説明

スクリーン

【課題】高輝度化を図ることができるスクリーンを提供すること。
【解決手段】画像を形成する光が入射される入射面を有するスクリーンであって、入射面11は、光を反射させる反射領域をそれぞれ有し、入射面11及び当該入射面11の延長面のいずれかの面上の第1基準点P1を中心とする略円状の複数の列L1に沿ってそれぞれ形成される複数の第1凹部と、第1凹部の列L1間に形成され、第1凹部に光を入射させる複数の第2凹部と、を有し、第2凹部のうち、入射面11の中心点と第1基準点P1とを通る仮想の直線である基準線VLを挟んで一方(+X方向)側に位置する第2凹部は、入射面11に沿い、かつ、基準線VLに対する直交方向に沿って、第1基準点P1から他方(−X方向)側に設定された第2基準点P2を中心とする略円状に配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターから投射された画像(投射光)を正面側に位置する観察者に向けて反射させて、当該画像を表示するスクリーンが知られている。このようなスクリーンとして、投射光が下側から斜方入射される正面に微細な凹面部が形成されたスクリーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のスクリーンには、略一定の曲率で形成された凹面部が、正面又は当該正面の延長面上に設定された基準点を中心とする同心円状に複数列形成されている。これら凹面部において投射光が入射される位置には、反射部が形成されており、当該反射部により、入射された画像を観察者側に反射させている。
【0003】
このようなスクリーンには、前述のように、当該スクリーンの下側に位置するプロジェクターから投射光が斜方入射されるので、当該スクリーンにおける下部から上部に向かうに従って、スクリーンの法線に対する投射光の軌跡との角度が大きくなる。このため、スクリーンにおける下部に形成された凹面部では、投射光は、当該凹面部の底部近傍に入射されるが、上部に形成された凹面部では、投射光は、当該凹面部の上端縁近傍に入射されることとなる。この凹面部における上端縁の傾斜は大きいため、当該上端縁近傍に入射された光は、適切に正面側に反射されない場合があり、このような場合には、スクリーンの正面側の必要な範囲全体に投射光が反射されなくなり、スクリーンの視野角を確保することが困難になる。
【0004】
このため、特許文献1に記載のスクリーンでは、凹面部の曲線軌跡同士の間に、更に他の凹面部が形成されている。他の凹面部は、スクリーンにおける上部に形成された凹面部における、入射された投射光を正面側に適切に反射可能な領域(有効反射領域)に、当該投射光を適切に入射させるためのものである。換言すると、当該他の凹面部は、投射光が入射される凹面部における基準点側の端縁の高さを低くするためのものである。このような他の凹面部により、凹面部の底部近傍の有効反射領域に投射光を適切に入射させることができ、スクリーンの視野角を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−96883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記他の凹面部は、凹面部の曲線軌跡同士の間に配置されるため、例えば、前述の基準点を中心とし、当該凹面部の曲線軌跡に沿う同心円状に沿って、当該他の凹面部を形成することが考えられる。この場合、スクリーンの設計が容易である。
しかしながら、凹面部と他の凹面部とを同心円状に形成すると、当該他の凹面部の配置位置が理想の配置位置からずれる。この場合、他の凹面部の中心を上部(基準点から遠い側)に形成された凹面部の中心から離間させて、凹面部の有効反射領域に投射光を入射させる必要があるが、このように他の凹面部を上部に形成された凹面部から離間させると、有効反射領域を有する凹面部を密に配置することが困難となる。このため、有効反射領域以外で投射光が入射される領域の面積が大きくなって、適切でない方向(観察者側でない方向)に光が反射されてしまうことにより、スクリーンの高輝度化を十分に図れないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、高輝度化を図ることができるスクリーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するために、本発明のスクリーンは、画像を形成する光が入射される入射面を有するスクリーンであって、前記入射面は、前記光を反射させる反射領域をそれぞれ有し、前記入射面及び当該入射面の延長面のいずれかの面上に設定された第1基準点を中心とする略円状の複数の列に沿ってそれぞれ形成される複数の第1凹部と、前記第1凹部の列間に形成され、前記第1凹部に前記光を入射させる複数の第2凹部と、を有し、前記第2凹部のうち、前記入射面の中心点と前記第1基準点とを通る仮想の直線である基準線を挟んで一方側に位置する第2凹部は、前記第1基準点から、前記入射面に沿い、かつ、前記基準線に対する直交方向に沿って他方側に設定された第2基準点を中心とする略円状に配列されていることを特徴とする。
【0009】
なお、略円には、「円(真円、正円)」の他にも、「円」を基準として変形させた形状(例えば「楕円」や「自由曲線」によるもの、並びに、これらの組合せ)も含まれる。更には、「楕円」及び「自由曲線」を構成する曲線(例えば、円弧)と直線との組合せ等も含まれる。
【0010】
本発明によれば、第1凹部の列の中心となる第1基準点と、当該第1凹部に光を入射させる第2凹部の列の中心となる第2基準点とは、異なる位置に設定されている。すなわち、第1基準点と入射面の中心点とを通る基準線を挟んで一方側に位置する第2凹部の列の中心である第2基準点は、入射面に沿い、かつ、当該基準線に対する直交方向に沿って、第1基準点から他方側にずれて設定されている。
【0011】
これによれば、第2凹部を、当該第2凹部に対応し、かつ、当該第2凹部上を通過した光が入射される第1凹部に対して理想的な位置に配置することができる。このため、第1凹部に入射された光を観察者側に適切に反射させる領域である有効反射領域を確保したままで、第1凹部の中心と第2凹部の中心との間の距離を短くでき、これらの寸法を小さくできる。換言すると、第1凹部において有効反射領域以外の領域の面積、すなわち、入射された光を観察者側とは異なる方向に反射させる領域の面積を小さくすることができる。従って、第1凹部が有効反射領域を確保しつつ、当該第1凹部及び第2凹部を小さく設計でき、これらによって構成されるレンズを入射面上に密に形成することができる。よって、有効反射領域以外の領域の面積を小さくすることができ、スクリーンの高輝度化を図ることができる。
【0012】
本発明では、前記第2凹部は、前記第1基準点から所定寸法離れた位置から前記第1凹部の列間に形成されることが好ましい。
ここで、第1基準点に近い位置から、スクリーンに画像を投射する場合、当該第1基準点から遠ざかるに従って、入射面の法線に対する光の入射角は大きくなる。このため、第1基準点に近い第1凹部では、当該第1凹部の底部近傍に光が入射され、当該光は、観察者側に反射される。一方、第1基準点から遠い第1凹部では、当該第1凹部の端縁(第1基準点から離間する側の端縁)近傍に光が入射される。この場合、入射面に対する傾斜が大きい部位では、観察者側に適切に光を反射させることができないので、前述の第2凹部を配置することで、第1凹部における底部近傍の領域に光が入射されるための光路を確保して、観察者側に光を反射させる。このように、第1基準点に近い第1凹部には、当該光路を確保するための第2凹部が必要ない。従って、第1基準点に近い領域内に第2凹部が配置されていると、第1凹部を密に配置することができなくなるため、スクリーンの高輝度化が十分に図れない。
これに対し、本発明では、第2凹部は、第1基準点から所定寸法離れた位置から第1凹部の列間に配置されるので、当該所定寸法の範囲内の第1凹部間には、第2凹部は配置されないこととなる。これによれば、当該範囲内においては、第1凹部を密に配置することができる。従って、スクリーンの更なる高輝度化を図ることができる。
【0013】
本発明では、前記第2基準点の位置は、前記第1基準点からの前記第2凹部の距離に応じて、当該第1基準点から離れることが好ましい。
ここで、第2凹部の配置位置と理想的な位置とのずれの方向は、第2基準点から第1基準点に向かう方向であり、当該ずれの量は、第1基準点から離れるに従って大きくなる。
これに対し、本発明では、第1基準点からの第2凹部の距離に応じて、当該第1基準点から離間する方向に第2基準点を設定する。すなわち、第1基準点から遠い第2凹部の列の中心となる第2基準点は、第1基準点に近い第2凹部の列の中心となる第2基準点より第1基準点からより離れる。これによれば、理想的な配置位置からのずれを解消するように第2基準点が設定されるので、第2凹部を理想的な位置により適切に配置できる。従って、更なるスクリーンの高輝度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るスクリーンを示す正面図。
【図2】前記実施形態における第1凹部を示す斜視図。
【図3】前記実施形態における第1凹部及び第2凹部を示す斜視図。
【図4】前記実施形態における第2基準点と第1基準点とのずれを示す図。
【図5】前記実施形態の比較例を示す図。
【図6】前記比較例における理想の中心間距離に対するずれ量を示す図。
【図7】前記実施形態における理想の中心間距離に対するずれ量を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔スクリーンの全体構成〕
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るスクリーン1を示す正面図である。
本実施形態に係るスクリーン1は、正面側下方に位置するプロジェクター(図示省略)から斜方入射される投射光を反射して、当該投射光により形成される画像を表示するものである。このスクリーン1は、正面視略長方形状に形成されており、当該スクリーン1の正面には、投射光が入射される入射面11が形成されている。
【0016】
図2は、入射面11が有する第1凹部21を示す斜視図であり、また、図3は、当該入射面11が有する第1凹部21及び第2凹部22を示す斜視図である。
この入射面11は、当該入射面11の延長面11A上に予め設定された点である第1基準点P1を中心とした所定範囲内の領域111(図1における斜線部分)と、当該領域111外の領域112とを有する。
これらのうち、領域111には、図2に示す第1凹部21のみが複数形成され、領域112内には、図3に示すように、第1凹部21と第2凹部22とが複数形成されている。
なお、本実施形態では、第1基準点P1は、入射面11の中心点Cを通る仮想の直線である基準線VL上に設定されている。
【0017】
〔第1凹部の構成〕
第1凹部21は、投射光が入射される凹曲面である。これら第1凹部21は、図1に示すように、第1基準点P1を中心とする同心円(円及び楕円を含む)の一部に沿って互いに隣接するように、入射面11の全面にわたって形成され、これにより、当該入射面11には、第1凹部21の列L1が複数形成される。これら第1凹部21の内面において、入射された投射光を入射面11の法線方向に反射可能な領域(有効反射領域)を含む領域には、図2及び図3に示すように、高反射性を有する白色塗料をスプレーなどで塗布するか、アルミや銀を斜方から蒸着するなどして形成された反射層21Aが形成されている。
なお、図1においては、第1凹部21の列L1のうち、代表的な列L1を図示しているが、実際には、より細かい間隔で当該列L1は形成されている。また、図1において図示された列L1の符号も一部省略している。
【0018】
〔第1凹部の配置〕
ここで、第1凹部21の各列L1の配置について説明する。
第1凹部21の各列において、詳しい図示を省略するが、第1基準点P1からの放射方向に隣り合う2列間の寸法(以下「縦ピッチ」という場合がある)は、当該第1基準点P1から離れるに従って、次第に大きくなる。このため、第1凹部21の各列において、第1基準点P1に近い2つの隣り合う2列間の寸法より、当該第1基準点P1から離れた2つの隣り合う2列間の寸法の方が大きい。
また、第1凹部21の各列においては、第1基準点P1及び入射面11の中心点Cを結ぶ仮想の直線である基準線VLと、第1基準点P1からの放射方向との角度θが大きくなるに従って、縦ピッチは大きくなる。このため、当該角度θが小さい位置である基準線VL近傍の隣り合う2列間の寸法より、当該角度θが大きい位置である入射面11の隅部近傍の隣り合う2列間の寸法は大きい。
【0019】
次に、同列上の第1凹部21の配置について説明する。
同列上の隣り合う第1凹部21間の寸法(当該列の延出方向の寸法。以下「横ピッチ」という場合がある)は、第1基準点P1から離れるに従って次第に大きくなる。このため、第1基準点P1に近い列における2つの隣り合う第1凹部21間の寸法より、当該第1基準点P1から離れた列における2つの隣り合う第1凹部21間の寸法の方が大きい。
また、第1凹部21の同じ列における横ピッチは、基準線VLと、第1基準点P1からの放射方向との角度θが45度となる位置で最大となり、当該角度が45度から小さくなるに従って、及び、45度から大きくなるに従って、小さくなる。このため、第1凹部21のある列においては、基準線VL近傍及び入射面11の隅部近傍の第1凹部21間の寸法が最小となり、角度θが45度となる位置に配置された第1凹部21間の寸法が最大となる。
【0020】
ここで、第1基準点P1から離れるに従って、横ピッチを増大させる理由について説明する。
前述したように、角度θの増大に従って縦ピッチを増大させると、第1基準点P1から、ある第1凹部21の中心を結ぶ直線と、当該第1凹部21が位置する列の接線に対する垂線との角度にずれが生じる。この角度ずれは、第1基準点P1から離れるほど大きくなり、また、基準線VLから離れるほど大きくなる。このため、角度θが同一となる位置であっても、第1基準点P1に近い位置に形成された第1凹部21と、当該第1基準点P1から離れた位置に形成された第1凹部21とで、入射される投射光を正面側(観察者側)に適切に反射させる領域(有効反射領域)の位置がずれる。
これに対し、第1基準点P1から離れるに従って横ピッチを増大させることで、有効反射領域のずれに応じて第1凹部21を配置できる。
【0021】
また、各列において、角度θが45度となる位置に形成された隣り合う2つの第1凹部21間の寸法(横ピッチ)が最大となり、角度θが45度より増加及び減少するに従って、当該横ピッチが減少するように設定されている。
これによっても、前述の横ピッチの設定と同様に、有効反射領域のずれに応じて第1凹部21を配置できる。
なお、横ピッチを最大とする角度θは、スクリーン1の大きさやプロジェクターとの位置関係等により変化する場合があり、本実施形態のように45度に限らない。
【0022】
〔第2凹部の構成〕
第2凹部22は、前述のように、領域112内の第1凹部21の列L1間に複数形成されている。これら第2凹部22は、図3に示すように、当該第2凹部22における第1基準点P1からの放射方向(図3におけるA方向)先端側に隣接する第1凹部21に、投射光を入射させるためのものである。
【0023】
ここで、投射光が入射面11に下側から斜方入射される場合、投射光の軌跡と入射面11の法線との角度は、当該投射光が入射される入射面11上の位置が投射光の起点(プロジェクターの設置位置)から離れるに従って大きくなる。このため、第2凹部22が形成されていないと、ある第1凹部21の有効反射領域に入射される予定の投射光が、当該第1凹部21の放射方向基端側に位置する他の第1凹部21の端縁により遮られてしまう。この場合、第1凹部21の有効反射領域に投射光が入射されないため、スクリーンの正面側の必要な範囲全体に投射光が反射されなくなり、スクリーンの視野角を確保することが困難になる。
このような問題から、第1凹部21における放射方向基端側に、対応する第1凹部21に応じて第2凹部22を形成することにより、第1基準点P1から離れた位置の第1凹部21における有効反射領域に、投射光を適切に入射させることができ、スクリーン1の視野角を確保することができる。
【0024】
〔第2凹部の配置〕
図4は、第2凹部22を形成する際の第2基準点P2と、第1基準点P1とのずれを示す図である。なお、図1及び図4において示すY方向は、入射面11の延長面11Aに沿い、かつ、第1基準点P1から基準線VLに沿って入射面11に向かう方向であり、+X,−X方向は、延長面11Aに沿い、かつ、Y方向に直交する方向であり、互いに反対側を向く方向である。本実施形態では、図1及び図4において右側に向かう方向を+X方向とし、左側に向かう方向を−X方向とする。また、図1及び図4、並びに、後述する図5において示す点Dは、入射面11において第1基準点P1に最も近い基準線VL上の点である。
このような第2凹部22は、図4に示すように、延長面11A上に予め設定された点である第2基準点P2を中心とする同心円(円及び楕円を含む)の一部に沿って互いに隣接するように形成され、これにより、第1凹部21の列L1間に第2凹部22の1列が形成され、入射面11全体で、第2凹部22の列L2が複数形成される。
【0025】
第2基準点P2は、第1基準点P1とは異なる位置に設定されている。この他、入射面11において、基準線VLを挟んで一方側の領域(図1及び図4における右側の領域11R)に位置する第2凹部22についての第2基準点P2と、他方側の領域(図1における左側の領域11L)に位置する第2凹部22についての第2基準点P2とは、異なる位置に設定されている。
【0026】
詳述すると、入射面11において前述の基準線VLを挟む領域11L,11Rのうち、右側(+X方向)の領域11Rに位置する第2凹部22についての第2基準点P2は、第1基準点P1から領域11Rとは反対側(−X方向)に設定されている。また、図示を省略するが、左側(−X方向)の領域11Lに位置する第2凹部22についての第2基準点P2は、第1基準点P1から領域11Lとは反対側(+X方向)に設定されている。このように、第2凹部22についての第2基準点P2は、基準線VLから当該第2凹部22に向かう方向とは反対方向に、第1基準点P1からずれて設定されている。更に、当該第1基準点P1に対する第2基準点P2の−X方向へのずれ量は、当該第2基準点P2を基準として形成される第2凹部22が、第1基準点P1及び第2基準点P2から離れるに従って大きい。
【0027】
なお、本実施形態では、第1基準点P1に近い位置に形成される第2凹部22についての第2基準点P2は、第1基準点P1と一致するように設定されており、当該第2凹部22が第1基準点P1及び第2基準点P2から離れるに従って、第2基準点P2の第1基準点P1からのずれ量を大きくしている。
また、本実施形態では、第1基準点P1に対する第2基準点P2のY方向へのずれ量を0としているが、当該第2基準点P2に基づいて位置が設定される第2凹部22の第1基準点P1及び第2基準点P2からの距離等に基づいて設定可能である。
【0028】
図5は、本実施形態に対する比較例を示す図である。また、図6は、当該比較例での理想の中心間距離に対するずれ量を示す図である。なお、図6及び後述する図7において、実線は理想の中心間距離(理想値)を示し、一点鎖線は実際の中心間距離を示し、点線は理想値と実際の中心間距離とのずれ量を示している。
ここで、第1基準点P1と第2基準点P2とが一致する場合について説明する。
図5に示すように、第1基準点P1と第2基準点P2とが一致する場合には、第2凹部22の中心と、当該第2凹部22に対応する第1凹部21(第2凹部22に対して放射方向先端側に隣接する第1凹部21)の中心との間の距離(中心間距離)は、図6において一点鎖線で示すように、実線で示す理想値と一致しない。
【0029】
詳述すると、前述の角度θが30度であるときの中心間距離は、理想値と略一致する。しかしながら、図6に点線で示すように、当該角度θが30度から減少及び増大するに従って、当該中心間距離と理想値とのずれ量は大きくなる。これは、第2凹部22が理想的な位置に配置されず、当該第2凹部22及び対応する第1凹部21とにより構成されるレンズの形状が大きくなって理想的でないことを示している。なお、理想的なレンズ形状とは、前述の有効反射領域を確保した際の寸法が最も小さくなるレンズ形状を指す。
このため、個々の第1凹部21内に有効反射領域を確保するためには、第1凹部21及び第2凹部22の寸法をそれぞれ大きくする必要があり、当該第1凹部21及び第2凹部22により構成されるレンズの寸法が大きくなる。これにより、入射面11に、当該レンズを密に配置することができなくなって、当該レンズの数が減少するため、入射される投射光の光量に対して、入射面11の正面側(当該入射面11の法線方向)に反射される光量の比率が高くない。
【0030】
図7は、本実施形態に係る理想の中心間距離に対するずれ量を示す図である。
これに対し、第2凹部22についての第2基準点P2を、基準線VLから当該第2凹部22に向かう方向とは反対方向に、第1基準点P1からずらすことにより、図7に一点鎖線で示すように、第2凹部22の中心と、対応する第1凹部21の中心との距離(中心間距離)を、実線で示す理想値と略一致させることができ、これにより、点線で示すずれ量も小さくできる。
これは、第2凹部22が理想的な位置に配置されていることを示し、これにより、当該第2凹部22及び対応する第1凹部21により構成されるレンズの形状が、理想的なレンズ形状に近いことが示している。従って、入射面11に当該レンズを密に配置することが可能となり、当該レンズの数を多くすることができ、入射される投射光の光量に対して、入射面11の正面側に反射される光量の比率を高めることができる。よって、スクリーン1の高輝度化を図ることができる。
【0031】
以上説明した本実施形態に係るスクリーン1によれば、以下の効果がある。
基準線VLを挟んで+X方向の領域11Rに位置する第2凹部22の列の位置を決定する際の第2基準点P2は、第1基準点P1から−X方向にずれて設定され、また、−X方向の領域11Lに位置する第2凹部22の列の位置を決定する際の第2基準点P2は、第1基準点P1から+X方向にずれて設定される。
これによれば、第2凹部22を、当該第2凹部22に対応する第1凹部21に対して理想的な位置に配置することができ、これにより、有効反射領域を確保したままで、第1凹部21及び第2凹部22を小さくできる。従って、第1凹部21及び第2凹部22により構成されるレンズを入射面11上に密に配置することができるので、有効反射領域の面積を大きくすることができ、スクリーン1の高輝度化を図ることができる。
【0032】
スクリーン1の正面側下方に配置されたプロジェクターから投射光が斜方入射される場合には、第1基準点P1から所定寸法内に配置された第1凹部21の有効反射領域には、第2凹部22が無くても、投射光が直接入射可能である。このため、入射面11においては、第1基準点P1から所定寸法内の領域111には、第2凹部22は形成されず、当該領域111外の領域112に、第1凹部21の列間に第2凹部22の列を形成している。これによれば、領域111内においては、第1凹部21を一層密に配置することができる。従って、スクリーン1の更なる高輝度化を図ることができる。
【0033】
第2基準点P2と第1基準点P1とのずれ量は、当該第2基準点P2に基づいて配置される第2凹部22の第1基準点P1からの距離に応じて設定される。これによれば、第2凹部22の理想的な配置位置からのずれを解消するように、第2基準点P2を設定することができるので、ひいては、第2凹部22を理想的な位置により適切に配置できる。従って、更なるスクリーン1の高輝度化を図ることができる。
【0034】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、第1基準点P1は、入射面11の延長面11A上に設定されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、第1基準点P1の設定位置は、入射面11上であってもよい。
【0035】
前記実施形態では、前述の配置手法によって第1凹部21の配置位置が設定され、これにより、当該第1凹部21の列L1は、第1基準点P1から離れるに従って、X方向の半径がY方向の半径よりも大きくなる楕円軌道に沿う円弧状とされていたが、本発明はこれに限らない。すなわち、第1凹部の各列の軌跡は、第1基準点を中心とする同心円、或いは、当該同心円の一部を構成する円弧状であればよく、更には、当該円弧と直線との組み合わせでもよい。例えば、第1凹部の各列の軌跡は、真円の一部を構成するものであってもよい。
【0036】
前記実施形態では、第2凹部22は、第1基準点P1から所定寸法離れた領域112に形成されているとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、領域111に第2凹部22を形成してもよい。すなわち、入射面に対する投射光の入射角度に応じて、第2凹部の形成範囲を設定すればよい。
【0037】
前記実施形態では、第2基準点P2の位置は、当該第2基準点P2に基づいて設定される第2凹部22の第1基準点P1からの距離に基づいて設定されるとし、当該距離に基づいて、第1基準点P1からの第2基準点P2のずれ量が設定されるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、第2基準点P2の位置は固定されていてもよい。
【0038】
前記実施形態では、第2凹部22は、当該第2凹部22の投射方向先端側の第1凹部21に対して1つ形成されていたが、本発明はこれに限らない。すなわち、複数の第2凹部及び1つの第1凹部により、前述のレンズが構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、画像が投射されるスクリーンに好適に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1…スクリーン、11…入射面、21…第1凹部、22…第2凹部、11A…延長面、C…中心点、L1…列(第1凹部の列)、L2…列(第2凹部の列)、P1…第1基準点、P2…第2基準点、VL…基準線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する光が入射される入射面を有するスクリーンであって、
前記入射面は、
前記光を反射させる反射領域をそれぞれ有し、前記入射面及び当該入射面の延長面のいずれかの面上に設定された第1基準点を中心とする略円状の複数の列に沿ってそれぞれ形成される複数の第1凹部と、
前記第1凹部の列間に形成され、前記第1凹部に前記光を入射させる複数の第2凹部と、を有し、
前記第2凹部のうち、前記入射面の中心点と前記第1基準点とを通る仮想の直線である基準線を挟んで一方側に位置する第2凹部は、前記第1基準点から、前記入射面に沿い、かつ、前記基準線に対する直交方向に沿って他方側に設定された第2基準点を中心とする略円状に配列されている
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーンにおいて、
前記第2凹部は、前記第1基準点から所定寸法離れた位置から前記第1凹部の列間に形成される
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスクリーンにおいて、
前記第2基準点の位置は、前記第1基準点からの前記第2凹部の距離に応じて、当該第1基準点から離れる
ことを特徴とするスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−145686(P2012−145686A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2918(P2011−2918)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】