説明

ジーンズへの友禅染模様形成方法

【課題】ジーンズ生地に美しい友禅染模様を形成することができるジーンズへの友禅染模様形成方法を提供すること。
【解決手段】ジーンズ生地1に、装飾したい模様4の外縁形状に沿って糸目糊2を置き、この糸目糊置きされた模様形成部分3の地色を抜染処理し、この抜染処理した模様形成部分3に友禅染を行って前記装飾したい模様4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジーンズ生地に友禅染模様を形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ジーンズ生地にレーザーを当てて生地表面を薄く焼くことにより、地色とは異なる色地部分を形成して所望の装飾模様を形成することが行われているが、ジーンズ生地に友禅染により模様を形成することは行われていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、この点、ジーンズ生地の地色を抜染してこの抜染した模様形成部分に美しい友禅染模様を形成することができる画期的なジーンズへの友禅染模様形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0005】
ジーンズ生地1に、装飾したい模様4の外縁形状に沿って糸目糊2を置き、この糸目糊置きされた模様形成部分3の地色を抜染処理し、この抜染処理した模様形成部分3に友禅染を行って前記装飾したい模様4を形成することを特徴とするジーンズへの友禅染模様形成方法に係るものである。
【0006】
また、前記糸目糊置きされた模様形成部分3に、抜染糊と抜染剤を混合して形成した抜染糊剤を置き、この模様形成部分3に置いた抜染糊剤を乾燥させた後、ジーンズ生地1を蒸らして模様形成部分3の地色を抜染処理することを特徴とする請求項1記載のジーンズへの友禅染模様形成方法に係るものである。
【0007】
また、前記抜染糊剤は、抜染糊と、この抜染糊の重量比20〜35%の抜染剤とを混合して形成することを特徴とする請求項2記載のジーンズへの友禅染模様形成方法に係るものである。
【0008】
また、前記抜染処理したジーンズ生地1を水洗いして前記抜染糊剤を除去し、この抜染糊剤を除去した模様形成部分3に友禅染を行って前記装飾したい模様4を形成することを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のジーンズへの友禅染模様形成方法に係るものである。
【0009】
また、反応染料に、重曹と還元防止剤とを混合して混合反応染料を形成し、この混合反応染料を用いて前記抜染処理した模様形成部分3に友禅染を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のジーンズへの友禅染模様形成方法に係るものである。
【0010】
また、前記抜染処理した模様形成部分3に手描による友禅染を行って前記装飾したい模様4を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項にジーンズへの友禅染模様形成方法に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のようにしたから、ジーンズ生地の抜染した模様形成部分に美しい高級感のある友禅染模様を形成できる極めて実用性に秀れた画期的なジーンズへの友禅染模様形成方法となる。
【0012】
また、請求項2記載の発明においては、ジーンズ生地に対し確実に抜染処理を行うことができ、特に請求項3記載の発明の抜染糊剤を採用することにより、模様形成部分の地色を非常にきれいに抜染することができるので、この地色がきれいに抜染された模様形成部分に美しい友禅染模様を形成することができる。
【0013】
また、請求項4記載の発明においては、抜染糊剤を水洗いしてきれいに除去するので、きれいに洗浄された模様形成部分に良好に友禅染を行うことができる一層秀れたジーンズへの友禅染模様形成方法となる。
【0014】
また、請求項5記載の発明においては、ジーンズ生地に染料が極めて良好に定着することとなる一層秀れたジーンズへの友禅染模様形成方法となる。
【0015】
また、請求項6記載の発明においては、繊維に手描で着色することによりジーンズの風合いを損うことがない上、色々な色を組み合わせての表現法が可能となるので、独自の配採でファッション性の高い模様を形成することができ、しかも、ジーンズ生地の繊維に染料を多く含ませることができるために、染料の堅牢度が非常に高く、洗濯や擦れによる色落ちや、日焼けによる変色などを生じにくいなど、一層商品価値の高い商品を形成可能となる秀れたジーンズへの友禅染模様形成方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
先ず、ジーンズ生地1に、装飾したい模様4の外縁形状に沿って糸目糊2を置く。この糸目糊2により、後述の友禅染に際し、染料が模様形成部分3の外に染み出すことが防止される。
【0018】
次いで、友禅染によって装飾したい模様4が、ジーンズ生地1の地色に影響されることなく意図した通りにきれいに染まるように、この糸目糊置きされた模様形成部分3の地色を抜染処理する。
【0019】
藍色などに染まっているジーンズ生地1を、抜染して染色に適したきれいな白地にすることは非常に困難であるが、例えば本発明では、前記糸目糊置きされた模様形成部分3に、抜染糊と抜染剤を混合して形成した抜染糊剤を置き、この模様形成部分3に置いた抜染糊剤を乾燥させた後、ジーンズ生地1を蒸らして模様形成部分3の地色を抜染処理する。
【0020】
また、この際、例えば、前記抜染糊剤は、抜染糊と、この抜染糊の重量比20〜35%の抜染剤とを混合して形成したものを採用すると、模様形成部分3の地色をきれいに抜染できることが出願人により確認されている。更に具体的には、ジーンズ生地1の厚さや質に応じて、抜染剤の混合量を抜染糊の重量比20〜35%の範囲内で最適な混合量に設定変更することにより、きれいな白地に抜染することができる。
【0021】
次いで、例えば、ジーンズ生地1を水洗いして抜染処理した模様形成部分3の抜染糊剤を除去し、この抜染糊剤を除去した模様形成部分3に友禅染を行って前記装飾したい模様4を形成する。
【0022】
具体的には、ジーンズ生地1は、綿素材であるので、前記抜染処理した模様形成部分3に、反応染料を用いて友禅染を行う。
【0023】
このようにして、ジーンズ生地1の抜染した白地に美しい友禅染模様4を形成することができる。
【0024】
また、例えば、反応染料に、重曹と還元防止剤とを混合して混合反応染料を形成し、この混合反応染料を用いて前記抜染処理した模様形成部分3に友禅染を行うこととすれば、ジーンズ生地1に染料が極めて良好に定着することになる。
【0025】
また、例えば、手描による友禅染を行うこととすれば、繊維に手描で着色することによりジーンズの風合いを損うことがない上、色々な色を組み合わせての表現法が可能となるので、独自の配採でファッション性の高い模様4を形成することができる。しかも、ジーンズ生地1の繊維に染料を多く含ませることができるために、染料の堅牢度が非常に高く、洗濯や擦れによる色落ちや、日焼けによる変色などを生じにくくなる。
【0026】
尚、請求項1中の「ジーンズ生地」なる記載は、本来の意味でのジーンズ生地1だけでなく、デニム生地のことも含む意味合いで用いている。
【実施例】
【0027】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例は、(染色済みの)ジーンズ生地1に、装飾したい模様4の外縁形状や模様線に沿って糸目糊2を置き、この糸目糊置きされた模様形成部分3に抜染糊と抜染剤を混合して形成した抜染糊剤を置いて抜染処理を施し、次いで、ジーンズ生地1を洗浄して前記抜染処理した模様形成部分3の抜染糊剤を除去し、この脱色した模様形成部分3に友禅染を行って前記装飾したい模様4を形成するジーンズへの友禅染模様形成方法に係るものである。
【0029】
以下、更に具体的に説明する。
【0030】
先ず、例えば、装飾したい模様4の外縁形状が表された糸目型を形成し、この糸目型をジーンズ生地1に当ててジーンズ生地1に装飾したい模様4の外縁形状に糸目糊2を置く。この糸目糊2は、友禅染を行う際に染料が外に染み出すことを防止する。
【0031】
次いで、この糸目糊置きされた模様形成部分3に、前記装飾したい模様4形に型抜きした伏型を当て、この伏型を介して前記模様形成部分3に抜染糊と抜染剤を混合して形成した抜染糊剤を置く。
【0032】
抜染糊は、ジーンズ生地1の色に応じたものを使用する(例えば、藍色のジーンズ生地1なら藍抜染糊を使用する。)。
【0033】
また、この抜染糊剤は、抜染糊100gに対し20〜35%の抜染剤(抜染糊の重量比20〜35%の抜染剤)を使用する。
【0034】
更に詳しくは、抜染糊と抜染剤の混合比は、ジーンズ生地1に応じて設定変更する。
【0035】
出願人の試作によると、例えば、一般的なジーンズ生地1は、抜染糊100gに対し、20%の抜染剤を混合して形成した抜染糊剤を使用すると、良好に抜染されてきれいな白地に仕上がることが確認されている。
【0036】
また、生地の厚いものは、抜染剤をやや多目にすると良い。例えば、抜染糊100gに対し、25%の抜染剤を混合すると、厚いジーンズ生地1も良好に抜染されることが確認されている。
【0037】
また、有名ブランド品のような、糸染が良い生地は、生地を良く吟味して、抜染糊100gに対し、25〜35%の抜染剤(生地に応じて最適な抜染が行われる量の抜染剤)を混合すると良い。
【0038】
そして、この模様形成部分3に置いた抜染糊剤を乾燥させた後、ジーンズ生地1を蒸らすと、模様形成部分3の地色が脱色(抜染)することになる(図1参照。)。
【0039】
次いで、ジーンズ生地1を水洗いして前記抜染した模様形成部分3の抜染糊剤を除去する。
【0040】
また、この水洗い後、水1リットルに対して容積比0.2%のハイドロサルファイト(安定剤)を混合した混合水を用意し、この混合水にジーンズ生地1を浸す。
【0041】
この工程は、前記水洗い時に落としきれなかった抜染剤(酸化抜染剤)を、このハイドロサルファイトの還元力(還元作用)により中和して完全に洗い落とす目的で行う。
【0042】
続いて、水1リットルに対して容積比2%の酢酸(中和剤)を混合した酢酸混合水を用意し、この酢酸混合水にジーンズ生地1を浸す。
【0043】
この工程は、抜染により地色を抜いて白色となった模様形成部分3の生地が、乾いた後に空気中の酸素の作用により黄変することがあるため、これを酢酸の中和作用により防止する目的で行う。
【0044】
次いで、この抜染した模様形成部分3に友禅染を施して装飾したい模様4を形成する。
【0045】
この友禅染は、本実施例では、手描友禅(筆で色挿し)を行う。
【0046】
また、この手描友禅は、反応染料を用いて行う。
【0047】
また、反応染料は、この反応染料1リットルに対して容積比2%の重曹と、この反応染料1リットルに対して容積比1%の還元防止剤とを混合して構成した混合反応染料を用いる。このような混合反応染料を用いることにより、後の蒸しによって反応染料がしっかりとジーンズ生地1に定着することになる。
【0048】
また、手描友禅を行うことにより、ジーンズの風合いを損うことがない上に、型友禅を行う場合に比べて、ジーンズ生地1の繊維に染料を多く着色(含ませることが)できるため、堅牢度が非常に高く、これにより、水洗い、摩擦、日光に対する耐性が非常に高く、洗濯や擦れによる色落ちや、日焼けによる変色などを生じにくくなる。しかも、色々な色を組み合わせての表現法が可能となるので、独自の配採でファッション性の高い模様4を形成することができる。
【0049】
次いで、ジーンズ生地1を蒸して染料を定着させ、その後、洗浄(水洗い)して糸目糊2などの不要な糊を洗い流した後、乾燥させる。
【0050】
次いで、水1リットルに対して容積比0.5%の反応フィックス剤を混合した混合水を用意し、この混合水にジーンズ生地1を5分位浸す。
【0051】
この工程は、地色と友禅染の染料を定着させるための処理である。
【0052】
最後に仕上げとして、アイロンがけ等を行い、完成となる(図2参照。)。
【0053】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施例の抜染処理を行ったジーンズ生地を示す部分拡大説明図である。
【図2】本実施例の模様完成状態のジーンズ生地を示す部分拡大説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ジーンズ生地
2 糸目糊
3 模様形成部分
4 模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジーンズ生地に、装飾したい模様の外縁形状に沿って糸目糊を置き、この糸目糊置きされた模様形成部分の地色を抜染処理し、この抜染処理した模様形成部分に友禅染を行って前記装飾したい模様を形成することを特徴とするジーンズへの友禅染模様形成方法。
【請求項2】
前記糸目糊置きされた模様形成部分に、抜染糊と抜染剤を混合して形成した抜染糊剤を置き、この模様形成部分に置いた抜染糊剤を乾燥させた後、ジーンズ生地を蒸らして模様形成部分の地色を抜染処理することを特徴とする請求項1記載のジーンズへの友禅染模様形成方法。
【請求項3】
前記抜染糊剤は、抜染糊と、この抜染糊の重量比20〜35%の抜染剤とを混合して形成することを特徴とする請求項2記載のジーンズへの友禅染模様形成方法。
【請求項4】
前記抜染処理したジーンズ生地を水洗いして前記抜染糊剤を除去し、この抜染糊剤を除去した模様形成部分に友禅染を行って前記装飾したい模様を形成することを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のジーンズへの友禅染模様形成方法。
【請求項5】
反応染料に、重曹と還元防止剤とを混合して混合反応染料を形成し、この混合反応染料を用いて前記抜染処理した模様形成部分に友禅染を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のジーンズへの友禅染模様形成方法。
【請求項6】
前記抜染処理した模様形成部分に手描による友禅染を行って前記装飾したい模様を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項にジーンズへの友禅染模様形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−88572(P2008−88572A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267899(P2006−267899)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(506330357)株式会社 はぶき (1)
【Fターム(参考)】