説明

スカフォード用緩衝保持装置

【課題】 掘削時のスカフォードの揺れを低減しながら衝撃を緩和して立坑のコンクリート側壁の亀裂を防止できるスカフォード用緩衝保持装置を提供する。
【解決手段】 掘削機を備えたスカフォードの周部にシリンダをそのシリンダロッドが立坑の側壁に向くように取り付け、ワイヤーロープ4cで巻回されたコイルをその巻回部分の対向する位置で拘束部材4a,4bによりコイル状に保持して拘束し、拘束部材4bをシリンダロッドの先端に傾動可能に枢支し、拘束部材4aに立坑の側壁と当接する当接部材4dを取り付け、コイル状のワイヤーロープ4cの弾性変形で掘削時の衝撃を緩和できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機を備えたスカフォードを立坑内に吊下して掘削する際、スカフォードを立坑の側壁に対して緩衝的に保持する緩衝保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スカフォードには油圧シリンダからなる保持装置が備えられており、スカフォードの周部にシリンダをそのシリンダロッドが立坑の側壁に向くように取り付け、シリンダロッドの先端に立坑の側壁と当接する当接部材を傾動可能に枢支した構造で、掘削時に保持装置でスカフォードを立坑の側壁と所定間隔おいた状態に保持し、掘削の衝撃による揺れでスカフォードが立坑の側壁に接触しないようにしている。
【0003】
ところで、前記の技術ではスカフォードがほとんど動かないように固定するから、掘削時の衝撃がコンクリートを打設した立坑の側壁に直接伝播し、コンクリートに亀裂が生じ易くなる問題があった。
【特許文献1】特開2003−106084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、掘削時のスカフォードの揺れを低減しながら衝撃を緩和してコンクリート側壁の亀裂を防止できるスカフォード用緩衝保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 掘削機を備えて立坑内に吊下されるスカフォードの掘削する際に生じる横揺れを緩衝的に保持するスカフォード用緩衝保持装置であって、
スカフォードの周部にシリンダロッドが立坑の側壁に向くように取り付けられたシリンダと、
ワイヤーロープで巻回されたコイルと、そのコイルの巻回部分の対向する位置で前記コイルをコイル状に保持して拘束する一対の拘束部材とで構成される緩衝部材とからなり、
前記一対の拘束部材の一方が前記シリンダロッドの先端に取り付けられ、
前記一対の拘束部材の他方には当接部材が取り付けられることで、
前記シリンダロッドの伸張により前記当接部材が前記立坑の側壁に当接されるようになっていることを特徴とする、スカフォード用緩衝保持装置
2) 一対の拘束部材の一方と前記シリンダロッドの先端とは枢支して取り付けられ、前記拘束部材とともに緩衝部材が傾動可能とされていることを特徴とする、前記1)記載のスカフォード用緩衝保持装置
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、強靭で且つ弾性変形できるコイル状のワイヤーロープにより、重量を有するスカフォードの揺れを最小限に抑制しながら掘削時の衝撃を確実に緩和し、コンクリート側壁への衝撃の伝播を遮断して亀裂を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、緩衝部材の後側の拘束部材をシリンダロッドに枢支して緩衝部材が傾動するようにすると、スカフォードの大きな揺動に対してワイヤーロープの弾性変形と相まって揺れ・衝撃をより柔軟に緩和できて好ましい。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は実施例の緩衝保持装置の説明図、図2は実施例の緩衝保持装置の縦断面図、図3は実施例の緩衝保持装置の使用状態を示す説明図、図4は実施例の緩衝保持装置の動きを示す説明図である。図中、1は緩衝保持装置、2は油圧シリンダ、2aはシリンダロッド、3は外筒、3aは取付プレート、4は緩衝部材、4a,4bは拘束部材、4cはワイヤーロープ、4dは当接部材、4eは枢支軸、4fは内筒、5はスカフォード、5aは吊ロープ、6は掘削機、7は保持装置、8はキブル、9は型枠、Cはコンクリート側壁、Gは地盤、Tは立坑である。
【0009】
本実施例の緩衝保持装置1は、図1,2に示すようにスカフォード5の周部下面に固定する取付プレート3aを備えた外筒3の内部に油圧シリンダ2を取り付け、油圧シリンダ2のシリンダロッド2aの先端に拘束部材4bを枢支軸4eで上下方向に傾動可能に枢支し、ワイヤーロープ4cで巻回されたコイルをその巻回部分の対向する位置で拘束部材4a,4bによりコイル状に保持して拘束している。
【0010】
拘束部材4a,4bには横方向に連通する穴が複数形成されており、ワイヤーロープ4cを穴に順に通しながらコイル状に巻回して拘束部材4a,4bを連結するように取り付け、前側の拘束部材4aに当接部材4dを取り付ける。この緩衝保持装置1を図3に示すように3床式のスカフォード5の1床目と2床目の周囲下部に取り付ける。3床目には従来の保持装置7が取り付けられている。
【0011】
吊ロープ5aでスカフォード5を立坑T内で吊下して緩衝保持装置1及び保持装置7を伸長させ、コンクリート側壁Cに圧接してスカフォード5を保持した状態で地盤Gを掘削機6で掘削する。この掘削時の衝撃・振動は緩衝保持装置1及び保持装置7を通じてコンクリート側壁Cに伝播するが、このとき、緩衝保持装置1ではコイル状に巻回したワイヤーロープ4cが図4(a)〜(c)に示すように柔軟に変形することで吸収・緩和され、コンクリート側壁Cへの伝播を低減して亀裂の発生を防止する。
【0012】
なお、掘削機6を備えたスカフォード5の3床目に本実施例の緩衝保持装置1を用いると、掘削時の反力でスカフォード5が大きく揺動して掘削作業が困難になるから、3床目のみ従来の保持装置7を用いている。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明のスカフォード用緩衝保持装置は、複床式のスカフォードを用いた立坑掘削設備に好ましく利用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例の緩衝保持装置の説明図である。
【図2】実施例の緩衝保持装置の縦断面図である。
【図3】実施例の緩衝保持装置の使用状態を示す説明図である。
【図4】実施例の緩衝保持装置の動きを示す説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1 緩衝保持装置
2 油圧シリンダ
2a シリンダロッド
3 外筒
3a 取付プレート
4 緩衝部材
4a,4b 拘束部材
4c ワイヤーロープ
4d 当接部材
4e 枢支軸
4f 内筒
5 スカフォード
5a 吊ロープ
6 掘削機
7 保持装置
8 キブル
9 型枠
C コンクリート側壁
G 地盤
T 立坑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機を備えて立坑内に吊下されるスカフォードの掘削する際に生じる横揺れを緩衝的に保持するスカフォード用緩衝保持装置であって、
スカフォードの周部にシリンダロッドが立坑の側壁に向くように取り付けられたシリンダと、
ワイヤーロープで巻回されたコイルと、そのコイルの巻回部分の対向する位置で前記コイルをコイル状に保持して拘束する一対の拘束部材とで構成される緩衝部材とからなり、
前記一対の拘束部材の一方が前記シリンダロッドの先端に取り付けられ、
前記一対の拘束部材の他方には当接部材が取り付けられることで、
前記シリンダロッドの伸張により前記当接部材が前記立坑の側壁に当接されるようになっていることを特徴とする、スカフォード用緩衝保持装置。
【請求項2】
一対の拘束部材の一方と前記シリンダロッドの先端とは枢支して取り付けられ、前記拘束部材とともに緩衝部材が傾動可能とされていることを特徴とする、請求項1記載のスカフォード用緩衝保持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−39894(P2007−39894A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222357(P2005−222357)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(594145297)タグチ工業株式会社 (8)