説明

スクリュー釘

【課題】自動釘打ち機に適用でき、しかも、施工対象の木材へ与える損傷が少なく、より大きな締結力が得られ且つドライバー操作によって容易に抜き取ることが出来るスクリュー釘を提供する。
【解決手段】スクリュー釘は、頭部1にドライバー穴3が設けられ且つ軸部2にねじ4及びワイヤー連結部6が設けられた自動釘打ち機用のスクリュー釘であり、ドライバー穴3が正方形の穴であり、ねじ4は、リード角a55〜60度の二条の雄ねじであり、かつ、先端側のねじ山角度Cが55〜65度、頭部側のねじ山角度Cが15〜25度に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー釘に関するものであり、詳しくは、自動釘打ち機による打ち込みに適し且つドライバーによる抜取りが可能な自動釘打ち機用のスクリュー釘に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築においては、例えば、方形に組まれた木枠に断熱材が収められた規格寸法の構造用の断熱パネルを壁材や床材として釘で固定する工法が普及しているが、建物の改築、解体においては、建材の再利用を図るため、前記の断熱パネル等を出来る限り損傷させることなく回収するのが望ましい。
【0003】
一方、躯体や建材への損傷を少なくするための釘の一種として、ハンマーにより打込み可能で且つドライバーにより抜取り可能なスクリュー釘が知られている。斯かるスクリュー釘としては、例えば、4〜5条の溝がリード角45〜70度で軸部に連続して刻まれ、一文字(すりわり)、十字または正六角形のドライバー穴が頭部に設けらたものが挙げられる。
【特許文献1】特開平10−331820号公報
【0004】
また、一条の溝が軸部に連続して設けられ、頭部側に向けられた溝側面と軸に直交する線とのなす角度が5〜30度、先端側に向けられた溝側面と軸に直交する線とのなす角度が65〜85度に設定されたスクリュー釘が提案されている。
【特許文献2】特開2000−320516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建築分野などでは、多量に釘を使用するため、通常の釘については自動釘打ち機を利用して打ち込んでいる。しかしながら、スクリュー釘は、ハンマーを使用して打ち込むことを前提としており、実際、自動釘打ち機に適用すると、衝撃により頭部を破損すると言う問題がある。また、自動釘打ち機を使用した場合、4〜5条の多条ねじを構成したスクリュー釘は、打ち込み時の抵抗が大きいため、木材組織を破壊し易く、打ち込んだ際に十分な締結力が得られない。一方、通常の一条ねじは、打ち込み時の抵抗が小さい反面、抜取り時の推進力に欠け、ドライバーでは外れ難いと言う傾向がある。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動釘打ち機に適用でき、しかも、施工対象の木材へ与える損傷が少なく、より大きな締結力が得られ且つドライバー操作によって容易に抜き取ることが出来る様に改良されたスクリュー釘を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、軸部にワイヤー連結部を設けて多数本連結可能に構成すると共に、頭部にドライバー穴として正方形の穴を設け、ドライバーの嵌合力を高め且つ頭部全体の質量を大きくして頭部の耐衝撃力を高めることにより、自動釘打ち機に適用できる様にした。そして、軸部のねじを特定のリード角の二条の雄ねじで構成し且つそのねじ山角度を先端側と頭部側とで角度の異なる特定の角度に設定することにより、打込み時の抵抗をさほど増大させることなく且つ抜取り時の推進力を高め、材料へ与える損傷を低減する様にした。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、頭部にドライバー穴が設けられ且つ軸部にねじ及びワイヤー連結部が設けられた自動釘打ち機用のスクリュー釘であって、前記ドライバー穴が正方形の穴であり、前記ねじは、リード角55〜60度の二条の雄ねじであり、かつ、先端側のねじ山角度が55〜65度、頭部側のねじ山角度が15〜25度に設定されていることを特徴とするスクリュー釘に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスクリュー釘によれば、軸部にワイヤー連結部を設け且つ頭部のドライバー穴を正方形の穴として頭部の耐衝撃力を高めているため、連結釘を構成して自動釘打ち機に適用できる。しかも、軸部のねじを特定の雄ねじで構成し、打込み時の抵抗を小さく出来るため、材料へ与える損傷を低減でき且つより大きな締結力が得られる。そして、抜取り時の推進力を高めることが出来るため、ドライバー操作により円滑に抜き取ることが出来、材料へ与える損傷も低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るスクリュー釘の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るスクリュー釘の構造を示す外観図およびねじ山の断面図である。図1(a)に示す様に、本発明のスクリュー釘は、自動釘打ち機に適用されるスクリュー釘であり、頭部(1)にドライバー穴(3)が設けられ且つ軸部(2)にねじ(4)及びワイヤー連結部(6)が設けられる。
【0011】
連結釘は、平行な2本のワイヤ上に跨がる状態で多数の釘を並列に一定間隔で配列し且つ各釘の軸部の2点を各ワイヤに溶接して構成されたベルトリンク(弾帯)状の釘集合体であり、渦巻き状に巻回されて自動釘打ち機のカセットに装填される。そして、自動釘打ち機は、概ね、トリガーの操作により、カセット内の渦巻き状の連結釘を釘送り爪により釘通路から案内溝に順次送り出すと共に、フィードピストンに圧縮空気を供給し、案内溝に位置する釘をフィードピストンの作動によって打ち出す様に構成されている。本発明のスクリュー釘は、軸部(2)の特定の部位にワイヤー連結部(6)を設け、かつ、頭部(1)を特定の大きさに設計することにより、通常の自動釘打ち機に適用可能な連結釘として構成できる。
【0012】
本発明のスクリュー釘は、一般的な連結釘と同様に、炭素鋼やステンレス等の線材を加工して製造され、その表面には、黒クロメート、ユニクロ、クロメート、三価クロムクロメート等のメッキ処理が施される。更に、打込み時の耐衝撃力を高めるため、好ましくは熱処理が施される。本発明のスクリュー釘は、例えば、線径3.35mmの炭素鋼(SWCH18A等)により製造され、頸部(軸部(2)上端部分)の直径(D)が原材料の鋼線の線径と同様の3.35mm、軸部(2)の直径(D)が3.15mm、ねじ(4)の外径(D)が3.80mmに設計される。先端角(b)は30°とされる。また、全長(L)は、一般的な釘の規格に応じて、50〜90mmの範囲で設計される。
【0013】
頭部(1)の形状は、皿または丸皿に形成され、頭部(1)の直径(m)は、全長(L)に応じて7.5〜8.0mmの範囲で設計される。頭部(1)には、ドライバー穴(3)が設けられ、当該ドライバー穴は、図1(b)に示す様に、平面形状(釘を上端から見た形状)が正方形に形成され且つ先端が僅かにテーパー状に窪んだ所謂ロバートソン形ドライバー用の穴とされる。斯かるドライバー穴(3)の一辺の長さ(n)は、頭部(1)の直径(m)の30〜32%に設定される。
【0014】
ドライバー穴(3)を上記の様な形状に設定する理由は次の通りである。すなわち、ドライバー穴が一文字、十字などの溝構造の場合には、自動釘打ち機の衝撃により頭部の直径に沿ってドライバー穴が分断、破壊され易い。また、六角形の穴構造の場合には、頭部の実質的な質量が小さくなるため、同様に、自動釘打ち機の衝撃により頭部が損傷する。一方、頭部(1)は、通常の自動釘打ち機に使用するためには直径を8mm以下に設定する必要があり、口径を大きく形成して剛性を高めることは現実的に困難である。これに対し、開口形状が正方形のドライバー穴(3)は、その空間容積に比べてドライバー(工具)の嵌合力が大きいため、穴の容積を小さくして頭部(1)の実質的な質量を大きく設定でき、頭部(1)の剛性を高めることが出来る。
【0015】
また、本発明においては、対象物である木材に対する締結力を高め且つ木材に対する損傷を低減するため、ねじ(4)は、リード角(a)が55〜60度、好ましくは58度の二条の雄ねじで構成される。ねじ(4)を雄ねじで構成することにより、原材料の線径である頸部の直径(D)に対して実質的な軸部の直径(D)をさほど細くする必要がなく、釘の強度を高めることが出来る。
【0016】
ねじ(4)を上記の特定のリード角(a)の二条ねじとする理由は次の通りである。すなわち、通常の一条ねじは、打込み時の抵抗は小さい反面、抜取り時の推進力が小さいため、ドライバーの回転力を効果的に作用させるためにねじピッチを小さくしなければならず、結局、その場合には、打込み時の抵抗が大きくなり、木材組織の破壊を惹起する。一方、3条以上の多条ねじは、隣接するねじ山の間隔が極めて小さいため、打込み時の抵抗が大きく、同様に木材組織の破壊を惹起する。ねじ(4)をリード角(a)が55〜60度の二条ねじとすることにより、木材組織をさほど損傷させることなく、容易に打ち込むことが出来、かつ、抜取りに際して推進力を効果的に発揮できる。
【0017】
更に、本発明においては、打込み時の抵抗を小さくすると共に、締結力を高め且つ抜取り時の推進力を高めるため、図1(c)に示す様に、上記のねじ(4)の雄ねじは、軸部(2)の円周面に対して頭部側のフランクよりも先端側のフランクが緩やかに形成されたのこ歯ねじとされる。なお、「フランク」は、ねじの谷と山の間の傾斜面を指す。
【0018】
具体的には、ねじ(4)のねじ山角度(山角)(C)は60〜90度、好ましくは80度に設定される。そして、先端側のねじ山角度(山角)(C)が55〜65度、好ましくは60度に設定され、頭部側のねじ山角度(山角)(C)が15〜25度、好ましくは20度に設定される。先端側および頭部側の各ねじ山角度(C)、(C)とは、図1(c)に示す様に、ねじ山の頂点を通る軸部(2)の直径に対する頂部の傾斜角度を言う。上記の様に、ねじ山角度(C)が特定の角度のこ歯ねじでねじ(4)を構成することにより、打込み及び抜取りを容易にし且つ木材組織の損傷を低減できる。
【0019】
本発明のスクリュー釘は、前述の様に、自動釘打ち機において使用するため、軸部(2)にワイヤー連結部(6)が2箇所設けられている。一方のワイヤー連結部(6)は、頭部(1)からの長さ(L)が19.0mmの位置、他方のワイヤー連結部(6)は、頭部(1)からの長さ(L)が37.5mmの位置にそれぞれ設けられる。しかも、各ワイヤー連結部(6)の軸方向の長さ(W)、すなわち、ねじ(4)が設けられていない部位の幅は、各々、6.0mmに設定される。なお、スクリュー釘は、上記のワイヤー連結部(6)において銅製のフラットワイヤーに溶接され、かつ、多数連結した状態で連結釘として渦巻き状に巻き取られる。
【0020】
上記の様に、本発明においては、軸部にワイヤー連結部を設けて連結釘として多数本連結できる様に構成されていると共に、頭部にドライバー穴として正方形の穴を設けてドライバーの嵌合力を高め且つ頭部全体の質量を確保し、頭部の耐衝撃力を高めているため、自動釘打ち機に適用することが出来る。しかも、軸部(2)のねじ(4)が特定のリード角(a)の二条の雄ねじで構成されており、呼び径に対して実質的に軸部(2)の直径(D)をさほど細くする必要がなく、破断力を高めることが出来る。しかも、ねじ(4)のねじ山角度(C)が先端側と頭部側とで角度の異なる特定の角度に設定されていることにより、打込み時の抵抗を小さく出来るため、材料へ与える損傷を低減でき且つより大きな締結力が得られ、また、抜取り時の推進力を高めることが出来るため、ドライバー操作により円滑に抜き取ることが出来、材料へ与える損傷も低減できる。
【0021】
ちなみに、本発明のスクリュー釘は、建築分野において、木枠に断熱材が予め収められた建築用断熱パネルを壁、床または天井に使用する工法に好適に使用できる。上記の断熱パネルとしては、例えば、方形に組まれた木枠の内側に硬質ウレタンフォームを収め且つ一面に構造用面材を貼付けて成る断熱パネル、あるいは、ガスバリア性フィルムから成る扁平な袋にシリカ等の充填材を収容し且つ袋内部を真空引きした薄板状の真空断熱板を利用した高性能の断熱パネルが挙げられ、斯かる断熱パネルは、木枠の内側に真空断熱板を収め且つ当該真空断熱板の両面を発泡樹脂製の断熱材で被覆して構成されている。
【0022】
上記の様な断熱パネルは、例えば、松本建工(株)製の「FPパネル」(商品名)として、「FPの家」(商品名)の施工において梁などの横架材、土台、柱、間柱などに木枠部分を釘で固定して使用される。その際、本発明のスクリュー釘を使用することにより、自動釘打ち機を使用して迅速に施工でき、また、解体や補修の際、電動ドライバーを使用して迅速に取り外すことが出来る。そして、木枠の損傷が殆どないため、取り外した断熱パネルを再利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るスクリュー釘の構造を示す図であり、分図(a)は全体構成を示す側面図、分図(b)は頭部のドライバー穴を示す上面図、分図(c)はねじ山形状を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 :頭部
2 :軸部
3 :ドライバー穴
4 :雄ねじ
6 :ワイヤー連結部
a :リード角
b :先端角
C :ねじ山角度
:先端側のねじ山角度
:頭部側のねじ山角度
:線径
:軸部の直径
:ねじ部外径
L :全長
:頭部からワイヤー連結部までの長さ
L2:頭部からワイヤー連結部までの長さ
m :頭部の直径
n :ドライバー穴の一辺の長さ
W :ワイヤー連結部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部にドライバー穴が設けられ且つ軸部にねじ及びワイヤー連結部が設けられた自動釘打ち機用のスクリュー釘であって、前記ドライバー穴が正方形の穴であり、前記ねじは、リード角55〜60度の二条の雄ねじであり、かつ、先端側のねじ山角度が55〜65度、頭部側のねじ山角度が15〜25度に設定されていることを特徴とするスクリュー釘。
【請求項2】
頭部の形状が皿または丸皿であり且つドライバー穴の一辺の長さが頭部の直径の30〜32%に設定されている請求項1に記載のスクリュー釘。
【請求項3】
雄ねじは、軸部の円周面に対して頭部側のフランクよりも先端側のフランクが緩やかに形成されたのこ歯ねじである請求項1又は2に記載のスクリュー釘。

【図1】
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【公開番号】特開2010−127415(P2010−127415A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303756(P2008−303756)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(509122359)株式会社FPコーポレーション (4)
【出願人】(391040962)平田ネジ株式会社 (4)
【出願人】(000222990)株式会社テクノアソシエ (11)