説明

スクラップ剪断機

【課題】 貨車や客車を含む鉄道車両或いはバスや大型トラックを含む陸上車両などの廃棄車両を複数の短尺スクラップ片に剪断するのに好適なスクラップ剪断機を提供する。
【解決手段】 直刃剪断機、広幅の開放型供給チャンネル、供給チャンネル内で金属スクラップを側方から圧縮する側方油圧ラム、及び圧縮された金属スクラップを剪断機へ送り込むフィーダー機とを備えたスクラップ剪断機であって、長尺且つ堅牢な金属スクラップを一対の側方油圧ラムによって供給チャンネルの長手方向の全長よりも短い或る限定された長さ部分のみについて金属スクラップを幅方向に圧縮し、下向き油圧ラムによって側方油圧ラムの作動に先立って前記限定された長さ部分のみについて金属スクラップを下向きに圧縮し、直刃剪断機、フィーダー機、側方油圧ラム及び下向き油圧ラムの各駆動系は、これらを予め定められた動作順序で作動制御する統括制御装置と関連づけられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺の金属スクラップを複数の短尺スクラップ片に剪断するためのスクラップ剪断機に関し、更に詳しくは、ギロチン式の直刃剪断機と、剪断機の剪断口よりも広い幅を持つ直方体形状の空間を形成する開放型供給チャンネルと、供給チャンネル内に搬入された金属スクラップを側方から押し潰して金属スクラップの幅寸法を減少させる側方油圧ラムと、供給チャンネル内で幅寸法が減少された金属スクラップを剪断機の剪断口内へ送り込むフィーダー機とを備えた形式のスクラップ剪断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、円筒状鋼製容器等の然程堅牢ではない大型金属スクラップを側方から押し潰してスクラップの幅寸法を減少させ、引き続きこれをギロチン式の直刃剪断機によって短尺スクラップ片に剪断するスクラップ剪断機を開示している。
【0003】
この公知のスクラップ剪断機は剪断機の剪断口よりも広い幅の開放型供給チャンネルを使用する形式であり、この供給チャンネルの長手方向に沿った一方の側壁には、スクラップを幅の狭い剪断口内に供給する前に供給チャンネルの側方からスクラップを押し潰してスクラップの幅寸法を減少させるための側方油圧ラムが配置されている。側方油圧ラムは主ラムと補助ラムとを含み、補助ラムは主ラムに対して独立して作動可能である。補助ラムの押圧作業面は剪断口に近接して位置付けられ、しかも供給チャンネルの長手方向に関して主ラムの押圧作業面よりも短く設計されている。従って、供給チャンネルの長手方向に関して、補助ラムの押圧作業面と主ラムの押圧作業面との合計の長さがボックス形状の供給チャンネルの全長に対応する。この剪断機はまた、側方油圧ラムと対抗する側のチャンネル側壁に沿ってチャンネル全長に亘る長さの下向き押付プレートを枢動可能に装備しており、この下向き押圧プレートは、スクラップが剪断口内に入る前にチャンネル全長に亘ってスクラップを下向きにチャンネル内へ押し込むために油圧シリンダで駆動される。
【0004】
このような従来のスクラップ剪断機によって比較的大型で長尺且つ堅牢な金属スクラップ、例えば貨車や客車を含む鉄道車両或いはバスや大型トラックを含む陸上車両などの廃棄車両を短尺スクラップに剪断するためには、ボックス形状の供給チャンネルもまた大型長尺金属スクラップを受け入れ可能とするために相応に長大な寸法に構成しておく必要がある。そのような長大な供給チャンネルのほぼ全長を占める堅牢な金属スクラップを、供給チャンネルの全長に亘る主ラムと補助ラムとからなる側方油圧ラム並びに下向き押付プレートで押し潰すには、これらラム及びプレートの駆動に極めて強力な油圧シリンダが必要になる。
【特許文献1】米国特許第3945315号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な課題は、比較的大型で長尺且つ堅牢な金属スクラップ、特に貨車や客車を含む鉄道車両或いはバスや大型トラックを含む陸上車両などの廃棄車両、を複数の短尺スクラップ片に剪断するのに好適なスクラップ剪断機を提供することである。この場合、剪断機の剪断口よりも広い幅の開放型供給チャンネルに付設される側方油圧ラム並びに下向き押付プレートの双方共に駆動力の低減を果たす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、側方油圧ラムが直刃剪断機の剪断口に近接して位置付けられていると共に、供給チャンネルの長手方向の全長よりも短い或る限定された長さ部分のみについて前記金属スクラップの幅寸法を剪断口の内法幅未満に減少させるように適合され、側方油圧ラムが供給チャンネル内に搬入された金属スクラップを両側方から押し潰して該金属スクラップの幅寸法を減少させる一対の側方油圧ラムであり、側方油圧ラムが下向き油圧ラムと関連づけられ、該下向き油圧ラムは剪断口に近接して位置付けられていると共に、供給チャンネル内に搬入された金属スクラップを一対の側方油圧ラムの作動に先立って下向きに押し潰して前記限定された長さ部分のみについて金属スクラップの高さ寸法を剪断口の内法高さ未満に減少させるように適合され、直刃剪断機、フィーダー機、側方油圧ラム及び下向き油圧ラムの各駆動系が、これらを予め定められた動作順序で作動制御する統括制御装置と関連づけられていることを特徴とするスクラップ剪断機によって解決される。
【0007】
本発明によるスクラップ剪断機は、比較的大型で長尺且つ堅牢な金属スクラップ、特に貨車や客車を含む鉄道車両或いはバスや大型トラックを含む陸上車両などの廃棄車両、を複数の短尺スクラップ片に剪断するのに好適である。剪断機の剪断口よりも広い幅の開放型供給チャンネルに搬入された長尺且つ堅牢な金属スクラップは、供給チャンネルに付設された下向き油圧ラム及び側方油圧ラムによって、供給チャンネルの長手方向の全長よりも短い限定された長さ部分のみが剪断口の内法寸法未満の断面積に圧縮され、従ってこれら油圧ラムの駆動トルクは公知技術によるスクラップ剪断機の場合に比べて明らかに低減され、比較的小形の油圧パワーシリンダで駆動可能である。直刃剪断機、フィーダー機、側方油圧ラム及び下向き油圧ラムの各駆動系は統括制御装置によって予め定められた動作順序で作動制御され、従って直刃剪断機によって効率的に金属スクラップから複数の短尺スクラップ片を切り出すことができ、これら短尺スクラップ片はリサイクル施設へ搬送して資源物質の選別回収に付すことができる。
【0008】
本発明の好適な一実施形態によれば、下向き油圧ラムは下向き油圧シリンダによって駆動され、一対の側方油圧ラムが対向位置に配された一対の側方油圧シリンダによって駆動され、下向き油圧ラムの底面と側方油圧ラムの上面とに相互に摺動可能に嵌合するリニアガイドが設けられている。これにより、側方油圧ラムは、先行して下降位置にある下向き油圧ラムとの間でリニアガイドにより安定な直線移動を保証され、その駆動用油圧シリンダの動作にも無用な抵抗荷重が負荷されることがなく、良好な圧縮動作が果たされると同時に、装置の故障も少なくなる。
【0009】
下向き油圧ラムは、供給チャンネル内に搬入された金属スクラップを側方油圧ラムの作動に先立って下向きに押し潰し、供給チャンネルの長手方向の全長よりも短い或る限定された長さ部分のみについて金属スクラップの高さ寸法を直刃剪断機の剪断口の内法高さ未満に減少させるように設計され、その駆動源は電動式でもよいが、好ましくは油圧シリンダ方式とする。下向き油圧ラムには、下向き油圧シリンダによる押圧荷重を助勢するためのウエイトを付加すると有利である。
【0010】
側方油圧ラムは下向き油圧ラムによる圧縮が終了した後に作動され、供給チャンネル内に搬入された金属スクラップを側方から押し潰し、既に下向き油圧ラムによって下向きに圧縮されている前記限定された長さ部分のみについて金属スクラップの幅寸法を直刃剪断機の剪断口の内法幅未満に減少させるように設計され、その駆動源は電動式でもよいが、好ましくは油圧シリンダ方式とする。勿論、一層強力な押圧力を与えるために単一の側方油圧ラムを複数の側方油圧シリンダによって駆動してもよい。
【0011】
下向き油圧ラム及び側方油圧ラムによって圧縮された部分の金属スクラップの断面輪郭は直刃剪断機の剪断口の内法を下回る寸法でなければならない。これは、各油圧ラムによる圧縮状態が解放されると圧縮部分がスプリングバック作用で膨張し、この膨張が徐々に増加するからである。従って、各油圧ラムによる押し潰しの最終ストロークは、このスプリングバック作用による膨張代を見込んで、その分だけ金属スクラップの圧縮部分の断面寸法が剪断口の内法寸法よりも小さくなる位置まで達していなければならない。
【0012】
圧縮された金属スクラップのスプリングバック作用による膨張は、圧縮すべき金属スクラップの材質と形状に依存する。多くの場合、スクラップ処理業者は搬入される金属スクラップの種別からスプリングバック膨張の多寡を経験で把握することができ、従って統括制御装置には、下向き油圧ラム及び側方油圧ラムの駆動トルク、圧縮保持時間、再圧縮の回数等の条件を可変設定できる機能を持たせることが望ましい。
【0013】
本発明の別の好適な一実施形態によれば、フィーダー機は供給チャンネルの長手方向の尾端面から直刃剪断機の剪断口へ向けて往復移動する油圧プッシャーを有している。
【0014】
フィーダー機は油圧プッシャーに限定されるものではなく、供給チャンネル内に搬入された剪断すべき金属スクラップを直刃剪断機へ向けて送り込むその他のフィーダー機、例えば電動式の送りネジ機や無端チェーン方式のフィーダー機を用いることもできる。
【0015】
本発明の更に別の好適な一実施形態によれば、スクラップ剪断機は供給チャンネルの両側壁に沿って上方に延在する一対の堰板を更に備えている。この堰板は、供給チャンネルの両側壁を上方へ向かって拡張するものであり、その上端縁は少なくとも下向き油圧ラムの初期待機位置(上昇位置)と同等の高さに達するものであればよい。
【0016】
この場合、下向き油圧ラムとその駆動用の油圧シリンダとを支持するフレームにも、該フレームの両側面を覆う閉鎖壁が設けられていることが好ましい。堰板並びに閉鎖壁は、供給チャンネルに搬入された金属スクラップが特に側方油圧ラムによって圧縮される間に供給チャンネルから逸出することを防止する。尚、これらの閉塞壁も、堰板と同様に、少なくとも下向き油圧ラムの初期待機位置(上昇位置)から下方領域のフレーム両側面を覆うものであればよい。
【0017】
本発明によるスクラップ剪断機は統括制御装置を備えており、この統括制御装置は、直刃剪断機、フィーダー機、側方油圧ラム及び下向き油圧ラムの各駆動系を予め定められた動作順序で作動制御する。
【0018】
本発明の好適な一実施形態によれば、統括制御装置はシーケンスコントローラを含み、該シーケンスコントローラは、以下の各工程、即ち、
a)下向き油圧ラムを駆動して前記限定された長さ部分のみについて金属スクラップの高さ寸法を剪断口の内法高さ未満に減少させる下向き圧縮工程、
b)一対の側方油圧ラムを駆動して前記限定された長さ部分のみについて金属スクラップの幅寸法を剪断口の内法幅未満に減少させる側方圧縮工程、
c)フィーダー機を駆動して供給チャンネル内の金属スクラップを直刃剪断機へ向けて送り込む供給工程、及び
e)直刃剪断機を駆動して、その剪断口に送り込まれた金属スクラップの先端部から短尺スクラップ片を切り出す剪断工程、
を順に繰り返す制御シーケンスを有している。
【0019】
例えば、供給チャンネル内への金属スクラップの搬入が完了すると、それを確認した作業員のスタート指令によって統括制御装置によるスクラップ剪断機の作動制御が開始される。この場合、作業員が目視で金属スクラップの搬入完了を確認したうえでスタートスイッチを操作してもよいし、供給チャンネル内に予め規定された重量の金属スクラップが搬入された際に自動スタートされるように構成してもよい。
【0020】
スタート指令を受け取った統括制御装置は、先ずはじめにフィーダー機を駆動して供給チャンネル内の金属スクラップの先端部が直刃剪断機側の剪断口に達するまで金属スクラップを移動させる。本発明の好適な一実施形態によれば、フィーダー機の駆動トルク又は油圧回路中の圧力がセンサーで計測・監視され、計測値が予め定められた閾値を超えたときには金属スクラップの先端部が剪断口に到達したものと判断して、その信号が統括制御装置に与えられ、次の下向き圧縮工程が開始される。
【0021】
下向き圧縮工程では、下向き油圧ラムによって金属スクラップの先端部近傍領域のみが剪断口の内法高さ未満の寸法に下向きに圧縮される。この場合、下向き油圧ラムの作動にはその下降領域内にフィーダー機及び側方油圧ラムが存在しないことを保証するためのインターロックが掛けられており、それによってこれら相互間の機械的干渉が回避される。下向き油圧ラムの下降ストローク端は側方油圧ラムの上面高さレベルに対応し、この下降ストローク端は、先に述べた理由により、剪断口の上縁レベルよりも下方に位置する。下向き油圧ラムがその下降ストローク端に到達すると下向き油圧ラムがその位置にラッチされ、このラッチの完了が例えばリミットスイッチで検知される。リミットスイッチの検知信号は統括制御装置に与えられ、それにより制御シーケンスが次の側方圧縮工程に切り換えられる。
【0022】
側方圧縮工程では、既に下向き油圧ラムで下向きに圧縮された状態に保持されている金属スクラップの先端部近傍領域のみが剪断口の内法幅未満の寸法に側方から圧縮される。この場合も、側方油圧ラムの作動にはその移動領域内にフィーダー機が存在しないことを保証するためのインターロックが掛けられており、それによってこれら相互間の機械的干渉が回避される。本発明の好適な一実施形態によれば、下降ストローク端にラッチされている下向き油圧ラムの底面と、側方から進入してくる側方油圧ラムの上面とに、相互に摺動可能に嵌合するリニアガイドが設けられており、それによって側方圧縮工程中に側方油圧ラムの押圧移動方向にずれが生じることはない。側方圧縮工程における側方油圧ラムの伸張ストローク端は、側方油圧ラムによる圧縮が解放されたときに圧縮金属スクラップのスプリングバックによる膨張が生じてもなお圧縮部分の幅寸法が剪断口の内法幅以下に留まるように、剪断口の内法幅よりも内側の位置に設定される。側方油圧ラムがその伸張ストローク端に到達すると別のリミットスイッチから検知信号が統括制御装置に与えられ、それにより一対の側方油圧ラム及び下向き油圧ラムが順にそれぞれの初期位置へ復帰され、それに続いて制御シーケンスが次の供給工程に切り換えられると共に剪断工程が開始される。
【0023】
供給工程ではフィーダー機が駆動され、供給チャンネル内の金属スクラップがその先端部から直刃剪断機の剪断口へ送り込まれる。この供給工程中も、前述の通りフィーダー機の駆動トルク又は油圧回路中の圧力がセンサーで計測・監視されている。フィーダー機の先端部が下向き油圧ラム及び側方油圧ラムのストローク移動領域内に達していない場合、このセンサーの検知信号が予め定められた閾値を超えたときには金属スクラップの未圧縮部が剪断口に到達したものと判断され、その信号を受け取った統括制御装置によってフィーダー機の駆動が停止され、制御シーケンスが下向き圧縮工程から再開される。フィーダー機の先端部が下向き油圧ラム及び側方油圧ラムのストローク移動領域内に進入すると前述のインターロックによる信号が統括制御装置に与えられ、それにより下向き油圧ラム又は側方油圧ラムの作動開始前にフィーダー機が後退されて前記移動ストローク領域外に退避される。フィーダー機が退避された後に制御シーケンスは下向き圧縮工程に切り換えられ、次いで最後の側方圧縮工程に切り換えられる。この最後の側方圧縮工程が終了すると各油圧ラムが初期位置へ復帰され、その後、最終の供給工程と剪断工程が実行される。この繰り返し制御はフィーダー機の先端部が剪断口に達した時点で完了し、全ての可動部分が初期位置に復帰して次の金属スクラップの搬入に備えることになる。
【0024】
尚、剪断工程中にフィーダー機による金属スクラップの移動量を計測し、計測された移動量が前記限定された長さ部分の長さ寸法に達したときに制御シーケンスを下向き圧縮工程から再開させるようにしてもよく、これにより前記リミットスイッチ群の機能をソフトウエアで代行させることができる。
【0025】
剪断工程では、フィーダー機によって剪断口に送り込まれてくる金属スクラップの圧縮済み先端部近傍領域が直刃剪断機に装備されている油圧スタンパによって順次クランプされながら上下のカッターで短尺スクラップ片に剪断される。一つの短尺スクラップ片が切り出されるたびに信号が統括制御装置に与えられ、それにより油圧スタンパによるクランプの解除とカッターの復帰に続いてフィーダー機による金属スクラップの送り込みが実行され、同様にして次の短尺スクラップ片が切り出される。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、比較的大型で長尺且つ堅牢な金属スクラップ、特に貨車や客車を含む鉄道車両或いはバスや大型トラックを含む陸上車両などの廃棄車両、を複数の短尺スクラップ片に剪断するのに好適なスクラップ剪断機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の上述及びそれ以外の特徴と利点は、添付図面に示す好適な実施形態に関する以下の説明から更に明確となる。
【0028】
図示の通り、スクラップ剪断機10は、ギロチン式の直刃剪断機20と、この剪断機20の剪断口22よりも広い幅を持つ直方体形状の空間を形成する開放型供給チャンネル30と、供給チャンネル30内に搬入された金属スクラップ35を両側方から押し潰して金属スクラップ35の幅寸法を減少させる第1側方油圧ラム63aと第1側方油圧ラム63bとの一対の側方油圧ラムと、供給チャンネル30内で幅寸法が減少された金属スクラップ35を剪断機20の剪断口22内へ送り込むフィーダー機40とを備えている。本発明に従って、スクラップ剪断機10は更に下向き油圧ラム53と統括制御装置70とを備えている。
【0029】
一対の側方油圧ラム63a,63bは剪断口22に近接して位置付けられており、剪断口22は一対の側方油圧ラム63a,63bの中間位置ではなく、第2側方油圧ラム63bに近い方に配置されている。剪断口22を一対の側方油圧ラム63a,63bの中間位置に配してもよい。本実施例では、第2側方油圧ラム63bに近い方に配置されているため、先に第2側方油圧ラム63bを駆動した後でラム63bを機械的にロックし、その後第1側方油圧ラム63aで圧縮することにより、第2側方油圧ラム63bの出力を第2側方油圧ラム63bの出力より、小さくすることが可能となる利点がある。
【0030】
また、剪断口22を一対の側方油圧ラム63a,63bの中間位置に配した場合には。両方の油圧ラムを同時に圧縮方向へ駆動することで、金属スクラップの圧縮されていない後方部が幅方向に振れにくくなくなる利点がある。供給チャンネル30の長手方向の全長よりも短い或る限定された長さ部分のみについて金属スクラップ35の幅寸法を剪断口22の内法幅未満に減少させるように適合されている。
【0031】
一対の側方油圧ラム63a,63bは下向き油圧ラム53と関連づけられており、この下向き油圧ラム53は剪断口22に近接して位置付けられていると共に、供給チャンネル30内に搬入された金属スクラップ35を一対の側方油圧ラム63a,63bの作動に先立って下向きに押し潰して前記限定された長さ部分のみについて金属スクラップ35の高さ寸法を剪断口22の内法高さ未満に減少させるように適合されている。
【0032】
これらの直刃剪断機20、フィーダー機40、一対の側方油圧ラム63a,63b及び下向き油圧ラム53の各駆動系は、これらを予め定められた動作順序で作動制御する統括制御装置70と関連づけられている。
【0033】
このスクラップ剪断機は、比較的大型で長尺且つ堅牢な金属スクラップ、特に貨車や客車を含む鉄道車両或いはバスや大型トラックを含む陸上車両などの廃棄車両、を複数の短尺スクラップ片に剪断するのに好適である。これらの金属スクラップは、供給チャンネル30内へ搬入される前に、非金属部分が除去されていることが好ましい。例えば、廃棄自動車では、布・シートカバー・ウレタンフォーム類からなるシートや内装材、タイヤ、ガラス類、プラスチック製のバンパーやダッシュボードなどが除去される。これら非金属類は、車体から剥ぎ取る等して分離される。また、金属であっても、下向き油圧ラム及び側方油圧ラムの駆動源に過大な負荷荷重が作用しないように、バネ鋼で構成された部品は予め除去されていることが好ましい。
【0034】
直刃剪断機20は門形の機体フレーム21内に形成された通路を有し、この通路の入口は供給チャンネル30の一端面に開口する剪断口22を形成し、その反対側の出口は剪断後の短尺スクラップ片を受け入れるためのピット28に開口している。この通路の途中には、剪断時にカッターの手前で金属スクラップを下向きに押さえつけてクランプするために油圧シリンダ23で駆動される油圧スタンパ24と、この油圧スタンパ24に隣接して出口側に固定配置された下部カッター刃25と、この下部カッター刃25と協働して金属スクラップを短尺スクラップ片36に剪断する上部カッター刃26と、この上部カッター刃26を駆動するための主油圧シリンダ27とを備えている。
【0035】
直刃剪断機20で剪断された短尺スクラップ片36は、直刃剪断機20の出口に隣接して設けられているピット28内に落下して一時貯留される。ピット28の底面は直刃剪断機20の下部カッター刃よりも低い位置にあり、しかも剪断機から離れるに従って徐々に深くなるように傾斜しているため、剪断された短尺スクラップ片36はピット28内で剪断機20の直近部から遠方へ自ら移動し、裁断機の出口近傍に滞留することはない。
【0036】
供給チャンネル30は、下向き油圧ラム53が配置されている領域以外は完全に上方へ開放されており、下向き油圧ラムが上昇位置(初期位置)にあるときはその下方空間も開放されている。図示の実施形態において、フィーダー機40は油圧プッシャーで構成されており、そのプッシャーラム41は供給チャンネル30の尾端壁面の一部又は全部を形成する。図1には、プッシャーラム41を供給チャンネルの長手方向に往復起動させるための油圧シリンダのピストンロッドが符号42で示されている。
【0037】
下向き油圧ラム53は油圧シリンダ52によって駆動され、これらが下向き油圧プレス機50を構成している。下向き油圧ラム53と油圧シリンダ52は、供給チャンネル30の両側壁を跨ぐように配置された門形フレーム51に支持されている。下向き油圧ラム53は、供給チャンネル30の内幅と同じ幅寸法を有する。一対の側方油圧ラム63a,63bは、供給チャンネル30の剪断口寄りの或る限定された領域に亘って内側壁面を形成し、その側方からの押圧駆動のために各々側方油圧シリンダ62a,62bによって駆動される。即ち、第1側方プレス機60aは、第1側方油圧ラム63aと第1油圧シリンダ62aとにより構成され、第2側方プレス機60bは、第2側方油圧ラム63bと第2油圧シリンダ62bとにより構成される。
【0038】
下向き油圧ラム53の底面と一対の側方油圧ラム63a,63bの各々の上面とには、側方油圧ラムのストローク移動のためのリニアガイドとして、相互に摺動可能に嵌合する溝54と突条64が設けられている。
【0039】
統括制御装置70はシーケンスコントローラを含んでおり、予め定められた制御シーケンスに従って、直刃剪断機20の油圧シリンダ23及び主油圧シリンダ27と、フィーダー機40の駆動源と、下向き油圧ラム53のための油圧シリンダ52と、側方プレス機60の油圧シリンダ62とを含む一切の動作を統括的に制御する。
【0040】
シーケンスコントローラによる制御シーケンスは、以下の各工程、即ち
a)下向き油圧ラム53を駆動して前記限定された長さ部分のみについて金属スクラップの高さ寸法を剪断口22の内法高さ未満に減少させる下向き圧縮工程、
b)一対の側方油圧ラム63a,63bを駆動して前記限定された長さ部分のみについて金属スクラップの幅寸法を剪断口22の内法幅未満に減少させる側方圧縮工程、
c)フィーダー機40を駆動して供給チャンネル30内の金属スクラップを直刃剪断機20へ向けて送り込む供給工程、及び
e)直刃剪断機20を駆動して、その剪断口22に送り込まれた金属スクラップの先端部から短尺スクラップ片36を切り出す剪断工程、
を含んでいる。
【0041】
図5〜図7に制御シーケンスによる種々の動作段階におけるスクラップ剪断機の状態を示す。図5のa図では、供給チャンネル30内に破線で示したように長尺の金属スクラップ35が搬入されており、これが作業員によって確認されると、統括制御装置70にスタート指令が送られる。
【0042】
図5のb図では、搬入された金属スクラップ35が統括制御装置70によるフィーダー機40の初期操舵によって直刃剪断機20へ向けて移動され、その先端部が直刃剪断機20の剪断口22に当接したときのフィーダー機40の駆動トルク(負荷トルク)の変化がセンサーにより検出され、この検出結果に基づいて統括制御装置70の制御シーケンスが下向き圧縮工程に切り換えられ、下向き油圧ラム53による下向き圧縮工程が開始される。
【0043】
図6のc図では、下向き油圧ラム53による下向き圧縮工程が終了し、引き続き一対の側方油圧ラム63a,63bによる側方圧縮工程が行われる。側方圧縮工程は一対の側方油圧ラム63a,63bが予め設定されたストローク端に到達した時点で終了し、その信号が統括制御装置70に与えられると、先ず一対の側方油圧ラム63a,63bが、次いで下向き油圧ラム53がそれぞれの初期位置へ復帰移動される。
【0044】
図6のd図では、各油圧ラムの復帰移動が完了し、フィーダー機40による供給工程が開始されている。
【0045】
フィーダー機40による金属素プラップの移動量はプッシャーラム41の移動距離を計測してカウントしておき、カウント値が剪断機20の装置諸元に基づいて予め設定された閾値に達したときに、金属スクラップ35の圧縮された先端部が予め設定された短尺スクラップ片の寸法に相当する長さだけカッター刃25,26の位置を超えたことを知る(図7のe図)。このとき、対応する信号が統括制御装置70に与えられ、それにより剪断機20の油圧スタンパ24が作動されて金属スクラップがカッター刃の直背後でクランプされ、続いて主油圧シリンダ27が駆動されて剪断が実行される(図7のf図)。
【0046】
以降、フィーダー機40による金属スクラップの送り込みと剪断機20による短尺スクラップ片36の切り出しを繰り返し、初回の下向き及び側方各圧縮工程で圧縮された部分の剪断が終了したら再び下向き圧縮工程及び側方圧縮工程から剪断工程を繰り返し、供給チャンネル30内に搬入された金属スクラップ35の全長分についてこれを繰り返す。
【0047】
尚、図5のa図〜図7のf図では、各一回の下向き圧縮工程及び側方圧縮工程について三回程度の剪断工程が実行されるように示されているが、本発明はこれに限定解釈されるべきではない。
【0048】
剪断機から出てくる短尺スクラップ片36は実質的にキューブ形状となっているため、貨物自動車や鉄道貨車で能率的に運搬可能である。従ってこれら短尺スクラップ片をリサイクル処理施設へ搬送すれば、資源物質の効率的な選別と回収が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態によるスクラップ剪断機の構成を示す模式正面図である。
【図2】図1のスクラップ剪断機の模式平面図である。
【図3】図1のスクラップ剪断機の模式左側面図である。
【図4】図1のA−A矢視断面図である。
【図5】図1のスクラップ切断装置のa工程〜b工程を示す説明図である。
【図6】図1のスクラップ切断装置のc工程〜d工程を示す説明図である。
【図7】図1のスクラップ切断装置のe工程〜f工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10 …スクラップ剪断機、
20 …直刃剪断機、
21 …機体フレーム、
22 …剪断口、
23 …クランプ用油圧シリンダ、
24 …油圧スタンパ、
25 …下部カッター刃、
26 …上部カッター刃、
27 …切刃用主油圧シリンダ、
28 …ピット、
30 …開放型供給チャンネル、
35 …金属スクラップ、
36 …短尺スクラップ片、
40 …フィーダー機、
41 …プッシャーラム、
42 …ピストンロッド、
50 …下向き油圧プレス機、
51 …門形フレーム、
52 …下向き油圧シリンダ、
53 …下向き油圧ラム、
54 …溝、
60a…第1側方プレス機、
60b…第2側方プレス機、
62a…第1側方油圧シリンダ、
62b…第2側方油圧シリンダ、
63a…側方油圧ラム、
63b…側方油圧ラム、
64 …突条、
70 …統括制御装置、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の金属スクラップを複数の短尺スクラップ片に剪断するためのスクラップ剪断機であって、ギロチン式の直刃剪断機(20)と、剪断機(20)の剪断口(22)よりも広い幅を持つ直方体形状の空間を形成する開放型供給チャンネル(30)と、供給チャンネル(30)内に搬入された金属スクラップ(35)を側方から押し潰して該金属スクラップの幅寸法を減少させる側方油圧ラム(63)と、供給チャンネル(30)内で幅寸法が減少された金属スクラップ(35)を剪断機(20)の剪断口(22)内へ送り込むフィーダー機(40)とを備えたものにおいて、
側方油圧ラム(63)が剪断口(22)に近接して位置付けられていると共に、供給チャンネル(30)の長手方向の全長よりも短い或る限定された長さ部分のみについて前記金属スクラップの幅寸法を剪断口(22)の内法幅未満に減少させるように適合され、
側方油圧ラム(63)が供給チャンネル(30)内に搬入された金属スクラップ(35)を両側方から押し潰して該金属スクラップの幅寸法を減少させる一対の側方油圧ラム(63a,b)であり、
側方油圧ラム(63)が下向き油圧ラム(53)と関連づけられ、該下向き油圧ラム(53)は剪断口(22)に近接して位置付けられていると共に、供給チャンネル(30)内に搬入された金属スクラップ(35)を一対の側方油圧ラム(63a,b)の作動に先立って下向きに押し潰して前記限定された長さ部分のみについて金属スクラップ(35)の高さ寸法を剪断口(22)の内法高さ未満に減少させるように適合され、
直刃剪断機(20)、フィーダー機(40)、側方油圧ラム(63)及び下向き油圧ラム(53)の各駆動系が、これらを予め定められた動作順序で作動制御する統括制御装置(70)と関連づけられていることを特徴とするスクラップ剪断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−64174(P2010−64174A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231786(P2008−231786)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(508127915)株式会社とわに (11)
【Fターム(参考)】