説明

スクアレンを含有する水中油型エマルジョンのための品質管理法

水中油型エマルジョン中のスクアレン含有量の測定は、生産中の問題を調べる方法として使用することができる。特に、スクアレン内容物の液滴は、濾過に問題が生じたことを示唆できることが明らかになった。最終ロット中のスクアレン含有量を試験することは、フィルターの特性を調査することより容易であり、したがってスクアレン検定によって、水中油型エマルジョンの品質管理が簡易になる。一実施形態において、本発明は、スクアレンを含む水中油型エマルジョンアジュバントの品質管理試験方法を提供し、この方法はアジュバントの実際のスクアレン含有量と標準スクアレン含有量を比較する工程を含む。実際のスクアレン含有量が標準含有量と異なる場合、生産の失敗が起こっており、したがってアジュバントは品質管理試験に不合格となる。しかし、実際の含有量が許容される場合、アジュバントは品質管理試験に合格し、ワクチン製造に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に引用された文献はすべて、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
本発明は、ワクチンアジュバント製造、および特にスクアレンを含有する水中油型エマルジョンアジュバントの品質管理検定の分野である。
【背景技術】
【0003】
「MF59」と呼ばれるワクチンアジュバント[1−3](特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)は、スクアレン、Tween 80、およびSpan 85のサブミクロン水中油型エマルジョンである。これは、クエン酸塩イオン類、例えば10mMクエン酸ナトリウム緩衝剤も含んでよい。エマルジョンの組成(体積)は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80、および約0.5%のSpan 85とすることができる。アジュバントは、参考文献4の10章および参考文献5の12章にさらに詳細に記載されている。MF59中の油滴は、0.2μmのフィルターで無菌化濾過するのに十分な程度に小さい。
【0004】
ヒトに投与するためのアジュバントである(例えば、FLUAD(商標)ワクチンに含まれる)ので、ワクチンの品質管理は特に重要であり、ロット間変動は狭い範囲内に制御されなければならない。MF59にとって重要なパラメータとしては、エマルジョン中の平均液滴サイズ、汚染微生物数、pH、視覚的外観、およびその材料の分解生成物または一般的汚染物質の存在が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第90/14837号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】PoddaおよびDel Giudice、Expert Rev Vaccines(2001)2:197−203
【非特許文献2】Podda、Vaccine(2001)19:2673−2680
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、MF59などの水中油型エマルジョンアジュバントの品質管理検定をさらに進め改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の開示
ここで、MF59アジュバントの各ロット中のスクアレン含有量の測定を、生産中の問題を調べる方法として使用できることが明らかになった。特に、スクアレン内容物中の液滴は、濾過に問題が生じたことを示唆し得ることが明らかになった。最終ロット中のスクアレン含有量を試験することは、特にフィルターがGMP条件下で維持されている装置の一部分である場合フィルターの特性を調査することより容易であり、したがってスクアレン検定によって、水中油型エマルジョンの品質管理が簡易になる。
【0009】
したがって、本発明は、水中油型エマルジョンアジュバントの品質管理試験方法であって、このアジュバントはスクアレンを含み、かつこの方法はアジュバントの実際のスクアレン含有量と標準スクアレン含有量を比較する工程を含む方法を提供する。実際のスクアレン含有量が標準含有量と異なる場合、生産の失敗が起こっており、したがってアジュバントは品質管理試験に不合格となる。しかし、実際の含有量が許容される場合、アジュバントは品質管理試験に合格し、ワクチン製造に使用することができる。
【0010】
本発明は、水中油型エマルジョンアジュバントを製造するプロセスであって、(i)既知量の水性担体、界面活性剤、およびスクアレンを使用して、サブミクロン水中油型エマルジョンを調製する工程と、(ii)エマルジョンを濾過滅菌にかけて、無菌化されたエマルジョンを準備する工程と、(iii)無菌化されたエマルジョンのスクアレン含有量を測定する工程とを含むプロセスも提供する。工程(iii)で測定されたスクアレン含有量と、工程(i)から既知のスクアレン含有量を比較することができる。この比較によって、スクアレン含有量が著しく変化したことが明らかである場合、生産の失敗が起こっており、したがってアジュバントは品質管理試験に不合格となる。
【0011】
患者に投与する前に、エマルジョンアジュバントは、通常、抗原と混合される。混合は、使用時に即時に行ってもよく(この場合、抗原およびアジュバントは別々に包装されている)、またはワクチン製造中、充填する前に行うことができる。前者の状況では、品質管理試験はアジュバント自体について行う。後者の状況では、品質管理試験は抗原と混合する前のアジュバント、および/またはアジュバント−抗原の混合物について行うことができる。
【0012】
したがって、本発明は、スクアレンを含む水中油型エマルジョンアジュバントを含むワクチンの品質管理試験方法であって、この方法は、(i)アジュバントの実際のスクアレン含有量と標準スクアレン含有量を比較する工程と、実際のスクアレン含有量が許容される場合、(ii)アジュバントと抗原を混合することによってワクチンを調製する工程とを含む方法も提供する。工程(ii)は、アジュバントおよび抗原を、使用時に混合することができるように別々に包装することを含んでもよく、あるいはアジュバントおよび抗原を充填前または充填中に混合することを含んでもよい。
【0013】
同様に、本発明は、抗原、およびスクアレンを含む水中油型エマルジョンアジュバントを含むワクチンの品質管理試験方法であって、この方法は、ワクチンの実際のスクアレン含有量と標準スクアレン含有量を比較する工程を含む方法を提供する。実際のスクアレン含有量が標準含有量と異なる場合、生産の失敗が起こっており、したがってワクチンは品質管理試験に不合格となる。しかし、実際の含有量が許容される場合、ワクチンは品質管理試験に合格し、販売および/または分配用に放出することができる。
【0014】
本発明は、インフルエンザウイルスワクチン類の製造中に特に有用であり、したがって本発明は、(i)インフルエンザウイルス抗原と(ii)スクアレンを含む水中油型エマルジョンアジュバントを混合する工程を含む方法であって、この方法は、(a)混合工程前のアジュバント中のスクアレン含有量、および/または(b)混合工程後の抗原−アジュバントの混合物中のスクアレン含有量が測定される工程も含む方法を提供する。前述のように、生産の失敗を調べるために、測定されたスクアレン含有量と標準スクアレン含有量を比較することができる。
【0015】
試験方法
本発明の方法は、スクアレンを含む水中油型エマルジョンアジュバントを用いて使用され、(i)アジュバント自体、および/または(ii)アジュバントを抗原と混合して含むワクチン組成物のスクアレン含有量を測定することを含む。
【0016】
様々なスクアレン検定が当技術分野で知られている。例えば、参考文献6は、スクアレンの比色定量試験を開示する。参考文献7は、遊離脂肪酸類、遊離ステロール類、およびアシルグリセリン分子種の存在下でのスクアレンの定量化のための高温ガスクロマトグラフィー・フレームイオン化検出方法を開示する。参考文献8は、検出限界が10億分の140である、紫外検出高速液体クロマトグラフィーを用いた有効な検定を開示する。参考文献9は、スクアレンの定量分析における超臨界流体クロマトグラフィーの使用を開示する。参考文献10は、スクアレンを検定するためのレーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析方法を開示する。参考文献11は、スクアレン含有量を検定するための超臨界CO抽出によるガスクロマトグラフィー−質量分析および高速液体クロマトグラフィーの使用を開示する。参考文献12は、シリル化した後に不鹸化材料のガスクロマトグラフ分析を含む直接方法による、スクアレン、α−トコフェロール、およびステロール類の定量化のための簡易でかつ信頼性のある手順を開示する。参考文献13は、不鹸化材料が、シリカゲルカラムの順相HPLCでヘキサン/プロパノール−2/水からなる移動相を使用して分画され、溶離液を215nmでモニターし、このようにして回収された炭化水素分画中のスクアレンを、分析カラムでヘキサンを使用して溶離させて定量する手順を開示する。直接および間接検定を使用することができる。例えば、スクアレンを、最初に低温ケン化にかけ、続いてヘキサン抽出物のガスクロマトグラフィー−質量分析にかけてもよい。
【0017】
アジュバントまたは抗原のスクアレン含有量が測定されると、それは標準スクアレン含有量と比較される。標準スクアレン含有量は、当該アジュバントで、患者に投与するのに許容されることが知られている量であり得る。これは、アジュバントを調製するのに使用されたスクアレンの量であり、それによってスクアレンの最終量と出発量を比較することが可能になり得る。
【0018】
標準含有量は、様々な形で準備することができる。例えば、正のアジュバント対照試料と被検アジュバントを、それらのスクアレン含有量を比較することができるように並行して検定することができる。代替として、正の対照を被検アジュバントの前または後に分析して、比較のための値を準備することができる。別の代替として、標準含有量は、先の分析に基づく絶対値とすることができる。しかし、すべての場合において、この方法は、試験されるアジュバントのスクアレン含有量が、品質管理の目的で許容されるどうかを明らかにする。測定されたスクアレン含有量が標準含有量と異なる場合、この差は生産の失敗を示唆する。
【0019】
標準含有量は、絶対量または濃度であってもよく、あるいは例えば界面活性剤含有量または抗原含量に比べて測定された相対量であってもよい。絶対量または濃度がより一般的である。
【0020】
標準含有量は、正確な値であってもよく、または範囲であってもよい。例えば、それは、許容される偏差(百分率)、例えば±10%、±5%などの絶対量であってもよい。次いで、測定された含有量を標準含有量の範囲と比較することができ、範囲外である場合、検定に不合格となる。水中油型エマルジョンアジュバントの典型的な標準スクアレン絶対含有量は、例えば40〜45mg/ml(例えば、43mg/ml)、36〜42mg/ml(例えば、39mg/ml)、20〜25mg/ml(例えば、21.5mg/ml)、18〜21mg/ml(例えば、19.5mg/ml)などとすることができる。
【0021】
通常の統計基準によれば、スクアレン含有量は、典型的には実験偏差の影響を最小限に抑えるためにいくつかの試料について測定される。したがって、本発明は、標準含有量と突き合わせて平均値を比較するものとすることができる。
【0022】
詳細に後述するように、抗原と混合する前のアジュバント、抗原/アジュバントの混合物、充填する前のバルク材料、バルクから抽出された充填後の材料などについてスクアレン検定を行うことができる。
【0023】
アジュバント
本発明の方法は、水中油型エマルジョンアジュバントを用いて使用される。アジュバントは、不飽和テルペノイド油(C3050;[(CHC[=CHCHCHC(CH)]=CHCH−];2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエン;CAS RN 7683−64−9)であるスクアレンを含む。
【0024】
アジュバントは、スクアレンに加えて他の油類も含んでよい。好ましくは、さらなる油類はいずれも、生分解性(代謝可能)でかつ生体適合性である。アジュバントは、動物源(魚など)または植物源からの油類などの油類も含んでよい。植物油の供給源としては、堅果類、種子類、および穀物類が挙げられる。堅果油類の例としては、最も一般に入手可能な落花生油、ダイズ油、ココナッツ油、およびオリーブ油が挙げられる。例えば、ホホバ豆から得られたホホバ油を使用することができる。種子油類としては、サフラワー油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油などが挙げられる。穀物群においては、トウモロコシ油が最も容易に入手可能であるが、小麦、オート麦類、ライ麦、米、テフ、ライ小麦など他のシリアル穀物の油も使用することができる。種子油類には天然に存在しないグリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10個の炭素の脂肪酸エステル類は、堅果油類および種子油類を出発物とする適切な材料の加水分解、分別、およびエステル化によって調製してもよい。哺乳類の乳からの油脂類は代謝可能であり、したがって本発明に実施で使用してもよい。動物源から純粋な油類を得るのに必要な分別、精製、ケン化、および他の手段の手順は、当技術分野でよく知られている。大部分の魚類は、容易に回収することができる代謝可能な油類を含有する。本明細書で使用することができる魚油類の数例としては、例えばタラ肝油、サメ肝油類、および鯨蝋などの鯨油が挙げられる。いくつかの分枝鎖油類は、炭素5個のイソプレン単位で生化学的に合成され、テルペノイド類と総称され、それにはスクアレンが含まれる。スクアレンの飽和類似体であるスクアランも使用することができる。スクアレンおよびスクアランを含めて、魚油類は、商業供給業者から容易に入手可能であり、または当技術分野で知られている方法で得ることができる。他の好ましい油類はトコフェロール類である。組成物がトコフェロールを含む場合、α、β、γ、δ、ε、またはζトコフェロール類のいずれかを使用することができるが、α−トコフェロール類が好ましい。トコフェロールは、いくつかの形、例えば様々な塩および/または異性体とすることができる。塩としては、コハク酸塩、酢酸塩、ニコチン酸塩などの有機塩が挙げられる。D−α−トコフェロールおよびDL−α−トコフェロールは両方とも、使用することができる。好ましいα−トコフェロールはDL−α−トコフェロールである。このトコフェロールの塩を使用する場合、好ましい塩はコハク酸塩である。
【0025】
スクアレン(および場合によっては、さらに1種または複数の他の油類)の存在に加えて、エマルジョンには、水相および界面活性剤が含まれる。界面活性剤は、好ましくは生分解性(代謝可能)でかつ生体適合性である。界面活性剤はその「HLB」(親水/親油バランス)で分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、HLBが少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16である。本発明は、界面活性剤を用いて使用することができ、これらの界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類界面活性剤(よくTween類と呼ばれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;線状EO/POブロックコポリマー類など、DOWFAX(商標)という販売名で販売されているエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー類;エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の繰返し数が変わり得るオクトキシノール類、特にオクトキシノール−9(Triton X−100またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が重要である;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);ホスファチジルコリン(レシチン)などのリン脂質;トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30)など、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪エーテル類(Brij界面活性剤と呼ばれる);ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;ならびにソルビタントリオレアート(Span 85)およびソルビタンモノラウラートなどのソルビタンエステル類(よくSPAN類と呼ばれる)が挙げられるが、これらに限定されない。エマルジョン中に含むための好ましい界面活性剤は、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、Span 85(ソルビタントリオレアート)、レシチン、およびTriton X−100である。
【0026】
界面活性剤の混合物、例えばTween 80/Span 85の混合物またはTween 80/Triton X−100の混合物を使用することができる。ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween 80)などのポリオキシエチレンソルビタンエステルとt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)などのオクトキシノールの組合せも適している。別の有用な組合せは、ラウレス9にポリオキシエチレンソルビタンエステル、および/またはオクトキシノールを加えたものを含む。
【0027】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル類(Tween 80など)0.01%〜1%、特に約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール類(Triton X−100、またはTritonシリーズの他の洗浄剤など)0.001%〜0.1%、特に0.005%〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル類(ラウレス9など)0.1%〜20%、好ましくは0.1%〜10%、特に0.1%〜1%、または約0.5%である。
【0028】
エマルジョンの水相は、好ましくは緩衝生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水である。
【0029】
エマルジョン中の油滴は、典型的には直径1μm未満(平均)である。サブミクロン直径は、微小流動化装置を用いて容易に実現することができ、安定なエマルジョンをもたらす。220nm未満のサイズの液滴は、濾過滅菌にかけることができるので特に好ましい。液滴数の少なくとも80%が直径50〜200nmの範囲であるエマルジョンが特に有用である。
【0030】
スクアレンを含有し、かつ本発明の方法で試験することができる特定の水中油型エマルジョンアジュバントとしては、下記が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
・スクアレン、Tween 80、およびSpan 85のサブミクロンエマルジョン。エマルジョンの組成(体積)は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80、および約0.5%のSpan 85とすることができる。重量で表すと、これらの量は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80、および0.48%のSpan 85となる。このアジュバントは「MF59」と呼ばれる。MF59エマルジョンは、クエン酸塩イオン類、例えば10mMクエン酸ナトリウム緩衝剤を含むことが有利である。
【0032】
・スクアレン、トコフェロール、およびTween 80のエマルジョン。このエマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水を含んでもよい。これは、Span 85(例えば、1%)および/またはレシチンも含んでよい。これらのエマルジョンは、2%〜10%のスクアレン、2%〜10%のトコフェロール、および0.3%〜3%のTween 80を有してもよく、かつスクアレン:トコフェロールの重量比は≦1であることが、より安定なエマルジョンをもたらすので好ましい。スクアレンとTween 80は、約5:2の体積比で存在してもよい。このような1つのエマルジョンは、Tween 80をPBSに溶解して、2%溶液を得、次いでこの溶液90mlを(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlのスクアレン)の混合物と混合し、次いでこの混合物を微小流動化することによって作製することができる。得られたエマルジョンは、例えば平均直径100nm〜250nm、好ましくは約180nmのサブミクロン油滴を有してもよい。このエマルジョンは、3d−MPLおよび/またはサポニン(例えば、QS21)も含んでよい。
【0033】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton洗浄剤(例えば、Triton X−100)のエマルジョン。このエマルジョンは、3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質A(「3d−MPL」)も含んでよい。このエマルジョンは、リン酸塩緩衝剤を含有してもよい。
【0034】
・スクアレン、Pluronic F−68ブロックコポリマー、卵ホスファチジルコリン、グリセロール、およびトコフェロールを含むエマルジョン[14]。
【0035】
・スクアレン、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton洗浄剤(例えば、Triton X−100)、およびトコフェロール(例えばコハク酸α−トコフェロール)を含むエマルジョン。このエマルジョンは、これらの3成分を約75:11:10の質量比(例えば、750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTriton X−100、および100μg/mlのコハク酸α−トコフェロール)で含んでもよく、かつこれらの濃度は、抗原由来のこれらの成分のあらゆる寄与を含むはずである。このエマルジョンは、3d−MPLも含んでよい。このエマルジョンは、QS21などのサポニンも含んでよい。水相は、リン酸塩緩衝剤を含有してもよい。
【0036】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)、および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンモノオレアートまたは「Span 80」などのソルビタンエステルまたはマンニドエステル)を含むエマルジョン。このエマルジョンは、好ましくは熱可逆性であり、かつ/または油滴の少なくとも90体積%が200nm未満のサイズである[15]。このエマルジョンは、アルジトール;凍結保護剤(例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロースなどの糖);および/またはアルキルポリグリコシドの1種または複数も含んでよい。これは、化学構造に糖環が含まれないものなどのTLR4アゴニストも含んでよい[16]。このようなエマルジョンを凍結乾燥してもよい。
【0037】
・スクアレン、ポロキサマー105、およびAbil−Careのエマルジョン[17]。アジュバントを含むワクチン類中のこれらの成分の最終濃度(重量)は、5%のスクアレン、4%のポロキサマー105(プルロニックポリオール)、および2%のAbil−Care 85(ビス−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16ジメチコン;トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル)である。
【0038】
抗原
水中油型エマルジョンアジュバントを、(例えば、患者に別に投与された抗原にアジュバント効果を与えるために)単独で患者に投与することが可能であるが、アジュバントと抗原を投与する前に混合することがより一般的である。この混合は、分配されたワクチン製品がすぐに投与できるように製造中に行ってもよく、または使用時に行うことができる。
【0039】
様々な抗原は、水中油型エマルジョンを用いて使用することができ、これらの抗原としては、ウイルス表面タンパク質などのウイルス抗原;タンパク質および/または糖抗原などの細菌抗原;真菌性抗原;寄生虫抗原;ならびに腫瘍抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明は、インフルエンザウイルス、HIV、鉤虫、B型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、狂犬病、呼吸器合胞体ウイルス、サイトメガロウイルス、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)、クラミジア、SARSコロナウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、肺炎連鎖球菌(streptococcus pneumoniae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、エプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr virus)、ヒトパピローマウイルスなどに対するワクチン類で特に有用である。
【0041】
・インフルエンザウイルス抗原。これらは、生ウイルスまたは不活化ウイルスの形をとってもよい。不活化ウイルスが使用される場合、ワクチンは、全ウイルス粒子、スプリットウイルス粒子、または精製表面抗原を含んでもよい(ヘマグルチニンを含み、かつ通常はノイラミニダーゼも含む)。インフルエンザ抗原は、ビロソーム類の形で存在することもできる[18]。抗原は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、および/またはH16から選択された任意のヘマグルチニンサブタイプを有してもよい。ワクチンは、インフルエンザAウイルスおよび/またはインフルエンザBウイルスを含めて1種または複数(例えば、1種、2種、3種、4種、またはそれ以上)のインフルエンザウイルス株からの抗原(単数または複数)を含んでもよい。インフルエンザウイルスは、リアソータント株であってもよく、逆遺伝学技術で得られたものでもよい[例えば、19〜23]。したがって、ウイルスは、A/PR/8/34ウイルスからの1種または複数のRNAセグメントを含んでもよい(典型的には、A/PR/8/34から6種のセグメントを含み、HAセグメントおよびNセグメントは、ワクチン株によるものであり、すなわち6:2のリアソータントである)。抗原の供給源として使用されるウイルスは、卵(例えば、有胚ニワトリ卵)でまたは細胞培養物で増殖させることができる。細胞培養物が使用される場合、細胞基質は、典型的にはMDCK;CHO;293T;BHK;Vero;MRC−5;PER.C6;WI−38などの哺乳類細胞株である。インフルエンザウイルスを増殖させるための好ましい哺乳類細胞株としては、メイディン・ダービー(Madin Darby)イヌ腎臓由来のMDCK細胞[24〜27];アフリカミドリザル(Cercopithecus aethiops)腎臓由来のベロ(Vero)細胞[28〜30];またはヒト胚網膜芽細胞由来のPER.C6細胞[31]が挙げられる。これらの細胞株は、例えばAmerican Type Cell Culture(ATCC)コレクション[32]、Coriell Cell Repositories[33]、またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から広く入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL−81、CCL−81.2、CRL−1586、およびCRL−1587で様々な異なるベロ細胞を供給し、カタログ番号CCL−34でMDCK細胞を供給する。PER.C6は、ECACCから寄託番号96022940で入手可能である。哺乳類細胞株の好ましくない代替物として、ウイルスは、アヒル(例えば、アヒル網膜)またはニワトリ、例えばニワトリ胚線維芽細胞(CEF)などに由来する細胞株を含めて、トリ細胞株[例えば、参考文献34〜36]で増殖させることができる。ウイルスを哺乳類細胞株で増殖させた場合、組成物は、卵タンパク質(例えば、オバルブミンおよびオボムコイド)およびニワトリDNAを含まず、それによってアレルゲン性(allergenicity)を低減することが有利である。
【0042】
・HIV−1およびHIV−2を含めて、ヒト免疫不全ウイルス。抗原は、典型的にはエンベロープ抗原である。
【0043】
・B型肝炎ウイルス表面抗原。この抗原は、例えばサッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)酵母で発現した後に組換えDNA法で得られることが好ましい。本来のウイルスHBsAgと異なり、酵母で発現させた組換え抗原は、非グリコシル化されている。これは、リン脂質類を含む脂質マトリックスを含めて、実質的に球状な粒子(平均直径約20nm)の形とすることができる。本来のHBsAg粒子と異なり、酵母で発現させた粒子は、ホスファチジルイノシトールを含む可能性がある。HBsAgは、ayw1、ayw2、ayw3、ayw4、ayr、adw2、adw4、adrq−、およびadrq+というサブタイプのいずれかによるものとすることができる。
【0044】
・特にイヌ類に見られる鉤虫(Ancylostoma caninum)。この抗原は、組換えAc−MTP−1(アスタシン様メタロプロテアーゼ)および/またはアスパラギン酸ヘモグロビナーゼ(Ac−APR−1)とすることができ、バキュロウイルス/昆虫細胞系で分泌タンパク質として発現される可能性がある[37,38]。
【0045】
・単純ヘルペスウイルス抗原(HSV)。本発明での使用に好ましいHSV抗原は膜糖タンパク質gDである。HSV−2株からのgD(「gD2」抗原)を使用することが好ましい。組成物は、C末端膜アンカー領域が欠失したgDの形、例えば天然タンパク質の1〜306アミノ酸を含み、アパラギン(aparagine)およびグルタミンをC末端に付加させた切断型gDを使用することができる[39]。この形のタンパク質は、切断されて成熟283アミノ酸タンパク質を生じるシグナルペプチドを含む。アンカーの欠失によって、タンパク質を可溶型で調製させることができる。
【0046】
・ヒトパピローマウイルス抗原(HPV)。本発明での使用に好ましいHPV抗原は、集合してウイルス様粒子(VLP)と公知の構造を形成することができるL1カプシドタンパク質である。VLPは、酵母細胞(例えば、酵母(S.cerevisiae))または昆虫細胞(例えば、ツマジロクサヨトウ(S.frugiperda)などのスポドプテラ(Spodoptera)細胞またはショウジョウバエ(Drosophila)細胞)におけるL1の組換え発現によって産生することができる。酵母細胞では、プラスミドベクターがL1遺伝子(単数または複数)を保持することができ、昆虫細胞では、バキュロウイルスベクターがL1遺伝子(単数または複数)を保持することができる。より好ましくは、組成物は、HPV−16株とHPV−18株の両方からのL1 VLPを含む。この2価の組合せは極めて有効であることがわかっている[40]。HPV−16株およびHPV−18株に加えて、HPV−6株およびHPV−11株からのL1 VLPを含むことも可能である。発癌性HPV株の使用も可能である。ワクチンは、HPV株あたり、20〜60μg/ml(例えば、約40μg/ml)のL1を含み得る。
【0047】
・炭疽菌抗原。炭疽は、炭疽菌(Bacillus anthracis)によって引き起こされる。適当な炭疽菌(B.anthracis)抗原は、A成分(致死因子(LF)および浮腫因子(EF))を含み、これらは両方とも、感染防御抗原(PA)と公知の共通のB成分を共有することができる。抗原は、場合によっては解毒されていてもよい。さらに詳細は、参考文献41〜43で見ることができる]。
【0048】
・癌抗原。種々の腫瘍特異抗原が知られている。本発明は、肺癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌などに対して免疫療法反応を導き出す抗原を用いて使用してもよい。
【0049】
本発明は、ウイルス表面抗原および異種抗原を含むハイブリッドタンパク質または融合タンパク質に基づく抗原でも有用である。例えば、HBsAg配列を異種抗原に融合させて、集合して粒子を構築するHBsAgの能力を利用することが知られている。例えば、参考文献44によって、HIV−1 gp120をHBsAgに融合させて、自発的に集合して本来のHBsAg粒子に似ている粒子を構築するタンパク質を得ることが報告されている。この手法は、マラリアワクチン類にも使用されてきた。参考文献45によって、マラリアgp190抗原の61aaまでのエピトープをHBsAg配列に挿入したこと、および発現したハイブリッド粒子は動物において抗gp190免疫応答を導き出し得ることが報告されている。参考文献46によって、HBsAgを含む融合タンパク質として発現したスポロゾイト周囲タンパク質の4mer配列の16個繰返しを有するタンパク質が報告されている。参考文献47によって、HBsAgに融合させたPfs16から構成されるウイルス様粒子の酵母における産生が報告されている。参考文献48は、スポロゾイト周囲タンパク質がHBsAgに融合しているハイブリッド抗原を開示する。参考文献49は、P.vivaxのメロゾイト表面タンパク質1のC末端領域の融合物が、20〜45nmサイズの免疫原性粒子を形成したことを開示する。したがって、マラリア抗原を自己集合性粒子の形で提示するのにHBsAgを使用することは、当技術分野でよく知られている。したがって、本発明は、ウイルス表面抗原および異種抗原を含むハイブリッド抗原を用いて使用することができる。特に、ウイルス表面抗原がHBsAgである場合、異種抗原は、HIV、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、または卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)によるものとすることができる。HBsAgハイブリッドを作製するのに適当なHIV抗原としては、エンベロープ糖タンパク質gp120またはその抗原断片が挙げられる[44]。HBsAgハイブリッドを作製するのに適当な熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)抗原は、スポロゾイト周囲表面抗原(「CSP」)のサブユニットをベースとすることがあり、例えばそのNANPモチーフの3個〜20個繰返しを含んでもよく、かつ/またはCSPのC末端領域を含んでもよい(しかし、典型的にはC末端の最終の12個のアミノ酸を含まない)。例えば、本発明は、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)のNF54または7G8単離物からのCSPのC末端の大部分(NANPの19個繰返し、およびアミノ酸367〜390にT細胞エピトープ領域を含むアミノ酸210〜398)を含み、HBsAgのpreS2部分の4個のアミノ酸によってHBsAgのN末端に融合された「RTS」として既知である抗原を使用してもよい。したがって、RTSの配列は、(i)N末端メチオニン残基;(ii)Met−Ala−Pro;(iii)熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)7G8からのCSタンパク質のアミノ酸210〜398または熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)NF54からのCSタンパク質のアミノ酸207〜395に対応する189個のアミノ酸;(iv)ArgまたはGly;(v)B型肝炎Pre−S2タンパク質からのPro−Val−Thr−Asn;および(vi)HBsAgを含むことができる。
【0050】
ワクチン
本発明の方法で試験したエマルジョンアジュバントを使用して、ワクチン類を製造することができる。前述のように、混合およびエマルジョンおよび抗原は使用時に即時に行ってもよく、またはワクチン製造中に行うことができる。本発明の方法を、両方のタイプのワクチンを作製するときに適用することができる。予め混合されたワクチンでは、本方法は、アジュバントを抗原と混合する前に、アジュバントに行うことができ、かつ/または混合した後行うことができ、次いで品質管理試験に合格するワクチンを販売および/または分配用に放出することができる。即時混合向けの形で供給されたワクチンでは、本方法は、抗原を共に含むキットにアジュバントを包装する前にアジュバントに行う。
【0051】
したがって、アジュバントを試験する本発明の方法は、アジュバントを抗原と混合する別のプロセス工程を含んでもよい。代替策として、本方法は、アジュバントを、抗原成分と共に含むキット成分としてキットに包装する別の工程を含んでもよい。これらの別の工程は、通常アジュバントが品質管理試験に合格した場合のみ行われる。
【0052】
本発明の方法は、通常、小試料のバルクアジュバントまたは混合ワクチンに行われる。品質管理はこの試料に行われ、試料が品質管理試験に合格した場合のみ、バルクが各用量に包装される。したがって、本発明の方法は、バルクアジュバントから試料を抽出する工程と、その試料を上述されたように試験する工程と、次いで試料が試験に合格した場合、そのバルクを抗原のバルク混合物と混合する工程とを含んでもよい。次いで、単位用量の混合バルクを抽出し、販売および/または分配用に包装することができる。
【0053】
代替実施形態において、本発明の方法は、バルクアジュバントから試料を抽出する工程と、その試料を上述されたように試験する工程と、次いで試料が試験に合格した場合、バルクアジュバントから単位用量を抽出して、単位用量の抗原と混合する工程とを含んでもよい。
【0054】
別の代替実施形態において、本発明の方法は、バルクアジュバントから試料を抽出する工程と、その試料を上述されたように試験する工程と、次いで、試料が試験に合格した場合、バルクアジュバントから単位用量を抽出して、上述されたように即時使用向けのキット成分として包装する工程とを含んでもよい。
【0055】
別の代替実施形態において、本発明の方法は、抗原およびアジュバントのバルク混合物から試料を抽出する工程と、その試料を上述されたように試験する工程と、次いで試料が試験に合格した場合、バルク混合物から単位用量を抽出して、包装する工程とを含んでもよい。
【0056】
インフルエンザワクチン類では、単位用量のワクチンは、典型的にはヘマグルチニン(HA)含有量を典型的にはSRIDで測定して、参照することにより標準化される。現存するワクチン類は、典型的には約15μgのHA/株を含むが、特にアジュバントを使用する場合には、より少ない用量を使用することができる。1/2(すなわち、7.5μgのHA/株)、1/4、および1/8などの分割用量は、より多い用量(例えば、3倍または9倍用量[52,53])が使用されたように使用されてきた[50,51]。したがって、ワクチン類は、0.1〜150μgのHA/インフルエンザ株、好ましくは0.1〜50μg、例えば0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μgなどを含んでもよい。具体的な用量としては、例えば約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9、約1.5/株などが挙げられる。
【0057】
したがって、全体的にみて、本発明は、混合ワクチン類を調製するとき、またはすぐに混合することができる抗原およびアジュバントを含むキットを調製するとき使用することができる。混合が製造中に行われる場合、混合されるバルク抗原およびアジュバントの体積は、典型的には1リットルを超え、例えば≧5リットル、≧10リットル、≧20リットル、≧50リットルなどである。混合が使用時に行われる場合、混合される体積は、典型的には1ミリリットルより少なく、例えば≦0.6ml、≦0.5ml、≦0.4ml、≦0.3ml、≦0.2mlなどである。両方の場合において、実質的に等しい体積のエマルジョンおよび抗原溶液、すなわち実質的に1:1(例えば、1.1:1〜1:1.1、好ましくは1.05:1〜1:1.05、より好ましくは1.025:1〜1:1.025)が混合されるのが通常である。しかし、いくつかの実施形態において、過剰のアジュバントまたは過剰の抗原を使用してもよい。過剰体積の一成分を使用する場合、過剰は一般に少なくとも1.5:1、例えば≧2:1、≧2.5:1、≧3:1、≧4:1、≧5:1などである。
【0058】
抗原およびアジュバントは、別々の成分としてキット内に提供される場合、キット内で互いに物理的に離れており、この分離は様々な方式で実現することができる。例えば、これらの成分は、バイアルなど別々の容器に存在してもよい。次いで、2本のバイアルの内容物は、例えば一方のバイアルの内容物を取り出し、それを他方のバイアルに加えることによって、または両方のバイアルの内容物を別々に取り出し、それらを第3の容器中で混合することによって、必要に応じて混合することができる。
【0059】
好ましい配置では、キット成分の一方は注射器中にあり、他方はバイアルなどの容器中にある。注射器を(例えば、針を付けて)使用して、その内容物を混合用の第2の容器に挿入することができ、次いで混合物を注射器に引き出すことができる。次いで、典型的には新しい無菌針を介して、注射器の混合内容物を患者に投与することができる。一成分を注射器に充填することによって、患者に投与するのに別の注射器を使用する必要がなくなる。
【0060】
別の好ましい配置では、2つのキット成分は共に、同じ注射器、例えばデュアルチャンバー注射器、具体的には参考文献54〜61などに開示される注射器に別々に保持される。注射器を作動させるとき(例えば、患者に投与中)、2つのチャンバーの内容物が混合される。この配置によって、使用時に別の混合工程が必要でなくなる。
【0061】
様々なキット成分の内容物は、一般にすべて水性の形である。いくつかの配置では、一方の成分(典型的には、エマルジョン成分ではなく抗原成分)は乾燥した形(例えば、凍結乾燥した形)であり、他の成分は水性の形である。乾燥成分を再活性化し、患者に投与するための水性組成物を生じるために、2つの成分を混合することができる。凍結乾燥成分は、典型的には注射器ではなくバイアル内に配置される。乾燥した成分は、ラクトース、スクロース、またはマンニトール、およびそれらの混合物、例えばラクトース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物などの安定剤を含んでもよい。可能な一配置は、プレフィルド注射器中の水性エマルジョン成分、およびバイアル中の凍結乾燥した抗原成分を使用する。
【0062】
ワクチン類がアジュバントおよび抗原に加えて成分を含む場合、これらのさらなる成分は、これらの2つのキット成分の1つに含めてもよく、または第3のキット成分の一部分であってもよい。
【0063】
本発明の混合ワクチン類または個々のキット成分のための適当な容器としては、バイアルおよびディスポーザブル注射器が挙げられる。これらの容器は無菌であるべきである。
【0064】
組成物/成分がバイアル中に配置される場合、バイアルは、好ましくはガラスまたはプラスチック材料で作製される。好ましくは、組成物をバイアルに加える前にバイアルを無菌化する。ラテックス感受性の患者の問題を回避するために、ラテックスを含まない栓でバイアルを密閉することが好ましく、かつすべての包装材料中にラテックスがないことが好ましい。バイアルは、単回用量のワクチンを含んでもよく、または1回を超える用量(「複数回用量」バイアル)、例えば10回用量を含んでもよい。好ましいバイアルは、無色ガラスで作製される。
【0065】
バイアルは、プレフィルド注射器をキャップに挿入することができるように適合されたキャップ(例えば、ルアーロック)を有することができ、注射器の内容物をバイアルに押し出すことができ(例えば、その中の凍結乾燥材料を再構築するため)、バイアルの内容物を注射器に引き戻すことができる。注射器をバイアルから取り外した後、次いで針を取り付け、組成物を患者に投与することができる。キャップは、好ましくはキャップにアクセスすることができる前にシールまたはカバーを取り除かなければならないようにシールまたはカバー内部に配置される。
【0066】
組成物/成分が注射器に充填されている場合、注射器には、通常針が取り付けられているわけではないが、注射器と別に針を供給して、組み立て、使用してもよい。安全針が好ましい。1インチ23ゲージ、1インチ25ゲージ、および5/8インチ25ゲージの針が典型的である。注射器には、記録を取ることが容易になるように、ロット番号、インフルエンザシーズン、および内容物の使用期限が印刷されていることがある剥離式ラベルが備えられていてもよい。注射器のプランジャーは、プランジャーが吸引中に偶発的に取り外されないように栓を有することが好ましい。注射器は、ラテックスゴムキャップおよび/またはプランジャーを有することができる。ディスポーザブル注射器には、単回用量のワクチンが入っている。注射器は、一般に針を取り付ける前に先端を密閉するように先端キャップを有し、先端キャップはブチルゴムで作製されていることが好ましい。注射器および針を別々に包装する場合、針はブチルゴムシールドで固定されることが好ましい。好ましい注射器は、商標名「Tip−Lok」(商標)で上市されているものである。
【0067】
容器には、半用量体積を示すように印を付けて、例えば小児への送達を容易にすることができる。例えば、0.5mlの用量を含む注射器は、0.25mlの体積を示す印を有してもよい。
【0068】
ガラス容器(例えば、注射器またはバイアル)を使用する場合、ソーダ石灰ガラスではなくホウケイ酸ガラスで作製された容器を使用することが好ましい。
【0069】
キットまたは組成物は、ワクチンの詳細、例えば投与するための指示書、ワクチン内の抗原の詳細などを含めて、パンフレットと共に(例えば、同じ箱に)包装してもよい。指示書には、例えばワクチン投与後のアナフィラキシー反応などに備えてアドレナリン溶液を容易に利用可能にしておくようにという警告も含まれることがある。
【0070】
医薬組成物
本発明の方法を使用して作製された組成物は、医薬として許容される。これらは、抗原およびアジュバントに加えて、成分を含んでもよく、例えば典型的には1種または複数の医薬用担体(単数または複数)および/または賦形剤(単数または複数)を含む。このような成分について徹底した考察は、参考文献62で見られる。
【0071】
組成物は、チオメルサールまたは2−フェノキシエタノールなどの保存剤を含んでもよい。しかし、ワクチンは、水銀材料を実質的に含まない(すなわち、5μg/ml未満)、例えばチオメルサールを含まないことが好ましい[63,64]。水銀を含有しないワクチン類がより好ましい。
【0072】
張度を制御するには、ナトリウム塩などの生理的塩を含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、1mg/ml〜20mg/mlで存在することができる。存在してもよい他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0073】
組成物は、一般にオスモル濃度が200mOsm/kg〜400mOsm/kg、好ましくは240mOsm/kg〜360mOsm/kgであり、より好ましくは290mOsm/kg〜310mOsm/kgの範囲内に入る。オスモル濃度は、ワクチン投与によって引き起こされた疼痛に影響を与えないことが以前に報告された[65]が、それにもかかわらずオスモル濃度をこの範囲にしておくことが好ましい。
【0074】
組成物は、1種または複数の緩衝剤を含むことができる。典型的な緩衝剤としては、リン酸塩緩衝剤;Tris緩衝剤;ボラート緩衝剤;コハク酸塩緩衝剤;ヒスチジン緩衝剤;またはクエン酸塩緩衝剤が挙げられる。緩衝剤は、典型的には5mM〜20mMの範囲で含まれる。
【0075】
組成物のpHは、一般に5.0〜8.1、さらに典型的には6.0〜8.0、例えば6.5〜7.5である。したがって、本発明のプロセスは、包装する前にバルクワクチンのpHを調整する工程を含むことができる。
【0076】
組成物は、好ましくは無菌である。組成物は、好ましくは非発熱性であり、例えば<1EU(エンドトキシン単位、標準尺度)/用量、好ましくは<0.1EU/用量を含有する。組成物は、好ましくはグルテンを含まない。
【0077】
組成物は、単回免疫用の材料を含んでもよく、または反復免疫用の材料を含んでもよい(すなわち、「複数回用量」キット)。保存剤を複数回用量の配置に含むことが好ましい。
【0078】
ワクチン類は、典型的には約0.5mlの投与量体積で投与されるが、半用量(すなわち、約0.25ml)を小児に投与してもよい。
【0079】
組成物およびキットは、好ましくは2℃〜8℃で貯蔵される。これらは凍結すべきではない。これらは、理想的には直射日光を避けるべきである。
【0080】
治療方法およびワクチンの投与
本発明は、本発明の方法を使用して調製されたキットおよび組成物を提供する。これらはヒト患者への投与に適しており、本発明は、患者において免疫応答を高める方法であって、このような組成物を患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0081】
本発明は、医薬品として使用するためのこれらのキットおよび組成物も提供する。
【0082】
本発明は、患者において免疫応答を高めるための医薬品の製造における(i)抗原の水性調製物;および(ii)本発明に従って試験された水中油型エマルジョンアジュバントの使用も提供する。
【0083】
これらの方法および使用によって高められた免疫応答としては、一般に抗体応答、好ましくは防御抗体応答が挙げられる。
【0084】
組成物は、様々な方式で投与することができる。最も好ましい免疫経路は、(例えば、腕または脚への)筋肉内注射によるが、他の利用可能な経路としては、皮下注射、鼻腔内[66〜68]、経口[69]、皮内[70,71]、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)[72]などが挙げられる。
【0085】
本発明に従って調製されたワクチン類は、小児と成人を治療するために使用してもよい。患者は、1歳未満、1歳〜5歳、5歳〜15歳、15歳〜55歳、または少なくとも55歳であってもよい。患者は、高齢者(例えば、≧50歳、好ましくは≧65歳)、幼児(例えば、≦5歳)、入院患者、医療従事者、兵役および軍人、妊婦、慢性疾患患者、免疫不全患者、および海外旅行者であってもよい。しかし、ワクチン類は、これらの群だけに適しているわけではなく、ある集団でより全般的に使用してもよい。
【0086】
治療は、単回投与計画または反復投与計画によるものとすることができる。反復投与は、一次免疫計画および/または追加免疫計画で使用してもよい。反復投与計画において、様々な用量は、同じまたは異なる経路、例えば非経口プライムおよび粘膜ブースト、粘膜プライムおよび非経口ブーストなどで投与してもよい。1回を超える用量(典型的には、2回用量)の投与は、特に免疫学的にナイーブな患者において有用である。反復投与は、典型的には少なくとも1週(例えば、約2週、約3週、約4週、約6週、約8週、約12週、約16週など)空けて投与する。
【0087】
本発明のワクチン類は、他のワクチン類と実質的に同時(例えば、同じ医療相談または医療専門家への来診中)に患者に投与してもよい。
【0088】
全般
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」および「なる(consisting)」を包含し、例えばXを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなることがあり、または追加の何かを含んでもよく、例えばX+Yであってもよい。
【0089】
「実質的に」という言葉は、「完全に」を除外せず、例えばYを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないことがある。必要に応じて、「実質的に」という言葉は、本発明の定義から省略してもよい。
【0090】
数値xに関して「約」という用語は、例えばx±10%を意味する。
【0091】
具体的な記載のない限り、2つ以上の成分を混合する工程を含む方法では、特定の混合順序はいずれも必要でない。したがって、成分はいずれの順序でも混合することができる。3成分である場合、2成分を互いに混合することができ、次いで混合物を第3の成分などと混合してもよい。
【0092】
細胞の培養で動物(特に、ウシの)材料が使用される場合、これらは、伝達性海綿状脳症(TSE)、特にウシ海綿状脳症(BSE)を含まない供給源から入手すべきである。全体的にみて、完全に動物由来材料なしで、細胞を培養することが好ましい。
【0093】
組成物の一部分として、化合物が身体に投与される場合、その化合物を代わりに適当なプロドラッグで置換してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】水中油型エマルジョンの種々のバッチのスクアレン含有量(mg/ml)を示した図である。許容されるスクアレン含有量からの3つの偏差は、A、B、およびCとして示される。
【発明を実施するための形態】
【0095】
スクアレン、Span 85、Tween 80、水、およびクエン酸塩緩衝剤を混合することによって、MF59アジュバントの個別ロット(それぞれ50リットル)を調製した。成分を、所望の最終濃度が5%(体積)のスクアレン、0.5%(体積)のポリソルベート80、0.5%(体積)のSpan 85、および10mM クエン酸塩緩衝剤になる量で混合した。混合物を約700バールで微小流動化し、および最終微小流動化混合物を0.2μmのフィルターで濾過した。
【0096】
これらのMF59ロット中の対象のスクアレン含有量は39±3mg/mlであった。図1は、150を超える種々の製造ロットのスクアレン含有量を示す。標的の分布範囲からの3つの偏差は明らかであり、A〜Cと表示する。「A」および「B」のロットについて、製造装置を調査したとき、相互作用チャンバー(interaction chamber)の故障のためフィルターが詰まったことが明らかになり、これらのロットについて、液滴サイズが対象の上方レベルを超えて上昇することもわかった。「C」のロットについても、フィルターの詰まりが見られたが、このとき、原因は相互作用チャンバーに欠陥があったのではなく、不適切なフィルタータイプを使用していたことであった。
【0097】
したがって、異常なスクアレンレベルは、フィルターを直接検査する必要なしに多様な濾過の問題を検出するのに適している。
【0098】
本発明を例によって説明してきたにすぎず、本発明の範囲および趣旨内にととまりながら、修正を行ってもよいことが理解されよう。
【0099】
参考文献(これらの内容は、参考として本明細書に援用される)
【0100】
【化1】

【0101】
【化2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油型エマルジョンアジュバントを製造するための方法であって、(i)既知量の水性担体、界面活性剤、およびスクアレンを使用して、サブミクロン水中油型エマルジョンを調製する工程と、(ii)該エマルジョンを濾過滅菌に供し、無菌化されたエマルジョンを準備する工程と、(iii)該無菌化されたエマルジョンのスクアレン含有量を測定する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記プロセスが、(iv)工程(iii)で測定された前記スクアレン含有量を工程(i)で既知の前記スクアレン含有量と比較する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(iv)における比較によって、前記スクアレン含有量が工程(i)と工程(iii)の間で著しく変化したことが明らかになった場合、前記アジュバントが受け入れられない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(iii)において測定された前記含有量が、工程(i)で既知の前記含有量と±10%を超えて異なる場合、前記アジュバントが受け入れられない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(i)で既知の前記スクアレン含有量が2体積%〜8体積%のスクアレン濃度である、請求項2または3または4に記載の方法。
【請求項6】
工程(i)で既知の前記スクアレン含有量が4体積%〜6体積%のスクアレン濃度である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水中油型エマルジョンアジュバントの品質管理試験方法であって、該アジュバントはスクアレンを含み、かつ該方法は、該アジュバントの実際のスクアレン含有量を標準スクアレン含有量と比較する工程を含む、方法。
【請求項8】
前記アジュバントが許容されるスクアレン含有量を有する場合、抗原と混合される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗原がインフルエンザ抗原である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
スクアレンを含む水中油型エマルジョンアジュバントを含むワクチンの品質管理試験方法であって、該方法は、(i)該アジュバントの実際のスクアレン含有量を標準スクアレン含有量と比較する工程と、該実際のスクアレン含有量が許容される場合、(ii)該アジュバントと抗原を混合することによって該ワクチンを調製する工程とを含む、方法。
【請求項11】
前記標準スクアレン含有量が2体積%〜8体積%のスクアレン濃度である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記標準スクアレン含有量が4体積%〜6体積%のスクアレン濃度である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記実際の含有量が前記標準含有量と±10%を超えて異なる場合、前記アジュバントが受け入れられない、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(i)インフルエンザウイルス抗原および(ii)スクアレンを含む水中油型エマルジョンアジュバントを混合する工程を含む方法であって、該方法は、(a)該混合工程の前の該アジュバント中、および/または(b)該混合工程後の該抗原−アジュバント混合物中のスクアレン含有量が測定される工程も含む、方法。
【請求項15】
(a)または(b)において測定された前記スクアレン含有量が、生産の失敗を調べるために標準スクアレン含有量(単数または複数)と比較される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記標準スクアレン含有量が2体積%〜8体積%のスクアレン濃度である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記標準スクアレン含有量が4体積%〜6体積%のスクアレン濃度である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記実際の含有量が前記標準含有量と±10%を超えて異なる場合、前記アジュバントが受け入れられない、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
スクアレン含有量が(a)と(b)とにおいて測定される、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
スクアレン含有量が(a)において測定されるが、(b)において測定されない、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
スクアレン含有量が(b)において測定されるが、(a)において測定されない、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記エマルジョンが、スクアレン、Tween 80、およびSpan 85を含むサブミクロンエマルジョンである、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記エマルジョンが、スクアレン、トコフェロール、およびTween 80のエマルジョンである、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記エマルジョンが、スクアレン、トコフェロール、およびTriton洗浄剤のエマルジョンである、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記エマルジョンが、スクアレン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤、および疎水性非イオン性界面活性剤を含むエマルジョンである、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−509202(P2010−509202A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535148(P2009−535148)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004229
【国際公開番号】WO2008/056263
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】