説明

スイッチ装置

【課題】ロータリースイッチおよびスライドスイッチにおいて、接点金具の摺動による回路基板上のレジスト削りや接点金具の破損を防止する。
【解決手段】操作つまみ13のつまみ部131に、押されて移動することにより、スライダ板14に取り付けられている回転軸16を押し下げ、スライダ板14の接点金具15が回路基板11の被選択接点と非接触となるように、回路基板11に対してスライダ板14を離反させる押し下げカム193を有する押し込みスイッチ19を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テスタ(回路計)などにおいて、その測定レンジや測定機能の切替装置として搭載されるスイッチ装置に係り、さらに詳しく言えば、可動接点金具が回路基板上を摺動することに起因する基板レジストの削り粉等の発生や可動接点金具の破損等を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電圧値、電流値および抵抗値等を測定するテスタやその他の電気測定器等には、その測定レンジや測定機能等の切替装置として、スライドスイッチやロータリースイッチが多く用いられている。
【0003】
このうち、スライドスイッチは、回路基板上に形成されている複数の導通接点の上を滑るように動く可動接点金具を備え、操作つまみを直線的に移動させることにより、可動接点金具を回路基板上の選択した所定の導通接点に接触させる。
【0004】
また、ロータリースイッチは、円運動をする可動接点金具と、回路基板上に形成されている複数の導通接点から構成され、操作つまみを回転させることにより、その回転角度によって可動接点金具を回路基板上の選択した所定の導通接点に接触させる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図10および図11に、例えば、テスタに搭載されている従来のロータリースイッチの一例を示す。このロータリースイッチ1は、テスタのケース本体に回動可能に保持されており、ケース本体内には、回路基板2などの構成部品が配設されている。回路基板2上には、共通接点と、共通接点の周りに配置された複数の導通接点(いずれも図示省略)とが形成されている。
【0006】
この例では、作図の都合上、テスタのケース本体の上ケース3の一部のみを示して説明しているが、ケース本体は、上ケース3と図示しない下ケースとでほぼ直方体形状に構成されており、上ケース3には、ロータリースイッチ1以外にも表示部やファンクション選択部等が配置されてよい。
【0007】
この例において、ロータリースイッチ1は測定レンジ切替用であり、上ケース3の表面に円盤状のレンジ切替部4を備えている。レンジ切替部4は、上ケース3の円形開口3aに回転自在に嵌合されている。
【0008】
レンジ切替部4には、その径方向に跨がるように突設されたほぼ矩形状の操作つまみ4aが一体的に設けられており、この操作つまみ4aを指で挟んで回転させることにより、所望とする測定レンジ(導通接点)が選択される。
【0009】
上ケース3内において、回路基板2上には、その導通接点に接触する可動接点金具6を有するスライダ板5が配設されている。可動接点金具6には、通常、板バネ材が用いられる。
【0010】
この例において、スライダ板5は、レンジ切替部4の回転に伴って回転するロータ7と一体的に設けられており、ロータ7は、レンジ切替部4の軸心位置に配設された支軸8に軸支されるようになっている。
【0011】
なお、図示しないが、ロータ7の周りには、回路基板2からのスライダ板5の浮き上がりを防止するため、スライダ板5を回路基板2に向けて付勢する圧縮コイルバネが設けられている。
【0012】
測定レンジの切り替えは、操作つまみ4aを介してレンジ切替部4を所定角度回転させることにより行われるが、この回転に伴って、可動接点金具6は回路基板2に弾性的に接触した状態で摺動する。
【0013】
そのため、接点金具6が回路基板2上のレジスト等を削ってしまうことがあり、この削り粉によって接触抵抗が増大し、最悪の場合には、絶縁状態となることもある。また、接点金具6が回路基板2上のパターン段差に引っかかり、破損するということもあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−101745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の課題は、接点金具の移動時には、接点金具を回路基板と非接触として、上記した削り粉の発生や接点金具の破損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、複数の被選択接点が形成されている回路基板と、上記被選択接点のいずれかに選択的に接触する板バネ材からなる接点金具を有し上記回路基板と対向して平行に配置されるスライダ板と、上記スライダ板を上記回路基板に対して所定方向に移動させる操作つまみとを含み、上記操作つまみにて上記スライダ板を所定方向に移動させることにより、上記接点金具を所望とする上記被選択接点に接触させるスイッチ装置において、上記操作つまみには、上記スライダ板を所定方向に移動させる際に、上記接点金具を上記被選択接点と非接触となるように、上記回路基板に対して上記スライダ板を離反させる昇降手段が設けられていることを特徴としている。
【0017】
請求項2に係る発明は、上記請求項1において、当該スイッチ装置がロータリースイッチで、上記操作つまみは、回転可能なつまみ本体と、上記つまみ本体に対して同軸で、かつ、軸線方向に可動である回転軸とを有し、上記スライダ板が上記回転軸に一体的に取り付けられており、上記昇降手段が、上記つまみ本体のつまみ部に設けられた押し込みスイッチであり、上記押し込みスイッチには、その押し込み操作に伴って上記回転軸に作用し、上記回転軸を所定方向に移動させて上記回路基板に対して上記スライダ板を離反させるカムが設けられていることを特徴としている。
【0018】
請求項3に係る発明は、上記請求項2において、上記被選択接点が上記回路基板の下面側に配置されており、上記回転軸が上記つまみ本体側から上記回路基板を貫通して上記回路基板の下面側にまで延びていて、上記スライダ板が上記回路基板の下面と対面するように上記回転軸の下端側に取り付けられているとともに、上記スライダ板の接点金具が上記回路基板に弾性的に接触するように上記回転軸を押し上げる方向に付勢するバネ手段を備え、上記押し込みスイッチは、上記つまみ本体の回転軸線に対してほぼ直交する方向に移動可能であり、その押し込み時に上記カムにより上記回転軸が上記バネ手段の付勢力に抗して押し下げられることを特徴としている。
【0019】
請求項4に係る発明は、上記請求項3において、上記カムは上記回転軸の頭部に当接する押し下げ傾斜面を有する押し下げ傾斜カムよりなることを特徴としている。
【0020】
請求項5に係る発明は、上記請求項2において、上記被選択接点が上記回路基板の上面側に配置されており、上記スライダ板が上記回路基板の上面と対面するように上記回転軸に取り付けられているとともに、上記スライダ板の接点金具が上記回路基板に弾性的に接触するように上記回転軸を押し下げる方向に付勢するバネ手段を備え、上記押し込みスイッチは、上記つまみ本体の回転軸線に対してほぼ直交する方向に移動可能であり、その押し込み時に上記カムにより上記回転軸が上記バネ手段の付勢力に抗して押し上げられることを特徴としている。
【0021】
請求項6に係る発明は、上記請求項5において、上記カムは押し上げ傾斜面を有する押し上げカムよりなり、上記回転軸側には上記押し上げ傾斜面に摺接する従動係合面が形成されていることを特徴としている。
【0022】
請求項7に係る発明は、上記請求項5または6において、上記カムが、上記つまみ本体のつまみ部に左右一対として配置されていることを特徴としている。
【0023】
請求項8に係る発明は、上記請求項1において、当該スイッチ装置が上記操作つまみを直線的に移動させるスライドスイッチで、上記被選択接点が上記回路基板の上面側に配置されており、上記スライダ板が上下動可能として上記回路基板の上面と対面するように上記操作つまみに支持されているとともに、上記スライダ板の接点金具が上記回路基板に弾性的に接触するように上記スライダ板を押し下げる方向に付勢するバネ手段を備え、上記昇降手段が、上記つまみ本体のつまみ部に左右一対として設けられた押し込みスイッチであり、上記各押し込みスイッチと上記スライダ板との間に、上記各押し込みスイッチにかけられる押し込み力を上記スライダ板の持ち上げ力に変換する力学的な運動変換手段が設けられており、上記各押し込みスイッチにかけられる押し込み力により、上記運動変換手段を介して上記スライダ板が上記バネ手段の付勢力に抗して持ち上げられることを特徴としている。
【0024】
請求項9に係る発明は、上記請求項8において、上記運動変換手段は、上記各押し込みスイッチにより回転する上記操作つまみ側の回転体と、上記回転体の所定の偏心箇所と上記スライダ板との間を連結する連結軸とを備える回転−直線運動変換機構からなることを特徴としている。
【0025】
請求項10に係る発明は、上記請求項8において、上記運動変換手段は、上記各押し込みスイッチ側に形成された持ち上げ傾斜面を有する持ち上げ傾斜カムと、上記持ち上げ傾斜面に摺接するように上記スライダ板側に形成された従動係合面との組み合わせからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、操作つまみに、スライダ板を所定方向に移動させる際に、スライダ板に設けられている接点金具を回路基板上に形成されている被選択接点と非接触となるように、回路基板に対してスライダ板を離反させる昇降手段が設けられていることにより、接点金具の摺動による削り粉の発生や、接点金具が回路基板上のパターン段差に引っかかることによる接点金具の破損等を防止することができる。
【0027】
また、昇降手段が押し込みスイッチとして、つまみ本体のつまみ部に設けられていることにより、ロータリースイッチおよびスライドスイッチのいずれの場合においても、操作つまみを指で挟むという自然な指の動きの中で押し込みスイッチを操作することができるため、操作するうえできわめて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るロータリースイッチを示す斜視図。
【図2】上記ロータリースイッチの常態での内部構造を示す断面図。
【図3】上記ロータリースイッチの操作時における内部構造を示す断面図。
【図4】本発明の別の実施形態に係るロータリースイッチを示す平面図。
【図5】上記別の実施形態に係るロータリースイッチの常態での内部構造を示す断面図。
【図6】上記別の実施形態に係るロータリースイッチの操作時における内部構造を示す断面。
【図7】本発明の一実施形態に係るスライドスイッチを示す斜視図。
【図8】上記スライドスイッチの常態での内部構造を示す断面図。
【図9】上記スライドスイッチの操作時における内部構造を示す断面図。
【図10】従来のロータリースイッチの一例を示す斜視図。
【図11】従来のロータリースイッチの内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、図1ないし図9により、本発明のいくつかの実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
まず、図1ないし図3により、本発明の第1実施形態に係るロータリースイッチ10について説明する。
【0031】
このロータリースイッチ10は、テスタ等のケース本体に回転可能に保持されており、ケース本体内には、回路基板11等の構成部品が配置されている。なお、図1ないし図3には、ケース本体の上ケース12のみが示されているが、ケース本体は、上ケース12と図示しない下ケースとでほぼ直方体形状に構成されている。
【0032】
回路基板11は、上ケース12の内部に形成されている取付ボス122にほぼ水平となるようにネジ止めされているが、この実施形態において、回路基板11の下面11a側に、共通接点と、共通接点の周りに配置された複数の被選択接点(いずれも図示省略)とが所定のパターンで形成されている。被選択接点は固定接点であり、上記従来例で説明した導通接点に相当する。
【0033】
このロータリースイッチ10は、円盤状に形成された操作つまみ(つまみ本体)13を有し、操作つまみ13は、上ケース12のパネル面に形成されている円形開口部121内に回転自在に嵌合されている。図示を省略しているが、上ケース12と操作つまみ13との間には、操作つまみ13の所定回転角度ごとにクリック力を発生するクリック力発生機構が設けられている。
【0034】
操作つまみ13には、その径方向に跨がるように突設された矩形状のつまみ部131が一体的に設けられており、操作つまみ13を回転させる際、つまみ部131の両側面131a,131bが例えば親指と人差し指とにより挟まれる。
【0035】
操作つまみ13は、同操作つまみ13と同軸で、かつ、その軸線方向(図2において上下方向)に移動可能な回転軸(操作軸)16を備えている。操作つまみ13と回転軸16は、例えばスプライン嵌合により連結され、回転軸16は、操作つまみ13とともに回転するが、操作つまみ13に対して軸線方向(上下方向)には移動可能である。
【0036】
回転軸16の下端は、回路基板11に穿設されている開口部11cを貫通して回路基板11の下面11a側にまで延びている。
【0037】
この第1実施形態では、回路基板11の下面11a側に被選択接点が形成されていることから、スライダ板14は、回路基板11の下面11a側に配置され、回転軸16の下端側に一体的に取り付けられている。
【0038】
これにより、操作つまみ13の回転は、回転軸16を介してスライダ板14に伝達される。スライダ板14には、回路基板11の被選択接点に弾性的に接触する板バネ材からなる可動接点としての接点金具15が設けられている。
【0039】
このロータリースイッチ10は、スライダ板14を回路基板11の下面11a側に押し付けるバネ手段を備えている。この実施形態において、上記バネ手段は、回転軸16の上端側に形成されているワッシャ状のストッパ161と回路基板11との間で、回転軸16の周りに配置された圧縮コイルバネ18からなる。
【0040】
本発明において、ロータリースイッチ10は、操作つまみ13を回転させる際、スライダ板14を回路基板11の下面11aから離反させて、回路基板11に対して接点金具15を非接触とするスライダ板14の昇降手段を備える。
【0041】
この実施形態において、上記昇降手段は、つまみ部131の片側の例えば側面131a側に設けられた押し込みスイッチ19を含む。
【0042】
押し込みスイッチ19は、操作つまみ13の回転軸線に対してほぼ直交する方向に移動可能であり、その押し込み操作面191が側面131aに露出する態様でつまみ部131に移動可能に支持されている。詳細には図示しないが、つまみ部131には、押し込みスイッチ19の移動方向を案内するガイド部材が設けられている。
【0043】
押し込みスイッチ19は、回転軸16の頭部162の上方に配置される主軸192を有し、主軸192の下面側には、押し込みスイッチ19を押し込む操作に伴って、回転軸16を圧縮コイルバネ18の付勢力に抗して押し下げる傾斜カム193が形成されている。
【0044】
傾斜カム193は、押し込みスイッチ19が図2の右方向に押し込まれる際、回転軸16の頭部162に当接して回転軸16を下方に移動させる押し下げ傾斜面193aを備えるが、その一方で、傾斜カム193は、押し込みスイッチ19が自由状態(指で押さえられていない無負荷状態)のときには、圧縮コイルバネ18による上方への付勢力の反作用により、図2に示すように、回転軸16の頭部162から外れた位置に保持される。
【0045】
動作の一例について説明すると、操作つまみ13が所定の回転位置にある場合には、上記し、また、図2に示すように、スライダ板14は圧縮コイルバネ18による上方への付勢力により回路基板11の下面11a側に付勢され、かつ、接点金具15自らの弾性により、接点金具15が所定の被選択接点に接触している。
【0046】
上記の状態から、例えば測定レンジを切り替えるときには、つまみ部131が作業者の指(例えば、親指と人差し指)により挟まれるが、その挟み操作に伴って、押し込みスイッチ19が図2の右方向に押し込まれると、傾斜カム193が回転軸16の頭部162に当接し、図3に示すように、その押し下げ傾斜面193aによって回転軸16が圧縮コイルバネ18の付勢力に抗して押し下げられる。
【0047】
これに伴って、スライダ板14も回路基板11から離れる方向に移動(降下)し、被選択接点に対して接点金具15が非接触の状態になる。
【0048】
この状態で、操作つまみ13を上記クリック力発生機構によるクリック力を発生させながら所定方向に回転させ、所望とする測定レンジの位置で、指をつまみ部131から離すと、圧縮コイルバネ18の上方への付勢力により、スライダ板14が回路基板11に向けて移動(上昇)し、接点金具15が上記測定レンジに対応した被選択接点に接触し導通がとられる。
【0049】
このように、本発明によれば、操作つまみ13の回転時には、接点金具15を回路基板11上のレジストや回路パターンと接触させることがないため、接点金具片15のレジストの削りによる接触不良やパターンへの接触による接点金具片15の損傷を防ぐことができる。
【0050】
また、操作つまみ13のつまみ部131を指で挟むという自然な指の動きの中で押し込みスイッチ19を操作することができるため、操作するうえできわめて便利でもある。
【0051】
次に、図4〜図6により、本発明の第2実施形態に係るロータリースイッチ20について説明する。
【0052】
このロータリースイッチ20においても、上記第1実施形態と同様に、円盤状に形成された操作つまみ(つまみ本体)23を有し、操作つまみ23は、ケース本体の上ケース22に形成されている円形開口部221内に回転自在に嵌合されている。操作つまみ23には、上記つまみ部131と同様のつまみ部231が一体的に設けられている。
【0053】
図示を省略しているが、上ケース22と操作つまみ23との間には、操作つまみ23の所定回転角度ごとにクリック力を発生するクリック力発生機構が設けられている。
【0054】
上記第1実施形態と同じく、回路基板21は、上ケース22内の取付ボス222にほぼ水平となるようにネジ止めされるが、この第2実施形態では、回路基板21の上面21a側に、共通接点と、共通接点の周りに配置された複数の被選択接点(いずれも図示省略)とが所定のパターンで形成されている。
【0055】
この第2実施形態では、回路基板21の上面21a側に被選択接点が形成されていることから、スライダ板24は、回路基板11の上面21a側に配置される。スライダ板24内には、被選択接点に対する可動接点としての板バネ材からなる接点金具25が設けられている。
【0056】
スライダ板24は、その上面側における中央部分(回転中心部分)に回転軸26を備えている。回転軸26は、つまみ部231内にまで延びる長さを有し、この第2実施形態において、回転軸26は、スライダ板24と一体に形成されている。
【0057】
なお、スライダ板24の下面側の中央部分には、回転軸26と同軸で、回路基板21に穿設されている開口部21b内に嵌合するすり割り状に形成された補助回転軸241が一体に設けられている。
【0058】
回転軸26は、縮径された首部(溝部)261と、首部261よりも大径の頭部262とを備えている。詳しくは図示しないが、操作つまみ23のつまみ部231内には、頭部262が嵌合される穴が形成されており、その穴と頭部262は、例えばスプライン嵌合により連結され、回転軸26は、操作つまみ23とともに回転するが、操作つまみ23に対して軸線方向(上下方向)には移動可能である。
【0059】
また、操作つまみ23とスライダ板24との間で、回転軸26の周りには圧縮コイルバネ28が介装されている。この圧縮コイルバネ28により、スライダ板24および回転軸26は、常時、回路基板21側に向けて付勢され、接点金具25が回路基板21の上面21aから浮き上がらないようにされている。
【0060】
このロータリースイッチ20も、操作つまみ23のつまみ部231にスライダ板24の昇降手段としての押し込みスイッチ29を備えるが、上記第1実施形態とは異なり、つまみ部231の側面231a,231bの各々に、押し込みスイッチ29,29が左右一対として設けられ、各側面231a,231bには、作業者の指により操作される押し込み部291,291が露出している。
【0061】
押し込みスイッチ29,29は、操作つまみ23の回転軸線に対してほぼ直交する方向に沿って互いに接近,離反するように移動する。
【0062】
押し込みスイッチ29,29は左右対称形であり、ともに、回転軸26の首部261の溝内に入り込み可能な摺動部292を有し、摺動部292の先端側の上面には、頭部262の下端縁262aに当接する押し上げ傾斜面を有するカム293aが形成されている。
【0063】
すなわち、押し込みスイッチ29,29を互いに接近する方向に移動させると、カム293a,239aが首部261内に入り込んで、頭部262の下端縁(カムの従動係合面)262aに当接して頭部262を押し上げ、これにより、回転軸26を介してスライダ板24が圧縮コイルバネ28の押し下げ付勢力に抗して押し上げられ、回路基板21から離される。
【0064】
その一方で、押し込みスイッチ29,29から指を離して無負荷とすると、圧縮コイルバネ28の押し下げ付勢力により頭部262が下降する。その際、頭部262の下端縁262aにより、カム293a,293aの間隔が広げられ、押し込みスイッチ29,29は当初の位置にまで戻される。
【0065】
このように、第2実施形態に係るロータリースイッチ20においても、操作つまみ23を回転させる際、つまみ部231の両側にある押し込みスイッチ29,29を例えば親指と人差し指とにより押し込むことにより、上記第1実施形態と同じく、接点切り替え時に、接点金具25が回路基板21上のレジストやパターンと接触することがなく、レジストの削り粉による接触不良やパターン接触による接点金具25の損傷を防ぐことができる。
【0066】
次に、図7ないし図9を参照して、本発明に第3実施形態に係るスライドスイッチ30について説明する。
【0067】
このスライドスイッチ30において、操作つまみ33は、テスタ等のケース本体の例えば上ケース32に直線状に形成されているスライド溝321に沿って移動する。
【0068】
なお、図7〜図9には、作図の都合上、テスタのケース本体の上ケース32のみを示しているが、ケース本体は上ケース32と下ケースとでほぼ直方形状に形成されており、ケース本体内の所定位置には回路基板31等が配設されている。
【0069】
回路基板31は、上記各実施形態と同様に、上ケース32内においてほぼ水平に配置されるが、この第3実施形態では、回路基板31の上面31a側に、共通接点および被選択接点(ともに図示しない)が形成されており、その関係で、スライダ板34は、回路基板31の上面31a側に配置されている。
【0070】
スライダ板34の下面34aには、被選択接点と接触する板バネ材からなる接点金具36が配置されているが、スライダ板34の上面34bのほぼ中央部分には、支持板35が連設されている。
【0071】
また、操作つまみ33には、スライダ板34の全体を覆うカバー部材38が設けられている。カバー部材38とスライダ板34との間には、スライダ板34を回路基板31側に向けて付勢する板バネ37が配置されている。
【0072】
操作つまみ33とスライダ板34は、後述するスライダ板昇降手段により連結されており、操作つまみ33,スライダ板34およびカバー部材38は、ともに一体となって移動する。
【0073】
この第3実施形態に係るスライドスイッチ30も、上記第1,第2の各実施形態に係るロータリースイッチ10,20と同様に、操作つまみ33にスライダ板34の昇降手段としての押し込みスイッチ38が設けられている。
【0074】
この実施形態において、押し込みスイッチ38は、操作つまみ33のスライド方向の両側に、押し込み部381を露出させた態様で左右一対として配置されているが、押し込みスイッチ38は、操作つまみ33のスライド方向と直交する側面の両側に設けられてもよい。
【0075】
図8および図9を参照して、押し込み部381,381は、側面視ほぼ扇形状に形成されており、操作つまみ33内に設けられている回転体382,382と一体に連結されている。各押し込み部381は、回転体382の周縁の一部分に一体に形成されることが好ましいが、回転体382の回転軸に連結されてもよい。
【0076】
回転体382,382は、スライド板34の支持板35とリンク板383,383を介して連結されている。リンク板383,383の各一端は、回転体382,382の偏心位置に連結され、これによって、回転−直線運動変換機構を構成している。
【0077】
なお、板バネ37によりスライド板34が回路基板31側に向けて付勢され、その接点金具36が回路基板31に接触している状態のとき、押し込み部381,381が、操作つまみ33の側面と同一面に現れるか、もしくは側面から突出するように、回転体382,382に対するリンク板383,383の各一端の連結位置を調整するにあたっては、図8に示すように、各リンク板383,383を垂直とすることが好ましい。
【0078】
動作としては、操作つまみ33をスライドさせる際に、例えば親指と人差し指とで押し込み部381,381を押し込む。
【0079】
そうすると、図9に示すように、一方の左側の回転体382が時計方向,他方の右側の回転体382が反時計方向に所定角度回転し、スライド板34が板バネ37の付勢力に抗して持ち上げられ、回路基板31に対して接点金具36を非接触とすることができる。
【0080】
回路基板31に対して接点金具36を非接触として、操作つまみ33を所定位置までスライドさせた後、押し込み部381,381から指を離すと、板バネ37の付勢力によりスライダ板34が下降し、接点金具36がスライド後の位置に対応する被選択接点に接触する。
【0081】
このように、第3実施形態に係るスライドスイッチ30によっても、上記第1,第2実施形態と同じく、接点切り替え時に、接点金具36が回路基板31上のレジストやパターンと接触することがなく、レジストの削り粉による接触不良やパターン接触による接点金具36の損傷を防ぐことができる。
【0082】
なお、上記第2実施形態で説明したスライド板昇降手段の構成、すなわち、左右一対の押し込みスイッチ29,29に、回転軸26の頭部262の下端縁262aに当接する押し上げ傾斜面を有するカム293aを設ける、という構成を上記第3実施形態に係るスライドスイッチ30にも適用することも可能である。
【0083】
また、上記各実施形態において、回路基板に形成される被選択接点の個数や配置は任意に決められてよい。
【符号の説明】
【0084】
10,20 ロータリースイッチ
11,21,31 回路基板
12,22,32 上ケース
13,23,33 操作つまみ
131,231 つまみ部
14,24,34 スライダ板
15,25,36 接点金具
16,26 回転軸
18,28 圧縮コイルバネ
19,29,38 押し込みスイッチ
191,291,381 押し込み部
193 押し下げカム
293 押し上げカム
261 首部
262 頭部
35 支持板
37 板バネ
382 回転体
383 リンク板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被選択接点が形成されている回路基板と、上記被選択接点のいずれかに選択的に接触する板バネ材からなる接点金具を有し上記回路基板と対向して平行に配置されるスライダ板と、上記スライダ板を上記回路基板に対して所定方向に移動させる操作つまみとを含み、上記操作つまみにて上記スライダ板を所定方向に移動させることにより、上記接点金具を所望とする上記被選択接点に接触させるスイッチ装置において、
上記操作つまみには、上記スライダ板を所定方向に移動させる際に、上記接点金具を上記被選択接点と非接触となるように、上記回路基板に対して上記スライダ板を離反させる昇降手段が設けられていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
当該スイッチ装置がロータリースイッチで、上記操作つまみは、回転可能なつまみ本体と、上記つまみ本体に対して同軸で、かつ、軸線方向に可動である回転軸とを有し、上記スライダ板が上記回転軸に一体的に取り付けられており、
上記昇降手段が、上記つまみ本体のつまみ部に設けられた押し込みスイッチであり、上記押し込みスイッチには、その押し込み操作に伴って上記回転軸に作用し、上記回転軸を所定方向に移動させて上記回路基板に対して上記スライダ板を離反させるカムが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
上記被選択接点が上記回路基板の下面側に配置されており、上記回転軸が上記つまみ本体側から上記回路基板を貫通して上記回路基板の下面側にまで延びていて、上記スライダ板が上記回路基板の下面と対面するように上記回転軸の下端側に取り付けられているとともに、上記スライダ板の接点金具が上記回路基板に弾性的に接触するように上記回転軸を押し上げる方向に付勢するバネ手段を備え、
上記押し込みスイッチは、上記つまみ本体の回転軸線に対してほぼ直交する方向に移動可能であり、その押し込み時に上記カムにより上記回転軸が上記バネ手段の付勢力に抗して押し下げられることを特徴とする請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
上記カムは上記回転軸の頭部に当接する押し下げ傾斜面を有する押し下げ傾斜カムよりなることを特徴とする請求項3に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
上記被選択接点が上記回路基板の上面側に配置されており、上記スライダ板が上記回路基板の上面と対面するように上記回転軸に取り付けられているとともに、上記スライダ板の接点金具が上記回路基板に弾性的に接触するように上記回転軸を押し下げる方向に付勢するバネ手段を備え、
上記押し込みスイッチは、上記つまみ本体の回転軸線に対してほぼ直交する方向に移動可能であり、その押し込み時に上記カムにより上記回転軸が上記バネ手段の付勢力に抗して押し上げられることを特徴とする請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
上記カムは押し上げ傾斜面を有する押し上げカムよりなり、上記回転軸側には上記押し上げ傾斜面に摺接する従動係合面が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
上記カムが、上記つまみ本体のつまみ部に左右一対として配置されていることを特徴とする請求項5または6に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
当該スイッチ装置が上記操作つまみを直線的に移動させるスライドスイッチで、上記被選択接点が上記回路基板の上面側に配置されており、上記スライダ板が上下動可能として上記回路基板の上面と対面するように上記操作つまみに支持されているとともに、上記スライダ板の接点金具が上記回路基板に弾性的に接触するように上記スライダ板を押し下げる方向に付勢するバネ手段を備え、
上記昇降手段が、上記つまみ本体のつまみ部に左右一対として設けられた押し込みスイッチであり、上記各押し込みスイッチと上記スライダ板との間に、上記各押し込みスイッチにかけられる押し込み力を上記スライダ板の持ち上げ力に変換する力学的な運動変換手段が設けられており、上記各押し込みスイッチにかけられる押し込み力により、上記運動変換手段を介して上記スライダ板が上記バネ手段の付勢力に抗して持ち上げられることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項9】
上記運動変換手段は、上記各押し込みスイッチにより回転する上記操作つまみ側の回転体と、上記回転体の所定の偏心箇所と上記スライダ板との間を連結する連結軸とを備える回転−直線運動変換機構からなることを特徴とする請求項8に記載のスイッチ装置。
【請求項10】
上記運動変換手段は、上記各押し込みスイッチ側に形成された持ち上げ傾斜面を有する持ち上げ傾斜カムと、上記持ち上げ傾斜面に摺接するように上記スライダ板側に形成された従動係合面との組み合わせからなることを特徴とする請求項8に記載のスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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