℃、好ましくは170〜190℃に達したら、その温度で約5〜20分間程度反応させることによって行われ、粉砕加硫ゴムが変性される。
【0029】
粉砕加硫ゴムの変性の度合いを、JIS K6316に準拠して嵩比重を測定し、粉砕加硫ゴムにアロマ系オイルのみを混合した未変性粉砕加硫ゴムの嵩比重を100としたときの指数で示すと、ニトロキシドフリーラジカルを有する化合物で変性したものは105〜108程度であり、混合、反応温度を150℃としたときの変性粉砕加硫ゴムでは、嵩比重に増加はみられなかった。
【0030】
変性粉砕加硫ゴムは、ジエン系ゴム100重量部当り3〜30重量部、好ましくは3〜25重量部の割合で用いられる。これよりも少ない配合割合では、本発明の目的とする諸特性の改善が達成されず、一方これよりも多い割合で配合して用いられると、それは単に異物として存在することになる。
【0031】
天然ゴム含有ジエン系ゴムに変性粉砕加硫ゴムと共に配合して用いられるカーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(N2SA)が60m2/g以上、好ましくは90〜150m2/gのものが用いられる。前述の如く、このようにN2SA値が特定されたカーボンブラック、例えばHAF、ISAF, SAF等のカーボンブラックは、変性粉砕加硫ゴムのTEMPO(誘導体)部位との反応部位となるために一定のN2SA値を有することが必要であり、N2SA値がより小さいカーボンブラック、換言すれば平均粒子径のより大きいカーボンブラック、例えばGPFカーボンブラックを用いると、カーボンブラック側の反応部位が少なくなるため、加硫ジエン系ゴムの強度や補強性が確保され難くなる。
【0032】
特定のN2SA値を有するカーボンブラックは、ジエン系ゴム100重量部当り40重量部以上、好ましくは40〜80重量部の配合割合で用いられる。カーボンブラックの配合量がこれよりも少ないと、TEMPO(誘導体)との反応部位が少なくなり、バウンドラバー量、硬度、100%モジュラスなどが低下するようになる。
【0033】
以上の各成分を必須成分とするジエン系ゴム組成物中には、加硫剤としての硫黄およびチアゾール系(MBT、MBTS、ZnMBT等)、スルフェンアミド系(CBS、DCBS、BBS等)、グアニジン系(DPG、DOTG、OTBG等)、チウラム系(TMTD、TMTM、TBzTD、TETD、TBTD等)、ジチオカルバミン酸塩系(ZTC、NaBDC等)、キサントゲン酸塩系(ZnBX等)等の加硫促進剤のいずれか一種類以上が配合されて用いられる。さらに、ゴムの配合剤として一般的に用いられている他の配合剤、例えばタルク、クレー、グラファイト、珪酸カルシウム等の補強剤または充填剤、ステアリン酸等の加工助剤、酸化亜鉛、軟化剤、可塑剤、老化防止剤などが必要に応じて適宜配合されて用いられる。
【0034】
組成物の調製は、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機または混合機およびオープンロール等を用いる一般的な方法で混練することによって行われ、得られた組成物は、所定形状に成形された後、用いられたジエン系ゴム、加硫剤、加硫促進剤の種類およびその配合割合に応じた加硫温度で加硫され、空気入りタイヤの所定部位、好ましくはキャップトレッド等を形成させる。
【実施例】
【0035】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0036】
参考例
市販粉砕加硫ゴム(LEHIGH TECHNOLOGY社製品GF-80 REPROCESSED GROUND RUBBER;平均粒子径180μm)450g、有機過酸化物(AKZO NOBEL社製品カヤヘキサAD)1.87gおよび4−ヒドロキシ-2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル〔OH-TEMPO〕(旭電化工業製品)9.0gをヘンシェルミキサに投入し、70℃で5分間攪拌した後、さらにアロマ系オイル(昭和シェル石油製品エキストラクト4号S)50gを添加し、3分間加熱攪拌した。混合物温度を上昇させて180℃に達したら、その温度で15分間反応させ、変性粉砕加硫ゴム500gを得た。
【0037】
変性後の粉砕加硫ゴムについて、JIS K6316に準拠して嵩比重を測定し、上記粉砕加硫ゴム450gにアロマ系オイル50gのみを混合した未変性粉砕加硫ゴムの嵩比重を100としたときの指数で示すと、その値は108であった。この値が大きい程、変性剤OH-TEMPOによる変性が多く行われていることを示している。
【0038】
標準例1
天然ゴム(RSS#3) 70重量部
ブタジエンゴム(日本ゼオン製品Nipol 1220) 30 〃
HAFカーボンブラック(キャボットジャパン製品昭和ブラックN330T) 50 〃
ステアリン酸(日本油脂ビーズステアリン酸YR) 2 〃
亜鉛華(正同化学工業製品酸化亜鉛3種) 2 〃
老化防止剤(フレキシス社製品SANTOFLEX 6PPD) 1 〃
パラフィンワックス(大内新興化学工業製品サンノック) 1 〃
硫黄(鶴見化学工業製品金華印油入微粉硫黄) 1.4 〃
加硫促進剤(大内新興化学工業製品ノクセラーCZ-G) 1.4 〃
以上の各成分中、硫黄および加硫促進剤を除く各成分を、1.7Lのバンバリーミキサで5分間混練し、得られた混合物に硫黄および加硫促進剤を加えて、8インチの試験用練りロール機で4分間混練し、ゴム組成物を調製した。このゴム組成物を、150℃で30分間加熱加硫して目的とする試験片を作製し、次の各項目のゴム物性を測定した。
バウンドラバー量:未加硫のゴム組成物約0.5gを金網かごに入れ、室温で300mlの
トルエン中に72時間浸漬した後取り出して乾燥し、サンプルの
質量を測定して、下記式から算出した
バウンドラバー量=(Wfg−Wf)/Wp
Wfg:トルエン浸漬、乾燥後のサンプル質量
Wf:フィラー質量
Wp:ゴム成分質量
硬度:JIS K6253準拠(20℃)
100%モジュラス、破断強度:JIS K6301準拠
【0039】
比較例1
標準例1において、さらに市販粉ゴム(Lehigh Technology社製品GF-80 Processed Ground Rubber;平均粒子径180μm)10重量部を配合したゴム組成物が用いられた。
【0040】
実施例1
標準例1において、さらに参考例で得られた変性粉砕加硫ゴム10重量部を配合したゴム組成物が用いられた。
【0041】
実施例2
標準例1において、さらに参考例で得られた変性粉砕加硫ゴム20重量部を配合したゴム組成物が用いられた。
【0042】
実施例3
標準例1において、さらに参考例で得られた変性粉砕加硫ゴム30重量部を配合したゴム組成物が用いられた。
【0043】
比較例2
標準例1において、さらに参考例で得られた変性粉砕加硫ゴム40重量部を配合したゴム組成物が用いられた。
【0044】
比較例3
実施例1において、HAFカーボンブラック量が35重量部に変更されたゴム組成物が用いられた。
【0045】
比較例4
実施例1において、HAFカーボンブラックの代わりに、同量(50重量部)のGPEカーボンブラック(東海カーボン製品シーストV)が配合されたゴム組成物が用いられた。
【0046】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、組成物成分として用いられたカーボンブラック、変性粉砕加硫ゴム(変性粉ゴム)および市販粉ゴムの種類および配合量(単位:重量部)と共に、次の表1に示される。なお、測定値は、標準例1を100とする指数で示され、バウンドラバー量(Bラバー量)、硬度、100%モジュラス(M100)、破断強度のいずれにあっても、指数の値が大きい程良いとされる。
表1
標準例1 比-1 実-1 実-2 実-3 比-2 比-3 比-4
〔ゴム組成物〕
HAF CB 50 50 50 50 50 50 35 −
GPF CB − − − − − − − 50
変性粉ゴム − − 10 20 30 40 10 10
市販粉ゴム − 10 − − − − − −
〔測定結果〕
Bラバー量 100 98 102 105 104 104 96 98
硬度 100 101 101 101 103 104 90 97
M100 100 101 101 103 103 103 91 98
破断強度 100 95 102 101 100 93 102 96
【0047】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1) 未変性の市販粉ゴムを配合したゴム組成物を用いると、バウンドゴム量が少なくなり、すなわちゴムの補強性が低下する(比較例1)。
(2) 変性粉砕加硫ゴム量が多すぎるゴム組成物を用いると、強度が低下する(比較例2)。
(3) カーボンブラックの配合量が少なすぎるゴム組成物を用いると、TEMPOとの反応部位が少なくなり、バウンドラバー量、硬度、100%モジュラスが低下する(比較例3)。
(4) 比表面積の少なすぎるカーボンブラックが配合されたゴム組成物を用いると、すべての測定項目で指数の低下がみられる(比較例4)。
(5) 各実施例のゴム組成物を用いると、殆どすべての測定項目で指数の上昇が認められる。
【0048】
標準例2
標準値1において、天然ゴム(70重量部)-ブタジエンゴム(30重量部)ブレンドゴムの代わりに、天然ゴム(RSS#3、20重量部)-スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン製品Nipol 1502、80重量部)ブレンドゴムをゴム成分としたゴム組成物が用いられた。
【0049】
比較例5
標準例2において、さらに参考例で得られた変性粉砕加硫ゴム10重量部を配合したゴム組成物が用いられた。
【0050】
比較例6
標準例2において、さらに参考例で得られた変性粉砕加硫ゴム20重量部を配合したゴム組成物が用いられた。
【0051】
比較例7
標準例2において、さらに参考例で得られた変性粉砕加硫ゴム30重量部を配合したゴム組成物が用いられた。
【0052】
実施例4〜6
比較例5〜7において、天然ゴム(30重量部)-スチレンブタジエンゴム(70重量部)ブレンドゴムをゴム成分としたゴム組成物が用いられた。
【0053】
以上の実施例4〜6および比較例5〜7で得られた結果は、用いられたゴム成分および変性粉砕加硫ゴムの種類および配合量(単位:重量部)と共に、次の表2に示される。なお、測定値は、標準例2を100とする指数で示される。得られた結果から、天然ゴム量が規定量より少なく用いられると、変性粉砕加硫ゴムとの親和性が低下し、ゴム強度が低下することが分かる。
表2
標準例2 比-5 比-6 比-7 実-4 実-5 実-6
〔ゴム組成物〕
天然ゴム 20 20 20 20 30 30 30
SBR 80 80 80 80 70 70 70
変性粉ゴム − 10 20 30 10 20 30
〔測定結果〕
Bラバー量 100 101 102 103 101 101 102
硬度 100 100 102 103 101 101 102
M100 100 100 101 102 100 100 102
破断強度 100 98 95 93 100 100 101

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムを30重量%以上含有するジエン系ゴム100重量部当り、ニトロキシドフリーラジカルを有する化合物で変性された粉砕加硫ゴム3〜30重量部および窒素吸着比表面積(N2SA)が90m2/g以上のカーボンブラック40重量部以上を配合してなるジエン系ゴム組成物。
【請求項2】
粉砕加硫ゴムとして、廃タイヤリサイクル粉末が用いられた請求項1記載のジエン系ゴム組成物。
【請求項3】
ニトロキシドフリーラジカルを有する化合物として、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルまたはその誘導体が用いられた請求項1または2記載のジエン系ゴム組成物。
【請求項4】
窒素吸着比表面積(N2SA)が60〜150m2/gのカーボンブラックが用いられた請求項1記載のジエン系ゴム組成物。
【請求項5】
40〜80重量部のカーボンブラックが配合された請求項1または4記載のジエン系ゴム組成物。
【請求項6】
空気入りタイヤ成形用として用いられる請求項1、2、3、4または5記載のジエン系ゴム組成物。
【請求項7】
請求項6記載のジエン系ゴム組成物から成形された空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−148893(P2011−148893A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10695(P2010−10695)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】