説明

ジヒドロピリジン類を調製するための改良された方法

本発明は、ビス縮合反応生成物の塩の製造に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カリウムチャンネルは、細胞膜の興奮性を調節する上で重要な役割を演じる。カリウムチャンネルが開口すると、細胞膜を横切る電位が変化し、その結果、より分極が進んだ状態となる。カリウムチャンネルを開口させる治療薬を用いて、多くの疾患又は状態を治療することができる。例えば、以下のものを参照されたい:(K. Lawson, Pharmacol. Ther., v. 70, pp. 39-63 (1996)); (D.R. Gehlert et al., Prog. Neuro-Psychopharmacol & Biol. Psychiat., v. 18, pp. 1093-1102 (1994)); (M. Gopalakrishnan et al., Drug Development Research, v. 28, pp. 95-127 (1993)); (J.E. Freedman et al., The Neuroscientist, v. 2, pp. 145-152 (1996)); (D.E. Nurse et al., Br. J. Urol., v. 68, pp. 27-31 (1991)); (B.B. Howe et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., v. 274, pp. 884-890 (1995)); (D. Spanswick et al., Nature, v. 390, pp. 521-25 (December 4,1997)); (Dompeling Vasa. Supplementum (1992) 3434); (W09932495); (Grover, J Mol Cell Cardiol. (2000) 32, 677); 及び、(Buchheit, Pulmonary Pharmacology & Therapeutics (1999) 12, 103)。そのような疾患又は状態としては、喘息、てんかん、男性性的機能不全、女性性的機能不全、痛み、膀胱過活動、卒中、骨格血流量(skeletal blood flow)の減少に関連する疾患、例えば、レイノー現象及び間欠性跛行、摂食障害、機能性腸疾患、神経変性、良性前立腺肥大症(BPH)、月経困難症、早期分娩、脱毛症、心筋保護(cardioprotection)、冠状動脈疾患、アンギナ、虚血及び失禁などを挙げることができる。
【0002】
ジヒドロピリジンカリウムチャンネルオープナーを生成させるためには、典型的には、ジケトンとアルデヒドを水酸化アンモニウムなどのアンモニア源と反応させることが必要である。この調製方法は、生成物の溶解度が低いことに起因する困難な精製を含んでいる。本発明は、ビス縮合生成物の塩を単離することを含んでいるが、このビス縮合生成物の塩は、ジヒドロピリジン生成物と比較して異なった溶解特性を有している点で重要であり、これによって精製を可能にしている。該ビス縮合生成物は、珍しい機械学的経路を経て生成される(Katritzky, A. et al., Tetrahedron, 1986, 42, 5729-5738)。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、カリウムチャンネルオープナーとして有用なジヒドロピリジン化合物を製造するための新規な調製方法と新規な中間体を包含する。特に、本発明は、ビス縮合生成物の塩の単離に関する。ビス縮合生成物の塩の場合、ジヒドロピリジン生成物に比較して、容易に単離及び精製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
スキーム1に示されているように、本発明の一実施形態においては、該調製方法は、溶媒中、塩基の存在下で、2当量のジケトン(1)を1当量のアルデヒド(2)と反応させることを含む。本発明において使用するのに適する塩基には、限定するものではないが、第三級アミン塩基、ピリジン、DBU(1,9−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)及びDBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン)などがある。より好ましい塩基は、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンである。本発明において使用するのに適する溶媒には、アルコール溶媒などがある。より好ましい溶媒は、酢酸エチルとイソプロパノールの1:1混合物である。
【0005】
該ビス縮合生成物はトリエチルアミン塩(3)として沈澱し、これを、次いで、高温下、酢酸中で、酢酸アンモニウムと反応させることによりジヒドロピリジン(5)を生成させることができる。その際、ジヒドロピリジン(5)は、溶液から沈澱する。スキーム1において、Rは、置換アリール、非置換アリール、置換ヘテロ環及び非置換ヘテロ環からなる群から選択される。
【0006】
【化2】


【0007】
スキーム1に示されている本発明の好ましい実施形態において、Rは3−ヨード−4−フルオロフェニルであり、塩基及び溶媒中で、3,5−ジオキソピラン(1)と3−ヨード−4−フルオロ−ベンズアルデヒドを反応させて4−フルオロ−3−ヨード−ビス−(3,5−ジオキソ−テトラヒドロピラン−4−イル)−メタントリエチルアミン塩(3)を形成させる。次いで、該トリエチルアミン塩を酢酸の存在下に酢酸アンモニウムと反応させ、加熱して、該ジヒドロピリジン 5−(4−フルオロ−3−ヨードフェニル)−5,10−ジヒドロ−1H,3H−ジピラノ[3,4−b:4,3−e]ピリジン−4,6(7H,9H)ジオンを生成させる。
【0008】
酢酸アンモニウムの上記反応は、高速反応であり且つ不純物を比較的含まないという点で、ジヒドロピリジン生成物を調製するための好ましい方法である。得られる主要な不純物はピラン誘導体である。ピラン不純物は、生成物を水酸化カリウム/エタノール水溶液に溶解させて、該ピラン不純物を加水分解して開環形態(open form)とすることにより除去することができる。この開環形態は、pHを調節してジヒドロピリジンが沈澱するときも該液体中でそのままの形態に維持される。
【0009】
本明細書で使用される場合、用語[アリール」は、フェニル基を意味するか、又は、縮合している環の1つ以上がフェニル基である二環式若しくは三環式の縮合環系を意味する。二環式縮合環系の例は、本明細書で定義されているようなシクロアルキル基に縮合しているフェニル基又は別のフェニル基に縮合しているフェニル基などである。三環式縮合環系の例は、本明細書で定義されているようなシクロアルキル基に縮合している二環式縮合環又は別のフェニル基に縮合している二環式縮合環などである。アリールの代表的な例としては、限定するものではないが、アントラセニル、アズレニル、フルオレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル及びテトラヒドロナフチルなどを挙げることができる。
【0010】
本発明のアリール基は、アルケニル、アルコキシ、アルキル、アルキニル、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル及びニトロから独立して選択される1、2、3、4又は5個の置換基で置換されていてもよい。
【0011】
本明細書で使用される場合、用語「ヘテロ環(heterocycle)」又は「ヘテロ環式(heterocyclic)」は、単環式環系、二環式環系又は三環式環系を意味する。単環式環系の例は、酸素、窒素及び硫黄から独立して選択されるヘテロ原子を含んでいる任意の3員若しくは4員環;又は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される1個、2個若しくは3個のヘテロ原子を含んでいる任意の5員環、6員環若しくは7員環などである。該5員環は0〜2個の二重結合を有し、該6員環及び7員環は0〜3個の二重結合を有する。単環式環系の代表的な例としては、限定するものではないが、アゼチジニル、アゼパニル、アジリジニル、ジアゼピニル、1,3−ジオキソラニル、ジオキサニル、ジチアニル、フリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサジアゾリニル、オキサジアゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラジニル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリニル、チアジアゾリジニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、チエニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキシドチオモルホリニル(チオモルホリンスルホン)、チオピラニル、トリアジニル、トリアゾリル及びトリチアニルなどを挙げることができる。二環式環系の例は、本明細書で定義されているアリール基、本明細書で定義されているシクロアルキル基又は別の単環式環系に縮合している上記単環式環系のいずれかである。二環式環系の代表的な例としては、限定するものではないが、例えば、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリル、2,3−ジヒドロインドリル、インドリジニル、ナフチリジニル、イソベンゾフラニル、イソベンゾチエニル、イソインドリル、イソキノリニル、フタラジニル、ピラノピリジニル、キノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル及びチオピラノピリジニルなどを挙げることができる。三環式環系の例は、本明細書で定義されているアリール基、本明細書で定義されているシクロアルキル基又は単環式環系に縮合している上記二環式環系のいずれかである。三環式環系の代表的な例としては、限定するものではないが、アクリジニル、カルバゾリル、カルボリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル、ナフト[2,3−b]フラン、ナフト[2,3−b]チエニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、チアントレニル、チオキサンテニル及びキサンテニルなどを挙げることができる。
【0012】
本発明のヘテロ環は、アルケニル、アルコキシ、アルキル、アルキニル、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル及びニトロから独立して選択される1、2又は3個の置換基で置換されていてもよい。
【0013】
(実施例)
【実施例1】
【0014】
50mL容のフラスコに、ピラン−3,5−ジオン(2g)及び4−フルオロ−3−ヨードベンズアルデヒド(2.19g)を添加した。酢酸エチル(8mL)及びイソプロパノール(8mL)を添加した後、トリエチルアミン(1.22mL)を添加した。反応混合物を50℃に加熱し、1時間撹拌した。生じたスラリーを2℃まで冷却し、次いで、濾過した。得られたウェットケーキを冷イソプロパノール/酢酸エチル(10mL; 1:1)で洗浄した。次いで、真空オーブン中で65℃で乾燥させることにより、4.00gの生成物を得た。
【0015】
スペクトルデータ:
【0016】
【化3】

【実施例2】
【0017】
50mL容のフラスコに、4−フルオロ−3−ヨード−ビス−(3,5−ジオキソ−テトラヒドロピラン−4−イル)−メタントリエチルアミン塩(5.0g)、酢酸(25mL)及び蒸溜水(0.5mL)を充填した。次いで、酢酸アンモニウム(3.43g)を添加し、得られた反応混合物を105℃に加熱し、その温度で1時間撹拌した。その反応混合物を、次いで、25℃まで冷却し、濾過した。得られたウェットケーキをエタノール(25mL)で洗浄し、フィルター上で風乾して、3.45gの粗生成物を得た。
【実施例3】
【0018】
エタノール(210mL)、水(23mL)及び水酸化カリウム(2.34g)からなる溶液を調製した。これを、上記ジヒドロピリジン(12.0g)に添加し、撹拌して、全てを溶解させた。10〜15℃に冷却した後、0.4M塩酸をゆっくりと添加した。pHが7を下回ったら、生じたスラリーを濾過した。得られたウェットケーキをエタノール/水(63mL; 2.5:1)で洗浄した後、エタノール(32mL)で洗浄した。そのウェットケーキを真空オーブン中で乾燥させ、12.37gの生成物を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス縮合反応生成物の塩を調製する方法であって、塩基及び溶媒の存在下で、ジケトンとアルデヒドとを反応させることを含む方法。
【請求項2】
前記塩基が、第三級アミン塩基、ピリジン、DBU及びDBNからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第三級アミン塩基がトリエチルアミンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒が、イソプロパノール、酢酸エチル、又はイソプロパノールと酢酸エチルとの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式3:
【化1】

[式中、Rは、置換アリール、非置換アリール、置換ヘテロ環及び非置換ヘテロ環からなる群から選択される]
で表される化合物及びその塩。
【請求項6】
Rが3−ヨード−4−フルオロフェニルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
ジヒドロピリジンからジヒドロピランを除去する方法であって、ジヒドロピリジンを水性塩基と有機溶媒との混合物中に溶解させた後、酸性化することを含む方法。
【請求項8】
前記有機溶媒がエタノールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水性塩基が、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2006−505491(P2006−505491A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−567892(P2003−567892)
【出願日】平成15年2月3日(2003.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/003183
【国際公開番号】WO2003/068765
【国際公開日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】