説明

スクリーンの製造方法

【課題】投射された画像を適切に反射できるスクリーンの製造方法を提供すること。
【解決手段】蒸着装置4は、蒸着源Oと、巻き取り部6と、巻き取り部7と、遮蔽部8と、遮蔽部9と、を有する。巻き取り部6と巻き取り部7によってスクリーン材料11を送り出す。蒸着源Oで射出された反射は、遮蔽部8と遮蔽部9により遮蔽されることでスクリーン材料11に部分的に反射部を形成し、且つ、仮想中心回転軸10の平行移動と、巻き取り部6と巻き取り部7の仮想中心回転軸10を中心とした公転により、理想の角度でスクリーン材料11に反射部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、投射画像を反射させて観察可能にする反射スクリーンが知られている。このような反射スクリーンとして、スクリーン観察面側に同一形状の多数の凹凸を2次元的に配置させ、凹凸の単位系上部の投影光入射方向に向かう一部の表面部分にのみ反射面が形成されている反射スクリーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−15196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の反射スクリーンは、反射面の形成方法としてスクリーン全面に同時に反射面を蒸着する方法を用いる。この場合、スクリーンを2次元的に広げ、想定されるプロジェクター位置に蒸着源を置き、その位置から蒸着すればスクリーン面内の凹凸にプロジェクター光が当たる面にのみ(必要な領域にのみ)反射面を形成させることができる。しかしながら上記の方法では、蒸着源に近いスクリーン面と蒸着源から遠いスクリーン面で反射面の膜厚が異なり、反射率がスクリーン面内で異なるという課題がある。またスクリーンを2次元的に広げて反射面を蒸着するため、反射面を形成させるための装置が大きくなるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]上記課題を解決するために、本適用例のスクリーンの製造方法は、スクリーン材料に形成された光を反射する反射部を有するスクリーンの製造方法であって、前記スクリーン材料に前記反射部を形成させるための形成媒体を射出する形成源を準備する工程と、前記スクリーン材料を準備する工程と、前記形成媒体が射出される領域に前記スクリーン材料を送り出す工程と、送り出された前記スクリーン材料における所定の領域ごとに、前記形成媒体が射出される方向と前記スクリーン材料の前記反射部が形成される面とが所定の角度となるように、前記スクリーン材料の角度を調整する工程と、前記スクリーン材料の所定の一部ごとに前記反射部が形成されるように、前記形成源から前記形成媒体を射出する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、スクリーン材料を送り出しながら、送り出されたスクリーン材料の所定の領域ごとに反射部を形成させるため、スクリーン材料の送り出しの速さを調節することで、反射部の膜厚を均一にすることができる。そのことにより、スクリーン面の一部だけ暗くなるような、スクリーン面内での輝度分布ムラをなくすことができる。
また、スクリーン材料の所定の領域ごとに反射部を形成させるため、スクリーン材料を広げる必要がない。そのため、反射部を形成させるための装置をより小さくすることができる。さらに、スクリーン材料の所定の領域ごとに、反射部を形成させるための形成媒体の射出される方向とスクリーン材料の反射材が形成される面とが所定の角度となるように調整するため、反射部の形成される領域を制御でき、プロジェクター光だけを反射し、外光を反射しない、高コントラストなスクリーンの製造が可能である。
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載のスクリーンの製造方法は、前記スクリーン材料と前記形成源の前記形成媒体の射出位置との相対位置を変化させる工程と、前記スクリーン材料を所定の軸を中心として回転させる工程と、を有することが好ましい。
本適用例によれば、スクリーン材料と形成媒体の射出位置との相対位置を変化させ、スクリーン材料が所定の軸を中心として回転することによって、スクリーン材料と形成媒体の相対位置の自由度が増え、形成媒体の出射される方向とスクリーン材料の反射部の形成面とを所定の角度にし易くなり、より容易にスクリーンを製造することができる。
【0009】
[適用例3]上記適用例に記載のスクリーンの製造方法は、前記反射部が形成される部位が変わるように、前記スクリーン材料を巻き取る工程を有することが好ましい。
本適用例によれば、送り出される前のスクリーン材料と、送り出された後のスクリーン材料を巻き取ることで、スクリーンをより小さいスペースで製造することができる。
【0010】
[適用例4]上記適用例に記載のスクリーンの製造方法は、スクリーンを平面状に広げた場合に前記スクリーンの中心線となる仮想スクリーン中心が、前記スクリーン材料の延長面に対する前記射出位置からの垂線と、前記延長面上との交点に位置し、前記仮想スクリーン中心と前記射出位置の距離は常に一定になるように前記スクリーン材料と前記射出位置の相対位置を調節する工程を有することが好ましい。
本適用例によれば、スクリーンを平面状に広げなくても、スクリーンを平面状に広げてから反射部を形成したときと同様の反射部が形成できる。さらに、部分的に反射部を形成していくので、反射部の膜厚の制御ができるため、より理想の反射部を形成することができる。
【0011】
[適用例5]上記適用例に記載のスクリーンの製造方法は、前記形成媒体の射出される方向と前記スクリーン材料の反射部の形成面との角度を、想定させるプロジェクター光の射出される方向と前記スクリーン材料の反射部の形成面との角度と一致するように、前記スクリーン材料の角度を調整する工程を有することが好ましい。
本適用例によれば、スクリーン材料の形成面において、プロジェクター光が当たる部分だけに反射部を形成することができるため、プロジェクター光だけを反射させる、光効率のよい、より高コントラストなスクリーンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るプロジェクションシステムの構成図。
【図2】前記実施形態により製造されたスクリーンの断面の拡大図。
【図3】前記実施形態における蒸着装置の上面図。
【図4】前記実施形態における蒸着装置の斜視図。
【図5】前記実施形態における蒸着装置の側面図。
【図6】前記実施形態における蒸着装置の動作を説明するための図。
【図7】前記実施形態における蒸着装置と従来の蒸着装置の比較の図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(プロジェクションシステムの構成)
図1は、本実施形態に係るプロジェクションシステム1を示す図である。本実施形態に係るプロジェクションシステム1は、スクリーン2とプロジェクター3とを備える。
スクリーン2は、プロジェクター3が投射する画像を形成する光(画像光)を反射させて、観測者に当該画像を視認させる反射型のスクリーンである。
プロジェクター3は、例えば投写光学系の中に反射ミラーを備えた、いわゆる近接投射型のプロジェクターである。プロジェクター3は、スクリーン2との距離を、例えば60cm程度までに短縮することができる。
【0014】
(スクリーンの構成)
図2は、本実施形態により作られたスクリーン2の断面の拡大図である。スクリーン2は、塩化ビニルなどのスクリーン材料を用いたベース20に観察面21が形成されたものである。観察面21は反射面と言い換えることもできる。観察面21は半球状に形成された凹部22が複数配列されている。また、凹部22は光反射領域23と光吸収領域24の2つの領域に分かれている。
図1に示すように、プロジェクター3はスクリーン2の下方に設置される。それに対して外部からの環境光、例えば太陽光や部屋の照明光は上方から照射される。したがって、プロジェクター3からの画像光を効率よく観察者に反射させ、環境光を観察者に向けないように、光反射領域23は凹部22の上側に配置され、光吸収領域24は凹部22の下側に配置される。光反射領域23と光吸収領域24との配置はこの位置に限らず、プロジェクター3とスクリーン2との設置位置に応じて適宜設定される。
凹部22は公知の方法で作成される。具体的にはエッチングマスク膜を使用したウエットエッチングで形成される。光反射領域23は、具体的には、光を反射する反射部が形成された領域である。反射部は、例えばアルミニウムなどの反射物質(反射媒体)が蒸着されて作られている。光吸収領域24は、スクリーン材料を黒色に加工しておくことで、光反射領域23以外の場所を光吸収領域24として使用することができる。
【0015】
(蒸着装置の構成)
図3は本実施形態である蒸着装置4の上面図である。また、図4は蒸着装置4の斜視図である。図5は蒸着装置4の側面図である。ここで、説明のために蒸着源Oを原点として、x,y,z直交座標を設定する。図3に示すとおり、鉛直面内における所定方向をx軸方向、鉛直面内においてx軸方向と直交する方向をy軸方向、x軸方向及びy軸方向に直交する方向をz軸方向とする。
図3に示すように、蒸着装置4は蒸着源Oと駆動部5とを有している。また、図5に示すように、蒸着源Oと駆動部5の位置関係は、蒸着源Oの位置を原点として考えると、駆動部5の底面5aは蒸着源Oよりもプラスz軸方向側に位置している。また、後で詳述するが、蒸着源Oと駆動部5のx軸方向及びy軸方向の距離は、駆動部5が移動するため一定ではない。
【0016】
(駆動部の構成)
図3と図4を用いて駆動部5の構成を説明する。駆動部5は巻き取り部6と巻き取り部7と遮蔽部8と遮蔽部9とを有している。巻き取り部6と巻き取り部7は円柱の形をしており、巻き取り部6と巻き取り部7の円柱の径、z軸方向の長さは共に等しい。また、巻き取り部6の円柱の中心軸61および巻き取り部7の円柱の中心軸71は、それぞれz軸方向に平行で、巻き取り部6の端面と巻き取り部7の端面は蒸着源Oからの高さが同じになるように設置されている。また、中心軸61と中心軸71の距離D1は一定である。
【0017】
遮蔽部8と遮蔽部9は円筒の一部を切り取ったような形をしている。本実施形態では円筒の約60度部分のみ切り取り除いたような形をしている。また、遮蔽部8と遮蔽部9の円筒の径、z軸方向の長さは共に等しい。遮蔽部8の円柱の中心軸81と遮蔽部9の円柱の中心軸91は、それぞれz軸方向に平行で、遮蔽部8の端面と遮蔽部9の端面は蒸着源Oからの高さが同じになるように設置されている。
【0018】
図5を用いて巻き取り部6と巻き取り部7と遮蔽部8と遮蔽部9の位置関係を説明する。なお、図5では、スクリーン材料11を省略している。遮蔽部8の中心軸81は巻き取り部6の中心軸61と同軸となり、遮蔽部9の中心軸91は巻き取り部7の中心軸71と同軸となる位置関係にある。また、遮蔽部8と遮蔽部9のz軸方向の長さは、巻き取り部6と巻き取り部7のz軸方向の長さよりも長く、遮蔽部8と遮蔽部9の下端8a,9aは巻き取り部6と巻き取り部7よりも蒸着源Oに近く、また、遮蔽部8と遮蔽部9の上端8b,9bは巻き取り部6と巻き取り部7よりも蒸着源Oから遠くなるように設置されている。つまり、x軸方向、またはy軸方向から見て、遮蔽部8は巻き取り部6を、遮蔽部9は巻き取り部7を覆うように設置されている。また、後に詳述するが、巻き取り部6と巻き取り部7と遮蔽部8と遮蔽部9は仮想中心回転軸10(図3参照)を中心に公転するが、巻き取り部6と巻き取り部7と遮蔽部8と遮蔽部9の位置関係は変わることはない。
【0019】
スクリーン材料11は駆動部5の巻き取り部6と巻き取り部7に巻かれる。このとき図3のように蒸着装置4を上から見た場合、巻き取り部6はスクリーン材料11を右巻きで巻き取り、巻き取り部7はスクリーン材料11を左巻きで巻き取る。このとき、巻き取り部6と巻き取り部7の間にあるスクリーン材料11は、z軸方向から見て直線になるようにする。また、スクリーン材料11の観察面21は蒸着源Oに向き、スクリーン材料11の下端は蒸着源Oに近い側に設置する。言い換えれば、スクリーン材料11は巻き取り部6と巻き取り部7にカセットテープのように左右の両端を巻かれ、観察面21は蒸着源Oに向いている。
【0020】
(スクリーン材料の動作)
巻き取り部6と巻き取り部7は自転可能である。巻き取り部6と巻き取り部7の回転軸はそれぞれの中心軸61と中心軸71と同軸で、回転方向は巻き取り部6と巻き取り部7共に同じ方向である。つまり、蒸着装置4を上面方向から見て、巻き取り部6が右回転のときは巻き取り部7も右回転をし、巻き取り部6が左回転のときは巻き取り部7も左回転をする。そのことにより、巻き取り部6と巻き取り部7に巻かれたスクリーン材料11は、巻き取り部6と巻き取り部7の間を弛む事無く移動することとなり、カセットテープのテープのように動くことになる。
【0021】
(駆動部の動作)
以降の説明のために、巻き取り部6の中心軸61と巻き取り部7の中心軸71の中間に仮想中心回転軸10を設定する。巻き取り部6と巻き取り部7と遮蔽部8と遮蔽部9は、それぞれの位置関係を保ちながら仮想中心回転軸10を中心に回転角度θ1で公転する。この回転角度θ1は、仮想中心回転軸10と蒸着源Oとを結ぶ線L1を基準に、最大で+90度から−90度まで設定できる。
【0022】
(仮想中心回転軸の動作)
仮想中心回転軸10は、仮想中心回転軸10と蒸着源Oとを結ぶ線L1上を移動する。この移動の範囲は、想定するプロジェクター位置と巻き取り部6の中心軸と巻き取り部7の円柱の径とスクリーン材料11の巻き取り方向の長さによって異なる。
【0023】
(蒸着装置による反射部形成工程)
図6を用いて蒸着装置4による反射部形成工程を説明する。説明のために、仮想スクリーン中心13を定義する。図6にあるように、巻き取り部6と巻き取り部7の間にあるスクリーン11の直線部分から延長線L2を引き、その延長線L2上に重なるようにスクリーン材料11を平面状に広げたと仮定したとき、スクリーン材料11の平面上の中心となる線を仮想スクリーン中心13とする。つまり、仮想スクリーン中心13は成型後、プロジェクターで画像を映す際のスクリーンの中心になる。
【0024】
続いて反射部形成手順を説明する。工程の一つとして、蒸着装置4を準備する。蒸着装置4には、スクリーン材料11に反射部を形成するための、形成源としての蒸着源Oが設置されている。ここでは反射部を形成するための形成媒体としての反射物質としてアルミニウムを用いる。また、工程の一つとして、スクリーン材料11を準備する。具体的には、図6(a)に示すように、スクリーン材料11を巻き取り部6と巻き取り部7に巻きつけて、蒸着装置4に配置する。
【0025】
ここで、反射部が前述のような所望の位置に形成されることが必要となる。そのため、蒸着にあたっては、スクリーン材料11の反射部が形成される部位ごとに、蒸着源Oからアルミニウムが射出される方向とスクリーン材料11の反射部が形成される面とが所定の角度となるように、スクリーン材料11の角度を調整する。具体的には、観察面に対して斜めに投影光を射出するプロジェクターの位置を仮想光源位置としてあらかじめ想定しておき、観察面の各位置に対する反射膜材料の蒸着角度が、観察面の各位置に対する仮想光源位置からの投影光の入射角度と等しくなるようにスクリーン材料11を配置するために、以下の条件(1)を満たすようにスクリーン材料11を配置する。
【0026】
条件(1)仮想スクリーン中心と蒸着源O(より具体的には、蒸着源Oの蒸着媒体の射出位置)とを結ぶ直線L1と、スクリーンの延長線L2とが垂直に交わり、さらに仮想スクリーン中心と蒸着源Oの距離D4が一定になるようにする。
【0027】
続いて反射物質の蒸着をスタートさせる。工程の一つとして、アルミニウムが蒸着源から射出される領域にスクリーン材料11を送り出す。具体的には、図6(b)に示すように、巻き取り部6と巻き取り部7と遮蔽部8と遮蔽部9は仮想中心回転軸10を中心に公転し、仮想中心回転軸10は蒸着源Oに近づく方向に平行移動する。また、スクリーン材料11は巻き取り部6と巻き取り部7の自転により、巻き取り部6から巻き取り部7へと移動する。この状態で、蒸着源から、スクリーン材料11の一部ごとに反射部が形成されるように、アルミニウムを射出する。スクリーン材料11へのアルミニウムの蒸着は、スクリーン材料11が巻き取り部6から巻き取り部7へ移動する際の直線部分で行われる。スクリーン材料11の巻き取り部6と巻き取り部7に巻かれている部分は、遮蔽部8と遮蔽部9によってアルミニウムが遮蔽され、蒸着されない。巻き取り部7は、反射部が形成される部位が変わるように、スクリーン材料11を巻き取っていく。
【0028】
ここで、反射部が前述のような所望の位置に形成されることが必要となる。そのため、蒸着にあたっては、スクリーン材料11の反射部が形成される部位ごとに、蒸着源Oからアルミニウムが射出される方向とスクリーン材料11の反射部が形成される面とが所定の角度となるように、スクリーン材料11の角度を調整する。具体的には、観察面に対して斜めに投影光を射出するプロジェクターの位置を仮想光源位置としてあらかじめ想定しておき、観察面の各位置に対する反射膜材料の蒸着角度が、観察面の各位置に対する仮想光源位置からの投影光の入射角度と等しくなるようにスクリーン材料11の角度を調整する。
【0029】
さらに、前述のスクリーン材料の角度の調整が行われるように、前記条件(1)を満たすようにスクリーン材料11と蒸着源O(より具体的には、蒸着源Oの蒸着媒体の射出位置)との相対位置を調整する。
なお、蒸着が行なわれている間は、蒸着源Oとスクリーン材料11の位置関係が条件(1)を満たすように、巻き取り部6と巻き取り部7の自転速度、駆動部5の自転速度、仮想中心回転軸10の平行移動速度を調整する。
【0030】
蒸着においては、蒸着源Oから射出されたアルミニウムがあたる場所だけにアルミニウムの膜が形成される。蒸着源からはアルミニウムの射出は、プロジェクターからの光の射出とほぼ同様の振る舞いとみなすことができる。したがって、上述のように、スクリーン材料11と蒸着源Oとの角度や相対位置を調整して蒸着を行なうことにより、スクリーン材料11に形成された凹部の影響などにより、プロジェクターからの光が当たる場所と当たらない場所との差ができるように、蒸着源からのアルミニウムが当たる(付着する)場所と当たらない(付着しない)場所とができる。これにより、必要な場所にだけ反射部を形成することが可能となる。
【0031】
その後、蒸着を続けながら、駆動部5は動作を続ける。すると図6(c)に示すように、仮想中心回転軸10と蒸着源Oを結ぶ線L1上に、仮想スクリーン中心13がくるが、ここで駆動部5の動作と蒸着は止めずに、そのまま動作を続ける。つまり、仮想中心回転軸10の平行移動の方向のみ反転させ、蒸着源Oから遠ざかる方向にする。そのほかの回転方向は反転させずに動作を続ける。
【0032】
すると、図6(d)を経て、図6(e)の状態となる。ここで、駆動部5の動作を全て反転させる。詳述すると、巻き取り部6と巻き取り部7の自転方向を左回転から右回転へ、駆動部5の自転方向を左回転から右回転へ、仮想中心回転軸10の平行移動方向を蒸着源Oから遠ざかる方向から蒸着源Oに近づく方向へ反転させる。
【0033】
反転後、駆動部5の動作は図6の(e)から(d)、(c)、(b)、(a)へと、これまでとは逆の動作をすることになる。この間も蒸着は続けている。つまり、図6(a)から(e)、(e)から(a)への駆動部5の動作を1つのサイクルとすると、蒸着している間、このサイクルを何度も続ける。そして、スクリーン材料11に蒸着されたアルミニウムの膜厚が所定の膜厚圧になったとき、蒸着をやめ、駆動部5の動作も終了させる。
【0034】
このように常に条件(1)を満たすように巻き取り部6と巻き取り部7の自転速度と駆動部5の自転速度と仮想中心回転軸10の平行移動の速度を制御することで、スクリーン材料11を一面に広げ、前記仮想光源位置に蒸着源Oを置き反射部を形成させたときと同じ反射部を形成することができる。つまり、プロジェクター光が当たるスクリーン材料11の表面にのみ反射部を形成することができ、プロジェクター光が当たらないスクリーン材料11の表面には反射部が形成されない。これにより、外光はほとんど反射せず、プロジェクター光はすべて反射するような、高コントラストスクリーンが製造できる。
【0035】
また、図7(a)は従来の蒸着装置の必要スペースを示し、図7(b)は本実施形態の蒸着装置の必要スペースを示している。本実施形態の蒸着装置ではスクリーンを一面に広げて蒸着せずに理想の反射部を形成することができるので、反射部の形成装置を従来の蒸着装置よりも小さくすることができることがわかる。また、巻き取りながら反射部の形成を行うことで、スクリーン材料11に所定の一部ごとに反射部を形成することができるので、巻取りの速度を調整することにより、従来よりも反射部の膜厚をより均一にすることができる。
【0036】
(変形例)
なお、本実施形態では、駆動部5の動作と蒸着とが連続的に行なわれている。即ち、スクリーン材料11の巻き取りや送り出しによる移動量と、駆動部5や巻き取り部6および巻き取り部7の移動量(即ち、スクリーン材料11と蒸着源Oとの距離)が連動して、連続的に変わっている。これにより、反射部の蒸着の膜厚を均一にし、継ぎ目のない反射部を形成することができる。
一方、駆動部5の動作と蒸着とを段階的に行なってもよい。具体的には、まず、駆動部5を動作させて、スクリーン材料11の巻き取りや送り出しを行い、蒸着される環境に置かれるスクリーン材料11の部分を変化させる設定と、駆動部5の動作により、スクリーン材料11の蒸着される部分に適した蒸着源Oからの位置や角度の調整と、を行なう。その後に、スクリーン材料11に蒸着を行う。そして、スクリーン材料11の設定や調整と蒸着とを繰り返す。この方法によれば、連続的に駆動部を動作させる必要がないため、装置の設定は容易に行なうことができる。
また、スクリーン材料11を巻き取り部6と巻き取り部7との間で往復させずに、一方方向のみの動きのときのみに蒸着を行なってもよい。
【0037】
(エッチングによる反射部形成工程)
前述の実施形態では、反射部の形成を、必要な場所にアルミニウムを蒸着させて行なった。一方、全面に一旦アルミニウムなどの反射媒質を蒸着などで形成した後、必要な部分のアルミニウムのみを露出させて、必要な反射部を形成してもよい。
【0038】
以下、その具体的な実施形態について説明する。
まず、スクリーン材料の観察面に凹部を形成する。次に観察面の全面に蒸着などで反射膜(例えばアルミニウム膜)を形成する。さらに、反射膜の上の全面に、光を吸収する吸収層(例えば黒インクの薄膜)を形成する。
【0039】
本実施形態では、反射部の形成のために、蒸着装置ではなく、吸収層の不要な箇所をエッチングで除去するエッチング装置が使用される。即ち、反射部の形成源として、上述の蒸着源の替わりに、レーザー光源が使用される。また、形成媒体としては、レーザー光が使用される。レーザー光源からは、プロジェクターから射出する光のように、ビーム光ではなく発散する光が射出される。
エッチング装置の構成のうち、スクリーン材料が設置される部分の構成は上述の蒸着装置の場合と同様である。
【0040】
反射膜と吸収層とが形成されたスクリーン材料を上述の実施形態と同様に巻き取り部、巻き取り部に巻きつけて、エッチング装置に設置する。その後は上述の実施形態と同様に、スクリーン材料を送り出しながら、角度や位置を調整し、レーザー光源からレーザー光を射出する。すると、レーザー光が当たる部分のみ吸収層がエッチングされ、反射膜が露出し、反射部が形成される。
【0041】
この実施形態においても、スクリーンを一面に広げてエッチングせずに理想の反射部を形成することができるので、反射部の形成装置を従来の装置よりも小さくすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…プロジェクションシステム、2…スクリーン、3…プロジェクター、20…ベース、21…観察面、22…凹部、23…光反射領域、24…光吸収領域、4…蒸着装置、5…駆動部、6…巻き取り部、61…中心軸、7…巻き取り部、71…中心軸、8…遮蔽部、81…中心軸、9…遮蔽部、91…中心軸、O…蒸着源、11…スクリーン材料、13…スクリーン中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン材料に形成された光を反射する反射部を有するスクリーンの製造方法であって、
前記スクリーン材料に前記反射部を形成させるための形成媒体を射出する形成源を準備する工程と、
前記スクリーン材料を準備する工程と、
前記形成媒体が射出される領域に前記スクリーン材料を送り出す工程と、
送り出された前記スクリーン材料における所定の領域ごとに、前記形成媒体が射出される方向と前記スクリーン材料の前記反射部が形成される面とが所定の角度となるように、前記スクリーン材料の角度を調整する工程と、
前記スクリーン材料の所定の一部ごとに前記反射部が形成されるように、前記形成源から前記形成媒体を射出する工程と、
を有することを特徴とするスクリーンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーンの製造方法において
前記スクリーン材料と前記形成源の前記形成媒体の射出位置との相対位置を変化させる工程と、
前記スクリーン材料を所定の軸を中心として回転させる工程と、
を有することを特徴とするスクリーンの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスクリーンの製造方法において
前記反射部が形成される部位が変わるように、前記スクリーン材料を巻き取る工程を有することを特徴とするスクリーンの製造方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のスクリーンの製造方法において
スクリーンを平面状に広げた場合に前記スクリーンの中心線となる仮想スクリーン中心が、前記スクリーン材料の延長面に対する前記射出位置からの垂線と、前記延長面上との交点に位置し、前記仮想スクリーン中心と前記射出位置の距離は常に一定になるように前記スクリーン材料と前記射出位置の相対位置を調節する工程を有することを特徴とするスクリーンの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のスクリーンの製造方法において
前記形成媒体の射出される方向と前記スクリーン材料の反射部の形成面との角度を、想定させるプロジェクター光の射出される方向と前記スクリーン材料の反射部の形成面との角度と一致するように、前記スクリーン材料の角度を調整する工程を有することを特徴とするスクリーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−175063(P2011−175063A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38407(P2010−38407)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】