説明

ジスルフィド架橋結合した糖タンパク質ホルモン類似体類およびそれらの調製および使用

【課題】相当する生物活性を一部分保持しつつも改善された安定性を有する糖タンパク質ホルモン類似体を含む薬学組成物の提供。
【解決手段】α−サブユニットおよびβ−サブユニットを有する、ヒト絨毛性ゴナドトロピンhCG、ヒト黄体形成ホルモンhLH、ヒト卵胞刺激ホルモンhFSH、ヒト甲状腺刺激ホルモンhTSH、およびそれらの機能性変異体からなる群から選択される糖タンパク質ホルモンであって、上記ホルモンのアミノ酸配列が修飾されることにより、α−サブユニットとβ−サブユニットの各システイン間にジスルフィド結合を創製し、上記2つのシステインは上記ホルモンの天然システイン残基位置の間に露出されて、相当する天然システインの最も外側のシステインユニットの外側には露出されず、安定性の改良のために、相当する天然糖タンパク質ホルモンレセプターに対する生物活性の一部を保持する上記ホルモンを含む、薬学組成物の提供。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、糖タンパク質ホルモン類の類似体類、ならびにそれらの調製および用途に関する。より具体的には、本発明は、糖タンパク質ホルモン類をジスルフィド結合架橋した類似体類ならびにそれらの調製および用途に関する。
【0002】
関連技術の説明
糖タンパク質ホルモン類には、コリオゴナドトロピンとしても知られている絨毛性ゴナドトロピン(chorionic gonadotropin)(CG)、ルトロピンとしても知られている黄体形成ホルモン(luteinizing hormone) (LH)、ホリトロピンとして知られている卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone)(FSH)、およびチロトロピンとしても知られている甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulatinghormone)(TSH)が含まれる。ヒトからのそれらは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト黄体形成ホルモン(hLH)、ヒト卵胞刺激ホルモン(hFSH)、および、ヒト甲状腺刺激ホルモン(hTSH)として知られている。これらのホルモンは、生殖腺および甲状腺の機能に重要な役割を果たしている(Pierceら、1981:Moyleら、1995)。CGおよびLHはLHレセプター類と結合してそれらを刺激し、FSHはFSHレセプター類と結合してそれらを刺激し、また、TSHはTSHレセプター類と結合しそれらを刺激する。CGは、主に、霊長類を含む数少ない哺乳動物の胎盤によって大量に生成されるホルモンである。霊長類からのCGのβ−サブユニットのアミノ酸配列は、通常、LHのそれらとは異なる。ウマもまたCGを生成するが、ウマのCHは、ウマのLHと同一のアミノ酸配列を持つ(Murphyら、1991)。
【0003】
Pierceら(1981)によって論評されているように、糖タンパク質ホルモンは、α−およびβ−サブユニットからなるヘテロダイマーである。ヘテロダイマーは共有結合しておらず、ホルモンを酸または尿素で処理することによって、それらのサブユニットを解離させることができる(Pierceら、1981)。大部分のより高等な脊椎動物は、α−サブユニットをコードする遺伝子を一つだけ含んでおり(Fiddesら、1984);同じα−サブユニットが、通常、LH、FSH、TSH、および、存在するならCG、のβ−サブユニットと結合する。にもかかわらず、翻訳後のタンパク質のプロセシング、とりわけ、グリコシル化(Baenzigerら、1988)が、LH、FSH,TSHおよびCGのα−サブユニットの組成の違いの一因となりうる。ホルモン間のアミノ酸配列の差異の大部分は、ホルモン−特異的β−サブユニットによる(Pierceら、1981)。これらは別々の遺伝子から生成される(Fiddesら、1984;Boら、1992)。
【0004】
ほとんど例外なく(Blitheら、1991)、α−β−ヘテロダイマーは、いずれかの遊離のサブユニットより非常に高いホルモン活性を持つ(Pierceら、1981)。天然発生のα−およびβ−サブユニットは、α,α−ホモダイマーまたはβ、β−ホモダイマーを形成するより、α、β−ヘテロダイマーを形成しやすい。事実、哺乳動物細胞内でhCGのα−サブユニットおよびβ−サブユニット遺伝子が一緒に発現すると、α,β−ヘテロダイマー、α−サブユニットモノマー、およびβ−サブユニットモノマーが形成される。もしあるにしても、ごく微量のα,α−ホモダイマーまたはβ,β−ホモダイマーが作成されるか、または、細胞から分泌される。
【0005】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の高分解能X線結晶構造解析は、2つの研究室によって報告されている(Lapthornら、1994;Wuら、1994)。これらの構造から、生来のジスルフィド結合パターン(Miseら、1980および1981)は不適切であり、ホルモンはタンパク質のシステインノット(cysteine knot)ファミリーの一員である(Sunら、1995)ことが、わかった。全ての糖タンパク質ホルモン内のシステインの相対位置は類似しているので、それらは、hCGで認められるシステインノット)構造を持つらしい。
【0006】
脊椎動物の糖タパク質ホルモンのα−サブユニット内のシステイン残基の位置は、類似している(図1Aおよび1B)。hCGのα−サブユニットをモデルとして用いると、システインノットは、α−サブユニットの2、3、5、7、8および9番目のシステインによって形成されるらしい。これは3つの大きなα−サブユニットループを作り出す(図1Aおよび1B)。ループ1は、2番目と3番目のシステインの間のアミノ酸配列であり;ループ2は、α−サブユニットの5番目と7番目のシステインの間のアミノ酸配列であり;そして、ループ3は、7番目と8番目のシステインの間のアミノ酸配列である。脊椎動物の糖タンパク質ホルモンのβ−サブユニット内のシステイン残基の位置も、類似している(Pierceら、1981)。モデルとしてhCG β−サブユニットを用いると システインノットは、1、4、5、6、8および9番目のシステインによって形成されることがわかる。これは3つの大きなβ−サブユニットループを作り出す(図2Aおよび2B)。ループ1は、1番目と4番目のシステインの間のアミノ酸配列であり;ループ2は5番目と6番目のシステインの間の配列であり;そして、ループ3は、6番目と8番目のシステインの間の配列である。α−サブユニットの部分をその他のα−サブユニットの相同部分と置き換える、または、β−サブユニットの部分をその他のβ−サブユニットの相同部分と置き換えると、個々の糖タンパク質ホルモンのサブユニットの機能性キメラを調製することができる(Campbellら、1991;Moyleら、1990;Moyleら、1994;Cosowskyら、1995;Moyleら、1995;Cosowskyら、1997)。糖タンパク質ホルモンサブユニット内の構造エレメントの一般図を図1Cに示しており、アミノ酸残基によるヒトの糖タンパク質ホルモンサブユニットとの関連性を、以下の表1Aに示している。
【0007】
【表1】

【0008】
そのシステインノットに加え、β−サブユニットは、また、第二のα−サブユニットループの周りに取り巻く、シートベルトと呼ばれる配列を含む(Lapthornら、1994)。シートベルトは、サブユニットシステインノット内の最後の残基である9番目のシステインに始まり、10、11および12番目のシステインを含む。それは、12番目のシステイン(即ち、シートベルトのカルボキシ末端)と3番目のシステイン(即ち、第一のβ−サブユニットループ)の間に形成されたジスルフィド結合により、第一のβ−サブユニットループに掛けられる。
【0009】
シートベルトは、LHレセプターとFSHレセプターを識別するhCGの能力に(主要ではないにしろ)有意の影響を持つ、hCGのβ−サブユニットの一部分である(Campbellら、1991;Moyleら、1994)。hFSHに認められるシートベルト配列を持つhCGシートベルトアミノ酸配列の全体または部分を置き換えると、その結果得られたホルモン類似体のレセプター結合特異性が変化した。通常、hCGは、FSHレセプターまたはTSHレセプターより、100倍以上、LHレセプターと結合しやすい。しかしながら、hCGシートベルト残基101ー109(即ち、Gly−Gly−Pro−Lys−Asp−His−Pro−Leu−Thr)がそれらのhFSHでの同等物(即ち、Thr−Val−Arg−Gly−Leu−Gly−Pro−Ser−Tyr)と置換されたCF94−117およびCF101−109の様なhCG類似体は、hCGより、FSHレセプターに結合しやすかった(Moyleら、1994)。さらに、シートベルト組成を細工することによって、様々な程度のLH活性およびFSH活性を持つhCGの類似体を調製することが可能である(Moyleら、1994;Hanら、1996)。これらは、雄および雌の繁殖性を強める可能性のある重要な治療用途を持つ。
【0010】
糖タンパク質ホルモンのサブユニット内部のジスルフィド結合は、全部ではないにしろその大部分が、生物学的活性に重要である。個々のシステインをその他のアミノ酸、特にアラニン、で置き換えた研究から、システインノットおよびシートベルトの全てのジスルフィド結合は、ヘテロダイマーのフォールディングに重要であることがわかった(Suganumaら、1989;Bedowsら、1993;Furhashiら、1994)。ヒトα−サブユニットのシステイン7−31と59−87の間、およびhCG β−サブユニットのシステイン23−72の間の残ったジスルフィド結合は、ヘテロダイマーの形成にも、また、ホルモン活性にも、重要ではない。
【0011】
今までのところ、糖タンパク質ホルモンとそのレセプターの相互作用を描いた高解析能結晶構造はまだない。ホルモンレセプター複合体の構造を説明するために、いくつかのモデルを構築する努力がなされた。これらの大多数は、hCGおよびリボヌクレアーゼインヒビター、糖タンパク質ホルモンレセプターの細胞外ドメインの構造と類似するであろうタンパク質の結晶構造を基にしている。レセプターと接触するホルモン残基を同定するための試みのほとんどは、レセプター結合を減少に導く化学的、酵素的、または遺伝子的変異の影響に基づいている。残念なことに、結合の減少は特異的接触の阻害またはホルモン立体構造の変化により起こる可能性があったため(Cosowskyら、1977)、これらの変化による影響は、解釈が不可能ではないにしろ、難しい。このことは、この分野での考慮すべき不一致を導き(Remyら、1996;Bergerら、1996)、何人かの研究者はレセプター複合体中のホルモンの方向を決定することは不可能であると、結論づけている(Blowmickら、1996)。
【0012】
レセプター複合体内のホルモンの方向を決定するためのその他の研究方法は、レセプターと接触していないホルモン領域を同定することである。これらは、ホルモンがレセプターと結合した後も露出状態で残っており、そして/または、ホルモン−レセプター相互作用を破壊することなく変化させることができる。これらのhCGの結晶構造上での位置を決定する(Lapthornら、1994;Wuら、1994)と、hCGがLHレセプターと相互作用するであろう方法の仮説モデルを立てることができる(Moyleら、1995)。この研究は、第二のα−サブユニットループおよび第一および第三のβ−サブユニットループによって形成されたホルモンの溝(groove)が、主にレセプターの接触に必要とされることを、示唆した(Cosowskyら、1995)。また、このことは、何故、両方のサブユニットが最も強いホルモン−レセプターの結合に必要であるかを説明するであろう(Pierceら、1981)。この結論を支持するデータは、次の数節で議論されている。しかしながら、この分野のその他の研究者の全てではないにしろその大部分が、ここに記載されたモデルに気付いている(即ち、彼らは主要なレセプター結合部位がホルモンの溝によって形成されているというモデルについて記載された文献を引用している)にもかかわらず、ホルモンの方向付けが非常に異なるというモデルを支持していることは、注目すべきである。
【0013】
レセプターと接しているとは考えられないhCG α−サブユニットの多くの部分は、LHレセプターとの結合を崩壊させることなく置き換えることができる。hCGがLHレセプターと結合していても、モノクローナル抗体によっても認識されるので、これらの領域のいくつかはホルモン−レセプター複合体内で露出していることが明らかである(Moyleら、1990:Cosowskyら、1995;Moyleら、1995)。例えば、ヒトおよびウシのα−サブユニットは、非常に異なったアミノ酸配列を持つが、ウシのα−サブユニットとhCGのβ−サブユニットを含むヘテロダイマーは、ラットおよびヒトのLHレセプターと良く結合する(Cosowskyら、1997)。これらのヘテロダイマーは、hCGのα−サブユニットのループ1および3上のエピトープを認識する大部分のモノクローナル抗体によって容易に識別される(Moyleら、1995)。これらの所見は、ヒトおよびウシのα−サブユニットループ1と3が異なることを示し、ホルモンのこの領域は、キーとなる必須のレセプターとの接触を形成しないことを示唆している。
【0014】
α−サブユニットの一部分がヒトまたはウシのタンパク質のいずれかから誘導されたhCG類似体を認識するモノクローナル抗体の能力を比較することによって、抗体の結合に加わるキーとなるα−サブユニットの残基を同定することができた(Moyleら、1995)。また、hCGのα−サブユニット上のエピトープを認識するいくつかのモノクローナル抗体は、トリプシン消化によって調製されたα−サブユニットのフラグメントおよび第二のα−サブユニットループの大部分が欠損したα−サブユニットのフラグメントと結合した(Lapthornら、1994;Wuら、1994;Birkenら、1986)。また、この所見を用いて、これらの抗体の結合部位を決定および/または確認した(Moyleら、1995)。α−サブユニットのエピトープを認識し、A105およびA407と呼ばれる、2つのモノクローナル抗体(Moyleら、1995)は、ホルモンがLHレセプターと複合した場合、hCGと結合した。このように、これらの抗体によって認識されるα−サブユニット残基は、LHレセプターとは接触しないらしい(Moyleら、1995)。α−サブユニットの残りの部分には、第二のα−サブユニットループおよびタンパク質のC−末端が含まれる。α−サブユニットのこのように保存性の高い部分の内の残基のいくつかは、レセプターとの接触にかかわるであろう。
【0015】
また、LHレセプターと接触しているとは考えられないhCG β−サブユニットの多くの部分は、LHレセプター結合を崩壊させることなく突然変異誘発によって置き換えることができる。これには、hCG β−サブユニットのループ2が含まれる。hCG β−サブユニットのループ2の残基をhFSH β−サブユニットのループ2に通常認められるそれらと置き換えたhCG類似体は、CF39−58と命名され(Campbellら、1991)、FSHを認識するが、β−サブユニットのループ2内のhCG残基は認識しないモノクローナル抗体によって、容易に認識された。このことから、第二のサブユニットループの構造がこの類似体内とhCG内では異なっていることが、示された。それにも関わらず、このβ−サブユニット類似体はα−サブユニットと結合して、hCGと良く似たLHレセプターと相互作用するα,β−サブユニットを形成する(Campbellら、1991)。このように、もしあるにせよ、hCGの第二のβ−サブユニットループ内の残基はほとんど、重要な直接的LHレセプター接触を作らないと考えられる。同様に、hFSHの第二のβ−サブユニットループも、FSHレセプターと接触しているとは考えられない。β−サブユニットの10番目のシステインとC−末端の間、または残基94−114の間の残基を該当するhFSHの残基と置き換えた、hCG β−サブユニットの類似体について、報告されている。これらの類似体は、CF94−117(Campbellら、1991)、およびCFC94−114(Wangら、1994)と名付けられた。それらは第二のβ−サブユニットループ内のhCGの全体配列を含んでいるにも関わらず、両方とも、LHレセプターよりもずっと良くFSHレセプターと結合する。hCGの第二のβ−サブユニットループは、LHまたはFSHレセプターのいずれかと結合するホルモンの能力に最小限の影響しか持たないらしいと考えられるので、それがLHまたはFSHのレセプターとの重要な高アフィニティー接触に預かることは、ありそうにないと考えられる。さらに、hCGの第二のβ−サブユニットループは、第一および第三のα−サブユニットループ、レセプターに接触するとは考えられないα−サブユニットの部分の近くに位置する。このように、第一および第三のα−サブユニットループおよび第二のβ−サブユニットループ内の残基を含む、hCGの領域全体がレセプターとは接触できないように思える。後に議論されるであろうが、ホルモンのこの部分は、レセプターの細胞外ドメインの馬蹄型によって作り出される空洞内に突き出していると考えられる(Moyleら、1995)。
【0016】
また、高親和性のレセプター接触にかかわらないhCGのβ−サブユニットの残基は、ホルモンがLHレセプターと結合した後も、モノクローナル抗体で認識することができる(Campbellら、1991;Moyleら、1990;Moyleら、1994;Cosowskyら、1995)。これらには、B105、B108、B111およびB112のような抗体によって認められるα−サブユニットインターフェイスから最も遠く離れたループ1および3内に認められるhCGのβ−サブユニットの部分が含まれる。このような抗体は、hCGがLHレセプターと複合する場合も、hCGと結合し(Moyleら、1990;Cosowskyら、1995)、このことは、β−サブユニットのループ1および3のこれらの部分がレセプター接触に必須ではないことを示している。その他の研究から、ホルモンがLHレセプタオーと結合する能力を排除することなく、hCG β−サブユニットのN−末端と1番目のシステインの間、および12番目のシステインとC−末端の間の残基を除去することが可能であることが、示された(Huangら、1993)。β−サブユニットの残余部分には、シートベルトが含まれる。これらの残基はほとんど、LHまたはFSHレセプターとの高親和性結合に必要な接触に必須であるとは考えられない。例えば、11番目と12番目のシステイン間のシートベルト内の残基を変化させても、LHレセプターとの結合への影響は、もしあったとしても最小である(Moyleら、1994)。10番目と11番目のシステインの間の残基の変化がFSHレセプター結合に影響を与えることは5倍より少ない(Moyleら、1994)。さらに、ウマのLH(eELH)およびウマのCG(eCG)のシートベルト内の残基の大部分はFSHとは異なる(Pierceら、1981;Murphyら、1991)が、それにもかかわらず、これらのホルモンは、ラットのFSHレセプターと良く結合する。事実、精製されたeLHは、インビトロでは、hFSHと同様にラットのFSHレセプターと、少なくとも30%結合する(Moyleら、1994)。まだ評価されずに残っているhCG β−サブユニットの部分には、α−サブユニットインターフェイスに最も近いループ1および3の表面が含まれる。従って、これらはレセプターと接触するホルモンの部分であると考えられる。また、α−サブユニットの部分は、hCGがLHレセプターと結合している場合も、モノクローナル抗体によって認識される。これらには、抗体A105およびA407によって認識される残基が含まれる(Moyleら、1995)。
【0017】
レセプターと相互作用する糖タンパク質ホルモンの領域を同定するためのその他の戦略には、一つ以上のレセプターを認識するホルモン類似体を用いることが含まれる(Campbellら、1991;Moyleら、1994;Hanら、1996;Campbellら、1997)。hCGのβ−サブユニットシートベルトをhFSH内に認められるそれと変えることによって、簡単に、FSHおよびTSHレセプターと結合するhCG類似体を調製することができる(Campbellら、1997)。この類似体は、TSHに特異的な残基を含まないが、TSHと同じ最大レベルにTSH応答を刺激する能力を持つ。いくつかのこれらの多機能性類似体の活性を比較することによって、シートベルト残基の大部分および第二のβ−サブユニットループのほぼ全体が、キーとなる必須の高親和性レセプター接触を形成するとは考えられないと、結論づけることができる。
【0018】
LH,FSHまたはTSHレセプターの結晶構造は報告されていない。しかしながら、いくつかの糖タンパク質ホルモンレセプターのアミノ酸配列は既知である(Moyleら、1994;McFarlandら、1989;Loosefeltら、1989;Segaloffら、1990;Sprengelら、1990;Braunら、1991;Nagayamaら、1991;Nagayamaら、1989;Jiaら、1991)。これらのタンパク質は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを持つと考えられる。膜貫通または細胞内ドメインなしで(Braunら、1991;Jiら、1991;Xieら、1990;Moyleら、1991)、または他の膜貫通ドメインと連結して(Moyleら、1991)発現させると、細胞外ドメインが、そのリガンドに対するレセプター親和性の大部分を構築することが分かる。これらのタンパク質の細胞外ドメインは、ロイシンを多く含む繰り返しファミリーに属するタンパク質のメンバーであり、膜貫通ドメインは、原形質膜に及ぶ7つの疎水性へリックスを持つと考えられる(McFarlandら、1989)。リボヌクレアーゼインヒビターの結晶構造が、ロイシンを多く含む繰り返しタンパク質の一つのモデル構造として決定され、馬蹄型を持つことが分かった(Kobeら、1993および1995)。この知見から、LH、FSH、およびTSHのレセプターの細胞外ドメインは、馬蹄型であることが示唆された(Moyleら、1995)。hCGおよびhFSHの結合特異性を調節するLHおよびFSHレセプターの細胞外ドメインの一部が、LH/FSHレセプターキメラを用いることによって同定された(Moyleら、1994)。LHレセプターおよびリガンド結合特異性に応答するLHレセプターの部分と最も良く接触すると考えられるhCGの部分を考慮することによって、LHレセプターと相互作用しシグナル導入を引き出すこのホルモンの能力を説明するモデルを開発した(Moyleら、1995)。このモデルでは、第二のα−サブユニットループと第一および第三のβ−サブユニットループの間の溝は、馬蹄型の中央に近いレセプター細胞外ドメインの縁と接触している(Moyoleら、1995)。ホルモンの残りの部分は、アームと馬蹄型の間の空間に投げ出されている。ホルモンがレセプターと結合し、この空間内に投げ出されると、シグナル導入に必要な細胞外ドメインの立体構造が安定化される。これは、細胞表面上での適正なレセプター発現に必要な、細胞外ドメインと膜貫通ドメインの間の特異的接触によって、膜貫通ドメインに導かれる(Moyleら、1991)。このモデルは、シグナル導入に影響を与えるオリゴ糖の能力についても説明している(Moyleら、1975;Matzukら、1989)。モデルはこれらのデータを説明することができるが、一方で、hCGの異なる部分がレセプターと相互作用する別のモデルも提案されている(Jiangら、1995)。従って、糖タンパク質ホルモンがどのようにそれらのレセプターと相互作用するかは、未だ明らかではない。
【0019】
また、ホルモンレセプター相互作用に関してのこの見解は、キーとなるレセプター接触には関係しないと考えられてきたhCG領域を認識するいくつかのモノクローナル抗体によってhCG結合が阻害されることを説明している。早くから議論されてきたように、これらには、α−サブユニットのループ1および3、ならびにβ−サブユニットのループ2によって形成されたホルモンの表面が含まれる。モデルでは、これらの領域は、レセプター細胞外ドメインのN−末端とC−末端の間の空間に突き出している。これらの部位へ抗体が結合すると、ホルモンのこの空間への侵入を防御する。
【0020】
大部分の脊椎動物種の糖タンパク質ホルモン内でのシステインの位置の類似性(Pierceら、1991)から、それらもhCGのようにフォールディングされているのではないかと考えられる。また、糖タンパク質ホルモンのレセプター構造は、それらの細胞外ドメインのロイシンを多く含む繰り返し、およびそれらの膜貫通ドメイン内の多数の保存残基の類似性より、極めて似通っていると考えられる(Moyleら、1994;Braunら、1991;Nagayamaら、1991)。従って、LHレセプターとのhCGの相互作用をうまく説明できる任意のモデルは、また、その他の糖タンパク質ホルモンがそれらのレセプターと結合する能力をも、予想するであろうと考えられる。シートベルトがリガンド−レセプター相互作用の特異性に影響を与えうる一つの方法は、ホルモンサブユニットの相対位置を変化させることであろう(Cosowskyら、1997)。これにより、第二α−サブユニットループと第一および第三のβ−サブユニットループとの間のグローブの形が変わるであろう。ホルモンおよびレセプター内の阻害因子が不適切なリガンド−レセプター相互作用を防御する原因であるという提案がなされた(Moyleら、1994)。それ故、シートベルトの効果は、ホルモンの形を変え、馬蹄型の中央部分内にフィットするそれの能力を減少させることであろう。
【0021】
糖タンパク質ホルモンは、いくつかの医療用途を持つ。FSHは、雌の排卵誘導の準備として卵胞の発達を誘導するために用いられる(galwayら、1990;Shohamら、1991;Gastら、1995;Oliveら、1995)。また、LHおよびhCGは、発達を開始した卵胞の排卵を誘導するために用いられる。FSH、LHおよびhCGは、雄の精巣機能を誘導するために用いられる。実在するホルモンを用いて、雄および雌の生殖腺、および甲状腺の機能を刺激することができるが、この用途へホルモンを実際に適用するには、それらホルモンがヘテロダイマーである必要がある。これらは、下垂体(即ち、LHおよびFSH)、血清(ウマの絨毛性ゴナドトロピン)、または妊娠女性の尿(hCG)あるいは閉経後の女性の尿(hLHおよびhFSHの混合物)から単離することができる。また、活性なヘテロダイマーは、癌(Coleら、1981)またはα−およびβ−サブユニットをコードするcDNAまたは染色体DNAでトランスフェクトされたそれら(Reddyら、1985)のいくつかを含む、α−およびβ−サブユニットの両方を発現する細胞培養基から単離できる。事実、後者は、治療上有効な糖タンパク質の重要な源である。糖タンパク質ホルモンのうちオリゴ糖がシグナル導入を引き出すそれらの能力に影響を与えることが分かった(Moyleら、1975;Matzukら、1989)ため、活性なヘテロダイマーの調製および合成は、真核生物細胞内で行うのが最良であろう。これらの細胞は、オリゴ糖に高マンノースオリゴ糖を加え、そしてある場合には、それらをプロセシングして天然のホルモンに認められるオリゴ糖複合体を与える能力を持つ(Baenzigerら、1988)。しかし、真核生物細胞は、糖タンパク質を様々にプロセスする事ができるので、糖タンパク質ホルモンの合成は、時には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)から誘導したような哺乳動物細胞系内で行われる。ホルモンを非哺乳動物の真核生物細胞内で作ることもできるが、オリゴ糖鎖の潜在的抗原性は、それらの医療への利用を制限する。
【0022】
また、ヘテロダイマーホルモンは、受胎能を制限するために用いることのできる抗血清を作り出す免疫原としても用いることができる(Singhら、1989;Palら、1990;Talwarら、1986;Talwarら、1992;Moudgalら、1971および1972;Moudgal、1976:Ravindranathら、1990;Moudgalら、1978)。ヒトの妊娠を維持することへのhCGの重要な役割により、hCGに対する免疫応答の発達は、避妊の手段として有用であり、hCGを基本にした避妊薬ワクチンを考案する実質的努力がなされた。しかしながら、原理的には、ホルモンに対する抗体を用いて、受胎能を促進することもまた可能であった。例えば、LHレベルは、多嚢胞性卵巣疾病の女性では過剰であると考えられる。従って、循環性LH活性を減少させるが排除しないであろう方法の開発が、受胎能の回復に有益であろう。
【0023】
糖タンパク質ホルモンの代謝については、ほどんど分かっていない。ホルモンの半減期は、それらのオリゴ糖の含有量(Baenzigerら、1988)、特にそれらの末端の糖残基に影響されることが知られている。最も安定なホルモンは、この位置に最も高いシアル酸含有量を持つそれらである(Murphyら、1991;Baenzigerら、1992;Fieteら、1991;Smithら、1993;Rosaら、1984)。しかしながら、遊離したホルモンサブユニットは、それらがヘテロダイマーと同一のオリゴ糖を持っていたとしても、明らかにより短い循環半減期を持つことが知られているため、オリゴ糖が、完全に、ホルモンの安定性の原因となるわけではない(Wehmannら、1984;Kardanaら、1991)。事実、ホルモンは、サブユニットを解離に導くタンパク質分解によって不活性化されうるという提案がなされた(Kardanaら、1991;Birkenら、1991;Coleら、1991:Coleら、1993)。ニックを持つhCGは、hCGより非常に速くその不活性サブユニットに解離した(Coleら、1993)。従って、サブユニット解離を防ぐかまたは減少させることのできる方法が、ホルモン効力を強化するであろうと期待される。
【0024】
糖タンパク質ホルモンサブユニットは、熱処理、極端なpH、および尿素を含む変性条件化で、急速に解離する(Pierceら、1981;Coleら、1993)。この理由により、大部分の糖タンパク質ホルモン調製物は、凍結乾燥粉末として保存される。ヘテロダイマーの安定性を強化する方法は、ホルモン調製物を保存し、水溶液に分散させることを可能にする。このことは、ホルモン希釈物を別々に輸送し、末端ユーザーがさらなるホルモン再構築段階を行う、必要性を除去するであろう。
【0025】
それらのサブユニットを架橋することによってホルモンを安定化させるために、様々な試みがなされてきた。化学的架橋方法が用いられてきた(Weareら、1979および1979);が、このような方法は、活性を減少に導く。また、β−およびα−サブユニットを一緒に遺伝子融合して一本鎖のホルモンを作り出すことも可能である。このような分子は、ヘテロダイマーより安定であり、高い生物学的活性を持つ(Sugaharaら、1995);が、天然型分子からは大きく異なる。
【0026】
タンパク質を架橋するその他の方法は、ジスルフィド結合によってそれらを束縛することであろう。この戦略は、システインノットスーパーファミリーのその他のタンパク質を、自然に安定化させ(Sunら、1995)、たぶんシートベルトを起こさせるであろう。さらに、タンパク質へのジスルフィド結合の追加は、タンパク質内での内部のひずみを増加させない限り、それらの安定性を強化することができる(Matthews、1987;Matsumuraら、1989)。ジスルフィド結合により糖タンパク質ヘテロダイマーを安定化させる効果は、カナダ特許CA2188508に報告されている。また、そのようなサブユニット内ジスルフィド結合を示唆するHanら(1996)のコメントがあるが、この参考文献は、そのようなジスルフィド結合の導入は、ホルモンの活性を減少させるであろうと報告している。このようなヘテロダイマーは、様々なジスルフィド結合を持つ複合タンパク質であるため、この報告は、もっともらしい。これらへのシステインの付加は、フォールディングを崩壊させ、無機能性タンパク質を生ずる結果となる可能性を持つ。さらに、その他のシステインノットタンパク質のサブユニット構成は、糖タンパク質ホルモンのそれとは、実質的に異なるため、糖タンパク質ホルモンを安定化するであろうジスルフィド結合の位置予想に基づいて、その他のシステインノットタンパク質に用いることができるとは考えられない(Sunら、1995)。
【0027】
本明細書中のいかなる文書の引用も、そのような文書の従来技術、または本出願のどの請求の範囲の特許要件への考慮すべき要素との関連性の承認を意図したものではない。いかなる文献の内容またはデータによるいかなる供述も、出願時に出願人に入手できた情報に基づいており、そのような供述の正確性についての承認をなすものではない。
【0028】
発明の要約
従って、本発明の目的は、上で論議したようなこの技術分野での欠陥を打ち消すことにある。本発明の糖タンパク質ホルモン類似体は、相当する糖タンパク質の生物活性を少なくとも一部分保持しつつも、改善された安定性を提供している。好ましくは、本発明の類似体は、該当するホルモンのその天然のレセプターに対するアフィニティーを少なくとも25%、保持している。本発明のこのような類似体は、適正に設計された位置に据えられたサブユニット内ジスルフィド結合が、α−またはβ−サブユニットの片方または両方の残基を修飾することによって作り出され、ホルモン構造上へのサブユニット内架橋による影響の可能性を最小にするので、従来技術の糖タンパク質ホルモン類似体以上の改善を提供する。
【0029】
そのように改良された糖タンパク質ホルモン類似体は、好ましくは、サブユニット内架橋を天然のジスルフィド結合に含まれる存在する(天然の)システインの2つの残基内に据えなければならず、相当する天然のサブユニットの一番外側のシステインの外側に据えてはならないと言ったような原則に、適合していることが、本発明者によって発見された。サブユニット内ジスルフィドを持つ従来技術の糖タンパク質ホルモン類似体はいずれも、この原則に適合していない。
【0030】
本発明のもう一つの態様は、α−サブユニットのシステインノットとβ−サブユニットのシステインノットの間にサブユニット内ジスルフィド架橋結合を持つ糖タンパク質ホルモン類似体を準備することである。このことは、糖タンパク質ホルモンの混乱を最小にし、そうすることによって、安定性が改善される一方で、相当する天然ホルモンが保持するゴナドトロピンレセプターを刺激する活性を実質上保持する事が可能になる。また、この特徴は、従来技術には開示または示唆されていない。
【0031】
本発明のさらなる態様は、α−サブユニットのループ3内に位置するシステイン残基とβ−サブユニットのループ2内に位置するシステインとの間、またはα−サブユニットのループ1とβ−サブユニットのループ2の間の、サブユニット内ジスルフィド架橋結合を持つ糖タンパク質ホルモン類似体を供給することである。また、このことは、糖タンパク質ホルモンの混乱を制限し、安定性が改善される一方で相当する天然ホルモンが保持するゴナドトロピンレセプターを刺激する活性の一部分を残すことを可能にする。また、この特徴も従来技術には開示または示唆されていない。
【0032】
医薬組成物として調製する場合、本発明の類似体は、不妊を治療するために、または受胎能を制限する必要性のある患者の受胎能を制限するために、用いることができる。本発明の類似体のヘテロダイマーは、液体の医薬調合物として輸送および貯蔵しても安定である。
【0033】
さらに、本発明は、糖タンパク質ホルモン類似体のα−およびβ−サブユニットをコードするヌクレオチド配列を含み、ベクターを発現することのできる、組換えDNA分子を提供する。また、そのような組換えDNA分子を形質転換した真核生物宿主細胞は、本発明の類似体を調製する方法に提供され、用いられる。
【0034】
発明の詳細な説明
本発明による糖タンパク質ホルモンの類似体は、CA2188508およびHanら(1996)に記載された一般の教示以上の改良を示す。サブユニット内ジスルフィド結合は、糖タンパク質ホルモンヘテロダイマーのα−サブユニットおよびβ−サブユニットを安定化する。改良された類似体は、ホルモンの三次元構造の混乱を具体的に減少させるように設計され、それによって、ダイマーがインビボで形成され、形成されたダイマーが天然のレセプターと親和性を持ち、そして、それへのアゴニスト活性を持つ可能性がより大きくなるであろう。
【0035】
本明細書中に用いられている用語「類似体」または「類似体類」は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト黄体形成ホルモン(hLH)、ヒト卵胞刺激ホルモン(hFSH)、ヒト甲状腺刺激ホルモン(hTSH)、およびその機能性ムテインから選択された糖タンパク質ホルモンであって、それらのα−およびβ−サブユニットのアミノ酸配列を修飾して、個々のサブユニット内に遊離のシステインを作り、サブユニット内ジスルフィド結合を形成し、それによって、ヘテロダイマーを安定化した、前記の糖タンパク質ホルモンを意味するつもりである。
【0036】
また、本明細書中に用いられている、用語「変異タンパク質(mutein)」または「変異タンパク質類(muteins)」は、糖タンパク質ホルモンhCG、hLH、hFSHおよびhTSHであって、修飾されてはいるがサブユニット内ジスルフィド結合を作り出すようには修飾されてはいず、そして、これらムテインが機能的であるとはっきり描かれていようが無かろうが、実質上(少なくとも80%)、それらの機能的生物学的活性、例えば、レセプター親和性およびホルモン効能、抗体認識、を残している、または、キメラ糖タンパク質ホルモンで起こるであろう、異なる糖タンパク質ホルモンに関するそれらの親和性または特異性を増加する。
【0037】
糖タンパク質ホルモンのムテインを生成するために、タンパク質を任意のこの技術分野で認知されている手段によって修飾することができる。便宜上、修飾は、「変異タンパク質」と呼ばれるであろう修飾されたタンパク質をコードする修飾遺伝子の適当な宿主細胞内で発現によって到達できる修飾と、「誘導体」と呼ばれるであろうそうではない修飾に分けられる。
【0038】
通常、誘導体は、最初にリード分子を合成して次いでそれが誘導体化されるが、また、誘導体を直接調製することもできる。しかしながら、用語「誘導体」では、リード分子の修飾によって誘導体を得ることが技術的に実行可能であることは、たとえそれが生成の好ましい方法でないとしても、疑いえない
タンパク質の修飾を、以下のように分類することができる;
有望−−−これらの修飾は、特定の用途へのタンパク質の有用性を強化する。
中立−−−これらの修飾は、特定の用途へのタンパク質の有用性を強化も減少もさせない。
非有望−−これらの修飾は、特定の用途へのタンパク質の有用性を減少させるが、必ずしも除外しない。
不活性化−これらの修飾は、特定の用途へのタンパク質の有用性を除外する。
寛容−−−これらの修飾は、有望、中立または非有望であるが、不活性化はしない。
【0039】
タンパク質は1つ以上の用途を持つことができるため、修飾は、一つの用途には有望であるが、第二の用途には非有望であり、第三の用途には中立であり、そして第四の用途には不活性である可能性もある。
【0040】
一般には、タンパク質の適合性への修飾の影響は、タンパク質のアミノ酸組成、分子量、または物理的性質のみに依存する影響よりむしろ、タンパク質の具体的構造に多かれ少なかれ特異的である用途について議論されるであろう。
【0041】
タンパク質は、一つ以上の以下の目的を含む、様々な理由で、修飾されるであろう;
・放射能標識、酵素標識、および蛍光標識した誘導体の例のように、分子をより検出しやすくする;
・熱、光、酸化剤、還元剤および酵素のような、特定の物理的、化学的、生物学的作因に関して、分子をより安定にする;
・例えば、その投与を容易にするために、分子を興味ある溶媒により溶けやすくする、または、例えば、その沈殿を容易にするために、またはその他の分子の捕獲へのその利用を可能にするために、溶けにくくする;
・例えば、アミノ酸側鎖上に保護基を置いて、分子が関与することのできる反応の形態を制限する、または、逆に、例えば、実質的なカップリング反応を促進するために分子上に反応基を置いて、可能な反応を拡大する;
・分子の免疫原を少なく(または多く)する;
・患者に投与した場合、分子が特定の器官または組織に残留する時間を増加(あるいは減少)させる、または特定の器官または組織内へのその到着を早める(または遅らせる);
・一つ以上のその生物学的または免疫学的活性を強化(あるいは減少)する、例えば、レセプターへのその親和性を増加あるいは減少させる、またはその特異性を変える;または
・前の活性を補う新しい活性を授ける(例えば、抗癌抗体に毒素をくっつける);または
・分子の望ましくない副作用を阻害する。
【0042】
タンパク質の大多数の残基は、ある程度、変異に寛容であることができる。変異は、一つまたは複数の置換、挿入または欠失の形を取ることができる、好ましくは、分子の末端に、または表面のループあるいはドメイン間の境界に、挿入または欠失を、指示する。
【0043】
末端への挿入に関しては、好ましい最大の言葉はないが、より適切には、「付加」または「融合」と呼ばれる。一つのタンパク質をその他のタンパク質に融合して発現を容易にすること、または、その構成成分が持つ生物学的活性を合わせ持つ融合タンパク質を提供することは、日常的である。たとえ、融合タンパク質それ自身が活性を欠落していても、融合タンパク質は前駆体として有用であり、切断されて活性タンパク質を遊離することができる。
【0044】
末端の欠失に関しては、より適切には「先端切除(truncation)」と呼ばれ、修飾の目的は重要である。その免疫学的特性にのみ興味がある場合、タンパク質を広範囲にわたって切除することは、日常的に行われている。タンパク質から5アミノ酸ほどの小ささのエピトープを取り出し、それを用いてそれ自身によるT細胞応答を引き出す、または、それ自身のコピーあるいは免疫原性キャリヤーに結合させてB細胞応答を引き出す、こともできる。保持されねばならない生物活性がある場合、先端切除上の制限は、より厳格になるであろう。
【0045】
好ましくは、置換ならびに任意の内部欠損および挿入を考慮すると、変異は、元来のタンパク質とその配列で、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、同一である。
【0046】
タンパク質は、以下の変異をより寛容に受け入れるであろう;
(a) 挿入または欠損よりむしろ置換であり、;
(b) 内部より末端、または、内部であればループあるいはドメイン間リンカーの、挿入または欠損であり、;
(c) 内部残基よりむしろ表面残基に影響を与え;
(d) 結合部位から遠い分子の部分に影響を与え;
(e) 一つのアミノ酸を、大きさ、チャージ、および/または疎水性の類似したもう一つのアミノ酸に置換し;そして
(f) 興味あるタンパク質が属する同族タンパク質のファミリー中で実質上変化に晒されている部位にある。機能性変異体を設計するために、このような要件を用いることができる。
【0047】
好ましくはフレームワーク残基について、より好ましくは全体の鎖について、修飾されたタンパク質の予想されたまたは実験により決定された3D構造が、もとのタンパク質の予想されたまたは実験により決定された3D構造からの平均平方根偏差(root-mean-squaredeviation)が、好ましくは5Åより小さく、より好ましくは3Åより小さく、さらにより好ましくは2Åより小さく、最も好ましくは1Åより小さい、主鎖(Cα−炭素)コンフォメーションを持つ。
【0048】
タンパク質の3−D構造の決定は、タンパク質を有用な目的で、または少なくとも修飾による不活性化を避けるように、修飾しようとするための重要なガイダンスを提供することができる。もし、全3−D構造が既知であれば、当業者は、どの残基が表面上にあり、そしてどの残基が内部にあるか、どの残基が外側に向いた側鎖を持つか、どの残基が共に密接にパックされているか、そしてどの残基がそうでないか、鎖はどこがフレキシブルか、そしてどこが束縛されているか、どの残基が二次構造内にあるか、鎖のフォールディングの結果としてどの残基が接近するか、そしてどの残基が水素結合および塩橋の形で相互作用することができるか、が分かる。
【0049】
表面残基の変異は、内部残基の変異より許容されやすい。後者の位置での変異は、タンパク質を変性させ、その結合活性のすべてに影響を与えることによって、タンパク質をより不安定にする可能性が大きい。表面残基の変異は、結合活性に全く影響を与ええないか、またはある活性には影響するが他の活性には影響を与えない。少なくとも、それらはタンパク質を変性させるとは考えられない。
【0050】
完全なタンパク質の3−D構造を決定する主な方法は、X−線結晶学的およびNMR分光法であり、そして高分解能X線回折データを得るための主なハードルは、結晶化の段階である。hCGの高分解能結晶構造は、2つの研究室から入手でき(Lapthornら、1994;Wuら、1994)、hLH、hFSHおよびhTSHのモデルとして提供される。
【0051】
より小さいタンパク質、好ましくは20kDaより小さい場合、核磁気共鳴(NMR)分光法でも、また、3D−構造を解明することができる。NMRを構造決定に用いることについては、McIntoshら(1987)を参照のこと。また、NMRは、より大きいタンパク質の構造についての部分情報を提供することもできる。特に興味あるより大きいタンパク質の領域を、組換えDNA技術または調節されたタンパク質分解のいずれかによって、分けて作りだし、次いで、NMRによって研究することができる。
【0052】
様々なスペクトルの変化は、あるアミノ酸の周りのチャージの変化を伴う。アミノ酸トリプトファン、チロシン、フェニルアラニンおよびヒスチジンがより極性の少ない環境にシフトするならば、λmaxおよびεが増加する。このように、残基が極性溶媒中のこれらのアミノ酸の一つについてより高く、次いで同溶媒中の遊離のアミノ酸についてより高いならば、残基は、非極性アミノ酸によって覆われ、周りを取り囲まれているはずである。また、タンパク質のスペクトルが溶媒極性内の変化に対して感受性であるならば、疑問のアミノ酸は、表面上にあるはずである。アミノ酸について、もう一つの例を示すと、滴定されうる基(例えば、チロシンのOH、ヒスチジンのイミダゾール、およびシステインのSH)がチャージしているならば、λmaxおよびεは常に増加する。それ故、具体的変化をpH変化と相互に関連させることによって、滴定されうる基が表面上にあるかまたは埋もれているかを推定することができる。深いクレバス内の残基は、異なる平均直径を持つ分子の溶媒で結果を比較することによって、それらが完全に表面上にあるか、または完全に埋もれているかを識別することができる。
【0053】
特定の残基の位置の決定に用いられる傍ら、これら分光法技術は、X線およびNMR分析の曖昧さを解決する手助けとなることができる。
アミノ酸−特異的化学親和性標識を用いて、実際に露出しいる残基を探し出すことができる。それらは表面上に出現していると考えられるため、最も有用な標識は、チャージした残基と反応するそれらであると考えられる。サンプル標識には、以下の物が含まれる;
アミノ酸 アフィニティ−ラベル
Asp、Glu ジアゾ化合物(非イオン化AA)
またはエポキシド(イオン化AA)
Lys 2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸、酢酸、
スクシン酸、マレイン酸およびシトラコン酸の無水物
Arg シクロヘキサンジオン、ヒドラジン
【0054】
次いで、標識および非標識のタンパク質を、別々に、ブロム化シアン、ペプシン、パパイン、キモトリプシン、トリプシンまたはヨードソ安息香酸のような、断片化試薬に、かける。標識したタンパク質の分解の結果えられるペプチドを、天然タンパク質から誘導されたそれらと、二次元電気泳動を用いて、比較する。移動度が変化したペプチドを配列分析し、修飾されたアミノ酸を決定する。
【0055】
Adachiら(1989)は、Arg−およびLys−特異的試薬を用いて、EC−SODの触媒活性およびヘパリン結合活性の両方についてこれらの残基の役割を調査した。彼らは、これらの残基を修飾すると、結果として、これらの活性が減少することを発見したが、彼らは、どの残基が修飾されたかを識別しようとはしなかった。
【0056】
また、表面残基は、光に晒した場合、反応性の高い中間体、例えばニトレンおよびカルベン、を形成する光アフィニティー標識によって同定することもできる。これらの種はC−H結合内に挿入でき、それ故、任意の接近しやすいアミノ酸と反応することができる。この理由により、光アフィニティー標識を用いて、膜の地形について研究した。いくつかのタンパク質は、膜の周辺に位置し、その他はそれになくてはならない。
【0057】
非特異的標識化試薬のもう一つの例は、トリチウムである。フォールディングされたタンパク質を、(水素をトリチル化した水で変換することによって)トリチル化し、変性させ、そしてフラグメント化し、フラグメントの配列を決定し、(放射活性のある)トリチウムの存在について試験した。
【0058】
また、このような標識化法はすべて、どの残基が、表面上にあることに加えて、
結合部位の部分であるかを決定するために、用いることもできる。遊離のタンパク質が標識された場合にえられる標識の配置を、複合タンパク質が標識された場合に得られる標識の配置と比較する。複合体では、結合相手が結合タンパク質の結合部位残基をふさぐので、結合部位残基は、遊離タンパク質内では標識され、複合タンパク質内では標識されないはずである。
【0059】
一般的に、類似した配列および機能を持つタンパク質族内では、表面残基は、内部残基より変化しやすい。表面残基は、タンパク質の全体コンフォメーションの維持に必要なその他の残基との相互作用に含まれないらしいので、このことはもっともらしい。
【0060】
タンパク質の表面残基を同定する最も確実な方法は、X線回折によってタンパク質の3−D構造を決定することである。不完全な3D構造でさえ、変異の設計に有用である。高い移動度を持つ残基は、平均の結晶学的熱因子がより高いことによって証明されるので、不安定化する変異を最も受けにくいそれらである。Alberら、1987、を参照のこと。
【0061】
多くのアミノ酸の置換を、逆影響を与えずに、表面位置に作り出すことができるが、内部位置での置換は、ひどく不安定化される傾向にある。相同タンパク質のファミリー内では、大多数の保存された残基は、機能性アミノ酸は別にして、埋もれた残基である。
【0062】
タンパク質フォールディングによるエネルギーの遊離、およびこれによるタンパク質安定性への主な一因は、内部に疎水性側鎖を埋め、それによって溶媒からそれらを保護することから来る。パッキング密度は、典型的に高い。一般的には、コア残基の容量を変える変異を許すタンパク質の能力は、コア残基全体の容量の純変化に、そして個々の残基の容量変化の大きさに、依存する。言い換えれば、一つのコア位置の容量の増加は、もう一つのコア位置の容量の減少を補うことができる。好ましくは、全コア残基容量の純変化は、10%より多くなく、より好ましくは、5%より多くない。Limら、1989;Limら、1992:を参照のこと。
【0063】
反対証拠がないので、内部残基と同定された残基はすべて、単一のコアの一部分であると仮定することができる。しかしながら、もしタンパク質がフォールディングされ、いくつかの別個のコアが形成される見込みがあるならば、上記の容量保存のルールは、個々のコアに分けて適用すべきである。
【0064】
埋没したタンパク質コアの構造は、もし存在するならば、埋没した、個々のアミノ酸の傾向のみでなく、タンパク質内でそのアミノ酸が発生する全体頻度にも依存する。最も一般的な埋没残基は、高い方から低い方への順番で、Val、Gly。Leu、Ala、IleおよびSerである。
【0065】
Limら(1992)は、タンパク質コア内の一つの疎水性アミノ酸(Leu、Val)を親水性アミノ酸(Asn、Gln)で置換すると、タンパク質の完全なフォールディングが阻害され、生物学的活性が破壊されると報告している。
【0066】
埋没したCys(−S−S−形)、Asp、Gly、His、ProおよびTrpは、70%より多くが、相同タンパク質内では変化していないように見える。それ故、これらの残基が興味あるタンパク質内の埋没する位置にあるならば、それらを変化させずに残すことが好ましい。多分、それらの保存は、以下のように説明可能である;Cys(ジスルフィド結合)、Asp(チャージしているが硬い側鎖)、Gly(鎖のフレキシビリティー)、His(生理学的pHでチャージした状態とチャージしていない状態の両方の状態がえられる)Pro(独特の鎖の幾何異性)、およびTrp(最も大きい側鎖)。
【0067】
その他の残基は、Metを除いて、埋没している場合、40−60%チャージしないまま残るようである(Metは26%のみがチャージされていないが、25%がLeuによって置換されているようである)。
【0068】
以下の埋没した残基の置換の可能性は、10%を越える。
Ala→Val、Glu→Gln、Phe→Leu、Ile→Leu、Ile→Val、
Lys→Arg、Leu→Ile、Leu→Val、Met→Leu、Met→Val、
Asn→Asp、Asn→Ser、Arg→Lys、Arg→Gln、Ser→Ala、
Thr→Ser、Val→Ile、Val→Leu、Tyr→Phe、Cys(-SH)→Ala、
さらなるこれらの置換は、5−10%の範囲の可能性を持つ。
【0069】
Ala→Ser、Asp→Asn、Glu→Arg、Glu→Val、Phe→Ile、
Phe→Val、Phe→Tyr、His→Val、Leu→Phe、Met→Ala、
Met→Ile、Gln→Glu、Gln→His、Gln→Met、Ser→Gly、
Ser→Thr、Thr→Val、Val→Ala、Trp→Phe、Tyr→Leu、
Cys(-SH)→Ser、
Overingtonら(1992)、表5を参照のこと。
【0070】
最も矛盾しない変換群は、(Arg、Lys)、(Leu、Ile、Met、Val、Phe)、および(Ser、Thr、Ala)であろう。しかしながら、AlaとValは、かなり無差別であるように見える。
【0071】
それ故、一般的には、変異し埋没した残基を少しでも除外することが好ましい。しかしながら、仮にそれらが変異するならば、コアの容量の全体的変化が制限されるべきであり、最も好ましくは、変異は、一つの残基を典型的な置換の可能性がゼロ、より好ましくは少なくとも5%を、最も好ましくは少なくとも10%、を越えるもう一つの残基で置換することに制限すべきである。埋没したCys(−S−S)、Asp、Gly、His、ProおよびTrpの変異は、避けるべきであり、その他の証拠によって正当化されることはない。最も安全なコア変異は、一つの疎水性アミノ酸をもう一つの疎水性アミノ酸に変換すること、およびArgをLysに変換すること(またはその逆)である。
【0072】
それにもかかわらず、内部残基の良識ある変異を、タンパク質安定性を改良するために用いることもできる。そのような変異は、天然構造と矛盾しないさらなる安定化相互作用(水素結合、イオンペア)を導入するか、または、より小さいアミノ酸をより大きいアミノ酸で、あるいは直線側鎖を分子鎖あるいは芳香族側鎖で置き換えることによって、近くにある相互作用する基の移動性を減少させることができる。Alberら(1987)を参照のこと。
【0073】
より重要なことは、上記した糖タンパク質ホルモン内の残基への修飾の概念に加えて、糖タンパク質ホルモンレセプターへの結合に晒されるかまたは晒されない、そしてホルモンレセプター相互作用、即ちレセプターアフィニティーおよびホルモン機能、を崩壊させない、糖タンパク質ホルモン(特にhCG)の領域についての考慮すべき量の入手可能な情報が存在する。安全に修飾することのできる残基および領域に関するそのような入手可能な情報は、「関連技術」の節の記述、または本明細書のその他の場所、に紹介されている。従って、ここに示されたような、そして、化学文献から入手できるような、豊富な構造および機能データから、糖タンパク質ホルモンの機能を崩壊させないそれらのアミノ酸配列の修飾を作り出すことは、当業者らには周知である。
【0074】
さらに、糖タンパク質ホルモンの機能的変異は、糖タンパク質ホルモンの一つ以上の残基または領域、即ちβ−サブユニットシートベルトを、例えばレセプター結合特異性を変化させることのできる、もう一つの糖タンパク質ホルモンからの相当する残基(類)または領域(類)によって置換する、キメラ糖タンパク質ホルモンを包含するつもりである。レセプター結合特異性等に影響する残基類および領域類のいくつかの例を、本明細書中で検討されている。
【0075】
さらに、糖タンパク質ホルモンの変異タンパク質は、α−およびβ−サブユニットを一本鎖として翻訳し、そのヘテロダイマーコンフォメーションに正しくフォールディングされる、一本鎖糖タンパク質ホルモンを包含するつもりである。
【0076】
ジスルフィド結合を形成する可能性を持つ残基を同定するために用いることのできる方法を、以下に概略する。以下の実施例に示されるように、すべてのジスルフィド結合が、hCGのヘテロダイマーを安定化するわけではなく、その類似体類がそれらの全生物学的可能性を保持しているわけでもない。しかしながら、システインノット間のサブユニット内ジスルフィド結合の導入は、ホルモンの可能性を崩壊させることなくタンパク質の安定性を増加させる能力を持つ。
【0077】
本発明のジスルフィド結合架橋糖タンパク質ホルモン類似体は、架橋して一つ以上のサブユニット内ジスルフィド結合を形成することのできる個々のサブユニット内に遊離のシステインを作り出すことによって、調製することができる。このことは、一つ以上のアミノ酸のコドンをシステインのコドンで置き換えることによって、または存在するジスルフィド結合のシステイン残基のコドンを任意のその他のアミノ酸のコドンで置き換えることによって、成し遂げることができる。しかしながら、そのような置換のすべてが、サブユニット内ジスルフィド結合を作り出すと期待されるわけではない。類似体設計で考慮すべき二つの因子を以下に説明する。
【0078】
1) 大多数の有益なジスルフィド架橋糖タンパク質ホルモン類似体は、hCG、hLH、hFSHまたはhTSHのそれと類似した構造を持つと考えられる。従って、ジスルフィドは、タンパク質の全体的コンフォーメーションをはなはだしく歪めてはならない。表1Bは、hCGのα−サブユニット内の選択されたアミノ酸残基のCαおよびCβ炭素原子(カラムの個々のペアの左側のカラム)とhCG β−サブユニットの一つ以上の近くの残基(カラムの個々のペアの右側のカラム)の間のおおよその距離を示しており、この表のデータから、タンパク質コンフォメーションに最少の破壊的影響しか持たないと考えられるジスルフィドの位置を、予想することができる。これらの値は、任意のいくつかの周知の広く公的に入手できる、少し名前を挙げると、Sybyl、Insight、RasmolおよびKinemageを含む、分子モデルパッケージによって、hCGの結晶構造から計算することができる。表1Bに示されたそれらを除く、hCGのα−サブユニット内のアミノ酸残基と、hCG β−サブユニットの一つ以上の近くの残基の間の距離は、公表されたhCG結晶構造のデータから、容易に計算することができる(Lapthornら、1994;Wuら、1994)。
【0079】
【表2】

【0080】
個々のβ−サブユニット残基と関連する括弧内に示した個々の対の値の左側の値は、そのβ−サブユニット残基のCα炭素原子と左側のカラムの相当するα−サブユニット残基との間の距離を示している。括弧内に示す個々のペアの値の右側の値は、これらの残基のCβ炭素原子の間の相当する距離を示している。原則として、システインでのこれらのペア残基の置換は、別の妨害システインがどちらかのサブユニットに存在しない限り、サブユニット内ジスルフィド結合の形成を許すであろう。システインのすべてのペアがサブユニット内ジスルフィドの形成に等しい可能性を持つわけではない。ヘテロダイマーコンフォメーションに最少の影響しか持たないと予想されるサブユニット内ジスルフィドの形成は、それらの成分であるシステインの側鎖原子の方向によって影響をうけるであろう。ジスルフィドの配置に望ましく好ましい位置は、Cβ炭素原子間の距離が、それらのCα炭素原子間の距離より小さい、アミノ酸ペアを含むであろう。サブユニット内ジスルフィド結合の配置の最も望ましく好ましい位置は、CαおよびCβの炭素間の距離が、天然発生ジスルフィドのそれらと類似している(即ち、それぞれ、約5.0−6.5Åおよび約3.5−4.2Å)、それらである。
【0081】
このように、Cα炭素原子間距離が4−8Åと遠く、そしてCβ炭素原子間距離が1−2Åの近さのサブユニット内システインペアを作り出す置換は、タンパク質構造全体に最少の影響しか持たないジスルフィドを形成する、および/または、2つ以上のサブユニット内架橋を促進する、最良の機会をもつと予想されるであろう。事実、実施例に示すように、本発明では、この規則による実際的方法を用いて、それらの免疫学的性質およびホルモン的性質の多くを保持しているいくつかのジスルフィド架橋hCG類似体を作り出すことに成功した。
【0082】
2) 大多数の活性なジスルフィド架橋糖タンパク質ホルモン類似体は、レセプター結合あるいはシグナル導入に必要でない部位に、および/またはホルモンの活性なコンフォメーションの安定化に必要でない部分に、架橋を含むと予想される。糖タンパク質ホルモン内には、そのような生物学的活性に必要でないことが分かっている残基が、多数存在する。これらには、システインノットのN−末端の大多数の残基(即ち、天然型α−サブユニット内の第二のシステインおよび天然型β−サブユニット内の第一のシステイン)が含まれる。例えば、このようなFSH β−サブユニットの残基(Asn1、Ser2)を、それらのhCGのカウンターパート(Ser1、Lys2、Glu3、Pro4、Leu5、Arg6、Pro7、Arg8)で置き換えた、高効能のhFSH類似体が調製された。このように、hCG α−サブユニットのGln5およびβ−サブユニットのArg8をシステインで置き換えることによって作り出された分子のこの領域内のジスルフィドは、ジスルフィド架橋ヘテロダイマーのLH活性を排除するは考えられない。同様に、hFSH α−サブユニットのGln5とβ−サブユニットのSer2をシステインで置き換えることによって作り出されたジスルフィドは、ジスルフィド架橋ヘテロダイマーのFSH活性を排除するとは考えられない。α−サブユニットのCys31をAlaまたはSerに変えることによって、そしてhCG β−サブユニットのArg6をCysで置き換えるか、またはFSH α−サブユニットのN−末端にCysを付加することによって、ジスルフィドをhCGまたはhFSHのα−およびβ−サブユニットのN−末端領域内に作ることができる、と期待される。このジスルフィドが、いずれかのホルモン類似体の活性を破壊するとは考えられない。
【0083】
hCGの結晶構造から、hCGのそれぞれのサブユニットはシステインノットを構成していることが分かった。このように、それぞれのサブユニットは、α1、α2、α3およびβ1、β2、β3と呼ばれる3つのループを含んでいる。さらに、β−サブユニットは、ヘテロダイマーを保護し、そしてその唯一のレセプターと結合する能力を持つコンフォメーションにそれを安定化する、α2を取り巻くシートベルトとして知られている20のさらなるアミノ酸を持つ。ルトロピン、ホリトロピンおよびチロトロピン内のシステインの位置から、これら3つの分子はすべて同様の全体のフォールディングパターンを持ち、そして、hCGの結晶構造はサブユニット内ジスルフィドを導入するための適当な案内となるであろうことが、示唆される。しかしながら、FSHおよびTSHの構造は決定されておらず、hCGのそれから推定できるのみである。個々のサブユニットのシステインノットの結晶構造は、それぞれが高い類似性を持つことを示している。これは、それらの3つの構成成分のジスルフィド結合によって強く束縛されていることによる。このように、システインノット内の残基およびこれに隣接する残基は、個々のホルモン内で類似したコンフォメーションを持っていると予想される。さらに、3種類のホルモンのすべてで、ループβ1およびβ3内の類似した位置に、システインが存在する。これらはhCG内でジスルフィドを形成し、全糖タンパク質ホルモン内でもジスルフィドを形成すると予想される。このようなジスルフィドおよびhCGのこのようなループ内の骨格原子内および間の多数の水素結合から、β1およびβ3のコンフォメーションは3種類のホルモンのすべてで非常に類似しているであろうと、思われる。また、ループα1およびα3は、いくつかの水素結合を含み、分子のこの部分もまた、3種類のホルモンのすべてで類似しているであろうと、考えられる。この見解は、遊離のα−サブユニットのNMR構造から、α1およびα3がヘテロダイマー内にない場合でも類似のコンフォメーションを持つことが分かる(DeBeerら、1996)、という所見によって支持される。3種類のホルモン全体の残りの部分もまた、hCGのそのコンフォーメーションと確かに類似してはいるが、それらは、ここで検討した分子の部分と同程度に、hCGの構造と密接に関連している訳ではないらしい。例えば、β2は、比較的少数の内部水素結合を含んでいるのみである、および/または、α1およびα3と接触している。β2はhCG内では強く束縛されているとは考えられないので、その構造がその他のホルモン内のそれと完全に同一であるであろうと確信する理由はどこにもない。事実、TSH内のループβ2は、hCGまたはhFSH内のそれより、2アミノ酸残基分大きい。α2のN−およびC−末端は、過剰な水素結合接触にかかわっており、α2のC−末端の一部分もまたβ1と接触している。このように、α2のこのような部分は、大多数のホルモンで類似しているであろう。しかしながら、α2の中央部分は、3種類のホルモンで充分に保持されているとは言えないタンパク質領域である、シートベルトとのみ接触している。α−サブユニットのNMR構造は、α2がひどく無秩序であることを示したが、この所見から、hCGでのホルモンのこの部分は、β1、β3およびシートベルトの間でサンドイッチ状態にあるため、ヘテロダイマー状態内でのみ良く秩序が保たれた構造を持つと考えられる。シートベルト内の差異から、特にシステインノットの近くに位置しないそれらの部分である、α2のコンフォメーションが変化すると考えられるであろう。
【0084】
ホルモン構造へのシートベルトの影響への見識は、ルトロピンおよびホリトロピンレセプターと結合する能力を持つhCG類似体を研究するための免疫プローブを用いて、本発明者によって得られた。これらのデータは、シートベルトの組成がホルモンのコンフォメーションを変えることができることを、示唆している。類似したデータもまた、ホルモンのコンフォメーションがレセプターによって影響を受けることを、示唆している。例えば、結合部位が部分的に決定されているモノクローナル抗体(Moyleら、1990;Moyleら、1995)を用いて、二価性hCG類似体(CF101−109)のコンフォメーションを、それが遊離している場合、および、それがLHおよびFSHレセプターに結合している場合について、研究した。CF101−109は、hCGシートベルト残基101−109をhFSHのシートベルト残基95−103で置き換えることによって、調製された(Moyleら、1994)。モノクローナル抗体によって認識されるCF101−109の能力は、シートベルト内のFSH残基の存在が2つのサブユニット間の相互作用を変化させることを、示した。従って、hFSHではなくhCGのα−サブユニットのN−末端の残基を含む配座エピトープに対する抗体であるA407は、そのエピトープが変異の部位から遠い場合でさえ、CF101−107へのアフィニティーが著しく減少した(表1C)。ホルモン構造へのレセプターの影響は、それがLHレセプターと結合した場合にはA407がCF101−107を認識し、FSHレセプターと結合した場合には認識しない、という事実によって、認められた(表1D)。その他の抗体で、その全体がα1および/あるいはα2内に、またはβ1および/あるいはβ3内に位置するエピトープを認識する前記抗体は、それがレセプターと結びついた場合でさえ、CF101−109を認識した。
【0085】
ひとまとめにして考えると、このような知見から、ホルモン内のサブユニットの位置は同一ではなく、それらのレセプターとの相互作用によって影響を受けることが、示唆される。それ故、本発明者は、hCGのシステイン構造から得られた可能性のあるシステイン置換の相対位置および方向を考慮することに加えて、また、hCGの結晶構造がホリトロピンおよびチロトロピンの構造および/またはホルモンレセプター複合体内のホルモンのコンフォメーションを示すであろうと言う、可能性を考慮しなくてはならない。hCGのそれらと最も同一であると考えられるホルモンの部分、およびレセプター相互作用の間に最も変わらないと考えられるホルモンの部分には、システインノット内の残基の内または近くのそれらが含まれる。
【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
システインノット間の領域は、ジスルフィド結合を工学的に作成する最も魅力ある部位の一つであり、サブユニット内ジスルフィド結合の好ましい部位でもある。個々のサブユニットのシステインノットは、3つのジスルフィドによって安定化され、それを分子の最も固定した部分の一つにする。本発明者の研究室から得られた結果は、hCG β−サブユニットの残基Tyr37を変化しても、ホルモン活性への影響は比較的少ないことを、示している。従って、本発明者は、この部位のシステインの存在がホルモン活性を変えるとは思わない。カナダ特許CA2188508には、α−およびβ−サブユニットのシステインノット間のサブユニット内ジスルフィドがゴナドトロピンヘテロダイマーを安定化し、ホルモン活性を保持しているであろうとは、開示されていない。本実施例に示したように、これを成し遂げることのできる一つの方法は、α−サブユニット残基Cys7をAlaまたはSerで置換してCys7−Cys31サブユニット内ジスルフィドを破壊すること、およびhCG β−サブユニットTyr37をCysで置換することである。生成したhCGの架橋類似体は、高いLH活性を持っていた。同様に、もう一つの非制限の実施例では、hCG β−サブユニットのアミノ酸残基101−114をそれらのhFSHの同等物(即ち、β−サブユニット残基95−108)で置き換えたhCG/hFSHキメラである、CFC101−114架橋類似体を調製することができた。CFC101−114は、LHおよびFSHレセプターの両方と結合し、その両方を活性化する。また、ジスルフィド架橋した類似体も、LHおよびFSHレセプターの両方と結合し、そして活性化する能力を持っていた。後者の知見は、このジスルフィドがFSHレセプター活性を妨げないことを示しており、このことは、また、hFSHの類似のジスルフィドもそのホルモン活性を破壊しないであろうという可能性を高くする。ジスルフィド架橋されたhFSHの調製は、Cys7をAlaに変換したα−サブユニットcDNAと、Tyr31をCysに変換したhFSH β−サブユニットcDNAを同時発現させることによって成し遂げられた。また、システインノット間のジスルフィド結合も、好まし実施態様として、αループ2とβシートベルトの間、またはα−N−末端とβ−N−末端との間の様な、どこかもう一つのサブユニット内ジスルフィド結合と共に起こすことができる。さらに、α−サブユニットとβ−サブユニットのCysノット間に形成されたジスルフィド結合は、PEG化(PEGylation)に有用に用いることのできるN−末端近くの残基、即ち、αCys7Ser、をフリーアップするであろう。
【0089】
また、α−サブユニットとβ−サブユニットのシステインノット間に位置するサブユニット内ジスルフィド結合も、天然のジスルフィド結合の内に含まれ、大部分のN−末端またはC−末端の天然型システイン(関連する天然型サブユニットの最も外側のシステインユニット)の外側でない、実在する(天然型)システイン(即ちN−末端またはC−末端)の2つの残基内での両方の架橋位置を置き換えることによる、サブユニット内架橋によるホルモン構造への影響の可能性を最少にする一般法則に適合する。カナダ特許CA2188508に開示され教授されたサブユニット内ジスルフィドは、いずれもこの一般法則に適合しない。
【0090】
また、上記の一般法則に従わないα−サブユニットのループ1または3とβ−サブユニットのループ2の間のジスルフィドによって架橋されたホルモン類似体も、ホスモン活性を保持していると予想される。これらの領域は、アミノ酸置換による従順性が高い。従って、ヒトhCGまたはhFSHのα−サブユニットをウシのα−サブユニットで置き換えても、ウシとヒトのα−サブユニットがこの領域内で有意に異なっている場合でさえ、通常、ホルモン活性を排除しない。同様に、β−サブユニットループ2内のhFSH残基とhCG残基の大規模置換はいずれの場合も、どちらのホルモン活性をも除外しなかった。従って、この領域内のジスルフィドが、ルトロピンまたはホリトロピンのいずれの生物学的活性をも崩壊させるとは考えられない。これらのジスルフィドには、α−サブユニットのGln27およびhCGあるいはhLHのβ−サブユニットのVal44またはhFSHのβ−サブユニットのVal38をCysに変換することによって作り出されるそれらが含まれる。また、それらには、α−サブユニットのVal76およびhCGのβ−サブユニットのVal44またはhFSH β−サブユニットのVal38をCysに変換することによって調製されたジスルフィドが含まれる。実質的活性を保持すると考えられるもう一つのサブユニット内ジスルフィド架橋類似体は、α−サブユニット残基Lys75およびhCGあるいはhLH β−サブユニット残基Gln46またはhFSH β−サブユニット残基Lys40をCysに変換させた類似体である。しかしながら、後者の類似体は、hCGまたはhFSHのいずれかより正のチャージが少なく、従って、そのLHまたはFSHの全体活性は低いであろう。さらに、ルトロピンおよびホリトロピンのその他の領域内へのサブユニット内ジスルフィドの挿入も可能であろう。このようなジスルフィドのいくつかには、β−サブユニットシートベルト(即ちhCG β−サブユニットAsp99のCysによる置換によって作り出される)およびα−サブユニットループ2(即ちα−サブユニットLys51のCysでの置換により作り出される)内の残基が含まれる。このジスルフィドは、hCGのLH活性ならびに二機能性類似体CFC101−104のLHおよびFSH活性を、有意に減少させた。ジスルフィド結合を作り出すことを期待してシステインに変異させることのできる、hLH、hFSHおよびhTSH内残基の位置は、表2−4に示したように、これらのタンパク質内でのα−およびβ−サブユニット残基の「等価」な位置から決定することができる。
【0091】
【表5】

【0092】
表2の情報を用いて、ヒトの個々のホルモンβ−サブユニット内で「等価」の位置を占める残基を予測することができる。結晶構造は、hCGのみ入手できる。しかしながら、すべての糖タンパク質ホルモン、特にサブユニット内ジスルフィド、のアミノ酸配列の類似性が高いことから、すべてのホルモンは良く似た形を持つであろうと予測される。また、すべてのヘテロダイマーのコンフォメーション全体がhCGのそれと良く似ているという結論も、キメラを誘導するために用いられたそれらの始原領域内に認められるエピトープを保持しているhCG/hFSH、hCG/hLHおよびhCG/hTSHキメラを調製することができるという所見によって、支持される。このように、この表に定義されたような等価な残基の置換は、作成され特徴を調べられたそれらと類似した性質を持つサブユニット内ジスルフィド結合を導くであろう、と予想される。「等価」な位置を、縦軸に定義する。従って、hFSH β−サブユニット内でのシステイン3は、hCG β−サブユニットのシステイン9と等価である。
【0093】
【表6】

【0094】
表3内の情報を用いると、個々のホルモンのα−サブユニット内での「等価」な位置を占める残基を予測することが出来る。hCGの結晶構造は、報告されている唯一の結晶構造である。すべての糖タンパク質ホルモン、特にサブユニット内ジスルフィド、のアミノ酸配列の類似性の高さにより、すべての種のホルモンは良く似た形を持つであろうと予測される。また、この考えは、キメラで認められるそれらの始原領域内に認められるエピトープを保持しているヒト/ウシα−サブユニットキメラを調製することができるという知見によって指示される。従って、この表に定義されたような等価な残基の置換は、作成されその特徴を調べられたそれらと良く似た性質を持つサブユニット内ジスルフィド結合を導くであろうと予想される。
【0095】
【表7】

【0096】
表4の情報を用いると、個々の脊椎動物のβ−サブユニット内で「等価」な位置を示す残基を予測することができる。
本発明の実施例では、LH、TSHおよび/またはTSHレセプターに結合する能力を持つ糖タンパク質ホルモンおよびその類似体内にジスルフィド結合を導入する方法を教示する。サブユニット内ジスルフィド結合が存在すると、有意のFSHおよびTSH活性を持つ、hCGおよびhCG類似体の安定性が強化された。従って、サブユニット内ジスルフィドの付加は、また、このホルモン族内のその他の構成ホルモンおよび関連する類似体を安定化する、と予測されるであろう。レセプター結合またはレセプター結合特異性に含まれないホルモン部位に位置する場合、そのジスルフィドは、ホルモン機能を妨げない。事実、いくつかのサブユニット内ジスルフィドは、ホルモン類似体の機能を強化する。一つを除いて(Blitheら、1991)、ホルモンサブユニットは、ほとんど内分泌活性を持たない。このように、ヘテロダイマーを安定化する方法は、これらのホルモンの生物活性を延長すると考えられ、それらの治療効果を強化すると予想させる。
【0097】
本発明によるヘテロダイマー糖タンパク質ホルモンの安定性を改善する方法は、それぞれのサブユニット内に遊離のシステインを作り出すために置換することのできる残基を同定することが含まれ、この遊離のシステインは、ホルモンタンパク質の全体的コンフォメーションを歪めることなく、ヘテロダイマーの安定性を改善するであろうサブユニット内ジスルフィド結合を形成する可能性が高い。個々のサブユニット内に遊離システインを作り出すための残基の置換は、α−およびβ−サブユニットのヌクレオチド配列内の相当するコドンを置換することによって遺伝子レベルで成し遂げることができる。プロモーター配列と機能するように連結されたα−およびβ−サブユニットをコードする修飾されたヌクレオチド配列を持つ組換えDNA分子で形質転換され、修飾された糖タンパク質ホルモンを発現する能力を持つ、宿主細胞を培養し、そして本発明では類似体と呼ばれる、修飾された糖タンパク質ホルモンを発現させる。次に、発現した糖タンパク質ホルモン類似体を回収し、そして糖タンパク質ホルモン精製技術として、この技術分野で周知の技術に従って、精製する。
【0098】
遺伝子レベルで、本発明の糖タンパク質ホルモン類似体は、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publications and Wiley Interscience(New York,1987−1997)、第8章、クローン化DNAの変異誘発、に記載されているような、この技術分野で周知の任意の適当な部位特異的変異誘発によって、作り出される。 このCurrent Protocols in Molecular Biologyの出版物は、ここに参照として採用されるが、組換えDNA技術の一般原則について述べた標準参考書の一例である。
【0099】
組換えDNA分子内に含まれるような糖タンパク質ホルモン類似体のα−およびβ−サブユニットをコードするヌクレオチド配列を、宿主細胞内で類似体を発現する能力を持つ適当な発現ベクター内に挿入することができる。糖タンパク質ホルモン類似体を発現する能力を持たせるために、発現ベクターは、糖タンパク質ホルモン類似体の遺伝子発現および生成を許すような方法で、サブユニットをコードするDNAに連結した転写および翻訳調節情報を含む特異的ヌクレオチド配列を持たねばならない。第一に、遺伝子が転写されるために、それは、RNAポリメラーゼによって認識されうるプロモーターによって先導されなくてはならず、それにポリメラーゼが結合し、転写プロセスを開始する。
【0100】
DNAは、それが転写および翻訳調節情報を含むヌクレオチド配列を含むならば、ポリペプチドを「発現する能力がある」と言われ、そのような配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「機能するように連結」されている。機能しうる連結とは、制御DNA配列および発現することが求められるDNA配列を、遺伝子発現を可能にするような方法で結合する、連結である。一般に、遺伝子発現に必要な調節領域には、RNAに転写した場合に、タンパク質合成開始のシグナルとなる、プロモーター領域ならびにDNA配列が含まれる。哺乳動物および昆虫の細胞系での高レベルタンパク質発現に共通に用いられる様々なプロモーターが存在する。
【0101】
本発明の類似体のα−およびβ−サブユニットをコードするヌクレオチド配列を含む組換えDNA分子、および機能するように連結させた転写および翻訳調節シグナルを、宿主細胞内でサブユニットを一時的に発現するか、または宿主細胞染色体内に所望の遺伝子配列を組み込む能力を持つかのいずれかの、ベクターまたはベクター類内に挿入することが出来る。染色体内に導入されたDNAを安定に組み込んだ細胞を選択する能力を持たせるために、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能にする一つ以上のマーカーが用いられる。マーカーは、独立栄養宿主に、生命破壊(biocide) 耐性、例えば抗生物質に対する耐性、または銅のような重金属、またはその類似物を、原栄養体のために提供することができる。選択可能マーカー遺伝子は、発現されるDNA遺伝子配列と直接連結するか、または同時トランスフェクションによって同一細胞内に導入することができる。また、さらなる要素がmRNAの最適な合成に必要とされるであろう。これらの要素は、スプライスシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサーおよび終止シグナル、を含むことができる。そのような要素を採用するcDNA発現ベクターには、Okayama(1983)に記載されたそれらが含まれる。
【0102】
真核生物宿主細胞内にトランスフェクトされた場合に、所望のタンパク質を高レベルで一時的に発現する能力を持つ発現ベクターは、この技術分野では周知であり、通常、公的に入手できるか、または分子生物供給者から市販されている(例えば、プラスミドpcDMBはInbitrogen,San Diego,CAから入手でき;pSVLはPharmacia,Piscataway,NJから入手でき;pCIはPromega,Madison,WIから入手できる;等)。ひとたび、構築物を含むベクターまたはDNA配列を発現のために調製したならば、発現ベクターを適当な宿主細胞内に、形質転換、トランスフェクション、リポフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション等のような、任意の様々な適当な手段によって、導入することができる。
【0103】
真核生物宿主細胞は、正しいフォールディング、正しいジスルフィド結合形成、更には、正しい部位でのグリコシル化を含めたタンパク質分子への翻訳後修飾を与えるという理由から、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞、サル(COS細胞)、マウスおよびチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞でありうる。しかしながら、昆虫細胞、例えば、バキュロウイルスは、ポリペプチドを過剰生産することができるし、グリコシル化を含めた翻訳後ペプチド修飾も行なうことができる。COS、CHOおよび昆虫細胞での異所性発現は、当該技術分野において周知であり、Ausubel ら(1987-1997),項目16.9-16.14 で与えられたような、バキュロウイルスベクターを用いた昆虫細胞でのおよび哺乳動物細胞でのタンパク質の発現に関するプロトコルを適当に用いることができる。糖タンパク質ホルモン類似体のα−およびβ−サブユニットを発現する形質転換された宿主細胞を培養して、その類似体を生産することができる。
【0104】
糖タンパク質ホルモン類似体のα−およびβ−サブユニットを発現する形質転換された宿主細胞を培養して、その糖タンパク質ホルモン類似体を生産させた後、これを、糖タンパク質ホルモンについて一般的なおよび周知の精製技術によって回収し且つ精製することができる。生産される糖タンパク質ホルモンの量は、実施例1で記載のサンドイッチ免疫検定法などの方法によって定量することができる。更に、実施例1で記載の放射性リガンドレセプターおよびシグナル伝達(レセプターに結合してサイクリックAMP蓄積応答を引起こす能力を測定する)検定のような、本発明の糖タンパク質ホルモン類似体のレセプター親和性および生物学的活性を測定する検定は、過度の実験を伴うことなく容易に行なうことができる。
【0105】
本発明による糖タンパク質ホルモン類似体には、いくつかの治療的用途がある。hFSHの類似体は、雌の排卵誘発のための製剤中で、卵胞を発育させるのに用いられるはずである。hLHおよびhCGの類似体は、発育を開始した卵胞を誘導するのに用いられるはずである。これら類似体は、雄の精巣機能を誘導するのにも用いられるはずである。更に、本発明による糖タンパク質ホルモン類似体は、受胎能を制限する抗血清を生じさせる免疫原、例えば、避妊ワクチンとして用いることもできる。逆に、それら糖タンパク質ホルモン類似体へのアンタゴニスト類似体または抗体は、多嚢胞性卵巣疾患のある女性で過剰のhLHレベルが認められる場合などに、受胎能を促進するのに用いることもできると考えられる。
【0106】
本発明による類似体の場合のような、向上した安定性を有する糖タンパク質ホルモン類似体は、生物学的活性および機能、例えば、糖タンパク質ホルモンレセプターへの親和性およびホルモン効力も維持していて、極めて有用である。本発明による類似体は、特定の治療目的に有用であるのみならず、これら類似体は、液剤中でのおよび高温への機能的安定性、尿素などのタンパク質変性剤による変性に対する耐性等の優れた性質も与える。これら安定性により、本発明の類似体は、向上した in vivo 半減期を有すると考えられる。
【0107】
本発明の糖タンパク質ホルモン類似体は、それらを必要としている患者に、その予定された目的を達成するいずれかの手段によって投与することができる。例えば、投与は、皮下、静脈内、皮内、筋内、腹腔内、鼻腔内が含まれるがこれらに制限されるわけではない多数の異なった非経口経路、経口、経皮または口腔経路によることができる。非経口投与は、巨丸剤注入でありうるしまたは経時の緩やかな灌流によることができる。
【0108】
アミロイドまたはアミロイド様沈渣に関係した状態を予防する、抑制するまたは治療する典型的な計画は、数か月間〜数年間まで含めた一定期間にわたる1回または多数回量での有効量の投与を含む。
【0109】
投与される用量は、受容者の年齢、性別、健康状態および体重、もしあれば、同時治療の種類、治療の頻度、および所望の効果の性状に依るであろうことは理解される。それぞれの治療に必要な全用量を、多数回量でまたは1回量で投与してよい。“有効量”とは、予定された目的を達成できる糖タンパク質ホルモン類似体の濃度を意味する。このような濃度は、当業者が常套法で決定することができる。
【0110】
非経口投与用製剤には、滅菌水性または非水性の液剤、懸濁剤および乳剤が含まれ、これは、当該技術分野において知られている添加剤または賦形剤を含有してよい。
本発明の糖タンパク質ホルモン類似体を含む医薬組成物には、それら類似体が、その予定された目的を達成する有効な量で含有されている組成物全てが含まれる。更に、それら医薬組成物は、薬学的に用いることができる製剤中に、活性化合物の処理を容易にする賦形剤および添加剤を含む適当な薬学的に許容しうる担体を含有してよい。適当な薬学的に許容しうるビヒクルは、当該技術分野において周知であり、例えば、この分野で標準的な参考書である、Alfonso Gennaro 監修,Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.(イーストン,PA,1990年)で記載されている。薬学的に許容しうるビヒクルは、糖タンパク質ホルモン類似体の投与方式、溶解度および安定性によって常套法で選択することができる。例えば、静脈内投与用製剤には、緩衝剤、希釈剤および他の適当な添加剤も含有しうる滅菌水性液剤が含まれうる。
【0111】
非経口投与に適した製剤には、水溶性の形の活性化合物、例えば、水溶性塩の水性液剤が含まれる。更に、適当な油状注射用懸濁剤としての活性化合物の懸濁液を投与することができる。適当な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドか含まれる。その懸濁液の粘度を増加させる物質を含有しうる水性注射用懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む。場合により、その懸濁剤は、安定化剤も含有してよい。
【0112】
ここに、本発明を大まかに記載してきたが、これは、本発明を説明するものとして与えられ且つ制限するものではない次の実施例を参照することによって一層容易に理解されるであろう。
【0113】
実施例1:システインノット間のサブユニット内ジスルフィド結合によって安定化したhCG:hCG(α31−β37)
ジスルフィド結合によるサブユニット内架橋の判定基準によれば、表1Bのデータは、フリーのシステインがα−サブユニット残基31に生じるならば、そしてβ−サブユニットTyr37がシステインで置き換えられるならば、システインノット間のサブユニット内ジスルフィド結合によって安定化したhCGの類似体を製造することは可能であろうということを示唆した。これは、Tyr37がシステインで置き換えられたhCG β−サブユニットの類似体、およびCys7がSerで置き換えられたヒトα−サブユニットの類似体を製造することによって行なわれた。この後者の変化は、アミノ酸Cys7とCys31との間のα−サブユニットで通常見出されるジスルフィドを破壊して、残基37に導入されたβ−サブユニットシステインとのジスルフィド結合を形成するのに利用可能な残基31にフリーのα−サブユニットシステインを残した。これらサブユニット構築物それぞれが、培養された哺乳動物細胞中で発現された場合、残基31のα−サブユニットおよび残基37のβ−サブユニットのシステインは、サブユニット内ジスルフィド結合を形成した。
【0114】
そのジスルフィド結合の形成は、ヘテロダイマーの安定性を劇的に増加させた。hCGとは異なり、架橋したヘテロダイマーは、尿素の存在下または低pHで解離しなかった。しかしながら、大部分のモノクローナル抗体によって認識され、LHレセプターに結合し、そしてシグナル伝達を引起こすhCG(α31−β37)の能力は、hCGの能力と同様であった。このことにより、ジスルフィド結合の存在はホルモン機能を破壊しなかったことが示された。
【0115】
α−サブユニット中のCys7のコドンのセリンのコドンへの変更は、Campbell ら(1991)で記載されているおよびhCG α−サブユニットcDNAを含有する発現ベクター(pKBM−hCGα)で行なわれた。そのpKBMベクターは、ポリリンカーがXhoI部位を含有するもので置き換えられているpUCベクター(Yanisch-Perron ら,1985年)の誘導体であり、これが、pKMBと発現ベクターpSVL(Pharmacia,ピスカタウェイ,NJ)との間にcDNAインサートを転移させた。たった一つのα−サブユニット遺伝子が存在することから、hCG、hLH、hFSHおよびhTSHのα−サブユニットのcDNAは同じコドンを含有し、この発現ベクターを、以後、pKBM−αと称する。図40で示されるように、pKBM−αは、α−サブユニットコーディング配列の5′に独特のXhoIエンドヌクレアーゼ制限部位およびアミノ酸9−11のコドンの近くに独特のBsmIエンドヌクレアーゼ制限部位を含有する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー(オリゴ425およびオリゴ847,表5)は、この部分を保留し(bracket)、Cys7のコドンをSerに変更し、そして変異構築物の識別を容易にするのに用いうる新規エントヌクレアーゼ制限部位(BspEI)を生じるように設計された。
【0116】
【表8】

【0117】
これらプライマーおよびpSVL−hCGα(Campbell ら,1991年)を鋳型として用いたPCRの生産物を、当該技術分野において周知の手順(Maniatis ら,1989年)を用いて、XhoIおよびBsmIで消化し、pKBM−αの独特のXhoI−BsmI部位中にサブクローン化した。
【0118】
BspEIエンドヌクレアーゼ制限部位を含有する組換え体プラスミドの配列は、PCRに基づく変異誘発によって変更された部分で、ジデオキシ法(Maniatis ら,1989年)によって決定した。このベクター(pKBM−αC7S)は、図3で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしていた。修飾α−サブユニットcDNAを、pKBMベクターからXhoIおよびBamHI消化によって取出し、pSVLのXhoI−BamHI部位中にサブクローン化してpSVL−αC7Sを生じたが、この手順はαC7SをCOS−7細胞中で発現させた。それらコーディング配列を、このおよび関連の構築物のサブクローニングを容易にするように修飾された、Promega(マディソン,WI)から入手したもう一つの発現ベクター(pCI)のXhoI−BamHI部位中にも挿入した。pCIの修飾は、そのBamHI部位を取出し、そのポリリンカー(すなわち、制限部位NheI−NotI)を、次のエンドヌクレアーゼ制限部位:NheI−XhoI−EcoRI−MluI−KpnI−XbaI−SalI−BamHIを有する新規ポリリンカーで置き換えることを行なった。これは、pKBMかまたはpSVLから所望のコーディング領域を含有するXhoI−BamHIフラグメントを取出し、それを、XhoIおよびBamHIで消化されたpCIに連結することによって、pKBMおよびpSVLに基づくベクターからの構築物をpCIに基づくベクター中にサブクローン化することを可能にした。pCIに基づくベクターの更に別の意味は、本明細書中において、上記の修飾pCIベクターを意味するものである。pSVLからpCIへのα−サブユニットコーディング領域の転移は、pCI−αおよびpCI−αC7Sをそれぞれ生じ、培養された細胞中での発現を促進するように行なわれた。
【0119】
Cys7とCys31との間にジスルフィドを形成する能力を欠いたα−サブユニット類似体を製造するのに、システインの代わりにセリンの置換を用いる必要はない。アラニンは、この結合を破壊するのに用いられてきたが(Furuhashi ら,1994年)、Cys7を任意の他のアミノ酸で置き換えることは、Cys7−Cys31ジスルフィド結合も破壊するであろうと考えられる。
【0120】
Tyr37のコドンをCysのコドンで置き換えるためのhCG β−サブユニットコーディング配列の修飾は、pKBM−hCGβ′(Campbell ら,1991年)と称されるpUCに基づくベクター中に包含されたhCG β−サブユニットcDNA中のカセット変異誘発によって行なわれた。この構築物は、アミノ酸35−36および45−46のコドンに独特のNgoMIおよびPstI制限部位を含有する。変異体コドンは、NgoMI部位とPstI部位との間のDNAの短片を、オリゴ845およびオリゴ874(表5)をアニーリングすることによって生じたカセットで置き換えることによって導入された。これは、変異を含有したプラスミドの識別を容易にするのに用いうるPmlIエンドヌクレアーゼ制限部位も導入した。
【0121】
このカセットのpKBM−hCGβ′(Campbell ら,1991年)中へのサブクローニングは、当該技術分野において周知の標準法(Maniatis ら,1989年)によって行なわれ、変異した部分の所望の配列は、ジデオキシ配列決定法によって確認された。pKBMは発現ベクターではないので、それをpSVL中にサブクローン化して、このβ−サブユニット構築物が哺乳動物細胞中で発現されうるようにした。これは、pKBM−hCGβ′のXhoIおよびBamHIでの消化によって得られた小片を用い、そしてそれを、pSVLのXhoIおよびBamHIでの消化後に残っている大きいフラグメントと連結して、pSVL−hCGβ′Y37Cと称される発現ベクターを生じることによって行なわれた。pSVL−hCGβ′およびpSVL−hCGβ′Y37Cによってコードされたアミノ酸を図4で示す。これらは、XhoIおよびBamHI部位で修飾pCIベクター中にもサブクローン化された。
【0122】
これらコーディング配列の製造は、商業的に入手可能な器具を用いる標準的なDNA合成法によっても行なうことができると考えられる。これらの方法を用いて、上記のように(Campbell ら,1992年)互いに連結することができる長いオリゴヌクレオチドを製造することができる。配列をコードしているDNAも、合成オリゴヌクレオチドの構築および合成cDNA遺伝子の製造を専門とするいくつかの会社の一つから購入しうることは注目されるべきである。これらには、Midland Certified Reagent Company,ミッドランド,テキサスおよび Genosys Biotechnologies,Inc.,ザ・ウッドランズ,テキサスが含まれる。これらサブユニットの発現は、pSVL(Pharmacia,ピスカタウェイ,NJ)またはpCI(Promega,マディソン,WI)などのいくつかの商業的に入手可能なベクターのいずれかを用い、記載された(Campbell ら,1991年)および当該技術分野において一般的である方法と類似した方法を用いて、培養された哺乳動物細胞(すなわち、COS−7細胞)中で行なうこともできる。
【0123】
COS−7細胞中でのpSVL−αおよびpSVL−hCGβ′、pSVL−αC7SおよびpSVL−hCGβ′Y37C、pCI−αおよびpCI−hCGβ′、およびpCI−αC7SおよびpCI−hCGβ′Y37Cの同時発現は、当該技術分野において周知であり且つ記載されている(Campbell ら,1991年)常套法によって行なわれた。COS−7細胞中へのトランスフェクションは、記載されたような標準的なリン酸カルシウム沈降法(Kriegler, 1990年)によって行なわれた。COS−7細胞は、ATCC,ロックビル,MDから入手した。トランスフェクションの翌日、細胞培地を除去し、その培地を血清不含DMEM培地と交換した。それら細胞を更に3日間インキュベートして、分泌生産物を培地中に蓄積させた。次に、その培地を遠心分離して、細胞破片および他の沈殿物を除去し、その上澄みを透析バッグに移し、そのバッグを吸湿性粉末床(Aquacide,Calbiochem,ラ・ホヤ,CA)の上に置くことによって高分子量成分を濃縮した。
【0124】
培地中に分泌されたhCGおよび架橋hCGは、捕獲および検出それぞれのための抗体A113および125I−B105、および標準として用いられる尿から精製されたhCGを用いるサンドイッチ免疫検定(Moyle ら,1982年)を用いて定量した。この検定では、抗hCG α−サブユニット抗体A113(0.05ml中に1μg)を、微量滴定プレートの表面に37℃で1時間吸着させた。非吸着抗体を除去し、それぞれのウェルを、0.9%NaClおよびウシ血清アルブミン1mg/mlを含有した溶液と一緒にインキュベートして、残っているタンパク質吸着部位をブロックした。3日間トランスフェクションされた細胞からの培地のアリコート(0.05ml)をそれらウェルに加え、hCGまたは架橋hCG類似体を、吸着した抗体に37℃で1時間結合させた。結合していないホルモンまたはホルモン類似体を除去し、それらウェルを0.9%NaCl溶液で洗浄し、捕獲された被検体を、下記のように製造された放射性ヨウ素化抗hCG β−サブユニット抗体125I−B105と反応させた。hCGまたは架橋hCG類似体に結合しなかった125I−B105を吸引し、微量滴定ウェルの表面に結合した放射性標識を、γ−計数計を用いて測定した。この検定は、0.1ngのhCGを容易に検出した。この検定のためにこれら特定の抗体を用いる必要はなく、同様に用いることができる商業的に入手可能な抗体がいくつかある。大部分の抗hCG α−サブユニット抗体、および10−1より大きいhCGおよびフリーのhCG βサブユニットへの親和性を有するいずれかの抗hCG β−サブユニット抗体が充分であろう。後者には、Pierce,3747ノース・メリディアン・ロード(North Meridian Road),ロックフォード,ILからのZMCG13およびZMCG7が含まれるであろう。
【0125】
抗体、hCGおよびhFSHの放射性ヨウ素化は、Pierce Chemical Co,ロックフォード,ILから入手した Iodo Gen を用いて行なわれた。この手順では、50ミリリットルのアセトン中の1.5マイクログラムの Iodo Gen を、約0.75mlの流体を入れることができる小型ガラス試験管に加え、アセトンを蒸発させた。これにより、試験管の底を覆った Iodo Gen 残留物が残った。その後、10マイクログラムのB105を加え、その試験管をプラスチックキャップで密封し、0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中に250〜500μCiのNa125Iを含有する5マイクロリットルを、マイクロシリンジでキャップを介してその溶液を注入することによって加えた。23秒後、0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中の0.9%NaCl溶液0.1mlを加え、その混合物を吸引し、BioGel P6DG(BioRad,リッチモンド,CA)の2mlカラム上に充填した。フリーのヨウ素およびヨウ素化タンパク質を、ゲル濾過によって分離した。ヨウ素化に用いられたNa125Iの量は、放射性ヨウ素化後にタンパク質がその機能を保持する能力によって異なった。抗体およびhCGは、通常、50μCI/μgの比活性まで放射性ヨウ素化されたが、hFSHは、通常、10〜25μCi/μgの比活性まで放射性ヨウ素化された。
【0126】
表6は、変異が架橋hCG類似体の形成を破壊しなかったことを示している。pSVL含有コーディング配列かまたはpCIコーディング配列でトランスフェクションされた細胞は、同様の量の架橋類似体およびhCGを生産した。
【0127】
【表9】

【0128】
hCGおよびhCG(α31−β37)は、サンドイッチ免疫検定において、捕獲のためのα−サブユニットに対する抗体(A113)および検出のためのβ−サブユニットに対する放射性ヨウ素化抗体(B105)を用いてhCG標準に相対して測定された。
【0129】
抗体A113およびB105は、それらが、変異部位から遠く離れていると考えられるホルモンの部分を認識したので(Cosowsky ら,1995年;Moyle ら,1995年)、サンドイッチ免疫検定において架橋hCG類似体の生産を確認するのに用いられた。hCG(α31−β37)類似体は、C7S変異の部位(Moyle ら,1995年)であるα−サブユニットのN末端の一部分を含むことが分っているエピトープを認識する抗体であるA407(図5)に、hCGのように結合することはなかった。抗体A407は、Dr.Robert E.Canfield,Columbia University,ニューヨーク,NYから入手した。しかしながら、A407は、hCG−レセプター複合体を認識することが分っているので(Moyle ら,1995年)、ホルモンコンホメーションのこの小さな変化が、架橋hCG類似体の生物学的活性の妨げになるとは考えられなかった。
【0130】
hCG(α31−β37)および他の架橋類似体の生物学的活性を、放射性リガンドレセプター検定およびシグナル伝達検定で監視した。これらは、LHレセプターcDNAをコードしている遺伝子でトランスフェクションされていて、したがって、機能性LHレセプターを表面上で発現するCHO細胞を用いた。CHO細胞は、ATCC,ロックビル,MDから入手した。ラットLHレセプターcDNAは、ラット卵巣ライブラリーから、記載されたようなポリメラーゼ連鎖反応(Bernard ら,1990年)を用いて得られた。これらLHレセプター発現性細胞を便宜上用いたことおよび放射性リガンド受容体検定は、LHレセプターを発現する他の組織で行なうことができるということは注目されるべきである。これらには、成体ラット精巣のホモジネート、または妊娠馬血清ゴナドトロピンおよびhCG(両方とも、Sigma,セント・ルイス,MOから入手可能)を注射された性的に未成熟なラットから得られた卵巣のホモジネートが含まれる。hCGを高親和性で結合できる卵巣製剤を製造するには、雌の21日令ラットに、50i.u.の妊娠馬血清ゴナドトロピンを皮下注射するであろう。約65時間後、それらに、25i.u.のhCGを皮下注射するであろう。数日後、それらを屠殺するであろうが、それらの卵巣をホモジナイズし、卵巣の20分の1に相当するそのホモジネートのアリコートを、それぞれの検定試験管に用いた。ラットLHレセプターを発現する細胞は、初めに記載されたように製造できるしまたは New England Nuclear,ボストン,MAから購入することができるトレーサーである放射性ヨウ素化hCGを結合する。それらは、Sigma Co.,セント・ルイス,MOから購入できるホルモンである未標識hCGも結合する。LHレセプター発現性CHO細胞は、37℃で10〜30分間のhCG処理に反応して、サイクリックAMPも合成する。生産されるサイクリックAMPは、サイクリックAMPに特異的であり且つ記載されている(Brookder ら,1979年)ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した。
【0131】
hCGのα−およびβ−サブユニットシステインノットの残基間のサブユニット内ジスルフィドの付加は、LHレセプターに結合するまたはサイクリックAMP蓄積反応を引起こす架橋ヘテロダイマーの能力を破壊しなかった。したがって、hCGもhCG3(α31−β37)も、LHレセプターを発現するCHO細胞への125I−hCGの結合を阻止することができた(図6)。hCGおよびhCG(α31−β37)は両方とも、これら同じ細胞中でサイクリックAMP蓄積を引起こすこともできた(図7)。これにより、サブユニット内ジスルフィド結合の存在は、hCGの機能活性全体を破壊しなかったことが示された。
【0132】
サブユニット内ジスルフィド結合の存在は、hCGを破壊する酸、尿素および熱での処理にhCG3(α31−β37)が耐えうるようにした。これは、図8および9のデータから理解できる。図8は、捕獲用のA113および検出用の125I−B112を用いるサンドイッチ免疫検定で監視されたヘテロダイマーの安定性に関する高温の影響を示している。B105およびB112が、hCG(α31−β37)のα−かまたはβ−サブユニットの変異から遠く離れた部位である第三β−サブユニットループ(Moyl ら,1990年;Cosowsky ら,1995年)の折り返し点に近い残基を包含する重複エピトープに結合することに注目されたい。この検定では、hCGおよびhCG(α31−β37)に、最大20分までのいろいろな間隔で85℃の温度を施した。hCGの活性は、7〜8分までにほとんど破壊されたが、架橋類似体の活性の少なくとも75%は、20分のインキュベーション後に残った(図8)。このサンドイッチ免疫検定はダイマー特異的であるので、hCG活性の減少は、サブユニット内ジスルフィド結合の存在によって妨げられる過程であるサブユニットの解離のためであると考えられた。
【0133】
高濃度の尿素中でのゴナドトロピンのインキュベーションは、サブユニット解離を促進することが周知である(Pierce ら,1981年)。したがって、hCGを8M尿素の存在下でインキュベートした場合、それは解離してそのサブユニットになり、その現象は、ウェスタンブロッティングで容易に検出された(図9)。hCG α−およびβ−サブユニットをコードしている遺伝子でトランスフェクションされた哺乳動物細胞は、しばしば、培地中にフリーのβ−サブユニットもαβ−ヘテロダイマーも分泌する。これらは、α−サブユニット特異的およびβ−サブユニット抗体を用いるサンドイッチ免疫検定によって容易に区別できる。αβ−ヘテロダイマーおよびフリーのβ−サブユニットは、ウェスタンブロットにおいてそれらの寸法で区別することもできる。したがって、hCGおよびフリーのβ−サブユニットをポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて分離後、それらをウェスタンブロットで検出することによって培地中のそれらの相対量を監視することは可能である。これは、図9で示されるようにhCGおよびフリーのβ−サブユニットを結合する放射性ヨウ素化モノクローナル抗体の使用によって容易にされる。hCG α−およびβ−サブユニット両方を発現する細胞からの培地の分析は、ヘテロダイマー(上方バンド)およびフリーのβ−サブユニット(下方バンド)両方の存在を示した。培地の8M尿素での処理は、ヘテロダイマーをそのサブユニットに解離させた。その結果、上方バンドは消失した。尿素は、ジスルフィド架橋したヘテロダイマーであるhCG(α31−β37)のそのサブユニットへの解離を促進しなかったので、ヘテロダイマーに該当するバンドはそのまま残った(図9)。
【0134】
実施例2:システインノットのα−およびβ−サブユニット間に位置するサブユニット内ジスルフィドによって安定化した多機能性糖タンパク質ホルモン類似体
シートベルト(seat-belt)は、hCGのレセプター結合活性に影響を与えることが周知である(Campbell ら,1991年;Moyle ら,1994年;Han ら,1996年)。hCG β−サブユニットアミノ酸残基101−109の、それらのhFSH対向部分(counterparts)(すなわち、hFSH β−サブユニット残基95−103)での置換は、類似体のLH活性を与えることなくFSH活性の劇的な増加をもたらした(Moyle ら,1994年;Han ら,1996年)。実際に、この置換は、hTSHで特異的に見出されるいずれの残基も導入しなかったとしても、hCGのTSH活性も増加させた(Campbell ら,1997年)。関連の多機能類似体の活性へのサブユニット内ジスルフィドの影響を研究することにより、特定のジスルフィドが、ルトロピン、ホリトロピンおよびチロトロピンの活性にどのように影響するかが示された。この実施例は、システインノット間のサブユニット内ジスルフィドが、hCGの類似体(CFC101−114)のLHおよびFSH活性にどのように影響したかを詳しく説明し、ここにおいて、hCG β−サブユニット残基101−114は、それらのhFSH対向部分(すなわち、hFSH β−サブユニット残基95−108)で置き換えられていた。
【0135】
CFC101−114(α31−β37)の発現は、αC7SおよびCFCβ′101−114Y37Cをコードしているベクターで細胞をトランスフェクションすることを必要とした。αサブユニットの修飾は、実施例1で記載されている。CFC101−114β′Y37Cを製造するのに用いられたCFC101−114β−サブユニット前駆体のDNA配列は、連続して順に連結されたhCG β−サブユニット残基1−100、hFSH β−サブユニット残基95−108およびhCG β−サブユニット残基115−145をコードしていた。それは、2種類のhCG/hFSH β−サブユニットキメラのコーディング配列をそれらの共通のSstII部位で一緒にすることによって製造されている(図41〜43)。pSVL−CFC101−114β′のシグナル配列および残基1−103のコドンを含有するpSVL−CFC101−106β′のXhoI−SstIIフラグメントを、pSVL−CFC94−114β′のXhoI−BamHIフラグメント中にサブクローン化した。これは、pSVL−CFC101−114β′中で見出されるhFSH β−サブユニット残基88−94のコドンを、それらのhCG β−サブユニット同族体(すなわち、残基94−100)で置き換え、BglII部位を導入した。これらコーディングベクターはそれぞれ、次に記載されるように、分子の3′半分のコドンを修飾することによってhCG β−サブユニットcDNAから誘導されている。
【0136】
pSVL−CFC94−114β′は、連続して順に連結されたhCG β−サブユニット残基1−93、hFSH β−サブユニット残基88−100およびhCG β−サブユニット残基107−145をコードしたベクターであるpSVL−CFC94−106β′のPCR変異誘発によって製造された。pSVL−CFC94−114β′を製造する場合の第一工程は、SOEing PCR変異誘発(Ho ら,1989年)によってpSVL−CFCβ′94−106を製造することであった。プライマーとしてのオリゴ508およびオリゴ368(表5)および鋳型としてのpSVL−hCGβ′(Campbell ら,1991年)を用いるPCR反応は、CFC94−106 β−サブユニットコドン101−145、hCG β−サブユニット終止コドン、3′非翻訳領域、BamHIエンドヌクレアーゼ制限部位、およびそのBamHI部位の3′のpSVLベクター配列の部分を含有する生産物を生じた。オリゴ510およびオリゴ365(表5)を用いる第二のPCR反応は、XhoI部位の5′のpSVL配列、pSVL−hCGβ(Campbell ら,1991年)の5′非翻訳領域、hCG β−サブユニットシグナル配列の20コドン、およびCFC94−106 β−サブユニットコドン1−107を含有する生産物を生じた。CFC94−106β−サブユニットコドン101−107を含有するこれらPCR産物の部分は相補的であったが、これは、“SOEing PCR”中のオーバーラップ伸長の必要条件である。これら2種類のPCR産物を、オリゴ363およびオリゴ364(表5)と混合し、第三のPCR反応で増幅させて、XhoIおよびBamHI制限部位を5′および3′末端付近にそれぞれ有するCFC94−106β−サブユニットの完全長さ配列をコードしたPCR産物を生じた。このPCR産物は、残基102−104のコドンにSstII部位も含有していて、これを、pSVLのXhoIおよびBamHI部位中にクローン化して、pSVL−CFC94−106β′を生成した。そのコーディング領域の配列は、ジデオキシ配列決定法によって確認した。
【0137】
pSVL−CFC94−114β′β−サブユニットを製造する場合の最終工程は、オリゴ596およびオリゴ368(表5)プライマーおよびpSVL−hCGβ′鋳型を用いるPCRを行なって、SstIIおよびBamHI部位をそれぞれ5′および3′末端付近に有する生産物を生成した。これら酵素で消化された場合、それは、hFSH β−サブユニット残基97−108のコドンおよびhCG β−サブユニットコドン115−145をその順序で含有するDNAフラグメントを生じた。これを、pSVL−CFC94−106β′の独特のSstII−BamHI部位中にサブクローン化してpSVL−CFC94−114β′を生成し、そしてPCR中に増幅された配列の部分をジデオキシ配列決定法によって確認した。
【0138】
pSVL−CFC101−106β′の製造は、残基114のところで切断されたhCG β−サブユニット類似体をコードし且つGly102のコドンの代わりにバリンのコドンを含有するpBM135と称されるベクターを用いて開始した。pBM135は、オリゴ435およびオリゴ436(表5)をアニーリングし、3′末端を酵素的にフィルインして、PvuIIおよびSstI部位を含有する二本鎖カセットを生じることによって製造された。そのカセットは、終止コドンの3′であった。このカセットは、hCG β−サブユニット残基87−101、バリン、およびhCG β−サブユニット残基103−114をその順序でコードし、BglIIの制限部位をコドン94−95に含有していた。それを、pSVL−hCGβ′のPvuII−SstI部位中にサブクローン化し、そのPvuIIおよびSstI部位間の配列をジデオキシ配列決定法によって確認した。pBM135は、オリゴ562およびオリゴ365(表5)を用いるPCR反応において鋳型として用いられて、XhoIおよびSstIで消化された場合、hCG β−サブユニットcDNA非翻訳領域およびシグナル配列、hCG β−サブユニットコドン1−100、およびhFSH β−サブユニットコドン95−98をその順序で有するPCR産物を生じた。このPCR産物を、pSVL−CFC94−106β′のXhoI−SstI部位中にクローン化してpSVL−CFC101−106β′を製造し、その配列をジデオキシ配列決定法によって確認した。
【0139】
このアプローチを用いてpSVL−CFC101−114β′を生成することは明らかに不可欠ではなかった。これら工程は、歴史的理由で用いられた。種々の中間体ベクターが、他の実験中に製造されており、CFC−101−114β′をコードしているベクターの製造に利用可能であった。
【0140】
プラスミドpSVL−CFC101−114β′Y37Cは、Y37C変異をコードしたpSVL−hCGβ′Y37Cの5′“半分”と、hFSH β−サブユニットアミノ酸95−108をコードしたpSVL−CFC101−114β′の3′“半分”とを一緒にすることによって製造された。これは、XhoIおよびBsu36Iでの消化によって得られたpSVL−hCGβ′Y37Cの小片を、pSVL−CFC101−114β′の同酵素での消化によって生じた大片に連結することによって行なわれた。これは、CFC101−114β′のシグナル配列およびアミノ酸1−54のコドンをhCGβ′Y37Cのコドンで置き換えたが、これは、Tyrのシステインでの置換を引起こした変化である。初めに記載された修飾pCI構築物のXhoI−BamHI部位中へのXhoI−BamHIフラグメントのサブクローニングは、pCI−CFC101−114β′Y37Cと称される構築物をもたらした。CFC101−114β′およびCFC′101−114β′Y37Cのアミノ酸配列を図10に記載する。
【0141】
CFC101−114およびCFC101−114(α31−β37)の製造は、実施例1で記載の方法を用いて、COS−7細胞中でpSVL−αおよびpSVL−CFC101−114β;pSVL−αC7SおよびpSVL−CFC101−114βY37C;pCI−αおよびpCI−CFC101−114β;およびpCI−αC7SおよびpCI−CFC101−114βY37Cを同時発現させることによって行なわれた。濃縮培地中のCFC101−114および架橋CFC101−114(α31−β37)は、捕獲用の抗体A113および検出用の125I−B105かまたは125I−B112を、標準として用いられた尿素から精製されたhCGと一緒に用いるサンドイッチ免疫検定(Moyle ら,1982年)を用いて定量した。前と同様、この検定にこれら特定の抗体を用いる必要はなく、充分に作業すると期待される商業的に入手可能な抗体が利用可能であるということは注目されるべきである。hFSHにも高親和性を有するA113などの大部分の抗hCG α−サブユニット抗体、またはhCGに高親和性を有する抗hFSH α−サブユニット抗体は、この検定で用いることができる。しかながら、これら類似体は、FSH活性に大きな影響を与えるシートベルト領域の部分にhFSH残基(すなわち、11番目と12番目のβ−サブユニットシステインの間のアミノ酸残基(Moyle ら,1994年))を含有するので、CFC101−114の類似体は、全ての抗hCG α−サブユニット抗体によって認識されない。これは、hCGを結合するがhFSHを結合しない抗体であるA407(図11)について理解することができる。したがって、A407がhCGを結合した場合、その、CFC101−114および架橋CFC101−114類似体を結合する能力ははるかに小さかった。A407は、CFC101−114(α31−β37)を結合する能力も低かった。
【0142】
CFC101−114類似体は、FSH残基で占められた領域に近いβ−サブユニット中の残基を認識するものを除くhCGおよびフリーのhCG βサブユニットに10−1より大きい親和性を有する大部分の抗hCG β−サブユニット抗体によって検出することができる。したがって、CFC101−114および類似体は、hCG残基108−114によって大きく影響されることが分っている抗体であるB111によっては認識されなかった(Cosowsky ら,1995年)。それにもかかわらず、hCG、hLH、フリーのhCG β−サブユニットおよびフリーのhLH β−サブユニットを認識するB105などの大部分の抗体をこの検定で用いることができる。更に、hCGおよびフリーのhCG β−サブユニットを認識するB112などの多数の抗体も、この検定で用いることができる。B105/B112エピトープ領域は、マウスのhCGの最も抗原性の領域の一つであり、この領域に対する抗体は、実施例1で記載のように商業的に入手可能である。
【0143】
CFC101−114(α31−β37)中のジスルフィド架橋の存在は、その熱安定性をCFC101−114に相対して増加させた(図12)。サンドイッチ免疫検定は、hCGおよびCFC101−114の活性が、85℃でそれぞれ7.5分および15分加熱することによってほぼ破壊されたことを示した。しかしながら、同温度で20分後に、実質的な量のCFC101−114(α31−β37)が残った。これは、ジスルフィドの存在が、この類似体の安定性を増加させたことを示した。11番目と12番目のβ−サブユニットの間にFSH残基を有するこのおよび他の類似体は、FSHおよびTSH両方の活性を有するので(Campbell ら,1997年)、このジスルフィド結合は、FSHおよびTSHの安定性も増加させると考えられる。
【0144】
CFC101−114は、LHレセプターでシグナル伝達を刺激することがありうる。CFC101−114のシステインノット間のα31−β37サブユニット内ジスルフィドの付加は、この検定においてその活性を低下させなかった(図13)。したがって、CFC101−114およびCFC101−114(α31−β37)は両方とも、LHレセプターを発現するように遺伝子操作されたCHO細胞を用いる検定においてサイクリックAMP蓄積を刺激するほぼ同様の高い能力を有した。したがって、このジスルフィド結合の存在は、ルトロピン活性を有する分子の活性に影響を与えるとは考えられない。この結合のこれら分子を安定化させる能力は、有用な治療的性質をルトロピンに与えると考えられる。
【0145】
CFC101−114のアミノ酸配列は、hFSHよりもhCGの配列にはるかに近いが、CFC101−114(α31−β37)は、この検定においてほとんど活性がないことが知られているホルモンであるhCGよりもはるかに大きいFSH活性を有する。CFC101−114のシステインノット間のα31−β37サブユニット内ジスルフィド結合の付加は、FSHレセプターを発現するCHO細胞中でサイクリックAMP蓄積を刺激するその能力に僅かしか影響を与えなかった(図14)。したがって、このジスルフィド結合の存在は、ホリトロピン活性を有する分子の活性に不利な影響を与えるとは考えられないので、これら分子を安定化させるこの結合の能力は、有用な治療的性質をホリトロピンに与えると考えられる。
【0146】
実施例3:シートベルトとα−サブユニットループ2との間のサブユニット内ジスルフィドによって安定化したhCG
hCGのα−およびβ−サブユニット中の残基のCαとCβ炭素原子の間の距離は(表1B)、それらサブユニットが1個またはそれ以上のジスルフィド結合によって拘束された多数の他の追加のダイマーを製造することが可能であろうということを示唆している。α−サブユニット残基31とβ−サブユニット残基37との間のhCGおよびCFC101−114の架橋は、得られた類似体の安定性を有意に増大させ、それらの生物学的活性に最小限の影響を与えた。レセプター結合に影響を与えることが前もって示された分子の一部分へのジスルフィド架橋の導入が、その安定性および活性を変化させるかどうか突きとめるために、ジスルフィド結合をhCGおよびCFC101−114中のα−サブユニットループ2とシートベルトとの間に遺伝子操作した。これら実験は、糖タンパク質ホルモンのこの領域中へのジスルフィドの導入が、それらの安定性を増加させたことを示した。しかしながら、ジスルフィドを生じるのに必要とされた置換は、レセプターと相互作用し且つシグナル伝達を引起こすそれらの能力に影響を与えた。これは、レセプター相互作用またはレセプター特異性に関与しないホルモンの部分へのジスルフィド結合の導入が、高内分泌活性を維持するのに好ましいことを示した。どちらの種類のジスルフィド架橋類似体も、それらの免疫学的活性を保持していたので、そのジスルフィドの位置は、免疫原を設計する場合にあまり重要でないかもしれない。このジスルフィドのシグナル伝達への影響は、ホルモンアンタゴニストまたは免疫原を開発するのに有用でありうる。
【0147】
α−サブユニットループ2とシートベルトとの間のサブユニット内ジスルフィドによって安定化されたhCG類似体を製造するために、α−サブユニットループ2のLys51およびβ−サブユニットシートベルトのAsp99をシステインで置き換えた。そのα−サブユニットの変化は、前に記載されていない既存のベクターのカセット変異誘発を伴った。したがって、これら中間体ベクターの構築をここで記載する(図44)。
【0148】
International Biotechnologies,Inc.(ニューヘブン,CT)から購入したクローニングベクターであるpIBI31のポリリンカーを、制限酵素部位を含有するポリリンカーEcoRI−XhoI−NcoI−PacI−BamHI−EcoRIで置き換えて、pRM102と称されるベクターを製造した。pKBM−αをNcoIおよびBamHIで消化し、pRM102のNcoI−BamHI部位中にクローン化してpRM116を生じ、それによって、その5′非翻訳リーダー配列と、pKBM−αのクローニング中に導入された望ましくない5′XbaI部位を除去した。したがって、pRM116中の唯一のXbaI部位は、α−サブユニットアミノ酸34−35のコドンに対応した。pRM116のXbaI−BamHIフラグメントを、オリゴ758およびオリゴ760(表5)を用いるα−サブユニットcDNAのPCRによって生成されたベクターのXbaI−BamHIフラグメントで置き換えて、pRM117を生じた。これにより、α−サブユニットcDNA中で見出された3′非翻訳領域が除去されたが、これは、この領域の望ましくないPstI制限部位を除去する方法でもある。pRM117中に残っている唯一のPstI部位は、残基83−85のコドンに位置した。オリゴ730およびオリゴ839(表5)を用いるα−サブユニットcDNAのPCRから得られた生産物をpRM117のXbaI−PstI部位中にクローニングすることにより、pMB507が得られた。これは、α−サブユニットコーディング配列中のコドン42−43および54−55それぞれにBglIIおよびSpeI部位を導入した。pMB507のXhoI−BamHIフラグメントをpSVLのXhoI−BamHI部位中にサブクローニングすることにより、pMB512が得られた。BglIIとSpeI部位との間のpMB512のフラグメントを、オリゴ877およびオリゴ878(表5)で置き換えて、pMB561を生じた。最後に、pMB512のBglII−SpeIフラグメントを、オリゴ921およびオリゴ922(表5)をアニーリングすることによって製造されたカセットで置き換えて、pSVL−αK51Cを生じた(図15)。この戦略は、pSVL−αK51Cを製造するのに不可欠ではないと考えられるが、他の実験中に生成された種々のベクター中間体の利用可能性による歴史的理由だけで用いられた。
【0149】
β−サブユニット類似体hCGβ′D99Cは、鋳型としてのpSVL−hCGβ′およびプライマーとしてのオリゴ368およびオリゴ925(表5)を用いるPCR変異誘発によって製造した。オリゴ368は、BamHIエンドヌクレアーゼ制限部位の3′のpSVL中の部位に相補的な逆プライマーである。オリゴ925は、所望の変異を含有し、BglII部位も生じる。そのPCR産物をBglIIおよびBamHIで消化し、pSVL−CFC101−114β′のBglII−BamHI部位中にサブクローン化した。これは、pSVL−CFC101−114β′からhFSHコドンを除去し、Asp99をシステインに変更した(図15)。
【0150】
プラスミドpSVL−αK51CおよびpSVL−hCGβ′D99Cを、実例1で記載のようにCOS−7細胞中で同時発現させた。hCGおよびhCG(α51−β99)は、サンドイッチ免疫検定において、捕獲用のα−サブユニットに対する抗体(A113)および検出用のβ−サブユニットに対する放射性ヨウ素化抗体(B105)を用いてhCG標準に相対して測定された。この検定にこれら特定の抗体を用いることは不可欠ではない。ヘテロダイマー中のhCG α−サブユニットを認識するほとんど全ての抗体、およびhCGおよびそのフリーのβ−サブユニットを10−1より大きい親和性で認識するいずれのβ−サブユニット抗体も、この検定で用いることができる。トランスフェクションされたCOS−7細胞によるこのhCGおよびhCG(α51−β99)の生産は、A113/125IB105またはA113/125IB112サンドイッチ免疫検定によって容易に検出される細胞培地中の架橋タンパク質類似体の蓄積をもたらし、ジスルフィドを導入するのに必要な変異がサブユニット組合せを妨げなかったことが示された。
【0151】
【表10】

【0152】
hCG(α51−β99)の生物学的活性は、実施例1で概説された方法を用いてLHレセプター結合検定およびシグナル伝達検定で測定した。hCG(α51−β99)は、hCGの力価の僅か5〜10%ではあるが、LHレセプターを発現するCHO細胞への125I−hCGの結合を阻止することができた(図16)。ジスルフィド結合によって引起こされたLHレセプターへの親和性の低下は、(1)α−サブユニット残基Lys51のシステインによる置換(すなわち、荷電アミノ酸の中性アミノ酸による置換)、(2)β−サブユニット残基Asp99のシステインによる置換(すなわち、陰電荷アミノ酸の中性アミノ酸による置換)、または(3)二つのサブユニット間の共有結合の存在によって加えられる束縛のためでありえた。Asp99の修飾は、hCGのLH活性を低下させるまたは消失させることが示されている(Chen ら,1991年)。非修飾β−サブユニットおよびLys51がシステインに変更されたα−サブユニットを含有するhCG類似体(hCG(αK51C−β))、および非修飾α−サブユニットおよびAsp99がシステインに変更されたβ−サブユニットを含有するhCG類似体(hCG(α−βD99C))のLHレセプター結合活性を、hCGおよびhCG(α51−β99)の活性と比較することにより、システイン置換の影響をジスルフィド結合の影響から区別することが可能であった(図17)。これら分析は、α−サブユニットLys51のシステインでの置換が、LHレセプターへの125I−hCG結合を阻止する類似体の能力に関して実質的な阻害効果を有することを示した。hCG(α51−β99)およびhCG(α−β99)の活性は同様であり、β−サブユニットAsp99のシステインでの置換が、hCG(α51−β99)の低下したLHレセプター結合活性の大部分の原因であることが示された。Lys51のアラニンへの変更も、hCGの活性を低下させた(図18)。
【0153】
シグナル伝達(サイクリックAMP蓄積)を刺激するこれらhCG類似体の能力も調べた。α−サブユニット残基Lys51をシステインかまたはアラニンで置き換えることにより、サイクリックAMP蓄積を刺激するホルモンの能力はほぼ完全に失われた(図19および20)。hCG(α51−β99)を生じるための両サブユニットへのシステインの付加は、α−サブユニットLys51に代わる一つのシステイン置換だけを含有する類似体に相対して有意の量の活性を回復した(図19)。β−サブユニット残基のAsp99のシステインだけでの置換は、LHレセプターシグナル伝達への影響がはるかに少なかった。これにより、ジスルフィドは、hCG類似体の相対効率を低下させることが示唆されたが、これは、アンタゴニストの設計において有用でありうる性質である。
【0154】
シートベルトとα−サブユニットループ2との間のサブユニット内ジスルフィドの存在は、hCGの熱安定性を増加させた(図8)。それは、それらサブユニットを8M尿素の存在下でも解離させなかった(図9)。これら知見により、糖タンパク質ホルモンの安定性へのサブユニット内ジスルフィド結合の有益な作用が確認される。
【0155】
実施例4:シートベルトとα−サブユニットループ2の間のサブユニット内ジスルフィドにより安定化された二機能性糖タンパク質ホルモン類似体
3つ全ての主要な糖タンパク質ホルモンレセプターに相互作用する能力を有する糖タンパク質ホルモン類似体であるCFC101−114のシートベルトとα−サブユニットの間に、ジスルフィド結合を創製した。これは、LHとFSHのレセプターとの相互作用に対する該タンパク質のこの領域の相対的な影響の特性決定を可能にした。
【0156】
CFC101−114β’(α51−β99)の生産に必要なβ−サブユニット発現ベクター(即ち、pSVL−CF101−114β’D99C)を、pSVL−CFC101−114β’のカセット変異導入により製造した。このベクターは、アミノ酸95−96のコドン内にBglIIエンドヌクレアーゼ制限部位を、そしてアミノ酸102−104のコドン内にSstII部位を含む。pSVL−CFC101−114β’をBglIIとSstIIにより消化して、オリゴ924とオリゴ923をアニールすることにより得られた合成オリゴヌクレオチドカセットで、小さい方の断片を置き換えることにより、pSVL−CFC101−114β’D99Cを製造した(表5)。これは、組換えクローンを選択するために使用されるBsrGI部位も導入した。その結果のベクターであるpSVL−CF101−114β’D99C内の変化した塩基の配列は、ジデオキシ配列決定法により確認された。このベクターによりコードされるCFC101−114β’(α51−β99)のアミノ酸配列を図21に示す。
【0157】
pSVL−αK51CとpSVL−CGC101−114β’D99CのCOS−7細胞からの同時発現を実施例1に記載されたとおりに実施した。ダイマーは、捕獲のためのA113、検出のための放射性ヨウ素化B112、および標準物として精製された尿hCGを用いて、サンドイッチ免疫アッセイにおいて測定した。他の類似体の場合におけるとおり、培養培地中でCFC101−114(α51−β99)を検出するためにこれらの特定の抗体を用いる必要はないはずである。hCGおよびhFSHの両方に結合可能なほとんどのα−サブユニット抗体を捕獲のために使用できた。FSHに変化させた配列を含む残基を認識するものを除いた、hCGおよびβ−サブユニットに結合可能なほとんどの抗体は、検出のために使用できた。使用できなかった抗体の例はB111である(Cosowsky et al,1995)。
【0158】
hCG中のα−サブユニットのN末端部分上の決定基を認識するα−サブユニットモノクローナル抗体、A407はCFC101−114をほとんど認識せず、hCGに結合する(図5)。これは、レセプター結合特異性の制御に関与するかもしれない糖タンパク質ホルモンα−およびβ−サブユニットの全体の相互作用に対するシートベルトの影響によったと考えられた。α−サブユニットの残基51とβ−サブユニットの残基99の間のジスルフィドの追加は、その結果の類似体がA407により認識可能となることを可能にしなかった(図11)。
【0159】
他のジスルフィド架橋結合された類似体と同様に、CFC101−114(α55−β99)が、温度変性アッセイにおいてその起源の前駆体(即ち、CFC101−114とhCG)よりも安定であることもわかった(図12)。事実、α−サブユニットの残基51とβ−サブユニットの残基99の間のジスルフィドの存在は、α−サブユニットの残基31とβ−サブユニットの残基37の間のジスルフィドよりも、タンパク質の安定性を増強したらしかった。
【0160】
CFC101−114(α51−β99)のシートベルトとα−サブユニットの間のジスルフィド結合の存在はLHレセプターへ結合するその能力を低下させた(図22)。即ち、CFC101−114放射性標識hCGのLHレセプターへの結合を阻害することにおいてCFC101−114はほとんど組換えhCGほどの効果を有したが、CFC101−114(α51−β99)は約100倍低い活性であった。個々のサブユニット変異とジスルフィド結合の相対的な重要性を、CFC101−114,CFC101−114(α51−β99),CFC101−114(αK51C−β),CFC101−114(αK51A−β),およびCFC101−114(α−βD99C)の活性を監視することにより比較した。この比較は、α−サブユニットLys51のシステインまたはアラニンそれ自体による置換はレセプター結合に実質上の阻害性の影響を有した(図22および23)。即ち、CFC101−114(αK51C−β)の活性はCFC101−114(α51−β99)の活性に比例する。hCGのLH活性に対するその作用とは異なり、CFC101−114β−サブユニットのAsp99のシステインへの置換はCFC101−114(α51−β99)がLHレセプターに結合する能力の低下の一部にすぎないことを説明した。にもかかわらず、CFC101−114(α51−β99)はCFC101−114(αK51C−β)よりも実質上高い活性であり、Lys51に代えてのα−サブユニット中のシステインの存在により説明できない作用であった。
【0161】
CFC101−114のシグナル形質導入活性に対するシートベルトα−サブユニットジスルフィド結合の影響を決定するためにも、研究を実施した。CFC101−114はLHレセプターにおけるシグナル形質導入を刺激する能力がhCGに比べてほんのわずかに低かった(図24)。しかしながら、CFC101−114(α51−β99)はジスルフィド架橋類似体であるが、試験されたもっとも高い濃度でのみ活性であった。初期に論じられた研究の確証において、これは第一に、α−サブユニットのLys51からシステインへの変化のために、β−サブユニットのAsp99のみがシステインに変換された場合の(即ち、CFC101−114(α51−β99))類似体が実質上活性を保持したかららしかった。結合アッセイにおける場合のように、ジスルフィドがシステインまたはアラニンによるα−サブユニットLys51の置換により引き起こされる活性の損失のいくらかを埋め合わせることができた場合、サブユニット内のジスルフィド結合はいくらかのシグナル形質導入を回復した(図24)。
【0162】
CFC101−114はFSHアッセイにおいて実質上活性を有した。しかしながら、シートベルトα−サブユニットループ2ジスルフィド架橋を創製するために必要なシステイン置換はそのLH活性よりもCFC101−114のFSH活性に対して大きな作用を有し(図26、27および28)、そしてジスルフィド結合自体の影響を識別することはできなかった。即ち、α−サブユニットのLys51またはβ−サブユニットのAsp99が変化した類似体はそれらのFSH活性のほとんどを損失した。β−サブユニットAsp99の変異がLH活性よりもFSH活性に強い影響を有したとの発見は、LHとFSH活性におけるシートベルトの役割に関する以前の観察を支持する(Han et al,1996;Baird et al,1993)。これらの報告は、LHレセプター結合に影響するシートベルトの領域がアミノ酸94−96近辺であり、FSHレセプター結合に影響する領域がアミノ酸101−109近辺であることを示唆する。
【0163】
実施例5:実施例1および3からのジスルフィドによるhCG安定化
糖タンパク質への複数のジスルフィドの導入がそれらの生物活性に如何に影響するかを調べるため、実施例1および3に示したジスルフィドを含むhCG類似体を作成した。これらの類似体は、実施例1および3に記載された発現ベクターの一部を交換することにより製造した。pCI−α(C7S,K51C)は、pSVL−αC7SとpSVL−αK51CのBsmI消化により製造し、各消化において生成される小さい断片と大きい断片をアガロース電気泳動により分離して、pSVL−αC7Sからの大きな断片をpSVL−αK51Cからの小さな断片に連結した。その結果の構築物をXhoIとBamHIにより消化して、修飾されたリンカーであって実施例1に記載されたpCI中に連結した。pCI−hCGβ’(Y31C,D99C)は、pSVL−hCGβ’D99CとpCI−hCGβ’Y37CのAocI(Bsu36Iのイソシゾマー)とBamHIによる消化により製造し、小さい断片と大きい断片をアガロース電気泳動により分離して、pSVL−hCGβ’D99C由来の小さな断片をpCI−hCGβ’Y37C由来の大きな断片に連結した。これらのベクターによりコードされる類似体の配列を図31に記載する。
【0164】
pCI−α(C7S,K51C)とpCI−hCGβ’(Y31C,D99C)を、実施例1に記載されたとおりにCOS−7細胞中で同時発現させた。培養媒体中に分泌されたタンパク質を濃縮してサンドイッチイムノアッセイにおいて監視したが、これも、放射性ヨウ素B112をB105に代えて用いた以外は実施例1に記載されたとおりであった。複数のジスルフィド結合の存在は糖タンパク質ホルモンがフォールディングされることあるいは培養媒体中の類似体の存在により示されるとおり細胞から分泌されることを妨害しなかった(表8)。hCG(α31−β37、α51−β99)を、捕獲のためにα−サブユニットに対する抗体(A113)を用いたhCG標準物並びに検出のためにβ−サブユニットに対する放射性標識抗体(B112)に関してサンドイッチイムノアッセイにおいて測定した。該類似体は抗体A407によりうまく認識されなく、α−サブユニットのN末端近傍の変異の重要な結果である。該タンパク質のこの領域はホルモン活性に必要ないため、このエピトープの欠損はほとんど重要ではないらしい。図31の上記のケースの文字は、ジスルフィド結合を形成するために導入された変異の位置を意味する。
【0165】
【表11】

【0166】
hCG(α31−β37、α51−β99)中の2つのジスルフィド結合の存在は、温度変性アッセイにおいてhCGよりもその安定性を増大させた(図8)。さらに、hCG(α31−β37、α51−β99)は、尿素変性においてhCGよりも安定であった(図9)。これは、1より多いジスルフィド結合の存在は該分子を不安定化しなかったことを示唆した。
【0167】
hCG(α31−β37、α51−β99)はLHに結合することができたし、サイクリックAMP蓄積を刺激することができた(図30および31)。これらのアッセイにおけるその活性はhCG(α51−β99)と同様であったことから、再び、α−サブユニット残基31とβ−サブユニット残基37の間のサブユニット内ジスルフィド結合がレセプター結合あるいはシグナル形質導入に対して、あるとしても、ほとんど有害な影響を有さないことを示す。即ち、α31−β37システイン内部のノット部位はエンドクリン活性が望まれる場合に糖タンパク質を安定化するために、ジスルフィド結合を工作するのに好ましいはずである。
【0168】
実施例6:そのα−およびβ−サブユニット間のシステイン内部ノットジスルフィドにより安定化されたhFSHの類似体
hCGとCFC101−114がそれらのLAおよび/またはFSH活性を破壊することなくそれらのシステインノット間のサブユニット内ジスルフィドにより安定化されたとの発見は、この領域がホルモン活性に必要ないことを強く示唆する。即ち、FSHへの同様なジスルフィドの工作は増大した安定性と強力なFSH活性を有するFSH類似体をもたらすはずであると期待される。この類似体はhCGおよびhFSHα−サブユニットを認識する抗体例えばA113を結合することも期待される。該変異部位から離れたhFSHβ−サブユニットループ1および/または3の領域を認識する抗体、例えばB602を結合することも期待される。
【0169】
α−サブユニット残基31とβ−サブユニット残基31の間を架橋したhFSH類似体を製造するのに必要なひとつのα−サブユニット類似体の配列を図3に記載する。この類似体を製造するのにも有用であるべき低極性のαサブユニット(αC7A)のアミノ酸配列を図32に示す。αC7AまたはαC7Sとシステイン内部ノットジスルフィドを形成することが期待されるhFSHのβY31Cのアミノ酸配列も図32に示す。これらのタンパク質をコードするベクターを製造するために必要な核酸配列は、図33に示された遺伝コードを用いて当業者によりヒトα−サブユニットおよびhFSHβ−サブユニットから製造できる。これらの配列も、実施例1に掲載された供給者の一つから購入できる。
【0170】
一時的あるいは安定にαC7SとhFSHβY31CあるいはαC7AとhFSHβY31Cの発現を推進することができるベクターは、例えば実施例1において言及されたような当業界において公知のあらゆる手段により、COS−7または他の真核細胞に導入されるはずである。生成されたタンパク質は、サンドイッチイムノアッセイにおいて、hFSHを標準物として、およびα−サブユニットのN末端から離れたhFSHエピトープを認識する捕獲用抗体並びにβ−サブユニットのループ1および/または3中の部位におけるhFSHのエピトープを認識する検出用抗体を用いることにより測定されるはずである。
【0171】
hFSHの架橋類似体は、実施例1における架橋hCG類似体に関して実施されたとおりに、温度または尿素変性アッセイにおいてhFSHよりも安定であることが期待されるはずである。この架橋されたFSH類似体は、ヒトFSHレセプターでトランスフェクトされたCHO細胞への結合に関して放射性標識hFSHと競合することも期待されるはずである。これらの細胞においてサイクリックAMPの蓄積を刺激することも期待されるはずである。インビトロアッセイは、完全にグリコシル化された糖タンパク質ホルモンのインビボの生物活性をうまく予測することができる。糖タンパク質ホルモン類似体を架橋するために導入されるはずの変異が、組換え糖タンパク質ホルモンに比べてそれら全体のグリコシレーションパターンを変更することは予測されないので、架橋されたFSH類似体もインビボにて活性であることが期待されるはずである。
【0172】
実施例7:α−およびβ−サブユニットのN末端部分の間のジスルフィドにより安定化されたhCGの類似体
実施例1−4は、糖タンパク質ホルモンおよびそれらの類似体のサブユニット間の単一のサブユニット内ジスルフィド結合がそれらの安定性を増大させうることを教示する。これらの実施例は、レセプター結合、レセプター結合特異性に重要であるかまたはタンパク質を不適切なコンフォメーションに歪める残基を含まないならば、該分子のレセプター結合およびシグナル形質導入活性に対するジスルフィド結合の作用は小さくなることも示す。α−およびβ−サブユニットの両者のN末端部分は、実質上ホルモン活性を破壊することなく変更されうることから、該タンパク質のこの部分は鍵となるレセプター接触には関与しないことを示唆する。よって、表1Bにおいて有望であることが示された部位における糖タンパク質ホルモンのN末端のジスルフィド結合の導入は、それらの生物活性を憂慮すべき程破壊することなくそれらを安定化することになると期待される。
【0173】
表1Bは、各々をシステイン残基による置換がジスルフィド架橋類似体の形成を導くように、α−サブユニットのGln5とhCGβ−サブユニットのArg8が好ましく位置することを示す。この類似体はhCGに比して増強された安定性を有し、そしてLHレセプターに結合して刺激する能力を保持することが期待されるはずである。
【0174】
この類似体を発現するのに有用なベクターを製造するのに必要なアミノ酸配列を図34Aと図34Bに示す。
【0175】
実施例8:α−およびβ−サブユニットのN末端部分の間のジスルフィドにより安定化されたhFSHの類似体
前記のとおり、実施例1−4は、糖タンパク質とそれらの類似体のサブユニット間のサブユニット内部ジスルフィド結合がそれらの安定性を高めうることを教示する。これらの実施例は、レセプター結合またはレセプター結合特異性に重要な残基を含まないならば、ジスルフィド結合とシグナル形質導入へのジスルフィド結合の作用も示す。よって、本発明によれば、hFSHのN末端のジスルフィド結合の導入がそれを安定化させて有用な治療用の特性を有することになる類似体を導く。
【0176】
α−サブユニットのGln5とβ−サブユニットのArg8の好ましい位置を示す表1B内のデータおよびhCGとhFSH内の「均等」残基を示す表2内のデータに基づくと、α−サブユニットのGln5とβ−サブユニットのArg8のシステイン残基による置換は、ジスルフィド架橋されたhFSH類似体を創製することが期待されるはずである。これらの類似体は、hFSHに比して増強された安定性を有し、そしてFSHレセプターに結合して刺激する能力を保持することが期待されるはずである。この類似体を発現するのに有用なベクターを製造するために必要なアミノ酸配列を図35に示す。
【0177】
実施例9:α−サブユニットとβ−サブユニットの間のシステイン内部ノットジスルフィドあるいはα−サブユニットとβ−サブユニットのN末端部分の間のサブユニット内部ジスルフィドにより安定化されたhLHの類似体
もっとも密接に関連したヒトルトロピンはhCGとhLHである。即ち、活性なジスルフィド架橋hCG類似体を製造するのに必要な変異は活性なジスルフィド架橋hLH類似体の製造にも有用なはずであることが期待されるはずである。hLHは安定性の低いゴナドトロピンであり、そしてサブユニット内部ジスルフィドが顕著にhLHの安定性を増大させることも予測される。システイン内部ノットジスルフィド架橋hLHおよびそのN末端近傍において架橋されたhLHを製造するのに必要なβ−サブユニットのアミノ酸配列を、それぞれ図36と図37に示す。
【0178】
実施例10: hTSHβY30C、α−サブユニットとβ−サブユニットの間のシステイン内部ノットジスルフィドあるいはα−サブユニットとβ−サブユニットのN末端部分の間のサブユニット内部ジスルフィドにより安定化されたhTSHの類似体を製造するために有用なことが予測されるβ−サブユニット類似体
前記のとおり、実施例1−4は、糖タンパク質ホルモンとそれらの類似体のサブユニットの間のサブユニット内部ジスルフィド結合がそれらの安定性を高めうることを教示する。これらの実施例は、レセプター結合またはレセプター結合特異性に重要な残基を含まないならば、ジスルフィド結合とシグナル形質導入へのジスルフィド結合の作用も示す。よって、hTSHのα−およびβ−サブユニットのシステインノット内あるいはhTSHのα−およびβ−サブユニットのN末端内の残基間のジスルフィド結合の導入がヘテロダイマーを安定化して、放射線切除治療前に甲状腺を刺激する等の有用な治療特性を有することになる類似体を導く。
【0179】
α−サブユニットのCys71とβ−サブユニットのTyr37の好ましい位置を示す表1B内のデータおよびhCGとhTSH内の「均等」残基を示す表2内のデータに基づくと、αC7SまたはαC7AおよびTyr30がシステイン残基で置換されたhTSHのβ−サブユニット類似体を発現する細胞がジスルフィド架橋hTSH類似体を創製することが期待されるはずである。同様に、α−サブユニットのGln5とhCGのβ−サブユニットのArg8の好ましい位置を示す表1Bのデータ並びにhCGおよびhTSH内の「均等な」残基を示す表2にデータに基づくと、α−サブユニットGln5とhTSHのβ−サブユニットPhelのシステイン残基による置換はジスルフィド架橋hTSH類似体を創製することが期待されるはずである。これらの類似体はhTSHに比して増強された安定性を有することが期待されるはずであり、そしてTSHレセプターに結合して刺激する能力を保持するはずである。
【0180】
これらの類似体を発現するのに有用なベクターを製造するのに必要なアミノ酸配列は図38および39に示される。
【0181】
実施例11:ジスルフィド架橋ホルモンアンタゴニストの製造
糖タンパク質ホルモンの脱グリコシル化が生物学上のシグナルを引き出すそれらの能力を低下させることはよく知られている(Moyle et al,1975;Matzuk et al,1989)。しかしながら、それらの不安定性のために、脱グリコシル化されたホルモンは治療上有用でない。遺伝上脱グリコシル化されたホルモンへのジスルフィド架橋の導入はホルモンアンタゴニストとしてのそれらの利用性を高めることになると期待される。LHまたはhCGのアンタゴニストは、前生殖能力(profertility)および抗生殖能力(antifertility)の用途の両方を有するはずである。即ち、不適切に高いLHレベルを有するために不妊の女性に投与した場合、LHアンタゴニストは受胎能を増強するはずである。妊娠初期の段階であった女性に投与した場合、hCGアンタゴニストは妊娠を停止させるはずである。二機能性LH/FSH分子のアンタゴニスト例えばCFC101−114あるいはCFC101−109(Moyle et al,1994)も有用なはずである。そのようなアンタゴニストの一時的な使用は不適切な卵巣機能を停止させるために使用することができ、それにより、月経周期のリセットを導く。これは、有力な前生殖効果を有するはずである。初期妊娠におけるそのようなアンタゴニストの使用は、プロゲステロンおよびエストラジオール両者の生産を抑圧して妊娠を停止させることが期待されるはずである。
【0182】
サブユニット内ジスルフィド架橋を導入するほかに、架橋されたアンタゴニストの製造は、記載されてきたかまたは表1Bを参照して生産できた類似体のα−サブユニット上またはα−並びにβ−サブユニット上におけるN結合グリコシレーションの変化を含む。これは、糖タンパク質ホルモンのα−並びにβ−サブユニットに見いだされる配列Asn−X−Ser/Thrを変化させることを含み、Asnを別のアミノ酸で置換するか、SerまたはThrを他のアミノ酸に変化させるか、またはAsnまたはSer/Thrの間のアミノ酸(Xと表される)をプロリンに変化させるかのいずれかである。
【0183】
実施例12:
親のホルモンよりも安定なことが期待されるゴナドトロピンの別のジスルフィド架橋類似体を表9−15に示す。これらは、実施例1−5に示されたとおりに、α−サブユニットおよびβ−サブユニットを発現できるベクターによる細胞の同時トランスフェクトにより製造されるはずである。
【0184】
【表12】

【0185】
【表13】

【0186】
【表14】

【0187】
【表15】

【0188】
【表16】

【0189】
【表17】

【0190】
【表18】

【0191】
実施例13:β−サブユニットループ2とα−サブユニットループ3の間にジスルフィドを含むhCG類似体
このジスルフィドを創製する残基は高い親和性のレセプター接触に関与しないと提案されているhCGの領域中にある(Moyle et al,1995)。hCGの第2のβ−サブユニットループも第3のβ−サブユニットループもルトロピン活性に必要なく、そして両者が欠損したhCGの活性類似体を作成することができる(Moyle et al,1998)。さらに、β−サブユニットループ2がそのhFSH同等物で置換された、完全に活性のhCGの類似体を製造した(Campbell et al,1991)。即ち、該タンパク質のこれらの部分の間のサブユニット内ジスルフィドの追加がその生物活性を破壊するとは本発明者らにより予測されなかった。この類似体はhCGのα−およびβ−サブユニットをコードするベクターを修飾してそれらを哺乳類細胞中で同時発現することにより製造されるはずである。α−サブユニット構築物は、表9に示すαV76Cと呼ぶアミノ酸配列を有するタンパク質をコードした。この構築物は、オリゴヌクレオチド1131と1132をプライマーとして(表5)そしてpMB589を鋳型として用いることによりPCR変異導入により製造された。プラスミドpMB589は、Asn52のコドンがアスパラギン酸に変化し、並びにArg42とSer43のコドンがサイレントなBglII部位を創製するように修飾された、ヒトα−サブユニットの類似体をコードする、pCI’中の構築物である。
【0192】
pMB589は、pMB532由来のXhoI−BamHI挿入物をpCI’ベクターのXhoI−BamHI部位にサブクローン化することにより作成し、そしてpBM532は前記構築物pMB507から、オリゴヌクレオチド850と851をプライマーとして(表5)そしてpMB507を鋳型として用いるPCRにより作成した。該PCR産物をBglIIとSpeIにより消化して、pMB507のBglII部位およびSpeI部位にサブクローン化し、そして配列決定することによりpMB532を提供した。
【0193】
該PCR産物を、BglIIとPstIにより消化して、挿入物をpMB507のBglII部位とPstI部位にクローン化して、pMB910を創製した。陽性クローンは、上記構築物に導入された追加のDraI部位の存在により同定された。pMB910のDNA配列をジデオキシ法により確認した後、完全なα−サブユニット類似体をコードしたDNA断片をpMB910からXhoIとBamHIの消化により取り出して、pCI’ベクターのXhoI部位とBamHI部位にサブクローン化することによりpMB926を創製した。pMB926はαV76Cをコードする。
【0194】
αV76CのhCGのβ−サブユニットパートナーを創製するために、hCGβ’V44Cをコードするベクターを製造した。これは、pMB926と同じ細胞中で発現させた場合に、αV76Cとジスルフィド架橋ヘテロダイマーを形成することが期待される。オリゴヌクレオチド1133と1134(表5)を合成して、pKMB−β’のNgoMI−PstI部位に連結することによりpMB909を創製した。pMB909からのXhoI−BamHI断片をpCI’に移すことによりpMB941を創製した。pMB941によりコードされるhCGβV44Cのアミノ酸配列を表11に示す。
【0195】
実施例14:β−サブユニットループ2とα−サブユニットループ3の間にジスルフィドを含むhFSH類似体
hCGとhFSHのβ−サブユニットのアミノ酸配列の類似性、特にシステイン(表4)に基づき、両方のタンパク質は同様の構造を有すると予測される。hCGのβ−サブユニットループ2中のVal44とα−サブユニットループ3中のVal76の相対的な位置は、これらの残基のシステインへの変化がβ−サブユニットループ2とα−サブユニットループ3の間にサブユニット内ジスルフィドを創製するはずであることを示唆した。Val38は、hCGのβ−サブユニットのVal44のように、hFSHのβ−サブユニット中で同様な位置を占める。よって、hFSHβVal38のシステインへの変化およびその結果の構築物の間にV76Cを伴う発現は、ジスルフィド架橋ヘテロダイマーをもたらすと考えられた。hFSHのβ−サブユニット中のVal38をシステインに変化させるために、本発明者は、XhoIとBamHI制限部位間に非翻訳3’および5’末端を持たないhFSHβcDNAコーディング配列を含む構築物であるpMB603を用いて開始した。pMB603のBstXIとPpuMI部位の間の小さなDNA断片を、オリゴヌクレオチド1154と1155(表5)をアニールすることにより製造されたオリゴヌクレオチドカセットで置き換えた。
【0196】
pMB920と呼ぶその結果の構築物を、BstXI部位の欠損並びにPpuMI部位の存在に関してスクリーンした。DNA配列決定により所望の変化の存在を確認した後、pMB920を、COS−7細胞へ、αV76Cの発現を推進するベクターであるpMB926と同時トランスフェクトした。該細胞は培地中にヘテロダイマーを分泌し、捕獲用の抗α−サブユニットモノクローナル抗体A113と放射性標識抗hFSHのβ−サブユニットモノクローナル抗体B602を用いたサンドイッチイムノアッセイにおいて容易に検出した。pMB920によりコードされるhFSHβ38Cのアミノ酸配列を表10に示す。αV76CとhFSHβV38Cからなるヘテロダイマーは、ヒトFSHレセプターを発現するCHO細胞中でサイクリックAMPの蓄積を刺激した。
【0197】
実施例15:各サブユニット間並びにシステインノット間にジスルフィドを含むhCG類似体
サブユニット内部ジスルフィドに関与することができる遊離チオールを創製するように各々のサブユニットを修飾することにより、前のジスルフィド架橋ヘテロダイマーを製造した。ここでは、hCGのβ−サブユニットのみを修飾することによりジスルフィド架橋hCG類似体を製造できることを示す。hCGの結晶構造は、α−サブユニットCys31がβ−サブユニットTyr37の近傍に位置して、両方の鎖の側鎖が互いの方に向かっていることを示した。この観察は、以前に、hCGのα−サブユニット残基31とβ−サブユニット残基37の間にサブユニット内ジスルフィド結合を挿入するのに用いられた。hCGの結晶構造は、α−サブユニット残基Cys7がhCGのβ−サブユニット残基Arg6の近傍に位置していることも示す。事実、α−サブユニット残基Arg6と37は、Arg6とTyr37を変換するように、αCys7−αCys31とβCys6−βCys−37のサブユニット内ジスルフィドを含むヘテロダイマー、αCys7−βCys6とαCys31−βCys37のサブユニット内ジスルフィドを含むヘテロダイマー、あるいはαCys7−βCys37とαCys31−βCys6サブユニット内ジスルフィドを含むヘテロダイマーの形成を促進するかもしれない。コンピューターシミュレーションは、これらのジスルフィド結合の各々が不都合な株を用いずにタンパク質上に形成できたことを示した。複数のジスルフィドの形成は、異なる半減期を有する異性体またはアイソフォームの群を創製するのに有用であるべきである。これらは、特に生物反応が「ジャンプスタート」することを要求される場合に、新規な治療用用途を有するかもしれない。これらを用いる際は、ホルモン応答を開始するために類似体の大きな巨丸剤を投与するはずである。架橋されなかったヘテロダイマーの画分は、架橋したヘテロダイマーの画分よりも早くクリアされることが期待される。結果として、多量の初期注射は応答を開始するのに十分であるが、その活性は応答を維持するために長期間保持される低レベルに散在する。この類似体は、PEG化類似体の製造のための中間体として機能することも期待される。システイン残基は唯一の反応性を有し、そしてタンパク質表面上に遊離システインを負荷することがしばしば望まれる。しかしながら、システインの反応性のために、この種のタンパク質は創製するのが難しくなりうる。α−サブユニットCys7−Cys31ジスルフィドが遊離システインを創製する状態に容易に低下されることは知られている。β−サブユニットにおける残基6と37の間へのシステインの導入は、同様な種類のジスルフィドを創製することが予測される。これらのジスルフィド中のシステインは該タンパク質中の他のシステインよりも活性であることが予測され、特に、それらがジスルフィド交換を促進する位置にあるからである。即ち、本発明者は、残基Cys37において存在するα−サブユニットシステインとβ−サブユニット残基Cys6において付加されたシステインに、該タンパク質を修飾するはずの試薬を反応させることが可能であると予測する。これらは、該タンパク質をPEG化できて、その生物半減期を安定化させることができるものを含むことができた。このプロセスにおいて「自由にされた(freed)」システインは、該タンパク質を安定化するはずのサブユニット内ジスルフィドを形成するはずである。この類似体の製造は、hCGβ’Y37Cとして知られる類似体に第2システインを付加することを必要とした。
【0198】
オリゴヌクレオチド1161と1163(表5)をプライマーとして、そしてpCI’−hCGβ’を鋳型として用いるOCR変異導入により、類似体hCGβ’をコードする構築物であるpMB940を製造した。オリゴヌクレオチド1161はpCI’ベクター中に位置する配列をはずれて開始し(prime off sequences)、オリゴヌクレオチド1163は変異をコードする。PCR産物をXhoIとBanIで消化して、pSVL−hCGβ’Y37Cから得たBanI−BamHI断片と連結してpCI’の大きなXhoI−BamHI断片としてpMB941を創製した。pMB941のコーディング配列のDNA配列は、ジデオキシ法により確認した。pMB941は如何に示すアミノ酸配列をコードする:
hCGβ’R6C,Y37C:
【0199】
【化1】

【0200】
pMB940とpSV2NeoをCHO細胞中に同時トランスフェクトして、毒性薬剤G418に対するその耐性により、安定なラインを選択した。培地から回収したタンパク質は、捕獲用の抗α−サブユニットモノクローナル抗体A113と検出用の放射性標識抗β−サブユニットモノクローナル抗体B112を用いたサンドイッチイムノアッセイを用いて定量した。このアッセイは、捕獲用培地中にヘテロダイマーの存在を確認した。該ヘテロダイマーの生物活性は、ラットのLHレセプターを発現するCHO細胞を用いてサイクリックAMP蓄積アッセイにおいて測定した。このアッセイの結果を図46に示す。
【0201】
実施例16:各サブユニットのN末端間およびシステインノット間にジスルフィドを含むhFSH類似体
前に述べたとおり、複数のジスルフィドの形成は異なる半減期を有するタンパク質の群を創製するのに有用かもしれない。同様な類似体は、濾胞の発生を刺激するための改良されたアプローチを申し出る。サブユニット内ジスルフィドを含まないでかつ架橋されなかったヘテロダイマーの画分は、サブユニット内架橋を含むヘテロダイマーの画分よりも早くクリアされるべきである。結果として、多量の初期注射は応答を開始するのに十分であるが、その活性は長期間保持される低レベルに散在する。これは、濾胞期の間に観察されるFSH刺激の種類をより密接に模倣するはずであり、そして過剰刺激のチャンスを減じるかもしれない。hFSHのβ−サブユニットのN末端へのシステインの付加あるいはhFSHのβ−サブユニットのN末端へのhCGのβ−サブユニットアミノ末端の付加はヘテロダイマーおよびサブユニット内架橋の形成を促進するはずであると予測される。実施例15中の類似体のそれに類似のヘテロダイマーを形成することが期待されるhFSHのβ−サブユニットは如何に示すアミノ酸配列を有すはずである:
hFSH’βR−2C,Y31C:
【0202】
【化2】

【0203】
実施例17:実施例15における類似体と類似のジスルフィド配置を含む有力なhFSH活性を有するhCG類似体
β−サブユニットアミノ酸94−110がそれらのhFSH同等物で置換されたhCG類似体は高いFSH活性を有する。hCGのβ−サブユニット残基101−109に代えてhFSHのβ−サブユニット残基95−103を含み、そしてβ−サブユニット6と37においてシステインを含むhCGとhFSHのキメラは、実施例15におけるものと同様なジスルフィド配置を形成すると予測される。これらは、高いFSH活性を有することも期待される。そのような類似体の一つのβ−サブユニットのアミノ酸配列は以下である:
CFC94−117βR6C,Y37C:
【0204】
【化3】

【0205】
本発明を今完全に記載することにより、広範囲の均等なパラメーター、濃度、および条件内で、本発明の精神および範囲から逸脱する事なく、そして「過度な実験を必要とせずに同等なものが実施されうることは当業者により理解されることになる。
【0206】
本発明は、その特定の態様に関連して記載されてきたが、さらに修飾可能であることは理解されることになる。この出願は、一般的に発明の原理に従い、そして発明が属する分野における公知または習慣的実施の範囲内に生ずるような、そして請求の範囲に従うとおりに前記本質的特徴に適用してよいような、本開示からの変更を含む、発明のあらゆる変更、使用または適合を包含することを意図する。
【0207】
雑誌の文献またはアブストラクト、公表されたかまたは対応する米国あるいは他の国の出願または外国の特許出願、発行された米国または外国の特許、またはその他の文献を含む、本明細書にて引用の全ての文献は、引用された文献中に提示された全データ、表、図面およびテキストを含めて引用に本明細書に編入される。さらに、本明細書にて引用された文献の範囲内の引用文献の全内容も、引用により本明細書に編入される。
【0208】
公知の方法の工程、慣用の方法の工程、公知の方法または慣用の方法に対する言及は、いかなる方法においても、本発明のあらゆる側面、記載または態様が開示されるか、教示されるか、あるいは関連分野において示唆されるとの承認ではない。特定の態様に関する前の記載は、当業界の範囲の知識を適用することにより(本明細書にて引用された文献を含む)、過度な実験無しに、本発明の一般的概念を逸脱することなく、様々な応用のためにそのような特定の態様を容易に修飾および/または適合させることが可能であるとの発明の一般的性質をそうして完全に明らかにすることになる。よって、そのような適合および修飾は本明細書にの教示およびガイダンスに基づき、開示された態様の均等物の意味および範囲内であることが意図される。本明細書の言葉づかいまたは用語は、記載の目的であって限定ではなく、本明細書の言葉づかいまたは用語は当業者により本明細書の教示およびガイダンスの見地から、当業者の一人の知識と共同して解釈されるべきであると理解される。
【0209】
【表19】

【0210】
【表20】

【0211】
【表21】

【0212】
【表22】

【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】図1A−1Cは、hCGのα−サブユニットの構造(図1A)を、単一文字コードで示したそのアミノ酸配列12ー7(図1B)および糖タンパク質ホルモンサブユニット内の構造エレメントの一般的略図(図1C)と共に、示している。図1Aに認められるように、システインノットは、サブユニットを3つの大きいループに分ける。ループ1および3を、上部に示す。黒色の線はアミノ酸骨格のCαを指し、灰色の線は、ジスルフィド結合を指すことに注目されたい。図1Bの線は、ジスルフィド結合を示している。表1Aに列挙したような糖タンパク質ホルモンサブユニットの構造エレメントを、略図の形で図1Cに示す。
【図2】図2Aおよび2Bは、hCGのβ−サブユニットの構造(図2A)を、一文字コードでのそのアミノ酸配列(図2B)と共に、示している。図2Aに認められるように、システインノットは、β−サブユニットを3つの大きいループに分ける。ループ2を、上に示す。図右側の小さいループは、シートベルトである。この領域内の正および負にチャージした残基は、それぞれ、LHおよびTSH活性に重要である。小シートベルトループから下方のβ−サブユニットの残りの部分のβ−サブユニットループ1にこの小さいループを連結する残基は、FSHおよびTSHレセプターの結合に主に影響する。黒色の線はアミノ酸骨格のCαを指し、灰色の線は、ジスルフィド結合を指すことに注目されたい。図2Bの線は、ジスルフィド結合を示している。
【図3】図3Aおよび3Bは、プラスミドpSVL−α、pCI−α、pSVL−αC7SおよびpC7−αC7Sによってコードされる、α(図3A)およびαC7S(図7B)の翻訳されたアミノ酸配列を示している。個々の翻訳タンパク質は、同一リーダー配列を持つので、両方共、同一様式でプロセシングされて、92アミノ酸からなり、APDで始まるN−末端アミノ酸配列を持つ、タンパク質を作り出すと期待される。この図およびその他の図中に用いられている文字コードは:A、アラニン(Ala);C、システイン(Cys);D、アスパラギン酸(Asp);E、グルタミン酸(Glu);F、フェニルアラニン(Phe);G、グリシン(Gly);H、ヒスチジン(His);I、イソロイシン(Ile);K、リジン(Lys);L、ロイシン(Leu);M、メチオニン(Met);N、アスパラギン(Asn);P、プロリン(Pro);Q、グルタミン(Gln);R、アルギニン(Arg);S、セリン(Ser);T、スレオニン(Thr);V、バリン(Val);W、トリプトファン(Trp);および、Y、チロシン(Tyr):である。C7Sで示された大文字は、セリンにより置換されたCys7の位置を示している。
【図4】図4Aおよび4Bは、プラスミドpSVL−hCGβ’およびpSVL−hCGβ’C7Sによってコードされた、hCGβ’(図4A)およびhCGβ’Y37C(図4B)の翻訳されたアミノ酸配列を示している。それぞれは、同一のリーダー配列をもつので、両方とも、同じ様式でプロセシングされ、145アミノ酸からなり、SKEで始まるN−末端アミノ酸配列をもつ、タンパク質を作り出すと、予想される。大文字は、システインに変異したTyr37の位置を示す。
【図5】図5は、α−サブユニットモノクローナル抗体A113およびA407の結合時における、α−サブユニット内のC7S変異による影響を示している。細胞構造内で調製された組み換えhCG(rhCG)および下に示した類似体(それぞれ2本の棒グラフで示し、その構造は実施例中に記載されている)を、捕獲抗体としてB112、そして、検出抗体として125Iで標識したA113またはA407のいずれかを用いたサンドイッチイムノアッセイにかけた。B112は、β−サブユニットのループ3の残基に含まれるエピトープを認識し;A113は、α−サブユニットのループ1内の残基に含まれるエピトープを認識し;そして、A407はα−サブユニットのN−末端およびα−サブユニットのループ1の異なる部分内の残基に含まれるエピトープを認識する。A407およびA113のエピトープは、両方とも同時にhCGと結合することができるので、重複していない。個々の対の右側の棒グラフは、B112/A407アッセイを示す。左側の棒グラフーは、B112/A113アッセイを示す。ここで認められるように、C7Sの変異は、A113の結合よりA407の結合により大きい影響を持っていた。
【図6】図6は、hCG(α31−β37)のLHレセプターへの結合について示している。この図では、細胞培養で調製されたrhCGの能力について説明している(上向き三角)。hCGを尿から精製する(四角)か、または、hCG(α31−β37)を細胞培養より調製し(下向き三角)、LHレセプターを発現する200,000のCHO細胞への 125I−hCGの結合を阻害した。縦座標の値は、インキュベーション終了時に細胞に結合した放射能標識されたhCGの量を示している。このアッセイは、hCG(α31−β37)が、hCGと同様にLHレセプターに結合することを示している。
【図7】図7は、hCG(α31−β37)のLHレセプターシグナル導入活性を示しており、rhCGおよびhCG(α31−β37)がLHレセプターを発現する200,000のCHO細胞内へのサイクリックAMPの蓄積を促進することを説明している。ホルモン刺激に応じたサクリックAMPの生産は、シグナル導入の広く認識されたパラメーターである。このアッセイでは、hCG(α31−β37)が、hCGと同様にサイクリックAMPの蓄積を刺激することが示された。
【図8】図8は、hCGおよびサブユニット内ジスルフィド結合を含むhCG類似体の熱安定性を示している。類似した量のhCGおよびその類似体を、横座標に示す時間、85゜Cにインキュベートした。サンプルを冷却し、抗−hCG α−サブユニット抗体A113(捕獲用)および 125Iで標識した抗−hCG β−サブユニット抗体B112(検出用)を用いたサンドイッチイムノアッセイにかけ、残ったヘテロダイマーの量を定量した。縦座標の値は、加熱前の開始時のhCG量と比較した、このアッセイで残った活性の量を示している。このアッセイは、85゜CではhCGが急速に破壊されるのに対して、架橋された類似体は、少なくとも20分間その活性を保持していたことを示している。
【図9】図9は、尿素解離に対するhCGおよび架橋類似体の安定性を示している。個々の列の上部に、同定したrhCGおよび架橋hCG類似体への8M尿素の影響を、示している。8M尿素でhCGを処理すると、そのサブユニットの解離が促進されることが良く知られており、本明細書でもその知見が確認された。認められるように、8M尿素で架橋した類似体を処理しても、ヘテロダイマーに相当する結合を失う結果となる、サブユニット解離は促進されなかった。ヘテロダイマーおよび遊離β−サブユニットの位置を図の左側に示している。未処理のおよび尿素処理したサンプルを電気泳動した後、ゲル内のタンパク質をニトロセルロース上に電気ブロットし、ニトロセルロース表面上の残りの非特異的タンパク質部位をブロックし、そしてダイマーおよび遊離のβ−サブユニットを、 125I標識したB105を用いて検出した。
【図10】図10Aおよび10Bは、プラスミドpSVL−CFC101−114βおよびpSVLCFC101−114βY37CによってコードされたCFC101−114β’(図10A)およびCFC101−114β’Y37C(図10B)の翻訳されたアミノ酸配列を、一文字アミノ酸コードで示している。それぞれは、同一のリーダー配列を持つので、両者は同様にプロセスされ、SKEで始まるN−末端アミノ酸配列を持つ145アミノ酸からなるタンパク質を作り出す、と予想される。大文字の位置は、システインに変異したTyr37の位置を示している。下線で示した配列は、hFSH β−サブユニットから誘導されている。残基Arg95−Ser95のコドンは、BglII部位を形成し、Val102−Arg103−Gly104のコドンは、SstII部位を形成する。
【図11】図11は、二機能性hCG/hFSHキメラ類似体へのα−サブユニットモノクローナル抗体A113−A407の結合に関するα31−β37およびα51−β99のジスルフィドの影響を示している。hCGおよびCFC101−114類似体(それぞれ対の棒グラフの下に示し、その構造を実施例に記載している)を、捕獲用抗体としてB112を、検出用抗体として 125I標識したA113またはA407のいずれかを用いたサンドイッチイムノアッセイにかけた。B112は、β−サブユニットのループ3内の残基に含まれるエピトープを認識し;A113は、α−サブユニットのループ1内の残基に含まれるエピトープを認識し;そして、A407は、α−サブユニットのN−末端およびα−サブユニットのループ1の異なる部分内の残基に含まれるエピトープを認識する。A407およびA113に関するエピトープは、両方とも同時にhCGに結合できるため、重複はしていない。それぞれの対の右の棒グラフは、B112/A407アッセイを示している。左の棒グラフは、B112/A113アッセイを指す。本明細書中に認められるように、α31−β37のジスルフィドもα51−β99のジスルフィドも、CFC101−114へのA407の結合活性を回復しなかった。
【図12】図12は、hCG、CFC101−114、および、サブユニット内ジスルフィド結合を含むCFC101−114類似体の熱安定性を示している。hCG、CFC101−114およびCFC101−114類似体を、横座標に示す時間、85゜Cにインキュベートした。サンプルを冷却し、抗−hCG α−サブユニット抗体A113(捕獲用)および 125Iで標識した抗−hCG β−サブユニット抗体B112(検出用)を用いてサンドイッチイムノアッセイにかけ、残ったヘテロダイマーの量を定量した。縦座標の値は、加熱前の開始時のhCG量と比較した、このアッセイで残った活性の量を示している。このアッセイは、hCGおよびCFC101−114が85゜Cで急速に崩壊するのに対して、架橋された類似体は、実質的に少なくとも20分間活性が保持された。
【図13】図13は、LHレセプターを発現する細胞内のサイクリック−AMPの蓄積を刺激する、hCG、CFC101−114、およびCFC101−114類似体の能力を示す。この図は、LHレセプターのシグナル導入を刺激する能力を比較するために設計されたアッセイで、CFC101−144(α31−β37)の能力(黒三角)が、少なくともCFC101−114の能力(白丸)を同程度であることを説明している。また、CFC101−114(α51−β99)もまたシグナル導入を刺激したが、その能力は、CFC101−114またはCFC101−114(α51−β99)の能力より低かった。従って、α31−β99ジスルフィドを調製するに必要な変異と比較して、α31−β37ジスルフィドを調製するに必要な変異は、シグナル導入に影響を与えなかった。シートベルトは、レセプター結合特異性に影響を与えることが良く知られている。従って、この図のデータは、レセプター接触または結合特異性にかかわらないと考えられるホルモン領域内へのジスルフィド導入は、レセプター結合またはシグナル導入に最少の影響しか与えないであろうと言う考えを指示する。従って、レセプターと接触しない、および/またはレセプター結合の特異性を構築しないホルモンの領域は、ジスルフィド結合架橋ヘテロダイマーを調製するための好ましい部位となる。
【図14】図14は、FSHレセプターを発現する細胞内へのサイクリック−AMPの蓄積を刺激する、hFSH、CFC101−114、およびCFC101−114(α31−β37)の能力を示している。この図は、FSHレセプターシグナル導入を刺激する能力を比較するために設計されたアッセイでは、CFC101−114(α31−β37)(黒三角)への応答最大の半値は、CFC101−114(白丸)のそれと類似していることを示している。従って、α51−β99ジスルフィドの調製に必要な変異に対して、α31−β37ジスルフィドを調製するのに必要な変異は、FSH−誘導シグナル導入に最少の影響しか持たなかった。シートベルトは、レセプター結合特異性に影響を与えることが良く知られている。従って、この図のデータは、レセプター接触または結合特異性にかかわらないと考えられるホルモン領域内へのジスルフィド導入は、FSHのレセプター結合またはシグナル導入に最少の影響しか持たないであろうと言う考えを指示する。従って、レセプターと接触しない、および/またはレセプター結合の特異性を構築しないホルモンの領域は、ジスルフィド結合架橋ヘテロダイマーを調製するための好ましい部位であろう。
【図15】図15Aおよび15Bは、プラスミドpSVL−αK51CおよびpSVL−hCGβ’D99Cによってコードされた、αKSIC(図15A)およびhCGβD99C(図15B)の翻訳されたアミノ酸配列を示している。タンパク質の基になる個々のhCG α−サブユニットおよびタンパク質の基になる個々のhCG β−サブユニットは、hCGのα−およびβ−サブユニットと同一のシグナルペプチドを持つので、それらは、同じ方式でプロセシングされると予想される。従って、αK51Cは、N−末端配列APDを含む92のアミノ酸残基を含むと予想され、hCGβ’D99Cは、N−末端配列SKEを含む145アミノ酸残基を含むと予想される。本明細書中に用いた一文字アミノ酸コードは、図3Aおよび3Bの説明で定義している。大文字は、サブユニット内ジスルフィド結合を形成するために作られた変異の位置を示している。
【図16】図16は、LHレセプターを発現するCHO細胞への放射能標識hCGの結合を阻害する、hCGの能力を実線の丸で、hCG(α51−β99)の能力を破線の上向き三角で、比較提示している。
【図17】図17は、LHレセプターを発現するCHO細胞への放射能標識hCGの結合を阻害する、hCGの能力を実線の四角で、hCG(α−βD99C)を破線の下向き三角で、hCG(α51−β99)を破線の上向き三角で;そしてhCG(αK51c−β)を破線の菱形で、比較提示している。
【図18】図18は、LHレセプターを発現するCHO細胞との結合について、放射能標識したhCGと競合する、hCGの能力を実線の丸で、hCG(αK51A−β)を破線の下向き三角で、比較提示している。
【図19】図19は、hCGのLHレセプターシグナル導入活性を実線の丸で、hCG(α51−β99)のそれを破線の白の四角で、hCG(α−βD99C)を破線の上向き三角で;hCG(αK51C−β)を破線の丸で、比較提示している。
【図20】図20は、hCGのLHレセプターシグナル導入活性を実線の丸で;そしてhCG(αK51A−β)を破線の白四角で、比較提示している。
【図21】図21は、プラスミドpSVL−CFC101−114β’D99Cによってコードされる翻訳されたアミノ酸配列を示している。この翻訳されたタンパク質は、hCG β−サブユニットと同じシグナル配列を持つので、同じ様式でプロセシングされ、N−末端アミノ酸配列SKEを持つ145アミノ酸からなる分泌タンパク質に導かれると予想される。大文字は、ジスルフィド結合を誘導するために作られた変異の位置を示す。
【図22】図22は、LHレセプターと結合するhCGの比活性を実線で、CFC101−114のそれを破線の上向き三角で、CFC101−114(α51−β99)を破線の下向き三角で、CFC101−114(α−βD99C)を破線の黒の菱形で、そしてCFC101−114(αK51C−β)を破線の白の菱形で、比較提示している。
【図23】図23は、LHレセプターと結合するrhCGの比活性を実線の四角で;CFC101−114のそれを破線の上向き三角で;CFC101−114(αK51A−β)を破線の丸で、比較提示している。
【図24】図24は、hCGのLHレセプターシグナル導入の比活性を実線の黒丸で;CFC101−114を破線の白四角で;CFC101−114(α−βD99C)を破線の菱形で;CFC101−114(αK51C−βD99C)を独立した点×で;そしてCRC101−114(αK51C−β)を横座標に最も接近した線で;比較提示している。
【図25】図25は、rhCGのLHレセプターシグナル導入活性を実線の丸で;そして、CFC101−114(αK51A−β)を破線の上向き三角で;比較提示している。
【図26】図26は、hFSHレセプターを発現するCHO細胞への 125I−hFSHの結合を阻害する、hFSHの能力を実線の丸で;CFC101−114を破線の四角で;CFC101−114(α−βD99C)を破線の上向き三角で;CFC101−114(αK51C−βD99C)を実線の下向き三角で;CFC101−114(αK51C−β)を実線の白のシンボルで、比較提示している。
【図27】図27は、hFSHレセプターを持つCHO細胞へのシグナル導入を刺激する、hFSHの能力を実線の丸で、CFC101−114を破線の白のシンボルで、比較提示している。CFC101(α51−β99)、CFC101−114(α−βD99C)およびCFC101−114(αK51C−β)のシグナル導入活性は、用いた類似体の濃度では低すぎて検出できなかった。
【図28】図28は、hFSHレセプターを発現するCHO細胞内へのシグナル導入を刺激する、hFSHの能力を実線の丸で、CFC101−114のそれを破線の白四角で、そしてCFC101−114(αK51A−β)を破線の上向き三角で、比較提示している。
【図29】図29Aおよび29Bは、αC7S、K51C(図29A)およびhCGβ’Y37C、D99C(図29B)のアミノ酸配列を、小文字の一文字アミノ酸コードで、示している。Cys7と置き換えた図29Aのセリン、およびTyr37およびAsp99と置き換えた図29Bのシステインを、大文字で示している。
【図30】図30は、LHレセプターを発現するCHO細胞への 125I−hCGの結合を阻害する、hCGの能力を実線の白のシンボルで、hCG(α31−β37、α51−β99)を破線の黒のシンボルで、示している。
【図31】図31は、LHレセプターを発現するCHO細胞内へのシグナル導入を刺激する、hCGの能力を実線の下向き三角で、hCG(α31−β37、α51−99)を実線の丸で、示している。
【図32】図32Aおよび32Bは、hCG、hLH、hFSH、およびα−サブユニットとβ−サブユニットの間のシステイン間ノットジスルフィドによって安定化されたhTSH類似体の調製に有益であると予想されるα−サブユニット類似体である、αC27Aのアミノ酸配列(図32A)、ならびに、α−サブユニットとβ−サブユニットの間のシステイン間ノットジスルフィドによって安定化されたhFSHの調製に有効であると予想させるβ−サブユニット類似体である、hFSHβY31Cのアミノ酸配列(図32B)を示している。 この図では、α−サブユニット類似体およびhFSH β−サブユニット類似体のアミノ酸配列を、小文字の一文字アミノ酸コードで、示している。α−サブユニット内のCys7のアラニンによる置換は、αC7Aアミノ酸配列内に大文字で示しているが、実施例1および2で説明したようなCys7のセリンによる置換と同じ影響を持つと予想されるであろう。また、hFSHβY31C配列内の31位のシステイン残基の存在も大文字で示されている。このFSH β−サブユニット類似体およびαC7AまたはαC7Sとして以前同定されたα−サブユニット類似体を発現する細胞は、FSH活性を持つジスルフィド架橋されたヘテロダイマータンパク質を分泌すると期待されるであろう。hFSHβY31Cのこのシグナル配列は、hFSH β−サブユニットのそれと同一であり、それ故、hFSH β−サブユニットと同様にプロセシングされると期待される。従って、そのN−末端配列は、NSCであろう。
【図33】図33は、糖タンパク質ホルモン類似体を調製する遺伝子コードを示している。
【図34】図34Aおよび34Bは、hCG、hLH、hFSH、ならびに、α−サブユニットとβ−サブユニットのN−末端部分の間をサブユニット内ジスルフィドによって安定化したhTSH類似体、の調製に有用であると期待されるα−サブユニット類似体である、αQ5Cのアミノ酸配列(図34A)、ならびに、α−サブユニットとβ−サブユニットのN−末端部分の間をサブユニット内ジスルフィドによって安定化したhCG類似体の調製に有用であると期待されるβ−サブユニット類似体である、hCGβR8Cのアミノ酸配列(図34b)を、示している。この図は、α−サブユニット類似体およびhCG β−サブユニット類似体の類似体のコード配列を示しており、これらは、同時発現した場合、LH活性を持つジスルフィド架橋ホルモン類似体を形成すると期待されるであろう。タンパク質のアミノ酸配列およびそれらのシグナル配列を、一文字コードで示している。大文字は、サブユニット内ジスルフィドを形成するのに必要な変異の位置を示している。
【図35】図35は、α−サブユニットとβ−サブユニットのN−末端部分の間のサブユニット内ジスルフィドによって安定化したhFSH類似体を調製するために有用であると期待されるhFSH β−サブユニット類似体であり、Ser2がシステインに変換された、hFSHβ52Cのアミノ酸配列を示している。αQ5C(前記)およびhFSHβS2Cを同時発現する細胞は、実質的なFSH活性を持つジスルフィド架橋ヘテロダイマーを生成すると期待されるであろう。
【図36】図36は、α−サブユニットとβ−サブユニットの間のシステイン間ノットジスルフィドによって安定化されたhLH類似体を調製するために有用であると期待されるβ−サブユニット類似体である、hLHβY37Cのアミノ酸配列を、小文字の一文字アミノ酸コードで、示している。37位のシステイン残基の存在を、大文字で示している。以前、αC7SまたはαC7Aとして同定された、このLH β−サブユニット類似体およびα−サブユニット類似体を発現する細胞は、LH活性を持つジスルフィド架橋ヘテロダイマータンパク質を分泌すると期待されるであろう。hLHβY31Cのこのシグナル配列は、hLH β−サブユニットのそれと同一であり、それ故、hLH β−サブユニットと同様にプロセシングされると予想される。従って、そのN−末端配列は、SREであろう。
【図37】図37は、α−サブユニットとβ−サブユニットのN−末端部分の間のサブユニット内ジスルフィドによって安定化されるhLH類似体の調製に有用であると予想されるβ−サブユニット類似体であり、Trp8がシステインに変換されている、る、hLHβW8Cのアミノ酸配列を示している。αQ5C(前記)およびhLHβW8Cを同時発現する細胞は、実質的にLH活性を持つジスルフィド架橋したヘテロダイマーを生成すると期待されるであろう。
【図38】図38は、α−サブユニットとβ−サブユニットの間のシステイン間ノットジスルフィドによって安定化されるhTSH類似体の調製に有用であると期待されるβ−サブユニット類似体である、hTSHβY30Cのアミノ酸配列を、小文字の一文字アミノ酸コードで示している。30位のシステイン残基の存在を大文字で示している。このTSH β−サブユニット類似体および以前にαC7sまたはαC7Aとして同定されたα−サブユニット類似体を発現する細胞は、TSH活性を持つジスルフィド架橋ヘテロダイマータンパク質を分泌すると期待されるであろう。hTSHβY31Cのシグナル配列は、hTSH β−サブユニットのそれと同一であり、それ故、hTSH β−サブユニットと同様にプロセシングされると予想される。従って、そのN−末端配列は、FCIであろう。
【図39】図39は、α−サブユニットとβ−サブユニットのN−末端部分の間のサブユニット内ジスルフィドによって安定化されるhTSH類似体の調製に有用であろうと期待されるβ−サブユニット類似体であり、Phe1をシステインに変換した、hTSHβF1Cのアミノ酸配列を示している。αQ5C(前記)およびhTSHβF1Cを同時発現する細胞は、実質的なTSH活性を持つジスルフィドヘテロダイマーを生成すると予想されるであろう。
【図40】図40は、αC7Sコドンの構築について、略図で示している。
【図41】図41は、pSVL−CFC101−114β’の構築について、略図で示している。
【図42】図42は、pSVL−CVC94−114β’の構築について、略図で示している。
【図43】図43は、pSVL−CFC101−106β’の構築について、略図で示している。
【図44】図44は、pSVL−αK51Cの構築について、略図で示している。
【図45】図45は、ヒトFSHレセプターを発現するCHO細胞内のサイクリック−AMPの蓄積を刺激する、hFSHとその類似体、αV76C+hFSHβV38C、の能力を示している。
【図46】図46は、LHレセプターを発現するCHO細胞内のサイクリック−AMPの蓄積を刺激する、hCGとその類似体、α+hCGβR6C、Y37C、の能力を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−サブユニットおよびβ−サブユニットを有する、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト黄体形成ホルモン(hLH)、ヒト卵胞刺激ホルモン(hFSH)、ヒト甲状腺刺激ホルモン(hTSH)、およびそれらの機能性変異体からなる群から選択される糖タンパク質ホルモンであって、上記糖タンパク質ホルモンのサブユニットのアミノ酸配列が修飾されることにより、α−サブユニットのシステインノット内に位置するシステイン残基とβ−サブユニットのシステインノット内に位置するシステイン残基の間にサブユニット間ジスルフィド結合を創製し、安定性の改良のために、相当する天然糖タンパク質ホルモンレセプターに対しての生物活性の少なくとも一部を保持する上記糖タンパク質ホルモン。
【請求項2】
サブユニット間ジスルフィド結合が天然システイン残基と修飾されてシステイン残基になる残基の間である、請求項1記載の糖タンパク質ホルモン。
【請求項3】
サブユニット間ジスルフィド結合がα−サブユニットの天然システイン残基と修飾されてシステイン残基になるβ−サブユニットの残基の間である、請求項2記載の糖タンパク質ホルモン。
【請求項4】
β−サブユニットのアミノ酸配列が修飾されて、残基Tyr37をシステインで置換することにより、α−サブユニットの天然Cys31残基と修飾されてシステイン残基になるβ−サブユニットの残基37の間にサブユニット間ジスルフィド結合を形成する、請求項3記載の糖タンパク質ホルモン。
【請求項5】
hCGの類似体、hLHの類似体、およびそれらの機能性変異タンパク質からなる群から選択される、請求項4記載の糖タンパク質ホルモン。
【請求項6】
hFSHのβ−サブユニットのアミノ酸配列が修飾されて、残基Tyr37をシステインで置換することにより、α−サブユニットの天然Cys31残基と修飾されてシステイン残基になるhFSHのβ−サブユニットの残基31の間にサブユニット間ジスルフィド結合を形成する、請求項3記載の糖タンパク質ホルモン。
【請求項7】
hTSHのβ−サブユニットのアミノ酸配列が修飾されて、残基Tyr30をシステインで置換することにより、α−サブユニットの天然Cys31残基と修飾されてシステイン残基になるhTSHのβ−サブユニットの残基30の間にサブユニット間ジスルフィド結合を形成する、請求項3記載の糖タンパク質ホルモン。
【請求項8】
α−サブユニットおよびβ−サブユニットを有する、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト黄体形成ホルモン(hLH)、ヒト卵胞刺激ホルモン(hFSH)、ヒト甲状腺刺激ホルモン(hTSH)、およびそれらの機能性変異体からなる群から選択される糖タンパク質ホルモンであって、上記糖タンパク質ホルモンのサブユニットのアミノ酸配列が修飾されることにより、α−サブユニットのループ3とβ−サブユニットのループ2の間にサブユニット間ジスルフィド結合を創製し、安定性の改良のために、相当する天然糖タンパク質ホルモンレセプターに対しての生物活性の少なくとも一部を保持する上記糖タンパク質ホルモン。
【請求項9】
α−サブユニットのアミノ酸配列が修飾されて、Va176をシステインで置換し、そしてhFSHβ−サブユニットのアミノ酸配列が修飾されて、Va138をシステインで置換することにより、α−サブユニットの残基76とhFSHβ−サブユニットの残基の間にサブユニット間ジスルフィド結合を形成する、請求項8記載の糖タンパク質ホルモン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2007−16040(P2007−16040A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222581(P2006−222581)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【分割の表示】特願平11−505000の分割
【原出願日】平成10年6月25日(1998.6.25)
【出願人】(595158407)アプライド・リサーチ・システムズ・エイアールエス・ホールディング・ナムローゼ・フェンノートシャップ (2)
【氏名又は名称原語表記】Applied Research Systems ARS Holding N.V.
【Fターム(参考)】