説明

スイッチ信号処理装置

【課題】回転スイッチと押圧スイッチとが近接して配置されている場合に、誤操作を防止できるスイッチ信号処理装置を提供する。
【解決手段】スイッチ信号処理装置は、ロータリスイッチと、タクトスイッチとの何れか一方が操作されると、その時点から一定時間が経過するまでは、他方のスイッチより出力される操作信号の受付けを禁止する(ステップF1〜F3,R1〜R3)。したがって、ユーザが一方のスイッチを操作した際に、他方のスイッチも誤って操作したような場合には、前者の操作信号が少しでも先に検出されれば後者の操作信号は無効となり、ユーザが意図しない操作が発生することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転スイッチより出力される操作信号と、この回転スイッチによる操作対象を切り替えるため、押圧操作される1つ以上の押圧スイッチより出力される操作信号とを処理するスイッチ信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用の空調装置やオーディオ装置、ナビゲーション装置等の操作スイッチは、計器盤(インストルメントパネル)の中央部に集中して配置される傾向にある。ところが、これらのスイッチは、限られた狭いスペースに数多く配置されているため、誤って別のスイッチを操作してしまったり、近接している隣のスイッチに触れてしまうことがあり、非常に操作し辛い状態にある。
【0003】
このような問題を解決する技術として、例えば特許文献1には、ダイアルスイッチのノブを、回転操作のみならず押圧操作も可能となる様に構成したものが開示されている。そして、押圧操作によりノブの回転による操作の対象を切り替え、操作対象が切り替わったことを、ノブの表面に配置した表示器で示すようにしている。また、特許文献2には、ダイアルリングの内側領域に複数の操作ボタンを設け、これらのボタンを押圧操作することでリングの操作対象を切り替え、各操作対象の状態を示す表示器を、リングの外側に沿って配置した構成が開示されている。
【特許文献1】特開2003−54290号公報
【特許文献2】特開2006−59642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示されている技術は、操作状態の視認性については検討されているが、誤操作に関する検討が不足している。例えば特許文献1では、特許文献2においても指摘されているが、ノブを回転操作する際に、ユーザによる力の加え方によっては、押圧操作も検出してしまう可能性がある。また、特許文献2では、回転操作と押圧操作とを行う操作子を分離しているが、それらが隣接して配置されていることに変わりなく、ユーザが不用意に双方を同時に操作してしまう可能性がある。
【0005】
上述したような構成で、2種類の操作信号がほぼ同時に発生した場合、どのような結果となるかは、制御系がそれらをどのようなタイミングで処理するかに依る。したがって、ユーザが回転操作を行う際に誤って押圧操作もしてしまった場合、本来の意図は、現機能に対する状態を回転操作により変化させるものであるが、処理タイミングによっては先に押圧操作を検出し、切り替わった機能に対して回転操作による状態変化が生じることになり、ユーザが意図したものと異なる操作結果になってしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転スイッチと押圧スイッチとが近接して配置されている場合に、誤操作を防止できるスイッチ信号処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のスイッチ信号処理装置によれば、回転スイッチと、押圧スイッチとの何れか一方が操作されると、その時点から一定時間が経過するまでは、他方のスイッチより出力される操作信号の受付けを禁止する。したがって、ユーザが一方のスイッチを操作した際に、他方のスイッチも誤って操作したような場合には、前者の操作信号が少しでも先に検出されれば後者の操作信号は無効となるので、ユーザが意図しない操作が発生することを防止できる。
【0008】
請求項2記載のスイッチ信号処理装置によれば、回転スイッチ側と押圧スイッチ側とのそれぞれにカウンタを配置し、各カウンタを、他方のスイッチからの操作信号が先に検出されると、対応するスイッチからの操作信号の受付けを禁止する一定時間のカウントを開始すると共に、対応するスイッチからの操作信号が先に検出されるとカウント動作の開始が禁止されるように構成する。したがって、スイッチ信号の処理を、カウンタを中心とするロジック回路で行うことができる。
【0009】
請求項3記載のスイッチ信号処理装置によれば、カウンタを、初期状態で前記一定時間をカウントしたデータを出力しており、他方のスイッチからの操作信号が先に検出されるとカウント動作をリセットスタートさせて、一定時間をカウントするとカウント動作を停止するように構成する。したがって、何れのスイッチの操作も行われていないデフォルトの状態から対応するスイッチが操作されると、その操作信号を直ちに受付け可能にすることができる。そして、他方のスイッチの操作信号が先に検出された場合はカウント動作をリセットスタートさせて、一定時間の禁止期間を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1及び図2を参照して説明する。図2は、本発明のスイッチシステムの構成を示すもので、ロータリスイッチ1(回転スイッチ)と、3つのタクトスイッチ2a,2b,2c(押圧スイッチ)と、これらのスイッチ1及び2より出力される操作信号を処理するマイクロコンピュータ3(マイコン,スイッチ信号処理装置)とで構成されている。
【0011】
ロータリスイッチ1は、回転操作式の操作子を備えており、その操作子の回転方向に応じて互いの位相関係が異なる2相信号を、操作信号として出力する。タクトスイッチ2a,2b,2cは押圧式の操作子を備えており、その操作子が押圧操作されている期間だけレベルが変化する操作信号を出力する。
マイコン3は、CPU4,ROM5,RAM6,タイマ7,入力部8を備えており、これらがアドレス及びデータバス9を介して相互に接続されている。入力部8は、マイコン3のI/Oポートであり、スイッチ1及び2より出力される操作信号を、バス9を介してCPU4に出力する。
【0012】
スイッチ1及び2は、例えば車両に搭載されるエアコンディショナの操作入力を行うものであり、車室内のインストルメントパネルに配置されている。ユーザがタクトスイッチ2a,2b,2cをそれぞれ押圧操作することで、ロータリスイッチ1の操作対象が、温度設定(TEMP),送風の吹出し位置(風向き)を顔/足/フロントガラスなどに切り替えるモード(MODE),風量(FAN)に切り替わるようになっている。そして、ユーザがロータリスイッチ1を回転操作すると、その操作量に応じて各操作対象の設定値が変化する。すなわち、「温度設定」の場合は、設定温度の高低を変化させ、「モード」の場合は上記のように送風吹出し位置を切り替え、「風量」の場合は送風ファンの回転速度,送風量を切り替える。
【0013】
マイコン3は、上記の機能を実現するため、CPU4がスイッチ1及び2の操作信号を、入力部8を介して走査(スイッチスキャン)することで受け付けて、ROM5に記憶された制御プログラムに応じて各操作信号を処理し、図示しないエアコンディショナの本体に制御指令を出力するようになっている。また、マイコン3は、タクトスイッチ2a,2b,2cの何れかが操作されたことを認識すると、図示しない出力部を介して、各スイッチ2の操作子に配置されているLED10a,10b,10cの点灯制御も行うようになっている(図2ではLED10aが点灯した状態をハッチングで示している)。
【0014】
次に、本実施例の作用について図1も参照して説明する。図1は、CPU4が行うスイッチ信号処理を示すフローチャートであり、(a)はタクトスイッチ2側が操作された場合のロータリスイッチ1の機能切換に関する処理、(b)はロータリスイッチ1側が操作された場合の操作信号のカウント処理に関するものである。
【0015】
図1(a)において、CPU4は、タクトスイッチ2a〜2cの何れかが操作されると、その時点で、「機能切り替え禁止時間カウンタ」が動作中(カウント中)であるか否かを判断する(ステップF1)。「機能切り替え禁止時間カウンタ」は、後述する図2(b)側の処理でカウント動作を開始するカウンタである。ステップF1において「禁止時間カウンタ」が動作中であれば(YES)そのまま処理を終了し、タクトスイッチ2a〜2cの操作信号を受け付けることなく無効化する。
一方、ステップF1において「機能切り替え禁止時間カウンタ」が動作していなければ(NO)、タクトスイッチ2a〜2cの操作信号を受け付けて認識し、ロータリスイッチ1が操作された場合の操作量に応じて、「温度設定」,「モード」,「風量」の何れを変化させるかを決定する(ステップF2)。
【0016】
それから、CPU4は、ロータリスイッチ1が操作された場合に、その検出,すなわち、操作信号の受付を禁止する期間に相当する時間のカウントをタイマ7に開始させる(ステップF3)。この場合、上記の禁止時間は、例えば数100μs〜数ms程度の時間とし、当該時間が経過すれば、ロータリスイッチ1の操作信号は受付可能となる。また、タイマ7がCPU4にタイマ割込みを発生させるシステムタイマである場合、ステップF3では、タイマ割込みの発生数をカウントしても良い。続くステップF4では、ロータリスイッチ1の回転操作量をカウントするためのカウントデータ等、関連データをクリアして、切り替わり前の機能に対するカウントデータを消去し、処理を終了する。
【0017】
図1(b)において、CPU4は、ロータリスイッチ1が操作されると、その時点で、「ロータリSW切り替え禁止時間カウンタ」が動作中であるか否かを判断する(ステップR1)。「ロータリSW切り替え禁止時間カウンタ」は、前述したステップF3でカウント動作を開始するカウンタである。ステップR1において「禁止時間カウンタ」が動作中であれば(YES)そのまま処理を終了し、ロータリスイッチ1の操作信号を受け付けることなく無効化する。
【0018】
一方、ステップR1において「ロータリSW切り替え禁止時間カウンタ」が動作していなければ(NO)、ロータリスイッチ1の操作信号を受け付けて、2相信号の位相関係(例えば±90度)に応じて回転操作方向、すなわちアップ/ダウンを決定する(ステップR2)。それから、CPU4は、タクトスイッチ2が操作された場合に、その検出,すなわち、操作信号の受付を禁止する期間に相当する時間のカウントをタイマ7に開始させる(ステップR3)。この場合も、上記の禁止時間は数100μs〜数ms程度の時間とする。続くステップR4では、ステップR2での検出結果に応じて、ロータリスイッチ1の回転操作量をカウントして記録する。
【0019】
ここで、図2に示す状態から、ユーザがタクトスイッチ2cを操作してロータリスイッチ1の機能を「TEMP」から「FAN」に切り替えようとした際に、誤ってロータリスイッチ1にも接触して双方のスイッチがほぼ同時に操作された場合(ケースA)について、従来構成と本実施例の構成とで状態がどのように変化するかを説明する。
【0020】
(A1)ロータリスイッチ1の変化を先に認識した場合
<従来構成>
この場合、ロータリスイッチ1の機能が「TEMP」のままで、エアコンの温度設定を変化させた後に、機能が「FAN」に切り替わるので、ユーザは、意図しない温度設定の変化を元に戻すため、タクトスイッチ2aを操作して機能を「TEMP」にし、ロータリスイッチ1を操作して温度設定を元に戻してから、タクトスイッチ2cを操作する必要がある。したがって、計3回のスイッチ操作が必要となる。
【0021】
<スイッチ信号処理装置3の場合>
ロータリスイッチ1の機能が「TEMP」のままで、エアコンの温度設定を変化させた後に、タクトスイッチ2の操作信号の受付が一定時間禁止されるから、機能が「FAN」に切り替わることはない。ユーザが、上記と同様に温度設定の変化を元に戻すには、そのままロータリスイッチ1を操作して温度設定を元に戻してから、タクトスイッチ2cを操作すれば良いから、計2回のスイッチ操作だけで良い。
【0022】
(A2)タクトスイッチ2cの変化を先に認識した場合
<従来構成>
この場合、ロータリスイッチ1の機能が「FAN」に切り替わった後に、ロータリスイッチ1の操作が認識されてエアコンの風量が変化する。しかし、ロータリスイッチ1の操作量が、ユーザが後程変化させようと予定していたものではない可能性が高く、或いは、操作方向が逆であった場合も想定される。したがって、例えばユーザは風量を減少させることを予定していたが、その意に反して風量が大きく増加した場合には、ユーザが驚くこともあり得る。
【0023】
<スイッチ信号処理装置3の場合>
ロータリスイッチ1の機能が「FAN」に切り替わった後、一定時間はロータリスイッチ1の操作が認識されないため、風量は変化せず、結果としてユーザが意図した操作のみが反映されることになる。
【0024】
また、上記と別のケースとして、ロータリスイッチ1の機能が「FAN」の状態から、ユーザがロータリスイッチ1を操作して風量を変化させようとした場合(ケースB)に、誤ってタクトスイッチ2bにも接触して双方のスイッチがほぼ同時に操作された場合について説明する。
【0025】
(B1)タクトスイッチ2bの変化を先に認識した場合
<従来構成>
この場合、ロータリスイッチ1の機能が「MODE」に切り替わってからロータリスイッチ1の操作が認識されるので、「MODE」の状態が例えば「顔」から「フロントガラス」に切り替わってしまう。ユーザは、本来意図した操作を行うため、ロータリスイッチ1を操作して「顔」に戻し、タクトスイッチ2cを操作して機能を「FAN」にしてから、ロータリスイッチ1を操作して「風量」を変化させる必要がある。したがって、計3回のスイッチ操作が必要となる。
【0026】
<スイッチ信号処理装置3の場合>
ロータリスイッチ1の機能が「MODE」に切り替わった後、一定時間はタクトスイッチ2の操作が認識されないため、設定が「顔」から「フロントガラス」に切り替わることがなく、ユーザは、タクトスイッチ2cを操作して機能を「FAN」にしてから、ロータリスイッチ1を操作して風量を変化させれば良い。したがって、計2回のスイッチ操作だけで良い。
【0027】
(B2)ロータリスイッチ1の変化を先に認識した場合
<従来構成>
この場合、ロータリスイッチ1の操作によりエアコンの風量を変化させた後に、タクトスイッチ2bの操作を認識して「MODE」が切り替わる。したがって、ユーザが更に風量を変更させようとした場合には、「MODE」が切り替わっているので、タクトスイッチ2cを操作して機能を「FAN」に戻す必要がある。
【0028】
<スイッチ信号処理装置3の場合>
ロータリスイッチ1の機能によりエアコンの風量を変化させた後、一定時間はスイッチ2の操作が認識されないため、機能が「MODE」に切り替わることはなく、結果としてユーザが意図した操作のみが反映される。そして、ユーザが更に風量を変更させようとした場合には、そのままロータリスイッチ1を操作すれば良い。
【0029】
以上のように本実施例によれば、マイコン3のCPU2は、ロータリスイッチ1と、タクトスイッチ2との何れか一方が操作されると、その時点から一定時間が経過するまでは、他方のスイッチより出力される操作信号の受付けを禁止するので、ユーザが一方のスイッチを操作した際に、他方のスイッチも誤って操作したような場合には、前者の操作信号が少しでも先に検出されれば後者の操作信号は無効となるので、ユーザが意図しない操作が発生することを防止できる。
そして、マイコン3による上記の信号処理は、車室内のインストルメントパネルのように、スイッチ1及び2が狭い領域に近接して配置されており、誤操作が発生し易い環境下では極めて有効である。
【0030】
(第2実施例)
図3は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。第2実施例は、第1実施例ではCPU3がソフトウエアで実現した機能を、ハードウエアロジックにより実現した場合である。図3(a)に示すように、スイッチ1及び2によって出力される操作信号は、スイッチ信号処理装置11に与えられている。
スイッチ信号処理装置11は、ロータリスイッチ1について操作が行われたことを検出するアップ/ダウン検出部12,タクトスイッチ2a〜2bついて操作が行われたことを検出するエッジ検出部13,それぞれに対応して配置されるタイマ14R,14F及びスイッチ制御部15で構成されている。
【0031】
アップ/ダウン検出部12は、例えばロータリスイッチ1より出力される2相信号のエッジが、所定の間隔未満で出力されている場合にアクティブ(ハイ)となるスイッチ検出信号をタイマ14R,14Fに出力する。また、エッジ検出部13は、タクトスイッチ2a〜2cの何れかが操作されることで、操作信号のレベルが変化した場合のエッジによってアクティブ(ハイ)となるワンショットパルスを、スイッチ検出信号をタイマ14R,14Fに出力する。
タイマ14R,14Fは、アップ/ダウン検出部12,エッジ検出部13よりそれぞれ出力されるスイッチ検出信号を共に受けて動作し、スイッチ変化確定信号をスイッチ制御部15に出力する。
【0032】
スイッチ制御部15は、ロータリスイッチ1より出力される2相信号と、タクトスイッチ2a〜2cより出力される操作信号とが別途直接与えられ、ロータリスイッチ1の回転操作量に応じたデータをアップ/ダウンカウントして保持すると共に、タクトスイッチ2a〜2cの操作信号に応じて、ロータリスイッチ1の回転操作を反映させる制御対象を選択するように、ハードウエアロジックにより構成されている。
【0033】
図3(b)は、タイマ14の内部構成を示すものである。タイマ14R,14Fは同じ構成であるが、入出力信号に関してはタイマ14Rについて説明する。ANDゲート16は、アップ/ダウン検出部12からのスイッチ検出信号を受けて、スイッチ変化確定信号をスイッチ制御部15に出力すると共に、同信号をNOTゲート17を介してもう1つのANDゲート18にも出力する。ANDゲート18の他方の入力端子には、エッジ検出部13からのスイッチ検出信号が与えられており、ANDゲート18の出力信号は、カウンタ19にクリア信号として与えられている。
【0034】
カウンタ19は、クリア信号がアクティブになるとリセットスタートして、内部のクロックによりロータリスイッチ1の検出禁止時間(第1実施例と同様に、数100μs〜数ms程度の時間)を計測する。また、カウンタ19は、初期状態としても上記検出禁止時間のカウントを完了した場合のデータを出力し続けるよう構成されている。
カウンタ19のカウントデータは、比較器(マグニチュードコンパレータ)20に与えられ、上記検出禁止時間に相当するデータが設定されているレジスタ21のデータと比較される。比較器20は、両者のデータが一致すると、一致信号(比較結果)をANDゲート16の他方の入力端子に出力する。
【0035】
次に、第2実施例の作用について説明する。スイッチ1,2の何れも操作されていないデフォルトの状態では、検出部12,13からのスイッチ検出信号は何れもインアクティブであるから、スイッチ変化確定信号もインアクティブとなっている。また、ANDゲート18の出力信号もロウレベルであるから、カウンタ19のクリア信号もインアクティブである。ただし、カウンタ19は、初期状態で検出禁止時間のカウント完了データを出力しているので、比較器20は、一致信号をANDゲート16に出力している。
【0036】
<ロータリスイッチ1が先に操作された場合>
上記の状態から、ロータリスイッチ1が回転操作されると、ANDゲート16の出力信号が直ちにハイレベルとなり、スイッチ変化確定信号がアクティブとなる。したがって、スイッチ制御部15は、ロータリスイッチ1の回転操作量に応じたカウントデータを生成可能となる。この場合のロータリスイッチ1による操作対象(機能)は、以前に操作されたタクトスイッチ2a〜2cに対応したものとなる。
【0037】
また、上記の場合、ロータリスイッチ1側のスイッチ変化確定信号がアクティブになると、ANDゲート18の入力端子の一方がロウレベルになる。したがって、その後にエッジ検出部13よりタクトスイッチ2のスイッチ検出信号が出力されても、カウンタ19のクリア信号は出力されず、阻止される。したがって、ロータリスイッチ1が先に操作された後、一瞬遅れてタクトスイッチ2a〜2cが操作されたとしても、ロータリスイッチ1による操作対象が途中で切り替わることはない。
【0038】
<タクトスイッチ2が先に操作された場合>
デフォルト状態では、スイッチ変化確定信号がインアクティブであるから、ANDゲート18の入力端子の一方はハイレベルとなっている。この状態からタクトスイッチ2a〜2cの何れかが先に操作されて、エッジ検出部13よりスイッチ検出信号が出力されると、カウンタ19のクリア信号が出力される。すると、カウンタ19は、カウント動作をリセットスタートさせるので、比較器20は一致信号を出力しなくなる。
尚、この場合、タイマ14F側では、タクトスイッチ2に対応するスイッチ変化確定信号がスイッチ制御部15に出力されるので、スイッチ制御部15は、上記確定信号を受けてロータリスイッチ1の操作対象を切り替える。
【0039】
そして、その後にアップ/ダウン検出部12よりロータリスイッチ1のスイッチ検出信号が出力されても、タイマ14RではANDゲート16よりスイッチ変化確定信号は出力されない。故に、タクトスイッチ2a〜2cが先に操作された後、一瞬遅れてロータリスイッチ1が操作されたとしても、操作対象が切り替わった直後にロータリスイッチ1の回転操作量が反映されてしまい、ユーザが意図しない操作量が与えられることはない。
【0040】
以上のように第2実施例によれば、ロータリスイッチ1側とタクトスイッチ2側とのそれぞれにカウンタ19を備えたタイマ14R,14Fを配置し、カウンタ19を、他方のスイッチからの操作信号が先に検出されると、対応するスイッチからの操作信号の受付けを禁止する一定時間のカウントを開始すると共に、対応するスイッチからの操作信号が先に検出されるとカウント動作の開始が禁止されるようにした。したがって、スイッチ信号の処理を、カウンタ19を中心とするロジック回路で行うことができる。
【0041】
また、カウンタ19を、初期状態で禁止時間のカウントを完了したデータを出力しており、他方のスイッチからの操作信号が先に検出されるとカウント動作をリセットスタートさせて、禁止時間のカウントを完了すると動作を停止するように構成したので、何れのスイッチの操作も行われていないデフォルトの状態から対応するスイッチが操作されると、その操作信号を直ちに受付け可能にすることができる。そして、他方のスイッチの操作信号が先に検出された場合はカウント動作をリセットスタートさせて、一定時間の禁止期間を生成することができる。
【0042】
(第3実施例)
図4は本発明の第3実施例を示すものであり、第1実施例と異なる部分について説明する。第3実施例では、第1実施例におけるタクトスイッチ2a〜2cに替えて、1つのタクトスイッチ22(押圧スイッチ)だけを設け、タクトスイッチ22をオン操作すると、ロータリスイッチ1の操作対象が順次切り替わるように構成されている。この場合、マイクロコンピュータ3AにおけるCPU4Aの制御プログラムが、そのように切り替え制御を行うように対応している。
【0043】
そして、第1実施例では各タクトスイッチ2a〜2cの操作子に配置されていたLED10a〜10cに替えて、LED23a〜23cがタクトスイッチ22と独立して配置されており、CPU4Aは、タクトスイッチ22がオン操作される毎に、ロータリスイッチ1の機能切替えに対応して、LED23a〜23cの点灯状態を順次切り替える。以上のように構成される第3実施例についても、第1実施例の制御内容を同様に適用することができる。
【0044】
本発明は上記し且つ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形または拡張が可能である。
押圧スイッチの数は、2個または4個以上であっても良い。
第2実施例の構成を、第1実施例の構成と組み合わせても良い。すなわち、ロータリスイッチ1の操作量に応じたデータのアップ/ダウンカウントはCPUがソフトウエアで行うようにして、各タイマ14R、14Fが出力するスイッチ変化確定信号を、スイッチ制御部15に替えてCPUに与えても良い。
車室内のインストルメントパネルに配置されるスイッチに限ることなく、回転スイッチと1つ以上の押圧スイッチとを組み合わせて、前者の操作対象を後者によって切り替えるものであれば、例えばAV(オーディオ・ヴィジュアル)機器やその他の家電製品,リモコンなど、広く適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施例であり、CPUが行うスイッチ信号処理を示すフローチャート
【図2】スイッチシステムの構成を示す図
【図3】本発明の第2実施例であり、(a)は図2相当図、(b)はタイマの内部構成を示す図
【図4】本発明の第3実施例を示す図2相当図
【符号の説明】
【0046】
図面中、1はロータリスイッチ(回転スイッチ)、2a,2b,2cはタクトスイッチ(押圧スイッチ)、3,3Aはマイクロコンピュータ(スイッチ信号処理装置)、11はスイッチ信号処理装置、14R,14Fはタイマ、19はカウンタ、22はタクトスイッチ(押圧スイッチ)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作される操作子を有する回転スイッチより出力される操作信号と、前記回転スイッチによる操作対象を切り替えるため、押圧操作される操作子を有する1つ以上の押圧スイッチより出力される操作信号とを処理するスイッチ信号処理装置において、
前記回転スイッチと、前記押圧スイッチとの何れか一方が操作されると、その時点から一定時間が経過するまでは、他方のスイッチより出力される操作信号の受付けを禁止することを特徴とするスイッチ信号処理装置。
【請求項2】
前記回転スイッチ側と、前記押圧スイッチ側とのそれぞれに配置され、
他方のスイッチからの操作信号が先に検出されると、対応するスイッチからの操作信号の受付けを禁止する一定時間のカウントを開始すると共に、
対応するスイッチからの操作信号が先に検出されると、前記カウント動作の開始が禁止されるカウンタを備えて構成されることを特徴とする請求項1記載のスイッチ信号処理装置。
【請求項3】
前記カウンタは、初期状態で前記一定時間をカウントしたデータを出力しており、他方のスイッチからの操作信号が先に検出されるとカウント動作をリセットスタートさせ、前記一定時間をカウントするとカウント動作を停止するように構成されることを特徴とする請求項2記載のスイッチ信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−73546(P2010−73546A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240906(P2008−240906)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】