説明

ジルコニウム、プラセオジム、ランタンまたはネオジムの酸化物を主体とした組成物、その調製方法および触媒系における使用

本発明の組成物は、酸化ジルコニウムを主体とし、酸化ジルコニウムから選択される少なくとも1種の添加剤と、酸化プラセオジム、酸化ランタンおよび酸化ネオジムから選択される少なくとも1種の添加剤とを含む。該組成物は、1000℃で10時間か焼した後に少なくとも29m2/gの比表面積を有することを特徴とする。該組成物は、ジルコニウム化合物および添加剤の混合物を塩基で沈殿され、沈殿により得られた媒質を加熱し、そして陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびそれらの塩、ならびにカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートの種類の界面活性剤から選択された化合物を該組成物に添加し、それによって得られた沈殿物をか焼する方法により得られる。該組成物は触媒として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ジルコニウムと、プラセオジム、ランタンおよびネオジムの酸化物から選択された添加剤とを主体とした組成物、その調製方法ならびに触媒系における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多機能触媒と呼ばれる触媒は、現在のところ、内燃機関の排ガス処理(自動車の後期燃焼の触媒作用)のために使用される。多機能触媒は、排ガス中に存在する一酸化炭素や炭化水素の酸化作用を得ることができるだけでなく、これらのガス中に存在する窒素酸化物も削減できる触媒である(“3元”触媒)。酸化ジルコニウムまたは酸化セリウムを主体とした触媒は、特にこの種の反応に関して有利であるとして今日知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの触媒は、効力を生じるためには、高比表面積を有さなければならず、より高温で使用できる触媒、およびこの目的のために、より安定した比表面積を有する触媒の探求が続けられている。
【0004】
したがって、この条件を満たすような触媒組成物を開発することが本発明の目的である。
【0005】
この目的のために、本発明の組成物は、酸化ジルコニウムを主体とし、プラセオジム、ランタンおよびネオジムの酸化物から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含み、1000℃で10時間か焼した後に少なくとも29m2/gの比表面積を有することを特徴とする。
【0006】
それによって、本発明の組成物は、1000℃あるいは更にそれ以上の温度で高比表面積を維持する利点を有する。更に、この組成物を主体とする触媒はまた、貴金属含有量が低くて低温でも高い効率を有し得る。
【0007】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の記載を読み、これを例証する実施例によって、より明白となるであろう。ただしこれらの具体例は本発明を限定するものではない。
【0008】
以下の記載において、比表面積は、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society、60、309 (1938)」に記載されているBrunauer-Emmett-Teller方法を用いて確立された標準規格ASTM D 3663-78による窒素吸着によって決定されたBET比表面積を意味する。
【0009】
本明細書において参照される元素の周期表は、「the Supplement au Bulletin de la Societe Chimique de France 」No.1(1966年1月)において発表されたものである。希土類は、イットリウムおよび原子番号57〜71である周期表の元素を包含する群の元素を意味する。
【0010】
更に、表面積の値が与えられる前のか焼は、別段の指示がない限り空気中でのか焼である。
【0011】
含有量は、別段の指示がない限り、酸化物として与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の組成物の主な特徴は、その成分の性質および比表面積である。
【0013】
本発明の組成物は、酸化ジルコニウムZrO2を主体としており、この酸化物は、必須であり、あるいは大部分の成分である。この組成物は、組成物の残りを構成して酸化物の形態で存在する、プラセオジム、ランタンおよびネオジムから選択される更に少なくとも1種の添加剤を含む。本発明は、明らかに複数の添加剤の組み合わせを含む組成物の場合にも及ぶことにここで注意すべきである。
【0014】
添加剤の含有量は50重量%を超えず、酸化ジルコニウムは少なくとも組成物の50重量%を構成する。この含有量は、全体(酸化ジルコニウム+酸化物添加剤)としての組成物の重量に対する、添加剤の酸化物の重量、またはいくつかの添加剤を含む組成物の場合は全添加剤の酸化物の重量として表される。この添加剤の含有量は広範囲で、特に5%〜40%、とりわけ、10%〜40%の範囲で変動してもよい。この含有量は、とりわけ特に10%〜30%であってよい。
【0015】
1つの変形例にしたがって、本発明の組成物は、酸化アルミニウムAl23を更に含むことができる。この場合、アルミニウムの含有量(全組成物に対するAl23の重量パーセント)は、一般に20%またはそれ以下、好ましくは、1%〜10%である。
【0016】
他の変形例にしたがって、本発明の組成物は、アルミナに関して上述されたものと同一の割合で、シリカを更に含み得る。
【0017】
本発明の組成物の他の主な特徴は、高温での高比表面積である。
【0018】
上述のとおり、この面積は、1000℃で10時間か焼した後では、少なくとも29m2/gである。同様のか焼条件下で、この面積は、少なくとも35m2/gあるいは少なくとも40m2/g、より好ましくは少なくとも50m2/gであってよい。約60m2/gの面積に達し得る。
【0019】
さらに高いか焼温度でも、本発明の組成物は高い表面積を維持する。したがって、1100℃で4時間か焼した後に、これらの組成物は少なくとも10m2/g、または少なくとも15m2/gの比表面積を有し得る。約20m2/gの面積が得られ得る。
【0020】
更に、1200℃で10時間か焼した後に、本発明の組成物は、少なくとも2m2/g、特に少なくとも3m2/gの比表面積を有し得る。
【0021】
本発明の変形例にしたがって、上述の温度よりも低い温度、例えば900℃で、4時間か焼した後に、組成物は、少なくとも45m2/g、特に少なくとも50m2/g、好ましくは少なくとも55m2/g、更に好ましくは少なくとも70m2/gの比表面積を有し得る。約80m2/gの面積が得られ得る。
【0022】
本発明の組成物は、一定の場合、酸化ジルコニウムへの添加剤の固溶体の形態であってよい。
【0023】
この場合において、これらの組成物のX線回析図は、3次系(cubic system)または2次系(quadratic system)において結晶化された酸化ジルコニウムのものと一致する単相の存在を示すため、酸化ジルコニウムの結晶格子中への添加剤の導入を反映し、したがって真の固溶体の生成を示す。また、組成物は、複数相の混合物の形態であってよく、特に高い添加剤の含有量の場合、少なくとも40%の複数相の混合物の形態である。
【0024】
本発明の組成物はまた、特有の多孔性を有する。実際にこの組成物は、高温でのか焼後には、大きさが10nm〜500nmの孔であるメソ孔を含む。これらの寸法の値は、水銀多孔度測定(2つの低圧部と1つの高圧部からなるAutopore 9410 porosimeter(Micromeritics社製)を用いて行う分析)によって得られる。これらのメソ孔は、全細孔容積のうちの高い割合を占め、例えば、全細孔容積のうちの少なくとも30%、特に少なくとも40%を提供し得る。
【0025】
本発明の組成物は、非常に低い硫酸塩陰イオン含有量を有してよい。この含有量は、一般に100ppmまたはそれ以下、好ましくは50ppmまたはそれ以下(SO4-/全組成物の重量比)である。
【0026】
ここで本発明の組成物の調製方法を述べる。
【0027】
本発明の方法は、以下の工程からなることを特徴とする:
−(a)混合物が、ジルコニウムの化合物、添加剤の化合物、もし適当であるならば、アルミニウムまたはケイ素の化合物から形成され;
−(b)前記混合物は、塩基性化合物と接触され、それにより沈殿物が得られ;
−(c)前記沈殿物は、液状媒体中で加熱され;
−(d)陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびそれらの塩、ならびにカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートの種類の界面活性剤から選択された化合物が、上記の工程で得られた沈殿物に加えられ;
−(e)それによって得られた沈殿物は、か焼される。
【0028】
このようにして、本発明の方法の第1工程は、ジルコニウム化合物、添加剤の化合物、および随意の、アルミニウムまたはケイ素の化合物の、液状媒体中での混合物を調製することからなる。
【0029】
混合は、一般に、好ましくは水である液状媒体中で行われる。
【0030】
化合物は、好ましくは可溶な化合物である。これは、特にジルコニウム、添加剤およびアルミニウムの塩の場合であってよい。これらの化合物は、例えば硝酸塩、酢酸塩または塩化物から選択されてよい。
【0031】
例としては、硝酸ジルコニルまたは塩化ジルコニルが挙げられる。硝酸ジルコニルが最も一般に用いられる。
【0032】
また、ジルコニウムのための出発化合物としてコロイド溶液(ゾル)を用いることができる。コロイド溶液は、ジルコニウム化合物を主体とした、コロイド寸法の細かい固体粒子、すなわち、1nm〜約500nmの大きさを含む系を意味し、この化合物は、一般に水性液相の懸濁液中の酸化ジルコニウムおよび/または酸化ジルコニウム水和物であり、また該粒子は随意で例えば硝酸塩、酢酸塩、塩化物あるいはアンモニウムなどの結合したイオンまたは吸着したイオンの残量を含んでいる。このようなコロイド溶液において、ジルコニウムは、完全にコロイド状の形態であるか、あるいは同時にイオンおよびコロイドの形態であってよいことに注意すべきである。
【0033】
ケイ素化合物として、ナトリウムなどのアルカリ元素の珪酸塩、シリコーンアルコキシドまたは、ナトリウムあるいはカリウムなどのアルカリ元素のアルキルシリコネートが使用でき、例としてカリウムメチルシリコネートが挙げられる。また、ケイ酸の溶液または上記の前駆体から得ることができる沈降シリカが使用できる。また、例えばDegussaによって製造されたAerosil(登録商標)の種類の、焼成シリカ(pyrogenated silica)のケイ素化合物が挙げられる。シリカは、コロイド溶液または懸濁液の形態で存在してよい。
【0034】
出発混合物は、例えば相次いで水槽の底へ導入される最初は固体状の複数の化合物から得ることができ、またはこれらの化合物の溶液を任意の順序で前記溶液を混合することにより直接得ることができる。
【0035】
本方法の第2工程(b)において、前記混合物は塩基性化合物と接触させる。水酸化物型の物質は、塩基または塩基性化合物として使用できる。例としては、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物が挙げられる。また、第二級アミン、第三級アミンまたは第四級アミンが使用できる。しかしながら、アミンおよびアンモニア水は、これらがアルカリまたはアルカリ土類カチオンによる汚染の危険性を減らす限りでは好ましいであろう。例として尿素が挙げられる。
【0036】
塩基性化合物は、一般に水溶液の形態で用いられる。
【0037】
混合物および溶液を接触する方法、すなわち、それらの導入の順序は重要ではない。しかしながら、この接触は、塩基性化合物の溶液への混合物を導入することにより得ることができる。
【0038】
混合と溶液との接触または反応、特に塩基性化合物の溶液への混合物の添加は、単一のまたは段階的なまたは連続的な工程で行われることができ、好ましくは攪拌しながら行われ得る。好ましくは、周囲温度(20−25℃)で行われる。
【0039】
その次の本発明の方法の工程(c)は、液状媒体中での沈殿物の加熱である。
【0040】
この加熱は、塩基性化合物との反応後に得られた反応媒体に対して直接行われるか、あるいは、反応媒体からの沈殿物の分離、随意の洗浄、および水中での沈殿物の置換の後に得られた懸濁液に対して行われ得る。媒体温度は、少なくとも100℃、特に少なくとも130℃まで加熱される。この熱操作は、密閉室(オートクレーブ型の密閉した反応器)へ液状媒体を導入することによって行われ得る。例として、上記で与えられた温度条件下で、水性媒体において、密閉した反応器内の圧力は、1bar(105Pa)以上〜165bar(1.65×107Pa)の値、好ましくは5bar(5×105)〜165bar(1.65×107Pa)に変動し得る。また加熱は、100℃近い温度のために開放した反応器内で行われ得る。
【0041】
加熱は、空気中または不活性ガス雰囲気中、後者の場合、好ましくは窒素中で行われ得る。
【0042】
加熱時間は、広い範囲内で、例えば1〜48時間、好ましくは2〜24時間で変動してよい。同様に、温度の上昇速度は重要ではなく、所望の反応温度には、例えば30分〜4時間、媒体を加熱することによって達し得る。これらの値は、もっぱら参考のために与えられる。
【0043】
いくつかの加熱が行われ得る。このようにして加熱工程、随意で洗浄工程後に得られる沈殿物は、水中に懸濁させて戻すことができ、そしてその結果得られた媒体は再び加熱される。この第2の加熱は、第1の加熱について記載されたものと同様の条件下で行われる。
【0044】
次の本発明の方法の工程(d)は、上記工程から生じる沈殿物へ、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコールおよびカルボン酸ならびにそれらの塩から選択される化合物を加えることからなる。
【0045】
この化合物に関しては、WO−98/45212の出願明細書に示されるものを参照でき、この明細書に記載の界面活性剤が使用できる。
【0046】
陰イオン界面活性剤として、エトキシカルボン酸塩、エトキシ化脂肪酸、サルコシン塩、リン酸エステル、硫酸アルコール、硫酸エーテルアルコールおよびエトキシ化硫酸アルカノールアミドなどの硫酸塩、スルホコハク酸、アルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸塩が挙げられる。
【0047】
非イオン界面活性剤として、アセチレン系界面活性剤、エトキシ化アルコール、アルカノールアミド、アミンオキシド、エトキシ化アルカノールアミド、長鎖エトキシ化アミン、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ソルビタン誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセリルエステルおよびそれらのエトキシ化誘導体、アルキルアミン、アルキルイミダゾリン、エトキシ化油ならびにエトキシ化アルキルフェノールが挙げられる。特にIGEPAL(登録商標)、DOWANOL(登録商標)、RHODAMOX(登録商標)およびALKAMIDE(登録商標)商標名のもと市販されている製品が挙げられる。
【0048】
カルボン酸に関しては、特に脂肪族のモノ−またはジカルボン酸、それらのなかでも特に飽和酸を使用できる。脂肪酸、特に飽和脂肪酸も使用できる。例として、特に蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸が挙げられる。
【0049】
またカルボン酸塩は、特にアンモニア塩が使用できる。
【0050】
例えば、特にラウリン酸やラウリン酸アンモニウムが挙げられる。
【0051】
最後に、カルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートから選択される界面活性剤を使用することができる。
【0052】
カルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートは、末鎖で−CH2−COOH基を含む、エトキシ化またはプロポキシ化脂肪族アルコールからなる生成物を意味する。
【0053】
これらの生成物は、以下の式に相当する:
1−O−(CR23−CR45−O)n−CH2−COOH
(ここで、R1は、飽和または不飽和の炭素鎖を示し、その長さは、一般に22またはそれ以下の炭素原子、好ましくは少なくとも12の炭素原子であり;R2、R3、R4およびR5は、同一であって水素を表すか、あるいはR2はCH3基を表し、R3、R4およびR5は水素を表してよい;nは、50までのゼロでない整数、特に5〜15である。界面活性剤は、上記式の物質の混合物を含んでよく、ここでR1はそれぞれ飽和および不飽和であってよく、あるいは−CH2−CH2−O−基と−C(CH3)−CH2−O−基をともに含む生成物であってよいことに注意すべきである。
【0054】
界面活性剤は、2つの方法で添加できる。界面活性剤は、上記の加熱工程(c)から生じる沈殿物の懸濁液へ直接添加され得る。また、加熱が行われた媒体から周知の手段により分離された後に固体沈殿物を添加され得る。
【0055】
酸化物として計算された組成物の重量に対する、界面活性剤の重量パーセントとして表される使用された界面活性剤の量は、一般に5%〜100%、特に15%〜60%である。
【0056】
界面活性剤を沈殿物の懸濁液へ添加する場合は、液状媒体から沈殿物を分離した後に、それによって得られた沈殿物を洗浄することが可能である。
【0057】
本発明の変形方法にしたがって、前述の工程(d)の完了時に沈殿物を粉砕することが可能である。
【0058】
この粉砕は、さまざまな方法において行われ得る。
【0059】
第1の方法は、湿式粉砕型の高エネルギー粉砕を行うことである。このような粉砕は、例えば界面活性剤を固体沈殿物へ添加した後に得られた湿った沈殿物に対して行われる。湿式粉砕は、例えばボールミル内で行われ得る。
【0060】
第2の方法は、例えばコロイドの粉砕機またはターボミキサーを使用して、沈殿物の懸濁液に剪断力を加えることにより中位のエネルギーで粉砕を行うことである。この懸濁液は、工程(d)の完了した時に得られた沈殿物を水中で置換した後に得られた水性懸濁液であってよい。
【0061】
本発明の方法の最終工程において、回収された沈殿物はか焼される。このか焼は形成された生成物の結晶性を向上させるのに役立ち、生成物の比表面積はか焼温度が上昇するとともに減少するということを考慮に入れて、本発明による組成物のために留保されている、その後、次の使用温度に従って調節および/または選択されてもよい。このようなか焼は一般に空気中において行われるが、例えば不活性ガスあるいは調製された(酸化性あるいは還元性)雰囲気中などで行われるか焼を除外しないのは明白である。
【0062】
実際に、か焼温度は、一般に500℃〜1100℃、特に600℃〜900℃の範囲に制限される。
【0063】
上述の本発明の組成物または先に検討した方法で得られたものは粉体の形態であるが、それらは随意に様々な大きさの微粒、ビーズ、円筒形またはハニカム状に形作られ得る。
【0064】
本発明の組成物は、触媒または触媒担体として使用できる。したがって、本発明はまた、本発明の組成物を含む触媒系に関する。よって、かかる触媒について、本発明の組成物は、一般に触媒作用の分野において用いられる担体、すなわち、特に熱不活性担体に担持され得る。この担体は、アルミナ、二酸化チタン、酸化セリウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、珪酸、結晶珪酸燐酸アルミニウム、結晶燐酸アルミニウムから選択されてよい。
【0065】
本発明の組成物は、例えば金属あるいはセラミックモノリスなどの種類の基材上での、触媒特性を有するウォッシュコートを含んだ、これら組成物を主体とする触媒系に使用されてよい。また、ウォッシュコートはこれら上記の種類の担体を含んでよい。このウォッシュコートは、基材上に被覆できる懸濁液を形成するために担体と組成物とを混合することによって得られる。
【0066】
これらを触媒作用に使用する場合は、本発明の組成物は遷移金属と組み合わせて使用され、それによりこれら金属の担体の役割を果たす。遷移金属とは、周期表のIIIA〜IIB族の元素を意味する。遷移金属としては、特に鉄、マンガンおよび銅、それに加えて、例えば白金、ロジウム、パラジウム、銀またはイリジウムなどの貴金属が挙げられる。これら金属の性質および担体組成物中にこれら金属を混合するための技術は当業者に周知である。例えば、金属は含浸によって組成物中に混合されてよい。
【0067】
組成物中の前記金属の含有量は、触媒活性を得るために一般に触媒に使用される含有量に相当する。例えば、この含有量は5%よりも高くなく、特に1%よりも高くない。この含有量は特に0.5%より高くなく、更に0.25%よりも高くない。含有量5%以上は一般に経済的に有利ではない。これらの含有量は、組成物に対する金属の重量パーセントとして表わされる。
【0068】
触媒系、特に本発明の組成物は、多数の用途を見出せる。したがって、これらは、例えば脱水、水硫化、水脱窒、脱硫、水素化脱硫、脱ハロゲン化水素、改質、水蒸気改質、クラッキング、水素化分解、水素化、脱水素、異性化、不均化、オキシ塩素化、炭化水素または他の有機化合物の脱水素環化、酸化および/または還元反応、クラウス反応、内燃機関の排ガスの処理、脱金属、メタン生成、転化、希薄燃焼ディーゼルまたはガソリンエンジンなどの内燃機関により放出された煤の触媒酸化などの様々な反応の触媒作用に特に適しており、これらに用いることができる。
【0069】
触媒系、特に本発明の組成物は、例えば希薄燃焼ディーゼルまたはガソリンエンジンなどの内燃機関の排ガスの処理に特に適している。この処理は、より正確には薄い混合気(HC−DeNOx触媒作用)中の炭化水素との連続的な反応によりNOxを除去するための処理であり得る。
【0070】
したがって、本発明はまた、上記のような触媒系、または上記のような本発明による組成物が触媒として用いられることを特徴とする内燃機関の排ガスの処理方法に関する。
【0071】
最後に、この種の方法において、本発明の組成物は、酸化ジルコニウムまたは希土類酸化物のような添加剤によって安定化された酸化セリウムを主体とする組成物と組み合わせて使用でき、酸化ジルコニウムおよび希土類酸化物はこの場合の組み合わせであるいは酸化ジルコニウムを主体とする組成物と組み合わせて使用でき、この酸化物はまた随意に希土酸化物、特にセリウムなどによりドープあるいは安定化されることに注意されるべきである。これらの組み合わせは、低温のためにエンジンにより放出されたすべての汚染物を転化するのに適した系へと導く。
【実施例】
【0072】
ここで実施例を提供する。
【0073】
実施例1
この実施例は、60%ジルコニウムおよび40%プラセオジムを有する組成物に関するものであり、これらの割合は酸化物ZrO2およびPr611の重量パーセントとして表される。
【0074】
攪拌ビーカーに、500mLの硝酸ジルコニウム(120g/L)および80mLの硝酸プラセオジム(500g/L)を導入した。次いで、硝酸溶液が体積1リットルになるように蒸留水を加えた。
【0075】
攪拌反応器内に、224mLのアンモニア水(12mol/L)を導入し、そして全体積が1リットルになるように蒸留水を加えた。
【0076】
硝酸溶液を絶えず攪拌しながら反応器へ1時間かけて導入した。
【0077】
攪拌器を備えたステンレス鋼のオートクレーブ内に得られた溶液を入れた。2時間攪拌しながら媒質の温度を150℃まで上昇させた。
【0078】
このようにして得られた懸濁液をブフナー漏斗で濾過した。19重量%の酸化物を含む沈殿物を回収した。
この沈殿物を100g得た。
【0079】
同時に、ラウリン酸アンモニウムゲルを以下の条件下で調製した:135mLのアンモニア水(12mol/L)および500mLの蒸留水に250gのラウリン酸を導入し、スパチュラを使用してこの混合物を混合した。
【0080】
このゲル22.7gを100gの上記沈殿物に加えて、均一なペーストが得られるまでこの化合物を混合した。
【0081】
次いで、得られた混合物を、複数の段階で、4時間かけて500℃に加熱した。
【0082】
得られた生成物は以下の表面特性を有した:
【表1】

【0083】
X線解析は、900℃から1000℃の間では、生成物は多数の3次相と少数の2次相を有することを示す。
【0084】
測定した全細孔容積は、酸化物1g当たり0.81mLであった。直径10nm〜500nmの細孔が全細孔容積の39%を構成した。
【0085】
実施例2
この実施例は、85%ジルコニウムおよび15%プラセオジムを有する組成物に関するものであり、これらの割合は、酸化物ZrO2およびPr611の重量パーセントとして表される。
【0086】
攪拌ビーカーに、708mLの硝酸ジルコニウム(120g/L)および30mLの硝酸プラセオジム溶液(500g/L)を導入した。硝酸溶液の全体積が1リットルになるように蒸留水を加えた。
【0087】
攪拌反応器内に、220mLのアンモニア水を導入し、そして全体積が1リットルになるように蒸留水を加えた。
【0088】
硝酸溶液を、絶えず攪拌しながら、反応器へ1時間かけて導入した。
【0089】
攪拌器を備えたステンレス鋼のオートクレーブ内に得られた溶液を入れた。攪拌しながら媒質の温度を2時間かけて150℃まで上昇させた。
【0090】
このようにして得られた懸濁液をブフナー漏斗で濾過した。17.9重量%の酸化物を含む沈殿物を回収した。
この沈殿物を100g得た。
【0091】
同時に、ラウリン酸アンモニウムゲルを以下の条件下で調製した:135mLのアンモニア水(12mol/L)および500mLの蒸留水に250gのラウリン酸を導入し、スパチュラを使用してこの混合物を混合した。
【0092】
このゲル21.4gを100gの沈殿物に加えて、均一なペーストが得られるまでこの化合物を混合した。
【0093】
次いで、得られた混合物を複数の段階で4時間かけて500℃まで加熱した。
【0094】
得られた混合物は以下の表面特性を有する:
【表2】

【0095】
X線解析は900℃から1000℃の間では、混合物が単一の2次相を有することを示した。
【0096】
実施例3
この実施例は、90%ジルコニウムおよび10%プラセオジムを有する組成物に関するものであり、これらの割合は、酸化物ZrO2およびPr611の重量パーセントとして表される。
【0097】
実施例1と同様の手順に従った。
表面特性を以下の表3に示す。X線解析は、900℃から1000℃の間では、混合物が単一の2次相を有することを示す。
【0098】
実施例4
この実施例は、90%ジルコニウムおよび10%ランタンを有する組成物に関するものであり、これらの割合は、酸化物ZrO2およびLa23の重量パーセントとして表される。
【0099】
実施例1と同様の手順に従った。
表面特性を以下の表3に示す。
【0100】
実施例5
この実施例は、90%ジルコニウムおよび10%ネオジムを有する組成物に関する。これらの割合は、酸化物ZrO2およびNd23の重量%として表される。
実施例1と同様の手順に従う。
表面特性を以下の表3に示す。
【表3】

【0101】
実施例6
この実施例は、本発明による組成物を用いて調製された触媒のための触媒試験を示す。
【0102】
a)触媒の調製
触媒の全重量に対して0.1重量%の金属ロジウム元素を含む触媒を、4時間500℃でのか焼後に得られた実施例3の混合物への硝酸ロジウムの湿式含浸によって調製した。次いで、含浸された混合物を、徐々に蒸発し、乾燥し、最後に4時間500℃で空気中でのか焼に曝した。
【0103】
次いで、粉体の形態での触媒は、酸化還元混合気(1.8%のCOおよび10%H2Oの流れと、1.8%のO2および10%H2Oの流れとを5分ずつ交互にする)中に6時間、1100℃でエイジングした。次いで、触媒は、ガス流れが通過する石英管式ストーブ内でエイジングした。
【0104】
b)試験条件
ガス流量:30 L/時間
触媒重量:150mgのSiCで希釈した20mg(粒径画分100−200ミクロン)。
【0105】
ガスの組成物を以下の表4に示す。
【表4】

【0106】
以下の結果が観察された。
濃い混合気では、NOについての20%転化に対する開始温度は345℃であり、C36に対しては350℃であった。したがって、これらは両方の場合において低温であった。
【0107】
更に、NOおよびC36に対する半転化(50%転化)温度は360℃のみであった。400℃前で、NOおよびC36が100%転化した。
【0108】
薄い混合気では、NO、C36およびCOについての20%転化の開始温度は、それぞれ310℃、325℃および285℃であった。更に、C36については80%の転化が500℃で得られた。
【0109】
これらすべての結果は、本発明の組成物を主体とした触媒の低温効果を示す。
【0110】
比較例7
この例においては、組成物は、酸化ランタンおよび酸化ネオジムによって安定化された比表面積を有する、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムを主体として調製される。この組成物は、これら酸化物の各重量の割合が75/20/2.5/2.5である、式ZrO2/CeO2/La23/Nd23に一致する。
【0111】
100gの混合物あたりに以下の量の溶液を用いて、実施例2と同様の手順に従った:
− 268mLの硝酸ジルコニウム(C=280g/L)
− 79mLの硝酸セリウム(236.5g/LのCe4+、15.5g/LのCe3+および自由酸度(遊離酸度)の0.7Nの濃度)
− 5.5mLの硝酸ランタン(C=454g/L)
− 4.8mLの硝酸ネオジム(C=524g/L)。
【0112】
この調製方法は、実施例2に記載のものと同一である。しかしながら、沈殿物を界面活性剤と混合せず、直接か焼する。1000℃で4時間か焼した後に得られた混合物は、44m2/gの比表面積を有し、1100℃で4時間か焼した後には18m2/gの比表面積を有する。触媒の全重量に対して0.1重量%の金属ロジウム元素を含む触媒はまた、上記のように調製された組成物への硝酸ロジウムの湿式含浸によって調製され、500℃で4時間のか焼の後に得られた。
【0113】
このようにして調製された該触媒は、実施例6に記載のものと同様の1100℃でのエイジングおよび同様の試験を受けた。
【0114】
以下の表5は、実施例6および比較例7の混合物についての20%(Ta)での開始温度に関する結果を示す。
【表5】

開始温度は、比較例の混合物の方がはるかに高い。
【0115】
実施例8
この実施例は、80%ジルコニウムおよび20%プラセオジムを含む組成物に関するものであり、これらの割合は、酸化物ZrO2およびPr611の重量パーセントとして表される。
【0116】
攪拌ビーカーに、276mLの硝酸ジルコニウム(290g/L)および40mLの硝酸プラセオジム(500g/L)を導入する。体積が全部で1リットルの硝酸溶液になるように蒸留水を加えた。
【0117】
攪拌反応器内に、193mLのアンモニア水(12mol/L)を導入し、次いで、全体積が1リットルになるように蒸留水を加えた。
【0118】
硝酸溶液を絶えず攪拌しながら反応器へ1時間導入した。
【0119】
攪拌器を備えたステンレス鋼のオートクレーブ内に得られた溶液を入れた。攪拌しながら媒質の温度を4時間かけて150℃まで上昇させた。
【0120】
それによって得られた懸濁液に40gのラウリン酸を加えた。この懸濁液を攪拌しながら1時間維持した。
【0121】
ついで、この懸濁液をブフナー漏斗で濾過し、濾過母液の容量で同等の母液を濾過沈殿物に加えた。最後に、沈殿物を回収した。
【0122】
ついで、得られた混合物は、複数の段階で、4時間かけて700℃に加熱した。
【0123】
以下の表面積特性を有する:
【表6】

【0124】
X線回析は、900℃から1000℃の間では、混合物は、多数の3次相と少数の2次相を有することを示す。
【0125】
実施例9
この実施例は、90%ジルコニウムおよび10%プラセオジムを含む組成物に関するものであり、これらの割合は、酸化物ZrO2およびPr611の重量パーセントで表される。
【0126】
2つの例外:オートクレーブから出して冷却した後に界面活性剤をラウリン酸(33g)の形態で懸濁液に直接加えること、および最初のか焼を800℃で3時間かけて行うことを除いて、実施例1と同様の手順に従った。
【0127】
混合物は以下の表面特性を有する:
【表7】

【0128】
測定した全細孔容積は、酸化物1g当たり1.32mLであった。直径10nm〜500nmの細孔が全細孔容積の48%を構成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラセオジム、ランタンおよびネオジムの酸化物から選択された少なくとも1種の添加剤を有し、1000℃で10時間か焼した後に少なくとも29m2/gの比表面積を有することを特徴とする酸化ジルコニウムを主体とした組成物。
【請求項2】
1000℃で10時間か焼した後に、少なくとも35m2/g、特に少なくとも40m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1000℃で10時間か焼した後に、少なくとも50m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
1100℃で4時間か焼した後に、少なくとも10m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
1100℃で4時間か焼した後に、少なくとも15m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
1200℃で10時間か焼した後に、少なくとも2m2/g、特に少なくとも3m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
900℃で4時間か焼した後に、少なくとも45m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
900℃で4時間か焼した後に、少なくとも50m2/g、好ましくは少なくとも55m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記添加剤の含有量は、組成物の重量に対して酸化物添加剤が50重量%を超えないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記添加剤の含有量は10%〜40%であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記添加剤の含有量は10%〜30%であることを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、10nm〜500nmの寸法のメソ孔を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
酸化アルミニウムまたはシリカを更に含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
−(a)ジルコニウムの化合物、添加剤の化合物および、もし適当であるならば、アルミニウムまたは珪素の化合物を含む混合物を形成し;
−(b)前記混合物を、塩基性化合物と接触させて、それにより沈殿物を形成し;
−(c)前記沈殿物を、液状媒体中で加熱し;
−(d)陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびそれらの塩、ならびにカルボキシメチル化脂肪族アルコールエトキシレートの種類の界面活性剤から選択される化合物を、前工程で得られた沈殿物に加え;
−(e)それによって得られた沈殿物をか焼する、
工程を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物の調製方法。
【請求項15】
前記ジルコニウムの化合物、添加剤の化合物、およびアルミニウムの化合物は、硝酸塩、酢酸塩および塩化物から選択された形態で用いられることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(c)の沈殿物の加熱が少なくとも100℃の温度で行われることを特徴とする請求項14または15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記触媒系が請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする触媒系。
【請求項18】
前記触媒系が、組成物によって担持される遷移金属、特に貴金属からなることを特徴とする請求項17に記載の触媒系。
【請求項19】
請求項17あるいは18に記載の触媒系、または請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物が、触媒として用いられることを特徴とする内燃機関の排ガスを処理するための方法。

【公表番号】特表2007−524564(P2007−524564A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500263(P2007−500263)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000455
【国際公開番号】WO2005/082782
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【氏名又は名称原語表記】RHONE−POULENC CHIMIE
【Fターム(参考)】