説明

ジョブ管理装置およびコンピュータプログラム

【課題】バッチ処理におけるジョブの実行態様に関するユーザ設定を支援する。
【解決手段】実施の1形態のジョブ編集装置10は、バッチ処理において実行されるべき各ジョブの実行においてアクセスされる記憶領域と、その記憶領域の格納データを変化させるか否かの情報とを対応づけて保持するジョブ情報保持部20と、ユーザにより設定された複数のジョブの実行順序を取得して、それらのジョブがその実行順序により実行可能か否かを判定する判定部26と、その判定結果をユーザへ通知する通知部28を備える。判定部26は、並列実行すべき複数のジョブが指定された場合、並列実行対象のジョブがそれぞれ異なる記憶領域へアクセスするとき、もしくは、並列実行対象のジョブが同じ記憶領域へアクセスしても、その記憶領域の格納データを変化させるジョブが1つであるとき、並列実行可能と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ処理技術に関し、特に、バッチ処理における複数のジョブの実行態様を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
企業の業務システムは、オンライントランザクション処理とバッチ処理とを含んで構築されることが多く、バッチ処理は複数のジョブの集合体としてモデリングされることが多い。本出願人は、以下の特許文献1において、業務システムの現状を効率的に解析するためのジョブリストを画面表示させるジョブ解析支援装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−163566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザは、バッチ処理の開始からその完了までに要する時間を短縮させる必要があるとき、バッチ処理に含まれる複数のジョブの実行順序を調整することがある。その際には、各ジョブの処理内容を照らし合わせて、処理の不整合が発生しないよう調整する必要があるが、業務システムの複雑化・大規模化により、全てのジョブの処理内容を把握することはますます困難になってきている。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バッチ処理におけるジョブの実行態様に関するユーザ設定を支援するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のジョブ管理装置は、バッチ処理において実行されるべき複数のジョブのそれぞれについて、ジョブの実行に際してアクセスする記憶領域と、その記憶領域の格納データを変化させるか否かを示す情報とを対応づけて保持するジョブ情報保持部と、ユーザにより設定された複数のジョブの実行順序を取得する取得部と、複数のジョブが実行順序により実行可能か否かを判定する判定部と、判定部による判定結果をユーザへ通知する通知部と、を備える。判定部は、実行順序において並列実行すべき複数のジョブが指定された場合、並列実行対象のジョブがそれぞれ異なる記憶領域へアクセスするとき、もしくは、並列実行対象のジョブが同じ記憶領域へアクセスしても、その記憶領域の格納データを変化させるジョブが1つであるとき、並列実行可能と判定する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バッチ処理におけるジョブの実行態様に関するユーザ設定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態であるジョブ管理システムの構成を示す図である。
【図2】図1のジョブ編集装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】ジョブ情報テーブルの構成を示す図である。
【図4】ジョブネットの編集画面を示す図である。
【図5】ジョブ編集装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】ジョブネットの編集画面を示す図である。
【図7】図5のS16の検証処理を詳細に示すフローチャートである。
【図8】検証用ジョブ情報を示す図である。
【図9】ジョブネット検証結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態であるジョブ管理システムの構成を示す。ジョブ管理システム100は、企業システムにおいて実行されるべきバッチ処理を管理する情報処理システムであり、LAN等により接続されたジョブ編集装置10とジョブ実行装置12とを備える。
【0011】
ジョブ編集装置10は、複数のジョブそれぞれの処理内容や、複数のジョブの前後関係を定めたジョブ情報を管理し、そのジョブ情報をユーザの指示に基づき設定する情報処理装置である。ジョブ編集装置10は、ジョブ編集プログラムがインストールされたPCであってもよい。ジョブ編集装置10の詳細な構成は後述する。なお、本実施の形態における「ジョブ」は、企業システムにおけるデータ処理の単位を示すものであり、特定の入力ファイルをもとにデータ処理を実行し、特定の出力ファイルを生成する1以上のコンピュータプログラムの集合であることとする。
【0012】
ジョブ実行装置12は、ジョブ編集装置10が管理するジョブ情報にしたがって、複数のジョブを一連のバッチ処理として実行する情報処理装置である。ジョブ実行装置12は、各ジョブで規定されたデータ処理の内容にしたがって、外部のデータベースサーバ(DBサーバ14)へ新規データを格納し、格納済のデータを参照、更新、削除する。なお、DBサーバ14は、データベース管理ソフトウェア(DBMS)がインストールされた情報処理装置であり、複数台存在してもよいことはもちろんである。
【0013】
図2は、図1のジョブ編集装置10の機能構成を示すブロック図である。ジョブ編集装置10は、ジョブ情報保持部20と、要求受付部22と、編集画面表示部24と、判定部26と、通知部28と、更新部30とを備える。
【0014】
本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。例えば、図2の各機能ブロックは、ソフトウェアとして記録媒体に格納され、ジョブ編集装置10のハードディスクにインストールされ、ジョブ編集装置10のメインメモリに適宜読み出されてプロセッサにて実行されてもよい。
【0015】
ジョブ情報保持部20は、ジョブの処理内容や、他のジョブとの前後関係を示す情報を含むジョブ情報の原本を保持する記憶領域である。以下では、複数種類のバッチ処理のそれぞれを識別するための概念であり、特定のバッチ処理で実行される複数ジョブの集合を表す概念を「ジョブネット(ジョブ・ネットワーク)」とも呼ぶ。
【0016】
図3は、ジョブ情報を格納したテーブル(以下、「ジョブ情報テーブル」とも呼ぶ。)の構成を示す。図3の(a)と(b)は、ジョブCの構成が異なるが、他は同一である。後の説明の便宜のため2種類のジョブ情報テーブルを示している。ジョブ情報テーブルのジョブネットID欄には、ジョブが所属するジョブネットのIDが格納される。実行順序欄には、一連のバッチ処理(特定のジョブネットの実行処理)における各ジョブの実行順序、すなわち複数ジョブの前後関係を規定する処理順位が格納される。入力欄には、ジョブの実行に必要とされる入力ファイル名と、その取得元(言い換えれば、入力ファイルの生成主体・保持主体)の識別情報が格納される。なお取得元「外部」とはジョブ以外を指し、例えば入力ファイルのディレクトリパス名やURLが設定されてもよい。
【0017】
処理テーブル欄には、ジョブの実行に際してアクセスされるテーブルであり、DBサーバ14が保持するテーブルの識別名称と、テーブルへのアクセス態様を示す処理種別が格納される。テーブルの識別名称には単純にテーブル名が設定されてもよいが、DBサーバ14が複数存在する場合等、一意の識別名称として「DBサーバ14のIPアドレス+DBインスタンス名+テーブル名」が設定されてもよい。処理種別には、いわゆるCRUDを示す情報であり、「C(Create):新規レコードの格納」、「R(Read):既存レコードの参照」、「U(Update):既存レコードの更新」、「D(Delete):既存レコードの削除」のうち少なくとも1つが設定される。出力欄には、ジョブがその実行結果として出力する出力ファイル名が格納される。
【0018】
図2に戻り、要求受付部22は、キーボード等の外部の入力装置を介してユーザの要求を受け付ける。本実施の形態のユーザ要求には、特定のジョブネットの表示要求と、ユーザにより編集されたジョブネット、言い換えれば、ユーザにより編集されたジョブの実行順序の検証要求と、ユーザにより編集されたジョブネットの登録要求が含まれる。
【0019】
編集画面表示部24は、ジョブネットの表示要求に応じて、その表示要求で指定されたジョブネットの編集画面を外部のディスプレイに表示させる。図4は、ジョブネットの編集画面を示す。ジョブネット編集画面40には、ジョブネット構成が表示され、また編集される領域である編集エリア42と、検証ボタン44と、登録ボタン46とが配置される。編集画面表示部24は、ジョブネットの表示要求で指定されたジョブネットIDに対応付けられたジョブを示す図形オブジェクト(以下、「ジョブオブジェクト」とも呼ぶ。)を、各ジョブの実行順序に応じた位置関係で編集エリア42に配置する。例えば、実行順序が先のものほど編集エリア42の左側に配置し、ジョブ間の前後関係に応じてジョブオブジェクトを矢印オブジェクトで接続する。検証ボタン44はジョブネットの検証要求のトリガであり、登録ボタン46はジョブネットの登録要求のトリガである。
【0020】
図2に戻り、判定部26は、ジョブネットの検証要求に応じて、ユーザにより編集されたジョブネットが実行可能か否かを判定する。言い換えれば、ジョブネットに含まれる複数のジョブが、ユーザが指定する処理順序で実行可能か否かを判定する。本実施の形態では、(1)各ジョブの入出力データが整合するか否か、(2)複数ジョブの並列実行によるデータの不整合が発生しないか否か、の2つを検証することにより、ジョブネットの実行可否を判定する。以下2つの検証処理を詳細に説明する。
【0021】
まず判定部26は、ジョブネットの検証要求を受け付けると、ジョブネット編集画面40の表示内容に基づいて、検証対象のジョブネットに関するジョブネットIDと、複数のジョブIDと、各ジョブの実行順序とを特定する。例えば、編集エリア42におけるジョブオブジェクトの位置関係(配置位置や矢印による接続関係等)にしたがって、各ジョブの実行順序を識別する。なお、並列実行するように指定された複数のジョブについては、それらのジョブの実行順序を同一の値で識別する。また、ジョブネットIDとジョブIDとをキーとして、ジョブ情報テーブルから入力ファイルID、処理テーブル名、処理種別、出力ファイルID等の各ジョブの属性情報を取得する。
【0022】
さらに判定部26は、ジョブの入力ファイルが、そのジョブより実行順序が前の他ジョブの出力ファイルである場合、入力ファイルの取得元として上記の他ジョブを特定する。その一方で、ジョブの入力ファイルが、そのジョブより実行順序が前の他ジョブの出力ファイルとして検出されない場合、入力ファイルの取得元が「不明」であることとする。変形例として、判定部26は、入力ファイルの取得元として、ジョブ情報テーブルに予め定められた情報(ジョブID)を取得してもよい。この場合も、あるジョブにおける入力ファイルの取得元であった他のジョブが、編集の結果、当該ジョブの前に実行されるものではなくなった場合(例えば当該ジョブと並列実行される場合)は、入力ファイルの取得元が「不明」であることとする。
【0023】
判定部26は、以上得られた各種情報をもとに、検証対象のジョブネットに関するジョブ情報であり、図3と同様の構成の情報(以下、「検証用ジョブ情報」とも呼ぶ。)をメモリ上に構築する。そして、検証用ジョブ情報を参照して検証処理を実行する。
【0024】
1.各ジョブの入出力データに関する整合性検証:
判定部26は、ジョブの入力ファイルが、そのジョブより実行順序が前の他ジョブの出力ファイルとして検出されない場合、すなわち検証用ジョブ情報の入力ファイルの取得元欄に「不明」が存在する場合、ジョブの入出力データが不整合としてジョブネットを実行不可と判定する。言い換えれば、ジョブネットに含まれる全てのジョブの入力ファイルが、そのジョブより前に実行されるジョブのいずれかにおいて出力ファイルとして指定されていることを条件として、ジョブネットを実行可能と判定する。例外として、入力ファイルの取得元が「外部」である場合は、不整合とは判定しない。
【0025】
当該検証の意義を説明する。ジョブの実行順序が編集された結果、あるジョブの入力ファイルがそのジョブの実行時点で存在しないこととなると、当該ジョブの実行が遅延し、もしくは実行不可能になる。結果として、バッチ処理の時間短縮は実現されず、かえってデグレーションを招くこととなる。このような事態を回避するため、各ジョブの入出力データの整合性検証が実施される。
【0026】
2.複数ジョブの並列実行に関する整合性検証:
判定部26は、検証用ジョブ情報において、複数のジョブに同一の実行順序が設定されている場合、それらのジョブを並列実行が指定されたジョブとして検出する。判定部26は、並列実行が指定されたジョブがそれぞれ異なるテーブルにアクセスする場合、これらのジョブが並列実行可能と判定し、すなわちジョブネットを実行可能と判定する。また、並列実行が指定されたジョブが同一テーブルにアクセスする場合でも、当該テーブルの格納データを変化させるジョブが1つであるとき、並列実行可能と判定する。具体的には、当該テーブルに対する処理種別として、「R」の数に関わらず、「C」「U」「D」を含むジョブが1つであるとき、並列実行可能と判定する。
【0027】
当該検証の意義を説明する。並列実行される複数のジョブが同一のテーブルに対して並列的に更新処理を行うと、一方のジョブで新たな値に更新したレコードが、他方のジョブで別の値に更新され、また削除される事態が発生しうる。その結果、データの不整合が発生し、ジョブの出力ファイルの内容も想定外のものとなりうる。このような事態を回避するため、並列実行ジョブに関する整合性検証が実施される。
【0028】
通知部28は、判定部26による判定結果、すなわちユーザにより編集されたジョブネットの実行可否をユーザへ通知する。本実施の形態では、実行可否を示す情報を、編集画面表示部24を介してジョブネット編集画面40に表示させる。
【0029】
更新部30は、ジョブネットの登録要求に応じて、ユーザにより編集されたジョブネットの情報によりジョブ情報保持部20が保持するジョブ情報の原本データを更新する。例えば、ジョブネット編集画面40の表示内容に基づいて、登録対象のジョブネットに関するジョブネットIDと、複数のジョブIDと、各ジョブの実行順序とを特定する。そして、ジョブ情報テーブルにおける、ジョブネットIDおよびジョブIDにより特定されるジョブ情報の実行順序欄に、ユーザによる編集後の実行順序を反映させる。なおジョブ編集装置10は、ジョブ情報保持部20が保持するジョブ情報が更新された際に、更新後のジョブ情報をジョブ実行装置12へ送信するジョブ情報送信部をさらに備えてもよい。
【0030】
以上の構成による動作を以下説明する。
図5は、ジョブ編集装置10の動作を示すフローチャートである。要求受付部22がジョブネットの表示要求を受け付けると(S10のY)、編集画面表示部24は、ジョブ情報保持部20に格納されたジョブ情報に基づいてジョブネット編集画面40を表示させる(S12)。例えば図4で示したように、現在の登録情報にもとづくジョブネットの構成を表示させる。ここで、図6で示すように、ジョブBとジョブCを並列実行するようジョブネットの構成がユーザにより変更されたこととする。ジョブネット編集画面40の検証ボタン44が押下されると、要求受付部22がジョブネットの検証要求を受け付け(S14のY)、後述する検証処理が実行される(S16)。
【0031】
ジョブネット編集画面40の登録ボタン46が押下されると、要求受付部22はジョブネットの登録要求を受け付ける(S18のY)。そして更新部30は、ジョブネット編集画面40において編集されたジョブネットの情報によりジョブ情報保持部20のジョブ情報を更新する(S20)。ジョブネットの表示要求が受け付けられなければ(S10のN)、S12はスキップされる。ジョブネットの検証要求が受け付けられなければ(S14のN)、S16はスキップされる。ジョブネットの登録要求が受け付けられなければ(S18のN)、S20はスキップされる。
【0032】
図7は、図5のS16の検証処理を詳細に示すフローチャートである。判定部26は、ジョブネット編集画面40において編集された、検証対象のジョブネットの情報と、ジョブ情報保持部20に格納されたジョブ情報の原本データにしたがって検証用ジョブ情報を構築する(S30)。検証用ジョブ情報において各ジョブの入出力データが整合しない場合(S32のN)、判定部26は検証対象のジョブネットを実行不可と判定し、通知部28はその旨をユーザに注意喚起するためのアラート情報をジョブネット編集画面40に表示させる(S34)。各ジョブの入出力データが整合し(S32のY)、複数ジョブの並列実行がない場合、言い換えれば全てのジョブが直列に順次実行される場合(S36のN)、判定部26は検証対象のジョブネットを実行可能と判定する。そして通知部28は、検証対象のジョブネットについて問題が検出されなかった旨の情報をジョブネット編集画面40に表示させる(S40)。
【0033】
検証対象のジョブネットにおいて複数ジョブの並列実行が指定され、(S36のY)、それら複数ジョブによる同一テーブルの格納データの変更(追加・更新・削除)が並列してなされる場合(S38のY)、判定部26は検証対象のジョブネットを実行不可と判定する。そして通知部28は、アラート情報をジョブネット編集画面40に表示させる(S34)。複数ジョブの並列実行が存在しても(S36のY)、それら複数ジョブによる同一テーブルの格納データの変更が並列してなされなければ、言い換えれば、格納データを変更するジョブが最大1つであれば(S38のN)、判定部26は検証対象のジョブネットが実行可能と判定する。そして通知部28は、その旨を示す情報をジョブネット編集画面40に表示させる(S40)。
【0034】
図8は、検証用ジョブ情報の一例を示す。図8の(a)は、ジョブ情報保持部20に格納されたジョブ情報が図3の(a)であり、ジョブBとジョブCを並列実行するよう編集された場合に構築される検証用ジョブ情報を示している。この例では、ジョブCの入力ファイルが先のジョブAでは出力されないため、ジョブCの入力ファイルの取得元が不明となる。したがって、図7のS32のNで示すフローをたどり、結果として実行不可と判定される。図8の(b)は、ジョブ情報保持部20に格納されたジョブ情報が図3の(b)であり、ジョブBとジョブCを並列実行するよう編集された場合に構築される検証用ジョブ情報を示している。この例では、ジョブBがγテーブルの格納データを更新(U)し、ジョブCが同じγテーブルの格納データを削除することになる。したがって、図7のS38のYで示すフローをたどり、結果として実行不可と判定される。
【0035】
図9は、ジョブネット編集画面40上でのジョブネット検証結果の表示例を示す。図9の(a)は、判定部26においてジョブネットが実行不可と判定された場合に、通知部28が否定的なメッセージを検証結果通知ウィンドウ48にて表示させた状態を示している。その一方で、図9の(b)は、判定部26においてジョブネットが実行可能と判定された場合に、通知部28が肯定的なメッセージを検証結果通知ウィンドウ48にて表示させた状態を示している。本実施の形態では、ユーザが検証ボタン44を押下したことに対する応答として、肯定的もしくは否定的なメッセージを含む検証結果通知ウィンドウ48を表示させることにより、ユーザに対して検証結果を即時に通知する。
【0036】
本実施の形態のジョブ実行装置12によれば、ユーザがジョブネットの構成の変更を試行する際に、変更後のジョブネット構成により処理やデータの不整合が発生するか否かをユーザに提示することにより、ジョブネットの構成変更を支援する。これにより、ユーザが各ジョブの設計情報を確認して、各ジョブの処理内容を把握する負担を軽減することができる。また、ジョブネット編集画面40におけるジョブネットの編集結果に対する検証結果を、その画面に即時に表示させることにより、効率的なユーザ作業を実現できる。
【0037】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0038】
例えば、上記実施の形態では、ジョブ編集装置10は、ユーザがジョブネット編集画面40において編集したジョブネットに対してその実行可否を検証した。変形例として、ジョブ編集装置10は、自律的に各ジョブの実行順序を変更したジョブネットの構成を変更候補のジョブネットとしてユーザに提示してもよい。
【0039】
具体的には、ジョブ編集装置10の要求受付部22は、変更候補のジョブネットの提示要求をユーザから受け付ける。判定部26は、ジョブ情報テーブルに格納された複数のジョブのそれぞれに、予め規定された実行順序によらず、並列実行を含む種々の実行順序を付与して、種々の構成パターンのジョブネットに対応する、複数種類の検証用ジョブ情報を構築する。判定部26は、複数種類の検証用ジョブ情報のそれぞれに対する検証処理を実行して、実行可能な検証用ジョブ情報を特定する。そして、実行可能な検証用ジョブ情報に対応するジョブネットの構成パターンを、編集画面表示部24を介して、変更候補ジョブネットとしてジョブネット編集画面40に表示させる。
【0040】
この変形例によれば、処理およびデータの整合性が予め担保された変換候補のジョブネットをユーザに提示できる。ユーザは、変換候補のジョブネットを参照しながら、もしくは変換候補のジョブネットを編集して、最終的なジョブネット構成を決定することができる。これにより、ジョブネットの構成変更におけるユーザの負担をさらに軽減し、一層の効率化を支援できる。
【0041】
上述した実施の形態、変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【0042】
請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。例えば、請求項に記載の取得部および判定部は、実施の形態に記載の判定部26により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 ジョブ編集装置、 20 ジョブ情報保持部、 22 要求受付部、 24 編集画面表示部、 26 判定部、 28 通知部、 30 更新部、 100 ジョブ管理システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッチ処理において実行されるべき複数のジョブのそれぞれについて、ジョブの実行に際してアクセスする記憶領域と、その記憶領域の格納データを変化させるか否かを示す情報とを対応づけて保持するジョブ情報保持部と、
ユーザにより設定された前記複数のジョブの実行順序を取得する取得部と、
前記複数のジョブが前記実行順序により実行可能か否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果をユーザへ通知する通知部と、
を備え、
前記判定部は、前記実行順序において並列実行すべき複数のジョブが指定された場合、並列実行対象のジョブがそれぞれ異なる記憶領域へアクセスするとき、もしくは、並列実行対象のジョブが同じ記憶領域へアクセスしても、その記憶領域の格納データを変化させるジョブが1つであるとき、並列実行可能と判定することを特徴とするジョブ管理装置。
【請求項2】
前記ジョブ情報保持部は、前記記憶領域の格納データを変化させるか否かを示す情報として、前記記憶領域の格納データに対するCRUD情報を保持し、
前記判定部は、並列実行対象のジョブが同じ記憶領域へアクセスしても、その記憶領域へ新規データを格納し、もしくはその記憶領域の格納データを更新または削除するジョブが1つであるとき、並列実行可能と判定することを特徴とする請求項1に記載のジョブ管理装置。
【請求項3】
前記ジョブ情報保持部は、ジョブの実行に必要とされる入力データを示す情報と、ジョブの実行結果としての出力データを示す情報をさらに保持し、
前記判定部は、1つのジョブの入力データが、そのジョブより前に実行されるジョブの出力データとして指定されている場合、前記1つのジョブが実行可能と判定することを特徴とする請求項1または2に記載のジョブ管理装置。
【請求項4】
前記複数のジョブに対応した複数の図形オブジェクトを、ジョブの実行順序に対応する位置に配置した編集画面を表示させる編集画面表示部をさらに備え、
前記取得部は、前記編集画面において図形オブジェクトの位置関係がユーザにより変更された場合、図形オブジェクトの変更後の位置関係に対応するジョブの実行順序を取得し、
前記通知部は、前記判定部による判定結果を前記編集画面に表示させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のジョブ管理装置。
【請求項5】
ジョブ管理装置に、
バッチ処理において実行されるべき複数のジョブについて、ユーザにより設定された前記複数のジョブの実行順序を取得する機能と、
前記複数のジョブそれぞれの実行に際してアクセスする記憶領域と、その記憶領域の格納データを変化させるか否かを示す情報とを対応づけて保持するテーブルを参照して、前記複数のジョブが前記実行順序により実行可能か否かを判定する機能と、
前記判定する機能による判定結果をユーザへ通知する機能と、
を実現させ、
前記判定する機能は、前記実行順序において並列実行すべき複数のジョブが指定された場合、並列実行対象のジョブがそれぞれ異なる記憶領域へアクセスするとき、もしくは、並列実行対象のジョブが同じ記憶領域へアクセスしても、その記憶領域の格納データを変化させるジョブが1つであるとき、並列実行可能と判定することを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48331(P2012−48331A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187773(P2010−187773)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】