説明

ジフェニルオキサジアゾール誘導体含有診断用組成物

【課題】 アミロイドβタンパク質に対する高い結合特異性、高い血液脳関門の透過性、脳内老人斑以外の部位からの速やかな消失性を併せ持つ化合物を提供する。
【解決手段】
一般式(I)
【化3】


〔式中、Rは4−フルオロフェニル基などを表し、Rは4−メトキシフェニル基などを表す。〕
で表される化合物若しくは前記化合物を放射性核種で標識した化合物、又はこれらの化合物の医薬上許容される塩を含有するアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジフェニルオキサジアゾール(DPOD)誘導体を含有する診断用組成物に関する。本発明の組成物は、アルツハイマー病などのアミロイド性タンパク質関連疾患の診断に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年の急速な高齢化に伴い、アルツハイマー病(AD)をはじめとする痴呆性疾患の増加が大きな社会問題のひとつになっている。現在、ADの臨床診断法には、長谷川式、ADAS、MMSEがあり、いずれもADが疑われる個体の認知機能の低下を定量的に評価する方法が一般的に用いられる。この他画像診断法(MRI, CT等)が補助的に用いられるが、これらの診断法ではADを確定診断するには不十分であり、確定診断には生前における脳の生検、死後脳の病理組織学的検査において、老人斑と神経原繊維の出現を確認することが必要である。したがって、現在の診断方法では、広範な脳障害が生じる前の早期段階でADを診断するのは困難である。これまでにADの生物学的診断マーカーとしていくつかの報告があるが、臨床上実用的なものはいまだ開発されていない。このような状況下、ADの早期診断に対する社会的要求は高く、その早急な開発が強く望まれている。
【0003】
老人斑はADの最も特徴的な脳病変であり、その主構成成分はβシート構造をとったアミロイドβタンパク質である。体外からの老人斑の画像化はADの有効な診断法の確立につながると考えられるが、画像化には、アミロイドβタンパク質と特異的に結合するプローブ化合物が必要である。これまでに、プローブ化合物としてコンゴーレッドおよびチオフラビンTを母体構造とする誘導体が、いくつか報告されているが(特開2004-250407号公報、特開2004-250411号公報、W.E.Klunk et al., Annals of Neurology Vol55 No.3 March 2004 306-319)、アミロイドβタンパク質に対する結合特異性が低いこと、血液脳関門の透過性が低いこと、脳内での非特異的結合によりクリアランスが遅いことなど問題が少なくない。それゆえ、報告されたこれらの化合物は未だアミロイドが蓄積する疾患の診断において実用化されていないのが現状である。
【0004】
以上のような既存のプローブ化合物の問題点を解決するため、本発明者らはフラボノイド系化合物であるフラボン、カルコン、オーロンを基本骨格としたプローブ化合物を開発し、出願を行った(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/057323号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/136059号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような技術的背景のもとになされたものであり、アミロイドβタンパク質に対する高い結合特異性、高い血液脳関門の透過性、脳内老人斑以外の部位からの速やかな消失性を併せ持つ化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、フラボノイド系化合物とは異なる、DPODを基本骨格とする化合物が、アミロイドβタンパク質への高い結合性、脳移行性と速やかなクリアランスを示し、さらに、アルツハイマー病患者脳組織切片を用いた蛍光染色において、老人斑への選択的結合性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(13)を提供するものである。
【0009】
(1)一般式(I)
【0010】
【化1】

〔式中、Rは下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を表し、Rは下記置換基群Bから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を表し、置換基群Aは、ハロゲン原子、式:−(CHCHO)−F [式中、nは1〜10の整数を表す。] で表される基、及び式:−(CHCHO)−OH [式中、nは1〜10の整数を表す。] で表される基からなる群であり、置換基群Bは、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、メトキシ基、水酸基、式:−(CHCHO)−F [式中、nは1〜10の整数を表す。] で表される基、及び式:−(CHCHO)−OH [式中、nは1〜10の整数を表す。] で表される基からなる群である。〕
又は一般式(II)
【0011】
【化2】

〔式中、R及びRは前記と同意義を示す。〕
で表される化合物若しくは前記化合物を放射性核種で標識した化合物、又はこれらの化合物の医薬上許容される塩を含有するアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0012】
(2)アミロイド性タンパク質関連疾患が、アミロイドβタンパク質関連疾患である(1)に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0013】
(3)アミロイド性タンパク質関連疾患が、アルツハイマー病である(1)に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0014】
(4)一般式(I)及び(II)におけるRが、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されたフェニル基である(1)乃至(3)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0015】
(5)一般式(I)及び(II)におけるRが、4−フルオロフェニル基、又は4−ヨードフェニル基である(1)乃至(3)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0016】
(6)一般式(I)及び(II)におけるRが、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、メトキシ基、又は水酸基で置換されたフェニル基である(1)乃至(5)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0017】
(7)一般式(I)及び(II)におけるRが、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、又はメトキシ基で置換されたフェニル基である(1)乃至(5)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0018】
(8)一般式(I)及び(II)におけるRが、メトキシ基で置換されたフェニル基である(1)乃至(5)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0019】
(9)一般式(I)及び(II)におけるRが、4−メトキシフェニル基である(1)乃至(5)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0020】
(10)放射性核種が、陽電子放出核種である(1)乃至(9)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0021】
(11)放射性核種が、γ線放出核種である(1)乃至(9)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【0022】
(12)アミロイド性タンパク質関連疾患のモデル動物に被験物質を投与する工程、前記モデル動物に(1)乃至(11)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)又は(II)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド性タンパク質関連疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法。
【0023】
(13)アミロイド性タンパク質関連疾患のモデル動物に前記疾患の治療薬又は予防薬を投与する工程、前記モデル動物に(1)乃至(11)のいずれかに記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)又は(II)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド性タンパク質関連疾患の治療薬又は予防薬の評価方法。
【発明の効果】
【0024】
一般式(I)又は(II)で表される化合物は、アミロイドβタンパク質に対し高い結合特異性を持ち、また、脳内老人斑以外の部位からの速やかに消失する性質を持つので、アルツハイマー病の診断に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明において、「ハロゲン原子」とは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0027】
式:−(CHCHO)−Fにおいてnは、好適には1〜3である。
【0028】
式:−(CHCHO)−OHにおいてnは、好適には1〜3である。
【0029】
一般式(I)及び(II)で表される化合物のいずれも本発明の診断用組成物として利用できるが、脳への移行性が高いことから、一般式(II)で表される化合物の方が好ましい。
【0030】
のフェニル基の置換基としては、フッ素原子、ヨウ素原子が好ましい。フェニル基の置換基の位置は、2位、3位であってもよいが、4位であることが好ましい。Rの具体例としては、4−フルオロフェニル基、4−ヨードフェニル基などを挙げることができる。
【0031】
のフェニル基の置換基としては、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、メトキシ基、又は水酸基が好ましい。これらの中でも、アミロイドβタンパク質に対する結合性が高くなることから、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、又はメトキシ基が好ましく、メトキシ基が最も好ましい。フェニル基の置換基の位置は、2位、3位であってもよいが、4位であることが好ましい。Rの具体例としては、4−ジメチルアミノフェニル基、4−メチルアミノフェニル基、4−アミノフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2―メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基などを挙げることができ、これらの中でも、2―メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基が好ましく、4−メトキシフェニル基が最も好ましい。
【0032】
一般式(I)で表される化合物のうち代表的なものを表1〜8に示し、一般式(II)で表される化合物のうち代表的なものを表9〜16に示す。なお、表中の「FX-」は、式:−(CHCHO)−Fで表される基を示し、「FX2-」は、式:−(CHCHO)−Fで表される基を示し、「FX3-」は、式:−(CHCHO)−Fで表される基を示し、「HOX-」は、式:−(CHCHO)−OHで表される基を示し、「HOX2-」は、式:−(CHCHO)−OHで表される基を示し、「HOX3-」は、式:−(CHCHO)−OHで表される基を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
【表7】

【0040】
【表8】

【0041】
【表9】

【0042】
【表10】

【0043】
【表11】

【0044】
【表12】

【0045】
【表13】

【0046】
【表14】

【0047】
【表15】

【0048】
【表16】

上記化合物のうちで、好ましい化合物として、I-4、I-9、I-14、I-19、I-24、I-29、I-34、I-39、I-44、I-49、I-54、I-59、I-64、I-69、I-74、I-79、I-84、I-89、II-4、II-9、II-14、II-19、II-24、II-29、II-34、II-39、II-44、II-49、II-54、II-59、II-64、II-69、II-74、II-79、II-84、II-89を挙げることができ、より好ましい化合物として、I-14、I-29、I-44、I-59、I-74、I-89、II-14、II-29、II-44、II-59、II-74、II-89を挙げることができ、更により好ましい化合物として、I-44、I-89、II-44、II-89を挙げることができる。
【0049】
一般式(I)又は(II)で表される化合物は、後述する実施例の記載、及びSantagada V. et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2004, 14, 4491-3, Mahboobeh B et al., Tetrahedron Letter, 2006, 47, 6983-6などの記載に従って合成することができる。
【0050】
一般式(I)又は(II)で表される化合物は、標識物質によって標識されていることが好ましい。標識物質としては、蛍光物質、アフィニティー物質などを使用してもよいが、放射性核種を使用するのが好しい。標識に用いる放射性核種の種類は特に限定されず、使用の態様によって適宜決めることができる。例えば、一般式(I)又は(II)で表される化合物をコンピューター断層撮影法(SPECT)による診断に使用する場合、放射性核種は99mTc、111In、67Ga、201Tl、123I、133Xe(好適には、99mTc、123I)などのγ線放出核種を使用することができる。また、陽電子断層撮影法(PET)による診断に使用する場合には、11C、13N、15O、18F、62Cu、68Ga、76Br(好適には、11C、13N、15O、18F)などの陽電子放出核種を使用することができる。また、一般式(I)又は(II)で表される化合物をヒト以外の動物に投与する場合には、より半減期の長い放射性核種、例えば、125Iなどを使用してもよい。放射性核種は、一般式(I)又は(II)で表される化合物の分子中に含まれる形でもよく、また、一般式(I)又は(II)で表される化合物に結合する形であってもよい。
【0051】
一般式(I)又は(II)で表される化合物に放射性核種を結合させる方法は、各放射性核種において一般的に用いられている方法でよい。また、一般式(I)又は(II)で表される化合物に放射性核種を結合させる場合、放射性核種のみを結合させてもよいが、他の物質と結合した状態の放射性核種を結合させてもよい。前述した99mTcは、通常、錯体の形で被標識化合物に結合させるので、一般式(I)又は(II)で表される化合物に結合させる場合も、99mTcを含む錯体を結合させてもよい。99mTcを含む錯体としては、2−ヒドラジノピリジンを含む錯体(Liu S et al, Bioconjug Chem. 1996 Jan-Feb;7(1):63-71.)、N−(2−メルカプトエチル)−2−〔(2−メルカプトエチル)アミノ〕−アセトアミドを含む錯体(Zhen W et al, J Med Chem. 1999 Jul 29;42(15):2805-15.)、2,2’−(1,2−エタンジイルジイミノ)ビスエタンチオールを含む錯体(Oya S et al, Nucl Med Biol. 1998 Feb;25(2):135-40.)、トリカルボニル錯体(Schibli R et al, Bioconjug Chem. 2000 May-Jun;11(3):345-51)などを例示できる。
【0052】
一般式(I)又は(II)で表される化合物の代わりに、医薬上許容される塩を使用することも可能である。医薬上許容される塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩)、硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩などを例示できる。
【0053】
本発明の組成物はアミロイド性タンパク質関連疾患の診断に用いられる。ここで、「アミロイド性タンパク質関連疾患」とは、アミロイドβタンパク質関連疾患やプリオン病などを意味する。「アミロイドβタンパク質関連疾患」とは、アミロイドβタンパク質の蓄積によって起きる疾患をいい、主にアルツハイマー病を意味するが、ダウン症候群、オランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血症(hereditary cerebral hemorrhage with amyloidosis─Dutch type: HCHWA-D)などの疾患も含まれる。また、「プリオン病」とは、異常型プリオンタンパク質によって起きる疾患をいい、クロイツフェルド-ヤコブ病(CJD)やウシ海綿状脳症(BSE)を含む。本発明のアミロイド性タンパク質関連疾患には、一般には「疾患」と認識されない疾患の前駆症状も含まれる。このような疾患の前駆症状としては、アルツハイマー病の発症前にみられる軽度認知障害(MCI)などを例示できる。
【0054】
本発明の組成物によるアミロイド性タンパク質関連疾患の診断は、通常、本発明の組成物を診断対象者又は実験動物などに投与し、その後、脳の画像を撮影し、画像における一般式(I)又は(II)で表される化合物の状態(量、分布等)に基づいて行う。本発明の組成物の投与方法は特に限定されず、化合物の種類、標識物質の種類などに応じて適宜決めることができるが、通常は、皮内、腹腔内、静脈、動脈、又は脊髄液への注射又は点滴等によって投与する。本発明の組成物の投与量は特に限定されず、化合物の種類、標識物質の種類などに応じて適宜決めることができるが、成人の場合、一般式(I)又は(II)で表される化合物を1日当たり10-10〜10-3mg投与するのが好ましく、10-8〜10-5 mg投与するのが更に好ましい。
【0055】
上記のように本発明の組成物は、通常、注射又は点滴によって投与するので、注射液や点滴液に通常含まれる成分を含んでいてもよい。このような成分としては、液体担体(例えば、リン酸カリウム緩衝液、生理食塩水、リンゲル液、蒸留水、ポリエチレングリコール、植物性油脂、エタノール、グリセリン、ジメチルスルホキサイド、プロピレングリコールなど)、抗菌剤、局所麻酔剤(例えば、塩酸プロカイン、塩酸ジブカインなど)、緩衝液(例えば、トリス−塩酸緩衝液、ヘペス緩衝液など)、浸透圧調節剤(例えば、グルコース、ソルビトール、塩化ナトリウムなど)を例示できる。
【0056】
本発明のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物は、アミロイド性タンパク質関連疾患の治療薬や予防薬のスクリーニングにも利用できる。例えば、アルツハイマー病などの「疾患」のモデル動物に被験物質を投与した後、前記モデル動物に本発明のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物を投与し、その後、前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)又は(II)で表される化合物の分布又は量を調べ、その結果、コントロール(被験物質を投与していないモデル動物)との間に有意な差異(例えば、分布部位の縮小、量の減少など)が検出されれば、被験物質はアミロイド性タンパク質関連疾患の治療薬の候補となり得る。また、軽度認知障害などの「疾患の前駆症状」のモデル動物に被験物質を投与した後、前記モデル動物に本発明のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物を投与し、その後、前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)又は(II)で表される化合物の分布又は量を調べ、その結果、コントロールとの間に有意な差異(例えば、分布部位の縮小又は拡大の鈍化、量の減少又は増大の鈍化など)が検出されれば、被験物質はアミロイド性タンパク質関連疾患の予防薬の候補となり得る。
【0057】
また、本発明のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物は、既に効果が確認されているアミロイド性タンパク質関連疾患の治療薬や予防薬の評価にも利用できる。即ち、アミロイド性タンパク質関連疾患のモデル動物に前記疾患の治療薬又は予防薬を投与した後、前記モデル動物に本発明のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物を投与し、その後、前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)又は(II)で表される化合物の分布又は量を調べ、これにより、前記治療薬や予防薬の評価(具体的には、有効な投与量、有効な投与方法など)を行う。
【実施例】
【0058】
〔実験方法〕
(1)試薬・機器
放射性ヨウ素-125はMP Biomedicals,Inc製Iodine-125 (3.7 GBq/mL)を用いた。逆相HPLCはナカライテスク社製Cosmosil 5C18-AR-IIカラム (4.6×150mm) を用いて、超純水:アセトニトリル=4:6 - 3:7を溶出溶媒として流速1mL/minで分析した。中圧分取クロマトグラフィーは山善社製ULTRA PACK SI-40B カラム (26×300mm)を用いた。1H NMRはVarian Geminin 300を用い、テトラメチルシランを内標準物質として測定した。質量分析は、JEOL IMS-DX300を用いて測定した。分取TLCはMERCK社製12PLC plates 20×20cm Silica gel 60F254, 2mmを用いた。Amyloid β-Protein (Human, 1-42) はペプチド研究所より購入し、その他の試薬は特級試薬を用いた。
【0059】
(2)2,5-ジフェニル-1,2,4-オキサジアゾール誘導体の合成
3-(4-ブロモフェニル)-5-(4-ニトロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール (化合物1)の合成
4-ブロモベンズアミドオキシム (645 mg, 3 mmol)と4-ニトロ安息香酸 (495 mg, 3 mmol)のDMF (10 mL)溶液に、DCC (3.6 mmol)とHOBT (6.0 mmol)のDMF (5 mL)溶液を加えた。室温で18時間反応後、100 ℃で2時間加熱還流を行った。反応溶媒を減圧留去後、酢酸エチル/ヘキサン(9/1)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的とする化合物1を得た(収量370 mg、収率35.6%)。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.70 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.06 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.43 (s, 4H). MS m/z 346 (M+).
【0060】
4-(3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)アニリン (化合物2)の合成
化合物1 (350 mg, 1 mmol)とSnCl2 (948 mg, 5 mmol)をEtOH (15 mL)に懸濁し、2時間加熱還流した。反応溶液を室温まで戻し、1 M NaOH (100 mL)を加えて、アルカリ状態にした。酢酸エチル(100 mL x 2)で抽出後、生理食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去することにより、目的とする化合物2を得た(収量258 mg、収率80.8%)。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.16 (s, 2H), 6.75 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.63 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.00 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 8.03 (d, J = 6.3 Hz, 2H). MS m/z 316 (M+).
【0061】
4-(3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)-N-メチルアニリン (化合物3)の合成
化合物2 (185 mg, 0.59 mmol)とパラホルムアルデヒド(176 mg, 0.59 mmol)のメタノール溶液(10 mL)に NaOCH3 (28 wt % in MeOH, 0.4 mL) を滴下した。反応溶液は、30分間加熱還流し、その後、NaBH4 (225 mg, 5.9 mmol)を加えて、さらに1.5時間加熱還流した。1 M NaOH (50 mL)を加えて、CHCl3 (50 mL)で抽出した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。残渣は、酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的とする化合物3を得た(収量98 mgm収率50.3%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 2.93 (s, 3H), 4.30 (s, 1H), 6.66 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.63 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.03 (d, J = 8.7 Hz, 2H). MS m/z 330 (M+).
【0062】
4-(3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)-N,N-ジメチルアニリン (化合物4)の合成
化合物2 (35 mg, 0.10 mmol) とパラホルムアルデヒド(36 mg, 1.2 mmol)を酢酸(5 mL)溶液に、NaCNBH3 (50 mg, 0.80 mmol)を加えた。室温で2時間反応を行い、1 M NaOH (30 mL)を加えた後、CH3Cl (30 mL)で抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥後、酢酸エチル/ヘキサン(1/4)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的とする化合物4を得た(収量24 mg、収率68.4%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.09 (s, 6H), 6.75 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.63 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.35 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.43 (d, J = 8.7 Hz, 2H). MS m/z 344.
【0063】
3-(4-ブロモフェニル)-5-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール (化合物5)の合成
化合物 1 を得る際に用いた方法により、目的とする化合物5を得た(収量153 mg、収率23.1%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.91 (s, 3H), 7.05 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.65 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.04 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.15 (d, J = 9.0 Hz, 2H). MS m/z 330 (M+).
【0064】
4-(3-(4-ブロモフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)フェノール (化合物6)の合成
氷冷下、化合物5 (300 mg, 0.91 mmol)のCH2Cl2 (10 mL)溶液に、BBr3 (4.5 mL, 1 M solution in CH2Cl2)を滴下した。その後42時間室温で反応を行い、水 (30 mL)を加えて反応を終了した。クロロホルム (30 mL x 2)で抽出を行い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、残渣をヘキサン/酢酸エチル(4/1)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的とする化合物6を得た(収量146 mg、収率50.6%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) d 6.99 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.65 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.04 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 8.12 (d, J = 9.0 Hz, 2H). MS m/z 316 (M+).
【0065】
4-(3-(4-(トリブチルスタンニル)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)アニリン (化合物7)の合成
化合物2 (100 mg, 0.32 mmol), ビス(トリブチルスズ) (0.2 mL)および(Ph3P)4Pd (16 mg, 0.014 mmol)をジオキサンとトリエチルアミンの混合溶媒(10 mL, 3:2 dioxane/triethylamine mixture)に溶解し、10時間加熱還流を行った。反応溶媒を留去し、残渣をヘキサン/酢酸エチル(3/1)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィに付し、目的とする化合物7を得た(収量28 mg、収率16.8%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.87-1.61 (m, 27H), 4.13 (s, 2H), 6.76 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.59 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.07 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 8.28 (s, 1H).
【0066】
N-メチル-4-(3-(4-(トリブチルスタンニル)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)アニリン (化合物8)の合成
化合物7を得るために用いた方法により、目的とする化合物8を得た(収量23 mg、収率15.8%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.87-1.63 (m, 27H), 2.92 (s, 3H), 4.27 (s, 1H), 6.66 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.59 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 8.03 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.08 (d, J = 7.8 Hz, 2H).
【0067】
N,N-ジメチル-4-(3-(4-(トリブチルスタンニル)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)アニリン (化合物9)の合成
化合物7 を得る際に用いた方法により、目的とする化合物9 を得た(収量45 mg、収率20.3%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.87-1.58 (m, 27H), 3.09 (s, 6H), 6.76 (d, J = 9.6 Hz, 2H), 7.59 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 8.05 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.08 (d, J = 8.4 Hz, 2H).
【0068】
5-(4-メトキシフェニル)-3-(4-(トリブチルスタンニル)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール (化合物10)の合成
化合物7を合成した方法を用いて、目的とする化合物10を得た(収量42 mg、収率22.8%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.87-1.59 (m, 27H), 3.91 (s, 3H), 7.04 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.61 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 8.07 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 8.17 (d, J = 9.0 Hz, 2H).
【0069】
4-(3-(4-(トリブチルスタンニル)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)フェノール (化合物11)の合成
化合物 7 を合成した方法を用いて、目的とする化合物11を得た(収量28 mg、収率60.1%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.87-1.58 (m, 27H), 6.99 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.61 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 8.07 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.12 (d, J = 8.7 Hz, 2H).
【0070】
4-(3-(4-ヨードフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)アニリン (化合物12)の合成
化合物7 (27 mg, 0.05 mmol)のCHCl3 (5 mL) 溶液に、ヨウ素のクロロホルム溶液(1 mL, 50 mg/mL)を加えた。室温で10分間反応を行い、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液 (25 mL)を加えることにより、反応を終了した。 クロロホルム (25 mL x 2)で抽出した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をヘキサンで洗浄することによって、目的とする化合物12を得た(収量12 mg、収率66.1%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 4.15 (s, 2H), 6.76 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.89 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.01 (d, J = 8.7 Hz, 2H). HRMS m/z C14H10N3OI found 362.9855 / calcld 362.9869 (M+).
【0071】
4-(3-(4-ヨードフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)-N-メチルアニリン (化合物13)の合成
化合物8を出発原料とし、化合物12の合成方法と同様のヨウ素化反応により、目的とする化合物13を得た(収量20 mg、収率86.0%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 2.93 (s, 3H), 4.29 (s, 1H), 6.66 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.85 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.88 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.02 (d, J = 8.4 Hz, 2H). HRMS m/z C15H12N3OI found 377.0022 / calcld 377.0025 (M+).
【0072】
4-(3-(4-ヨードフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)-N,N-ジメチルアニリン (化合物14)の合成
化合物9を出発原料とし、化合物12の合成方法と同様のヨウ素化反応により、目的とする化合物14を得た(収量34 mg、収率72.4%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.09 (s, 6H), 6.75 (d, J = 9.3 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 8.04 (d, J = 9.3 Hz, 2H). HRMS m/z C16H14N3OI found 391.0192 / calcld 391.0182 (M+).
【0073】
3-(4-ヨードフェニル)-5-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール (化合物15)の合成
化合物10を出発原料とし、化合物12の合成方法と同様のヨウ素化反応により、目的とする化合物15を得た(収量17 mg、収率69.2%)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 3.89 (s, 3H), 6.97 (d, J = 9.3 Hz, 2H), 7.48 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.80 (d, J = 9.3 Hz, 2H), 7.85 (d, J = 9.0 Hz, 2H). HRMS m/z C15H11N2O2I found 377.9865 / calcld 377.9872 (M+).
【0074】
4-(3-(4-ヨードフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)フェノール (化合物16)の合成
化合物11を出発原料とし、化合物12の合成方法と同様のヨウ素化反応により、目的とする化合物16を得た(収量14 mg、収率81.8%)。 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 6.99 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.87 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.88 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 8.12 (d, J = 8.1 Hz, 2H). HRMS m/z C14H9N2O2I found 363.9704 / calcld 363.9709 (M+).
【0075】
(2)2,5-ジフェニル-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の合成
4-(5-(4-ブロモフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン (化合物17)の合成
4-ブロモ安息香酸ヒドラジド(215 mg, 1 mmol)と4-ジメチルアミノベンズアルデヒド(149 mg, 1 mmol)、硝酸セリウムアンモニウム(548 mg, 1 mmol) をジクロロメタン (10 mL) に溶解し24時間加熱還流した。精製水を加えてクロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル/ヘキサン (1/4) を溶出溶媒とする中圧分取クロマトグラフィーに付し、化合物17を得た。収量12 mg (収率3.5%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.08 (s, 6H), 6.76 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.66 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.98 (dd, J=5.4, 4.5 Hz, 4H). MS m/z 362 (M+).
【0076】
4-(5-(4-トリブチルスタンニル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン (化合物18)の合成
化合物17 (19 mg, 0.06 mmol)を1,4-ジオキサン (3 mL) に溶解し、ビス(トリブチルスズ) (0.04 mL)、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム (3 mg, 0.002 mmol)、トリエチルアミン (3 mL) を加えて4時間30分、加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(1/3)を展開溶媒とする分取用TLCにより精製を行い、化合物18を得た。収量2.5mg (収率8.2%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ0.87-1.6 (m, 27H) 3.07 (s, 6H), 6.77 (d, J=9.0 Hz, 2H), 7.61 (d, J=8.4 Hz, 2H), 8.01 (dd, J=9.0, 8.1 Hz, 4H).
【0077】
4-(5-(ヨードフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-N,N-ジメチルベンゼンアミン (化合物19)の合成
4-ヨード安息香酸ヒドラジド(524 mg, 2 mmol)と4-ジメチルアミノベンズアルデヒド(298 mg, 2 mmol)、硝酸セリウムアンモニウム(1096 mg, 2 mmol) をジクロロメタン (20 mL) に溶解し11時間加熱還流した。精製水を加えてクロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をクロロホルム/メタノール (99/1) を展開溶媒とする分取用TLCにより精製を行い、化合物19を得た。収量6 mg (収率0.76%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.07 (s, 6H), 6.76 (d, J=3.0 Hz, 2H), 7.85 (d, J=12.0 Hz, 4H), 7.97 (d, J=3.0 Hz, 2H). MS m/z 391 (M+).
【0078】
2-(4-ヨードフェニル)-5-(4-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール (化合物20)の合成
4-ヨード安息香酸ヒドラジド(524 mg, 2 mmol)と4-メトキシベンズアルデヒド(272 mg, 2 mmol)、硝酸セリウムアンモニウム (1096 mg, 2 mmol) をジクロロメタン (20mL) に溶解し19時間加熱還流した。精製水を加えてクロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をクロロホルム/メタノール (99/1) を展開溶媒とする分取用TLCにより精製を行い、化合物20を得た。収量40mg (収率8.8%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ3.89 (s, 3H), 7.03 (d, J=2.9 Hz, 2H), 7.86 (q, J=7.8 Hz, 4H), 8.03 (d, J=3.0 Hz, 2H). MS m/z 378 (M+).
【0079】
2-(4-(トリブチルスタンニル)フェニル)-5-(4-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール (化合物21)の合成
化合物20 (64 mg, 0.06 mmol) を1,4-ジオキサン (5 mL) に溶解し、ビス(トリブチルスズ) (0.11 mL)、テトラトリフェニルホスフィンパラジウム (8.1 mg, mmol)、トリエチルアミン (5 mL) を加えて4時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン (1/4) を展開溶媒とする分取用TLCにより精製を行い、化合物21を得た。収量6 mg (収率 6.5%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ0.87-1.58 (m, 27H), 3.91 (s, 3H), 7.04 (d, J=3.1 Hz, 2H), 7.63 (d, J=2.6 Hz, 2H), 8.06 (q, J=6.6 Hz, 4H).
【0080】
4-(5-(4-ヨードフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェノール (化合物22)の合成
化合物21 (36mg, 0.1 mmol) をジクロロメタン溶液に溶解し、氷冷下三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液 (0.6mL) を徐々に加えていった。室温で5日間反応させた後、反応液に少量ずつ精製水を加え反応を停止させた。クロロホルムで抽出後、水層を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル/ヘキサン (1/2) を溶出溶媒とする中圧分取クロマトグラフィーに付し、化合物22を得た。収量17 mg (収率 49%) 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ6.98-7.06 (m, 2H), 7.86-7.91 (m, 4H), 8.02-8.09 (m, 2H). MS m/z 364 (M+).
【0081】
(3)DPOD誘導体の125I標識
種々のトリブチルスズ化合物 (1 mg/mL) のエタノール溶液 (50 μL) に[125I]NaI (1-5 μCi)、1 N塩酸 (50 μL) を加え、最後に3% w/v 過酸化水素水 (50 μL) を加えた。2分間室温放置後、飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液 (100 μL) を加え反応を停止させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 μL) を加えて反応溶液を中和した。酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムを入れたパスツールピペットに通して脱水した後、逆相HPLC (水 : アセトニトリル = 4 : 6) で精製した。非放射性化合物を標品として254 nmにおける吸光度をHPLCで分析し、それと一致する目的物を分取し、酢酸エチルで抽出し、窒素気流下酢酸エチルを留去した。
【0082】
(4)Ab(1-42)凝集体の調製
Ab(1-42)を、1 mM EDTAを含んだ10 mM リン酸緩衝液 (pH 7.4) に0.25 mg/mLの濃度になるよう溶解し、37 ℃で42時間インキュベートすることにより、Ab(1-42)凝集体を調製した。
【0083】
(5)Ab(1-42)凝集体を用いた結合実験
10%EtOH溶液 900 μL、種々の濃度のサンプル溶液50 μL、Aβ (1-42)凝集体50 μLまたはリン酸Buffer 50 μLを加え、室温で3時間放置した。Aβ(1-42)凝集体と結合した化合物と結合していない化合物とは、Whatman GF/B filterを用いてBrandel M-24R cell harvester によって分離し、濾過したフィルターに残った放射能をγカウンターで計測した。
【0084】
(6)Ab(1-42)凝集体を用いた結合阻害実験による阻害定数:Ki値の算出
10%EtOH溶液 850 μL、[125I]IMPYの10%エタノール溶液 50 μL、種々の濃度のサンプル溶液 50 μL (0〜20 μM) を混和し、最後にAb(1-42)凝集体溶液 50 μLを加え、室温で3時間放置した。Ab(1-42)凝集体と結合した化合物と結合していない化合物とはWhatman GF/B filterを用いてBrandel M-24R cell harvesterによって分離した。濾過したフィルターに残った放射能をγ-カウンターで計測し、GraphPad Prism 4.0を用いて阻害曲線を作成し、阻害定数:Kiを算出した。
【0085】
(7)正常マウスを用いた体内放射能分布実験
10%EtOH含有生理食塩水を用い、放射性ヨウ素標識体を希釈した。1群4-5匹の4-5週齢ddY雄系マウス (20-25 g) に、それぞれの標識体[125I]7、[125I]10、 [125I]13、 [125I]14を1匹あたり100 μL (0.2-0.4 μCi) 尾静脈より投与した。投与後2、10、30、60分後に断頭、採血し、主要な臓器を摘出した後、それらの重量および放射能を測定した。
【0086】
(8)アルツハイマー病病態モデルマウス脳組織切片を用いた蛍光染色実験
アルツハイマー病モデルトランスジェニックマウスTg2576 (20,24ヶ月齢)の脳を取り出し、ドライアイス中で4%CMCを加え凍結させた。その後、LEICA CM1900により厚さ10 μmの切片を作成した。切片とリガンド(100μ M in 50%EtOH)を10分間、または切片とTh-Sを3分間反応させた後、50%EtOHで2回洗浄し、Nikon ECLIPSE 80iを用い、波長365 nm、380-420 nmで観察した。
【0087】
〔実験結果〕
(1)DPOD誘導体の合成
図1及び2にDPOD誘導体の合成経路を示す。DPOD骨格の形成は既報の方法を用いて行った。それぞれのブロモ化合物はパラジウムを触媒とするビス(トリブチルスズ)との反応によりトリブチルスズ体へと変換した。これらのトリブチルスズ体はヨウ素と反応させることによりヨウ素体へと変換した。
【0088】
(2)125I標識実験
図3に2,5-ジフェニル-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の125I標識経路を示す。125I標識は、過酸化水素を酸化剤として用い、スズ-ヨウ素交換反応により目的とする125I標識体を得た。あらかじめ254 nmにおける非放射能化合物の吸光度を逆相HPLCで分析しておき、その保持時間と一致する化合物を分離精製することにより、目的とする125I標識体を98%以上の放射化学的純度で得た。
【0089】
(3)DPOD誘導体のAb(1-42)凝集体との結合親和性に関する検討
合成した種々のDPOD誘導体(化合物12、13、14、15、16)について、阻害定数:Kiを算出するため、[125I]IMPYを放射性リガンドとして用いた結合阻害実験を行った。実験の結果得られたKiを表17に示す。DPOD誘導体におけるAb(1-42)凝集体に対する結合親和性は、置換基の種類により異なり、OH <NH2 = NHMe = NMe2 < OMeの順で向上することが示された。これら化合物のKi値は4から47 nMであり、いずれの化合物も、インビボアミロイドイメージングを行うのに十分な結合性を示した。また、化合物19、20については、アミロイド凝集体との直接的な結合性を評価した(図4)。その結果、化合物19、20は、IMPYと同程度の結合性を有していることが明らかとなり、これら化合物もインビボアミロイドイメージングを行うのに十分な結合性を示した。
【0090】
【表17】

(4)125I標識DPOD誘導体の正常マウスにおける体内放射能分布実験
4-5週齢正常マウスを用いて125I標識化合物12、13、14、15、19、20のDPOD誘導体の体内放射能分布実験を行った(表18)。いずれの化合物も1 %ID/g以上の脳移行性を示し、アミロイドイメージングに十分な放射能が脳へ到達した。また、1,2,4誘導体に比べ、1,3,4誘導体は高い脳移行性を示した。中でも[125I]20は、最も速やかな放射能消失を示すことが確認された。いずれの化合物も肝臓への高い集積を示し、経時的に腸管へと排泄された。
【表18】

【0091】
(5)アルツハイマー病病態モデルマウス脳組織切片を用いた蛍光染色実験
図5に、アルツハイマー病マウス脳組織切片を用いた化合物19、20による蛍光染色の結果を示す。化合物19、20の蛍光染色部位は、アミロイド染色試薬であるチオフラビン-S の蛍光染色部位と一致しており、化合物19、20は、マウス脳アミロイド斑に対して結合親和性を持つことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】2,5-ジフェニル-1,2,4-オキサジアゾール誘導体の合成経路を示す図。図中の番号は化合物の番号を示す。
【図2】2,5-ジフェニル-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の合成経路を示す図。図中の番号は化合物の番号を示す。
【図3】2,5-ジフェニル-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の125I標識経路を示す図。図中の番号は化合物の番号を示す。
【図4】化合物19および20のAβ42凝集体への結合性を示す図(化合物19:■、化合物20:●、IMPY:▲、コントロール:×)。
【図5】アルツハイマー病モデルマウス脳切片を用いた化合物19、20による蛍光染色および隣接切片によるチオフラビンS染色の結果を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

〔式中、Rは下記置換基群Aから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を表し、Rは下記置換基群Bから選ばれた1若しくは2以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基を表し、置換基群Aは、ハロゲン原子、式:−(CHCHO)−F [式中、nは1〜10の整数を表す。] で表される基、及び式:−(CHCHO)−OH [式中、nは1〜10の整数を表す。] で表される基からなる群であり、置換基群Bは、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、メトキシ基、水酸基、式:−(CHCHO)−F [式中、nは1〜10の整数を表す。] で表される基、及び式:−(CHCHO)−OH [式中、nは1〜10の整数を表す。] で表される基からなる群である。〕
又は一般式(II)
【化2】

〔式中、R及びRは前記と同意義を示す。〕
で表される化合物若しくは前記化合物を放射性核種で標識した化合物、又はこれらの化合物の医薬上許容される塩を含有するアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項2】
アミロイド性タンパク質関連疾患が、アミロイドβタンパク質関連疾患である請求項1に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項3】
アミロイド性タンパク質関連疾患が、アルツハイマー病である請求項1に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項4】
一般式(I)及び(II)におけるRが、フッ素原子又はヨウ素原子で置換されたフェニル基である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項5】
一般式(I)及び(II)におけるRが、4−フルオロフェニル基、又は4−ヨードフェニル基である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項6】
一般式(I)及び(II)におけるRが、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、メトキシ基、又は水酸基で置換されたフェニル基である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項7】
一般式(I)及び(II)におけるRが、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、アミノ基、又はメトキシ基で置換されたフェニル基である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項8】
一般式(I)及び(II)におけるRが、メトキシ基で置換されたフェニル基である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項9】
一般式(I)及び(II)におけるRが、4−メトキシフェニル基である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項10】
放射性核種が、陽電子放出核種である請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項11】
放射性核種が、γ線放出核種である請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物。
【請求項12】
アミロイド性タンパク質関連疾患のモデル動物に被験物質を投与する工程、前記モデル動物に請求項1乃至11のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)又は(II)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド性タンパク質関連疾患の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法。
【請求項13】
アミロイド性タンパク質関連疾患のモデル動物に前記疾患の治療薬又は予防薬を投与する工程、前記モデル動物に請求項1乃至11のいずれか一項に記載のアミロイド性タンパク質関連疾患診断用組成物を投与する工程、及び前記モデル動物の脳中に含まれる一般式(I)又は(II)で表される化合物の分布又は量を調べる工程を含むアミロイド性タンパク質関連疾患の治療薬又は予防薬の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−203166(P2009−203166A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43750(P2008−43750)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2008年2月12日 財団法人医療機器センター発行の「平成19年度厚生労働科学研究費研究成果等普及啓発事業医療機器開発推進研究ナノメディシン研究成果発表会要旨集」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人医薬基盤研究所「保健医療分野における基礎研究推進事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】