説明

ジルコニウムイオン交換収着剤を用いた浄水カートリッジ

リン酸ジルコニウムナトリウムを含有する少なくとも1つの層と、酸性リン酸ジルコニウム及びアルカリ性含水酸化ジルコニウムの組合せを含有する少なくとも1つの層とを有するカートリッジを記載する。浄水用カートリッジを使用する方法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浄水に関する。より具体的には、本発明はイオン交換材料、特に浄水に有用なジルコニウムイオン交換材料に関する。
【0002】
本願は、2009年12月7日付けで出願された、先の米国仮特許出願第61/267,125号(その全体が参照により本明細書中に援用される)の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
通常、都市上水道からの水は、水中に存在する汚染物質のレベルを摂取又は他のヒトの用途に許容可能なレベルにまで低下させるために浄化又は処理しなければならない。都市水道水中に存在する可能性がある汚染物質としては、例えば毒性イオン性汚染物質、有機化合物、微生物、カビ及び/又は藻類が挙げられる。要求される水質基準は用途に応じて異なり、各種政府機関及び業界団体によって規定され得る。例えば、飲料水は米環境保護庁(EPA)発令の第2種飲料水規則(National Secondary Drinking Water Regulations)の要件を満たさなければならない。血液透析に使用される水の水質は、医療器具開発協会(AAMI)によって制定された(その後、米国国家規格協会(ANSI)によって承認された)基準(ANSI−AAMI水質基準)を満たさなければならない。ANSI−AAMI水質基準は飲料水に要求される基準をはるかに超えている。これは、透析中に大量の水が患者の血液とほぼ直接接触する(透析装置の薄い半透膜のみで隔てられる)ためである。そのため、透析に使用する前に水道水中に通常存在する汚染物質を除去することが非常に重要である。
【0004】
一般に、水からの汚染物質の除去には収着プロセスが理想的である。収着剤プロセスは操作的に簡単であり、準備期間をほとんど必要とせず、供給組成の変動に寛容である。
【0005】
ジルコニウムイオン交換樹脂、特に混床イオン交換樹脂は、水の脱イオン化及び水中の毒性汚染物質の除去に有用な収着剤をもたらすことができる。ジルコニウムイオン交換収着剤は安全かつ非毒性である。ジルコニウム樹脂はエンドトキシン(細菌)を除去することができ、ジルコニウムイオン交換樹脂中では、細菌は有機イオン交換樹脂中におけるように増殖することはない。ジルコニウムイオン交換樹脂はまた、塩素による攻撃を受けにくく、熱的に安定であるため、高温であっても水の処理に使用することができる。ジルコニウムイオン交換樹脂は、逆浸透(RO)システム及び有機イオン交換樹脂等といった従来の浄水システムよりも経済的かつ小型の浄水システムをもたらす。ジルコニウムイオン交換樹脂は、毒性無機化学物質を、とりわけ高濃度で効率的に除去することができる。ジルコニウムイオン交換樹脂は、使い捨て水処理装置に使用される小型の形態に構成することができる。
【0006】
これまで、Na形態のZrP(例えばNa−ZrP)と、Cl形態のHZO(例えばHZO−Cl)とを含有するジルコニウムイオン交換収着剤は、主に以下の要因のために効果的に使用することができなかった:
(i)ZrP及びHZOの吸着能及び吸着選択性は、イオン交換材料に担持される対イオンの形態に影響を受ける。例えば、ZrPをNa形態(Na−ZrP)で使用し、HZOをCl形態(HZO−Cl)で使用する場合、以下のようなイオン交換反応によるNaイオン及びClイオンの放出のために水の脱イオン化は可能ではない:
Na−ZrP+M(aq)→M−ZrP+Na(aq) (反応I)
HZO−Cl+An(aq)→HZO−An+Cl(aq) (反応II)
このため、この場合のZrP及びHZOの混合は、せいぜい軟水化効果をもたらすことしかできない。これらの材料におけるこれらの対イオンの装填は、イオン吸着の選択性のために他のイオンに対する吸着能を更に低下させ、それらの使用を制限する。例えば、HZO.Ac(ここで、Acは酢酸イオンである)の塩化物イオン及び硝酸イオンに対する吸着能は、これらのアニオンが親和性系列において酢酸イオンより下に位置するためほとんどない。
(ii)水の脱イオン化は、ZrPから浸出性のPO3−及びHZOから浸出性のNaの影響を受ける。
(iii)Na−ZrP及びHZO−Clの粒度の小ささは、水流に対して高い抵抗をもたらす。
【0007】
酸性リン酸ジルコニウム(AZP)及びアルカリ性含水酸化ジルコニウム(NaHZO)の混合物のみを含有し、他のジルコニウムイオン交換樹脂を含有しない浄水用のジルコニウムイオン交換収着剤も欠点を有している。従来の混床イオン交換樹脂においては、AZPからの過剰の水素イオンによる先に吸着されたカチオン性汚染物質(例えばCa2+、K、Mg2+)の置換は、漏出の問題を引き起こす可能性のある汚染物質の弱い親和性のために問題となるおそれがある。また、収着親和性の強いカチオン性汚染物質は、AZPによる吸着後に互いに置換し合う可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、選択的な脱イオン化及び水からの汚染物質の除去についてより効果的な収着剤が必要とされている。pH、又はpH変化によって引き起こされる流入水の組成の著しい変化を引き起こすことなく標的汚染物質を除去することのできる収着剤も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一特徴は、上記の不利点の1つ又は複数を回避する浄水用のカートリッジを提供することである。
【0010】
本発明の別の特徴は、Na含有量が70ppm以下の水をもたらすことのできる浄水用のカートリッジを提供することである。
【0011】
本発明の別の特徴は、Naイオンを水中に放出しない、改善された浄水用のイオン交換材料を提供することである。
【0012】
本発明の更なる特徴は、pHが約6〜約7の水をもたらすことのできる浄水用のカートリッジを提供することである。
【0013】
本発明の付加的な特徴は、無機イオン交換樹脂を含む、浄水用の非毒性のカートリッジを提供することである。
【0014】
本発明の付加的な特徴は、小型かつ経済的な浄水用のカートリッジを提供することである。
【0015】
本発明の別の特徴は、ANSI−AAMI基準を満たすために、有機物及び/又はエンドトキシン及び/又は塩素及びクロラミンを除去することを伴う。
【0016】
本発明の付加的な利点は、一部は以下の説明において記載され、一部はその説明から明らかであり、又は本発明の実施によって知ることができる。本発明の目標及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される要素を用いて実現及び達成される。
【0017】
上記に述べた目標を達成するため、また、本明細書中に具体化され広く記載される本発明の目的に従って、本発明は、リン酸ジルコニウムナトリウム(NaZrP)を有する第1の層と、酸性リン酸ジルコニウム(AZP)及びアルカリ性含水酸化ジルコニウム(NaHZO)の組合せを有する第2の層とをカートリッジ内に有するカートリッジを提供する。活性炭の層(複数も可)が、例えば「第1の層」の前に存在していてもよい。第2の層は第1の層に後続し得る。第1の層及び第2の層は、1つ又は複数のセパレーター(濾紙等)で隔てられていてもよい。NaZrP、AZP及び/又はNaHZOは、約25ミクロン〜約60ミクロンの平均粒径を有する粒子であり得る。
【0018】
カートリッジはAZP及びNaHZOの組合せを含んでいても、AZP及びNaHZOがカートリッジ内に層として一様に分布した均一混合物として存在してもよい。
【0019】
本発明は、AZP及びNaHZOの組合せをカートリッジ内に含み、AZPとNaHZOとの重量比が多様であり得るカートリッジも提供する。
【0020】
本発明は、水を浄化する方法であって、水をカートリッジに通すことを含む、水を浄化する方法を更に提供する。
【0021】
本発明は、都市用水、廃水、井戸水、天然水又はそれらの任意の組合せを浄化する方法を更に提供する。
【0022】
本発明は、透析治療のためのANSI−AAMI水質基準又は他の浄水基準を満たすよう、水を浄化するために使用することのできるカートリッジを提供する。
【0023】
本発明は、透析用の浄化新鮮透析液を調製する方法であって、透析を行う前に水をカートリッジに通すことを含む、透析用の浄化新鮮透析液を調製する方法を提供する。
【0024】
上記の概略的な説明及び下記の詳細な説明は両方とも例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載される本発明を限定するものでないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】様々な実施形態によるカートリッジの概略図である。
【図2】様々な実施形態によるカートリッジの概略図である。
【図3】カートリッジの概略図である。
【図4A】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:PURITY LEVEL OF EFFLUENT FROM SORBENT CARTRIDGEIN THE TREATMENT OF OKLAHOMA CITY WATER WITH ADDED CONTAMINANTS 汚染物質を添加したオクラホマシティーの水の処理における収着剤カートリッジからの流出物の純度レベルDetection Limit 検出限界METALS 金属ANALYTICAL TECHNIQUE 分析手法FEED WATER 供給水INITIAL EFFL 初期流出物GAL ガロンREMOVAL EFFICIENCY 除去効率
【図4B】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:PURITY LEVEL OF EFFLUENT FROM SORBENT CARTRIDGEIN THE TREATMENT OF OKLAHOMA CITY WATER WITH ADDED CONTAMINANTS 汚染物質を添加したオクラホマシティーの水の処理における収着剤カートリッジからの流出物の純度レベルDetection Limit 検出限界Flameless AA フレームレスAA
【図4C】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:PURITY LEVEL OF EFFLUENT FROM SORBENT CARTRIDGEIN THE TREATMENT OF OKLAHOMA CITY WATER WITH ADDED CONTAMINANTS 汚染物質を添加したオクラホマシティーの水の処理における収着剤カートリッジからの流出物の純度レベルDetection Limit 検出限界
【図5A】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:PURITY LEVEL OF EFFLUENT FROM SORBENT CARTRIDGEIN THE TREATMENT OF OKLAHOMA CITY WATER WITH ADDED CONTAMINANTS 汚染物質を添加したオクラホマシティーの水の処理における収着剤カートリッジからの流出物の純度レベルDetection Limit 検出限界METALS/NON-METALS 金属/非金属ANALYTICAL TECHNIQUE 分析手法FEED WATER 供給水INITIAL EFF 初期流出物GAL ガロンREMOVED EFFICIENCY 除去(REMOVAL)効率
【図5B】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:PURITY LEVEL OF EFFLUENT FROM SORBENT CARTRIDGEIN THE TREATMENT OF OKLAHOMA CITY WATER WITH ADDED CONTAMINANTS 汚染物質を添加したオクラホマシティーの水の処理における収着剤カートリッジからの流出物の純度レベルDetection Limit 検出限界Free Chlorine 遊離塩素Chloramine クロラミンIon Selective Electrode イオン選択電極Reagent 試薬
【図5C】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:PURITY LEVEL OF EFFLUENT FROM SORBENT CARTRIDGEIN THE TREATMENT OF OKLAHOMA CITY WATER WITH ADDED CONTAMINANTS 汚染物質を添加したオクラホマシティーの水の処理における収着剤カートリッジからの流出物の純度レベルDetection Limit 検出限界Conductivity 伝導度pH meter pH計Conduct meter 伝導度計μmhos μモー
【図6A】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:Detection Limit 検出限界METALS 金属ANALYTICAL TECHNIQUE 分析手法FEED WATER 供給水EFFLUENT WATER 流出水GAL ガロンREMOVAL EFFICIENCY 除去効率
【図6B】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:Detection Limit 検出限界Flameless AA フレームレスAA
【図6C】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:Detection Limit 検出限界
【図7A】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:Detection Limit 検出限界METALS/NON-METALS 金属/非金属ANALYTICAL TECHNIQUE 分析手法FEED WATER 供給水EFFLUENT WATER 流出水GAL ガロンREMOVAL EFFICIENCY 除去効率initial 初期final 最終
【図7B】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:Detection Limit 検出限界Reagent 試薬Ion Selective Electrode イオン選択電極initial 初期final 最終
【図7C】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:Detection Limit 検出限界Free Chlorine 遊離塩素Chloramine クロラミンReagent 試薬pH meter pH計
【図8A】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。図中英語:REMOVAL OF TOXIC INORGANIC CONTAMINANTS FROM TAPWATER AT 5゜C 5℃の水道水からの毒性無機汚染物質の除去NOTE: (i) Adsorption test results scaled up to1500 gm cartridge for treatment of 70 gal. water 注:(i)70ガロンの水の処理のために1500gmにスケールアップしたカートリッジの吸着試験の結果(ii) DL = Detection Limit (ii)DL=検出限界TOXIC CHEMICALS 毒性化学物質LEVEL TESTED 試験レベルREMOVAL EFFICIENCY 除去効率LEVEL IN EFFLUENT 流出物中のレベルAMT. OF WATER TREATED BEFORE BREAKTHROUGH (ABOVEAAMI STD.) 破過(AAMI基準を上回る)前に処理された水の量AAMI STD. AAMI基準soluble 可溶性Below DL DL未満gal. ガロンselect electrode 選択電極Reagent 試薬
【図8B】本発明のカートリッジからの流出物の純度レベルを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は一部、浄水カートリッジ、又は収着剤カートリッジ、又は無機イオン交換材料及び/若しくは収着剤を用いて液体等の物質を浄化するカートリッジに関する。カートリッジは、水中に存在する少なくとも一部、全部又は実質的に全部の汚染物質を除去するために様々な供給水に使用することができる。カートリッジは、食品、飲料及び/又は健康産業の要件を満たす一貫した高品質の給水をもたらすことができる。浄化された水は、例えば料理、飲用、温飲料及び冷飲料の製造、醸造、洗浄並びに/又は製氷に使用することができる。本発明に従って浄化した水は、透析システム、及び医療目的、製薬目的若しくは工業目的、又は住宅関連目的で使用することもできる。
【0027】
カートリッジは、少なくとも2つのジルコニウムイオン交換樹脂の層を含有する小型のカラムであってもよい。カートリッジは、EPAの第1種及び第2種飲料水質基準を最大許容汚染レベル(MACL)で満たす(又は更には満たさない)水質を有する都市上水道等の上水道からの水を浄化することができる。
【0028】
カートリッジを使用して、透析液に使用される水の浄化のためのANSI−AAMI要件を満たすように水を浄化することができる。本発明のカートリッジは、透析液の調製のためのANSI−AAMI水質基準を満たすために、都市上水道からNaイオン及びClイオンを除去することができる。カートリッジは例えば、ANSI−AAMI要件に従って、水中のNa含有量を70ppm以下(例えば65ppm〜1ppm、50ppm〜5ppm)に低下させるために使用することができる。カートリッジは、細菌増殖を回避するための単回透析治療に使用することができ、かつ/又はANSI−AAMI基準を満たすようにエンドトキシンを更に除去することができる。
【0029】
カートリッジは、毒性のカチオン及びアニオン、有機物、塩素、クロラミン、微生物、カビ、藻類、シルト粒子並びに/又はコロイド状物質のうち1つ又は複数の少なくとも一部を除去することができる。カートリッジは、硬質金属であるCa2+、Mg2+、並びに過剰のK及び過剰のNaを水から除去することができる。カートリッジを使用して、アルミニウム、フッ化物及び硝酸イオン等の他の毒性無機汚染物質を、かかる汚染物質が高レベルで存在する場合であっても効率的に都市用水から除去することができる。これらの不純物の各々について、本発明は、それらの不純物及び/又は汚染物質の一部、ほぼ全部又は全部を除去することができる。
【0030】
カートリッジは、ジルコニウムイオン交換樹脂を含み得る。カートリッジは、リン酸ジルコニウムナトリウム(NaZrP)を有する第1の層と、酸性リン酸ジルコニウム(AZP)及びアルカリ性含水酸化ジルコニウム(NaHZO)の混床又は組合せを有する第2の層とを備えるか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなることができる。第1の層は、NaZrPを含むか、又はそれから本質的になるか、又はそれからなることができる。第2の層は、AZPとNaHZOとを含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなることができる。本発明の目的上、リン酸ジルコニウムナトリウム(すなわちNaZrP)は、Na形態のリン酸ジルコニウム(ZrP)、又はNaOHによってpH約6.0〜約7.4、好ましくはpH約6.5〜約7.0に滴定調節した酸性ZrPを意味する。NaZrPは、以下の化学的性質及び物理的性質を有し得る:
組成:(H(Na(ZrO)(OH(PO1.8〜2・nHO、又は
Na Wt%:4〜6;ZrO Wt%:34〜37;リン酸 Wt%:41〜43;HO:14wt%〜18wt%
イオン交換式:[ZrO(OH)(PO2−・HNa
構造式:式中でHの1つ、2つ、3つ又はそれ以上がNaに置き換えられている以外は下記AZPと同じ。
【0031】
本発明の目的上、酸性リン酸ジルコニウム(すなわちAZP)は、H形態のリン酸ジルコニウムを意味する。AZPは以下の化学的性質及び物理的性質を有し得る:
組成:(H(ZrO)(OH(PO1.8〜2.0・nH
イオン交換式:[ZrO(OH)(PO2−・H
構造式:
【化1】

式中、Hのxは1.5〜2.0であり、OHのyは0.5〜0であり、HO及び構造式のnは1〜4である。x、y及びnは、これらの範囲内の任意の小数であることができ、任意でこれらの範囲を上回るか又は下回ってもよい。AZPは、例えば約2mEq H/g AZP〜10mEq H/g AZP、約4mEq H/g AZP〜8mEq H/g AZP、又は約5mEq H/g AZP〜7mEq H/g AZPの水素イオン含有量を有し得る。AZPは、水中(1g/100ml)において例えば約0.5〜5又は約1〜3のpH、及びブライン中(1g/100ml)において例えば約0〜5又は約0.5〜1.5のpHを有し得る。
【0032】
本発明の目的上、アルカリ性含水酸化ジルコニウム(すなわちNaHZO)は、酸化ジルコニウムがヒドロキシル化されたアルカリ形態の含水酸化ジルコニウム(ZrO(OH))を意味する。NaHZOは以下の化学的性質及び物理的性質を有し得る:
組成:NaZrO(OH・nH
イオン交換式:ZrO・OH
構造式:
【化2】

式中、Naのxは1であり、OHのyは2〜4であり、HOのnは4〜6であり、x、y及びnは、これらの範囲内の任意の小数であることができ、任意でこれらの範囲を上回るか又は下回ってもよい。NaHZOは、例えば約0.5:1.5〜約1:1又は約1.5:0.5の範囲内のNa:ZrO(モル比)のNa含有量を有し、かつ/又は例えば、約3mEq OH/10g NaHZO〜12mEq OH/10g NaHZO、約5mEq OH/10g NaHZO〜10mEq OH/10g NaHZO、又は約6mEq OH/10g NaHZO〜9mEq OH/10g NaHZOの範囲内のヒドロキシルイオン含有量を有し得る。NaHZOは、水中(1g/100ml)において例えば約7〜14、約9〜12又は約10〜11のpHを有し得る。
【0033】
本発明は、一部、以下の機序に基づく:(1)Naの放出と引き換えの、NaZrPによる水中に存在するCa2+、K、Mg及び/又は毒性微量金属の結合;(2)Hの放出と引き換えの、(1)において水中に放出されたNaとZrPとの結合;(3)OHの放出と引き換えの、水中のアニオン性汚染物質とNaHZOとの結合。(2)及び(3)の反応、又は第2の層、すなわち「混床」層で起こるイオン交換相互作用は、下記に示すように進行し得る:
ZrP−H+Na→ZrP−Na+H
ZrO−OH+An→ZrO−An+OH
+OH→H
【0034】
「実質的に全部」又は「ほぼ全部」という表現は、本明細書中で使用される場合、存在する汚染物質又は不純物の総量に基づいて、およそ例えば90重量%〜99.9重量%、95重量%〜99重量%、96重量%〜99.9重量%、55重量%〜99.9重量%、60重量%〜80重量%又は65重量%〜70重量%の量を表し得ることを理解されたい。
【0035】
下記により詳細に記載されるように、AZP及びNaHZOの組合せ、すなわちカートリッジの混床層は、H及びOHの放出と引き換えに、水からカチオン及びアニオンを効率的かつ同時に吸着することができる。対照的に、H形態のZrP(すなわちH−ZrP)を単独で使用する場合、水中の他の金属イオン、特にCa2+、Mg2+、K及びNaに対する吸着能は大幅に低下する。これらの金属イオンは、ZrPに対して高い親和性を有するHイオンを容易に置換することはできないと考えられる。また、酸性ZrPを単独で使用する場合、酸性ZrP床と接触する水のpHが低いと、Hイオンは他の金属によって容易に置換されない。ZrPの吸着能は、水のpHが高くなるとともに増大すると考えられる。カチオンに対するZrPの親和性系列は、以下のように表すことができる:
(NH>H>Cu2+、Ba2+、Pb2+、Ag+、Cd2+、Hg2+、Zn>Cr+3、Mn2+、Fe+2>Ca2+>Na、Mg2+、K
【0036】
同様に、OH形態のHZO(すなわちHZO−OH)を単独で使用する場合、水中の他のアニオンに対する吸着能は、OHイオンに対するHZOの高い親和性のために大幅に低下する。アニオンはイオン交換反応によってOHイオンを容易に置換することはできないと考えられる。また、アルカリ性HZOを単独で使用する場合、アルカリ性HZO床と接触する水のpHが高いと、OHイオンは他のアニオンによって容易に置換されない。HZOの吸着能は、材料のpHが低くなるとともに増大すると考えられる。アニオンに対するHZOの親和性系列は、以下のように表すことができる:
PO3−>OH>クロム酸イオン>F、ヒ酸イオン、セレン酸イオン、NO、SO2−>Cl
【0037】
本発明のカートリッジは水を効果的に脱イオン化することができる。カートリッジは、Na形態のZrPを含むジルコニウム収着剤層、続いて酸性リン酸ジルコニウム(例えばH−ZrP)及びアルカリ性含水酸化ジルコニウム(例えばHZO−OH)のブレンド混合物を含む別個のジルコニウム収着剤層を有するカートリッジを含み得る。Na形態のZrPは、Na以外の供給水中のカチオンを全て除去することができる。Na形態のZrPは、先に記載のイオン交換反応(反応I)によって、例えばCa2+、Mg2+、K、NH、及び他の全ての遷移金属イオン及び重金属イオンを除去することができる。次いで、この層から放出されたNaは、H−ZrP及びHZO−OHのブレンド混合物を有する後続層中のH−ZrPによって除去される。これは、アルカリ性HZOのOHイオンがH−ZrPからHを引き抜き、水中のNaイオンとのイオン交換を促進する傾向があるために実現可能である。言い換えると、水中のNaとZrP中のHとのイオン交換反応は、アルカリ性HZOによるpHの上昇のために促進される。この反応は以下のように説明することができる:
【化3】

−ZrPは、このようにして先のNa−ZrP層から漏出した任意の他の金属イオンを捕捉することができる。Na−ZrPの先行する層は、K、Mg2+及びCa2+を、これらのカチオンに対するH−ZrPの親和性が非常に弱いために除去する。Na−ZrP層がなければ、先に記載したように、K、Mg2+及びCa2+がH−ZrP含有層において互いに置換し合い、これらの金属全ての漏出を引き起こす可能性がある。
【0038】
混床層のOH形態のアルカリ性HZOは、供給水中のアニオンを除去することができる。H−ZrPのHイオンは、HZO−OHからOHイオンを引き抜き、水中のアニオンとのイオン交換を促進する傾向がある。言い換えると、HZO+OHと接触する水のpHは、H−ZrPによって低下する。この反応は以下のように説明することができる:
【化4】

【0039】
このため、H−ZrPとHZO−OHとをブレンドすると、材料と接触する水性媒体のpHが中性に近づくため、カチオン及びアニオンの両方を同時に吸着する能力が大幅に増大する。水を脱イオン化又は脱塩する混床H−ZP/HZO−OH層の反応機序は、以下の式によって表すことができる:
脱塩:
−ZrP/HZO−OH+Na(aq)+Cl(aq)→Na−ZrP/HZO−Cl+HO(反応V)
脱イオン化:
−ZrP/HZO−OH+M(aq)+An(aq)→M−ZrP/HZO−An+HO(反応VI)
【0040】
上記の反応V及び反応VIに示すように、混床層では、層に他の対イオンが装填されていないため、結合して水分子を生成するHイオン及びOHイオンの放出と引き換えに、カチオン及びアニオンをイオン選択性にかかわらず同時に水から除去することができる。水中のZrP及びHZOのプロセシング及び僅かな解離に由来する化学物質(例えば、ZrPからのリン酸イオン、HZOからのNa)も除去することができる。例えば、ZrPに由来するリン酸イオン及びHZOに由来するNaも水から除去され得る。リン酸イオンはHZOによって吸着させることができ、ナトリウムイオンは上記の反応IIIのためにAZPによって除去される。
【0041】
−ZrP/HZO−OH混床層及びNa−ZrP層は、水の処理又は浄化に使用することができる。H−ZrP/HZO−OHブレンド層及びNa−ZrP層は、一般的な条件下で化学的に安定であり、水中で解離して可溶性のZrを検出可能なレベルで生成することがない。さらに、H−ZrP、HZO−OH及びNa−ZrPは、これらの化学物質の粒度が45ミクロン〜90ミクロン(又はこの範囲を下回る若しくは上回るサイズ)であり得るため、水流に対してほとんど抵抗を示さない。
【0042】
−ZrP/HZO−OHブレンド層及びNa−ZrP層を有するカートリッジは、毒性無機汚染物質を高効率で水から除去することができる。例えば、カートリッジは、存在する毒性無機汚染物質の総量に基づいて約85重量%〜100重量%、例えば90重量%〜100重量%、92重量%〜100重量%、96重量%〜100重量%、98重量%〜100重量%、99重量%〜100重量%又は99.8重量%〜100重量%の毒性無機汚染物質を水から除去することができる。カートリッジは、毒性有機物、エンドトキシン、塩素及び/又はクロラミンを除去し、それにより透析のためのANSI−AAMI基準(2007年、2008年又は2009年の基準)を満たす水質をもたらすことができる。カートリッジは、都市用水を浄化し、水をヒトの摂取及び使用に安全なものにすることができる。カートリッジは、腎臓透析のためのANSI−AAMI基準に適合する水質を有する生成水をもたらすことができる。特に指定のない限り、全ての基準は2007年、2008年及び/又は2009年の時点で制定されている基準である。
【0043】
先に記載したように、第1の(すなわちNaZrP含有)層によるCa2+、K、Mg2+の除去は、後続する第2の層(AZP/NaHZOの組合せを含有する)におけるこれらの金属の置換を防止する。結果的に、これらの金属の生成水への漏出が防止される。さらに、H形態のZrP(すなわちAZP)のカチオンイオン交換性は、例えばカートリッジ内の別個の層において単独で作用する場合、容易にNa又は水道水中に存在し得る他のカチオンと引き換えにHを放出することはない。しかし塩基の存在下では、塩基はHイオンをAZPから引き抜く働きをすることができ、Hイオンは続いて吸着されたカチオンによって置き換えられる。したがって、例えば均一混合物としてNaHZOとブレンドした場合、AZPのイオン交換性が影響を受ける場合がある。例えば他のカチオンと引き換えにHを放出するAZPの能力は増大する。AZP及びNaHZOの組合せは、カチオンを水道水から効率的に吸着することができる。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、考えられる1つの理由は、NaHZO中に存在するOH基、及びAZP中のHとのそれらの相互作用が、イオン交換性の変化に関与し得るということであり得る。
【0044】
PO2−、F、SO2−及び他のアニオンに対する吸着能を有するNaHZOのアニオンイオン交換性は、酸性pH、例えば7未満のpHによる作用を受ける場合に変化し得る。酸の存在下では、NaHZOは水中でアルカリ性であり、他のアニオンの吸着と引き換えにOHイオンを放出することができる。OHイオンの放出は、酸物質(COガス又はHイオン)を水から除去することができ、生成水のpHを許容可能な範囲内(例えばpH6.0〜7.4)に保つ助けとなる。
【0045】
AZP及びNaHZOの組合せは、AZP及びNaHZOがカートリッジ内で例えば1つ又は複数の層として一様に分布した、又は互いに混合された均一混合物として存在し得る。本発明は、一部、AZPとNaHZOとの重量比が多様であり得るAZP及びNaHZOの組合せにも関する。例えばNaHZOの割合を調整する(例えば、低下又は上昇させる)ことによって、AZP及びNaHZOの組合せにより、浄化された生成水のpHを更に制御することができる。
【0046】
NaZrPはカートリッジ内に少なくとも1つの層として存在することができる。NaZrPは少なくとも1つの層中にNaZrP粒子として存在することができる。NaZrP粒子は少なくとも1つの層中に単独で、又は本明細書中に記載の他の材料との組合せで存在することができる。NaZrP粒子は、例えば約25ミクロン〜約60ミクロンの平均サイズを有し得る。
【0047】
AZP及びNaHZOの組合せは、カートリッジ内に少なくとも1つの層として一緒に存在していてもよい。カートリッジは少なくとも2つの層を備えることができ、カートリッジはNaZrPを含む少なくとも1つの他の層を備えることができる。AZP及びNaHZOの組合せは、例えば約25ミクロン〜約60ミクロンの平均サイズを有するAZP粒子及びNaHZO粒子としてカートリッジ内に存在することができる。
【0048】
NaZrPはジルコニウム塩水溶液及びリン酸水溶液を反応させることによって調製することができるか、又は固体Zr化合物(複数も可)をリン酸(複数も可)とともに用いて調製することができる。ジルコニウム塩水溶液及びリン酸水溶液は、攪拌器を取り付けた反応容器内で反応させることができる。溶液は反応容器内、室温で適度な攪拌器速度で反応させることができる。次いで、撹拌を同じ速度に維持しながら、例えば50%NaOHを添加することによって沈殿物のスラリーをpH約6.0〜7.4、又はおよそ6.5〜7.0に滴定調節することができる。滴定調節の後、材料を再度30分間、撹拌することなく静置することができる。反応によってスラリーが形成し、これを濾過して洗浄した後、例えば16重量パーセント乾燥減量(LOD)〜20重量パーセント乾燥減量(LOD)の水分レベルまで乾燥させる。他のLODも可能である。生成物は、5ミクロン〜150ミクロンの粒度範囲を有する易流動粉末であり得る。NaZrPは、例えば約10ミクロン〜80ミクロン、約25ミクロン〜60ミクロン、約25ミクロン〜45ミクロン、約30ミクロン〜60ミクロン、約45ミクロン〜90ミクロン、約70ミクロン〜100ミクロン又は約100ミクロン〜150ミクロンの平均粒度を有する粒子を含み得る。ゾルゲル手法を用いて粒度を制御することができる。NaZrPは、例えば米国特許第7,566,432号(その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載の方法に従って調製することができる。
【0049】
AZPは、ジルコニウム塩水溶液とリン酸水溶液との間の反応によって調製することができるか、又は固体ジルコニウム化合物(複数も可)をリン酸(phosphoricacid)(複数も可)とともに用いて調製することができる。反応によってゼラチン状沈殿物が形成し、これを濾過して、過剰のリン酸が除去されるまで洗浄した後、炉内で例えば約12重量パーセント乾燥減量(LOD)〜18重量パーセント乾燥減量(LOD)の水分レベルまで乾燥させる。他のLODも可能である。乾燥後の最終生成物は、例えば不整形状を有する微粉末又は顆粒であり得る。AZPは、例えば約5ミクロン〜100ミクロン、約10ミクロン〜80ミクロン、約25ミクロン〜60ミクロン又は約25ミクロン〜45ミクロンの平均粒度を有する粒子を含み得る。平均粒径はこれらの範囲に限定されず、これらの範囲を上回る又は下回るサイズであってもよい。ゾルゲル手法を用いて粒度を制御することができる。
【0050】
AZPは、例えば米国特許第6,818,196号(その全体が参照により本明細書中に援用される)に開示の方法に従って調製することができる。簡潔に述べると、AZPは、オキシ塩化ジルコニウム(ZOC)をソーダ灰とともに加熱して、炭酸ジルコニウムナトリウムを形成し、炭酸ジルコニウムナトリウムを苛性ソーダで処理して、アルカリ性含水酸化ジルコニウムを形成することによって調製することができる。次いで、アルカリ性含水酸化ジルコニウムの水性スラリーを、リン酸及び回収した酸性リン酸ジルコニウムを添加しながら加熱することができる。AZPの水性スラリーはまた、苛性ソーダ等の塩基性剤(basic agent)を用いて、所望のpH(例えばpH約5〜約7)に達するまで滴定調節することができる。
【0051】
代替的には、AZPは、塩基性硫酸ジルコニウム(BZS)及びリン酸の水性混合物を、十分な温度(例えば180°F〜190°F)で十分な時間(例えば1時間〜2時間)加熱して、酸性リン酸ジルコニウム沈殿物を形成することによって調製することができる。次いで、溶液を冷却することができ、酸性リン酸ジルコニウムを濾過して洗浄し、未反応の浸出性のリン酸塩のレベルを低下させることができる。AZP粒子を、例えば約120°F〜170°Fで更に乾燥させることができる。AZP粒子は2m/g未満のBET表面積を有し得る。例えば、AZPは実施例1に記載のように調製することができる。
【0052】
AZPは、例えば米国特許出願公開第2006/0140840号(その全体が本明細書中に与えられる教示と併せて参照により本明細書中に援用される)に開示の方法に従って調製することができる。簡潔に述べると、AZPは、オキシ塩化ジルコニウム(ZOC)及び有機化学添加物の水溶液を調製した後、濃塩酸(HCl)で滴定調節して沈殿物を完全に溶解させることによって調製することができる。次いで、このZOC溶液をリン酸溶液に添加し、AZP沈殿物のスラリーを得る。次いで、沈殿物を濾過して洗浄する。AZP粒子は10m/gを超えるBET表面積を有し得る。例えば、AZPは実施例2に記載のように調製することができる。
【0053】
アルカリ性含水酸化ジルコニウムは、ジルコニウム塩(例えばBZS)又はその水溶液を(例えばゾルゲル法によって)アルカリ金属(又はアルカリ金属化合物)と常温で反応させて、NaHZO沈殿物を形成することによって調製することができる。NaHZO粒子を濾過して、ジルコニウム塩のアニオンが完全に除去されるまで洗浄した後、例えば約25重量パーセントLOD〜30重量パーセントLOD以下の水分レベルまで好ましくは風乾させるか、又は温和な温度(例えば60°F〜90°F未満)の炉内で乾燥させて、易流動粉末を形成することができる。他のLODを達成することができるが、より低い水分レベル(すなわち、20重量パーセントLOD未満)を達成するための、より高い温度(例えば90°F〜120°F)及び/又は長い乾燥時間(例えば24時間〜48時間)は、ジルコニウム−水酸化物結合をジルコニウム−酸化物結合に変換し、アニオン交換材料の吸着能及びアルカリ度を低下させる可能性がある。乾燥温度とは、炉又は乾燥機内の公称温度を指す。NaHZOは、約10ミクロン〜100ミクロン、約20ミクロン〜80ミクロン、約25ミクロン〜60ミクロン又は約25ミクロン〜40ミクロンの平均粒径を有する粒子を含み得る。平均粒径はこれらの範囲に限定されず、これらの範囲を上回る又は下回るサイズであってもよい。NaHZOは2m/g未満のBET表面積を有し得る。例えば、NaHZOは実施例3に記載のように調製することができる。
【0054】
NaHZOは、例えば米国特許出願公開第2006/0140840号(その全体が本明細書中に与えられる教示と併せて参照により本明細書中に援用される)に開示の方法に従って調製することができる。簡潔に述べると、このNaHZOの調製方法は、濃HClで滴定調節したZOCの水溶液を、苛性ソーダの水溶液に添加することを含む。HClの添加は、沈殿プロセス中の過剰のゲル化を防止し、粒子成長を促進し得る。NaHZO粒子は10m/gを超えるBET表面積を有し得る。例えば、NaHZOは実施例4に記載のように調製することができる。
【0055】
カートリッジは粒状活性炭(GAC)を含有していてもよい。GACはカートリッジ内に別個の層として存在することができる。カートリッジは、少なくとも3つの層(カートリッジの1つの層がGACを含み、残りの2つの層がイオン交換樹脂を含むことができる)を備えるか、それらから本質的になるか、又はそれらからなることができる。例えば、カートリッジの1つの層がGACを含んでいてもよく、別の層がNaZrPを含んでいてもよく、残りの層がAZP/NaHZOの組合せを含んでいてもよい。GACは水中に存在する塩素、クロラミン、有機物、HS及び/又は微生物を結合及び除去するのに有用であり得る。GAC層をカートリッジ内に存在するイオン交換樹脂の前に(すなわちそれに先行して)配置することが好ましい。また、活性炭の層から浸出した毒性微量金属をジルコニウム収着剤によって除去することができるように、活性炭の層をジルコニウム収着剤の前に配置してもよい。
【0056】
カートリッジは広範な温度で機能することができる。カートリッジは0℃〜100℃、例えば20℃〜90℃、30℃〜70℃又は40℃〜80℃の温度範囲で機能することができる。
【0057】
管状のハウジング又はカートリッジ内の様々な濾材部又は収着剤材料を、本発明のNaZrP、AZP及びNaHZOとともに使用することができる。ハウジング又はカートリッジは、例えば1つ又は複数の更なるイオン交換部、1つ又は複数の更なるGAC部を備えていてもよい。カートリッジは、カートリッジの層を隔て、かつ/又は水の更なる濾過をもたらす、1つ又は複数のセパレーターパッド、フィルターパッド又は濾紙等の濾材を備えていてもよい。ハウジング又はカートリッジは、水中の濁り、塩素、クロラミン、微生物及び/又は他の粒子(例えばシルト及び/又はコロイド状物質)を除去するためのカーボンプレフィルター(カーボンパッド等)を備えていてもよい。カーボンパッドによってカートリッジをより小型にすることができる。しかしながら、カーボンプレフィルターが備えてられていてもよいが、カーボンプレフィルターはカートリッジに必要ではないことを理解されたい。
【0058】
カートリッジのハウジングは、任意の材料、例えば任意の好適な不透過性のポリマー材料及び/又はガラス材料から作製することができる。ハウジング又はカートリッジは、ポリカーボネートから作製することができる。ハウジング又はカートリッジは任意の好適な形状を有することができ、例えば、ハウジング又はカートリッジは円筒形、長方形又は正方形であり得る。
【0059】
カートリッジは、任意の所望の量の水を浄化するように構成することができる。所望の量の水を浄化するのに必要とされ得る、ハウジング若しくはカートリッジの寸法及び/又はカートリッジ内の構成要素の量は、容易に決定することができる。例えば、10リットルの水を浄化するのに好適なカートリッジは、以下のように構成することができる。カートリッジは、約6.0’’の高さ、約2’’の内径及び約0.05’’の厚さを有し得る。カートリッジは様々な濾材部又は層を備えることができる。カートリッジの少なくとも1つの部分又は層は、NaZrPを1カートリッジ当たり約10g〜80g、例えば約20g、30g、40g、50g、60g又は70gの量で含み得る。カートリッジの少なくとも1つの部分又は層は、AZP及びNaHZOの組合せを含み得るが、ここでAZP/NaHZO含有層中のAZPは、例えば1カートリッジ当たり約40g〜100g、例えば50g、60g、70g、80g、90g又は100gの量で使用することができる。AZP/NaHZO含有層中のNaHZOは、例えば1カートリッジ当たり約70g〜130g、例えば80g、90g、100g、110g又は120gの量で使用することができる。カートリッジは、40g〜100g、例えば50g、60g、70g、80g又は90gの量で粒状活性炭を有する、少なくとも1つの部分又は層を備えることができる。より具体的な例としては、5インチ径のカラムは、300ガロン〜500ガロンの水を処理することができる約2000g〜2500gのジルコニウム収着剤材料を含有し得る。例えば、処理される水に対するジルコニウム材料(NaZrPとAZPとを合わせた量)の比率は、処理される水1ガロン当たりジルコニウム材料約2グラム〜10グラムであり得る。
【0060】
AZP及びNaHZOは任意の所望の重量比で存在することができる。NaHZO:AZPの重量比は、例えば約0.2:0.8〜約0.8:0.2、約0.5:0.5〜約0.6:0.4、又は約0.22:0.78〜約0.33:0.67の範囲であり得る。NaHZO:AZPの重量比は、例えば0.4:0.6であり得る。様々な重量比のAZP及びNaHZOによって任意の所望のpHを有する混合物をもたらすことができる。AZP及びNaHZOの混合物は、例えば約3〜約9、約3〜約7、約3.5〜約4、約4〜約5.5、又は約5.5〜約6のpHを有し得る。
【0061】
NaZrPは、任意の所望のpH、例えば約5.5〜約7.5、約6.0〜約7.0、又は約6.5〜約7.0のpHを有するように滴定調節したZrPであり得る。好ましくは、ZrPを約6.0〜約7.4又は約6.5〜約7.0のpHに滴定調節する。
【0062】
ジルコニウムイオン交換樹脂は熱的に安定であり、高温であっても水を処理するために使用することができる。カートリッジは、任意の温度、例えば1℃〜40℃、又は10℃〜30℃、又は20℃〜35℃の水を浄化するために使用することができる。ジルコニウムイオン交換樹脂は、0.03ml/g〜0.08ml/gのメソ多孔性レベル(総細孔容積)、及び/又はZPに対して1m/g〜30m/gのBET表面積、HZOに対して20m/g〜100m/gのBET表面積を有し得る。ジルコニウムイオン交換樹脂のメソ多孔性は、供給水中の微生物、エンドトキシン、塩素及び/又はクロラミンを減少させる助けとなることができる。ジルコニウムイオン交換樹脂は、細菌増殖に対し少なくとも部分的に又は完全に耐性を示し得る。
【0063】
カートリッジは、任意のレベルの汚染を有する水を浄化するために使用することができる。カートリッジは、汚染物質が高濃度で存在する場合であっても毒性無機化学物質を除去することができる。カートリッジは、例えば下記表1に記載した特性の1つ若しくは複数又は全てを有する水を浄化するために使用することができる。2つ以上の特性の任意の組合せも可能である。示した量は上限値であり、カートリッジはそれらのレベル、又は更により低いレベル、例えば表1に示すよりも10%、20%、30%、40%又は50%低いレベルを達成することができる。
【0064】
表1. 試験した供給水の質及び吐出の耐久限界
【表1】

【0065】
概して、本発明のカートリッジは、表3、表5〜表7、表8、表23、表22〜表23、又は図4〜図8の任意の1つ又は複数に記載の具体的な純度レベルの1つ又は複数を達成することができる。
【0066】
カートリッジは、NaZrP粒子、AZP粒子及びNaHZO粒子の1つ又は複数の層又は区域を含有することができるが、この場合、カートリッジは、第1の端部(入口)から始まり第2の端部(出口)で終わる配置、NaZrP部、複合AZP/NaHZO部を含む複数の濾材部(又は層)を有する。先に述べたように、カートリッジは任意で活性炭部を含有してもよい。
【0067】
カートリッジは任意で、本明細書中に記載されるようなNaZrP層、AZP層、NaHZO層以外のジルコニウムを含有する任意の他の層及び/又はジルコニウムを含有する構成要素を有しない。
【0068】
浄水用カートリッジは、例えば図1及び図2に示すように構成することができる。図1に示すように、カートリッジ1は、入口2を有する第1の端部と、出口4を有する第2の端部とを有し得る。図面に示してはいないが、入口は、カートリッジに入る水の流れを制御するための制御弁又は圧力調整器を有していてもよい。第1の端部は、第2の端部の反対側にある、すなわち第2の端部に対向することができる。カートリッジは、NaZrPを含有する第1の層(NaZrP含有層)6と、AZP及びNaHZOの組合せを含有する第2の層(NaHZO/AZP含有層)8とを有し得る。第1の(すなわちNaZrP含有)層6は、第2の(すなわちNaHZO/AZP含有)層8よりも入口2の近くに配置され得る。第2の層8は第1の層6に後続し得る。第2の層8は、第1の層6よりも出口4の近くに配置される。NaZrP含有層6は、毒性重金属、アンモニア、NH、アミン、K及び/又は硬質金属(Ca2+及びMg2+等)を除去することができる。AZP/NaHZO含有層8中のAZPは、水中のNa、並びに水中の微生物、カビ及び/又は藻類を除去することができる。AZP/NaHZO含有層8中のNaHZOは、水中の毒性アニオン、例えば硫酸イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、クロム酸イオン、セレン酸イオン及び/又はヒ酸イオンを除去することができる。
【0069】
カートリッジ1は、様々な濾材部を有することができ、例えば管状のハウジング又はカートリッジ内の様々な濾材部を、本発明のNaZrP、AZP、NaHZO、GACとともに使用することができる。図2は、カートリッジ1内の濾材部の一配置を示す。図2に示すように、カートリッジ1は図1について上記したように、NaZrPを含有する第1の層6と、AZP及びNaHZOの組合せを含有する第2の層8とを有し得る。カートリッジ1は、入口2に隣接したカーボンパッド10を含有し得る。カーボンパッド10は、水中の塩素、クロラミン、微生物及び/又は他の粒子(シルト及び/又はコロイド状物質等)を除去することができる。カーボンパッド10は、当該技術分野で既知の任意の好適なカーボンパッドであり得る。GAC12の層は、カーボンパッド10に後続し得る、すなわちカーボンパッド10の直後に配置され得る。GAC12は塩素、クロラミン、有機物、HS及び/又は微生物を除去することができる。GAC12は、第1の(すなわちNaZrP含有)層6に隣接して配置され得る。セパレーターパッド14によってGAC12とNaZrP含有層6とを隔ててもよい。セパレーターパッド14は水の濁りを除去することができる。濾紙16が、第1の層6と第2の層8とを隔てるように第1の層6と第2の層8との間に配置され得る。フィルターパッド18は、AZP/NaHZO含有層と出口4との間に配置され得る。フィルターパッド18は、粒子の漏出を防止し、粒状材料に対する充填支持を与え、かつ/又はチャネリングを防止することができる。
【0070】
水を浄化する方法は、水を上記に詳述したような本発明のカートリッジに通すことを含み得る。カートリッジによって浄化される水は、約5.8〜約7.5、例えば約6.0〜約7.4、又は約6.0〜約7.0のpHを有し得る。カートリッジによって浄化される水は、70ppm未満、又は0ppm〜約70ppm、例えば1ppm〜60ppm、又は約15ppm〜約50ppmのNa含有量を有し得る。
【0071】
浄水用カートリッジは、水道水、都市用水、都市飲料水、廃水、井戸水及び/又は天然水を浄化するために利用することができる。廃水とは、人為的影響によって品質が損なわれた任意の水を意味すると理解される。廃水は、家庭住宅(domestic residences)、商業用不動産、工業及び/又は農業によって排出された液体廃棄物を含んでいてもよく、広範な潜在的汚染物質及び濃縮物(concentrations)を包含し得る。天然水は、任意の天然源から得られる水、例えば地表水、井戸水、降水(precipitated water)及び/又は淡水化海水であり得ることを理解されたい。
【0072】
カートリッジを用いて、汚染物質のレベルを許容可能なレベルにまで低下させるように水を処理することができる。カートリッジによって浄化された水は、飲料水又はヒト摂取について規定された基準、例えば米環境保護庁(EPA)及び食品医薬品局(FDA)によって規定された基準を満たすことができる。例えば、カートリッジによって浄化された水は、2007年、2008年及び/又は2009年に制定されたEPA発令の第2種飲料水規則の要件を満たす純度レベルを達成することができる。
【0073】
カートリッジによって浄化された水は、透析のためのANSI−AAMI水質基準を満たすことができる。このため、カートリッジを、血液透析機又は透析システムへ水を供給するために使用することができる。透析用の浄化新鮮透析液は、透析液のベースとして使用される水道水を、透析装置に入れる前に初めにカートリッジに通すことによって調製することができる。水道水中に存在する汚染物質(毒性金属イオン、非金属イオン及び塩素等)を、水を透析液のベースとして使用する前にカートリッジによって(許容可能な限界まで)除去することができる。透析装置は患者の血液と流体連結していてもよい。
【0074】
本発明は、以下の態様/実施形態/特徴を任意の順序及び/又は任意の組み合わせで含む:
1.本発明は、カートリッジであって、
入口を有する第1の端部と、
該第1の端部に対向し、出口を有する第2の端部と、
リン酸ジルコニウムナトリウム(NaZrP)を含む第1の層と、
酸性リン酸ジルコニウム(AZP)及びアルカリ性含水酸化ジルコニウム(NaHZO)の組合せを含む第2の層と
を備え、該第1の層が該第2の層よりも該入口の近くに配置され、該第2の層が該第1の層に後続する、カートリッジに関する。
2. a)第1の層が本質的にNaZrPからなり、かつ
b)第2の層が本質的にAZP及びNaHZOの組合せからなる、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
3. a)第1の層がNaZrPからなり、かつ
b)第2の層がAZP及びNaHZOの組合せからなる、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
4. 第2の層が該第1の層に直接後続する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
5. 第1の層及び第2の層が濾紙で隔てられる、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
6. NaZrP、AZP及びNaHZOが、約25ミクロン〜約60ミクロンの平均粒径を有する粒子である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
7. NaZrP、AZP及びNaHZOが、約25ミクロン〜約60ミクロンの平均粒径を有する粒子であり、該第1の層が約20gのNaZrPを含み、該第2の層が約50gのAZP及び80gのNaHZOを含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
8. AZP及びNaHZOの組合せが約3〜約7のpHを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
9. AZP及びNaHZOの組合せが約3.5〜約4のpHを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
10. AZP及びNaHZOの組合せが約5.5〜約6のpHを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
11. AZP及びNaHZOが各々、約0.2:0.8〜約0.8:0.2のNaHZO:AZP重量比をもたらす量で該組合せ中に存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
12. NaHZO:AZP重量比が約0.5:0.5〜約0.6:0.4である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
13. NaHZO:AZP重量比が約0.4:0.6である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
14. NaHZO:AZP重量比が約0.22:0.78〜約0.33:0.67である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
15. NaZrPが約6.0〜約7.4のpHを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
16. NaZrPが約6.5〜約7.0のpHを有する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
17. 粒状活性炭(GAC)を更に含む、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
18. GACが該カートリッジ内に層として存在する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
19. GACの層が該第1の層よりも該入口に近接して配置され、かつ該第1の層に先行する、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
20. GACの層と該第1の層との間に配置されるセパレーターパッドを更に備える、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
21. 入口の直後に配置され、かつ該第1の層に先行するカーボンパッドを更に備える、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
22. 出口の直前に配置され、かつ該第2の層に後続するフィルターパッドを更に備える、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
23. カーボンパッド、セパレーターパッド及び/又はフィルターパッドを更に備える、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
24. カーボンパッドを備えない、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジ。
25. 水を浄化する方法であって、該水を任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジに通すことを含む、水を浄化する方法。
26. 上記水が都市飲料水である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
27. 上記水が廃水である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
28. 上記水が天然水である、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
29. 水中に存在するCa2+、K、Mg2+、毒性微量金属又はそれらの任意の組合せが、該第1の層によって実質的に除去される、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
30. 水中に存在する毒性アニオン性汚染物質、Na又はそれらの任意の組合せが、該第2の層によって実質的に除去される、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
31. 上記水を任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジに通した後、該水が透析治療のためのANSI−AAMI水質基準を満たす、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
32. 透析用の浄化新鮮透析液を調製する方法であって、上記透析を行う前に水を任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載のカートリッジに通すことを含む、透析用の浄化新鮮透析液を調製する方法。
33. 携帯透析システムを用いて上記透析を行う、任意の上記又は下記の実施形態/特徴/態様に記載の方法。
【0075】
本発明は、これらの様々な特徴、又は上記及び/若しくは下記の文章及び/若しくは段落で記載される実施形態の任意の組合せを含むことができる。本明細書中に開示される特徴の任意の組合せは本発明の一部と考えられ、組み合わせ可能な特徴に関する限定は意図されない。
【0076】
本発明の性質を例示するために以下の実施例を示す。しかしながら、本発明は、これらの実施例に記載の特定の条件又は詳細に限定されないことを理解されたい。
【実施例】
【0077】
実施例1
約500ガロンの汚染供給水を、本発明のカートリッジを用いて処理した。カートリッジは直径約5’’、高さ約12’’とした。カートリッジの構成要素を、(層として)以下の順序とした:
1. 粒子フィルターパッド
2. 1200gmの[H−ZP:HZO−OH](重量比55:45)
3. 濾紙
4. 500gmの[Na−ZP]
5. カーボンパッド
6. 500gmの活性炭(Calgon)
7. カーボンパッド
【0078】
汚染供給水の詳細を下記表2に示す。(得られた)生成水の質の詳細を下記表3に示す。水流量及び圧力損失を下記表4に示す。
【0079】
表2. 負荷試験における汚染水の質
【表2】

表中化合物名
Silver:銀
Mercury:水銀
Sulfate:硫酸イオン
Lead:鉛
Nitrate:硝酸イオン
Chromium:クロム
Chloride:塩化物イオン
Barium:バリウム
Fluoride:フッ化物イオン
Cadmium:カドミウム
Arsenate:ヒ酸イオン
Copper:銅
Calcium:カルシウム
Iron(ferric)鉄(第二鉄)
Magnesium:マグネシウム
Manganese:マンガン
Sodium:ナトリウム
Zinc:亜鉛
【0080】
表3. 生成水の質(1リットル/分の流量での500ガロン寿命試験)
【表3】

【0081】
表4. 5’’径モデルの圧力損失
【表4】

【0082】
実施例2
約100ガロンの不純水を、個々の汚染物質の負荷レベルで、実施例1と同じカートリッジ構成要素を用いて処理した。水流量は500ml/分とした。得られた浄化水の詳細を下記表5〜表7に示す。
【0083】
表5. 生成水の純度−カチオン
【表5】

【0084】
表6. 生成水の純度−アニオン
【表6】

【0085】
表7. 生成水の純度−殺菌剤
【表7】

【0086】
実施例3
混合H−ZP:HZO−OHの単層の他に、更なるジルコニウムイオン交換樹脂が存在しないカートリッジを用いて、水からの毒性化学物質の除去効率を求めた。カーボンパッドがこの層の下に、粒子フィルターパッドが上にあるものとした。カートリッジは直径約5’’であり、約2250gmのH−ZP:HZO−OH(ブレンド重量比1:1)を含有するものとした。500ml/分の流量での汚染水からの毒性化学物質の吸着レベルを下記表8に示す。処理中の水の伝導度を下記表9に示す。
【0087】
表8. 毒性化学物質の除去
【表8】

【0088】
表9. 都市用水の処理中の伝導度モニタリング
(注:OKCの水道水の伝導度は130マイクロモーである)
【表9】

【0089】
実施例4
この実験では、60gのH−ZP:HZO−OH単層混床層を有し、更なるジルコニウムイオン交換樹脂が存在しないカートリッジ(1’’×6−3/4’’)を使用した。カーボンパッドがこの単層の下に、粒子フィルターパッドが上にあるものとした。流量は20ml/分とした。約70ガロンの汚染された都市水道水からの毒性金属の除去についてカートリッジを試験した。カートリッジのカラムの詳細を下記表10に示す。カートリッジは約60gmのH−ZrP/HZO−OH(重量比1:1)を含有するものとした。水は25℃の温度を有し、下記表11に示す付加的汚染物質を含有するものとした。このカートリッジによる吸着レベルを下記表12に示す。
【0090】
表10. カラムの詳細
【表10】

【0091】

表11. 25℃の20リットルの都市水道水の試験浴中の付加的汚染物質
【表11】

【0092】
表12. 結果−約70ガロンの水の処理のためにジルコニウム収着剤1500gmにスケールアップした吸着試験の結果
【表12】

【0093】
実施例5
汚染物質を添加したオクラホマシティーの都市用水を、以下の構成要素を(層として)順に有するカートリッジ(5’’×7’’)を用いて処理した:
1. 粒子フィルターパッド
2. 1200gmの[H−ZP:HZO−OH](重量比1:1)
3. カーボンパッド
4. 500gmの活性炭(Calgon)
5. カーボンパッド
【0094】
カラムの詳細を下記表13に示す。
【0095】
表13. カラムの詳細
【表13】

【0096】
流出物の純度レベル(すなわち、カートリッジからの流出物中に存在する汚染物質のレベル)を図4及び図5に示した表に示す。
【0097】
実施例6
実施例5と同じ設計のカートリッジを1L/分の流量で使用した。ジルコニウムカートリッジのカラムの詳細を下記表16に示す。供給水10ガロン当たりの汚染物質のレベルを表17に示す。流出水における伝導度変化を表18に示す。流出物の純度レベル(すなわち、流出物中に存在する汚染物質のレベル)を図6及び図7の表に示す。
【0098】
表16. カラムの詳細
【表14】

5’’IDモデル
Calgonの活性炭
カーボンパッド
粒子フィルターパッド
【0099】

表17. 供給水及び添加した汚染物質(10ガロン当たり)
【表15】

ヒ酸Na
処理された水の量
ガロン
水の流量
L/分
水の伝導度
μモー
【0100】
表18. 流出水の伝導度変化
【表16】

供給水
初期流出物
ガロン
μモー
【0101】
実施例7
100gのH+−ZP:HZO−OH−単層を用いるカートリッジ(1’’×11.2’’)を実施例3と同様に使用して、オクラホマシティーの都市水道水中の無機汚染物質の除去効率を約5℃という低温で試験した。カートリッジのカラムの詳細を下記表19に示す。1分当たりの水20ml中の付加的汚染物質を下記表20に示す。流出物の純度(すなわち、流出物中に存在する汚染物質のレベル)の説明を図8の表に示す。
【0102】
表19. カラムの詳細
【表17】

1’’IDモデル
流量
ml/分

【0103】

表20. 水道水20リットルの試験浴に対する付加的汚染物質
【表18】

可溶性
ヒ酸A

【0104】
実施例8
本発明のカートリッジを硬質金属の除去について試験した。カートリッジの構成要素は、(層として)以下の順序で存在するものとした:
1. 粒子フィルターパッド
2. 1200gmの[H−ZP:HZO−OH](重量比55:45)
3. 濾紙
4. 500gmの[Na−ZP]
5. カーボンパッド
【0105】
カラムの詳細及び試験条件を下記表21に示す。試験の結果を下記表22に示す。
【0106】
表21. カラムの詳細及び試験条件
【表19】

Na−ZP(先行する層)
圧力
流量
ml/分
【0107】
表22. 硬質金属の除去
【表20】

時間(分)
プロセシングした容量
pH(ストリップ)
開始


ガロン
【0108】
実施例9
本発明のカートリッジを、負荷レベルの硬質金属(Ca2+)、一般的な毒性アニオン(F及び硫酸イオン)及び殺菌剤の除去について試験した。カートリッジの構成要素は以下の順序で(層として)存在するものとした:
1. 粒子フィルターパッド
2. 130gmの[H−ZP:HZO−OH](重量比50:80)
3. 濾紙
4. 20gmの[Na−ZP]
5. セパレーターパッド
6. 50gmの活性炭(Calgon)
7. カーボンパッド
【0109】
カートリッジを図2に示すように構成した。第1の層6中のNaZrPの量は約20gm(重量)とした。混床層8中のAZP及びNaHZOの量は約50gm:80gm(重量)とした。粒状活性炭層12中の活性炭の量は約50gmとした。ジルコニウムカートリッジの入口2は直径約2’’とした。試験の結果を下記表23に示す。
【0110】
表23
【表21】

塩素

複合物
(NaについてのANSI−AAMI基準は70ppmである)
・塩素は完全に除去される
・複合物中の生成水のpHは5.82である
・流出複合物中のTDSは100ppm未満である
【0111】
この試験については、流出物1リットル毎にサンプルを採取した。表中の複合サンプルは、全ての流出物サンプル(1〜9)の混合物を表す。塩素分析は、Hackの全塩素試験キットによって行った。Ca2+分析は、LaMotteの全硬度試験キットを用いて(CaCOとして)行った。表23から明らかなように、Ca2+、F及びSO2−は、1リットル毎のサンプルの流出物において完全に除去され、複合物においては検出限界を下回った。また、Naは未処理浴中の45ppmから流出複合物中の35ppmへと低下した。
【0112】
本出願人は具体的に全ての引用文献の全内容を本開示において援用する。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲又は上側の好ましい値及び下側の好ましい値のリストのいずれかとして挙げられる場合、これは、範囲が別々に開示されているかに関係なく、任意の上側の範囲限定又は好ましい値と、任意の下側の範囲限定又は好ましい値との任意の対からなる全ての範囲を具体的に開示していることを理解されたい。数値の範囲が本明細書中に列挙される場合、特に指定のない限り、その範囲は、その端点、並びに範囲内の全ての整数及び小数を含むことを意図する。範囲を規定する場合、本発明の範囲が記載の特定の値に限定されることを意図するものではない。
【0113】
本発明の他の実施形態は、本明細書及び本明細書中に開示される本発明の実施を考慮することにより、当業者に明らかとなるであろう。本明細書及び実施例は、例示的なものにすぎないと見なされ、本発明の真の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲及びその均等範囲によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジであって、
入口を有する第1の端部と、
該第1の端部に対向し、出口を有する第2の端部と、
リン酸ジルコニウムナトリウム(NaZrP)を含む第1の層と、
酸性リン酸ジルコニウム(AZP)及びアルカリ性含水酸化ジルコニウム(NaHZO)の組合せを含む第2の層と
を備え、該第1の層が該第2の層よりも該入口の近くに配置され、該第2の層が該第1の層に後続する、カートリッジ。
【請求項2】
a)第1の層が本質的にNaZrPからなり、かつ
b)第2の層が本質的にAZP及びNaHZOの組合せからなる、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
a)第1の層がNaZrPからなり、かつ
b)第2の層がAZP及びNaHZOの組合せからなる、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項4】
第2の層が該第1の層に直接後続する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項5】
第1の層及び第2の層が濾紙で隔てられる、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項6】
NaZrP、AZP及びNaHZOが、約25ミクロン〜約60ミクロンの平均粒径を有する粒子である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
NaZrP、AZP及びNaHZOが、約25ミクロン〜約60ミクロンの平均粒径を有する粒子であり、該第1の層が約20gのNaZrPを含み、該第2の層が約50gのAZP及び80gのNaHZOを含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項8】
AZP及びNaHZOの組合せが約3〜約7のpHを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項9】
AZP及びNaHZOの組合せが約3.5〜約4のpHを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項10】
AZP及びNaHZOの組合せが約5.5〜約6のpHを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項11】
AZP及びNaHZOが各々、約0.2:0.8〜約0.8:0.2のNaHZO:AZP重量比をもたらす量で該組合せ中に存在する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項12】
NaHZO:AZP重量比が約0.5:0.5〜約0.6:0.4である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項13】
NaHZO:AZP重量比が約0.4:0.6である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項14】
NaHZO:AZP重量比が約0.22:0.78〜約0.33:0.67である、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項15】
NaZrPが約6.0〜約7.4のpHを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項16】
NaZrPが約6.5〜約7.0のpHを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項17】
粒状活性炭(GAC)を更に含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項18】
GACが該カートリッジ内に層として存在する、請求項17に記載のカートリッジ。
【請求項19】
GACの層が該第1の層よりも該入口に近接して配置され、かつ該第1の層に先行する、請求項18に記載のカートリッジ。
【請求項20】
GACの層と該第1の層との間に配置されるセパレーターパッドを更に備える、請求項18に記載のカートリッジ。
【請求項21】
入口の直後に配置され、かつ該第1の層に先行するカーボンパッドを更に備える、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項22】
出口の直前に配置され、かつ該第2の層に後続するフィルターパッドを更に備える、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項23】
カーボンパッド、セパレーターパッド及び/又はフィルターパッドを更に備える、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項24】
カーボンパッドを備えない、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項25】
水を浄化する方法であって、該水を請求項1に記載のカートリッジに通すことを含む、水を浄化する方法。
【請求項26】
前記水が都市飲料水である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記水が廃水である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記水が天然水である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
水中に存在するCa2+、K、Mg2+、毒性微量金属又はそれらの任意の組合せが、該第1の層によって実質的に除去される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
水中に存在する毒性アニオン性汚染物質、Na又はそれらの任意の組合せが、該第2の層によって実質的に除去される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記水を請求項1に記載のカートリッジに通した後、該水が透析治療のためのANSI−AAMI水質基準を満たす、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
透析用の浄化新鮮透析液を調製する方法であって、前記透析を行う前に水を請求項1に記載のカートリッジに通すことを含む、透析用の浄化新鮮透析液を調製する方法。
【請求項33】
携帯透析システムを用いて前記透析を行う、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2013−512776(P2013−512776A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543101(P2012−543101)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/054068
【国際公開番号】WO2011/071605
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(505324858)フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Holdings,Inc.
【Fターム(参考)】