説明

スクリュー圧縮機

【課題】比較的簡単な構成で、吐出通路を流通する冷媒の圧力損失を低減できるようにする。
【解決手段】圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が所定量よりも少ない場合には、開閉弁(76)を閉じることで、冷媒の全量を吐出通路(70)に流通させる。一方、冷媒の流量が所定量よりも多い場合には、吐出通路(70)と高圧空間(S2)との圧力差によって開閉弁(76)を開き、冷媒の一部をバイパス通路(71)を介して高圧空間(S2)にバイパスさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷媒や空気を圧縮する圧縮機として、スクリュー圧縮機が用いられている。例えば、特許文献1には、複数条の螺旋溝が形成されたスクリューロータと、複数のゲートが設けられたゲートロータとを備えたスクリュー圧縮機が記載されている。スクリューロータは、ケーシング内に形成されたシリンダ部に挿入されている。
【0003】
前記スクリュー圧縮機では、スクリューロータの回転に伴ってゲートロータが回転する。そして、ゲートロータのゲートが、噛み合った螺旋溝の始端(吸入側の端部)から終端(吐出側の端部)へ向かって相対的に移動し、閉じきり状態となった圧縮室の容積が次第に縮小する。その結果、圧縮室内の流体が圧縮される。
【0004】
そして、圧縮室内で圧縮された高温のガス冷媒は、シリンダ部の外周部を囲むように形成された高圧室(以下、吐出通路という)内を流通し、吐出口から吐出される。このとき、高温のガス冷媒によってシリンダ部が暖められるので、スクリューロータとシリンダ部との温度差が小さくなる。これにより、スクリューロータとシリンダ部との温度差に起因する熱膨張の違いによってスクリューロータとシリンダ部とが接触することがなく、スクリューロータの焼き付きを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3170882号公報
【特許文献2】特許第3731399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスクリュー圧縮機では、スクリューロータを高速運転させて冷媒の流量を増加させた場合に、吐出通路を流通する冷媒の圧力損失が増加して性能が低下してしまうという問題がある。
【0007】
ここで、高速運転時に冷媒の流量が増加しても圧力損失を低減できるようにするために、吐出通路の通路面積を大きくすることが考えられるが、この場合には、低速運転時に吐出通路を流通する冷媒の流速が低下してしまうこととなる。そのため、熱伝達率が低下して熱交換を十分に行うことができず、シリンダ部の温度を均一に保つことが難しくなるという問題がある。また、吐出通路の通路面積を大きくしようとするとケーシングが大型化してしまうという問題もある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で、吐出通路を流通する冷媒の圧力損失を低減できるスクリュー圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧縮室(23)を形成する複数の螺旋溝(41)が形成されたスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)が挿入されるシリンダ部(16)を有するケーシング(11)と、該シリンダ部(16)の外周部を囲むように形成されて該圧縮室(23)から吐出した冷媒が流入する吐出通路(70)と、該ケーシング(11)内に形成されて該吐出通路(70)を通過した冷媒が流入する高圧空間(S2)とを備えたスクリュー圧縮機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、前記圧縮室(23)から吐出した冷媒の一部を前記高圧空間(S2)にバイパスさせるバイパス通路(71)と、
前記バイパス通路(71)を開いて冷媒の流通を許可する一方、該バイパス通路(71)を閉じて冷媒の流通を遮断する開閉機構(75)とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、スクリューロータ(40)が挿入されるシリンダ部(16)の外周部は、吐出通路(70)で囲まれている。この吐出通路(70)には、圧縮室(23)から吐出した冷媒が流入する。吐出通路(70)を通過した冷媒は、高圧空間(S2)に流入する。ケーシング(11)内には、バイパス通路(71)が形成される。バイパス通路(71)は、開閉機構(75)によって開かれて、圧縮室(23)から吐出した冷媒の一部が吐出通路(70)を通ることなくバイパス通路(71)を介して高圧空間(S2)にバイパスされる。また、開閉機構(75)が閉じられることで流通が遮断される。
【0012】
このような構成とすれば、吐出通路(70)を流通する冷媒の圧力損失を低減することができる。具体的に、冷媒の流量が多い場合には、開閉機構(75)を開いて冷媒の一部をバイパス通路(71)を介して高圧空間(S2)にバイパスさせることで、吐出通路(70)を流通する冷媒の圧力損失を低減させることができる。また、冷媒の流量が少ない場合には、開閉機構(75)を閉じておくことで、吐出通路(70)を流通する冷媒の流量が不足するのを防止できる。このように、高速運転から低速運転へと運転条件を変化させたとしても、開閉機構(75)の開閉動作を切り換えるだけで、冷媒の圧力損失を低減しつつシリンダ部(16)の温度を均一に保つことができる。また、吐出通路(70)の通路面積を大きくするためにケーシング(11)を大型化する必要がなく、装置のコンパクト化を図る上で有利となる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、
前記開閉機構(75)は、前記圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が所定量よりも多い場合に前記バイパス通路(71)を開く一方、所定量よりも少ない場合に該バイパス通路(71)を閉じるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
第2の発明では、圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が所定量よりも多い場合には、開閉機構(75)によりバイパス通路(71)が開かれる。一方、冷媒の流量が所定量よりも少ない場合には、開閉機構(75)によりバイパス通路(71)が閉じられる。
【0015】
このような構成とすれば、圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が所定量よりも多い場合に、その冷媒の一部をバイパス通路(71)を介して高圧空間(S2)にバイパスさせるようにしたから、吐出通路(70)を流通する冷媒の圧力損失を低減することができる。また、冷媒の流量が所定量よりも少ない場合には、バイパス通路(71)を閉じるようにしているので、吐出通路(70)を流通する冷媒の流量が不足することがない。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記吐出通路(70)と前記高圧空間(S2)とを区画するとともに前記バイパス通路(71)が形成された区画部材(29)を備え、
前記開閉機構(75)は、前記区画部材(29)に設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
第3の発明では、吐出通路(70)と高圧空間(S2)とは、区画部材(29)により区画されている。この区画部材(29)には、バイパス通路(71)が形成されるとともに、開閉機構(75)が設けられる。
【0018】
このような構成とすれば、区画部材(29)にバイパス通路(71)を形成するとともに開閉機構(75)を設けるだけという比較的簡単な構成で、冷媒の流通量を制御することができる。
【0019】
第4の発明は、第3の発明において、
前記開閉機構(75)は、前記区画部材(29)で区画された前記吐出通路(70)と前記高圧空間(S2)との圧力差によって開閉する開閉弁(76)で構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
第4の発明では、開閉機構(75)は、開閉弁(76)で構成される。開閉弁(76)は、区画部材(29)で区画された吐出通路(70)と高圧空間(S2)との圧力差によって開閉される。
【0021】
このような構成とすれば、吐出通路(70)と高圧空間(S2)との圧力差を利用して開閉弁(76)を開閉させることで、比較的簡単な構成で吐出通路(70)を流通する冷媒の流通量を制御して、冷媒の圧力損失を低減することができる。
【0022】
第5の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記スクリューロータ(40)の駆動軸(21)と平行な方向へ移動することによって、圧縮行程の終了時点を変更して、前記圧縮室(23)の圧縮比を調整するスライドバルブ(88)を備え、
前記開閉機構(75)は、吐出冷媒の流量が増加する前記スライドバルブ(88)の吐出側への移動に連動して前記バイパス通路(71)を開く一方、吐出冷媒の流量が減少する該スライドバルブ(88)の吸入側への移動に連動して該バイパス通路(71)を閉じるように構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
第5の発明では、圧縮室(23)の圧縮比を調整するスライドバルブ(88)を備える。このスライドバルブ(88)が、スクリューロータ(40)の駆動軸(21)と平行な方向へ移動することによって、圧縮行程の終了時点が変更される。そして、開閉機構(75)は、スライドバルブ(88)の移動に連動して開閉される。具体的に、吐出冷媒の流量が増加するスライドバルブ(88)の吐出側への移動に連動してバイパス通路(71)が開かれる一方、吐出冷媒の流量が減少するスライドバルブ(88)の吸入側への移動に連動してバイパス通路(71)が閉じられる。
【0024】
このような構成とすれば、スライドバルブ(88)の移動に連動して開閉機構(75)を開閉させることができ、比較的簡単な構成で吐出通路(70)を流通する冷媒の流通量を制御して、冷媒の圧力損失を低減することができる。
【0025】
第6の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記スクリューロータ(40)の駆動軸(21)と平行な方向へ移動することによって、圧縮行程の開始時点を変更して、前記圧縮室(23)の運転容量を調整するスライドバルブ(88)を備え、
前記開閉機構(75)は、吐出冷媒の流量が増加する前記スライドバルブ(88)の吸入側への移動に連動して前記バイパス通路(71)を開く一方、吐出冷媒の流量が減少する該スライドバルブ(88)の吐出側への移動に連動して該バイパス通路(71)を閉じるように構成されていることを特徴とするものである。
【0026】
第6の発明では、圧縮室(23)の運転容量を調整するスライドバルブ(88)を備える。このスライドバルブ(88)がスクリューロータ(40)の駆動軸(21)と平行な方向へ移動することによって、圧縮行程の開始時点が変更される。そして、開閉機構(75)は、スライドバルブ(88)の移動に連動して開閉される。具体的に、吐出冷媒の流量が増加するスライドバルブ(88)の吸入側への移動に連動してバイパス通路(71)が開かれる一方、吐出冷媒の流量が減少するスライドバルブ(88)の吐出側への移動に連動してバイパス通路(71)が閉じられる。
【0027】
このような構成とすれば、スライドバルブ(88)の移動に連動して開閉機構(75)を開閉させることができ、比較的簡単な構成で吐出通路(70)を流通する冷媒の流通量を制御して、冷媒の圧力損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が所定量よりも多い場合に、その冷媒の一部をバイパス通路(71)を介して高圧空間(S2)にバイパスさせることで、吐出通路(70)を流通する冷媒の圧力損失を低減することができる。また、冷媒の流量が所定量よりも少ない場合には、バイパス通路(71)を閉じておくことで、吐出通路(70)を流通する冷媒の流量が不足するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態1に係るスクリュー圧縮機を備えた空調装置の冷媒回路図である。
【図2】スクリュー圧縮機の構成を示す縦断面図である。
【図3】スクリュー圧縮機の構成を示す横断面図である。
【図4】スクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す斜視図である。
【図5】スクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す、別の角度から見た斜視図である。
【図6】スクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【図7】冷媒の流れを説明するための模式図である。
【図8】スクリュー圧縮機の圧縮機構の動作を示す平面図であって、(a)は吸込行程を示し、(b)は圧縮行程を示し、(c)は吐出行程を示す。
【図9】本実施形態2に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【図10】バイパス通路を開放させた状態を示す図9相当図である。
【図11】本実施形態3に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【図12】バイパス通路を開放させた状態を示す図11相当図である。
【図13】本実施形態4に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。
【図14】バイパス通路を開放させた状態を示す図13相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るスクリュー圧縮機を備えた空調装置の冷媒回路図である。図1に示すように、冷媒回路(1)は、スクリュー圧縮機(10)、四方切換弁(2)、熱源側熱交換器(3)、利用側熱交換器(4)、熱源側膨張弁(5)、及び利用側膨張弁(6)が設けられた閉回路で構成されている。この冷媒回路(1)には、冷媒が充填されている。冷媒回路(1)では、充填された冷媒を循環させることにより蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
【0032】
前記冷媒回路(1)において、スクリュー圧縮機(10)は、その吐出側が四方切換弁(2)の第1ポートに、その吸入側が四方切換弁(2)の第2ポートにそれぞれ接続されている。熱源側熱交換器(3)の一端は、四方切換弁(2)の第3ポートに接続されている。熱源側熱交換器(3)の他端は、利用側膨張弁(6)を介して利用側熱交換器(4)の一端に接続されている。利用側熱交換器(4)の他端は、四方切換弁(2)の第4ポートに接続されている。
【0033】
前記四方切換弁(2)は、第1ポートと第3ポートが連通して第2ポートと第4ポートが連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1ポートと第4ポートが連通して第2ポートと第3ポートが連通する第2状態(図1に点線で示す状態)とに切り換え可能となっている。
【0034】
図2は、スクリュー圧縮機の構成を示す縦断面図、図3は、横断面図である。図2及び図3に示すように、このスクリュー圧縮機(10)は、密閉型に構成されている。このスクリュー圧縮機(10)では、圧縮機構(20)と、圧縮機構(20)を駆動する電動機(12)とが金属製のケーシング(11)に収容されている。圧縮機構(20)は、駆動軸(21)を介して電動機(12)と連結されている。
【0035】
また、前記ケーシング(11)内には、冷媒回路(1)の熱源側熱交換器(3)又は利用側熱交換器(4)から低圧のガス冷媒が流入されるとともに低圧ガスを圧縮機構(20)へ案内する低圧空間(S1)と、圧縮機構(20)から吐出された高圧のガス冷媒が流入する吐出通路(70)と、吐出通路(70)を通過したガス冷媒が流入する高圧空間(S2)とが形成されている。吐出通路(70)と高圧空間(S2)とは、区画部材(29)によって区画されている。
【0036】
前記ケーシング(11)の低圧空間(S1)側には、吸入ポート(11a)が開口している。この吸入ポート(11a)には、吸入側フィルタ(19)が取り付けられており、冷媒回路(1)の熱源側熱交換器(3)又は利用側熱交換器(4)から吸入されたガス冷媒に含まれる比較的大きな異物を捕集する。
【0037】
前記電動機(12)は、ステータ(13)と、ロータ(14)とを備えている。ステータ(13)は、低圧空間(S1)においてケーシング(11)の内周面に固定されている。ロータ(14)には駆動軸(21)の一端部が連結されていて、駆動軸(21)がロータ(14)とともに回転軸(X)回りに回転するように構成されている。
【0038】
前記圧縮機構(20)は、ケーシング(11)内に形成されたシリンダ部(16)と、シリンダ部(16)の中に配置された1つのスクリューロータ(40)と、スクリューロータ(40)に噛み合う2つのゲートロータ(50)とを備えている。
【0039】
前記スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)の外径は、シリンダ部(16)の内径よりも若干小さく設定されており、スクリューロータ(40)の外周面がシリンダ部(16)の内周面と摺接するように構成されている。スクリューロータ(40)の外周部には、スクリューロータ(40)の軸方向一端から他端へ向かって螺旋状に延びる螺旋溝(41)が複数(本実施形態では、6本)形成されている。
【0040】
図4は、スクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す斜視図、図5は、別の角度から見た斜視図である。図4及び図5に示すように、スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、円柱状のスクリューロータ(40)の軸心周りに対称な形状をしている(すなわち、スクリューロータ(40)の横断面において、螺旋溝(41)のそれぞれは、スクリューロータ(40)の中心に対して点対称な形状をしている)。そして、複数の螺旋溝(41)が所定の軸周りに対称となるときのその軸を螺旋溝(41)の軸心という。スクリューロータ(40)に対して螺旋溝(41)が精度良く形成されているときには、螺旋溝(41)の軸心はスクリューロータ(40)の軸心と一致する。
【0041】
ここで、前記スクリューロータ(40)の軸方向一端側の周縁部にはテーパ面(45)が形成されていて、螺旋溝(41)の一端部はテーパ面(45)に開口している。各螺旋溝(41)は、テーパ面(45)に開口する一端部(図2における左端部)が始端部となり、他端部(図2における右端部)が終端部となっている。一方、螺旋溝(41)の終端部は、スクリューロータ(40)の軸方向他端側においてその側周面に開口している。螺旋溝(41)では、両側の側壁面(42,43)のうち、ゲート(51)の進行方向の前側に位置するものが第1側壁面(42)となり、ゲート(51)の進行方向の後側に位置するものが第2側壁面(43)となっている。
【0042】
また、前記スクリューロータ(40)の他端部には、螺旋溝(41)が形成されている本体部(40a)よりも外径が小さな小径部(46)が形成されている。
【0043】
さらに、前記スクリューロータ(40)には、図1に示すように、駆動軸(21)を挿通させるための挿通孔(47)がスクリューロータ(40)の軸心を通って貫通形成されている。
【0044】
図2に示すように、前記スクリューロータ(40)には、駆動軸(21)が挿通されている。駆動軸(21)の一端部には、電動機(12)のロータ(14)が連結されており、駆動軸(21)の他端部がスクリューロータ(40)の挿通孔(47)に挿通される。スクリューロータ(40)と駆動軸(21)は、キー(22)によって連結されている。駆動軸(21)は、スクリューロータ(40)と同軸上に配置されている。
【0045】
このように、前記スクリューロータ(40)と電動機(12)のロータ(14)とが駆動軸(21)に連結された状態でケーシング(11)内に収容される。このとき、スクリューロータ(40)は、シリンダ部(16)に回転可能に嵌合しており、その外周面がシリンダ部(16)の内周面と摺接する。
【0046】
ここで、前記駆動軸(21)の一端部にはロータ(14)から突出する第1被支持部(21a)が形成されており、この第1被支持部(21a)がコロ軸受(66)に回転自在に支持されている。コロ軸受(66)は、コロ軸受ホルダ(65)に設置されている。
【0047】
一方、前記駆動軸(21)の他端部にはスクリューロータ(40)から突出する第2被支持部(21b)が形成されており、この第2被支持部(21b)が圧縮機構(20)の高圧側に位置する軸受部としての玉軸受(61)に回転自在に支持されている。
【0048】
図6は、スクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。図6に示すように、玉軸受(61)は、ケーシング(11)のシリンダ部(16)に嵌合された軸受ホルダ(60)に設置されている。軸受ホルダ(60)の、スクリューロータ(40)側の端面の周縁部には、スクリューロータ(40)側に突出した環状壁部(62)が設けられている。
【0049】
前記環状壁部(62)は、スクリューロータ(40)がシリンダ部(16)内に配置されたときに、スクリューロータ(40)の小径部(46)が環状壁部(62)の内周側に入り込むように構成されている。このとき、小径部(46)と環状壁部(62)との継ぎ目には若干の隙間が形成されており、スクリューロータ(40)の小径部(46)と軸受ホルダ(60)の環状壁部(62)とは径方向にも軸方向にも接触していない。
【0050】
図4及び図5に示すように、前記ゲートロータ(50)は、長方形板状に形成された複数(本実施形態では、11枚)のゲート(51)が放射状に設けられた樹脂製の部材である。各ゲートロータ(50)は、シリンダ部(16)の外側にスクリューロータ(40)を挟んで対称に配置され、軸心がスクリューロータ(40)の軸心と直交している。各ゲートロータ(50)は、ゲート(51)がシリンダ部(16)の一部を貫通してスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合うように配置されている。
【0051】
前記ゲートロータ(50)は、金属製のロータ支持部材(55)に取り付けられている。ロータ支持部材(55)は、基部(56)とアーム部(57)と軸部(58)とを備えている。基部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。アーム部(57)は、ゲートロータ(50)のゲート(51)と同数だけ設けられており、基部(56)の外周面から外側へ向かって放射状に延びている。軸部(58)は、棒状に形成されて基部(56)に立設されている。軸部(58)の中心軸は、基部(56)の中心軸と一致している。ゲートロータ(50)は、基部(56)及びアーム部(57)における軸部(58)とは反対側の面に取り付けられている。各アーム部(57)は、ゲート(51)の背面に当接している。
【0052】
図3に示すように、前記ゲートロータ(50)が取り付けられたロータ支持部材(55)は、シリンダ部(16)に隣接してケーシング(11)内に区画形成されたゲートロータ室(18)に収容されている。図3におけるスクリューロータ(40)の右側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が下端側となる姿勢で設置されている。一方、図3におけるスクリューロータ(40)の左側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が上端側となる姿勢で設置されている。各ロータ支持部材(55)の軸部(58)は、ゲートロータ室(18)内の軸受ハウジング(52)に玉軸受(53)を介して回転自在に支持されている。なお、各ゲートロータ室(18)は、低圧空間(S1)に連通している。
【0053】
前記圧縮機構(20)では、シリンダ部(16)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、ゲートロータ(50)のゲート(51)とによって囲まれた空間が圧縮室(23)になる(図2参照)。スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)は、吸入側端部において低圧空間(S1)に開放しており、この開放部分が圧縮機構(20)の吸入口(24)になっている。
【0054】
前記スクリュー圧縮機(10)には、スライドバルブ(88)が設けられている。このスライドバルブ(88)は、シリンダ部(16)がその周方向の2カ所において径方向外側に膨出したスライドバルブ収納部(17)内に設けられている。スライドバルブ(88)は、内面がシリンダ部(16)の内周面の一部を構成するとともに、シリンダ部(16)の軸心方向にスライド可能に構成されている。
【0055】
図2に示すように、前記スクリュー圧縮機(10)には、スライドバルブ(88)をシリンダ部(16)の軸心方向にスライド駆動させるためのスライドバルブ駆動機構(80)が設けられている。このスライドバルブ駆動機構(80)は、区画部材(29)の右側壁面に形成されたシリンダ(81)と、シリンダ(81)内に装填されたピストン(82)と、ピストン(82)のピストンロッド(83)に連結されたアーム(84)と、アーム(84)とスライドバルブ(88)とを連結する連結ロッド(85)と、一端がピストンロッド(83)に連結された駆動バー(86)と、駆動バー(86)の他端に連結された駆動機構(87)とを備えている。
【0056】
前記駆動機構(87)は、ピストンロッド(83)の軸方向と直交する方向に延びるシャフト(87a)周りに回動するように構成されている。具体的に、シャフト(87a)には図示しないベーンモータが連結しており、このベーンモータの回転角度を変化させることで、スライドバルブ(88)の位置を調整するように構成されている。
【0057】
前記吐出通路(70)は、シリンダ部(16)の外周部を囲むように形成されている。図7に示すように、圧縮室(23)の吐出口(28)から吐出された冷媒は、吐出通路(70)内をスクリューロータ(40)の軸方向と平行に吸入側に向かって流れた後、吸入側の端部で折り返して再び吐出側に向かい、高圧空間(S2)に流入する。
【0058】
図3に示す例では、シリンダ部(16)の外周部の上側に位置する2つの吐出通路(70)のうち、左側の吐出通路(70)が吐出側から吸入側に向かう流路であり、右側の吐出通路(70)が吸入側から高圧空間(S2)に向かう流路である。この左右両側の吐出通路(70)は、吸入側の端部で互いに連通している。また、シリンダ部(16)の外周部の下側に位置する2つの吐出通路(70)では、右側の吐出通路(70)が吐出側から吸入側に向かう流路であり、左側の吐出通路(70)が吸入側から高圧空間(S2)に向かう流路である。
【0059】
このような構成とすれば、圧縮室(23)内で圧縮された高温の吐出冷媒によってシリンダ部(16)を暖めることができ、スクリューロータ(40)とシリンダ部(16)との温度差を小さくすることができる。これにより、スクリューロータ(40)とシリンダ部(16)との温度差に起因する熱膨張の違いによってスクリューロータ(40)とシリンダ部(16)とが接触することがなく、スクリューロータ(40)の焼き付きを防止することができる。
【0060】
図2に示すように、前記ケーシング(11)の高圧空間(S2)は、中空の円筒状に形成された高圧側ケース(27)で構成されている。この高圧側ケース(27)の底部には、油溜まり(28)が設けられている。この油溜まり(28)に貯留された油は、スクリューロータ(40)等の駆動部品の潤滑に用いられる。
【0061】
そして、前記吐出通路(70)と高圧空間(S2)とを区画する区画部材(29)内には、油供給路(29a)が形成されている。この油供給路(29a)には、油溜まり(28)に貯留された油に含まれる異物を捕集するオイルフィルタ(25)が取り付けられている。このオイルフィルタ(25)で異物が捕集された後の油は、油供給路(29a)を介してスクリューロータ(40)等の駆動部品に対して供給されるようになっている。
【0062】
図6にも示すように、前記区画部材(29)には、圧縮室(23)から吐出した冷媒の一部を高圧空間(S2)にバイパスさせるバイパス通路(71)が形成されている。区画部材(29)には、バイパス通路(71)を開閉させる開閉機構(75)が設けられている。具体的に、この開閉機構(75)は、可撓性を有する材料で形成された開閉弁(76)で構成されている。開閉弁(76)の一端部は区画部材(29)にネジ止めされ、他端部でバイパス通路(71)を塞いでいる。そして、吐出通路(70)と高圧空間(S2)との圧力差によって開閉弁(76)の他端部が撓むことで、バイパス通路(71)が開閉されるようになっている。
【0063】
すなわち、前記圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が多い場合には、吐出通路(70)と高圧空間(S2)との圧力差が大きくなり、図6に実線で示すように、開閉弁(76)が撓んでバイパス通路(71)が開いた状態となる。一方、吐出された冷媒の流量が少ない場合には、吐出通路(70)と高圧空間(S2)との圧力差が小さいため、図6に仮想線で示すように、バイパス通路(71)が開閉弁(76)によって閉じられた状態となる。
【0064】
このような構成とすれば、圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が多い場合には、開閉弁(76)を開いて冷媒の一部をバイパス通路(71)を介して高圧空間(S2)にバイパスさせることで、吐出通路(70)を流通する冷媒の圧力損失を低減させることができる。また、冷媒の流量が少ない場合には、開閉弁(76)を閉じておくことで、吐出通路(70)を流通する冷媒の流量が不足するのを防止できる。
【0065】
前記高圧側ケース(27)の上部には、吐出ポート(27a)が形成されている。また、高圧側ケース(27)内における油溜まり(28)の上方位置で且つ圧縮室(23)の吐出口と高圧側ケース(27)の吐出ポート(27a)との間には、デミスタ(26)が配置されている。
【0066】
前記デミスタ(26)は、ガス冷媒から油を分離するものである。具体的に、スライドバルブ(88)の吐出口から吐出された冷媒は、デミスタ(26)を通過する際に、冷媒に含まれる油がデミスタ(26)に捕捉される。デミスタ(26)に捕捉された油は、高圧側ケース(27)内の油溜まり(28)に回収される。一方、油が分離された後のガス冷媒は、吐出ポート(27a)を介してケーシング(11)外部に吐出される。
【0067】
前記ケーシング(11)には、台座部(11b)が形成されている。この台座部(11b)は、ケーシング(11)の上部から突出するように形成されており、その上面が概ね水平な平坦面となっている。台座部(11b)には、ターミナル組立品(30)が取り付けられている。
【0068】
前記ターミナル組立品(30)は、ターミナル台(31)と、ターミナル(32)とによって構成されている。ターミナル台(31)は、長方形の厚板状に形成され、その長辺がケーシング(11)の軸方向と概ね平行となる姿勢で、台座部(11b)の上面に取り付けられている。ターミナル台(31)の下面は、台座部(11b)の上面と接している。
【0069】
前記ターミナル(32)は、電動機(12)に給電するためのものであり、端子座(33)と6本の端子棒(34)とを備えている。端子座(33)は、絶縁性の樹脂等からなるブロック状の部材であって、ターミナル台(31)の上面及び下面の中央部に設置されている。各端子棒(34)は、金属製の部材であって、その軸方向が概ね鉛直方向となる姿勢で端子座(33)に取り付けられている。
【0070】
−運転動作−
以下、前記スクリュー圧縮機(10)の運転動作について説明する。図2に示すように、スクリュー圧縮機(10)において電動機(12)を起動すると、駆動軸(21)が回転するのに伴ってスクリューロータ(40)が回転する。このスクリューロータ(40)の回転に伴ってゲートロータ(50)も回転し、圧縮機構(20)が吸入行程、圧縮行程及び吐出行程を繰り返す。ここでは、図8において網掛けを付した圧縮室(23)に着目して説明する。
【0071】
図8(a)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、低圧空間(S1)に連通している。また、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、図8(a)の下側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされている。スクリューロータ(40)が回転すると、このゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って圧縮室(23)の容積が拡大する。その結果、低圧空間(S1)の低圧ガス冷媒が吸入口(24)を通じて圧縮室(23)へ吸い込まれる。
【0072】
前記スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図8(b)の状態となる。図8(b)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、閉じきり状態となっている。つまり、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、図8(b)の上側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされ、このゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮室(23)の容積が次第に縮小する。その結果、圧縮室(23)内のガス冷媒が圧縮される。
【0073】
前記スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図8(c)の状態となる。図8(c)において、網掛けを付した圧縮室(23)は、吐出口(図示省略)を介して吐出通路(70)と連通した状態となっている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮されたガス冷媒が圧縮室(23)から吐出通路(70)へ押し出されてゆく。吐出通路(70)を通過したガス冷媒は、高圧空間(S2)に流入する。
【0074】
以上のように、本実施形態に係るスクリュー圧縮機(10)によれば、圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が多い場合には、吐出通路(70)と高圧空間(S2)との圧力差によって開閉弁(76)を開き、冷媒の一部をバイパス通路(71)を介して高圧空間(S2)にバイパスさせることで、吐出通路(70)を流通する冷媒の圧力損失を低減させることができる。また、冷媒の流量が少ない場合には、開閉弁(76)を閉じておくことで、吐出通路(70)を流通する冷媒の流量が不足するのを防止できる。
【0075】
《実施形態2》
図9は、本実施形態2に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。前記実施形態1との違いは、開閉機構(75)の構成のみであるため、以下、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。
【0076】
図9に示すように、開閉機構(75)は、区画部材(29)の右側壁面に形成された筒状部(35)と、筒状部(35)内に収容された開閉ロッド(36)と、筒状部(35)の右側開口を塞ぐとともに開閉ロッド(36)を進退自在に保持する保持部(37)と、圧縮バネ(38)とを備えている。
【0077】
前記筒状部(35)は、区画部材(29)に形成されたバイパス通路(71)を筒内周面で囲むように配置されている。筒状部(35)の周面には、筒状部(35)の内部と高圧空間(S2)とを連通する連通孔(35a)が形成されている。
【0078】
前記開閉ロッド(36)は、バイパス通路(71)に嵌合されるヘッド部(36a)と、ヘッド部(36a)よりも小径の軸部(36b)とを備えている。軸部(36b)は、保持部(37)に形成された保持孔(37a)に摺動自在に保持されている。
【0079】
前記圧縮バネ(38)は、開閉ロッド(36)のヘッド部(36a)と保持部(37)との間に設けられ、開閉ロッド(36)のヘッド部(36a)をバイパス通路(71)内に嵌合する方向に付勢している。
【0080】
ここで、前記圧縮室(23)から吐出された冷媒の流量が少ない場合には、吐出通路(70)と高圧空間(S2)との圧力差が小さいため、開閉ロッド(36)のヘッド部(36a)がバイパス通路(71)に嵌合されてバイパス通路(71)が閉じられた状態となる。
【0081】
一方、前記圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が多い場合には、吐出通路(70)と高圧空間(S2)との圧力差が大きくなり、図10に示すように、開閉ロッド(36)が圧縮バネ(38)の付勢力に抗して高圧空間(S2)側に移動し、バイパス通路(71)が開いた状態となる。これにより、吐出通路(70)を流れる冷媒の一部が、バイパス通路(71)から筒状部(35)の連通孔(35a)を介して高圧空間(S2)にバイパスされる。
【0082】
《実施形態3》
図11は、本実施形態3に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。図11に示すように、スライドバルブ(88)がスライドバルブ収納部(17)の内部を軸方向に変位すると、圧縮室(23)と吐出口(28)との連通位置が変更される。具体的に、スライドバルブ(88)がスクリューロータ(40)の吸入側に近づくと、圧縮室(23)と吐出口(28)とが連通するタイミングが早くなる。その結果、圧縮室(23)の圧縮比、すなわち、吐出容積Vdに対する吸入容積Vsの比(容積比:VI(=Vs/Vd))は、比較的小さくなる。一方、スライドバルブ(88)がスクリューロータ(40)の吸入側から離れると、圧縮室(23)と吐出口(28)とが連通するタイミングが遅くなる。その結果、圧縮室(23)の圧縮比は、比較的大きくなる。このように、スライドバルブ(88)の位置を調整することで、圧縮室(23)と吐出口(28)とが連通するタイミング(圧縮行程の終了時点)が調整され、圧縮室(23)の圧縮比が所定の範囲内で調整される。
【0083】
前記スライドバルブ(88)の連結ロッド(85)には、閉塞部材(77)が取り付けられている。この閉塞部材(77)は、スライドバルブ(88)をスクリューロータ(40)の吸入側に近づけた状態で、区画部材(29)に形成されたバイパス通路(71)に嵌合される。これにより、バイパス通路(71)が塞がれる。一方、スライドバルブ(88)をスクリューロータ(40)の吐出側に近づけた状態では、スライドバルブ(88)の移動に連動して閉塞部材(77)がバイパス通路(71)から外れ、バイパス通路(71)が開放される。このように、閉塞部材(77)とスライドバルブ駆動機構(80)とで開閉機構(75)が構成される。
【0084】
ここで、前記スライドバルブ(88)をスクリューロータ(40)の吸入側に近づけた状態(図11に示す状態)、すなわち、圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が少ない場合には、閉塞部材(77)がバイパス通路(71)に嵌合されてバイパス通路(71)が閉じられた状態となる。
【0085】
一方、前記スライドバルブ(88)をスクリューロータ(40)の吐出側に近づけた状態(図12に示す状態)、すなわち、圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が多い場合には、閉塞部材(77)がバイパス通路(71)から外れてバイパス通路(71)が開放された状態となる。これにより、吐出通路(70)を流れる冷媒の一部が、バイパス通路(71)を介して高圧空間(S2)にバイパスされる。
【0086】
《実施形態4》
図13は、本実施形態4に係るスクリュー圧縮機の構成を一部拡大して示す縦断面図である。図13に示すように、スライドバルブ(88)は、高圧空間(S2)寄りへ移動すると、スライドバルブ収納部(17)の端面とスライドバルブ(88)の端面との間に軸方向隙間が形成される。この軸方向隙間は、圧縮室(23)から低圧空間(S1)へ冷媒を戻すためのリターン通路(78)を構成している。つまり、リターン通路(78)は、その一端が低圧空間(S1)に連通し、その他端がシリンダ部(16)の内周面に開口している。スライドバルブ収納部(17)の端面とスライドバルブ(88)の端面とが互いに離れた状態では、両者の間に形成された開口が、シリンダ部(16)の内周面におけるリターン通路(78)の開口部となる。
【0087】
そして、前記スライドバルブ(88)が移動すると、リターン通路(78)の開口部の面積が変化し、圧縮室(23)からリターン通路(78)を通って低圧空間(S1)へ流出する流体の流量が変化する。つまり、スライドバルブ(88)をスライドさせると、圧縮行程の開始時点が変更され、単位時間当たりに圧縮室(23)から吐出される冷媒の量(すなわち、スクリュー圧縮機(10)の運転容量)が変化する。
【0088】
なお、前記圧縮室(23)から吐出される冷媒は、スライドバルブ(88)に形成された吐出孔(88a)へ流入した後、スライドバルブ(88)のスライドバルブ収納部(17)の背面側に形成された通路を通って吐出通路(70)へ流入する。
【0089】
前記スライドバルブ(88)が右側へ移動すると、シリンダ部(16)の内周面にリターン通路(78)が開口する。この状態において、低圧空間(S1)から圧縮室(23)へ吸入された冷媒は、その一部が圧縮行程途中の圧縮室(23)からリターン通路(78)を通って低圧空間(S1)へ戻り、残りが最後まで圧縮されて吐出通路(70)へ吐出される。そして、スライドバルブ(88)の端面とスライドバルブ収納部(17)の端面との間隔が広がると、それにつれてリターン通路(78)を通って低圧空間(S1)へ戻る冷媒の量が増大し、吐出通路(70)へ吐出される冷媒の量が減少する(つまり、圧縮機構(20)の容量が減少する)。
【0090】
一方、図14に示すように、前記スライドバルブ(88)が左側へ最も押し込まれた状態では、圧縮機構(20)の容量が最大となる。つまり、この状態では、リターン通路(78)がスライドバルブ(88)によって完全に塞がれ、低圧空間(S1)から圧縮室(23)へ吸入された冷媒の全てが吐出通路(70)へ吐出される。
【0091】
前記スライドバルブ(88)の連結ロッド(85)には、閉塞部材(77)が取り付けられている。この閉塞部材(77)は、スライドバルブ(88)をスクリューロータ(40)の吐出側に近づけた状態で、区画部材(29)に形成されたバイパス通路(71)に嵌合される。これにより、バイパス通路(71)が塞がれる。一方、スライドバルブ(88)をスクリューロータ(40)の吸入側に近づけた状態では、スライドバルブ(88)の移動に連動して閉塞部材(77)がバイパス通路(71)から外れ、バイパス通路(71)が開放される。このように、閉塞部材(77)とスライドバルブ駆動機構(80)とで開閉機構(75)が構成される。
【0092】
ここで、前記スライドバルブ(88)をスクリューロータ(40)の吐出側に近づけた状態(図13に示す状態)、すなわち、圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が少ない場合には、閉塞部材(77)がバイパス通路(71)に嵌合されてバイパス通路(71)が閉じられた状態となる。
【0093】
一方、前記スライドバルブ(88)をスクリューロータ(40)の吸入側に近づけた状態(図14に示す状態)、すなわち、圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が多い場合には、閉塞部材(77)がバイパス通路(71)から外れてバイパス通路(71)が開放された状態となる。これにより、吐出通路(70)を流れる冷媒の一部が、バイパス通路(71)を介して高圧空間(S2)にバイパスされる。
【0094】
《その他の実施形態》
上述した実施形態については、以下のような構成としてもよい。例えば、スクリューロータ(40)の回転数が変化したときに、その変化を示す信号を図示しないアクチュエータに送信し、このアクチュエータによってバイパス通路(71)を開閉させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明は、比較的簡単な構成で、吐出通路を流通する冷媒の圧力損失を低減できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0096】
10 スクリュー圧縮機
11 ケーシング
16 シリンダ部
21 駆動軸
23 圧縮室
29 区画部材
40 スクリューロータ
41 螺旋溝
70 吐出通路
71 バイパス通路
75 開閉機構
76 開閉弁
88 スライドバルブ
S2 高圧空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮室(23)を形成する複数の螺旋溝(41)が形成されたスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)が挿入されるシリンダ部(16)を有するケーシング(11)と、該シリンダ部(16)の外周部を囲むように形成されて該圧縮室(23)から吐出した冷媒が流入する吐出通路(70)と、該ケーシング(11)内に形成されて該吐出通路(70)を通過した冷媒が流入する高圧空間(S2)とを備えたスクリュー圧縮機であって、
前記圧縮室(23)から吐出した冷媒の一部を前記高圧空間(S2)にバイパスさせるバイパス通路(71)と、
前記バイパス通路(71)を開いて冷媒の流通を許可する一方、該バイパス通路(71)を閉じて冷媒の流通を遮断する開閉機構(75)とを備えたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
前記開閉機構(75)は、前記圧縮室(23)から吐出される冷媒の流量が所定量よりも多い場合に前記バイパス通路(71)を開く一方、所定量よりも少ない場合に該バイパス通路(71)を閉じるように構成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記吐出通路(70)と前記高圧空間(S2)とを区画するとともに前記バイパス通路(71)が形成された区画部材(29)を備え、
前記開閉機構(75)は、前記区画部材(29)に設けられていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項3において、
前記開閉機構(75)は、前記区画部材(29)で区画された前記吐出通路(70)と前記高圧空間(S2)との圧力差によって開閉する開閉弁(76)で構成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記スクリューロータ(40)の駆動軸(21)と平行な方向へ移動することによって、圧縮行程の終了時点を変更して、前記圧縮室(23)の圧縮比を調整するスライドバルブ(88)を備え、
前記開閉機構(75)は、吐出冷媒の流量が増加する前記スライドバルブ(88)の吐出側への移動に連動して前記バイパス通路(71)を開く一方、吐出冷媒の流量が減少する該スライドバルブ(88)の吸入側への移動に連動して該バイパス通路(71)を閉じるように構成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記スクリューロータ(40)の駆動軸(21)と平行な方向へ移動することによって、圧縮行程の開始時点を変更して、前記圧縮室(23)の運転容量を調整するスライドバルブ(88)を備え、
前記開閉機構(75)は、吐出冷媒の流量が増加する前記スライドバルブ(88)の吸入側への移動に連動して前記バイパス通路(71)を開く一方、吐出冷媒の流量が減少する該スライドバルブ(88)の吐出側への移動に連動して該バイパス通路(71)を閉じるように構成されていることを特徴とするスクリュー圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate