説明

スイッチング電源装置及びその制御方法

【課題】ブリッジレス力率改善回路を備えたスイッチング電源装置において、通常のスイッチング動作用の制御回路を二重系にすることなく、保護動作を実行可能なスイッチング電源装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】スイッチング電源装置1は、第1の整流素子(D1)と第1のスイッチ素子(Q1)の接続部と交流電源(Vac)の一端との間に接続された第1のリアクトル(L1)と、第2の整流素子(D2)と第2のスイッチ素子(Q2)の接続部と交流電源(Vac)の他端との間に接続された第2のリアクトル(L2)とを有する力率改善回路2を備えており、スイッチング制御部5は、L1及びL2電流検出回路6、7の出力信号及びAC電圧検出回路8の出力信号のいずれか一方または両方に基づいて、スイッチング電源装置1の異常の発生を判定して、第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のスイッチング動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置及びその制御方法に関し、詳しくは、装置に異常が発生したことを検出して保護動作を実行する機能を備えたスイッチング電源装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力交流電源の交流電圧を整流後、所望の交流または直流電圧に変換して負荷に供給するスイッチング電源装置が広く用いられている。このようなスイッチング電源装置には、その力率を改善し、また、装置から発生するEMIノイズを低減するために、力率改善回路を設けることが要求される。そのため、スイッチング電源装置の一般的な構成では、その入力段に、ダイオードブリッジからなる整流回路と、昇圧コンバータ回路からなる力率改善回路が実装される。
【0003】
一方、スイッチング電源装置において、昇圧動作による力率改善機能と整流機能を兼備することにより前段のダイオードブリッジを不要とした力率改善回路(以下、ブリッジレス力率改善回路ともいう)も提案されている(例えば、特許文献1参照)。このブリッジレス力率改善回路は、スイッチング電源装置の入力段を簡易な回路により構成し、かつ、ダイオードの導通損失を低減することが可能な点で、整流回路と力率改善回路とを個別に設けた構成よりも有利なものである。
【0004】
また、このようなスイッチング電源装置を安全に使用するためには、通常のスイッチング動作制御に加えて、装置に何らかの異常が発生した時に、例えばスイッチング動作の停止等の保護動作を実行することが望ましい。一般に、従来のスイッチング電源装置では、この保護動作を実行するために、通常のスイッチング動作制御用の回路系とは別に、装置中の電圧または電流等を検出する検出回路及び/またはその検出値に応じて動作する保護回路が設けられている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載された力率改善回路の制御ICは、通常のスイッチング動作制御用の出力電圧フィードバック端子(VFB)とは別に、過電圧保護用の入力端子(OVP)と、この入力端子に接続される過電圧保護比較器とを備えており、特許文献1には、この入力端子から入力される出力電圧が所定の閾値を上回った場合には、スイッチ素子のゲート駆動を停止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007―527687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に、保護動作を実行するための検出回路及び/または保護回路を、通常のスイッチング動作用の制御回路とは別に設けた構成(以下、二重系ともいう)では、スイッチング電源装置の制御回路が複雑化し、装置のコストが増大するという問題がある。
【0008】
さらに、ブリッジレス力率改善回路では、装置に入力される交流電圧の極性の異なる半周期毎に、異なるスイッチ素子によってスイッチング動作を分担するという特有の構成上、次のように、制御を二重系とした構成が保護手段として十分に機能しない場合があるという問題も存在する。
【0009】
すなわち、ブリッジレス力率改善回路では、過電圧(あるいは、電圧低下、過電流等のその他の検出対象)を検出することにより装置の異常を判別する保護手段を備えていても、例えば、何らかの要因によりいずれか一方のスイッチ素子のスイッチング動作が停止し、対応する半周期における出力制御が実行されない状況が生じた場合に、他方のスイッチ素子のスイッチング動作による対応する半周期の出力制御だけが実行されている状態で、異常と判定されるレベルの過電圧等が出力に生じないまま、装置の動作が継続してしまう可能性がある。
【0010】
そして、このように片方のスイッチ素子のみにより出力制御されている状態が長期間継続すると、そのスイッチ素子及び対応する制御系に動作が集中することにより、装置が過熱状態となり、ひいては、回路素子の焼損等の重大な損傷が発生するおそれがある。したがって、ブリッジレス力率改善回路において、その保護手段は、片方のスイッチ素子のみにより出力制御されている状態を異常として検出して保護動作を実行し、上述したような重大な損傷の発生を未然に防止できることが望ましい。
【0011】
また、これを実行するための一つの方法として、装置の過熱状態を検出する方法も考えられるが、この方法では、通常のスイッチング動作用の制御回路とは別に、温度センサやその検出信号に基づいて過熱状態を判別するための手段等を要するものとなり、上述したように二重系となることによって、制御回路が複雑化するという欠点を有している。
【0012】
さらに、片方のスイッチ素子及びその制御系のみに動作が集中する現象は、実際に一方のスイッチ素子の動作が停止した場合の他にも、交流電圧の極性を判別する手段の異常または装置に入力される交流電圧波形自体の異常等の要因により、それぞれのスイッチ素子のスイッチング動作によって出力制御される期間の長さにアンバランスが生じた場合にも発生する可能性があり、ブリッジレス力率改善回路の保護手段は、このような現象も異常として検出し、適切な保護動作を実行可能であることが望ましい。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブリッジレス力率改善回路を備えたスイッチング電源装置において、通常のスイッチング動作用の制御回路を二重系にすることなく、保護動作を実行可能なスイッチング電源装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0015】
(1)第1のスイッチ素子(Q1)及び第2のスイッチ素子(Q2)を備える力率改善回路(2)と、交流電源(Vac)の両端からの入力電流をそれぞれ検出する第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)と、前記交流電源(Vac)の両端の入力電圧をそれぞれ検出する入力電圧検出回路(8)と、前記力率改善回路(2)の出力電圧が所定の電圧となるように前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)を制御するスイッチング制御部(5)とを備え、前記スイッチング制御部(5)は、前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号に基づいて、前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のそれぞれの駆動期間を決定するとともに、前記第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)から出力される入力電流検出信号に基づいて、それぞれ前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のスイッチング動作の周期を決定するように構成されたスイッチング電源装置であって、前記スイッチング制御部(5)は、前記第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)から出力される入力電流検出信号及び前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号のいずれか一方または両方に基づいて、前記スイッチング電源装置の異常の発生を判定し、前記異常が発生したと判定した場合、前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のスイッチング動作を停止させることを特徴とするスイッチング電源装置(請求項1)。
【0016】
(2)(1)項に記載のスイッチング電源装置において、前記力率改善回路(2)は、負荷回路(3)に並列に接続される平滑コンデンサ(C1)と、第1の整流素子(D1)と第1のスイッチ素子(Q1)からなる第1の直列回路と、第2の整流素子(D2)と第2のスイッチ素子(Q2)からなる第2の直列回路とを有し、前記第1の直列回路と前記第2の直列回路は、前記第1の整流素子(D1)側の一端と前記第2の整流素子(D2)側の一端、及び、前記第1のスイッチ素子(Q1)側の一端と前記第2のスイッチ素子(Q2)側の一端をそれぞれ接続して互いに並列に接続されるとともに、前記第1及び第2の整流素子(D1,D2)が前記平滑コンデンサ(C1)を充電する方向となるように、前記平滑コンデンサ(C1)と並列に接続されており、かつ、前記第1の整流素子(D1)と前記第1のスイッチ素子(Q1)の接続部と交流電源(Vac)の一端との間に接続された第1のリアクトル(L1)と、前記第2の整流素子(D2)と前記第2のスイッチ素子(Q2)の接続部と前記交流電源(Vac)の他端との間に接続された第2のリアクトル(L2)と、前記第1のスイッチ素子(Q1)と前記第2のスイッチ素子(Q2)の接続部と前記交流電源(Vac)の前記第1のリアクトル(L1)側の一端との間に接続された第3の整流素子(D3)と、前記第1スイッチ素子(Q1)と前記第2のスイッチ素子(Q2)の接続部と前記交流電源(Vac)の前記第2のリアクトル(L2)側の一端との間に接続された第4の整流素子(D4)と、を有することを特徴とするスイッチング電源装置(請求項2)。
【0017】
(3)(1)または(2)項に記載のスイッチング電源装置において、前記スイッチング制御部(5)は、前記第1の入力電流検出回路(6)から出力される入力電流検出信号から、前記第1のスイッチ素子(Q1)のスイッチング動作の周期を決定する第1タイミング情報が検出されない状態、及び、前記第2の入力電流検出回路(6)から出力される入力電流検出信号から、前記第2のスイッチ素子(Q2)のスイッチング動作の周期を決定する第1タイミング情報が検出されない状態の少なくともいずれか一方が、所定の第1の期間を超えて継続した場合に、前記スイッチング電源装置に異常が発生したと判定することを特徴とするスイッチング電源装置(請求項3)。
【0018】
(4)(3)項に記載のスイッチング電源装置において、前記第1の期間は、前記交流電源(Vac)の1周期よりも長い期間であることを特徴とするスイッチング電源装置(請求項4)。
【0019】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置において、前記スイッチング制御部(5)は、前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号から、前記第1のスイッチ素子(Q1)の駆動期間と前記第2のスイッチ素子(Q1)の駆動期間との切替え時点に対応する第2タイミング情報が検出されない状態が、所定の第2の期間を超えて継続した場合に、前記スイッチング電源装置に異常が発生したと判定することを特徴とするスイッチング電源装置(請求項5)。
【0020】
(6)(5)項に記載のスイッチング電源装置において、前記第2の期間は、前記交流電源(Vac)の半周期よりも長い期間であることを特徴とするスイッチング電源装置(請求項6)。
【0021】
(7)第1のスイッチ素子(Q1)及び第2のスイッチ素子(Q2)を備える力率改善回路(2)と、交流電源(Vac)の両端からの入力電流をそれぞれ検出する第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)と、前記交流電源(Vac)の両端の入力電圧をそれぞれ検出する入力電圧検出回路(8)と、前記力率改善回路(2)の出力電圧が所定の電圧となるように前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)を制御するスイッチング制御部(5)とを備え、前記スイッチング制御部(5)は、前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号に基づいて、前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のそれぞれの駆動期間を決定するとともに、前記第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)から出力される入力電流検出信号に基づいて、それぞれ前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のスイッチング動作の周期を決定するように構成されたスイッチング電源装置の制御方法であって、前記第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)から出力される入力電流検出信号及び前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号のいずれか一方または両方に基づいて、前記スイッチング電源装置の異常の発生を判定するステップと、前記異常が発生したと判定した場合、前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のスイッチング動作を停止させるステップとを含む、ことを特徴とするスイッチング電源装置の制御方法(請求項7)。
【0022】
(8)(7)項に記載のスイッチング電源装置の制御方法であって、前記スイッチング電源装置の異常の発生を判定するステップは、前記第1の入力電流検出回路(6)から出力される入力電流検出信号から、前記第1のスイッチ素子(Q1)のスイッチング動作の周期を決定するための第1タイミング情報が検出されない状態、及び、前記第2の入力電流検出回路(7)から出力される入力電流検出信号から、前記第2のスイッチ素子(Q2)のスイッチング動作の周期を決定するための第1タイミング情報が検出されない状態の少なくともいずれか一方が、所定の第1の期間を超えて継続した場合に、前記スイッチング電源装置の異常が発生したと判定するステップを含むことを特徴とするスイッチング電源装置の制御方法(請求項8)。
【0023】
(9)(7)または(8)項に記載のスイッチング電源装置の制御方法であって、前記スイッチング電源装置の異常の発生を判定するステップは、前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号から、前記第1のスイッチ素子(Q1)の駆動期間と前記第2のスイッチ素子(Q2)の駆動期間との切替え時点に対応する第2タイミング情報が検出されない状態が、所定の第2の期間を超えて継続した場合に、前記スイッチング電源装置に異常が発生したと判定するステップを含むことを特徴とするスイッチング電源装置の制御方法(請求項9)。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るスイッチング電源装置及びその制御方法によれば、ブリッジレス力率改善回路を備えたスイッチング電源装置において、通常のスイッチング動作用の制御回路を二重系にすることなく、簡素な回路構成により異常発生時の保護動作を実行することが可能となる。
特に、本発明に係るスイッチング電源装置及びその制御方法では、ブリッジレス力率改善回路において、2つのスイッチ素子のうちの一方のスイッチ素子のスイッチング動作に出力制御が集中する状態を、異常として確実に検出して保護動作を実行することにより、そのような状態が継続することにより発生するおそれのある、回路要素の焼損等の重大な損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態におけるスイッチング電源装置の一例を示す回路構成図である。
【図2】図1に示すスイッチング電源装置において、スイッチング制御部の構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】図1に示すスイッチング電源装置の正常動作時において、第1のスイッチ素子の駆動期間と第2のスイッチ素子の駆動期間を、交流電源波形とともに示す波形図である。
【図4】図1に示すスイッチング電源装置の正常動作時において、スイッチング制御部による第1及び第2のスイッチ素子のスイッチング周期の制御を示すタイミングチャートである。
【図5】図1に示すスイッチング電源装置の制御方法において、異常判定手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】図1に示すスイッチング電源装置の制御方法において、異常判定手順の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるスイッチング電源装置1を示す回路構成図である。スイッチング電源装置1は、力率改善回路2を備えており、力率改善回路2には負荷回路3が接続されている。力率改善回路2は、第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1からなる第1の直列回路と、第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2からなる第2の直列回路とを有している。力率改善回路2では、第1、第2の整流素子D1、D2としてダイオードが用いられ、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2としてMOS−FETが用いられており、第1の直列回路は、第1の整流素子D1のアノード端子と第1のスイッチ素子Q1のドレイン端子とを接続してなり、第2の直列回路は、第2の整流素子D2のアノード端子と第2のスイッチ素子Q2のドレイン端子とを接続してなる。
【0027】
第1の直列回路と第2の直列回路は、第1、第2の整流素子D1、D2のカソード端子を接続し、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のソース端子を接続して、互いに並列に接続されており、この第1の直列回路(及び第2の直列回路)と並列に平滑コンデンサC1が接続されている。
また、力率改善回路2は、第1のリアクトルL1と第2のリアクトルL2とを備えており、第1のリアクトルL1の一端は、第1の整流素子D1と第1のスイッチ素子Q1の接続部に接続され、他端は、交流電源Vacの一端に接続される。第2のリアクトルL2の一端は、第2の整流素子D2と第2のスイッチ素子Q2の接続部に接続され、他端は、交流電源Vacの他端に接続される。
【0028】
すなわち、第1の直列回路と第2直列回路との並列回路において、第1の整流素子D1は、交流電源Vacから第1のリアクトルL1を介して平滑コンデンサC1を充電する方向、第2の整流素子D2は、交流電源Vacから第2のリアクトルL2を介して平滑コンデンサC1を充電する方向に、それぞれ接続されている。
【0029】
さらに、力率改善回路2は、それぞれダイオードからなる第3〜第6の整流素子D3、D4、D5、D6を備えている。ここで、力率改善回路2における第3〜第6の整流素子D3、D4、D5、D6の接続態様を詳述すれば、次の通りである。
【0030】
第3の整流素子D3のカソード端子は、交流電源Vacの第1のリアクトルL1側の一端に接続され、第4の整流素子D4のカソード端子は、交流電源Vacの第2のリアクトルL2側の一端に接続されており、第3及び第4の整流素子D3、D4のアノード端子は、第1のスイッチ素子Q1と第2のスイッチ素子Q2の接続部(すなわち、平滑コンデンサC1の一端)に接続される。
【0031】
また、第5の整流素子D5のアノード端子は、交流電源Vacの第1のリアクトルL1側の一端に接続され、第6の整流素子D6のアノード端子は、交流電源Vacの第2のリアクトルL2側の一端に接続されており、第5及び第6の整流素子D5、D6のカソード端子は、第1の整流素子D1と第2の整流素子D2との接続部(すなわち、平滑コンデンサC1の他端)に接続される。
【0032】
スイッチング電源装置1は、さらに、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部5を備えており、スイッチング制御部5から出力される駆動パルス(ゲート駆動信号)に従って、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2をスイッチング動作させるものである。これによって、力率改善回路2は、ダイオードブリッジを設けることなく、交流電源Vacからの入力交流電圧を力率改善しつつ整流及び昇圧し、平滑コンデンサC1に並列に接続された負荷回路3に対して、平滑コンデンサC1の両端間の直流電圧(以下、PFC電圧)を出力する。
【0033】
そして、スイッチング電源装置1は、検出部4を備えており、この検出部4には、PFC電圧を検出し、その検出値に応じた出力信号をスイッチング制御部5に出力するPFC電圧検出回路9と、交流電源Vacの一端から第1のリアクトルL1を通じて流れる入力電流を検出し、その検出値に応じた出力信号(入力電流検出信号)をスイッチング制御部5に出力するL1電流検出回路(第1の入力電流検出回路)6と、交流電源Vacの他端から第2のリアクトルL2を通じて流れる入力電流を検出し、その検出値に応じた出力信号(入力電流検出信号)をスイッチング制御部5に出力するL2電流検出回路(第2の入力電流検出回路)7と、交流電源Vacの両端の入力電圧を検出し、その検出値に応じた出力信号(入力電圧検出信号)をスイッチング制御部5に出力するAC電圧検出回路(入力電圧検出回路)8とが含まれる。
【0034】
スイッチング制御部5は、後述するように、検出部4から出力されるこれらの出力信号に基づいて、PFC電圧が所定の電圧となるように、各スイッチ素子Q1、Q2に対する駆動パルスの周期(周波数)及びオンデューティを設定し、第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作を制御するものである。
【0035】
尚、スイッチングング電源装置1において、負荷回路3は、典型的には、入力されたPFC電圧を変換して、所定の直流または交流電圧を出力するDC−DCコンバータまたはDC−ACコンバータ(インバータ)からなり、例えば、電流共振(LLC)コンバータ回路を含むものである。但し、本発明に係るスイッチング電源装置1は、負荷回路3の構成によって限定されるものではなく、PFC電圧を入力電圧として用いる任意の適切な負荷回路を適用することができる。
【0036】
スイッチング制御部5は、図2に示すように、第1のスイッチ素子Q1に対する駆動パルスを出力するドライブ回路1(29)と、第2のスイッチ素子Q2に対する駆動パルスを出力するドライブ回路2(30)と、ドライブ回路1及び2(29、30)に対して所定の駆動パルスを出力させるための指令信号を出力するスイッチ素子制御回路10とを備えている。
【0037】
スイッチ素子制御回路10は、その機能ブロックとして、AC電圧AD変換部24、AC極性判定部25、PFC電圧AD変換部21、デューティ演算部22、デューティリミッタ部23、比較器1(26)、比較器2(27)、及び、PFC用PWM出力制御部28を備えている。また、図示は省略するが、スイッチ素子制御回路10は、さらに、後述するPWMタイマ及び異常判定タイマ1〜3として機能する計時手段を備えている。
【0038】
ここで、スイッチ素子制御回路10は、好ましくは、マイクロコンピュータ、DSP、FPGA等のプログラマブルデバイスを用いてデジタル制御装置として構成される。但し、このようなスイッチ素子制御回路10を構成する各機能ブロックは、以下に説明する制御手順を実行する限り、任意の適切なハードウェアまたはソフトウェア、あるいはそれらの組合せにより実装することができ、そのハードウェアには、アナログ回路が含まれるものであってもよい。
【0039】
ここで、以下の説明では、交流電源Vacの極性について、第1のリアクトルL1側の一端が第2のリアクトルL2側の一端よりも高電圧となる極性を「正」、第2のリアクトルL2側の一端が第1のリアクトルL1側の一端よりも高電圧となる極性を「負」と定義し、交流電源Vacの電圧変動の1サイクルのうち、極性が正の期間を正の半サイクル期間、負の期間を負の半サイクル期間という。
【0040】
但し、本発明に係るスイッチング電源装置1の制御方法には、後述するように、何らかの要因により交流電源Vacの波形に異常が生じた場合に、その異常を検出して適切な保護動作を実行することが含まれるため、本明細書において、「半周期」という用語は、交流電源Vacの正常な波形における1周期の1/2の期間をいうものとする。
したがって、スイッチング電源装置1において、交流電源Vacの波形に異常が生じた場合には、正の半サイクル期間と負の半サイクル期間の期間長は、必ずしも互いに同一ではなく、また、上記正及び負の半サイクル期間のいずれか一方または両方の期間長は、必ずしも交流電源Vacの半周期と同一ではない。
【0041】
次に、図2とともに図3及び図4を参照して、力率改善回路2の通常動作について説明する。
スイッチ素子制御回路10において、AC電圧検出回路8からの出力信号は、AC電圧AD変換部24に入力されてA/D変換され、それによって得られた交流電源Vacの入力電圧に相当するデジタルデータがAC極性判定部25に出力される。AC極性判定部25では、AC電圧AD変換部24から入力されたデータに基づいて、現在の交流電源Vacの極性が判別され、その結果、正または負のいずれかの極性を指定する信号がPFC用PWM出力制御部28に出力される。
【0042】
PFC用PWM出力制御部28は、AC極性判定部25から入力される信号に基づいて、第1のスイッチ素子Q1のスイッチング動作により昇圧動作を実行する期間(第1のスイッチ素子Q1の駆動期間)と、第2のスイッチ素子Q2のスイッチング動作により昇圧動作を実行する期間(第2のスイッチ素子Q2の駆動期間)とを決定し、対応する駆動パルスを出力させるための指令信号を、ドライブ回路1及び2(29、30)に対して出力する。
【0043】
力率改善回路2では、図3に示すように、正の半サイクル期間が第1のスイッチ素子Q1の駆動期間、負の半サイクル期間が第2のスイッチ素子Q2の駆動期間である。すなわち、正の半サイクル期間では、ドライブ回路1(29)から第1のスイッチ素子Q1に対して、後述する所定のオン時間と周期に対応する駆動パルスが出力され、力率改善回路2は、第1のリアクトルL1、第1のスイッチ素子Q1、及び第1の整流素子D1を動作ユニットとする昇圧回路として機能する。この間、ドライブ回路2(30)からの駆動パルスの出力は停止され(Highレベルに固定され)、第2のスイッチ素子Q2はオン状態に固定される。これによって、第2のスイッチ素子Q2のソース−ドレイン間を介した電流のリターンパスが形成される。
【0044】
また、負の半サイクル期間では、ドライブ回路2(30)から第2のスイッチ素子Q2に対して、後述する所定のオン時間と周期に対応する駆動パルスが出力され、力率改善回路2は、第2のリアクトルL2、第2のスイッチ素子Q2、及び第2の整流素子D2を動作ユニット(以下、第2の動作ユニットという)とする昇圧回路として機能する。この間、ドライブ回路1(29)からの駆動パルスの出力は停止され(Highレベルに固定され)、第1のスイッチ素子Q1はオン状態に固定される。これによって、第1のスイッチ素子Q1のソース−ドレイン間を介した電流のリターンパスが形成される。
【0045】
ここで、スイッチ素子制御回路10は、ドライブ回路1、2(29、30)から第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2に対して出力される駆動パルスに対応するスイッチング動作のオン時間及び周期(オン時間+オフ時間)を、次のようにして制御するものである。
【0046】
スイッチ素子制御回路10において、PFC電圧検出回路9からの出力信号は、PFC電圧AD変換部21に入力されてA/D変換され、それによって得られたPFC電圧に相当するデジタルデータがデューティ演算部22に出力される。デューティ演算部22では、PFC電圧AD変換部21から入力されたデータと予め設定された目標電圧に相当するデータとの誤差から、PID演算を用いることにより、1回のスイッチング動作におけるオン時間が導出され、導出されたオン時間を指定するデータがデューティリミッタ部23に出力される。
【0047】
デューティリミッタ部23では、デューティ演算部22で導出されたオン時間が、予め定められた範囲内にあるかどうかが判別され、範囲内にある場合には、デューティ演算部22から入力されたオン時間を指定するデータが、そのままPFC用PWM出力制御部28に出力される。また、デューティ演算部22で導出されたオン時間が上記範囲の上限値よりも大きい場合、及び、オン時間が上記範囲の下限値よりも小さい場合には、オン時間を指定するデータが、それぞれ上記上限値及び下限値に置き換えられ、置き換えられたデータが、PFC用PWM出力制御部28に出力される。
【0048】
さらに、スイッチ素子制御回路10において、L1電流検出回路6からの出力信号は、比較器1(26)に入力され、比較器1(26)において、その値がゼロ電流に相当するものであるか否かが判別される。比較器1(26)は、L1電流検出回路6からの出力信号が、ゼロ電流に相当するものであった場合、ゼロ電流を検出したことを示す信号(以下、ON信号ともいう)をPFC用PWM出力制御部28に出力する。すなわち、比較器1(26)は、L1電流検出回路6の出力信号から、その値がゼロ電流に相当するという情報(第1タイミング情報)を検出するものであり、この情報は、後述するように、第1のスイッチ素子Q1の周期を決定するために用いられる。
【0049】
同様に、L2電流検出回路7からの出力信号は、比較器2(27)に入力され、比較器2(27)において、その値がゼロ電流に相当するものであるか否かが判別される。比較器2(27)は、L2電流検出回路7からの出力信号が、ゼロ電流に相当するものであった場合、そのON信号をPFC用PWM出力制御部28に出力する。すなわち、比較器2(27)は、L2電流検出回路7からの出力信号から、その値がゼロ電流に相当するという第1タイミング情報を検出するものである。
【0050】
そして、PFC用PWM出力制御部28による、第1のスイッチ素子Q1の駆動期間におけるスイッチング動作の制御は、次の通りである。
PFC用PWM出力制御部28は、デューティリミッタ部23から入力されたオン時間を用いて、そのオン時間に対応する駆動パルスを指定する指令信号を生成し、ドライブ回路1(29)に出力する。ドライブ回路1(29)から対応する駆動パルスが出力され、第1のスイッチ素子Q1がターンオンすると、交流電源Vacから第1のリアクトルL1を介して第1のスイッチ素子Q1に電流が流れ初め、図4に示すように、L1電流検出回路6によって検出される電流値が増大する。
【0051】
その後、上述したように決定されたオン時間Rdonの経過後、ドライブ回路1(29)から出力される駆動パルスに従って第1のスイッチ素子Q1がターンオフすると、交流電源Vacから第1のリアクトルL1及び第1の整流素子D1を経て平滑コンデンサC1を充電するように電流が流れ、第1のスイッチ素子Q1のターンオン時に第1のリアクトルL1に蓄積されたエネルギ−が放電されるにつれて、L1電流検出回路6によって検出される電流値は減少し、放電の完了とともにゼロになる。
【0052】
そして、PFC用PWM出力制御部28は、比較器1(26)からこのゼロ電流に対応するON信号が入力されると、その時点でデューティリミッタ部23から入力されている最新のオン時間を使用して、次の駆動パルスに対応する指令信号をドライブ回路1(29)に出力し、第1のスイッチ素子Q1は、ドライブ回路1(29)から出力される駆動パルスに従ってターンオンする。これによって、第1のスイッチ素子Q1の直前のスイッチング動作におけるオフ時間(ひいては、そのスイッチング動作の周期t)が決定され、以後、第1のスイッチ素子Q1の駆動期間において、この制御が繰り返される。
【0053】
尚、第1のスイッチ素子Q1の駆動期間を通じて、ドライブ回路2(30)に対しては、PFC用PWM出力制御部28から、駆動パルスの出力を停止して第2のスイッチ素子Q2をオン状態に固定するための指令信号が出力されている。
【0054】
ここで、PFC用PWM出力制御部28の、第2のスイッチ素子Q2の駆動期間におけるスイッチング動作の制御については、上述した第1のスイッチ素子Q1の駆動期間におけるスイッチング動作の制御と同様のものであり、上述の説明において、第1のスイッチ素子Q1、第1のリアクトルL1、第1の整流素子D1、L1電流検出回路6、比較器1(26)、ドライブ回路1(29)、ドライブ回路2(30)を、それぞれ第2のスイッチ素子Q2、第2のリアクトルL2、第2の整流素子D2、L2電流検出回路7、比較器2(27)、ドライブ回路2(30)、及びドライブ回路1(29)に読み替えることにより、その説明を省略する。
【0055】
また、スイッチング電源装置1には、第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作において許容される最大周期が予め設定されており、スイッチ素子制御回路10は、その最大周期を計時するためのPWM用タイマを備えるものである。そして、PFC用PWM出力制御部28は、1個の駆動パルスの出力時点から最大周期が経過するまでに、比較器1(26)からゼロ電流に対応するON信号が入力されなかった場合には、最大周期に到達した時点で、デューティリミッタ部23から入力されている最新のオン時間を使用して、次の駆動パルスに対応する指令信号をドライブ回路1(29)に出力するものである。
【0056】
例えば、PWM用タイマは、スイッチ素子制御回路10に入力されるクロック信号(図示は省略する)に従って、そのカウント値がカウントアップされる所謂フリーランカウンタによって構成されており、予め設定されたカウント値の最小値Cminから最大値Cmaxまでカウントアップするために必要な時間により、上記最大周期が設定されるものであってもよい。
【0057】
この場合、第1のスイッチ素子Q1の駆動期間では、PFC用PWM出力制御部28は、図4に示すように、比較器1(26)からゼロ電流に対応するON信号が入力される度に、PWM用タイマのカウント値を最小値Cminにリセットし(タイマクリア)、その時点からカウントアップを開始する(タイマセット)という動作を実行する。そして、第1のスイッチ素子Q1のいずれかのスイッチング動作において、比較器1(26)からのON信号が入力されないまま、PWM用タイマのカウント値が最大値Cmaxに到達した場合には、PFC用PWM出力制御部28は、PWM用タイマのクリア及びセットを実行するとともに、その時点で、次の駆動パルスに対応する指令信号をドライブ回路1(29)に出力する。これによって、直前のスイッチング動作の周期は、強制的に最大周期tmaxに設定される。PWM用タイマは、第2のスイッチ素子Q2の駆動期間においても、同様に動作するものである。
【0058】
尚、スイッチ素子制御回路10は、比較器1(26)におけるON信号の発生、及び、比較器2(27)におけるON信号の発生により、PFC用PWM出力制御部28で実行される制御手順に割り込みがかかるように構成されており、PWM用タイマのクリア及びセット及び(必要な場合には)次の駆動パルス出力に移行するための手順は、それぞれの割り込みハンドラで処理されるものであってもよい。
【0059】
このように、スイッチング制御部5は、第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作におけるオン時間を、PFC電圧の目標電圧と検出電圧との誤差に応じて決定することによって、PFC電圧を所定の目標電圧とするように、力率改善回路2をPWM制御するものである。また、スイッチング制御部5は、第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作を、そのターンオフ後、第1及び第2のリアクトルL1、L2に流れる入力電流がゼロになった後にターンオンするという、所謂臨界モードで制御するものであるため、個々のスイッチング動作のオフ時間は、PFC電圧の目標電圧、入力される交流電源Vac電圧の瞬時値、第1及び第2のリアクトルL1、L2のインダクタンス、負荷回路3に供給される電力等に応じて定まることとなり、スイッチング動作の周期(スイッチング周波数)についても、これらの条件に応じて変化するものである。
【0060】
ここで、力率改善回路2において、第3〜第6の整流素子D3、D4、D5、D6の機能について説明すれば、次の通りである。力率改善回路2では、第3及び第4の整流素子D3、D4によって、力率改善回路の出力グランド(平滑コンデンサC1の第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2と接続される側の一端)と交流電源Vacの両端が接続されており、交流電源Vacの両端が出力グランドからフローティングとならないため、絶縁手段等を要しない簡易な回路によりAC電圧検出回路8を構成することができる。また、第5及び第6の整流素子D5、D6は、力率改善回路2の起動直後(第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作が開始する前)に、交流電源Vacから平滑コンデンサC1が充電される経路を形成するものである。加えて、力率改善回路2が、第3〜第6の整流素子D3、D4、D5、D6を備えることによって、第1及び第2のリアクトルL1、L2に発生するリンギングを抑制し、それによって、EMIノイズを低減することが可能となる。
【0061】
また、スイッチング電源装置1において、スイッチング制御部5のPFC用PWM出力制御部28は、第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作の臨界モード制御において、オフ状態の第1のスイッチ素子Q1(または、第2のスイッチ素子Q2)を、比較器1(26)(または、比較器2(27))からゼロ電流に対応するON信号が入力された直後にターンオンさせるものであってもよく、あるいは、比較器1(26)(または、比較器2(27))からゼロ電流に対応ON信号が入力された後、第1のリアクトルL1と第1のスイッチ素子Q1の寄生容量(または、第2のリアクトルL2と第2のスイッチ素子Q2の寄生容量)との電圧共振によって、第1のスイッチ素子Q1(または、第2のスイッチ素子Q2)のドレイン−ソース間電圧が極小値まで低下するのを待ち、その時点で第1のスイッチ素子Q1(第2のスイッチ素子Q2)をターンオンさせる、所謂擬似共振制御を実行するものであってもよい。
【0062】
さらに、スイッチング電源装置1は、L1電流検出回路6及びL2電流検出回路7の構成によって限定されるものではなく、交流電源Vacから第1のリアクトルL1及び第2リアクトルL2を通じて流れる入力電流がゼロ電流となった場合に、それに相当する信号を出力可能である限り、任意の適切な回路により構成することができる。例えば、L1電流検出回路6及びL2電流検出回路7は、カレントトランスを用いて構成するものであってもよく、または、第1のリアクトルL1及び第2のリアクトルL2のそれぞれと磁心を共有する二次巻線を用いて構成するものであってもよい。
【0063】
次に、図5を参照して、本発明に係るスイッチング電源装置及びその制御方法の特徴である、スイッチング電源装置1における異常判定手順の一例について説明する。
この例の場合、スイッチ素子制御回路10は、上述したPWM用タイマに加えて、異常判定タイマ1と異常判定タイマ2を備えており、これらの異常判定タイマ1及び異常判定タイマ2により、第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作の周期に関連する異常判定のための第1の期間を計時することによって、スイッチング電源装置1に異常が発生したことを判定するものである。
【0064】
ここで、異常判定タイマ1及び異常判定タイマ2は、PWM用タイマと同様に、スイッチ素子制御回路10に入力されるクロック信号(図示は省略する)に従って、そのカウント値がカウントアップされる所謂フリーランカウンタによって構成されており、予め設定されたカウント値の最小値から最大値までカウントアップするために必要な時間により、上記第1の期間が設定されるものであってもよい。
【0065】
図5に示す異常判定手順では、まず、比較器1(26)にON信号が発生したか否か(すなわち、L1電流検出回路6の出力信号から、ゼロ電流に相当する値が検出されたか否か)が判別される(ステップS1)。そして、発生したと判別された場合(Yes)には、PFC用PWM出力制御部28は、異常判定タイマ1のカウント値を最小値にリセットし(タイマクリア)、その時点からカウントアップを開始し(タイマセット)、次いで、異常判定タイマ1が満了したか否か(カウント値が最大値に到達したか否か)を判別する(ステップS4)。一方、ステップS1において、比較器1(26)にON信号が発生していないと判別された場合(No)には、制御は、直接ステップS4に移行する。
【0066】
ステップS4において、異常判定タイマ1が満了してない(No)と判別された場合には、異常判定タイマ1のカウント値を保持して(すなわち、直前のタイマセットからの計時を持続した状態で)(ステップS5)、制御は、ステップS6に移行する。
ステップS6では、比較器2(27)にON信号が発生したか否か(すなわち、L2電流検出回路7からの出力信号から、ゼロ電流に相当する値が検出されたか否か)が判別される。そして、発生した場合(Yes)には、PFC用PWM出力制御部28は、異常判定タイマ2のカウント値を最小値にリセットし(タイマクリア)、その時点からカウントアップを開始して(タイマセット)、次いで、異常判定タイマ2が満了したか否か(カウント値が最大値に到達したか否か)が判別される(ステップS9)。一方、ステップS6において、比較器2(27)にON信号が発生していないと判別された場合(No)には、制御は、直接ステップS9に移行する。
【0067】
ステップS9において、異常判定タイマ2が満了してない(No)と判別された場合には、異常判定タイマ2のカウント値を保持して(すなわち、直前のタイマセットからの計時を持続した状態で)(ステップS10)、制御は、ステップS1に復帰する。
【0068】
また、ステップS4において、異常判定タイマ1が満了したと判別された場合(Yes)、及び、ステップS10において、異常判定タイマ2が満了したと判別された場合(Yes)には、異常が発生したと判定され、PFC用PWM出力制御部28は、ドライブ回路1(29)及びドライブ回路2(30)に対して第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作を(好ましくはオフ状態)で停止させるための指令信号を出力し、ドライブ回路1(29)及びドライブ回路2(30)は、この指令信号に従って駆動パルスの出力を停止する(言い換えれば、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作を、好ましくはオフ状態で、停止させる)(ステップS11)。
【0069】
図5に示す異常判定手順によれば、ステップS1〜S10の手順の繰り返しの間に、最後に異常判定タイマ1がセットされた後、比較器1(26)のオン信号が発生しないまま異常判定タイマ1が満了する事象、または、最後に異常判定タイマ2がセットされた後、比較器2(27)のオン信号が発生しないまま異常判定タイマ2が満了する事象のいずれか一方が発生した場合、異常が発生したと判定されて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作を停止するという保護動作が実行されることになる。
【0070】
図5に示す異常判定手順は、このように異常判定タイマ1及び異常判定タイマ2を使用して、L1電流検出回路6の出力信号から、その値がゼロ電流に相当するものであるという情報が検出されない状態、及び、L2電流検出回路7の出力信号から、その値がゼロ電流に相当するものであるという情報が検出されない状態のいずれか一方が、第1の期間を超えて継続したことを検出するものである。
【0071】
そして、L1電流検出回路6の出力信号から、その値がゼロ電流に相当するものであるという情報が検出されない状態が長期間継続することは、第1のリアクトルL1、第1のスイッチ素子Q1、及び第1の整流素子D1からなる動作ユニット(並びにこの動作ユニットを動作させるための他の回路系)に何らかの異常(例えば、第1のスイッチ素子Q1の動作停止)が発生した可能性が高いこと、及び、L2電流検出回路7の出力信号から、その値がゼロ電流に相当するものであるという情報が検出されない状態が長期間継続することは、第2のリアクトルL1、第2のスイッチ素子Q2、及び第2の整流素子D2からなる動作ユニット(並びにこの動作ユニットを動作させるための他の回路系)に何らかの異常(例えば、第2のスイッチ素子Q2の動作停止)が発生した可能性が高いことを意味する。
【0072】
したがって、スイッチング電源装置1において、異常判定のための第1の期間は、このような異常の発生を通常動作と識別するために必要であって、かつ、装置の異常を可能な限り迅速に検出できる期間長とすることが好ましい。但し、力率改善回路2では、両方の動作ユニットが正常に動作している場合でも、通常、第1のスイッチ素子Q1の駆動期間(正の半サイクル期間)中、L2電流検出回路7でゼロ電流は検出されず、また、第2のスイッチ素子Q2の駆動期間(負の半サイクル期間)中、L1電流検出回路6でゼロ電流は検出されないため、異常判定のための第1の期間は、少なくとも交流電源Vacの正常動作の半周期よりも長い期間長を有するように設定する必要がある。
例えば、第1の期間を、「交流電源Vacの正常動作の半周期」+「実質的な異常判定期間」と見なした場合、「実質的な異常判定期間」を、交流電源Vacの半周期よりも長い期間とし、第1の期間を、交流電源Vacの1周期よりも長い期間とするものであってもよい。
【0073】
図5に示す異常判定手順が実装されたスイッチング電源装置1及びその制御方法によれば、上述した2つの動作ユニット(並びに動作ユニットを動作させるための他の回路系)のうちのいずれか一方のみに異常が発生してその動作が停止し、一方、他方の動作は継続されている状態を検出し、この段階で保護動作を実行することが可能となる。これによって、力率改善回路2の一方の動作ユニットのみに出力制御が集中する状態が長期間継続することによる装置の過熱、ひいては回路素子の焼損等の重大な損傷を装置が被ることを未然に防止して、装置を安全に停止させることが可能となる。
【0074】
そして、上述した異常判定手順は、検出部4及びスイッチ素子制御回路10を含むスイッチング制御部5のような、力率改善回路2を臨界モードPWM制御するための通常の回路系に対して、保護動作のための検出回路及び/または保護回路を別に設けることなく、スイッチ素子制御回路10で実行される通常動作の制御手順を拡張することによって実行可能なものであるため、装置の複雑化やコストの増大をまねくことなく、スイッチング電源装置1の異常発生を検出するとともに適切な保護動作を実行し、装置の安全を確保することが可能となる。
【0075】
また、図5に示す異常判定手順では、最後に異常判定タイマ1がセットされた後、比較器1(26)のオン信号が発生しないまま異常判定タイマ1が満了する事象、及び、最後に異常判定タイマ2がセットされた後、比較器2(27)のオン信号が発生しないまま異常判定タイマ2が満了する事象のいずれか一方が発生した場合に、異常が発生したと判定するものとしたが、図5に示す異常判定手順を、これらの事象の両方が発生した場合に異常が発生したと判定するように(例えば、ステップS4におけるYesの判別とステップS9におけるYesの判別のAND条件でステップS11を実行するように)変更することは容易である。
【0076】
この場合でも、スイッチング電源装置1及びその制御方法は、少なくとも、力率改善回路2を臨界モードPWM制御するための通常の回路系を二重系にすることなく、スイッチング電源装置1の異常発生を検出するとともに適切な保護動作を実行し、装置の安全を確保することが可能である点で、有利なものである。
【0077】
尚、図5に示す異常判定手順は、スイッチ素子制御回路10で実行される制御手順の全体から、異常判定に関わる部分のみを抽出して記載したものであり、その異常判定手順は、制御手順の全体の中の任意の適切な時点で実行されるものである。また、その際、連続する手順として記載された任意の2つのステップの間(ステップS10からS1への復帰の間を含む)に、通常動作のために必要な任意のステップが実行されるものであってもよい。
【0078】
さらに、図5に示すフローチャートでは、異常判定手順を、ステップS1から順に実行される一連のステップとして示したが、スイッチ素子制御回路10で実行される異常判定手順において、比較器1(26)のON信号の発生、及び、比較器2(27)のON信号の発生は、割り込みによってPFC用PWM出力制御部28に検出され、その後異常判定タイマ1のクリア並びにセット、及び、異常判定タイマ2のクリア並びにセットの手順は、PWM用タイマのクリア並びにセット等と同様に、それぞれの割り込みハンドラで処理されるものであってもよい。
【0079】
ここで、図5に示す異常判定手順は、力率改善回路2を構成する2つの動作ユニットのうちの片方が停止することによって、もう片方の動作ユニットに出力制御が集中した状態を効果的に検出するものであった。しかし、力率改善回路2において、片方の動作ユニットのみに出力制御が集中する状態は、入力される交流電源Vacの波形自体、及び、スイッチング電源装置1において交流電源Vacを検出し、その極性を判別し、第1の駆動期間と第2の駆動期間を設定するための制御系(例えば、AC電圧検出回路8、AC電圧変換部24、AC極性判定部25、PFC用PWM出力制御部28)のいずれか一方または両方に異常が生じ、第1の駆動期間(実際の正の半サイクル期間または制御系によって正の半サイクル期間と設定された期間)と第2の駆動期間(実際の負の半サイクル期間または制御系によって負の半サイクル期間と設定された期間)の期間長の比が、50%から著しくずれた場合にも生じ得る。
【0080】
次に、図6を参照して、スイッチング電源装置1において、このような異常に対処するための異常判定手順の例について説明する。この場合、スイッチ素子制御回路10は、異常判定タイマ3を備えており、この異常判定タイマ3により、交流電源Vacの極性反転に関連する異常判定のための第2の期間を計時することによって、スイッチング電源装置1に異常が発生したことを判定するものである。
【0081】
異常判定タイマ3は、PWM用タイマ、異常判定タイマ1、及び異常判定タイマ2と同様に、スイッチ素子制御回路10に入力されるクロック信号(図示は省略する)に従って、そのカウント値がカウントアップされる所謂フリーランカウンタによって構成されており、予め設定されたカウント値の最小値から最大値までカウントアップするために必要な時間により、上記第2の期間が設定されるものであってもよい。
【0082】
図6に示す異常判定手順において、PFC用PWM出力制御部28は、まず、交流電源Vacの極性反転が発生したか否かを判別する(ステップS101)。この判別は、例えば、AC極性判定部25から入力される信号に基づいて、交流電源Vacのその時点の極性と直前の極性とを比較して、正から負、または、負から正への変化があったか否かを判別することにより実行される。この場合、スイッチ素子制御回路10は、AC電圧変換部24及びAC極性判定部25を経て、PFC用PWM出力制御部28によるこの判別によって、AC電圧検出回路8の出力信号から、交流電源Vacの極性が反転したという、第1のスイッチ素子Q1の駆動期間と第2のスイッチ素子Q2の駆動期間との切替え時点に対応する情報(第2タイミング情報)を検出するものである。
【0083】
ステップS101において、極性反転が発生したと判別された場合(Yes)には、PFC用PWM出力制御部28は、異常判定タイマ3のカウント値を最小値にリセットし(タイマクリア)、その時点からカウントアップを開始し(タイマセット)、次いで、異常判定タイマ3が満了したか否か(カウント値が最大値に到達したか否か)を判別する(ステップS104)。一方、ステップS101において、極性反転が発生していないと判別された場合(No)には、制御は、直接ステップS104に移行する。
【0084】
ステップS104において、異常判定タイマ3が満了してない(No)と判別された場合には、異常判定タイマ3のカウント値を保持して(すなわち、直前のタイマセットからの計時を持続した状態で)(ステップS105)、制御は、ステップS101に復帰する。
【0085】
そして、ステップS104において、異常判定タイマ3が満了したと判別された場合(Yes)には、異常が発生したと判定され、PFC用PWM出力制御部28は、ドライブ回路1(29)及びドライブ回路2(30)に対して第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作を(好ましくはオフ状態)で停止させるための指令信号を出力し、ドライブ回路1(29)及びドライブ回路2(30)は、この指令信号に従って駆動パルスの出力を停止する(言い換えれば、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作を、好ましくはオフ状態で、停止させる)(ステップS106)。
【0086】
図6に示す異常判定手順によれば、ステップS101〜S105の手順の繰り返しの間に、最後に異常判定タイマ3がセットされた後、交流電源Vacの極性判定が発生しないまま異常判定タイマ3が満了する事象が発生した場合に、異常が発生したと判定されて、第1、第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作を停止するという保護動作が実行されることになる。
【0087】
図6に示す異常判定手順は、このように異常判定タイマ3を使用して、AC電圧検出回路8の出力信号から、交流電源Vacの極性反転が発生したという情報が検出されない状態が、第2の期間を超えて継続したことを検出するものである。
【0088】
そして、この異常判定手順では、異常判定のための第2の期間を、交流電源Vacの正常動作の半周期(すなわち、交流電源Vac及びスイッチング電源装置1の正常動作において、交流電源Vacの極性反転が発生し、かつ、その発生が検出される時間間隔)よりも長い期間に設定することによって、上述したような、入力される交流電源Vacの波形自体、及び、スイッチング電源装置1において交流電源Vacを検出し、その極性を判別し、第1の駆動期間と第2の駆動期間を設定するための制御系(例えば、AC電圧検出回路8、AC電圧変換部24、AC極性判定部25、PFC用PWM出力制御部28)のいずれか一方または両方に異常が発生した場合に、その異常を検出することが可能となる。
【0089】
したがって、図6に示す異常判定手順が実装されたスイッチング電源装置1及びその制御方法によれば、第1のスイッチ素子Q1の駆動期間と第2のスイッチ素子Q2の駆動期間のうちのいずれか一方の駆動期間が、他方の駆動期間よりも長い期間長を有するように設定されることにより、長い方の駆動期間を有するスイッチ素子(第1のスイッチ素子Q1または第2のスイッチ素子Q2)を含む動作ユニットに出力制御が集中する状態が長期間継続し、その結果、装置の過熱、ひいては回路素子の焼損等の重大な損傷を装置が被ることを、力率改善回路2を臨界モードPWM制御するための通常の回路系を二重系にすることなく未然に防止して、装置を安全に停止させることが可能となる。
【0090】
尚、図6に示す異常判定手順も、図5に示す異常判定手順と同様に、スイッチ素子制御回路10で実行される制御手順の全体から、異常判定に関わる部分のみを抽出して記載したものであり、その異常判定手順は、制御手順の全体の中の任意の適切な時点で実行されるものである。また、その際、連続する手順として記載された任意の2つのステップの間(ステップS105からS101への復帰の間を含む)に、通常動作のために必要な任意のステップが実行されるものであってもよい。
【0091】
ここで、スイッチング電源装置1及びその制御方法には、図5に示す異常判定手順のみが実装されるものであってもよく、または、図6に示す異常判定手順のみが実装されるものであってもよく、あるいは、図5に示す異常判定手順と図6に示す異常判定手順の両方が実装されるものであってもよい。
【0092】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態の回路構成のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態において、PWM用タイマ及び異常判定タイマ1〜3は、スイッチ素子制御回路10が備えるものとしたが、これらのタイマ類は、スイッチ素子制御回路10の外部に備えられるものであってもよく、あるいは、スイッチ素子制御回路10が備えるタイマと、スイッチ素子制御回路10の外部に備えられたタイマとが混在するものであってもよい。
【0093】
また、スイッチング電源装置1において、力率改善回路2は図1に示したものに限定されず、第1のスイッチ素子Q1及び第2のスイッチ素子Q2の2つのスイッチ素子を備え、入力電圧検出回路8から出力される入力電圧検出信号に基づいて、第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2のそれぞれの駆動期間が決定され、また、第1及び第2の入力電流検出回路6、7から出力される入力電流検出信号に基づいて、それぞれ第1及び第2のスイッチ素子Q1、Q2のスイッチング動作の周期が決定されることにより、出力電圧が所定の電圧となるようにスイッチング制御がされる力率改善回路であれば、本発明技術は適用できる。
【0094】
さらに、スイッチング電源装置1において、負荷回路3にスイッチング方式のDC−DCコンバータまたはDC−ACコンバータが含まれる場合には、スイッチング制御部5は、これらのコンバータに含まれるスイッチ素子のスイッチング動作の制御機能を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1:スイッチング電源装置、2:力率改善回路、3:負荷回路、4:検出部、5:スイッチング制御部、6:L1電流検出回路(第1の入力電流検出回路)、7:L2電流検出回路(第2の入力電流検出回路)、8:AC電圧検出回路(入力電圧検出回路)、9:PFC電圧検出回路、C1:平滑コンデンサ、D1〜D6:第1〜第6の整流素子、L1:第1のリアクトル、L2:第2のリアクトル、Q1:第1のスイッチ素子、Q2:第2のスイッチ素子、Vac:交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスイッチ素子(Q1)及び第2のスイッチ素子(Q2)を備える力率改善回路(2)と、交流電源(Vac)の両端からの入力電流をそれぞれ検出する第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)と、前記交流電源(Vac)の両端の入力電圧をそれぞれ検出する入力電圧検出回路(8)と、前記力率改善回路(2)の出力電圧が所定の電圧となるように前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)を制御するスイッチング制御部(5)とを備え、前記スイッチング制御部(5)は、前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号に基づいて、前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のそれぞれの駆動期間を決定するとともに、前記第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)から出力される入力電流検出信号に基づいて、それぞれ前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のスイッチング動作の周期を決定するように構成されたスイッチング電源装置であって、
前記スイッチング制御部(5)は、前記第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)から出力される入力電流検出信号及び前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号のいずれか一方または両方に基づいて、前記スイッチング電源装置の異常の発生を判定し、前記異常が発生したと判定した場合、前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のスイッチング動作を停止させることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記力率改善回路(2)は、負荷回路(3)に並列に接続される平滑コンデンサ(C1)と、第1の整流素子(D1)と第1のスイッチ素子(Q1)からなる第1の直列回路と、第2の整流素子(D2)と第2のスイッチ素子(Q2)からなる第2の直列回路とを有し、前記第1の直列回路と前記第2の直列回路は、前記第1の整流素子(D1)側の一端と前記第2の整流素子(D2)側の一端、及び、前記第1のスイッチ素子(Q1)側の一端と前記第2のスイッチ素子(Q2)側の一端をそれぞれ接続して互いに並列に接続されるとともに、前記第1及び第2の整流素子(D1,D2)が前記平滑コンデンサ(C1)を充電する方向となるように、前記平滑コンデンサ(C1)と並列に接続されており、かつ、前記第1の整流素子(D1)と前記第1のスイッチ素子(Q1)の接続部と交流電源(Vac)の一端との間に接続された第1のリアクトル(L1)と、前記第2の整流素子(D2)と前記第2のスイッチ素子(Q2)の接続部と前記交流電源(Vac)の他端との間に接続された第2のリアクトル(L2)と、前記第1のスイッチ素子(Q1)と前記第2のスイッチ素子(Q2)の接続部と前記交流電源(Vac)の前記第1のリアクトル(L1)側の一端との間に接続された第3の整流素子(D3)と、前記第1スイッチ素子(Q1)と前記第2のスイッチ素子(Q2)の接続部と前記交流電源(Vac)の前記第2のリアクトル(L2)側の一端との間に接続された第4の整流素子(D4)と、を有することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記スイッチング制御部(5)は、前記第1の入力電流検出回路(6)のから出力される入力電流検出信号から、前記第1のスイッチ素子(Q1)のスイッチング動作の周期を決定するための第1タイミング情報が検出されない状態、及び、前記第2の入力電流検出回路(7)から出力される入力電流検出信号から、前記第2のスイッチ素子(Q2)のスイッチング動作の周期を決定するための第1タイミング情報検出されない状態の少なくともいずれか一方が、所定の第1の期間を超えて継続した場合に、前記スイッチング電源装置に異常が発生したと判定することを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第1の期間は、前記交流電源(Vac)の1周期よりも長い期間であることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記スイッチング制御部(5)は、前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号から、前記第1のスイッチ素子(Q1)の駆動期間と前記第2のスイッチ素子(Q1)の駆動期間との切替え時点に対応する第2タイミング情報が検出されない状態が、所定の第2の期間を超えて継続した場合に、前記スイッチング電源装置に異常が発生したと判定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記第2の期間は、前記交流電源(Vac)の半周期よりも長い期間であることを特徴とする請求項5に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
第1のスイッチ素子(Q1)及び第2のスイッチ素子(Q2)を備える力率改善回路(2)と、交流電源(Vac)の両端からの入力電流をそれぞれ検出する第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)と、前記交流電源(Vac)の両端の入力電圧をそれぞれ検出する入力電圧検出回路(8)と、前記力率改善回路(2)の出力電圧が所定の電圧となるように前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)を制御するスイッチング制御部(5)とを備え、前記スイッチング制御部(5)は、前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号に基づいて、前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のそれぞれの駆動期間を決定するとともに、前記第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)から出力される入力電流検出信号に基づいて、それぞれ前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のスイッチング動作の周期を決定するように構成されたスイッチング電源装置の制御方法であって、
前記第1及び第2の入力電流検出回路(6,7)から出力される入力電流検出信号及び前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号のいずれか一方または両方に基づいて、前記スイッチング電源装置の異常の発生を判定するステップと、前記異常が発生したと判定した場合、前記第1及び第2のスイッチ素子(Q1,Q2)のスイッチング動作を停止させるステップとを含む、ことを特徴とするスイッチング電源装置の制御方法。
【請求項8】
前記スイッチング電源装置の異常の発生を判定するステップは、前記第1の入力電流検出回路(6)から出力される入力電流検出信号から、前記第1のスイッチ素子(Q1)のスイッチング動作の周期を決定するための第1タイミング情報が検出されない状態、及び、前記第2の入力電流検出回路(7)から出力される入力電流検出信号から、前記第2のスイッチ素子(Q2)のスイッチング動作の周期を決定するための第1タイミング情報が検出されない状態の少なくともいずれか一方が、所定の第1の期間を超えて継続した場合に、前記スイッチング電源装置の異常が発生したと判定するステップを含むことを特徴とする請求項7に記載のスイッチング電源装置の制御方法。
【請求項9】
前記スイッチング電源装置の異常の発生を判定するステップは、前記入力電圧検出回路(8)から出力される入力電圧検出信号から、前記第1のスイッチ素子(Q1)の駆動期間と前記第2のスイッチ素子(Q2)の駆動期間との切替え時点に対応する第2タイミング情報が検出されない状態が、所定の第2の期間を超えて継続した場合に、前記スイッチング電源装置に異常が発生したと判定するステップを含むことを特徴とする請求項7または8に記載のスイッチング電源装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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