説明

スクリーン印刷装置

【課題】スクリーン版に対するスキージの引っ掛かりが少なくなり、印刷環境に応じてスキージに最適な振動を付与する。
【解決手段】スキージ10は、スクリーン版30に対する法線方向に振動を与える振動発生部11と、スキージ10の振動を検出する振動検出部12を備え、スキージ10のスクリーン版30と当接する印刷方向側の部分に曲面部を有している。また、振動量制御部20は、振動検出部12で検出した振動検出信号を入力し、この振動検出信号が印刷開始時に設定手段21で設定された印刷環境情報に基づく振動量で振動しているか否かを判別し、判別した結果、印刷環境情報に基づく最適な振動量で振動しない場合は、その振動量を増減制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の画像パターンが形成されたスクリーン版上に印刷材料を供給し、前記スクリーン版と当接させてスキージを印刷方向に移動し、前記印刷材料を前記画像パターンで被印刷体に転写させるスクリーン印刷装置に係り、特にスキージングの際にスクリーン版に対するスキージの引っ掛かりが少なくなり、印刷環境に応じてスキージに最適な振動が付与できるスクリーン印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な材質(紙、繊維類、金属、ガラス製品、陶器、木材、プラスチック、皮革など)や形状(平面以外に立体面や曲面も含む)で成形され、一般的な印刷方式では印刷が困難な被印刷物(電子部品、工業製品、生活用品など)に対して用いる印刷技術として、スクリーン印刷が知られている。
【0003】
このスクリーン印刷は、まず絹やナイロンなどの繊維材料やステンレスなどの金属素材からなるスクリーンに対し、手工芸的又は工学的方法で孔版を形成したスクリーン版を作製する。次に、インクや導電ペーストなどの印刷材料をスクリーン版に載置し、スキージをスクリーン版に押圧しながら移動させて、孔版の空いたスクリーン紗から印刷材料を抜けさせることで被印刷体に印刷を行う方法である。
【0004】
ところが、スクリーン印刷を行う場合、単に印刷材料をスキージングさせるだけでは印刷材料がスクリーン紗から抜けづらく必要膜厚を確保することが困難であり、被印刷体に転写された印刷材料にムラができるなど均一な印刷が行えないという問題がある。よって、良質で生産性の高い印刷を行うには、印刷材料の抜け性を向上させて必要膜厚を確保し、スムーズにスキージングさせることが重要である。そこで、印刷材料の抜け性を向上させて必要膜厚を確保し、スムーズにスキージングが行なえるスクリーン印刷装置として、例えば下記特許文献1又は2などのスクリーン印刷装置が開発されている。
【0005】
しかしながら、下記特許文献1、2に開示されるスクリーン印刷装置では、スキージヘッド部に超音波振動子を搭載する手法であるため、スキージとスクリーン版に振動が伝わり難く、振動子にかける電流・電圧のパワーが必要となるという問題がある。また、強い振動を得るために振動子にかける電流・電圧のパワーを上げることによる発熱や、電磁気的な雑音が発生する問題が生じるという問題があった。そこで、このような問題を解決するため、下記特許文献3に開示されるスクリーン印刷装置が開発されている。
【0006】
下記特許文献3に開示されたスクリーン印刷方法は、スキージゴム内に圧電バイモルフ構造の振動素子(圧電素子)を組み込んでなり、振動素子からスキージゴムに振動を付与しながら、スクリーン版上のペースト又は印刷材料をスキージングして印刷を行い、発熱や電磁気的な雑音を発生させずにスクリーン紗からの印刷材料の抜け性を向上させ、生産性向上を達成することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−1913号公報
【特許文献2】特開2005−288789号公報
【特許文献3】特開2008−284806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に限らず一般的なスクリーン印刷装置では、スキージの断面形状が方形の形状をした角柱であるため、印刷動作時にこの角張った先端部がスクリーン版に引っ掛かってしまいスキージを印刷方向に移動させづらいという問題があった。特にスクリーン版の材料としてステンレスなどの金属が用いられた場合は、スキージが引っ掛かり易いという問題があった。
【0009】
また、特許文献3のスクリーン印刷装置では、スクリーン紗から印刷材料を抜けさせるためにスキージに対し単一な振動を付与しながら印刷を行っているが、スキージにおけるスクリーン版と当接する印刷方向側の部分が角張っているため、やはりスキージの先端部分がスクリーン版に引っ掛かってスムーズにスキージングできないだけでなく、スキージやスクリーン版を損傷させてしまう虞があった。
【0010】
さらに、印刷の過程において、印刷材料の供給が不均一なことによる供給量の偏りや印刷材料の変質が生じることがある。しかしながら、特許文献3の方法では、振動素子による単調な振動をスキージに与えることで振動させているため、スクリーン版や印刷材料の種類や状態によっては印刷材料がスクリーン紗を抜けるのに必要な押圧が均一に付与できず、必要な印刷膜厚が確保できないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、スクリーン版に引っ掛かることを少なくすることで、スムーズにスキージングでき、且つ印刷環境に応じてスキージに最適な振動が付与できるスクリーン印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載のスクリーン印刷装置は、所望の画像パターンが形成されたスクリーン版上に印刷材料を供給し、前記スクリーン版と当接させてスキージを印刷方向に移動し、前記印刷材料を前記画像パターンで被印刷体に転写させるスクリーン印刷装置において、
前記スキージは、少なくとも前記スクリーン版と当接する前記印刷方向側に曲面部を有し、前記スクリーン版に対する振動を前記曲面部により当該スキージに与える振動発生部を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載のスクリーン印刷装置は、請求項1記載のスクリーン印刷装置において、前記振動発生部は、前記スキージの曲面部に前記スクリーン版に対する法線方向の振動を与えることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載のスクリーン印刷装置は、請求項1又は2記載のスクリーン印刷装置において、前記曲面部は、前記スキージ版と当接する前記スキージの下端部に設けられ、前記スキージの前記印刷方向への移動に伴って回転するスキージローラであること特徴とする。
【0015】
請求項4記載のスクリーン印刷装置は、請求項1〜3の何れかに記載のスクリーン印刷装置において、前記スキージの振動を検出する振動検出部を前記スキージに備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載のスクリーン印刷装置は、請求項1〜4の何れかに記載のスクリーン印刷装置において、前記振動検出部で検出された振動に基づく振動検出信号が、予め設定された振動量閾値を越えたか否かを判別し、この判別結果に基づき前記振動発生部の振動を制御する振動量制御部を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項6記載のスクリーン印刷装置は、請求項5の何れかに記載のスクリーン印刷装置において、前記振動量制御部は、
前記振動発生部の印刷開始時における振動量を決定するための印刷環境情報を設定する設定手段と、
該設定手段で設定された前記印刷環境情報に基づく最適な振動量が予めテーブル化された振動量設定テーブルと、前記スキージの振動量が前記最適な振動量であるか否かを判別するための振動量閾値と、を記憶する記憶手段と、
前記振動検出部からの振動検出信号と前記記憶手段に記憶された振動量閾値とを比較し、前記振動検出信号が前記振動量閾値を越えたとき、前記振動発生部の振動量が前記最適な振動量となるように前記振動発生部の振動量を制御する振動量制御信号を出力する判別制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスクリーン印刷装置によれば、スキージにスクリーン版と当接する印刷方向の前面側の部分に曲面部として、スキージにおけるスクリーン版と接する印刷方向側の部分をR形状に加工した構成やスキージローラとする構成とすることにより、印刷中にスキージがスクリーン版に引っ掛かることが少なくなり、またスキージやスクリーン版の破損を防止することができる。さらに、振動発生部によってスキージにスクリーン版に対する法線方向の振動を与えることで、印刷材料を確実に被印刷体へ転写することができる。
【0019】
さらに、印刷時にスキージの振動を振動検出部で検出し、この検出した振動量に基づきスキージの振動を最適な振動量にするよう振動制御しているため、スクリーン版上の印刷材料の変質や印刷材料の供給量の偏りなどが起こった場合であっても、スキージに対して最適な振動を与えることができ、被印刷体の量産性を高める効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るスクリーン印刷装置の構成を説明するための概略構成図である。
【図2】同スクリーン印刷装置の構成を説明するための概略ブロック図である。
【図3】(a) 同スクリーン印刷装置のスキージ本体における印刷方向側の部分の曲面部としてR形状に加工した構成例を示す説明図である。 (b) 同スクリーン印刷装置のスキージ本体における印刷方向側の部分の曲面部としてスキージローラを設けた構成例を示す説明図である。
【図4】同スクリーン印刷装置で使用する振動量設定テーブルの一例を示す説明図である。
【図5】同スクリーン印刷装置の印刷開始時における各部の処理動作を示すフローチャート図である。
【図6】同スクリーン印刷装置の印刷中における各部の処理動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[スクリーン印刷装置の構成]
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1、2に示すように、本発明に係るスクリーン印刷装置1は、スキージ10、振動量制御部20で概略構成されている。以下、各構成要件について説明する。
【0022】
なお、本例のスクリーン印刷装置1は、不図示の駆動部によって印刷時にスキージ10を自動で駆動する自動スキージングタイプの装置として説明するが、これに限定されることはなく、オペレータが手動でスキージ10を移動させる手動スキージングタイプの構成でも採用することができる。
【0023】
<装置本体の構成>
図1に示すように、スクリーン印刷装置1における装置本体には、所望の画像パターンに対応する微細な貫通孔が厚み方向に形成されたスクリーン版30が配置されるスクリーン配置枠2が設けられている。また、スクリーン配置枠2の両側端部(スキージ10の印刷方向)に沿ってスキージの移動方向を規制するガイド部材3が設けられている。よって、印刷が開始されると、ガイド部材3に沿ってスキージ10が図中に示す印刷方向へ移動してスクリーン版30上に載置された印刷材料(被印刷体40に応じて適宜選択されるインクや導電ペーストなど)をスキージングすることで、貫通孔を透過した印刷材料が被印刷体40に転写される。
【0024】
<スキージの構成>
スキージ10は、その本体に振動発生部11、振動検出部12を備えて構成され、印刷動作に際し、振動量制御部20の制御に基づき所定の振動量で振動しながら印刷方向に移動し、スクリーン版30に載置された印刷材料をスキージングしている。
【0025】
なお、以下の説明において、スキージ10に付与される振動量としては、スクリーン版30に対する法線方向への単位時間当たりの振動回数を示す「振動数」と、スクリーン版30に対する法線方向へのスキージ10の移動変位を示す「振動幅」があり、スキージ10やスクリーン版30の種類、使用環境などに応じて少なくとも何れかを制御する構成である。
【0026】
スキージ10は、断面形状が方形の形状をした角柱で、材料には使用する印刷材料に対する耐久性、耐摩耗性に優れたウレタン樹脂や金属などで形成されている。スキージ10の印刷方向における両側面部(短手方向)には、移動時にスキージ10の位置ずれを防止しながらその移動方向を規制するスキージ支持部材10aが設けられており、このスキージ支持部材10aが固定ピンなどの固定部材10bによって装置本体のガイド部材3に対し、摺動可能に装着されている。そして、印刷に際し、スキージ支持部材10aが装置本体のガイド部材3に沿って摺動することで、これに連れ立ってスキージ10がスクリーン版30上を移動する構成となっている。
【0027】
また、スキージ10は、印刷材料をスクリーン版30に擦りつける際にスクリーン版30との引っ掛かりを防止するとともに、スキージング時にスキージ10が印刷材料に乗り上げないようにするため、スクリーン版30と当接する印刷方向の前面側の部分に曲面部13を有している。すなわち、スキージ10は、印刷時において、スキージ10の印刷方向側に設けられた曲面部13が振動発生部11から付与される振動量によってスクリーン版30と当接することで、スクリーン版30に載置された印刷材料をスキージングしている。
【0028】
なお、この曲面部13の一例としては、図3(a)に示すように、スキージ10におけるスクリーン版30と当接する印刷方向の前面側先端部分をR形状に加工した形状や、図3(b)に示すように、スキージローラを設けた構成としてもよい。
【0029】
このスキージローラは、材質として使用する印刷材料に対する耐久性や耐摩耗性に優れたウレタン樹脂や金属などで形成され、スキージ10と同様にスキージ10の下端部に対して印刷方向と直交し、且つスクリーン版に対して平行に回転可能に軸支されている。図示の例では、スキージ10の底部に配置している。そして、印刷に際し、スキージ10の移動に伴って回転しながらスクリーン版30に載置された印刷材料をスキージングしている。
【0030】
振動発生部11は、圧電素子(電歪素子)、偏心カムモータ、磁歪素子などの所望の振動量が制御可能な振動手段で構成される。振動発生部11は、スクリーン版30に対する法線方向の振動がスキージ10の曲面部13に付与できるよう、スキージ10の所定箇所に設けられている。図1の例では、振動発生部11として圧電素子を1つ設けた構成である。振動発生部11は、振動量制御部20の制御により、所定の振動量でスキージ10を振動させている。
【0031】
振動検出部12は、圧電効果によりスキージ10の振動を電圧に変換する圧電素子(電歪素子)で構成され、スキージ10の振動が検出可能な箇所(スキージ10本体やその近傍)に設けられている。図1の例では、振動検出部12を1つ設けた構成である。振動検出部12は、印刷時におけるスキージ10の振動を検出すると、この振動を電圧に変換し、振動検出信号として振動量制御部20に出力している。
【0032】
<振動量制御部の構成>
振動量制御部20は、振動設定手段21、記憶手段22、判別制御手段23、駆動手段24を備えて構成され、振動発生部11からの振動検出信号に基づきスキージ10に対する振動量を最適に制御している。
【0033】
振動設定手段21は、各種設定ボタンで構成され、オペレータの入力処理により印刷開始時におけるスキージ10の振動量を決定するための印刷環境情報が設定される。この印刷環境情報とは、印刷開始時におけるスキージ10の最適な振動量を決める上で必要となる情報であり、例えば印刷材料情報(使用する印刷材料の粘度、量、種類など)、スキージング処理情報(スクリーン版30の種類やスキージ10の移動速度など)、使用環境情報(印刷開始時の温度や湿度など)があり、装置仕様や使用環境に応じて任意に組み合わせることができる。そして、振動設定手段21は、オペレータが任意に設定した印刷環境情報の設定内容と、記憶手段22に記憶される振動量設定テーブルとを照合し、設定内容に該当した振動量を振動設定情報として判別制御手段23に出力している。これにより、振動発生部11は、振動設定手段21で設定された振動量を基準にスキージ10を振動させている。
【0034】
記憶手段22は、例えば磁気的、光学的記憶媒体若しくはROM、RAMなどの半導体メモリで構成され、振動量制御部20の各部を駆動する制御情報などを記憶している。記憶手段22は、振動設定手段21で設定される印刷環境情報の設定内容に応じて予め実施された実験等の結果に基づき最適な振動量に設定するための情報がテーブル化された振動量設定テーブルを記憶している。
【0035】
振動量設定テーブルの一例としては、図4に示すように、印刷材料情報として印刷材料の粘度を、スキージング処理情報としてスキージ10の移動速度を設定した際に、スキージ10の振動量を5段階(最小、小、標準、大、最大)で制御するテーブルである。すなわち、オペレータの設定内容が「印刷材料情報:軟質、スキージング処理情報:遅い」の場合は振動量が「最小」、「印刷材料情報:硬質、スキージング処理情報:速い」の場合は振動量が「最大」として選択設定される。
【0036】
また、記憶手段22は、振動量設定テーブルで設定されたスキージ10の振動量の各段階(本例では5段階)について、振動量制御時における振動量を一定に保つために設定された振動量閾値(振動量上限閾値、振動量下限閾値)を記憶しており、スキージ10の振動量制御の際に、振動設定手段21において設定された印刷環境情報の設定内容に応じた振動量閾値が用いられる。
【0037】
判別制御手段23は、例えばCPUやRAM、ROMなどのマイクロコンピュータなどで構成され、振動量制御部20を構成する各部の駆動制御を行っている。判別制御手段23は、振動設定手段21で設定された振動設定情報を入力すると、この情報に基づく駆動制御信号を駆動手段24に出力する。
【0038】
また、判別制御手段23は、振動検出部12からの振動検出信号と記憶手段22に記憶されている振動量閾値とを比較し、その判別結果に基づき、振動発生部11の振動量が最適な振動量となるように振動発生部11を制御する振動量制御信号(振動量減少信号、振動量維持信号、振動量増大信号)を駆動手段24に出力している。
【0039】
具体的には、振動検出部12からの振動検出信号が振動量上限閾値を超えていた場合は、スキージ10の振動量を減少させるための振動量減少信号を駆動手段24に出力する。また、振動検出部12からの振動検出信号が振動量閾値の範囲内である場合は、スキージ10の振動量を維持させるための振動量維持信号を駆動手段24に出力する。さらに、振動検出部12からの振動検出信号が振動量下限閾値を超えた場合は、スキージ10の振動量を増大させるための振動量増大信号を駆動手段24に出力する。
【0040】
駆動手段24は、判別制御手段23から駆動制御信号を入力すると、この信号に基づく振動量で振動発生部11を駆動している。また、駆動手段24は、判別制御手段23からの振動量制御信号を入力すると、印刷開始時に振動発生部11の振動量が最適な振動量となるように振動発生部11を駆動している。すなわち、駆動手段24は、振動量減少信号を入力すると、スキージ10の振動量を減少させて最適な振動量とするため、現在の振動量を減少させて振動発生部11を振動させている。また、駆動手段24は、振動量増大信号を入力すると、スキージ10の振動量を増大させて最適な振動量とするため、現在の振動量を増大させて振動発生部11を振動させている。また、駆動手段24は、振動量維持信号を入力すると、印刷開始時に設定した最適な振動量で振動しているため、現在の振動量を維持する振動量で振動発生部11を振動させている。
【0041】
なお、振動量閾値を超えたときの振動量の減少/増大の加減は予め設定されており、振動量減少信号又は振動量増大信号を入力したときは、設定された振動量に減少/増大させて振動発生部11を振動させている。
【0042】
[スクリーン印刷装置の処理動作]
次に、上述した構成によるスクリーン印刷装置1の動作について図5、6を参照しながら説明する。
ここでは、振動発生部11として圧電素子を使用し、振動量として印刷開始時に振動幅固定で駆動周波数が設定され、判別制御手段23からの振動量制御信号に基づき振動数を可変する構成例のスクリーン印刷装置1を用いて、「印刷開始時の処理動作」、「印刷中の処理動作」についてそれぞれ説明する。また、以下の処理動作において、印刷環境情報は、使用する印刷材料の粘度(印刷材料情報)、スキージ10の移動速度(スキージング処理情報)、印刷時の室温(使用環境情報)を用い、振動設定情報は、設定された印刷環境情報に基づく最適な振動量としての振動数が選択される例で説明するが、これに限定されない。
【0043】
<印刷開始時の処理動作>
図5に示すように、印刷を開始するにあたり、まずオペレータが印刷開始時におけるスキージ10の振動量を決定するため、使用する印刷材料の粘度(印刷材料情報)、スキージ10の移動速度(スキージング処理情報)、印刷時の室温(使用環境情報)からなる印刷環境情報を振動設定手段21で設定する(ST1)。そして、設定された印刷環境情報の設定内容に応じた振動量を振動設定情報として判別制御手段23に出力する(ST2)。判別制御手段23が振動設定情報を入力すると、その設定情報に基づく振動を行うための駆動制御信号を駆動手段24に出力し(ST3)、この駆動制御信号に基づき振動発生部11を駆動し(ST4)、スキージ10に所定の振動を発生させている。
【0044】
<印刷中の処理動作>
図6に示すように、印刷が開始されると、スキージ10の振動を振動検出部12が検出すると(ST11)、この検出した振動に基づく振動検出信号を判別制御手段23に出力する(ST12)。そして、判別制御手段23において入力した振動検出信号が記憶手段22に記憶された振動量閾値(振動設定手段21で設定された振動量に対応した値)を超えたか否かの判別をする(ST13)。
【0045】
このとき、振動検出信号が振動量閾値を超えた場合は(ST13−Yes)、次に閾値が振動量上限閾値であるか否かを判別する(ST14)。
一方、振動検出信号が振動量閾値を超えていない場合は(ST13−No)、スキージ10が印刷開始時に設定した振動量で振動していると判別し、駆動手段24に振動量維持信号を出力する(ST15)。そして、駆動手段24は、判別制御手段23からの振動量維持信号に基づき振動発生部11を駆動した後(ST16)、再びST11へ戻る。
【0046】
ST13において、振動量閾値が振動量上限閾値であった場合は(ST14−Yes)、スキージ10の振動量が振動量上限閾値を超えているため、スキージ10の振動量を減少させるための振動量減少信号を駆動手段24に出力する(ST17)。そして、駆動手段24は、判別制御手段23からの振動量減少信号に基づき振動発生部11を駆動した後(ST18)、再びST11へ戻る。
一方、振動量閾値が振動量上限閾値でなかった場合は(ST14−No)、スキージ10の振動量が振動量下限閾値を超えているため、スキージ10の振動量を増大させるための振動量増大信号を駆動手段24に出力する(ST19)。そして、駆動手段24は、判別制御手段23からの振動量増大信号に基づき振動発生部11を駆動した後(ST20)、再びST11へ戻る。
【0047】
このように、上述したスクリーン印刷装置1において、スキージ10は、スクリーン版30に対する法線方向に振動を与える振動発生部11と、スキージ10の振動を検出する振動検出部12を備え、スキージ10のスクリーン版30と当接する印刷方向側の部分に曲面部13を有している。また、振動量制御部20は、振動検出部12で検出した振動検出信号を入力し、この振動検出信号が印刷開始時にオペレータが振動設定手段21で設定した印刷環境情報に基づく振動量で振動しているか否かを比較し、印刷開始時に設定した振動量で振動していない場合は、その振動量を増減制御して最適な振動量となるよう振動発生部11を駆動制御している。
【0048】
すなわち、スキージ10のスクリーン版30と当接する印刷方向側の部分に曲面部13を有していることで、スキージ10が印刷中にスクリーン版30に引っ掛かることが少なくなり、またスキージ10やスクリーン版30の破損を防止するとともに、スムーズにスキージを移動することができる。また、スクリーン版30に対して法線方向の振動を与えることで、スクリーン紗から印刷材料を抜けさせるために必要な押圧が効率的に確保できる。
【0049】
さらに、印刷開始時にスキージ10の振動を振動検出部12で検出した振動検出信号に基づきスキージ10の振動を一定に維持するよう振動制御を行っているため、スクリーン版30上の印刷材料の変質や印刷材料の供給量の偏りなどが起こった場合であっても、使用環境に応じた振動をスキージ10に付与することができ、安定した良質な印刷が行えるスクリーン印刷装置1を提供することができる。
【0050】
ところで、上述した形態では、スキージ10に対して振動発生部11と振動検出部12をそれぞれ1つ設けた例で説明したが、これに限定されることはなく、スキージ10に振動発生部11と振動検出部12をそれぞれ複数設ける構成とすることもできる。このような構成とすることで、振動検出部12が検知した振動を基に振動発生部11ごとに異なる振動を付与する制御をすることで、印刷材料のムラに応じた押圧が可能となり、さらに高性能なスキージグが可能となる。なお、振動発生部11と振動検出部12を複数設ける場合は、各振動発生部11を高精度に制御するため、振動発生部11と振動検出部12とを一対とし、対となる振動発生部11の近傍に振動検出部12を設ける構成とすることが好適である。
【0051】
さらに、振動発生部11に圧電素子を用いた場合には、この圧電素子が振動検出部12の機能を兼ねることができるため、振動検出部12を省略することができ、製造コストが安価になる。
【0052】
また、振動検出部12の構成として圧電素子を用いた構成例で説明したが、例えば電圧発生装置(信号発生器などのフィードバック型アンプ)を用いてもよい。この電圧発生装置を用いた構成の場合は、一般的な発信器のように予め目盛りで強度を設定し、その値に対し出力が変動したかどうかをピックアップして検出することで印刷環境情報に基づく振動量で振動しているか否かを判別し、印刷開始時に設定した振動量で振動していない場合は、その振動量を増減制御して最適な振動量となるよう振動発生部11を駆動制御することができる。
【0053】
さらに、上述した形態では、スキージ10の振動量制御において、振動量閾値を超えたときの振動量の減少/増大の加減は予め設定されており、振動量減少信号又は振動量増大信号を入力したときは、設定された振動量で振動発生部11の振動量を減少/増大させた構成としたが、これに限定されることはない。例えば、印刷開始時から所定周期毎の振動検出信号の振動量と、印刷開始時に設定された振動量に基づく振動量閾値とを比較し、振動量閾値を超えた場合に、振動量閾値との差分に応じた振動量で振動発生部11を駆動制御する構成としてもよい。この構成によれば、印刷材料の偏りや変質が生じた場合でも、各閾値と振動検出信号との差分に応じた最適な振動量の減少/増大を高精度に制御することができる。
【0054】
以上、本願発明における最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1…スクリーン印刷装置
2…スクリーン配置枠
3…ガイド部材
10…スキージ(10a…スキージ支持部材、10b…ガイド部材)
11…振動発生部
12…振動検出部
13…曲面部
20…振動量制御部
21…振動設定手段
22…記憶手段
23…判別制御手段
24…駆動手段
30…スクリーン版
40…被印刷体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の画像パターンが形成されたスクリーン版上に印刷材料を供給し、前記スクリーン版と当接させてスキージを印刷方向に移動し、前記印刷材料を前記画像パターンで被印刷体に転写させるスクリーン印刷装置において、
前記スキージは、少なくとも前記スクリーン版と当接する前記印刷方向側に曲面部を有し、前記スクリーン版に対する振動を前記曲面部により当該スキージに与える振動発生部を備えたことを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記振動発生部は、前記スキージの曲面部に前記スクリーン版に対する法線方向の振動を与えることを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記曲面部は、前記スキージ版と当接する前記スキージの下端部に設けられ、前記スキージの前記印刷方向への移動に伴って回転するスキージローラであること特徴とする請求項1又は2記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記スキージの振動を検出する振動検出部を前記スキージに備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記振動検出部で検出された振動に基づく振動検出信号が、予め設定された振動量閾値を越えたか否かを判別し、この判別結果に基づき前記振動発生部の振動を制御する振動量制御部を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
前記振動量制御部は、
前記振動発生部の印刷開始時における振動量を決定するための印刷環境情報を設定する設定手段と、
該設定手段で設定された前記印刷環境情報に基づく最適な振動量が予めテーブル化された振動量設定テーブルと、前記スキージの振動量が前記最適な振動量であるか否かを判別するための振動量閾値と、を記憶する記憶手段と、
前記振動検出部からの振動検出信号と前記記憶手段に記憶された振動量閾値とを比較し、前記振動検出信号が前記振動量閾値を越えたとき、前記振動発生部の振動量が前記最適な振動量となるように前記振動発生部の振動量を制御する振動量制御信号を出力する判別制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項5記載のスクリーン印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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