説明

ジーンズの色抜きにおける模様の有色顕出方法

【目的】 本発明は、ジーンズを色抜きして流行を満足させるほか、文字を含む繊細な模様を鮮明な色彩にて顕出するようにした新規の方法とそのジーンズ製品を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 本発明は、ジーンズを色抜きするに際して文字を含む模様部分を刺繍ステッチにて包被し、色抜き後に該刺繍ステッチを解き剥がすことで模様部分を元の染色のままの状態にて顕出する方法と、模様を有色顕出したジーンズ製品にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジーンズの色抜きにおける模様の有色顕出方法、詳しくはジーンズを色抜きする際に模様部分を染色のままの色彩にて有色顕出する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジーパン,ジージャンなどのジーンズ製品は、染色を薄めて淡い色,薄い色にする流行があり、ジーンズの製作後に細かな石粒などを混えたストーンウォッシュ法、砂石等の細粒を投射するサンドブラスト法、ブラシでこするブラッシング法などの手段を用いて色抜きして淡い,薄い色彩にしている。さらにジーパンにあっては膝,臀部などに穴を開け、切れ筋を設けるほか、文字を含む模様付けをすることも試みられている。このような模様を形成する方法として特開2004−324015公報はジーンズの模様部分に型抜きした型紙(マスク)を当てて、模様部分を前記したサンドブラスト法により色抜きすることを記載している。
【特許文献1】特開2004−324015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、模様部分の色抜きはせっかくの模様を目立たないものにしており、ジーンズが色抜きされないために流行に遅れるという課題がある。しかも当てた型紙は色抜き作業中の激しい当たりによって剥がれたりずれ動いたりして色抜き模様をぼかしてしまうことがあり、草,花などの繊細な模様の部分は細かすぎて色抜きができないという課題がある。近時に至ってはジーンズを色抜きしてから模様部分に型紙を当ててさらに模様部分を色抜きするという二段階の色抜きをするという提案もあるが、手間と時間を多く要すにかかわらず、模様部分を不鮮明にして目立たないものにしているという課題がある。また数個所に模様を設けたいときは、個所ごとに色抜き作業をしなければならないために色抜きに長時間を要しているという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はジーンズを色抜きするに際して文字を含む模様部分を刺繍および縫いのステッチにて包被し、色抜き後に該刺繍ステッチを解き剥がすことにより模様部分を染色のまま顕出するようにして、ジーンズを色抜きして流行を満足させるとともに、模様部分を鮮やかな色彩とする高品質のジーンズが得られるようにして、かかる課題を解決するようにしたのである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、色抜き加工するジーンズの模様部分を原色の染色のままずれずに鮮やかに顕出したジーンズ製品を提供することができるという効果を生ずる。
【0006】
色抜きに際して文字を含む模様部分を刺繍および縫いのステッチにて包被するので、草,花のようにきわめて細い部分も余すことなく包被することができ、しかも該刺繍ステッチは多点にて縫付けすることとなるので、色抜きに際して石などがジーンズに繰返し激しく当っても剥がれたり、ずれ動きしたりすることは全く生ぜず、模様,文字の細かい部分も染色のまま鮮明に顕出することができるという効果を生ずる。
【0007】
模様の一部分を刺繍および縫いのステッチにて包被することで、濃淡などに分けた有色模様,文字を顕出することができるという効果を生ずる。
【0008】
刺繍ステッチに水溶解する裏糸を用いることによって、色抜き後の刺繍および縫いのステッチの解き剥がしを容易且つ簡単にするという効果を生ずる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明はジーンズを色抜きするに際して文字を含む模様部分を刺繍および縫いのステッチにて包被し、該ジーンズの色抜き後に縫いの一切である該刺繍ステッチを解き剥がすことにより模様部分を染色のままの色彩にて顕出するようにして、ジーンズを色抜きすることで最新の流行を満足させるとともに、模様を鮮明な色彩にて顕出する新規のジーンズを提供するものである。
【実施例1】
【0010】
図1乃至図3は本発明をジーパンとジージャンに実施した例を示すもので、ジーパン1aの太股部の前面とジージャン1bの背面に花柄模様Aを付し、該模様Aの全面上を表糸2aと裏糸2bとを用いて刺繍および縫いのステッチ3にて被覆するのである。該刺繍ステッチ3は花柄模様A上を余すことなく縫付けにて包被することとなるので、剥がれ、ずれ動きなどは全く生じないものとなる。かくて模様Aの繊細な部分まで余すことなく包被することができる。かようにして花柄模様Aを包被したジーパン1a,ジージャン1bを石粒等の入ったストーンウォッシュ装置(図示してない)に入れ、ストーンウォッシュするのである。水流を交えた石粒等の接触打撃を繰返し受けることによってジーパン1等はその染色が所望の淡さ,薄さに漸次色抜きされることになる。色抜きしたジーパン1等は装置より取出されて、刺繍ステッチ3の表糸2aと裏糸2bとを糸切りして解き剥がして包被を解くのである。花柄模様Aの部分はストーンウォッシュを受けないためにジーパン1の元の染色のままの色彩にて鮮明に顕出されることとなる。なおジーパン1等の数個所に有色模様を付す場合はすべての模様部分を刺繍ステッチにて包被するのである。かくて一度の色抜き作業にて数個所の模様を原色のまま顕出することができる。
【0011】
ストーンウォッシュは水流を交えて石,砂の激しい当たりを繰返すことで、従来の型紙の貼着などでは型紙が剥がれたり、ずれ動いたりして、図8に示すように模様を不鮮明A’とするおそれが生ずるが、本発明は刺繍ステッチによる縫付けにて包被するので、水,石,砂の激しい当たりを繰返し受けても剥がれたり、ずれ動いたりすることは全く生ずることなく、しかも草,花などのきわめて細く精緻な模様部分も鮮明に包被することができるために、色抜き後の解き剥がしにて模様を鮮明に有色顕出することができることとなる。
【実施例2】
【0012】
図4は刺繍ステッチ3の裏糸2bを水溶性ビニロン,分解ポリマーなど、水溶解する糸とした例を示すもので、ストーンウォッシュ後に裏糸2bが水溶解することで、糸切り作業を要せずして刺繍ステッチ3を解き剥がすことができて、解き剥がし作業を容易且つ簡単に行うことができることとなる。なお刺繍ステッチ3は図5に示すように裏糸を使わずに表糸2aを生地の内側にて折返し縫いするいわゆる1本縫いにて行うこともある。この場合は表糸2aを引き出すことで刺繍ステッチ3を解き剥がすことができることとになる。
【実施例3】
【0013】
図6は模様Aの一部分を刺繍ステッチ3により包被した例を示すもので、ジーンズの色抜き後に剥がすことにより、文字,模様を濃淡分けして有色顕出させることができることとなる。
【実施例4】
【0014】
図7は刺繍ステッチ3の糸間に広狭の間隙を設けることで、模様,文字に繊細な線状の色抜き部分を有せしめるようにした例を示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明はジーパン,ジャンパー,スカート,エプロン,バッグなどのジーンズ製品および材料となるジーンズ布などに広く利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)(b)はジーパン,ジージャンの模様部分を刺繍ステッチにより包被した状態を示す図、(c)は同、刺繍ステッチによる包被部分の拡大図
【図2】同、刺繍ステッチ部分の拡大断面図
【図3】色抜き後、刺繍ステッチを解き剥がして花柄模様を有色顕出した状態を示す図
【図4】裏糸に水溶解する糸を用いて色抜き後に解き剥がしつつある状態を示す拡大部分断面図
【図5】裏糸を用いない1本縫いによる模様包被の部分拡大断面図
【図6】濃淡分けして有色顕出させた模様の例を示す部分拡大図
【図7】模様に線状の色抜き部分を設けた例を示す部分拡大図
【図8】従来の型紙のずれ動きにより模様が不鮮明となった例を示す部分図
【符号の説明】
【0017】
1aはジーパン
1bはジージャン
2aは表糸
2bは裏糸
3は刺繍および縫いのステッチ
Aは花柄模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジーンズを色抜きするに際して文字を含む模様部分を刺繍および縫いのステッチにて包被し、色抜き後に該刺繍ステッチを解き剥がすことにより模様部分を染色のまま顕出するようにしたことを特徴とするジーンズの色抜きにおける模様の有色顕出方法。
【請求項2】
刺繍および縫いのステッチの裏糸を水溶解する材質とする請求項1に記載のジーンズの色抜きにおける模様の有色顕出方法。
【請求項3】
色抜きするジーンズの文字を含む模様部分を刺繍および縫いのステッチにて包被し、色抜き後に該刺繍ステッチを解き剥がして模様部分を染色のまま顕出するようにしたことを特徴とする模様を有色顕出してなるジーンズ製品。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−162182(P2007−162182A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362571(P2005−362571)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(504435667)株式会社ジー・トライ (1)
【Fターム(参考)】