説明

ジフルオロメタン、1,1,1−トリフルオロエタンおよび1,1−ジフルオロエタンの製造方法

ジフルオロメタン(HFC-32)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)および1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)を製造するための方法。この方法においては以下の工程が用いられる:(a) 反応容器を用意し、(b) 反応容器の中に強いルイス酸フッ素化触媒を含ませた活性炭を供給し、この強いルイス酸触媒はAs、Sb、Al、Tl、In、V、Nb、Ta、Ti、ZrおよびHfのハロゲン化物から選択され、(c) 強いルイス酸フッ素化触媒を含ませた活性炭に無水フッ化水素ガスと塩素ガスを通すことによって触媒を活性化させ、(d) 活性化した触媒を収容している反応容器の中で、気体状態において、フッ化水素と、クロロフルオロメタン、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、塩化ビニル、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、および1,1-ジクロロエタンから選択される1以上のハロゲン化炭化水素とを、これら塩素化炭化水素反応物質に対応するヒドロフルオロカーボン生成物と、塩化水素、未反応の塩素化炭化水素反応物質、不十分にフッ素化された中間物質、および未反応のフッ化水素のうちの1以上とを含む生成物流れが生成する時間と温度において接触させ、そして(e) 生成物流れからヒドロフルオロカーボン生成物を分離する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、ジフルオロメタン(HFC-32)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)および1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)を製造するための改良された方法であって、現在ある製造方法よりも経済的で腐食性の低い方法に関する。さらに本発明は、所望の生成物について現行の製造方法よりも選択性が高いと考えられる低温気相方法によって冷媒を製造するものである。
【0002】
発明の背景
機械的な冷却装置(refrigeration systems)、および熱ポンプや空調装置など冷却性液体を用いる関連する熱伝達装置は、工業上や商業上の用途および家庭用の用途について当分野において周知である。クロロフルオロカーボン類(CFCs)は、そのような装置のための冷媒として1930年代に開発された。しかし、1980年代以来、成層圏のオゾン層に及ぼすCFCsの影響について大きな関心が向けられるようになった。1987年に多くの政府は、CFC製品を段階的に廃止するための計画を表明した地球環境を保護するためのモントリオール協定に調印した。この協定に対するその後の修正は、これらCFCsの段階的廃止を加速させ、またHCFCsの段階的廃止も予定することとした。従って、これらCFCsとHCFCsに代わる不燃性で非毒性の代替物に対する要求が存在する。そのような要求に答えて、工業界はゼロオゾン破壊可能性を有する多くのヒドロフルオロカーボン類(HFCs)を開発した。
【0003】
ジフルオロメタン(HFC-32)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)および1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)などのヒドロフルオロカーボン類は本質的にオゾン破壊可能性(ODP)を有しておらず、また低い地球温暖化可能性(GWP)を有していて、従ってそれらは容認できる冷媒であることが見出され、またある場合には、プラスチック気泡材料の製造における発泡剤としての可能性が見出された。
【0004】
HFC-32を製造するためのすでに知られた方法が文献中に存在する。米国特許第2,749,374号と第2,749,375号は、ジクロロメタン(HCC-30)が液相中にあるHFと110〜175℃の範囲内の温度においてハロゲン化アンチモン触媒を含むフッ素の存在下で反応し、それによってHFC-32が得られるプロセスを開示する。しかし、このプロセスにおいては、R-30系列の化合物(HFC-32、HCFC-31およびHCC-30)以外の望ましくない不純物であるモノクロロメタンやフルオロメタンなどの大量のR-40系列の化合物が副生物として形成される。液化したHFとハロゲン化アンチモンの混合物は金属や合金に対して非常に腐食性であることも、当分野において周知である。
【0005】
米国特許第2,745,886号は、HCC-30を含めた様々なハロ炭化水素をフッ素化するための気相プロセスを開示し、これにおいては酸素で活性化した水和フッ化クロム触媒を利用する。同様に、米国特許第2,744,148号はハロ炭化水素のフッ素化プロセスを開示し、これにおいてはHF活性化アルミナ触媒が用いられる。米国特許第3,862,995号は、炭素に担持されたバナジウム誘導体触媒の存在下で塩化メチレンとHFを反応させることによるHFC-32の気相生成を開示する。米国特許第4,147,733号は、フッ化金属触媒の存在下でのHCC-30とHFによるHFC-32の生成のための気相反応を開示する。米国特許第5,672,786号は、HFC-32の生成のための気相反応を開示し、この反応は、クロム、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、銅およびマグネシウムのうちの少なくとも一つの酸化物、フッ化物またはオキシフッ化物からなる群から選択されるフッ素化触媒の存在下でHCC-30をHFと接触させることによって行なわれ、これによりHFC-32、HCFC-31および未反応の出発材料を含む生成物流れが生成する。
【0006】
米国特許第5,208,395号において、HFC-32の生成のための気相反応が開示され、この反応は、活性炭に担持されたスズ(IV)塩やビスマス(III)塩、好ましくは塩化物、そして特に四フッ化スズなどの特定の比較的弱いルイス酸触媒の存在下でHCC-30をHFと接触させることによって行なわれる。
【0007】
これらのプロセスには様々な欠点がある。これらのプロセスの全ては、かなりの量の生成物を製造するためには、200℃〜約600℃の比較的高い温度を必要とする。実際には、HFC-32の生成のためのこれらのプロセスには様々な問題があり、それは例えば、生成物の低い収率と低い生成物選択性、および供給物の分解などの操作上の困難さであり、また反応混合物と周囲の環境は非常に腐食性になりうる。
【0008】
現在ある製造方法よりも経済的で腐食性が低く、比較的低い温度においても良好な収率と選択性をもって所望の生成物の生成をもたらす、ジフルオロメタン(HFC-32)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)および1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)を生成するための方法に対する必要性が存在する。先行する発明のものよりも比較的低い反応温度は、供給物の分解と腐食の問題を最少限度にすることを可能にするだろう。
【0009】
発明の概要
本発明は、ジフルオロメタン(HFC-32)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)および1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)から選択される少なくとも一つのヒドロフルオロカーボンを製造するための方法を含み、この方法は以下の工程を含む気相プロセスである:
(a) 反応容器を用意し、
(b) 反応容器の中に強いルイス酸フッ素化触媒を含ませた活性炭を供給し、このとき強いルイス酸触媒はAs、Sb、Al、Tl、In、V、Nb、Ta、Ti、ZrおよびHfのハロゲン化物から選択され、
(c) 強いルイス酸フッ素化触媒を含ませた活性炭に無水フッ化水素ガスと塩素ガスを通すことによって触媒を活性化させ、
(d) 活性化した触媒を収容している反応容器の中で、気体状態において、フッ化水素と、クロロフルオロメタン、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、塩化ビニル、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、および1,1-ジクロロエタンからなる群から選択される1以上のハロゲン化炭化水素とを、これら塩素化炭化水素反応物質に対応するヒドロフルオロカーボン生成物、塩化水素、未反応の塩素化炭化水素反応物質、および未反応のフッ化水素からなる生成物流れが生成する時間と温度において接触させ、そして
(e) 生成物流れからヒドロフルオロカーボン生成物を分離する。
【0010】
発明の詳細な説明および好ましい態様
概して言えば、本発明の方法は、強いルイス酸フッ素化触媒を活性炭に含ませることによって気相フッ素化触媒を供給することを含む。次いで、用意された担持されたフッ素化触媒は、あらゆる適当な反応容器(例えば金属チューブ反応器または金属パイプ反応器)の中に装填され、それによって触媒床が作られる。反応容器は好ましくは、ニッケルやハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)およびモネル(登録商標)などのニッケル含有合金のような、フッ化水素の腐食効果に対して耐性のある材料から構成される。あるいは、フルオロポリマーで裏打ちされた反応容器も適当であろう。次いで、この触媒を添加した活性炭の床は活性化される。活性化工程は、床にCl2ガスと無水フッ化水素(AHF)ガスを約20℃〜約400℃の中程度の温度で、より好ましくは約40℃〜約300℃の温度で、そして最も好ましくは約50℃〜約200℃の温度で通すものである。フッ素化触媒を有効に活性化するのに十分なあらゆる適当な量の塩素ガスと無水フッ化水素を、この目的のために用いてもよい。一般に、フッ素化触媒の1モル当り最低で約1モルの塩素ガスが、触媒の活性化のために用いられる。通常、この目的のために用いられる塩素ガスの量は、触媒の1モル当り塩素ガスが約1モル〜約10モル、好ましくは約2モル〜約8モル、そして特に約3モル〜約5モルである。一般に、フッ素化触媒の1モル当り最低で約3モルの無水フッ化水素ガスが、触媒の活性化のために用いられる。通常、この目的のために用いられる無水フッ化水素ガスの量は、触媒の1モル当り無水フッ化水素ガスが約3モル〜約10モル、好ましくは約3モル〜約8モル、そして特に約3モル〜約5モルである。
【0011】
あらゆる適当な強いルイス酸フッ素化触媒を、本発明の方法において用いてもよい。好ましい触媒は、活性炭に担持されたAs、Sb、Al、Tl、In、V、Nb、Ta、Ti、ZrおよびHfのハロゲン化物の群から選択され、より好ましくはSbとAsのハロゲン化物であり、そして最も好ましくはSb(V) のハロゲン化物である。用いられる触媒の量は、本発明の気相反応においてハロゲン化炭化水素反応物質がヒドロフルオロカーボン生成物に転化するのに十分な、あらゆる適当な触媒的に有効な量であろう。
【0012】
本発明の方法において用いられるハロゲン化炭化水素反応物質は、本発明の気相反応において所望のヒドロフルオロカーボン生成物に転化させるのに適した、あらゆる適当なハロゲン化炭化水素反応物質であろう。そのような適当なハロゲン化炭化水素反応物質の例としては、クロロフルオロメタン、ジクロロメタン(「HCC-30」)および1,1,1-トリクロロエタン(HCC-140a)、塩化ビニル、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、および1,1-ジクロロエタンからなる群から選択されるハロゲン化炭化水素または2以上のハロゲン化炭化水素の混合物がある。好ましくは、ハロゲン化炭化水素反応物質は、クロロフルオロメタン、塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1-ジクロロエチレンおよび塩化ビニルである。ハロゲン化炭化水素または2以上のハロゲン化炭化水素の混合物は、反応容器の中で活性炭に担持されたルイス酸フッ素化触媒の存在下でHFと接触し、それによって対応するヒドロフルオロカーボン、塩化水素(「HCl」)、未反応の出発物質、および未反応のフッ化水素(「HF」)からなる生成物流れが生成する。所望のヒドロフルオロカーボン生成物は生成物流れから、一般に実質的に純粋な形で分離される。本発明の方法において用いられるフッ化水素反応物質対ハロゲン化炭化水素反応物質の比率は、通常2:以上であろう。一般に、この比率は約2:から約50:1までの範囲、好ましくは約2:1から約30:1までの範囲、そしてより好ましくは約2:1から約20:1までの範囲であろう。
【0013】
フッ化水素反応物質と塩素化炭化水素反応物質が反応容器の中に導入される前に、所望により、これらの反応物質を予熱してもよい。予熱温度は一般に、用いられる塩素化炭化水素反応物質に伴って変化するだろう。基本的に、フッ化水素反応物質と塩素化炭化水素反応物質は、反応領域に入る前に気相(蒸気相)でなければならない。この予熱工程はまた、ある程度まで気化して過熱した反応物質の供給物を与えるためにも用いることができる(ただし、これは必須のことではない)。反応物質の供給物を予熱することは一般に、それらが反応領域に入る前にそれらをほぼ反応温度まで加熱するのに十分であろう。反応容器の中の反応領域で維持される温度は一般に、約40℃から約400℃までの範囲、好ましくは約50℃から約300℃までの範囲、より好ましくは約50℃から約250℃までの範囲、そして最も好ましくは約60℃から約200℃までの範囲であろう。
【0014】
反応領域において用いられる圧力は一般に重要ではなく、大気圧であっても、過圧あるいは減圧下であってもよい。通常、約5psiaから約215psiaの範囲の圧力、好ましくは約10psiaから約180psiaの範囲、また好ましくは約15psiaから約115psiaの範囲が用いられるだろう。最も好ましくは、反応は15psiaから115psiaの範囲において行なわれる。
【0015】
接触時間、すなわち反応物質が触媒床(これが空隙率100%の触媒床であると想定して)を通過するのに要する時間は典型的には 約1〜約120秒、好ましくは約2〜60秒、より好ましくは約4〜約50秒、そして最も好ましくは約5〜約30秒である。反応は回分式の反応として行なわれても、あるいは連続式の反応として行なわれてもよい。通常、反応を連続式の反応として行うのが好ましい。
【0016】
反応容器の中で触媒の良好な触媒活性を維持するために、一般に、塩素ガスを反応容器へフッ化水素と塩素化炭化水素の反応物質供給物と同時に供給するのが好ましいだろう。反応が連続式の反応として行われる場合、反応領域へ同時供給される塩素ガスの量は、有機反応物質供給物の1モル当り塩素ガスが最低で約0.005モルであろう。通常、連続式の反応においてこの目的のために反応領域へ同時供給される塩素ガスの量は、有機反応物質供給物の1モル当りの塩素ガスの量として、約0.005モルから約0.1モルまでの範囲、好ましくは約0.01モルから約0.05モルまでの範囲、より好ましくは約0.01モルから約0.025モルまでの範囲であろう。反応が回分式の反応として行なわれる場合、この目的のために用いられて同時供給される塩素ガスの量は、ルイス酸フッ素化触媒の1モル当り塩素ガスが最低で約1モルであろう。通常、回分式の反応においてこの目的のために反応領域へ同時供給される塩素ガスの量は、ルイス酸フッ素化触媒の1モル当りの量として、約1モルから約10モルまでの範囲、好ましくは約2モルから約8モルまでの範囲、より好ましくは約3モルから約5モルまでの範囲であろう。
【0017】
本発明の別の面において、所望のヒドロフルオロカーボン生成物が分離された生成物流れの中の不十分にフッ素化された(under-fluorinated)中間物質は、反応容器の反応領域へ戻されてもよく、またそのようにするのが好ましい。また、所望のヒドロフルオロカーボン生成物が分離された生成物流れからの未反応の反応物質を、反応容器の反応領域へ再循環させることも望ましい。
【0018】
生成物流れから所望のヒドロフルオロカーボン生成物を分離するためのあらゆる適当な方法(例えば、蒸留)を用いることができる。
【0019】
本発明を以下の実施例によって例証する(しかし、これらに限定されるものではない)。
【0020】
実施例1
気相フッ素化反応が、直径2.54cm×長さ81cmのモネル(登録商標)反応器の中で行なわれた。反応器は電気炉を用いて加熱された。反応器の前に気化器が設けられ、これも電気的に加熱されたが、この気化器は反応器への供給物の全てが反応領域に入る前に確実に気体状態になるようにするものである。以下の方法によって調製されそして活性化された242mlのSbCl5担持触媒が、反応器に装填された。このSbCl5触媒は、Calgon PCB(4×10メッシュ)活性炭(340ml)にSbCl5(169g)を含浸させることによって調製された。これが反応器に装填され、そして使用する前に反応器の中で活性化された。活性化の手順は次の通りであった。最初に、20ml/分の窒素が触媒に流された。この窒素雰囲気の中で反応器は100℃まで加熱された。次いで、無水HFと塩素が、それぞれ0.25g/分および0.3g/分で反応器を通して1時間流された。その時間が経過した後、塩素の流れは停止され、一方、HFとN2は続けて触媒床に流通された。塩素の流量はHastingsの質量流量計と制御器を用いて測定された。HFの流量は、Honeywell PlantScape DCS(Distributive Control System:分配制御装置)につながったPorter Liquiflow質量流量計によって制御されて測定され、そしてソースシリンダー(source cylinder)における重量変化によって確認された。
【0021】
すでに100℃になっている反応器の温度と大気圧において、HFの流れは1.0g/分に増加され、このときN2の流れは停止された。触媒の完全な活性化を確実にするために、HFの供給流だけがこの流量において約1/2時間触媒に通されて、次いで塩化メチレン(HCC-30)の供給が約0.31g/分の流量で開始された。これは、およそ7:1から8:1の間のHF 対HCC-30のモル比を与えた。反応物質であるHCC-30とHFについての流量は、Porter Liquiflow質量流量計を用いて測定され、そしてHoneywell PlantScape DCS(Distributive Control System)によって制御され、そしてそれぞれのソースシリンダーにおける重量変化によって確認された。接触時間は約9秒だった。接触時間は、触媒の(mlでの)かさ容積(bulk volume)を反応物質の(ml/秒での)容積流量で割った値として定義される。反応器からの流出物は直接採取されてインラインGCすなわちFluorocolカラムとFID検出器を用いるPerkin Elmer 8500ガスクロマトグラフに供され、それによって反応器から出る有機物質の種の量を、このプロセスを操作する間に決定することができた。気相反応は100℃および大気圧において非常に良好に進行した。これらの条件におけるHCC-30の転化率は、モル基準で95.16%であった。モル%基準でのHFC-32の選択率は96.66%で、中間物質であるHCFC-31は2.18%の選択率を有していた。
【0022】
実施例2
触媒が、実施例1で説明したのと同じ調製と活性化の手順に供された。次いで、反応器は大気圧において180℃まで加熱され、そしてHF とHCC-30の供給が実施例1におけるのと同じ流量で再開された。新しい接触時間は約7.25秒だった。これらの条件において反応は約9時間続けられ、その間に反応器からの流出物は再び直接採取されてインラインGCに供された。モル基準でのHCC-30の転化率は96.74%であった。モル%基準でのHFC-32の選択率は96.93%で、中間物質であるHCFC-31は2.16%の選択率を有していた。GC/MSによって認められた主な不純物はHCC-40であり、その選択率は0.88モル%であった。
【0023】
実施例3
実施例1および2におけるのと同様に、気相フッ素化反応が、同じく直径2.54cm×長さ81cmのモネル(登録商標)反応器の中で行なわれ、反応器の前に気化器が設けられた。反応器は電気炉を用いて加熱された。実施例1で説明したのと同じ手順によって調製されそして活性化された100mlのSbCl5担持触媒が、反応器に装填された。反応器は100℃および大気圧に維持された。HFの流量は0.35g/分に調整され、そして1,1-ジクロロエチレン(VDC)の流入が0.28g/分で開始された。これは、およそ8:1のHF 対VDCのモル比を与えた。接触時間は約10秒だった。これらの条件において、安定した反応条件に達するまで反応が続けられた。実施例1および2で説明したのと同様にして、反応器からの流出試料を直接採取してインラインGCに供することによって、反応が監視された。モル基準でのVDCの転化率は95%以上であった。所望のHFC-143a生成物はこれらの条件において良好な収率(モル基準で80%以上)で生成され、他の生成物の大部分は中間物質であるHCFC-141bおよびHCFC-142bであった。
【0024】
実施例4
先の実施例で説明したのと同様の手順において、ハロゲン化炭化水素反応物質として塩化ビニルを用いたとき、触媒を用いた本発明の気相反応において1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)が生成された。
【0025】
本明細書において特定の態様を参照して本発明を説明したが、ここで開示された本発明の概念の精神と範囲から離れることなく、変更、修正および変形をなし得ることが理解されるだろう。従って、添付の特許請求の範囲の精神とその範囲に入るそのような変更、修正および変形の全てが、本発明に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジフルオロメタン(HFC-32)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a)および1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)からなる群から選択される少なくとも一つのヒドロフルオロカーボンを製造するための方法であって、
(a) 反応容器を用意し、
(b) 反応容器の中に強いルイス酸フッ素化触媒を含ませた活性炭を供給し、このとき強いルイス酸触媒はAs、Sb、Al、Tl、In、V、Nb、Ta、Ti、ZrおよびHfのハロゲン化物からなる群から選択され、
(c) 強いルイス酸フッ素化触媒を含ませた活性炭に無水フッ化水素ガスと塩素ガスを通すことによって触媒を活性化させ、
(d) 活性化した触媒を収容している反応容器の中で、気体状態において、フッ化水素と、クロロフルオロメタン、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、塩化ビニル、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、および1,1-ジクロロエタンからなる群から選択される1以上のハロゲン化炭化水素とを、これら塩素化炭化水素反応物質に対応するヒドロフルオロカーボン生成物と、塩化水素、未反応の塩素化炭化水素反応物質、不十分にフッ素化された中間物質、および未反応のフッ化水素のうちの1以上とを含む生成物流れが生成する時間と温度において接触させ、そして
(e) 生成物流れからヒドロフルオロカーボン生成物を分離する、
以上の工程を含む方法。
【請求項2】
強いルイス酸フッ素化触媒はAsおよびSbのハロゲン化物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)におけるフッ化水素と塩素化炭化水素反応物質は、反応容器の中に導入される前に気体状の段階まで予熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応物質は、反応容器の中に導入される前に、反応温度に近い過熱された気体状の段階まで予熱される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において触媒を活性化するために用いられるフッ化水素の量は、フッ素化触媒の1モル当りのフッ化水素が約3モルから約10モルまでの範囲であり、そして工程(c)において触媒を活性化するために用いられる塩素ガスの量は、フッ素化触媒の1モル当りのフッ化水素が約1モルから約10モルまでの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
フッ化水素ガスの量はフッ素化触媒の1モル当り約3モルから約5モルまでの範囲であり、そして塩素ガスの量はフッ素化触媒の1モル当り約3モルから約5モルまでの範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反応は連続的に行なわれ、そして触媒活性を維持するために工程(d)において塩素化炭化水素反応物質の1モル当り少なくとも約0.005モルの塩素ガスが反応容器に同時供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
反応容器に同時供給される塩素ガスの量は、塩素化炭化水素反応物質の1モル当り塩素ガスが約0.01モルから約0.25モルまでの範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
反応は回分式の反応として行なわれ、そして触媒活性を維持するために工程(d)においてフッ素化触媒の1モル当り少なくとも約1モルの塩素ガスが反応容器に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
反応容器に導入される塩素ガスの量は、フッ素化触媒の1モル当り約3モルから約5モルまでの範囲の塩素ガスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)におけるフッ化水素の量対ハロゲン化炭化水素反応物質の量の比率は少なくとも2:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(d)におけるフッ化水素の量対ハロゲン化炭化水素反応物質の量の比率は約2:1から約20:1までの範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)における反応は約40℃から約400℃までの範囲内の温度で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
温度は約60℃から約200℃までの範囲内である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(d)における反応は約10psiaから約180psiaの範囲の圧力において行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)における塩素化炭化水素反応物質は塩化メチレンを含み、そしてヒドロフルオロカーボン生成物はジフルオロメタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(d)におけるハロゲン化炭化水素反応物質は1,1-ジクロロエチレンと1,1,1-トリクロロエタンのうちの少なくとも一つを含み、そしてヒドロフルオロカーボン生成物は1,1,1-トリフルオロエタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程(d)における塩素化炭化水素反応物質は塩化ビニルを含み、そしてヒドロフルオロカーボン生成物は1,1-ジフルオロエタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程(d)における反応は連続式の反応として行なわれ、そしてヒドロフルオロカーボン生成物が分離された生成物流れの中の不十分にフッ素化された中間物質は反応容器へ再循環して戻される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
生成物流れから分離されるヒドロフルオロカーボン生成物は、実質的に純粋なヒドロフッ素化生成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
ルイス酸フッ素化触媒はSb(V) のハロゲン化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
工程(c)において触媒を活性化するために用いられるフッ化水素の量は、フッ素化触媒の1モル当りのフッ化水素が約3モルから約10モルまでの範囲であり、そして工程(c)において触媒を活性化するために用いられる塩素ガスの量は、フッ素化触媒の1モル当りのフッ化水素が約1モルから約10モルまでの範囲であり、工程(d)におけるフッ化水素とハロゲン化炭化水素反応物質は、反応容器の中に導入される前に気体状の段階まで予熱され、工程(d)におけるフッ化水素の量対ハロゲン化炭化水素反応物質の量の比率は約2:1から約20:1までの範囲であり、反応容器中の反応は約60℃から約200℃までの範囲内の温度および大気圧の圧力で行なわれ、そしてハロゲン化炭化水素反応物質は、クロロフルオロメタン、ジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、塩化ビニルおよび1,1-ジクロロエタンからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2007−531732(P2007−531732A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506320(P2007−506320)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/011125
【国際公開番号】WO2005/097716
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】