説明

スクイズカット継手

【課題】スクイズオフ工法によって軸方向の亀裂が発生したとしても鋼管の管端部からの漏洩を防止する。
【解決手段】スクイズカットした鋼管50の管端部51を覆う偏平部21と、変形していない鋼管の外面を覆う円筒部23とからなるゴムキャップ2と、スクイズする方向に直角方向からゴムキャップ2を挟持する2つ割りのカバー本体3A、3Bと、カバー本体3A、3Bを締結する締結手段4A、4Bとからなる。円筒部23には、スクイズする方向に形成されたスリット25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要になった都市ガス等の埋設鋼管をスクイズオフして切断し、その端部を閉塞状態で埋設等放置しておくためのスクイズカット継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ガス等の供給に用いられる埋設鋼管は、ガス等の供給が不要になると公道と私有地との境界で切断して埋設鋼管の先端を閉塞する。そして他のガス供給先への供給を維持した状態でガス遮断するために、埋設鋼管の閉塞にはスクイズオフ工法が広く用いられている。
スクイズオフ工法でガス供給を遮断した後、閉塞状態のまま再び埋設放置するために、例えば特許文献1には、スクイズオフ工法で切断した供給管の切断端にシール材を入れたキャップを被嵌することが記載されている。これによれば、切断口からのガス漏洩を完全にシールすることができるとしている。
【0003】
特許文献2には、スクイズした鋼管の管端部を覆うゴムキャップと、ゴムキャップの閉止端側を覆う本体と、スクイズ変形させた鋼管に係止する固定具と、本体・固定具を締め付ける締付け具とからなる鋼管スクイズ閉塞装置が記載されている。
また特許文献3には、鋼管をスクイズした管端部に被せる偏平状のゴムキャップと、ゴムキャップの閉止端部及び偏平外面を覆いゴムキャップを介して鋼管のスクイズ部をスクイズする方向に2つ割りのスクイズカバーとからなる鋼管スクイズキャップが記載されている。これによれば、鋼管スクイズキャップが管端部から抜け出すのを防止するとともに漏れに対しての安全性が高まるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−31796号公報(第4頁左上欄、図6)
【特許文献2】特開2000−249284号公報
【特許文献3】特開2000−55286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スクイズカットした鋼管50の端部は、図6に示すように、スクイズオフした方向に幅広の先端偏平閉塞部51と、変形していない円管部55と、偏平閉塞部51と円管部55との間の半変形部53とからなる。鋼管50をスクイズオフして閉塞させた場合、ときに切断面57から偏平閉塞部51の側面52に沿って軸方向に亀裂59が入ることがある。埋設してからの経年の長い老朽管では、この亀裂59が半変形部53にまでいたる場合がある。特許文献1および2記載のものは、切断端のみにシール材が当てられているために、この亀裂からの漏洩を防止することができない。特許文献3記載のものは、ゴムキャップがスクイズした偏平変形させた部分まで覆うので、若干長さの亀裂ならばゴムキャップで漏洩を防ぐことができるものの、亀裂長さが半変形部53までの数cmに及ぶ場合には、その漏洩を防止することができない。
なお、図中の二点破線は、偏平閉塞部51、半変形部53、円管部55の境界を示している。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、スクイズオフ工法によって軸方向の亀裂が発生したとしても確実に漏洩を防止することができるスクイズカット継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、鋼管のスクイズカットした管端部を覆う偏平部と、該鋼管の変形していない円管部外面の少なくとも一部を覆う円筒部とを有するゴムキャップと、前記偏平部の幅広方向から前記ゴムキャップを挟持する2つ割りのカバー本体と、該カバー本体を締結する締結手段とからなることを特徴とするスクイズカット継手である。
この構成によれば、ゴムキャップが、亀裂の入った偏平閉塞部と、半変形部と、変形していない鋼管の一部外面部分までを覆い、さらにこれらの部分を2つ割りのカバー本体で包み込むように挟持する。したがって、カバー本体は、亀裂の入った部分にゴムキャップを圧縮ように固定するので、スクイズオフ工法によって軸方向の亀裂が発生した鋼管の端部からの漏洩を確実に防止することができる。
【0008】
本発明において、前記円筒部の端部に円環状突起を有することが好ましい。
この構成によれば、亀裂の入った方向にゴムキャップを圧縮シールすることに加え、円筒部の端部でもシールすることが可能なので、安全率をより増すことができる。
【0009】
上記発明において、前記円筒部端面から前記偏平部に向かって所定の長さに延び、かつ前記鋼管のスクイズカットした管端側面より所定距離離れて形成されたスリットを有することができる。
この構成によれば、ゴムキャップは、スリットを有しているので、円筒部を拡げることが可能で、ゴムキャップを鋼管に装着する際に、鋼管端部の切断面で傷つけられることがない。またゴムキャップには、前記スリットに沿うツバ部を形成し、該ツバ部を前記カバー本体で挟み圧縮することが好ましい。
【0010】
また上記発明において、前記ゴムキャップの外面に前記偏平部の幅広方向に伸びる凸部を有し、前記カバー本体の内側に凹溝を形成し、該凸部と該凹溝とを嵌合させることが好ましい。
この構成によれば、ゴムキャップとカバー本体との位置決めが容易となり、施工性を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスクイズカット継手によれば、ゴムキャップが、亀裂の入った偏平閉塞部と、半変形部と、変形していない鋼管の一部外面部分までを覆い、さらにこれらの部分を2つ割りのカバー本体で包み込むように挟持する。したがって、カバー本体は、亀裂の入った部分にゴムキャップを圧縮するように固定するので、スクイズオフ工法によって軸方向の亀裂が発生した鋼管の端部からの漏洩を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のスクイズカット継手の一実施形態を示し、構成部品ごとに分解した斜視図である。
【図2】ゴムキャップを示す図であり、ゴムキャップの円筒部側から見た斜視図である。
【図3】スクイズカットした鋼管にゴムキャップを取り付けた工程を示す斜視図である。
【図4】スクイズカットした鋼管に一方のカバー本体を取り付けた工程を示す斜視図である。
【図5】スクイズカットした鋼管にスクイズカット継手の取り付けが完了した状態を示す斜視図である。
【図6】スクイズカットした鋼管の端部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、スクイズカット継手1は、ゴムキャップ2、2つのカバー本体3A、3B、締結手段4A、4Bからなる。
【0014】
ゴムキャップ2は、スクイズカットした鋼管50を受け入れる空間を有したゴム製のシール部材で、鋼管50の管端部(偏平閉塞部)51を覆う幅広の偏平部21と、変形していない鋼管の外面(円管部)55を覆う円筒部23と、円筒部23端面から偏平部21に向かって所定の長さ延びるスリット25とを有する。スリット25は、上下面にそれぞれ1箇所設けることが好ましいが、少なくともひとつ設ければよい。またスリット25の長さは、鋼管50にゴムキャップ2を装着しやすい程度に形成すればすむ。口径やスクイズカットした鋼管50の形状等によって設定すればよく、鋼管50の半変形部53を覆う部分にまで延長されていてもよい。
またスリット25は、鋼管50のスクイズカットした管端側面52から所定距離離れていることを要する。管端側面52の亀裂59の部分をシールするための距離を確保するためである。好ましくは、鋼管50の軸方向(すなわち、偏平部21の幅広方向に直角な方向)に形成する。
【0015】
またスリット25の縁に沿ってツバ部26が形成されている。スリット25に直角となる方向(すなわち偏平部21の幅広方向)には、凸部27が形成されている。さらに図2に示すように、円筒部23の端部には円環状突起28を有する。なお、材質は、ガスの透過性を考慮してNBRとすることが好ましい。
【0016】
カバー本体3A、3Bは、ゴムキャップ2をスクイズする方向の直角方向(すなわち、偏平部21の幅広方向と同一の方向)から挟持する対称形状の部材で、カバー本体3A、3Bの2つでゴムキャップ2の外面をほぼ覆う。カバー本体3Aの内側面は、ゴムキャップ2の外面形状に概ね沿う形状をなしており、偏平部21を覆う矩形部31、半変形部53を覆う縮径部33、円筒部23を覆う半円弧部35を有する。さらにゴムキャップ2の凸部27と相対する位置に凹溝36が形成されている。
【0017】
カバー本体3A、3Bの外面には、上下にフランジ部37が形成されており、カバー本体3Aのフランジ部37には貫通孔38が、カバー本体3Bのフランジ部37にはめねじ39が形成されている。材質は、黒心可鍛鋳鉄や球状黒鉛鋳鉄等で成形することが可能で、表面には溶融亜鉛メッキ、樹脂コーティング、またはメッキとコーティングの組み合わせ等の防食処理が施される。
鋳造法で成形されたカバー本体3A、3Bは、矩形部31、縮径部33および半円弧部35に抜き勾配を有する。具体的には、カバー本体3A、3Bの合わせ面(ツバ部26に当接する側)が大きく、遠ざかるにしたがって小さくなっている。
【0018】
締結手段4A、4Bは、例えば六角穴付ボルトで構成され、貫通孔38に六角穴付ボルトを通して、めねじ39に締め付ける。施工上、下側になる締結手段4Bは、施工を容易にするために、蝶番構造でカバー本体3A、3Bを連結してもよい。
【0019】
フランジ部37は、安定したシール性を確保するために、亀裂の入りやすいスクイズカットした鋼管50の管端部51を覆う矩形部31と、円管部55を覆う半円弧部35に設けられている。
【0020】
鋼管50にスクイズカット継手1を装着するにあたっては、まず図3に示すように、ゴムキャップ2を鋼管50の管端部51から覆い被せる。このとき、ゴムキャップ2は、スリット25を有しているので、円筒部23を拡げることが可能で、ゴムキャップ2を鋼管50に装着する際に、管端部51の切断面57で傷つけられることがない。
なお、ゴムキャップ2のツバ部26と凸部27を近接する位置関係にすると、スリット25先端の肉厚が厚く設けられるので、円管部23を拡げてゴムキャップ2を装着する際に、スリット25の先端から亀裂が発生することを防止できる。
【0021】
次に、図4に示すように、カバー本体3A、3Bの凹溝36をゴムキャップ2の凸部27に嵌め合うように、カバー本体3A、3Bを被せゴムキャップ2を挟持する。凸部27に凹溝を嵌合させるので、ゴムキャップ2とカバー本体3A、3Bの位置がずれることはない。
【0022】
そして、図5に示すように、貫通孔38に六角穴付ボルト4A、4Bを通して、めねじ39に締め付ける。このように、ゴムキャップ2をカバー本体3A、3Bで亀裂の入っている部分を圧縮固定するので、スクイズオフ工法によって軸方向の亀裂が発生した鋼管の端部の漏洩を確実に防止することができる。さらに円筒部23の端部に円環状突起28を有するので、鋼管50をこの部分でもシールする(二重にシールする)ことができ、安全性をより増すことができる。また、スリット25に沿ってツバ部26が形成されており、このツバ部26をカバー本体3A、3Bで挟んで圧縮するので、スリット25から漏れが生じることもない。
矩形部31、縮径部33および半円弧部35には、抜き勾配があるので、締結手段4A、4Bで締め付けると、亀裂を閉じる側に力が加わり、さらに漏洩を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0023】
1:スクイズカット継手、
2:ゴムキャップ、21:偏平部、23:円筒部、25:スリット、26:ツバ部、27:凸部、28:円環状突起、
3A、3B:カバー本体、31:矩形部、33:縮径部、35:半円弧部、36:凹溝、37:フランジ部、38:貫通孔、39:めねじ、
4A、4B:締結手段
50:鋼管、51:管端部、52:側面、53:半変形部、55:円管部、57:切断面、59:亀裂


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管のスクイズカットした管端部を覆う偏平部と、該鋼管の変形していない円管部外面の少なくとも一部を覆う円筒部とを有するゴムキャップと、前記偏平部の幅広方向から前記ゴムキャップを挟持する2つ割りのカバー本体と、該カバー本体を締結する締結手段とからなることを特徴とするスクイズカット継手。
【請求項2】
前記円筒部の端部に円環状突起を有することを特徴とする請求項1に記載のスクイズカット継手。
【請求項3】
前記円筒部端面から前記偏平部に向かって所定の長さに延び、かつ前記鋼管のスクイズカットした管端側面より所定距離離れて形成されたスリットを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のスクイズカット継手。
【請求項4】
前記スリットに沿うツバ部を有し、該ツバ部を前記カバー本体で挟み圧縮することを特徴とする請求項3に記載のスクイズカット継手。
【請求項5】
前記ゴムキャップの外面に前記偏平部の幅広方向に伸びる凸部を有し、前記カバー本体の内側に凹溝を形成し、該凸部と該凹溝とを嵌合させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスクイズカット継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219996(P2012−219996A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89720(P2011−89720)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】