スイング分析装置
【課題】正確なスイング速度を算出することができ、さらに、装置自体のコストの低廉化が図られたスイング分析装置を提供することにある。
【解決手段】スイング分析装置の演算部は、スイング時にゴルフクラブ200が仮想回転中心Oを中心として等速円運動しているものと仮定して、加速度センサ120と加速度センサ121との間の距離、加速度センサ120とゴルフクラブヘッド中心点Rとの間の距離、および加速度センサ120と加速度センサ121とからの出力に基づいて、ゴルフクラブヘッド中心点Rにおける仮想速度Vhを演算し、仮想速度Vhを利用してゴルフクラブヘッド中心点Rの速度を演算する。
【解決手段】スイング分析装置の演算部は、スイング時にゴルフクラブ200が仮想回転中心Oを中心として等速円運動しているものと仮定して、加速度センサ120と加速度センサ121との間の距離、加速度センサ120とゴルフクラブヘッド中心点Rとの間の距離、および加速度センサ120と加速度センサ121とからの出力に基づいて、ゴルフクラブヘッド中心点Rにおける仮想速度Vhを演算し、仮想速度Vhを利用してゴルフクラブヘッド中心点Rの速度を演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイング分析装置に関し、特に、スイング部材の測定対象部位のスイング速度を測定可能なスイング分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からゴルフや野球バッティング等におけるスイング状態を測定するスイング分析装置等が各種提案されている。
【0003】
たとえば、特開平5−55156号公報に記載されたスイング分析装置は、軸状部分を有するスイング道具と、加速度検出方向が該軸状部分の軸線と略一致するように該軸状部分に間隔を開けて配置された2個の第1および第2加速度センサと、この第1および第2加速度センサから所定の距離離れて配置された横向きの加速度センサとを備えている。
【0004】
そして、プレヤーがスイング道具をスイングするときの運動は、プレヤーの腕とスイング部材との2つの振り子の並進運動として、スイング部材の回転運動の角速度を算出している。
【0005】
具体的には、第1加速度センサと第2加速度センサとの間の距離、並進加速度、および並進運度を行う方向とシャフトの角度等と、上記第1、第2および第3の加速度センサの検出する加速度との関係式からシャフトの回転運動の角速度を算出している。
【0006】
特許第3942825号公報には、スイング中のゴルフクラブの加速度を複数回測定して、この加速度データから最大加速度基準点およびスイング時間を求め、このスイング時間等から所定の周波数を算出するゴルフスイング周波数分析装置が記載されている。そして、この算出した周波数に基づいて、所望の振動周波数を持つゴルフクラブをゴルファーのスイングに適合させる。
【0007】
特開平10−43349号公報に記載されたスイング診断装置においては、プレヤーの手首の甲等に装着された加速度センサを備え、この加速度センサからの出力に基づいて、プレヤーのスイングを分析する。
【0008】
特開平11−128430号公報には、ゴルフクラブ内に装着された加速度センサと、発光ダイオードまたは半導体レーザと、制御回路とを備えたゴルフクラブが提案されている。
【0009】
特開2001−129145号公報には、バットやゴルフクラブなどのヘッド付近に、バット等の軸方向の加速度測定用加速度センサと、円運動接線方向の加速度測定用加速度センサと、バットの軸方向および接線方向に直角方向の加速度測定用加速度センサとを備え、ヘッドスピードが最大となる瞬間等を測定することができるスイング練習機が提案されている。
【特許文献1】特開平5−55156号公報
【特許文献2】特許第3942825号公報
【特許文献3】特開平10−43349号公報
【特許文献4】特開平11−128430号公報
【特許文献5】特開2001−129145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実際のスイング運動は、単なる2重振り子ではなく、たとえば、シャフトの中心軸線を中心とする回転運動や、シャフトの撓りなどもあり、スイング時のシャフトは、非常に複雑な運動をしている。
【0011】
特開平5−55156号公報においては、第1加速度センサの出力をa1とし、第2加速度センサの出力をa2とし、さらに、第1および第2加速度センサ間の距離をdとして、(シャフトの回転角度)=((a1−a2)/d)1/2として、シャフトの角速度を算出している。しかし、特公平5−55156号公報に記載された手法では、複雑な運動をするシャフトの運動を角速度を正確に算出することができない。
【0012】
上記特許第3942825号公報に記載されたゴルフスイング周波数分析装置においては、スイング時におけるゴルフクラブのスイング速度の検知が行われておらず、スイング速度に基づいて、スイングの分析を行うことができない。
【0013】
上記特開平10−43349号公報に記載されたスイング診断装置においては、スイング時のスイング速度を算出することができず、特開平11−128430号公報に記載されたゴルフクラブにおいては、ゴルフクラブに装着された加速度センサや制御回路からゴルフクラブの角速度を正確に算出することができない。
【0014】
特開2001−129145号公報に記載されたスイングスピード練習機によれば、少なくとも4つの加速度センサを要し、しかもスイングの速度を測定するのではなくスイング速度が最大となる時点(瞬間)をスイング中に検出するのみで、必要とする加速度計の数も多く、装置自体のコストが高くなるという問題がある。
【0015】
本発明は、上記ような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、正確なスイング速度を算出することができ、さらに、装置自体のコストの低廉化が図られたスイング分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るスイング分析装置は、使用者のスイングを分析するのに使用可能な情報を出力可能なスイング分析装置であって、使用者によってスイングされ、長手方向を有するスイング部材に設けられ、長手方向に間隔をあけて配置された第1および第2加速度センサと、第1および第2加速度センサに対して長手方向に間隔を隔てて位置するスイング部材の測定対象部位の速度を演算可能な演算部と演算結果を表示する表示部を備える。そして、上記演算部は、スイング時にスイング部材が円運動しているものと仮定して、第1加速度センサと第2加速度センサとの間の距離、第1加速度センサと測定対象部位との間の距離、および第1加速度センサと第2加速度センサとからの出力に基づいて、測定対象部位における仮想速度を演算し、仮想速度を利用して測定対象部位の速度を演算し、表示部に表示する。
【0017】
好ましくは、上記演算部は、仮想速度と当該スイング時に測定した実測速度とによって算出され、仮想速度を実測速度に一致または近似させる補正データが予め格納され、演算部は、測定時における仮想速度を補正データに基づいて補正することで、測定対象部位の速度を演算する。
【0018】
好ましくは、上記スイング部材の周面に設けられ、弾性変形可能な緩衝部材と、緩衝部材上に設けられた基板とをさらに備える。そして、上記第1および第2加速度センサは、基板の主表面上に設けられる。好ましくは、上記スイング部材に装着された歪ゲージをさらに備え、演算部は、歪ゲージからの出力に基づいて、スイング部材の撓み量を演算する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るスイング分析装置によれば、スイング速度を正確に算出することができ、さらに、製造コストの低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態に係るスイング分析装置について説明する。
図1は、ゴルフクラブ200に装着された測定装置(スイング分析装置)100の正面図である。この図1に示すように、ゴルフクラブ200は、ゴルフプレヤーが把持するグリップ201と、ボールを打球するヘッド203と、グリップ201とヘッド203とを接続するシャフト202とを備えている。
【0021】
測定装置100は、ゴルフクラブ200(グリップ201)の上端部から約12インチ(約304mm)〜15インチ(381mm)に位置する部分に測定装置100の重心Qが位置するようにシャフト202に装着されている。このような位置に測定装置100が装着されることで、測定装置100が装着される前後において、ゴルフクラブ200の特性が大きく変化することを抑制することができる。
【0022】
図2および図3は、測定装置100の斜視図である。これら、図2および図3に示すように、測定装置100は、内部に加速度センサ等を収容するケース110と、ヘッド速度等を表示する表示部112と、電源スイッチ114と、リセットボタン113とを備えている。そして、ケース110は、上部ケーシング115および下部ケーシング116とを含み、これら上部ケーシング115および下部ケーシング116によって、ゴルフクラブ200のシャフト202が挿入される挿入孔111および挿入孔117が規定されている。なお、挿入孔111および挿入孔117の内径は、シャフト202の外径よりも大きくなるように形成されており、スイング時にシャフト202が撓ったとしても、シャフト202が挿入孔111および挿入孔117の内周面と接触することが抑制されている。
【0023】
図4は、測定装置100の断面図であり、図5は、測定装置100内部の分解斜視図である。これら図4および図5に示すように、測定装置100は、シャフト202の表面上に装着されている。測定装置100は、シャフト202の周面上に設けられ、たとえば、ポリエステル等の弾性変形可能な緩衝部材128と、バンド127によって緩衝部材128を介してシャフト202に固定された基板支持部126と、この基板支持部126の上面上にボルトによって固定された基板125とを備えている。
【0024】
基板支持部126は、シャフト202の外表面形状に沿って湾曲し、シャフト202および緩衝部材128を受け入れ可能な湾曲部124と、湾曲部124の側辺部に連設された平坦部123とを備えている。平坦部123上に、基板125が固定されている。そして、平坦部123の側辺部は、上部ケーシング115と下部ケーシング116とによって挟持されており、上部ケーシング115と下部ケーシング116とは互いにボルトによって固定されている。
【0025】
図6は、基板125の側面図である。図5および図6に示すように、測定装置100は、基板125の主表面129B上に半田等によって装着された加速度センサ120,121と、基板125の主表面129A上に装着された表示部112と、各種データ演算処理を行う処理部150と、リセットボタン113とを備えている。なお、処理部150、表示部112、およびリセットボタン113が設けられた基板125の主表面129Aに対して、反対側に位置する主表面129B上に加速度センサ120および加速度センサ121が設けられている。なお、主表面129Bは、シャフト202と対向しており、加速度センサ120および加速度センサ121は、処理部150や表示部112よりも、シャフト202に近接するように配置されている。加速度センサ120と加速度センサ121とは、シャフト202の中心軸線P方向(長手方向)に間隔を隔てて配置されている。表示部112は、加速度センサ120と加速度センサ121との間に配置されている。
【0026】
ゴルフプレヤーがゴルフクラブ200をスイングすることで、シャフト202が変形したとしても、緩衝部材128が弾性変形することで、シャフト202の撓みが吸収される。これにより、スイング時にシャフト202が変形したとしても、基板支持部126および基板125が変形することが抑制され、加速度センサ120および加速度センサ121の位置が変位することが抑制されている。
【0027】
そして、加速度センサ120および加速度センサ121は、各装着位置におけるシャフト202の加速度を正確に測定することができる。加速度センサ120および加速度センサ121は、シャフト202の中心軸線P方向の加速度を測定可能なように基板125の主表面129Bに装着されている。なお、加速度センサ120および加速度センサ121としては、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン株式会社(Freescale Semiconductor Japan Ltd.)製のSurface Mount Micromachined Accelerometer(製品名)等を採用することができる。
【0028】
ここで、上記加速度センサ120および加速度センサ121を用いて、ボールとのインパクト時におけるヘッド203のフェース面の幾何学的な中心点Rの速度の検知方法について説明する。なお、フェース面の幾何学的な中心点Rは、加速度センサ120および加速度センサ121に対して中心軸線P方向に間隔を隔てた位置に位置している。
【0029】
図1において、ゴルフプレヤーがゴルフクラブ200をスイングすると、時々刻々において、ゴルフクラブ200は中心軸線P上に位置する仮想回転中心Oを中心として等速円運動していると仮定する。
【0030】
そして、ヘッド203とボールとのインパクト時を検出し、インパクト時においても、ゴルフクラブ200が仮想回転中心Oを中心として等速円運動しているものとして、インパクト時における各加速度センサ120および加速度センサ121が検出する角加速度から、ヘッド203の中心点Rの仮想速度を算出する。その一方で、予め、ゴルフクラブ200が円運動するものとして算出したときの中心点Rの仮想速度と、当該スイング時において、他の測定機器によって実測したヘッド203の速度(スイング速度)との相関関係を算出しておき、仮想速度を実測した速度に一致または近似させるための補正関数を算出する。そして、測定時にゴルフプレヤーがスイングすることで、算出された上記仮想速度を、上記補正関数で補正し、実測値に近似されたヘッド速度を算出する。
【0031】
図1を用いて、上記仮想速度の算出方法について具体的に説明する。図1において、加速度センサ120と加速度センサ121とは、中心軸線P方向に配列しており、互いに、中心軸線P方向にセンサ間距離r3離れている。加速度センサ120は、仮想回転中心Oから中心軸線P方向に中心線距離r2離れた位置に装着されている。また、加速度センサ121は、仮想回転中心Oから中心線距離r1離れた位置に装着されている。そして、ヘッド203のフェースの中心点Rと、加速度センサ120とは、中心軸線P方向に中心線距離L離れている。
【0032】
ゴルフプレヤーがゴルフクラブ200をスイングして、インパクト時におけるゴルフクラブ200の回転角速度をωとする。さらに、加速度センサ120が検出した加速度をα2とし、加速度センサ121が検出した加速度をα1とすると、下記の数1、数2の式が成立する。さらに、中心点Rにおける仮想速度Vhは、下記数3によって示すことができる。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
【数3】
【0036】
そして、上記数1、数2および数3からω、r1およびr2の項を消去することで、仮想速度Vhは、下記数4によって表すことができる。
【0037】
【数4】
【0038】
ここで、中心線距離Lおよびセンサ間距離r3は、測定装置100によって決定されるものであり、既知の値である。α1およびα2は、各加速度センサ120および加速度センサ121によって測定することができる。
【0039】
したがって、加速度センサ120および加速度センサ121の出力値によって、仮想速度Vhを算出することができる。
【0040】
図7は、仮想速度Vhと実測値との相関関係を示すグラフである。この図7を用いて、仮想速度Vhを実測値に近似させる補正式の算出方法について説明する。なお、図7に示すグラフにおいて、横軸は、中心点Rの実測した速度(スイング速度)を示し、縦軸は、加速度センサ120,121からの出力値に基づいて、上記数4の式から算出した仮想速度Vhである。
【0041】
この図7に示すように、ゴルフクラブ200をスイングすることで、加速度センサ120と加速度センサ121からの出力値を、上記数4に代入して、算出したときの算出値(仮想速度Vh)と、当該スイング時における中心点Rの速度を別の測定機器によって実測した実測値とについて、複数サンプリングする。そして、この図7に示すように、各結果から下記数5に示すような近似式を導出する。なお、実測値を測定する測定機器としては、たとえば、モーションアナリシス社製MAC-3D動作解析システム等を採用することができる。
【0042】
【数5】
【0043】
なお、この数5に示される近似式は、例示であって、これに限られない。また、近似方法も、1次近似に限られず、2次近似の多項式近似、対数近似、指数近似等であってもよい。
【0044】
そして、上記数5のような補正データ(近似式)が格納された測定装置100を用いて、実際にヘッド速度を測定する際には、加速度センサ120および加速度センサ121によって検出された加速度から仮想速度Vhを算出し、上記数5に示す近似式に代入することで、中心点Rの正確なヘッド速度Vを算出することができる。
【0045】
ここで、上記図7に示すように、ゴルフクラブ200は、スイング過程において、等速円運動するものと仮定することで、仮想速度Vhと実測の速度との間に大きな相関関係を見出すことができる。これにより、仮想速度Vhを実測値に高精度に近似させることができ、上記数5に示される近似式精度を高精度にすることができる。なお、上記数5に示されるR2乗値は、0.957程度となっている。
【0046】
なお、サンプリング数を図7に示す例よりも多くすることで、さらに数5の近似式よりも、近似精度のよい近似式を算出することができることはいうまでもない。
【0047】
図8は、処理部150の構成を模式的に示す模式図である。この図8に示すように、処理部150は、加速度センサ120からの出力電圧をアナログ−デジタル変換する変換器151と、加速度センサ121からの出力電圧をアナログ−デジタル変換する変換器152とを備えている。
【0048】
処理部150は、変換器151,152から出力される電圧に基づいて、シャフト202のうち、各加速度センサ120および加速度センサ121が装着された部分の加速度を算出する演算部153と、演算部153からの出力データを記憶するメモリ154とを備えている。
【0049】
測定装置100は、電源部160を備えており、加速度センサ120,121には、電源部160から所定電圧の直流電力が供給されている。電源部160は、電池161と、ON/OFFを切替可能な電源スイッチ114とを備えている。
【0050】
図9は、実際にヘッド速度を検出するときのフロー図である。この図9および上記図8に示すように、ヘッド速度を検出する際に、まず、測定装置100をゴルフクラブ200の所定の位置に装着し、測定装置100の電源スイッチ114をONとする(STEP2)。さらに、リセットボタン113を押して、処理部150および表示部112を初期状態に戻す(STEP3)。これにより、たとえば、表示部112に前回のヘッド速度が表示されている場合には、リセットボタン113を押させることで、測定装置100は、新たなヘッド速度を測定可能な状態となる(STEP3)。
【0051】
そして、ボールを配置した状態で、ゴルフプレヤーが、ゴルフクラブ200を把持してスイングの準備が完了する(STEP4)。
【0052】
そして、ゴルフプレヤーが、測定装置100が装着されたゴルフクラブ200をスイングする(STEP5)。ここで、加速度センサ120および加速度センサ121は、電源スイッチ114がONとなると、電力が電源部160から供給され、各装着位置における加速度に対応する出力を演算部153に出力する。演算部153は、加速度センサ120,121から入力される電圧(信号)に基づいて、加速度センサ120および加速度センサ121が装着された位置における各加速度を算出する(STEP6)。
【0053】
演算部153は、時々刻々、加速度センサ120および加速度センサ121からの入力される信号に基づいて、加速度センサ120および加速度センサ121が設けられた位置における加速度を算出する。
【0054】
図10は、加速度センサ120および加速度センサ121からの出力に基づいて、演算部153が算出した加速度をローパスフィルタを通して示したグラフである。
【0055】
演算部153は、加速度センサ120および加速度センサ121からの出力に基づいて算出した各加速度が、いずれも、所定の時間内に所定以上変動したときをインパクト時として、検出する(STEP7)。
【0056】
インパクト時においては、ヘッド203とゴルフボールとが衝突し、ヘッド203の加速度が急激に変動する。このため、加速度センサ120および加速度センサ121からの出力をフィルタを通して算出された加速度に基づいて、インパクト時を特定することができる。
【0057】
そして、演算部153は、インパクト直前における加速度データをA/D変換(アナログ→ディジタル)する(STEP8)。そして、変換されたデータが、メモリ154に正常にラッチ(保持)されたかを確認する(STEP9)。演算部153は、ラッチされた加速度データに基づいて、仮想速度Vhを算出する。その後、この仮想速度Vhに基づいて、ヘッド速度Vを算出する。そして、算出したヘッド速度Vを表示部112に表示する(STEP10)。なお、表示部112としては、たとえば、4桁表示が可能な液晶表示部等が採用される。なお、図11は、加速度センサ120および加速度センサ121からの出力に基づいて算出されたヘッド速度を示すグラフであり、スイング中におけるヘッド速度を示すグラフである。なお、ヘッド速度を算出することで、ゴルフクラブ200の回転角速度ωをも算出することができる。そして、図12は、スイング中におけるゴルフクラブ200の回転角速度ωを示すグラフである。
【0058】
そして、図9に示すように、再度スイングする際には、リセットボタン113が押されることで、測定装置100は、再度、新たなヘッド速度を算出可能な状態となる(STEP10,11)。その一方で、ヘッド速度の算出を終了する際には、電源スイッチ114をOFFとする(STEP12)。これにより、ヘッド速度の算出が終了する。
【0059】
このように、本実施の形態に係る測定装置100によれば、インパクト時のヘッド速度を高精度に検出することができる。このため、正確なスイング速度に基づいて、ゴルフプレヤーのスイングを分析することができる。
【0060】
さらに、測定装置100は、ゴルフクラブ200に装着可能となっており、測定装置100以外の機器を用いずに、ヘッド速度を出力することができ、測定場所を問わず、簡易にヘッド速度を測定することができる。
【0061】
ここで、図5に示すように、測定装置100は、シャフト202の表面に装着された歪ゲージ130および歪ゲージ131を備えている。
【0062】
歪ゲージ130は、シャフト202の周面のうち、飛球方向(X軸方向)に配列する側面上に配置され、歪ゲージ131は、この飛球方向と直交する方向(Y方向)に配列する側面上に貼付されている。なお、好ましくは、歪ゲージ130および歪ゲージ131は、グリップ側端部から約12インチ(約304mm)〜15インチ(381mm)の位置に装着される。
【0063】
図8において、歪ゲージ130および歪ゲージ131からの出力電圧は、ブリッジ155,156を介して、増幅器157,158に入力され、その後、演算部159に出力される。演算部159は、入力された電圧に基づいて、シャフト202のうち、歪ゲージ130および歪ゲージ131が装着された部分の各歪み量を算出する。そして、各歪み量から合成歪み量を算出する。そして、この合成歪み量からシャフト202の撓み量を算出する。
【0064】
シャフト202の撓み量は、トップオブスイング近傍において最大となる。この「最大撓み量」は、「スイングテンポ」を示す一指標となる。なお、一般には、スイング中の好ましい「最大撓み量」は、70〜130mm程度(さらに好ましくは100mm程度)である。上記「最大撓み量」は、シャフト手元部に対する先端部の最大変位量である。ここでは、グリップ側端部から一般にゴルファがグリップする長さ(約7インチ、約180mm)までの部分を手元部として、手元部に対する先端部の最大変位量を算出した。
【0065】
演算部159は、算出した最大撓み量をメモリ154に出力し、メモリ154は、入力された最大撓み量を記憶する。メモリ154に記憶された最大撓み量は、図示されない表示切替部の操作によって、表示部112に表示される。この最大撓み量に基づいて、スイングテンポを判断することができ、スイングの分析を行うことができる。
【0066】
測定装置100は、加速度センサ120からの出力に基づいて、加速度α2を検出することができると共に、加速度センサ121からの出力に基づいて、加速度α1を検出することができる。
【0067】
このため、上記数1および数2から回転半径r1を算出することができる。図13は、ゴルフプレヤーAのスイング過程における回転半径r1の変動を示すグラフであり、図14は、ゴルフプレヤーBのスイング過程における回転半径r1の変動を示すグラフである。
【0068】
この図13および図14において、ゴルフプレヤーによって、回転半径r1の最小値が異なることに着目して、回転半径r1の最小値や回転半径r1のときからインパクト時までの時間T等から各ゴルフプレヤーのスイングタイプを分析するようにしてもよい。特に、コックの使い方等の分析に有効である。なお、図13および図14において、横軸は、測定時間(ms)を示し、縦軸は、回転半径(m)を示す。そして、図13は、並進速度と回転角速度の比が大きいゴルフプレヤーAの回転半径の時間変化を示している。図14は、並進速度と回転角速度との比が小さいゴルフプレヤーBの回転半径の時間変化を示している。
【0069】
なお、上記測定装置100をゴルフクラブのシャフトの選定システムに適用した場合について説明する。
【0070】
図15は、本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定システムの構成を示したブロック図である。図15を参照して、本実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定システムは、ゴルファのスイングにおけるインパクト時のヘッドスピードを検知すると共に、ゴルファのスイングテンポを検知する測定装置100とを備える。
【0071】
上記ゴルフクラブシャフト選定システムは、各々のゴルファのスイング特性に対応したシャフト質量およびシャフト調子を示すチャート300と、チャート300を参照しながら、測定装置100により検知されたヘッドスピードおよびスイングテンポに基づいてゴルファに適したゴルフクラブシャフトを選定する選定ユニット400と、選定ユニット400により選定されたゴルフクラブシャフトを表示する表示装置500とをさらに備える。ここで、チャート300は、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト質量を示した第1チャート310と、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト調子を示した第2チャート320と、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいフレックスを示した第3チャート330(他のチャート)とを含む。
【0072】
チャート300は、たとえば、コンピュータのハードディスクに記憶される。選定ユニット400としては、たとえば、CPUを有するコンピュータが用いられる。選定ユニット400に接続される表示装置500は、ディスプレイ装置であってもよいし、プリンタ装置であってもよい。
【0073】
選定ユニット400には、測定装置100からの情報が入力される。選定ユニット400は、チャート300を参照しながら、測定装置100による解析結果に基づいて、各々のゴルファのスイング特性を分類し、その分類結果に基づいて、各々のゴルファに適したシャフト質量およびシャフト調子を有するゴルフクラブシャフトを選定する。選定結果は表示装置500に表示される。
【0074】
なお、チャート300は、ヘッドスピード/スイングテンポと好ましいシャフト質量/シャフト調子との関係を図示したパネルであってもよい。また、選定ユニット400に代えて、「人」が、好ましいシャフトの選定を行なってもよい。
【0075】
このゴルフクラブ選定システムにおいては、測定装置100によって、スイング中のシャフトの最大撓み量に基づいてゴルファのスイングテンポが検知されている。なお、スイング時間、トップオブスイングの所定時間前のクラブヘッド速度(スイングスピード)およびトップオブスイング近傍におけるクラブヘッド加速度(スイング加速度)のいずれかに基づいても、ゴルフクラブシャフトの選定に必要な「スイングテンポ」を正確に検知することができ、これらのパラメータを検出する装置を設けてもよい。
【0076】
図16は、本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定方法を説明するフローチャートである。図16を参照して、S10にて、スイングにおけるインパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポが測定装置100によって計測される。
【0077】
次に、S20にて、測定装置100による計測結果に基づいて、そのゴルファのスイングの特性を分類する。すなわち、そのゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポが、予め準備された複数のグループ中のどのグループに属するかについて判別する。
【0078】
そして、S30にて、上記分類結果に基づいて、そのゴルファのゴルファのスイング特性(ヘッドスピードおよびスイングテンポ)に応じたクラブシャフトを選定する。この際に、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト質量を示した第1チャート310と、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト調子を示した第2チャート320と、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいフレックスを示した第3チャート330とを有するチャート300が参照される。なお、S30にて選定されるゴルフクラブシャフトは、1本であってもよいし、複数本(たとえば2〜3本)であってもよい。
【0079】
なお、S20の分類ステップは省略することが可能である。つまり、S10における計測結果に基づいてS30の選定ステップが行なわれてもよい。
【0080】
続いて、S40にて、選定されたクラブシャフトを有するゴルフクラブを用いて試打を行なう。S50にて、試打を行なったゴルフクラブの評価を行なう。ここでは、たとえば「ヘッドスピード」、「ボール速度」、「ミート率」、「ボールスピン量」、「飛出角度」、「打点位置のばらつき」、「弾道のばらつき」などの客観的なデータと、「タイミングが取りやすい/タイミングが取りにくい」、「振りやすい/振りにくい」というゴルファの感覚とを評価の基準として用いることが可能である。
【0081】
ここで、S50における評価方法の例について説明する。
上記「打点位置のばらつき」は、たとえば、打球時にボールが接触した部分が変色するいわゆる「フェイスシール」をクラブヘッドのフェイス部に貼付して試打することで検知することができる。
【0082】
また、「ミート率」を用いて評価する場合には、以下のような手法を用いる。
ミート率(=ボール初速/ヘッドスピード)は、高ければ高いほど良いとされる望大特性である。i球目のミート率をyiとすると、ミート率yi(i=1〜n)のSN比(η)は、下記の数6,数7により求められる。
【0083】
【数6】
【0084】
【数7】
【0085】
質量が50g,60g,70gのクラブシャフトを用いて、それぞれ3回ずつ試打を行なった場合のミート率およびそのSN比の一例を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示される例では、シャフト質量が60gの場合に最もSN比が高くなる。したがって、質量60gのクラブシャフトが最も良いと判断される。
【0088】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定方法は、ゴルファのスイングにおけるインパクト時のヘッドスピードおよび該ゴルファのスイングテンポを検知するステップ(S10)と、検知ステップによる検知結果に基づいてゴルファのスイングを分類するステップ(S20)と、分類ステップによる分類結果に基づいてゴルファに適したシャフト質量およびシャフト調子を有するゴルフクラブシャフトを選定するステップ(S30)とを備える。
【0089】
本願発明者らは、ゴルファのスイングタイプ(インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポ)と、該ゴルファに適したシャフト質量およびシャフト調子との間に一定の関係が見出されることを確認している。したがって、上記クラブシャフト選定方法によれば、シャフト質量およびシャフト調子に関して、客観的な選定基準を得ることができる。結果として、各々のゴルファにより適したゴルフクラブを選定することが可能になる。
【0090】
また、本願発明者らは、各々のゴルファのスイング特性に応じたシャフト調子の選定には、長さ方向の中央部(シャフト中央部)におけるクラブシャフトの曲げ剛性値と手元部および先端部におけるクラブシャフトの曲げ剛性値との関係が密接に関連していることを確認している。したがって、選定対象となるシャフト調子の分類を、該クラブシャフトにおけるシャフト中央部の曲げ剛性値と、先端部における該クラブシャフトの曲げ剛性値と、手元部における該クラブシャフトの曲げ剛性値との関係に基づいて行なうことで、各々のゴルファにより適したシャフト調子の選定を行なうことができる。
【0091】
なお、本実施の形態においては、チャート300が、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト質量を示した第1チャート310と、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト調子を示した第2チャート320と、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいフレックスを示した第3チャート330とを有する場合について主に説明したが、チャート300は、第1と第2チャート310,320のみを有してもよいし、第1チャート310のみを有してもよいし、第2チャート320のみを有してもよい。
【0092】
チャート300が第1から第3チャート310,320,330を有する場合は、各々のゴルファに適したシャフト質量、シャフト調子およびフレックスを有するクラブシャフトの選定を支援することができる。チャート300が第1と第2チャート310,320のみを有する場合は、各々のゴルファに適したシャフト質量およびシャフト調子を有するクラブシャフトの選定が支援される。また、チャート300が第1チャート310のみを有する場合は、各々のゴルファに適したシャフト質量を有するクラブシャフトの選定が支援され、チャート300が第2チャート320のみを有する場合は、各々のゴルファに適したシャフト調子を有するクラブシャフトの選定が支援される。
【0093】
なお、上述したS40の試打に用いる複数の試打クラブとしては、同一のクラブヘッド、同一のヘッド質量、同一の長さおよび同一のグリップを有するものを用いることが好ましい。これにより、各々のゴルファに適したクラブシャフトの選定を行なうことで、各々のゴルファに適したゴルフクラブを選定することができる。
【実施例1】
【0094】
図17は、本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法に用いられるゴルフクラブシャフトの外径および曲げ剛性分布(EI分布)を示した図である。なお、図17における横軸は、ゴルフクラブシャフトのクラブヘッド側端部からの距離を示す。図17の例では、ゴルフクラブシャフトの外径および曲げ剛性は、クラブヘッド側からグリップ側に向かって大きくなる。
【0095】
図17においては、それぞれ異なるEI分布を有しながら、片持ち梁モデルでは同じ撓み量を示す3本のクラブシャフト(バットスタンダード/バットスティフ/バットソフト)のデータが示されている。「片持ち梁モデル」および「バットスタンダード/バットスティフ/バットソフト」の詳細については後述する。
【0096】
以下に、ゴルフクラブシャフトの曲げ剛性分布の測定方法について説明する。
曲げ剛性値は、3点曲げ試験による変位−荷重の傾きから以下の計算式により求められる。
EI=(W/δ)×L13/48
EI:曲げ剛性値、W:荷重、δ:荷重点のたわみ量(変位)、L1:スパン(支点間距離)
本願発明者らが行なった3点曲げ試験での諸条件を次に示す。
【0097】
支点は、R10mm(半径10mm)のものを、その支点間の距離:スパンL1を200mmに設定し、荷重点は、R75mm(半径75mm)の圧子治具(鉄製)を用い、支点間の中央部で負荷するように設定する。試験速度は、2mm/分で、W/δは、荷重:10kgf(98N)〜20kgf(196N)の時の、たわみ量変化(変位)のデータを抽出する。これにより、荷重点の曲げ剛性値が求められる。荷重点を移動させて計測を繰返すことで、曲げ剛性分布が求められる。
【0098】
一方、4点曲げ試験による曲げ剛性値の計測は、外径の割に肉厚が薄い場合(特に手元部)に有効である。4点曲げ試験の場合は、曲げ剛性値は、次式にて計算される。
EI=(W/δ)×(a/48)×(3L12−4a2)
EI:曲げ剛性値、W:荷重(但し、荷重点は2箇所で、各々の荷重はW/2)、L1:スパン(支点間距離)、δ:スパンの中央部(支点間中央部)のたわみ量(変位)、a:片側の支点から隣り合う荷重点までの距離、(L1−a)/2:2ヶ所の荷重点間の距離
本願発明者らが行なった4点曲げ試験での諸条件を次に示す。
【0099】
支点は、R75mm(半径75mm)のものを、荷重点は、R75mm(半径75mm)の圧子治具(鉄製)を用い、その支点間の距離:スパンL1を300mmに設定し、2ヶ所の荷重点間の距離を130mmに、すなわち、片側の支点から隣り合う荷重点までの距離:aを85mmに設定した。試験速度は、2mm/分で、W/δは、荷重:15kgf(147N)〜20kgf(196N)の時の、たわみ量変化(変位)のデータを抽出する。これにより、2ヶ所の荷重点の中央部の曲げ剛性値が求められる。荷重点を移動させて計測を繰返すことで、曲げ剛性分布が求められる。
【0100】
また、曲げ剛性値を測定したい位置に、一方向の歪みゲージをゴルフクラブシャフトの長手方向に貼付し、該シャフトのグリップ部を固定し、該シャフトのヘッド側に荷重を負荷する際の歪み変化εを計測することにより、曲げ剛性値EIを算出する方法もある。この場合、曲げ剛性値は、次式にて計算される。
EI=(W×L2)×(d/2)/ε
EI:曲げ剛性値、W:荷重、L2:歪み計測位置から荷重点までの距離、d:歪み測定位置の外径、ε:歪み量
本願発明者らが行なった歪みゲージを用いた時の試験での諸条件を次に示す。
【0101】
まず、曲げ剛性値を計測したい位置に歪みゲージを貼付する。次に、該シャフトのグリップ側の50mmを、円筒用チャック(三つ爪チャック)で、歪みゲージが上面になるように固定する。荷重点は、歪みゲージの位置から該シャフトのヘッド側L2:700mmの位置に負荷する。負荷方法は、W:1kgf(9.8N)の錘を吊り下げる。その錘を吊り下げる前後の歪みゲージの出力される値を歪み量εとして用いる。なお、歪み測定位置の外径dは、別途計測される。
【0102】
図18は、本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法における検知ステップにより検知されたヘッドスピードおよびスイングテンポ(スイング中のクラブシャフトの最大撓み量)の分布を示す図である。本実施例では、図17に示される外径および曲げ剛性分布を有するゴルフクラブシャフトを備えたゴルフクラブ(ドライバーおよび6番アイアン)を用いて計測を行なった。図18は、300名以上のゴルファのスイングについて計測した結果を示している。
【0103】
図18に示されるように、スイングテンポとヘッドスピード(インパクト時)との間には、必ずしも相関関係は見出されない。したがって、各々のゴルファのスイング特性の分類に際しては、スイングテンポおよびヘッドスピードの両方を考慮する必要がある。
【0104】
図19は、ヘッドスピードとミート率のSN比の高い頻度との関係をシャフト質量別に示した図である。図19に示す結果は、約90人の一般的なゴルファを母集団とするデータである。図19を参照して、シャフト質量が50gの場合は、ヘッドスピードが41(m/s)のときにSN比の高い頻度が極大となり、シャフト質量が60gの場合は、ヘッドスピードが43(m/s)のときにSN比の高い頻度が極大となり、シャフト質量が70gの場合は、ヘッドスピードが45(m/s)のときにSN比の高い頻度が極大となる。換言すると、ヘッドスピードが41(m/s)程度のゴルファには質量が50g程度のクラブシャフトが適しており、ヘッドスピードが43(m/s)程度のゴルファには質量が60g程度のクラブシャフトが適しており、ヘッドスピードが45(m/s)程度のゴルファには質量が70g程度のクラブシャフトが適している。このように、ヘッドスピードが大きいゴルファに対しては、質量が大きいクラブシャフトが適しているという傾向が見られる。
【0105】
図20は、図19の結果から導かれる、スイング特性と好ましいシャフト質量との関係を説明する図(第1チャート)である。図20を参照して、各々のゴルファのヘッドスピードと該ゴルファに適したシャフト質量とは完全には1対1に対応しないため、図20において、複数のシャフト質量(たとえば40gと50g)が適している領域が重なる部分が存在する。本実施例では、図12に示すように、40g,50g,60g,70g,80gの質量のクラブシャフトを揃えることで、約9割のゴルファをカバーすることができた。
【0106】
図21は、スイング特性と好ましいシャフト調子との関係を説明する図(第2チャート)である。図21において、「NORMAL」ラインは、優れたゴルファ(たとえば、プロまたはハンディキャップがシングル)の集団において、ヘッドスピードとスイングテンポとの関係が平均的なレベルであるラインを示す。ここでは、上記優れたゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポのデータから、最小二乗法により「NORMAL」ラインを導出している。図21を参照して、スイング特性がNORMALラインから(矢印DR3,DR4方向に)離れるに従って、シャフト曲げ剛性分布を標準から離す必要がある。図21においては、STIFFラインとSOFTラインとの間に分布するゴルファ(すなわち、ヘッドスピードとスイングテンポとのバランスがよいゴルファ)の場合は、標準的な曲げ剛性分布を有するタイプ(以下、「バットスタンダード」と称する。)のクラブシャフトが適しており、STIFFラインよりも右下に分布するゴルファ(すなわち、ヘッドスピードの割にスイングテンポが速いゴルファ)の場合は、手元部が比較的硬いタイプ(以下、「バットスティフ」と称する。)のクラブシャフトが適しており、SOFTラインよりも左上に分布するゴルファ(すなわち、ヘッドスピードの割にスイングテンポが遅いゴルファ)の場合は、手元部が比較的軟らかいタイプ(以下、「バットソフト」と称する。)のクラブシャフトが適している。
【0107】
図22は、スイング特性と好ましいフレックスとの関係を説明する図(第3チャート)である。図22においては、各々のゴルファに適したシャフトのフレックス(Xフレックス(♯X),Sフレックス(♯S),SRフレックス(♯SR),R1フレックス(♯R1),R2フレックス(♯R2),Lフレックス(♯L))が示されている。図22を参照して、ヘッドスピードが速く、かつ、スイングテンポが速いゴルファには、比較的硬いゴルフクラブシャフト(Xフレックス,Sフレックスなど)が適しており、ヘッドスピードが遅く、かつ、スイングテンポが遅いゴルファには、比較的柔らかいゴルフクラブシャフト(R2フレックス,Lフレックスなど)が適している。
【0108】
図23は、シャフト曲げ剛性分布(シャフト調子)の分類方法を説明する図である。図23を参照して、本願発明者らは、シャフト中央部の曲げ剛性値の平均値に対するシャフトの先端部の曲げ剛性値の平均値の比(TIP係数)と、シャフト中央部の曲げ剛性値の平均値に対するシャフトの手元部の曲げ剛性値の平均値の比(BUTT係数)とを用いてシャフト調子(曲げ剛性分布)の分類を行なった。ここでは、今日、日米欧で発売されているクラブシャフト(150種類程度)のTIP係数およびBUTT係数の平均値(TIP計数:0.54,BUTT係数:2.0)が原点とされている。
【0109】
一般に、曲げ剛性値の5%以下の変動は実感しにくいと言われている。したがって、BUTT係数が1.9以上2.1以下程度である範囲を、「第1カテゴリ」と分類し、TIP係数が0.54程度より大きく、かつ、BUTT係数が2.1程度より大きい範囲を、「第2カテゴリ」と分類し、TIP係数が0.54程度より小さく、かつ、BUTT係数が1.9程度より小さい範囲を、「第3カテゴリ」と分類することができる。なお、上記「第1カテゴリ」は、手元部の硬さが平均的である(すなわち、BUTT係数が1.9以上2.1以下程度である)「バットスタンダード」の領域に対応する。「第2カテゴリ」は、手元部が比較的硬く(すなわち、BUTT係数が2.1程度より大きく)、かつ、先端部が比較的硬い領域に含まれる。この領域を「バットスティフ」とする。「第3カテゴリ」は、手元部が比較的軟らかく(すなわち、BUTT係数が1.9程度より小さく)、かつ、先端部が比較的軟らかい領域に含まれる。この領域を「バットソフト」とする。
【0110】
なお、本願発明者らは、選定対象となるゴルフクラブシャフトとして、TIP係数とBUTT係数との関係が平均的なライン上に分布する「バットソフト」,「バットスタンダード」,「バットスティフ」のクラブシャフト(たとえば、図24における「SOFT」,「STANDARD」,「STIFF」)を準備した。このようにすることで、BUTT係数を決定すると同時にTIP係数も決定することができる。
【0111】
図23に示される「SOFT」,「STANDARD」,「STIFF」は、図24に示される片持ち梁モデルにおいて、すべて同じ撓み量を示すように設計されている。スイング中のクラブシャフトの変形は、手元側のしなりの影響が大きく、図24のような片持ち梁のモデルとして扱うことができる。上記のように、片持ち梁モデルにおいて、すべて同じ撓み量を示すようにすることで、どのクラブシャフトを用いて試打した場合にも、スイングテンポを均一に評価することができる。なお、図24において、手元側支点からシャフト先端までの距離:L1、支点間距離:L2、シャフト中央部側支点から測定点までの距離:L3、測定点−荷重点間距離:L4および荷重点からシャフト先端までの距離:L5は、たとえば、L1=1020(mm),L2=100(mm),L3=833(mm),L4=67(mm),L5=20(mm)である。
【0112】
図25は、スイング特性と、好ましいシャフト質量、フレックス、シャフト調子との関係を説明する図である。図25においては、スイング特性(ヘッドスピードおよびスイングテンポ)に対する好ましいシャフト質量(50g,60g,70g,80g)、フレックス、シャフト調子が重ねて記載されている。
【0113】
図25において、「G1」のスイング特性を有するゴルファの場合、シャフト質量としては70gまたは80gが適しており、フレックスとしては「SR」が適しており、シャフト調子としては「バットソフト」が適している。したがって、当該ゴルファの場合は、下記1〜2のクラブシャフトを有するゴルフクラブで試打が行なわれ、ミート率のSN比が最も高いクラブシャフトが選定される。
1.質量:70g、フレックス:SR、シャフト調子:バットソフト
2.質量:80g、フレックス:SR、シャフト調子:バットソフト
図25において、「G2」のスイング特性を有するゴルファの場合、シャフト質量としては60gまたは70gが適しており、フレックスとしては「SR」が適しており、シャフト調子としては「バットスタンダード」が適している。したがって、当該ゴルファの場合は、下記1〜2のクラブシャフトを有するゴルフクラブで試打が行なわれ、ミート率のSN比が最も高いクラブシャフトが選定される。
1.質量:60g、フレックス:SR、シャフト調子:バットスタンダード
2.質量:70g、フレックス:SR、シャフト調子:バットスタンダード
また、図25において、「G3」のスイング特性を有するゴルファの場合、シャフト質量としては50gまたは60gが適しており、フレックスとしては「S」が適しており、シャフト調子としては「バットスティフ」が適している。したがって、当該ゴルファの場合は、下記1〜2のクラブシャフトを有するゴルフクラブで試打が行なわれ、ミート率のSN比が最も高いクラブシャフトが選定される。
1.質量:50g、フレックス:S、シャフト調子:バットスティフ
2.質量:60g、フレックス:S、シャフト調子:バットスティフ
以上のようにして、ヘッドスピードおよびスイングテンポからシャフト質量、フレックスおよび曲げ剛性分布を同時に選択することができる。
【0114】
表2は、本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法を実施するにあたり、本願発明者らが準備したゴルフクラブシャフトのタイプを示す。
【0115】
【表2】
【0116】
本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法を実施するにあたり必要なクラブシャフトのタイプは、以下のように導出される。図26は、図25の記載から、「40g」のシャフトが適した範囲と、好ましいシャフト調子およびフレックスを示す部分を抜き出して示した図である。図26を参照して、シャフト質量が40gの場合、「バットソフト」が適した領域は、R2フレックスおよびR1フレックスが適した領域と重なり、「バットスタンダード」が適した領域は、R1フレックスおよびSRフレックスが適した領域と重なり、「バットスティフ」が適した領域は、R1フレックス、SRフレックスおよびSフレックスが適した領域と重なる。したがって、質量が40gのクラブシャフトに関しては、フレックスがR2フレックスおよびR1フレックスである「バットソフト」のクラブシャフトと、フレックスがR1フレックスおよびSRフレックスである「バットスタンダード」のクラブシャフトと、フレックスがR1フレックス、SRフレックスおよびSフレックスである「バットスティフ」のクラブシャフトとを準備すればよい。このように、本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法を実施するにあたり必要なクラブシャフトのタイプは、すべて図25から導出される。本実施例では、表2に示されるタイプのクラブシャフトを準備することで、約9割のゴルファをカバーすることができた。
【0117】
ゴルフクラブシャフトの設計において、シャフト質量、シャフト調子およびフレックスは、それぞれ互いに独立して調整することが可能である。したがって、表2に示されるように、5種類のシャフト質量、3種類のシャフト調子および5種類のフレックスのクラブシャフトを準備する場合、75(=5×3×5)タイプのクラブシャフトを準備することになる。これに対し、本実施例では、表2に示すように、合計34タイプ(バットソフト:11タイプ、バットスタンダード:11タイプ、バットスティフ:12タイプ)のクラブシャフトを準備するだけで、約9割のゴルファにとって最適なゴルフクラブシャフトを選定することができた。さらに、本実施例では、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポを計測するだけで、各々のゴルファに適したゴルフクラブシャフトを数本(たとえば2本)に絞り込むことができる。このように、本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法によれば、簡便な手法で、様々なタイプのクラブシャフトから各々のゴルファに最適なクラブシャフトを適切に選定することが可能である。なお、本願発明者らは、実際に選定された複数本のクラブシャフトを用いて各々のゴルファが試打を行なった結果、当該シャフトのうち少なくとも一本のクラブシャフトにより、十分に高いミート率のSN比が得られることを実験により確認している。
【0118】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】ゴルフクラブに装着された測定装置の正面図である。
【図2】測定装置の斜視図である。
【図3】測定装置の斜視図である。
【図4】測定装置の断面図である。
【図5】測定装置内部の分解斜視図である。
【図6】基板の側面図である。
【図7】仮想速度Vhと実測値との相関関係を示すグラフである。
【図8】処理部の構成を模式的に示す模式図である。
【図9】実際にヘッド速度を検出するときのフロー図である。
【図10】加速度センサからの出力に基づいて、演算部が算出した加速度を示すグラフである。
【図11】加速度センサおよび加速度センサからの出力に基づいて算出されたヘッド速度を示すグラフである。
【図12】スイング中におけるゴルフクラブの回転角速度ωを示すグラフである。
【図13】ゴルフプレヤーAのスイング過程における中心線距離の変動を示すグラフである。
【図14】ゴルフプレヤーBのスイング過程における中心線距離の変動を示すグラフである。
【図15】本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定システムの構成を示したブロック図である。
【図16】本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定方法を説明するフローチャートである。
【図17】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法に用いられるゴルフクラブシャフトの外径および曲げ剛性分布を示した図である。
【図18】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法における検知ステップにより検知されたヘッドスピードおよびスイングテンポの分布を示す図である。
【図19】ヘッドスピードとミート率のSN比の高い頻度との関係をシャフト質量別に示した図である。
【図20】スイング特性と好ましいシャフト質量との関係を説明する図(第1チャート)である。
【図21】スイング特性と好ましいシャフト調子との関係を説明する図(第2チャート)である。
【図22】スイング特性と好ましいフレックスとの関係を示した図(第3チャート)である。
【図23】シャフト曲げ剛性分布の分類方法を説明する図である。
【図24】片持ち梁モデルを説明する図である。
【図25】スイング特性と、好ましいシャフト質量、フレックス、シャフト調子との関係を説明する図である。
【図26】図15の記載から、「40g」のシャフトが適した範囲と、好ましいシャフト調子およびフレックスを示す部分を抜き出して示した図である。
【符号の説明】
【0120】
100 測定装置、110 ケース、112 表示部、113 リセットボタン、114 電源スイッチ、120,121 加速度センサ、125 基板、126 基板支持部、127 バンド、128 緩衝部材、130,131 歪ゲージ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイング分析装置に関し、特に、スイング部材の測定対象部位のスイング速度を測定可能なスイング分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からゴルフや野球バッティング等におけるスイング状態を測定するスイング分析装置等が各種提案されている。
【0003】
たとえば、特開平5−55156号公報に記載されたスイング分析装置は、軸状部分を有するスイング道具と、加速度検出方向が該軸状部分の軸線と略一致するように該軸状部分に間隔を開けて配置された2個の第1および第2加速度センサと、この第1および第2加速度センサから所定の距離離れて配置された横向きの加速度センサとを備えている。
【0004】
そして、プレヤーがスイング道具をスイングするときの運動は、プレヤーの腕とスイング部材との2つの振り子の並進運動として、スイング部材の回転運動の角速度を算出している。
【0005】
具体的には、第1加速度センサと第2加速度センサとの間の距離、並進加速度、および並進運度を行う方向とシャフトの角度等と、上記第1、第2および第3の加速度センサの検出する加速度との関係式からシャフトの回転運動の角速度を算出している。
【0006】
特許第3942825号公報には、スイング中のゴルフクラブの加速度を複数回測定して、この加速度データから最大加速度基準点およびスイング時間を求め、このスイング時間等から所定の周波数を算出するゴルフスイング周波数分析装置が記載されている。そして、この算出した周波数に基づいて、所望の振動周波数を持つゴルフクラブをゴルファーのスイングに適合させる。
【0007】
特開平10−43349号公報に記載されたスイング診断装置においては、プレヤーの手首の甲等に装着された加速度センサを備え、この加速度センサからの出力に基づいて、プレヤーのスイングを分析する。
【0008】
特開平11−128430号公報には、ゴルフクラブ内に装着された加速度センサと、発光ダイオードまたは半導体レーザと、制御回路とを備えたゴルフクラブが提案されている。
【0009】
特開2001−129145号公報には、バットやゴルフクラブなどのヘッド付近に、バット等の軸方向の加速度測定用加速度センサと、円運動接線方向の加速度測定用加速度センサと、バットの軸方向および接線方向に直角方向の加速度測定用加速度センサとを備え、ヘッドスピードが最大となる瞬間等を測定することができるスイング練習機が提案されている。
【特許文献1】特開平5−55156号公報
【特許文献2】特許第3942825号公報
【特許文献3】特開平10−43349号公報
【特許文献4】特開平11−128430号公報
【特許文献5】特開2001−129145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実際のスイング運動は、単なる2重振り子ではなく、たとえば、シャフトの中心軸線を中心とする回転運動や、シャフトの撓りなどもあり、スイング時のシャフトは、非常に複雑な運動をしている。
【0011】
特開平5−55156号公報においては、第1加速度センサの出力をa1とし、第2加速度センサの出力をa2とし、さらに、第1および第2加速度センサ間の距離をdとして、(シャフトの回転角度)=((a1−a2)/d)1/2として、シャフトの角速度を算出している。しかし、特公平5−55156号公報に記載された手法では、複雑な運動をするシャフトの運動を角速度を正確に算出することができない。
【0012】
上記特許第3942825号公報に記載されたゴルフスイング周波数分析装置においては、スイング時におけるゴルフクラブのスイング速度の検知が行われておらず、スイング速度に基づいて、スイングの分析を行うことができない。
【0013】
上記特開平10−43349号公報に記載されたスイング診断装置においては、スイング時のスイング速度を算出することができず、特開平11−128430号公報に記載されたゴルフクラブにおいては、ゴルフクラブに装着された加速度センサや制御回路からゴルフクラブの角速度を正確に算出することができない。
【0014】
特開2001−129145号公報に記載されたスイングスピード練習機によれば、少なくとも4つの加速度センサを要し、しかもスイングの速度を測定するのではなくスイング速度が最大となる時点(瞬間)をスイング中に検出するのみで、必要とする加速度計の数も多く、装置自体のコストが高くなるという問題がある。
【0015】
本発明は、上記ような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、正確なスイング速度を算出することができ、さらに、装置自体のコストの低廉化が図られたスイング分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るスイング分析装置は、使用者のスイングを分析するのに使用可能な情報を出力可能なスイング分析装置であって、使用者によってスイングされ、長手方向を有するスイング部材に設けられ、長手方向に間隔をあけて配置された第1および第2加速度センサと、第1および第2加速度センサに対して長手方向に間隔を隔てて位置するスイング部材の測定対象部位の速度を演算可能な演算部と演算結果を表示する表示部を備える。そして、上記演算部は、スイング時にスイング部材が円運動しているものと仮定して、第1加速度センサと第2加速度センサとの間の距離、第1加速度センサと測定対象部位との間の距離、および第1加速度センサと第2加速度センサとからの出力に基づいて、測定対象部位における仮想速度を演算し、仮想速度を利用して測定対象部位の速度を演算し、表示部に表示する。
【0017】
好ましくは、上記演算部は、仮想速度と当該スイング時に測定した実測速度とによって算出され、仮想速度を実測速度に一致または近似させる補正データが予め格納され、演算部は、測定時における仮想速度を補正データに基づいて補正することで、測定対象部位の速度を演算する。
【0018】
好ましくは、上記スイング部材の周面に設けられ、弾性変形可能な緩衝部材と、緩衝部材上に設けられた基板とをさらに備える。そして、上記第1および第2加速度センサは、基板の主表面上に設けられる。好ましくは、上記スイング部材に装着された歪ゲージをさらに備え、演算部は、歪ゲージからの出力に基づいて、スイング部材の撓み量を演算する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るスイング分析装置によれば、スイング速度を正確に算出することができ、さらに、製造コストの低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態に係るスイング分析装置について説明する。
図1は、ゴルフクラブ200に装着された測定装置(スイング分析装置)100の正面図である。この図1に示すように、ゴルフクラブ200は、ゴルフプレヤーが把持するグリップ201と、ボールを打球するヘッド203と、グリップ201とヘッド203とを接続するシャフト202とを備えている。
【0021】
測定装置100は、ゴルフクラブ200(グリップ201)の上端部から約12インチ(約304mm)〜15インチ(381mm)に位置する部分に測定装置100の重心Qが位置するようにシャフト202に装着されている。このような位置に測定装置100が装着されることで、測定装置100が装着される前後において、ゴルフクラブ200の特性が大きく変化することを抑制することができる。
【0022】
図2および図3は、測定装置100の斜視図である。これら、図2および図3に示すように、測定装置100は、内部に加速度センサ等を収容するケース110と、ヘッド速度等を表示する表示部112と、電源スイッチ114と、リセットボタン113とを備えている。そして、ケース110は、上部ケーシング115および下部ケーシング116とを含み、これら上部ケーシング115および下部ケーシング116によって、ゴルフクラブ200のシャフト202が挿入される挿入孔111および挿入孔117が規定されている。なお、挿入孔111および挿入孔117の内径は、シャフト202の外径よりも大きくなるように形成されており、スイング時にシャフト202が撓ったとしても、シャフト202が挿入孔111および挿入孔117の内周面と接触することが抑制されている。
【0023】
図4は、測定装置100の断面図であり、図5は、測定装置100内部の分解斜視図である。これら図4および図5に示すように、測定装置100は、シャフト202の表面上に装着されている。測定装置100は、シャフト202の周面上に設けられ、たとえば、ポリエステル等の弾性変形可能な緩衝部材128と、バンド127によって緩衝部材128を介してシャフト202に固定された基板支持部126と、この基板支持部126の上面上にボルトによって固定された基板125とを備えている。
【0024】
基板支持部126は、シャフト202の外表面形状に沿って湾曲し、シャフト202および緩衝部材128を受け入れ可能な湾曲部124と、湾曲部124の側辺部に連設された平坦部123とを備えている。平坦部123上に、基板125が固定されている。そして、平坦部123の側辺部は、上部ケーシング115と下部ケーシング116とによって挟持されており、上部ケーシング115と下部ケーシング116とは互いにボルトによって固定されている。
【0025】
図6は、基板125の側面図である。図5および図6に示すように、測定装置100は、基板125の主表面129B上に半田等によって装着された加速度センサ120,121と、基板125の主表面129A上に装着された表示部112と、各種データ演算処理を行う処理部150と、リセットボタン113とを備えている。なお、処理部150、表示部112、およびリセットボタン113が設けられた基板125の主表面129Aに対して、反対側に位置する主表面129B上に加速度センサ120および加速度センサ121が設けられている。なお、主表面129Bは、シャフト202と対向しており、加速度センサ120および加速度センサ121は、処理部150や表示部112よりも、シャフト202に近接するように配置されている。加速度センサ120と加速度センサ121とは、シャフト202の中心軸線P方向(長手方向)に間隔を隔てて配置されている。表示部112は、加速度センサ120と加速度センサ121との間に配置されている。
【0026】
ゴルフプレヤーがゴルフクラブ200をスイングすることで、シャフト202が変形したとしても、緩衝部材128が弾性変形することで、シャフト202の撓みが吸収される。これにより、スイング時にシャフト202が変形したとしても、基板支持部126および基板125が変形することが抑制され、加速度センサ120および加速度センサ121の位置が変位することが抑制されている。
【0027】
そして、加速度センサ120および加速度センサ121は、各装着位置におけるシャフト202の加速度を正確に測定することができる。加速度センサ120および加速度センサ121は、シャフト202の中心軸線P方向の加速度を測定可能なように基板125の主表面129Bに装着されている。なお、加速度センサ120および加速度センサ121としては、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン株式会社(Freescale Semiconductor Japan Ltd.)製のSurface Mount Micromachined Accelerometer(製品名)等を採用することができる。
【0028】
ここで、上記加速度センサ120および加速度センサ121を用いて、ボールとのインパクト時におけるヘッド203のフェース面の幾何学的な中心点Rの速度の検知方法について説明する。なお、フェース面の幾何学的な中心点Rは、加速度センサ120および加速度センサ121に対して中心軸線P方向に間隔を隔てた位置に位置している。
【0029】
図1において、ゴルフプレヤーがゴルフクラブ200をスイングすると、時々刻々において、ゴルフクラブ200は中心軸線P上に位置する仮想回転中心Oを中心として等速円運動していると仮定する。
【0030】
そして、ヘッド203とボールとのインパクト時を検出し、インパクト時においても、ゴルフクラブ200が仮想回転中心Oを中心として等速円運動しているものとして、インパクト時における各加速度センサ120および加速度センサ121が検出する角加速度から、ヘッド203の中心点Rの仮想速度を算出する。その一方で、予め、ゴルフクラブ200が円運動するものとして算出したときの中心点Rの仮想速度と、当該スイング時において、他の測定機器によって実測したヘッド203の速度(スイング速度)との相関関係を算出しておき、仮想速度を実測した速度に一致または近似させるための補正関数を算出する。そして、測定時にゴルフプレヤーがスイングすることで、算出された上記仮想速度を、上記補正関数で補正し、実測値に近似されたヘッド速度を算出する。
【0031】
図1を用いて、上記仮想速度の算出方法について具体的に説明する。図1において、加速度センサ120と加速度センサ121とは、中心軸線P方向に配列しており、互いに、中心軸線P方向にセンサ間距離r3離れている。加速度センサ120は、仮想回転中心Oから中心軸線P方向に中心線距離r2離れた位置に装着されている。また、加速度センサ121は、仮想回転中心Oから中心線距離r1離れた位置に装着されている。そして、ヘッド203のフェースの中心点Rと、加速度センサ120とは、中心軸線P方向に中心線距離L離れている。
【0032】
ゴルフプレヤーがゴルフクラブ200をスイングして、インパクト時におけるゴルフクラブ200の回転角速度をωとする。さらに、加速度センサ120が検出した加速度をα2とし、加速度センサ121が検出した加速度をα1とすると、下記の数1、数2の式が成立する。さらに、中心点Rにおける仮想速度Vhは、下記数3によって示すことができる。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
【数3】
【0036】
そして、上記数1、数2および数3からω、r1およびr2の項を消去することで、仮想速度Vhは、下記数4によって表すことができる。
【0037】
【数4】
【0038】
ここで、中心線距離Lおよびセンサ間距離r3は、測定装置100によって決定されるものであり、既知の値である。α1およびα2は、各加速度センサ120および加速度センサ121によって測定することができる。
【0039】
したがって、加速度センサ120および加速度センサ121の出力値によって、仮想速度Vhを算出することができる。
【0040】
図7は、仮想速度Vhと実測値との相関関係を示すグラフである。この図7を用いて、仮想速度Vhを実測値に近似させる補正式の算出方法について説明する。なお、図7に示すグラフにおいて、横軸は、中心点Rの実測した速度(スイング速度)を示し、縦軸は、加速度センサ120,121からの出力値に基づいて、上記数4の式から算出した仮想速度Vhである。
【0041】
この図7に示すように、ゴルフクラブ200をスイングすることで、加速度センサ120と加速度センサ121からの出力値を、上記数4に代入して、算出したときの算出値(仮想速度Vh)と、当該スイング時における中心点Rの速度を別の測定機器によって実測した実測値とについて、複数サンプリングする。そして、この図7に示すように、各結果から下記数5に示すような近似式を導出する。なお、実測値を測定する測定機器としては、たとえば、モーションアナリシス社製MAC-3D動作解析システム等を採用することができる。
【0042】
【数5】
【0043】
なお、この数5に示される近似式は、例示であって、これに限られない。また、近似方法も、1次近似に限られず、2次近似の多項式近似、対数近似、指数近似等であってもよい。
【0044】
そして、上記数5のような補正データ(近似式)が格納された測定装置100を用いて、実際にヘッド速度を測定する際には、加速度センサ120および加速度センサ121によって検出された加速度から仮想速度Vhを算出し、上記数5に示す近似式に代入することで、中心点Rの正確なヘッド速度Vを算出することができる。
【0045】
ここで、上記図7に示すように、ゴルフクラブ200は、スイング過程において、等速円運動するものと仮定することで、仮想速度Vhと実測の速度との間に大きな相関関係を見出すことができる。これにより、仮想速度Vhを実測値に高精度に近似させることができ、上記数5に示される近似式精度を高精度にすることができる。なお、上記数5に示されるR2乗値は、0.957程度となっている。
【0046】
なお、サンプリング数を図7に示す例よりも多くすることで、さらに数5の近似式よりも、近似精度のよい近似式を算出することができることはいうまでもない。
【0047】
図8は、処理部150の構成を模式的に示す模式図である。この図8に示すように、処理部150は、加速度センサ120からの出力電圧をアナログ−デジタル変換する変換器151と、加速度センサ121からの出力電圧をアナログ−デジタル変換する変換器152とを備えている。
【0048】
処理部150は、変換器151,152から出力される電圧に基づいて、シャフト202のうち、各加速度センサ120および加速度センサ121が装着された部分の加速度を算出する演算部153と、演算部153からの出力データを記憶するメモリ154とを備えている。
【0049】
測定装置100は、電源部160を備えており、加速度センサ120,121には、電源部160から所定電圧の直流電力が供給されている。電源部160は、電池161と、ON/OFFを切替可能な電源スイッチ114とを備えている。
【0050】
図9は、実際にヘッド速度を検出するときのフロー図である。この図9および上記図8に示すように、ヘッド速度を検出する際に、まず、測定装置100をゴルフクラブ200の所定の位置に装着し、測定装置100の電源スイッチ114をONとする(STEP2)。さらに、リセットボタン113を押して、処理部150および表示部112を初期状態に戻す(STEP3)。これにより、たとえば、表示部112に前回のヘッド速度が表示されている場合には、リセットボタン113を押させることで、測定装置100は、新たなヘッド速度を測定可能な状態となる(STEP3)。
【0051】
そして、ボールを配置した状態で、ゴルフプレヤーが、ゴルフクラブ200を把持してスイングの準備が完了する(STEP4)。
【0052】
そして、ゴルフプレヤーが、測定装置100が装着されたゴルフクラブ200をスイングする(STEP5)。ここで、加速度センサ120および加速度センサ121は、電源スイッチ114がONとなると、電力が電源部160から供給され、各装着位置における加速度に対応する出力を演算部153に出力する。演算部153は、加速度センサ120,121から入力される電圧(信号)に基づいて、加速度センサ120および加速度センサ121が装着された位置における各加速度を算出する(STEP6)。
【0053】
演算部153は、時々刻々、加速度センサ120および加速度センサ121からの入力される信号に基づいて、加速度センサ120および加速度センサ121が設けられた位置における加速度を算出する。
【0054】
図10は、加速度センサ120および加速度センサ121からの出力に基づいて、演算部153が算出した加速度をローパスフィルタを通して示したグラフである。
【0055】
演算部153は、加速度センサ120および加速度センサ121からの出力に基づいて算出した各加速度が、いずれも、所定の時間内に所定以上変動したときをインパクト時として、検出する(STEP7)。
【0056】
インパクト時においては、ヘッド203とゴルフボールとが衝突し、ヘッド203の加速度が急激に変動する。このため、加速度センサ120および加速度センサ121からの出力をフィルタを通して算出された加速度に基づいて、インパクト時を特定することができる。
【0057】
そして、演算部153は、インパクト直前における加速度データをA/D変換(アナログ→ディジタル)する(STEP8)。そして、変換されたデータが、メモリ154に正常にラッチ(保持)されたかを確認する(STEP9)。演算部153は、ラッチされた加速度データに基づいて、仮想速度Vhを算出する。その後、この仮想速度Vhに基づいて、ヘッド速度Vを算出する。そして、算出したヘッド速度Vを表示部112に表示する(STEP10)。なお、表示部112としては、たとえば、4桁表示が可能な液晶表示部等が採用される。なお、図11は、加速度センサ120および加速度センサ121からの出力に基づいて算出されたヘッド速度を示すグラフであり、スイング中におけるヘッド速度を示すグラフである。なお、ヘッド速度を算出することで、ゴルフクラブ200の回転角速度ωをも算出することができる。そして、図12は、スイング中におけるゴルフクラブ200の回転角速度ωを示すグラフである。
【0058】
そして、図9に示すように、再度スイングする際には、リセットボタン113が押されることで、測定装置100は、再度、新たなヘッド速度を算出可能な状態となる(STEP10,11)。その一方で、ヘッド速度の算出を終了する際には、電源スイッチ114をOFFとする(STEP12)。これにより、ヘッド速度の算出が終了する。
【0059】
このように、本実施の形態に係る測定装置100によれば、インパクト時のヘッド速度を高精度に検出することができる。このため、正確なスイング速度に基づいて、ゴルフプレヤーのスイングを分析することができる。
【0060】
さらに、測定装置100は、ゴルフクラブ200に装着可能となっており、測定装置100以外の機器を用いずに、ヘッド速度を出力することができ、測定場所を問わず、簡易にヘッド速度を測定することができる。
【0061】
ここで、図5に示すように、測定装置100は、シャフト202の表面に装着された歪ゲージ130および歪ゲージ131を備えている。
【0062】
歪ゲージ130は、シャフト202の周面のうち、飛球方向(X軸方向)に配列する側面上に配置され、歪ゲージ131は、この飛球方向と直交する方向(Y方向)に配列する側面上に貼付されている。なお、好ましくは、歪ゲージ130および歪ゲージ131は、グリップ側端部から約12インチ(約304mm)〜15インチ(381mm)の位置に装着される。
【0063】
図8において、歪ゲージ130および歪ゲージ131からの出力電圧は、ブリッジ155,156を介して、増幅器157,158に入力され、その後、演算部159に出力される。演算部159は、入力された電圧に基づいて、シャフト202のうち、歪ゲージ130および歪ゲージ131が装着された部分の各歪み量を算出する。そして、各歪み量から合成歪み量を算出する。そして、この合成歪み量からシャフト202の撓み量を算出する。
【0064】
シャフト202の撓み量は、トップオブスイング近傍において最大となる。この「最大撓み量」は、「スイングテンポ」を示す一指標となる。なお、一般には、スイング中の好ましい「最大撓み量」は、70〜130mm程度(さらに好ましくは100mm程度)である。上記「最大撓み量」は、シャフト手元部に対する先端部の最大変位量である。ここでは、グリップ側端部から一般にゴルファがグリップする長さ(約7インチ、約180mm)までの部分を手元部として、手元部に対する先端部の最大変位量を算出した。
【0065】
演算部159は、算出した最大撓み量をメモリ154に出力し、メモリ154は、入力された最大撓み量を記憶する。メモリ154に記憶された最大撓み量は、図示されない表示切替部の操作によって、表示部112に表示される。この最大撓み量に基づいて、スイングテンポを判断することができ、スイングの分析を行うことができる。
【0066】
測定装置100は、加速度センサ120からの出力に基づいて、加速度α2を検出することができると共に、加速度センサ121からの出力に基づいて、加速度α1を検出することができる。
【0067】
このため、上記数1および数2から回転半径r1を算出することができる。図13は、ゴルフプレヤーAのスイング過程における回転半径r1の変動を示すグラフであり、図14は、ゴルフプレヤーBのスイング過程における回転半径r1の変動を示すグラフである。
【0068】
この図13および図14において、ゴルフプレヤーによって、回転半径r1の最小値が異なることに着目して、回転半径r1の最小値や回転半径r1のときからインパクト時までの時間T等から各ゴルフプレヤーのスイングタイプを分析するようにしてもよい。特に、コックの使い方等の分析に有効である。なお、図13および図14において、横軸は、測定時間(ms)を示し、縦軸は、回転半径(m)を示す。そして、図13は、並進速度と回転角速度の比が大きいゴルフプレヤーAの回転半径の時間変化を示している。図14は、並進速度と回転角速度との比が小さいゴルフプレヤーBの回転半径の時間変化を示している。
【0069】
なお、上記測定装置100をゴルフクラブのシャフトの選定システムに適用した場合について説明する。
【0070】
図15は、本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定システムの構成を示したブロック図である。図15を参照して、本実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定システムは、ゴルファのスイングにおけるインパクト時のヘッドスピードを検知すると共に、ゴルファのスイングテンポを検知する測定装置100とを備える。
【0071】
上記ゴルフクラブシャフト選定システムは、各々のゴルファのスイング特性に対応したシャフト質量およびシャフト調子を示すチャート300と、チャート300を参照しながら、測定装置100により検知されたヘッドスピードおよびスイングテンポに基づいてゴルファに適したゴルフクラブシャフトを選定する選定ユニット400と、選定ユニット400により選定されたゴルフクラブシャフトを表示する表示装置500とをさらに備える。ここで、チャート300は、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト質量を示した第1チャート310と、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト調子を示した第2チャート320と、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいフレックスを示した第3チャート330(他のチャート)とを含む。
【0072】
チャート300は、たとえば、コンピュータのハードディスクに記憶される。選定ユニット400としては、たとえば、CPUを有するコンピュータが用いられる。選定ユニット400に接続される表示装置500は、ディスプレイ装置であってもよいし、プリンタ装置であってもよい。
【0073】
選定ユニット400には、測定装置100からの情報が入力される。選定ユニット400は、チャート300を参照しながら、測定装置100による解析結果に基づいて、各々のゴルファのスイング特性を分類し、その分類結果に基づいて、各々のゴルファに適したシャフト質量およびシャフト調子を有するゴルフクラブシャフトを選定する。選定結果は表示装置500に表示される。
【0074】
なお、チャート300は、ヘッドスピード/スイングテンポと好ましいシャフト質量/シャフト調子との関係を図示したパネルであってもよい。また、選定ユニット400に代えて、「人」が、好ましいシャフトの選定を行なってもよい。
【0075】
このゴルフクラブ選定システムにおいては、測定装置100によって、スイング中のシャフトの最大撓み量に基づいてゴルファのスイングテンポが検知されている。なお、スイング時間、トップオブスイングの所定時間前のクラブヘッド速度(スイングスピード)およびトップオブスイング近傍におけるクラブヘッド加速度(スイング加速度)のいずれかに基づいても、ゴルフクラブシャフトの選定に必要な「スイングテンポ」を正確に検知することができ、これらのパラメータを検出する装置を設けてもよい。
【0076】
図16は、本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定方法を説明するフローチャートである。図16を参照して、S10にて、スイングにおけるインパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポが測定装置100によって計測される。
【0077】
次に、S20にて、測定装置100による計測結果に基づいて、そのゴルファのスイングの特性を分類する。すなわち、そのゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポが、予め準備された複数のグループ中のどのグループに属するかについて判別する。
【0078】
そして、S30にて、上記分類結果に基づいて、そのゴルファのゴルファのスイング特性(ヘッドスピードおよびスイングテンポ)に応じたクラブシャフトを選定する。この際に、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト質量を示した第1チャート310と、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト調子を示した第2チャート320と、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいフレックスを示した第3チャート330とを有するチャート300が参照される。なお、S30にて選定されるゴルフクラブシャフトは、1本であってもよいし、複数本(たとえば2〜3本)であってもよい。
【0079】
なお、S20の分類ステップは省略することが可能である。つまり、S10における計測結果に基づいてS30の選定ステップが行なわれてもよい。
【0080】
続いて、S40にて、選定されたクラブシャフトを有するゴルフクラブを用いて試打を行なう。S50にて、試打を行なったゴルフクラブの評価を行なう。ここでは、たとえば「ヘッドスピード」、「ボール速度」、「ミート率」、「ボールスピン量」、「飛出角度」、「打点位置のばらつき」、「弾道のばらつき」などの客観的なデータと、「タイミングが取りやすい/タイミングが取りにくい」、「振りやすい/振りにくい」というゴルファの感覚とを評価の基準として用いることが可能である。
【0081】
ここで、S50における評価方法の例について説明する。
上記「打点位置のばらつき」は、たとえば、打球時にボールが接触した部分が変色するいわゆる「フェイスシール」をクラブヘッドのフェイス部に貼付して試打することで検知することができる。
【0082】
また、「ミート率」を用いて評価する場合には、以下のような手法を用いる。
ミート率(=ボール初速/ヘッドスピード)は、高ければ高いほど良いとされる望大特性である。i球目のミート率をyiとすると、ミート率yi(i=1〜n)のSN比(η)は、下記の数6,数7により求められる。
【0083】
【数6】
【0084】
【数7】
【0085】
質量が50g,60g,70gのクラブシャフトを用いて、それぞれ3回ずつ試打を行なった場合のミート率およびそのSN比の一例を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示される例では、シャフト質量が60gの場合に最もSN比が高くなる。したがって、質量60gのクラブシャフトが最も良いと判断される。
【0088】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定方法は、ゴルファのスイングにおけるインパクト時のヘッドスピードおよび該ゴルファのスイングテンポを検知するステップ(S10)と、検知ステップによる検知結果に基づいてゴルファのスイングを分類するステップ(S20)と、分類ステップによる分類結果に基づいてゴルファに適したシャフト質量およびシャフト調子を有するゴルフクラブシャフトを選定するステップ(S30)とを備える。
【0089】
本願発明者らは、ゴルファのスイングタイプ(インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポ)と、該ゴルファに適したシャフト質量およびシャフト調子との間に一定の関係が見出されることを確認している。したがって、上記クラブシャフト選定方法によれば、シャフト質量およびシャフト調子に関して、客観的な選定基準を得ることができる。結果として、各々のゴルファにより適したゴルフクラブを選定することが可能になる。
【0090】
また、本願発明者らは、各々のゴルファのスイング特性に応じたシャフト調子の選定には、長さ方向の中央部(シャフト中央部)におけるクラブシャフトの曲げ剛性値と手元部および先端部におけるクラブシャフトの曲げ剛性値との関係が密接に関連していることを確認している。したがって、選定対象となるシャフト調子の分類を、該クラブシャフトにおけるシャフト中央部の曲げ剛性値と、先端部における該クラブシャフトの曲げ剛性値と、手元部における該クラブシャフトの曲げ剛性値との関係に基づいて行なうことで、各々のゴルファにより適したシャフト調子の選定を行なうことができる。
【0091】
なお、本実施の形態においては、チャート300が、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト質量を示した第1チャート310と、インパクト時のヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいシャフト調子を示した第2チャート320と、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポに応じた好ましいフレックスを示した第3チャート330とを有する場合について主に説明したが、チャート300は、第1と第2チャート310,320のみを有してもよいし、第1チャート310のみを有してもよいし、第2チャート320のみを有してもよい。
【0092】
チャート300が第1から第3チャート310,320,330を有する場合は、各々のゴルファに適したシャフト質量、シャフト調子およびフレックスを有するクラブシャフトの選定を支援することができる。チャート300が第1と第2チャート310,320のみを有する場合は、各々のゴルファに適したシャフト質量およびシャフト調子を有するクラブシャフトの選定が支援される。また、チャート300が第1チャート310のみを有する場合は、各々のゴルファに適したシャフト質量を有するクラブシャフトの選定が支援され、チャート300が第2チャート320のみを有する場合は、各々のゴルファに適したシャフト調子を有するクラブシャフトの選定が支援される。
【0093】
なお、上述したS40の試打に用いる複数の試打クラブとしては、同一のクラブヘッド、同一のヘッド質量、同一の長さおよび同一のグリップを有するものを用いることが好ましい。これにより、各々のゴルファに適したクラブシャフトの選定を行なうことで、各々のゴルファに適したゴルフクラブを選定することができる。
【実施例1】
【0094】
図17は、本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法に用いられるゴルフクラブシャフトの外径および曲げ剛性分布(EI分布)を示した図である。なお、図17における横軸は、ゴルフクラブシャフトのクラブヘッド側端部からの距離を示す。図17の例では、ゴルフクラブシャフトの外径および曲げ剛性は、クラブヘッド側からグリップ側に向かって大きくなる。
【0095】
図17においては、それぞれ異なるEI分布を有しながら、片持ち梁モデルでは同じ撓み量を示す3本のクラブシャフト(バットスタンダード/バットスティフ/バットソフト)のデータが示されている。「片持ち梁モデル」および「バットスタンダード/バットスティフ/バットソフト」の詳細については後述する。
【0096】
以下に、ゴルフクラブシャフトの曲げ剛性分布の測定方法について説明する。
曲げ剛性値は、3点曲げ試験による変位−荷重の傾きから以下の計算式により求められる。
EI=(W/δ)×L13/48
EI:曲げ剛性値、W:荷重、δ:荷重点のたわみ量(変位)、L1:スパン(支点間距離)
本願発明者らが行なった3点曲げ試験での諸条件を次に示す。
【0097】
支点は、R10mm(半径10mm)のものを、その支点間の距離:スパンL1を200mmに設定し、荷重点は、R75mm(半径75mm)の圧子治具(鉄製)を用い、支点間の中央部で負荷するように設定する。試験速度は、2mm/分で、W/δは、荷重:10kgf(98N)〜20kgf(196N)の時の、たわみ量変化(変位)のデータを抽出する。これにより、荷重点の曲げ剛性値が求められる。荷重点を移動させて計測を繰返すことで、曲げ剛性分布が求められる。
【0098】
一方、4点曲げ試験による曲げ剛性値の計測は、外径の割に肉厚が薄い場合(特に手元部)に有効である。4点曲げ試験の場合は、曲げ剛性値は、次式にて計算される。
EI=(W/δ)×(a/48)×(3L12−4a2)
EI:曲げ剛性値、W:荷重(但し、荷重点は2箇所で、各々の荷重はW/2)、L1:スパン(支点間距離)、δ:スパンの中央部(支点間中央部)のたわみ量(変位)、a:片側の支点から隣り合う荷重点までの距離、(L1−a)/2:2ヶ所の荷重点間の距離
本願発明者らが行なった4点曲げ試験での諸条件を次に示す。
【0099】
支点は、R75mm(半径75mm)のものを、荷重点は、R75mm(半径75mm)の圧子治具(鉄製)を用い、その支点間の距離:スパンL1を300mmに設定し、2ヶ所の荷重点間の距離を130mmに、すなわち、片側の支点から隣り合う荷重点までの距離:aを85mmに設定した。試験速度は、2mm/分で、W/δは、荷重:15kgf(147N)〜20kgf(196N)の時の、たわみ量変化(変位)のデータを抽出する。これにより、2ヶ所の荷重点の中央部の曲げ剛性値が求められる。荷重点を移動させて計測を繰返すことで、曲げ剛性分布が求められる。
【0100】
また、曲げ剛性値を測定したい位置に、一方向の歪みゲージをゴルフクラブシャフトの長手方向に貼付し、該シャフトのグリップ部を固定し、該シャフトのヘッド側に荷重を負荷する際の歪み変化εを計測することにより、曲げ剛性値EIを算出する方法もある。この場合、曲げ剛性値は、次式にて計算される。
EI=(W×L2)×(d/2)/ε
EI:曲げ剛性値、W:荷重、L2:歪み計測位置から荷重点までの距離、d:歪み測定位置の外径、ε:歪み量
本願発明者らが行なった歪みゲージを用いた時の試験での諸条件を次に示す。
【0101】
まず、曲げ剛性値を計測したい位置に歪みゲージを貼付する。次に、該シャフトのグリップ側の50mmを、円筒用チャック(三つ爪チャック)で、歪みゲージが上面になるように固定する。荷重点は、歪みゲージの位置から該シャフトのヘッド側L2:700mmの位置に負荷する。負荷方法は、W:1kgf(9.8N)の錘を吊り下げる。その錘を吊り下げる前後の歪みゲージの出力される値を歪み量εとして用いる。なお、歪み測定位置の外径dは、別途計測される。
【0102】
図18は、本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法における検知ステップにより検知されたヘッドスピードおよびスイングテンポ(スイング中のクラブシャフトの最大撓み量)の分布を示す図である。本実施例では、図17に示される外径および曲げ剛性分布を有するゴルフクラブシャフトを備えたゴルフクラブ(ドライバーおよび6番アイアン)を用いて計測を行なった。図18は、300名以上のゴルファのスイングについて計測した結果を示している。
【0103】
図18に示されるように、スイングテンポとヘッドスピード(インパクト時)との間には、必ずしも相関関係は見出されない。したがって、各々のゴルファのスイング特性の分類に際しては、スイングテンポおよびヘッドスピードの両方を考慮する必要がある。
【0104】
図19は、ヘッドスピードとミート率のSN比の高い頻度との関係をシャフト質量別に示した図である。図19に示す結果は、約90人の一般的なゴルファを母集団とするデータである。図19を参照して、シャフト質量が50gの場合は、ヘッドスピードが41(m/s)のときにSN比の高い頻度が極大となり、シャフト質量が60gの場合は、ヘッドスピードが43(m/s)のときにSN比の高い頻度が極大となり、シャフト質量が70gの場合は、ヘッドスピードが45(m/s)のときにSN比の高い頻度が極大となる。換言すると、ヘッドスピードが41(m/s)程度のゴルファには質量が50g程度のクラブシャフトが適しており、ヘッドスピードが43(m/s)程度のゴルファには質量が60g程度のクラブシャフトが適しており、ヘッドスピードが45(m/s)程度のゴルファには質量が70g程度のクラブシャフトが適している。このように、ヘッドスピードが大きいゴルファに対しては、質量が大きいクラブシャフトが適しているという傾向が見られる。
【0105】
図20は、図19の結果から導かれる、スイング特性と好ましいシャフト質量との関係を説明する図(第1チャート)である。図20を参照して、各々のゴルファのヘッドスピードと該ゴルファに適したシャフト質量とは完全には1対1に対応しないため、図20において、複数のシャフト質量(たとえば40gと50g)が適している領域が重なる部分が存在する。本実施例では、図12に示すように、40g,50g,60g,70g,80gの質量のクラブシャフトを揃えることで、約9割のゴルファをカバーすることができた。
【0106】
図21は、スイング特性と好ましいシャフト調子との関係を説明する図(第2チャート)である。図21において、「NORMAL」ラインは、優れたゴルファ(たとえば、プロまたはハンディキャップがシングル)の集団において、ヘッドスピードとスイングテンポとの関係が平均的なレベルであるラインを示す。ここでは、上記優れたゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポのデータから、最小二乗法により「NORMAL」ラインを導出している。図21を参照して、スイング特性がNORMALラインから(矢印DR3,DR4方向に)離れるに従って、シャフト曲げ剛性分布を標準から離す必要がある。図21においては、STIFFラインとSOFTラインとの間に分布するゴルファ(すなわち、ヘッドスピードとスイングテンポとのバランスがよいゴルファ)の場合は、標準的な曲げ剛性分布を有するタイプ(以下、「バットスタンダード」と称する。)のクラブシャフトが適しており、STIFFラインよりも右下に分布するゴルファ(すなわち、ヘッドスピードの割にスイングテンポが速いゴルファ)の場合は、手元部が比較的硬いタイプ(以下、「バットスティフ」と称する。)のクラブシャフトが適しており、SOFTラインよりも左上に分布するゴルファ(すなわち、ヘッドスピードの割にスイングテンポが遅いゴルファ)の場合は、手元部が比較的軟らかいタイプ(以下、「バットソフト」と称する。)のクラブシャフトが適している。
【0107】
図22は、スイング特性と好ましいフレックスとの関係を説明する図(第3チャート)である。図22においては、各々のゴルファに適したシャフトのフレックス(Xフレックス(♯X),Sフレックス(♯S),SRフレックス(♯SR),R1フレックス(♯R1),R2フレックス(♯R2),Lフレックス(♯L))が示されている。図22を参照して、ヘッドスピードが速く、かつ、スイングテンポが速いゴルファには、比較的硬いゴルフクラブシャフト(Xフレックス,Sフレックスなど)が適しており、ヘッドスピードが遅く、かつ、スイングテンポが遅いゴルファには、比較的柔らかいゴルフクラブシャフト(R2フレックス,Lフレックスなど)が適している。
【0108】
図23は、シャフト曲げ剛性分布(シャフト調子)の分類方法を説明する図である。図23を参照して、本願発明者らは、シャフト中央部の曲げ剛性値の平均値に対するシャフトの先端部の曲げ剛性値の平均値の比(TIP係数)と、シャフト中央部の曲げ剛性値の平均値に対するシャフトの手元部の曲げ剛性値の平均値の比(BUTT係数)とを用いてシャフト調子(曲げ剛性分布)の分類を行なった。ここでは、今日、日米欧で発売されているクラブシャフト(150種類程度)のTIP係数およびBUTT係数の平均値(TIP計数:0.54,BUTT係数:2.0)が原点とされている。
【0109】
一般に、曲げ剛性値の5%以下の変動は実感しにくいと言われている。したがって、BUTT係数が1.9以上2.1以下程度である範囲を、「第1カテゴリ」と分類し、TIP係数が0.54程度より大きく、かつ、BUTT係数が2.1程度より大きい範囲を、「第2カテゴリ」と分類し、TIP係数が0.54程度より小さく、かつ、BUTT係数が1.9程度より小さい範囲を、「第3カテゴリ」と分類することができる。なお、上記「第1カテゴリ」は、手元部の硬さが平均的である(すなわち、BUTT係数が1.9以上2.1以下程度である)「バットスタンダード」の領域に対応する。「第2カテゴリ」は、手元部が比較的硬く(すなわち、BUTT係数が2.1程度より大きく)、かつ、先端部が比較的硬い領域に含まれる。この領域を「バットスティフ」とする。「第3カテゴリ」は、手元部が比較的軟らかく(すなわち、BUTT係数が1.9程度より小さく)、かつ、先端部が比較的軟らかい領域に含まれる。この領域を「バットソフト」とする。
【0110】
なお、本願発明者らは、選定対象となるゴルフクラブシャフトとして、TIP係数とBUTT係数との関係が平均的なライン上に分布する「バットソフト」,「バットスタンダード」,「バットスティフ」のクラブシャフト(たとえば、図24における「SOFT」,「STANDARD」,「STIFF」)を準備した。このようにすることで、BUTT係数を決定すると同時にTIP係数も決定することができる。
【0111】
図23に示される「SOFT」,「STANDARD」,「STIFF」は、図24に示される片持ち梁モデルにおいて、すべて同じ撓み量を示すように設計されている。スイング中のクラブシャフトの変形は、手元側のしなりの影響が大きく、図24のような片持ち梁のモデルとして扱うことができる。上記のように、片持ち梁モデルにおいて、すべて同じ撓み量を示すようにすることで、どのクラブシャフトを用いて試打した場合にも、スイングテンポを均一に評価することができる。なお、図24において、手元側支点からシャフト先端までの距離:L1、支点間距離:L2、シャフト中央部側支点から測定点までの距離:L3、測定点−荷重点間距離:L4および荷重点からシャフト先端までの距離:L5は、たとえば、L1=1020(mm),L2=100(mm),L3=833(mm),L4=67(mm),L5=20(mm)である。
【0112】
図25は、スイング特性と、好ましいシャフト質量、フレックス、シャフト調子との関係を説明する図である。図25においては、スイング特性(ヘッドスピードおよびスイングテンポ)に対する好ましいシャフト質量(50g,60g,70g,80g)、フレックス、シャフト調子が重ねて記載されている。
【0113】
図25において、「G1」のスイング特性を有するゴルファの場合、シャフト質量としては70gまたは80gが適しており、フレックスとしては「SR」が適しており、シャフト調子としては「バットソフト」が適している。したがって、当該ゴルファの場合は、下記1〜2のクラブシャフトを有するゴルフクラブで試打が行なわれ、ミート率のSN比が最も高いクラブシャフトが選定される。
1.質量:70g、フレックス:SR、シャフト調子:バットソフト
2.質量:80g、フレックス:SR、シャフト調子:バットソフト
図25において、「G2」のスイング特性を有するゴルファの場合、シャフト質量としては60gまたは70gが適しており、フレックスとしては「SR」が適しており、シャフト調子としては「バットスタンダード」が適している。したがって、当該ゴルファの場合は、下記1〜2のクラブシャフトを有するゴルフクラブで試打が行なわれ、ミート率のSN比が最も高いクラブシャフトが選定される。
1.質量:60g、フレックス:SR、シャフト調子:バットスタンダード
2.質量:70g、フレックス:SR、シャフト調子:バットスタンダード
また、図25において、「G3」のスイング特性を有するゴルファの場合、シャフト質量としては50gまたは60gが適しており、フレックスとしては「S」が適しており、シャフト調子としては「バットスティフ」が適している。したがって、当該ゴルファの場合は、下記1〜2のクラブシャフトを有するゴルフクラブで試打が行なわれ、ミート率のSN比が最も高いクラブシャフトが選定される。
1.質量:50g、フレックス:S、シャフト調子:バットスティフ
2.質量:60g、フレックス:S、シャフト調子:バットスティフ
以上のようにして、ヘッドスピードおよびスイングテンポからシャフト質量、フレックスおよび曲げ剛性分布を同時に選択することができる。
【0114】
表2は、本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法を実施するにあたり、本願発明者らが準備したゴルフクラブシャフトのタイプを示す。
【0115】
【表2】
【0116】
本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法を実施するにあたり必要なクラブシャフトのタイプは、以下のように導出される。図26は、図25の記載から、「40g」のシャフトが適した範囲と、好ましいシャフト調子およびフレックスを示す部分を抜き出して示した図である。図26を参照して、シャフト質量が40gの場合、「バットソフト」が適した領域は、R2フレックスおよびR1フレックスが適した領域と重なり、「バットスタンダード」が適した領域は、R1フレックスおよびSRフレックスが適した領域と重なり、「バットスティフ」が適した領域は、R1フレックス、SRフレックスおよびSフレックスが適した領域と重なる。したがって、質量が40gのクラブシャフトに関しては、フレックスがR2フレックスおよびR1フレックスである「バットソフト」のクラブシャフトと、フレックスがR1フレックスおよびSRフレックスである「バットスタンダード」のクラブシャフトと、フレックスがR1フレックス、SRフレックスおよびSフレックスである「バットスティフ」のクラブシャフトとを準備すればよい。このように、本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法を実施するにあたり必要なクラブシャフトのタイプは、すべて図25から導出される。本実施例では、表2に示されるタイプのクラブシャフトを準備することで、約9割のゴルファをカバーすることができた。
【0117】
ゴルフクラブシャフトの設計において、シャフト質量、シャフト調子およびフレックスは、それぞれ互いに独立して調整することが可能である。したがって、表2に示されるように、5種類のシャフト質量、3種類のシャフト調子および5種類のフレックスのクラブシャフトを準備する場合、75(=5×3×5)タイプのクラブシャフトを準備することになる。これに対し、本実施例では、表2に示すように、合計34タイプ(バットソフト:11タイプ、バットスタンダード:11タイプ、バットスティフ:12タイプ)のクラブシャフトを準備するだけで、約9割のゴルファにとって最適なゴルフクラブシャフトを選定することができた。さらに、本実施例では、各々のゴルファのヘッドスピードおよびスイングテンポを計測するだけで、各々のゴルファに適したゴルフクラブシャフトを数本(たとえば2本)に絞り込むことができる。このように、本実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法によれば、簡便な手法で、様々なタイプのクラブシャフトから各々のゴルファに最適なクラブシャフトを適切に選定することが可能である。なお、本願発明者らは、実際に選定された複数本のクラブシャフトを用いて各々のゴルファが試打を行なった結果、当該シャフトのうち少なくとも一本のクラブシャフトにより、十分に高いミート率のSN比が得られることを実験により確認している。
【0118】
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】ゴルフクラブに装着された測定装置の正面図である。
【図2】測定装置の斜視図である。
【図3】測定装置の斜視図である。
【図4】測定装置の断面図である。
【図5】測定装置内部の分解斜視図である。
【図6】基板の側面図である。
【図7】仮想速度Vhと実測値との相関関係を示すグラフである。
【図8】処理部の構成を模式的に示す模式図である。
【図9】実際にヘッド速度を検出するときのフロー図である。
【図10】加速度センサからの出力に基づいて、演算部が算出した加速度を示すグラフである。
【図11】加速度センサおよび加速度センサからの出力に基づいて算出されたヘッド速度を示すグラフである。
【図12】スイング中におけるゴルフクラブの回転角速度ωを示すグラフである。
【図13】ゴルフプレヤーAのスイング過程における中心線距離の変動を示すグラフである。
【図14】ゴルフプレヤーBのスイング過程における中心線距離の変動を示すグラフである。
【図15】本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定システムの構成を示したブロック図である。
【図16】本発明の1つの実施の形態に係るゴルフクラブシャフト選定方法を説明するフローチャートである。
【図17】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法に用いられるゴルフクラブシャフトの外径および曲げ剛性分布を示した図である。
【図18】本発明の1つの実施例に係るゴルフクラブシャフト選定方法における検知ステップにより検知されたヘッドスピードおよびスイングテンポの分布を示す図である。
【図19】ヘッドスピードとミート率のSN比の高い頻度との関係をシャフト質量別に示した図である。
【図20】スイング特性と好ましいシャフト質量との関係を説明する図(第1チャート)である。
【図21】スイング特性と好ましいシャフト調子との関係を説明する図(第2チャート)である。
【図22】スイング特性と好ましいフレックスとの関係を示した図(第3チャート)である。
【図23】シャフト曲げ剛性分布の分類方法を説明する図である。
【図24】片持ち梁モデルを説明する図である。
【図25】スイング特性と、好ましいシャフト質量、フレックス、シャフト調子との関係を説明する図である。
【図26】図15の記載から、「40g」のシャフトが適した範囲と、好ましいシャフト調子およびフレックスを示す部分を抜き出して示した図である。
【符号の説明】
【0120】
100 測定装置、110 ケース、112 表示部、113 リセットボタン、114 電源スイッチ、120,121 加速度センサ、125 基板、126 基板支持部、127 バンド、128 緩衝部材、130,131 歪ゲージ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者のスイングを分析するのに使用可能な情報を出力可能なスイング分析装置であって、
使用者によってスイングされ、長手方向を有するスイング部材に設けられ、前記長手方向に間隔をあけて配置された第1および第2加速度センサと、
前記第1および前記第2加速度センサから前記長手方向に離れて位置する前記スイング部材の測定対象部位の速度を演算可能な演算部と、
演算結果を表示する表示部とを備え、
前記演算部は、スイング時に前記スイング部材が円運動しているものと仮定して、前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとの間の距離、前記第1加速度センサと前記測定対象部位との間の距離、および前記第1加速度センサと第2加速度センサとからの出力に基づいて、前記測定対象部位における仮想速度を演算し、前記仮想速度を利用して前記測定対象部位の速度を演算し、前記表示部に表示する、スイング分析装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記仮想速度と当該スイング時に測定した実測速度とによって算出され、前記仮想速度を前記実測速度に一致または近似させる補正データが予め格納され、
前記演算部は、測定時における前記仮想速度を前記補正データに基づいて補正することで、前記測定対象部位の速度を演算する、請求項1に記載のスイング分析装置。
【請求項3】
前記スイング部材の周面に設けられ、弾性変形可能な緩衝部材と、
前記緩衝部材上に設けられた基板とをさらに備え、
前記第1および第2加速度センサは、前記基板の主表面上に設けられた、請求項1または請求項2に記載のスイング分析装置。
【請求項4】
前記演算部および前記表示部は、前記第1および第2加速度センサが設けられた前記主表面と反対側に位置する主表面上に設けられた、請求項3に記載のスイング分析装置。
【請求項5】
前記スイング部材に装着された歪ゲージをさらに備え、
前記演算部は、前記歪ゲージからの出力に基づいて、前記スイング部材の撓み量を演算する、請求項1から請求項4のいずれかに記載のスイング分析装置。
【請求項1】
使用者のスイングを分析するのに使用可能な情報を出力可能なスイング分析装置であって、
使用者によってスイングされ、長手方向を有するスイング部材に設けられ、前記長手方向に間隔をあけて配置された第1および第2加速度センサと、
前記第1および前記第2加速度センサから前記長手方向に離れて位置する前記スイング部材の測定対象部位の速度を演算可能な演算部と、
演算結果を表示する表示部とを備え、
前記演算部は、スイング時に前記スイング部材が円運動しているものと仮定して、前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとの間の距離、前記第1加速度センサと前記測定対象部位との間の距離、および前記第1加速度センサと第2加速度センサとからの出力に基づいて、前記測定対象部位における仮想速度を演算し、前記仮想速度を利用して前記測定対象部位の速度を演算し、前記表示部に表示する、スイング分析装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記仮想速度と当該スイング時に測定した実測速度とによって算出され、前記仮想速度を前記実測速度に一致または近似させる補正データが予め格納され、
前記演算部は、測定時における前記仮想速度を前記補正データに基づいて補正することで、前記測定対象部位の速度を演算する、請求項1に記載のスイング分析装置。
【請求項3】
前記スイング部材の周面に設けられ、弾性変形可能な緩衝部材と、
前記緩衝部材上に設けられた基板とをさらに備え、
前記第1および第2加速度センサは、前記基板の主表面上に設けられた、請求項1または請求項2に記載のスイング分析装置。
【請求項4】
前記演算部および前記表示部は、前記第1および第2加速度センサが設けられた前記主表面と反対側に位置する主表面上に設けられた、請求項3に記載のスイング分析装置。
【請求項5】
前記スイング部材に装着された歪ゲージをさらに備え、
前記演算部は、前記歪ゲージからの出力に基づいて、前記スイング部材の撓み量を演算する、請求項1から請求項4のいずれかに記載のスイング分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2009−240677(P2009−240677A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93427(P2008−93427)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
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