説明

ジフルオロエチルエーテルを含有する非水電解液

【課題】
非水系二次電池用の非水電解液に関して、フッ素系溶媒と非フッ素系溶媒の相分離を起こさず、且つイオン伝導度が高く、更に優れた難燃性を示す非水電解液を提供する。
【解決手段】
一般式(1)
HCFCHOR
(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖ないし分岐のアルキル基または炭素数1〜10の直鎖ないし分岐の含ハロゲンアルキル基。)
で表される含フッ素エーテルを体積比で10〜80%含むことを特徴とする難燃化された非水電解液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池に用いられる非水電解液に関する。より詳細には、特定構造の含フッ素エーテルを含有し、難燃性とイオン伝導度に優れた非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
非水系二次電池は、高出力密度、高エネルギー密度を有し、携帯電話、パーソナルコンピューター等の電源として汎用されている。また、近年は、二酸化炭素排出量の少ないクリーンなエネルギーとして、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源として、盛んに研究されている。
【0003】
非水系二次電池としては、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、マグネシウムイオン二次電池等が知られている。例えば、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池の場合は、正極にリチウム含有遷移金属酸化物を主要構成成分とする材料が用いられ、負極には金属リチウムまたはリチウム合金が用いられる場合、あるいは、グラファイトに代表される炭素質材料を主要構成成分とする材料が用いられる場合等がある。これらは、それぞれリチウム二次電池、リチウムイオン二次電池と称される。正極、負極は、セパレータを介して設けられ、正極、負極間は、Liイオンが移動する媒体として、非水電解液が満たされる。この非水電解液としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質が、エチレンカーボネートやジメチルカーボネート等の高誘電率の有機溶媒に溶解されたものが広く用いられている。ここで、これら有機溶媒は、揮発性、引火性を有しており、引火性物質に分類される溶媒である。このため、特に電力貯蔵用電源や電気自動車用電源等の大型の非水系二次電池の用途には、引火のおそれがない非水電解液が望まれており、難燃性もしくは自己消火性を有する非水電解液を用いる技術が注目されている。
【0004】
このような非水電解液の難燃化の目的にて、不燃性または難燃性の含フッ素エーテル化合物の添加が検討されている(特許文献1〜5)。例えば、特許文献1では、含フッ素エーテルとして、パーフルオロアルキル基を含有する含フッ素エーテルの添加が検討されている。このパーフルオロアルキル基を含有する含フッ素エーテルは、粘度が低い特徴があるが、一方、電解質であるリチウム塩あるいは、溶媒として用いられる鎖状カーボネートまたは環状カーボネートと混合すると二層分離するため、使用困難である。これに対し、特許文献2〜4では、末端基としてCFH基を有する含フッ素エーテルを含有するエーテルとして、HCFCFCHOCFCFH等が開示されている。この構造の含フッ素エーテルは、カーボネート系溶媒との相溶性が改善されており、広い組成範囲において均一な電解液を形成可能である。一方、この含フッ素エーテルを含有する電解液はイオン伝導度が低下する欠点がある。電解液を二次電池に使用する際にイオン伝導度は重要な性能であり、特に電気自動車用の電源として使用する際には、急速充放電性能等に影響する。
【0005】
また、特許文献5では、含フッ素エーテルとして、高いイオン伝導度が得られやすいCFCHOCFCFHを用いた非水電解液が開示されている。しかし、この含フッ素エーテルは沸点が55℃と低いため、電池の温度が上昇し易い自動車用電源として使用する場合には電池の膨らみ等のトラブルが発生し易い問題がある。
【0006】
一方、ジフルオロエチル基を含有する含フッ素エーテルを含有する電解液としては、特許文献6に報告例がある。しかしながら、この先行文献においては、ジフルオロエチル基を有する含フッ素エーテルが5%添加された電解液の調整例のみが示されており、電解液としての性能も示されておらず、電解液の難燃化については全く検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−329491号公報
【特許文献2】特開平11−026015号公報
【特許文献3】特開2000−294281号公報
【特許文献4】特開2004−087136号公報
【特許文献5】WO2009−133899号公報
【特許文献6】CN101714657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものである。即ち、非水系二次電池用の非水電解液に関して、フッ素系溶媒と非フッ素系溶媒の相分離を起こさず、イオン伝導度が高く、更に優れた難燃性を示す非水電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定構造の含フッ素エーテルを用いることにより、広範な組成においてフッ素系溶媒と非フッ素系溶媒の相分離が起こらず、且つイオン伝導度が高く、更に優れた難燃性を示す非水電解液が得られることを見出し本発明を完成させたものである。即ち、本発明は下記の要旨に係わるものである。
【0010】
(1) 一般式(1)
HCFCHOR (1)
(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の含ハロゲンアルキル基を表す。)
で表される含フッ素エーテルを体積比で10〜80%含むことを特徴とする難燃化された非水電解液。
(2) 一般式(1)においてRが炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基であり、且つ沸点が70℃以上である含フッ素エーテルを含むことを特徴とする(1)に記載の難燃化された非水電解液。
(3) 含フッ素エーテルが、2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテルであることを特徴とする(1)に記載の難燃化された非水電解液。
(4) 電解質としてリチウム塩および/またはマグネシウム塩を含み、(1)の一般式(1)で表される含フッ素エーテルを体積比で20〜60%含有することを特徴とする難燃化された非水電解液。
(5) 更に下記一般式(2)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表す。)
で表される含フッ素リン酸エステルを含有することを特徴とする(4)に記載の難燃化された非水電解液。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フッ素系溶媒と非フッ素系溶媒の相分離を起こさず、イオン伝導度が高く、更に優れた難燃性を示す非水電解液が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例7、比較例4で測定した非水電解液の温度とイオン伝導度の関係を示すグラフ。●は実施例7の非水電解液aを、□は比較例4の非水電解液gを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の非水電解液は、前記一般式(1)で表される含フッ素エーテルを含有する。即ち、含フッ素エーテルが少なくとも1個のジフルオロエチル基を有することを特徴とする。このジフルオロエチル基を有することにより、非水電解液として重要となるイオン伝導度に顕著な効果が発現され、且つ、含フッ素エーテルが適度な沸点となり、電池の膨らみ等の懸念が軽減される。
【0016】
一般式(1)においてRは、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の含ハロゲンアルキル基である。炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等を挙げることができる。炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の含ハロゲンアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1−フルオロエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、1,1−ジクロロエチル基、1,1,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル等を挙げることができる。これらのうち、特に、炭素数1〜4の直鎖ないし分岐の含フッ素アルキル基が電解液の難燃化とイオン伝導度の点で望ましい。このような含フッ素エーテルとして、例えば、2,2−ジフルオロエチルメチルエーテル、2,2−ジフルオロエチルエチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−n−プロピルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−iso−プロピルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−n−ブチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−n−ヘキシルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−n−デシルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−フルオロメチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−ジフルオロメチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−トリフルオロメチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−1,1−ジフルオロエチルエーテル、ビス(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、2,2−ジフルオロエチル−1,1,2−トリフルオロエチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−1,1,2−トリフルオロエチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−3,3,3−トリフルオロプロピルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−ヘキサフルオロイソプロピルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−4,4,4−トリフルオロブチルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルエーテル等を挙げることができる。これら含フッ素エーテルのうち、特に、2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテルが電解液のイオン伝導度の点で望ましい。
【0017】
なお、これら含フッ素エーテルは、高純度であることが望ましく、特に、水、酸、アルコール等のプロトン性化合物の含有量がそれぞれ30ppm未満、好ましくは10ppm未満であることが望ましい。
【0018】
本発明の非水電解液は、一般式(1)の含フッ素エーテルを他の有機溶媒と混合して用いられる。この際の含フッ素エーテルの混合比は体積比で10〜80%、より好ましくは20〜60%である。混合比が10%未満の場合は、電解液の難燃化が十分でなく、80%を超える場合は、電解質の溶解性が低下したり、十分なイオン伝導度を示さなくなる場合があるため好ましくない。一般式(1)の含フッ素エーテルと混合する有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル等の鎖状エステル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類及び一般式(2)のリン酸エステル等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。特に一般式(2)のリン酸エステルと混合した場合は、より高度に難燃化された非水電解液を得ることができる。
【0019】
一般式(2)において、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表し、Rf〜Rfの少なくとも1つは含フッ素アルキル基である。炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基等が挙げられ、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基及び2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル基及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル基等を挙げることができる。このような含フッ素リン酸エステルとして、例えば、リン酸トリス(トリフルオロメチル)、リン酸トリス(2,2−ジフルオロエチル)、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、リン酸(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)、リン酸トリス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)、リン酸トリス(ヘキサフルオロイソプロピル)、リン酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)、リン酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル)、リン酸トリス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル)、リン酸トリス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)エチル、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2−ジフルオロエチル)、リン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)、リン酸ビス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)(2,2,2−トリフルオロエチル)及びリン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)メチル等を挙げることができる。
【0020】
非水電解液を構成する電解質塩としては、広電位領域において安定であるリチウム塩やマグネシウム塩等が使用できる。このような電解質塩として、例えば、LiBF、LiPF、LiClO、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、Mg(ClO、Mg(CFSO、Mg(N(CFSO等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なお、電池の高率充放電特性を良好なものとするため、非水電解液における電解質塩の濃度は0.2〜2.5mol/Lの範囲とすることが望ましい。
【0021】
本発明の非水電解液を用いた非水系二次電池は、少なくとも正極、負極、セパレータから成る。負極材料としては、金属リチウム、リチウム合金あるいはリチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な炭素材料等が用いられる。正極材料としては、通常、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiFeO、LiFePOなどのリチウムと遷移金属の複合酸化物等が用いられる。セパレータとしては、微多孔性膜等が用いられ、材料として、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂等が用いられる。非水系二次電池の形状、形態としては、通常、円筒型、角型、コイン型、カード型等が選択される。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0023】
参考例1 含フッ素エーテルの合成(2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル)
オートクレーブにジフルオロエタノール 100g及び水酸化カリウム 7.2gを仕込み、80℃に加熱しながらテトラフルオロエチレンを供給し反応させた。反応液を回収後、水洗し、有機層を蒸留精製した。沸点79.4〜80.4℃の留分を分取し、純度99.9%の2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル 268gを得た。
【0024】
実施例1 非水電解液の相溶性
エチレンカーボネート(35体積%)、ジメチルカーボネート(35体積%)及び2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル(30体積%)の混合液にLiPFを1mol/Lの濃度になるように添加した。液は完全に均一となった。
【0025】
実施例2
エチレンカーボネート(20体積%)、ジメチルカーボネート(20体積%)及び2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル(60体積%)の混合液にLiPFを1mol/Lの濃度になるように添加した。液は完全に均一となった。
【0026】
比較例1 非水電解液の相溶性
含フッ素エーテルをメチルノナフルオロブチルエーテルとした以外は実施例1と同様の組成で溶媒と電解質を混合した。液は二相に分離したため、電解液として不良であった。
【0027】
実施例3〜6、比較例2 非水電解液の難燃性
実施例1の非水電解液を電解液a、実施例2の非水電解液を電解液bとし、エチレンカーボネート(42.5体積%)、ジメチルカーボネート(42.5体積%)及び2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル(15体積%)の混合液にLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた非水電解液を電解液cとした。また、エチレンカーボネート(35体積%)、ジメチルカーボネート(35体積%)、2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル(15体積%)及びリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(15体積%)の混合液にLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた非水電解液を電解液dとした。比較の非水電解液としてエチレンカーボネート(50体積%)及びジメチルカーボネート(50体積%)の混合液にLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解させた非水電解液を電解液e、エチレンカーボネート(47.5体積%)、ジメチルカーボネート(47.5体積%)及び2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル(5体積%)の混合液にLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた非水電解液を電解液fとした。とした。これらの非水電解液を使用し、下記方法により難燃性を試験した。
【0028】
直径21mmの硝子ろ紙に非水電解液0.25mlを注入し、8cmの距離からアルコールランプの炎を当て、10秒間保持し、燃焼有無を確認した。この試験を5回繰り返し燃焼確率を求めた。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例7、比較例4 非水電解液のイオン伝導度
実施例1の非水電解液a及び比較の非水電解液として、エチレンカーボネート(35体積%)、ジメチルカーボネート(35体積%)及び1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル(30体積%)の混合液にLiPFを1mol/Lの濃度になるように溶解させた非水電解液gについて、電気伝導率計(京都電子製CM−117型)を用いて各温度におけるイオン伝導度を計測した。結果を図1に示す。
【0031】
特定構造の含フッ素エーテルを含有する本発明の非水電解液は、特許文献2で開示された含フッ素エーテルを含有する非水電解液に対し、格段に高いイオン伝導度を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の非水電解液は、フッ素系溶媒と非フッ素系溶媒の相分離を起こさず、イオン伝導度が高く、更に優れた難燃性を示すので、非水系二次電池に用いられる非水電解液として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
HCFCHOR (1)
(式中、Rは炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の含ハロゲンアルキル基。)
で表される含フッ素エーテルを体積比で10〜80%含むことを特徴とする難燃化された非水電解液。
【請求項2】
一般式(1)においてRが炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基であり、且つ沸点が70℃以上である含フッ素エーテルを含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃化された非水電解液
【請求項3】
含フッ素エーテルが、2,2−ジフルオロエチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテルであることを特徴とする請求項1に記載の難燃化された非水電解液。
【請求項4】
電解質としてリチウム塩および/またはマグネシウム塩を含み、請求項1の一般式(1)で表される含フッ素エーテルを体積比で20〜60%含有することを特徴とする難燃化された非水電解液。
【請求項5】
更に下記一般式(2)
【化1】

(式中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐の含フッ素アルキル基を表し、Rf〜Rfの少なくとも1つは含フッ素アルキル基である。)
で表される含フッ素リン酸エステルを含有することを特徴とする請求項4に記載の難燃化された非水電解液。

【図1】
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【公開番号】特開2012−74135(P2012−74135A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215865(P2010−215865)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】