説明

ジッタ測定レンジの拡大および調整方法

【課題】
ジッタ測定レンジの拡大または調整。
【解決手段】
信号の大きさがサンプラのレンジを超えるときに、信号のデターミニスティック成分及びランダム成分を求めるサンプリング方法である。擬似ランダム系列がある遅延を決定する。その遅延に従って、サンプル群が収集される。次に、いずれのサンプルがクリップされるかが決定される。2つの系列が生成され、自己相関(auto-correlating)がとられる。クリップされない自己相関系列が生成され、その後、周波数領域に変換され、その電力スペクトルが解析される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッタ測定に係り、特に、ジッタ測定レンジの拡大または調整の手法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジッタ測定の分野では、信号をランダム部分及びデターミニスティック部分に分離するのが標準的な手法になっている。これは多くの場合に、スペクトル解析技法を用いて行われ、その技法によれば、特許文献1に示されるように、ジッタサンプル群の系列の周波数スペクトルが得られ、そのスペクトルのピーク(デターミニスティック部分)が、スペクトルのフロア(ランダム部分)から分離される。
【0003】
これらのジッタ測定システムの多くは、対象特定サンプリング(targeted sampling)、すなわち、1つ又は複数のエッジ検出サンプルのタイミングを、そのエッジの予想される位置において狙いを定め、そのサンプルの値を用いて、名目的な(対象とされる)位置からの実際のエッジの偏差を求めるサンプリング手法に基づいている。対象特定サンプリングのアプローチは、測定することができるジッタのレンジが制限される。ジッタが検出レンジよりも大きい、たとえば、信号の立ち上がり時間よりも大きい場合には、ジッタサンプル群のうちのいくつかがクリップされる。図1は、信号のジッタが測定レンジを超える事例を示す。特定のエッジがたまたまエッジ・ロケータのレンジに入らない場合には、そのエッジの正確なタイミングはわからない。
【0004】
これまでの説明はジッタ測定に焦点を当てているが、信号の振幅がある種のサンプリングデバイスのレンジを超えるときにはいつでもこの問題が生じる。図2は、あるサンプラの場合に、振幅が大きすぎる信号の一般的な事例を示す。
【0005】
図3は、サンプルレンジを変更するデバイスを示す。被試験信号xがオフセット信号cに加算され、信号yが形成される。その後、レンジが制限されたサンプラによって、信号yがサンプリングされ、サンプルの系列が生成される。信号yの振幅がサンプラのレンジを超える場合には、サンプリングされた系列のいくつかの値がクリップされる。オフセット信号cが調整されると、元の信号xの部分がサンプラのレンジ内に入る。
【0006】
図4は、これと似た方法により、エッジ検出システムのレンジを調整するために用いることができるデバイスを示す。被試験信号がエッジ検出システムに供給され、そのエッジ検出システムは、名目的なエッジ位置と同期しているトリガ信号によってトリガされる。被試験信号のジッタがエッジ検出システムのレンジを超える場合には、エッジ時刻のうちのいくつかがクリップされる。可変遅延信号を導入することによって、エッジ検出システムのレンジ内に入るジッタの部分を調整することができる。
【0007】
図3及び図4に示されるシステムの場合、サンプル群又はエッジ時刻群の(部分的にクリップされた)系列からのスペクトル情報のような、オフセット信号又は遅延信号をディザリングするための方法が望まれる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,206,340号 「Characterizing Jitter of Repetitive Patterns」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、信号の大きさがサンプラのレンジを超えるときに、信号のデターミニスティック成分及びランダム成分を求めるサンプリング方法である。擬似ランダム系列がある遅延を決定する。その遅延に従って、サンプル群が収集される。次に、いずれのサンプルがクリップされるかが決定される。2つの系列が生成され、自己相関(auto-correlating)がとられる。クリップされない自己相関系列が生成され、その後、周波数領域に変換され、その電力スペクトルが解析される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図5は、本発明による機能ブロック図10を示す。擬似ランダム遅延系列発生器12がトリガ信号を受信する。エッジ・ロケータ14が、被試験信号(SUT)と、擬似ランダム遅延系列発生器12の出力とを受信する。エッジ・ロケータ14は、2つの信号:x’[n]及びc[n]を出力する。x’[n]はクリップされた測定出力信号であり、c[n]はクリップされた系列を示す。混合器16が、入力として、x’[n]及びc[n]の両方を受信する。第1の自己相関器18が混合器16の出力、すなわち信号y[n]を受信する。第2の自己相関器20がc[n]を受信する。除算器22が、第1の自己相関器18及び第2の自己相関器20の出力を受信する。FFT24が除算器22の出力を受信する。その後、FFTの電力スペクトルを解析することができる(図示せず)。
【0012】
図6は、本発明によるプロセスの流れ図である。ステップ100では、遅延に加えられる擬似ランダム系列d[n]が決定される。その系列は、一様な分布及び平坦なスペクトルを有するべきである。ステップ102では、擬似ランダム系列によって指示されるオフセットにおいて、サンプルが収集される。ステップ104では、いずれのサンプルがクリップされるかが決定される。ステップ106では、2つの系列y[n]及びc[n]が生成される。ステップ108では、y[n]及びc[n]が自己相関をとられる。ステップ110では、自己相関をとられたy[n]を、自己相関をとられたc[n]で割って、クリップされない系列Rxx[m]を求める。ステップ112では、クリップされない系列Rxx[m]が周波数領域に変換され、電力スペクトルが求められる。ステップ114では、電力スペクトル解析が実行される。
【0013】
図7は、ジッタが大きすぎて対象特定(targeted)エッジ検出器では測定することができないエッジを示す。そのジッタは、多数の連続した重なり合わない領域(レンジ)、Rangeに分割される。各領域は、エッジ・ロケータの最大レンジ以下である。領域毎に、関連する遅延値tが、図4に示されるシステムに供給され、それによってエッジ・ロケータのレンジがRangeに等しくなるようにする。説明のための例は、エッジの「重なり合わない領域」をもたらすことになる離散値の中から選択される遅延を示すが、代替的に、依然としてスペクトルが平坦であるなら、選択される遅延は連続していてもよい。
【0014】
ジッタ系列x[n]をサンプリングするために、図4のシステムに遅延d[n]の系列を供給する。ただし、x[n]は、理想的な位置からのエッジnの偏差であり、各d[n]は図5の遅延{t、t、t、...}の中から選択される。サンプル系列y[n]は以下の式によって与えられる。
【0015】
【数1】

【0016】
系列c[n]が導入される。c[n]は、サンプルy[n]がクリップされると0の値を有し、y[n]がクリップされないと1の値を有する。y[n]は以下のように表すことができる。
【0017】
【数2】

【0018】
d[n]の値が、遅延{t、t、t、...}の中から等しい確率でランダムに選択される場合には、長さNのジッタ系列x[n]の自己相関系列Rxx(m)は、以下のように推定することができる。
【0019】
【数3】

【0020】
自己相関系列を周波数領域に変換することによって、ジッタ信号の電力スペクトルの推定値が得られる。これを用いて、ジッタのランダム成分及び決定的成分を分離することができる。
【0021】
ジッタ測定デバイスに関する技法が説明されてきたが、当該手法は振幅測定デバイスにも同じく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】測定レンジを超える信号のジッタを示す図である。
【図2】サンプラのレンジを超える信号の振幅を示す図である。
【図3】従来技術のサンプルレンジを変更するデバイスを示す図である。
【図4】従来技術のエッジ検出レンジを変更するデバイスを示す図である。
【図5】本発明による機能ブロック図である。
【図6】本発明によるプロセスの流れ図である。
【図7】ジッタを重なり合わないレンジに分割する一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
100 パラメータの決定、
102 パラメータに従ってサンプルを収集、
104 いずれかのサンプルがクリップされるかを決定、
106 サンプリングされた系列及びクリップされた系列を生成、
108 サンプリングされた系列及びクリップされた系列の自己相関をとる、
110 クリップされない自己相関系列を求める、
112 クリップされない自己相関系列を周波数領域に変換する、
114 電力スペクトルを解析。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータを決定すること、
前記パラメータに従ってサンプルを収集すること、
いずれのサンプルがクリップされるかを決定すること、
サンプリングされた系列及びクリップされた系列を生成すること、
前記サンプリングされた系列及び前記クリップされた系列の自己相関をとること、
クリップされない自己相関系列を求めること、
前記クリップされない自己相関系列を周波数領域に変換すること、及び
電力スペクトルを解析すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記パラメータは、オフセット及び遅延を含むグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータは遅延であり、
遅延を求めることは、擬似ランダム系列を生成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記擬似ランダム系列は一様な分布を有し、スペクトルが平坦である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記擬似ランダム系列は、重なり合わない領域を有する遅延を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記擬似ランダム系列は、重なり合う領域を有する遅延を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプリングされた自己相関系列を前記クリップされた自己相関系列で割ることによって、前記クリップされない自己相関系列を求めることを含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−115787(P2009−115787A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258928(P2008−258928)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.