説明

スカム除去装置

【課題】メンテナンスが容易なスカム除去装置を提供する。
【解決手段】スカム除去装置10は、下水処理水路20の進行方向に対向して設けられる取水口部材11と、下水処理水路20の両側壁20R・20Lに鉛直に取り付けられた2枚の支持板21A・21Bの間に挟まるように、取水口部材11の両側部11R・11Lのそれぞれに取り付けられた一組の支持部材12R・12Lと、取水口部材11の出口側11Eに設けられ、該取水口部材11に流入したスカムSを排出する排出部材13と、取水口部材11の底部11Bに設けられ、該取水口部材11を下水の水面に浮かせる浮き子部材14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンスが容易なスカム除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から下水処理において、汚泥が除去されている。
【0003】
具体的には、図4に概念を示すように、下水をフィルタFで濾過した後、貯水する(S1)。そして、沈殿工程において、バクテリア等の微生物と汚泥とを反応させて沈殿させる(S2)。次に、沈殿処理された処理水を、殺菌工程で殺菌する(S3)。それから、殺菌処理した処理水を川に放流する(S4)。
【0004】
ここで、上述の沈殿工程と殺菌工程との間には越流堰Gが設けられ、沈殿した汚泥が堰き止められる。
【0005】
ところが、汚泥の一部には、いわゆるスカムとなって浮遊するものがある。スカムは、微生物が下水を食べて膨れたものであり、非常に弱い力で集合したものである。そして、このスカムは、殺菌工程に到達した場合、処理水の殺菌を阻害することがある。
【0006】
そこで、スカムを除去するための装置が開発されている(例えば特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平1−293108号
【特許文献2】実公昭63−30546号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1,2に係る装置はリンク機構等を有している。
【0008】
それゆえ、保守の観点から定期的に検査する必要が生じる。また、検査に際して、下水の流れを一時的に止めなければならない場合もある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、メンテナンスが容易なスカム除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、下水処理水路の進行方向に対向して設けられる取水口部材と、前記水路の両側壁に鉛直に取り付けられた2枚の支持板の間に挟まるように、前記取水口部材の両側部のそれぞれに取り付けられた一組の支持部材と、前記取水口部材の出口側に設けられ、該取水口部材に流入したスカムを排出する排出部材と、前記取水口部材の底部に設けられ、該取水口部材を下水の水面に浮かせる浮き子部材とを備えたスカム除去装置を提供する。
【0011】
<作用>
従って、本発明は以上のような手段を講じたことにより、処理水量が増減して水面が上下に変動しても取水口部材が上下に追随して変動するので、リンク機構等が不要でメンテナンスが容易なスカム除去装置を提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メンテナンスが容易なスカム除去装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
(1−1.構成)
図1は本発明の第1の実施形態に係るスカム除去装置10の平面方向の構成を示す模式図であり、図2はスカム除去装置10の側面方向の構成を示す模式図である。
【0015】
スカム除去装置10は、下水処理水路20に設置されるものであり、取水口部材11と支持部材12R・12L・排出部材13・浮き子部材14・調整錘15とを備えている。
【0016】
取水口部材11は、下水処理水路20の進行方向に対向して設けられている。詳しくは図3の正面図に示すように、取水口部材11は長方形の開口を有しており、入口側から出口側に向けて徐々に細くなっている形状の構造物である。この取水口部材11は、金属やプラスチック等により形成される。特に、錆びないようにステンレスで形成されることが望ましい。なお、取水口部材11は、例えば10cm程度の高さの構造物であり、2〜3cm程度処理水に沈めて使用される。
【0017】
支持部材12R・12Lは、取水口部材11の両側部11R・11Lにそれぞれ設けられている棒状の部材である。そして、この支持部材12R・12Lは、下水路20の両側壁20R・20Lに鉛直に取り付けられた2枚の支持板21A・21Bの間に挟まるように設置される。これにより、支持部材12R・12Lが支持板21A・21Bから拘束されるので、下水処理水路の進行方向に取水口部材11が流されることを回避することができる。
【0018】
排出部材13は、取水口部材11の出口側11Eに設けられ、該取水口部材11に流入したスカムSを排出するものである。また、排出部材13は、「フレキシブル継ぎ手13J」を備えている。フレキシブル継ぎ手13Jは、ビニールホースや柔らかい金属からなるシリンダー形状の構造物である。このフレキシブル継ぎ手13Jにより、下水の水面が上下に変動しても、取水口部材11をその下水の水面の変動に応じて上下に移動させることが可能となっている。
【0019】
浮き子部材14は、取水口部材11の底部11Bに設けられ、該取水口部材11を下水の水面に浮かせるものである。この浮き子部材14は、例えば中空の金属などで構成される。特にメンテナンスの観点からステンレスにより形成されることが望ましい。
【0020】
調整錘15は、取水口部材11の底部11Bと下水の水面との高さを調整するための錘である。例えば、取水口部材11の上面部11Tにネジなどを用いて取り付けられる。
【0021】
なお、下水処理水路20の両側壁20R・20Lには、それぞれ2枚の支持板21A・21Bが鉛直に取り付けられている。下水処理水路20はセメント等で形成されているので、アンカーボルトを用いることにより支持板21A・21Bの取り付けが可能である。
【0022】
(1−2.作用)
上述したように、本実施形態に係るスカム除去装置10は、下水処理水路20の進行方向に対向して設けられる取水口部材11と、下水処理水路20の両側壁20R・20Lに鉛直に取り付けられた2枚の支持板21A・21Bの間に挟まるように、取水口部材11の両側部11R・11Lのそれぞれに取り付けられた一組の支持部材12R・12Lと、取水口部材11の出口側11Eに設けられ、該取水口部材11に流入したスカムSを排出する排出部材13と、取水口部材11の底部11Bに設けられ、該取水口部材11を下水の水面に浮かせる浮き子部材14とを備えており、処理水量が増減して水面が上下に変動しても、浮き子部材14により取水口部材11が上下に追随して変動するので、リンク機構等を備えなくてもスカムの除去が可能である。それゆえ、メンテナンスが容易なスカム除去装置を提供できる。
【0023】
なお、スカム除去装置10は、支持部材12R・12Lを介して、下水処理水路20に取り付けられた2枚の支持板21A・21Bの間に挟まるようにして固定されるだけなので、持ち上げるだけで取り外すことができる。それゆえ、下水処理水路の状態に関係なく掃除などを容易に行なうことができ、メンテナンスが容易なスカム除去装置を提供できる。
【0024】
また、スカム除去装置は、調整錘15を備えているので、取水口部材11の底部11Bと下水の水面との高さを調整することができる。これにより、スカムの量の増減に応じて取水口部材11の位置を上下させて、取水量を最適化することができる。
【0025】
また、本実施形態に係るスカム除去装置10の取水口部材11は、入口側11Iより出口側11Eを細くしているので、取水量を低減することができる。補足すると、下水はポンプ等により圧力を加えて流しているのではないため、取水口部材11の内壁からの反発力により、スカムを含む下水が取水口部材11から押し出されるといった事態は生じない。そのため、取水口部材11の入口側11Iより出口側11Eを細くしても、スカムの採取量は変わらないので、余分に捨てる水を減らすことができるようになる。
【0026】
なお、本実施形態に係るスカム除去装置10においては、排出部材13が、フレキシブル継ぎ手13Jを備えているので、下水の水面が上下に変動しても、取水口部材11をその下水の水面の変動に応じて上下に移動させることができる。
【0027】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスカム除去装置10の平面方向の構成を示す模式図である。
【図2】同実施形態に係るスカム除去装置10の側面方向の構成を示す模式図である。
【図3】同実施形態に係るスカム除去装置10の正面図の例である。
【図4】一般的な下水処理の概念を示す模式図である。
【符号の説明】
【0029】
10・・・スカム除去装置、11・・・取水口部材、12R・12L・・・支持部材、13・・・排出部材、14・・・浮き子部材、15・・・調整錘、20・・・下水処理水路、21A・21B・・・支持板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水処理水路の進行方向に対向して設けられる取水口部材と、
前記水路の両側壁に鉛直に取り付けられた2枚の支持板の間に挟まるように、前記取水口部材の両側部のそれぞれに取り付けられた一組の支持部材と、
前記取水口部材の出口側に設けられ、該取水口部材に流入したスカムを排出する排出部材と、
前記取水口部材の底部に設けられ、該取水口部材を下水の水面に浮かせる浮き子部材と
を備えたことを特徴とするスカム除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスカム除去装置において、
前記取水口部材に設けられ、前記取水口部材の底部と前記下水の水面との高さを調整するための調整錘
をさらに備えたことを特徴とするスカム除去装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスカム除去装置において、
前記取水口部材は、入口側より出口側を細くした
ことを特徴とするスカム除去装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスカム除去装置において、
前記排出部材は、フレキシブル継ぎ手
を備えたことを特徴とするスカム除去装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のスカム除去装置において、
前記排出部材は、ビニールホースからなるフレキシブル継ぎ手
を備えたことを特徴とするスカム除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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