スクリーン
【課題】高輝度化を図ることができるスクリーンを提供する。
【解決手段】スクリーン1は、画像を形成する光が入射される入射面11を有する。入射面11は、当該光を反射させる反射領域をそれぞれ有し、入射面11及び当該入射面11の延長面のいずれかの面上の基準点Aを中心とする略円状の複数の列に沿ってそれぞれ形成される複数の凹面部を有する。この複数の列のうち、基準点Aに最も近い列は、基準点Aと入射面11の中心点とを結ぶ仮想の基準線Bに沿う方向に長辺を有する楕円軌道に沿って形成されている。
【解決手段】スクリーン1は、画像を形成する光が入射される入射面11を有する。入射面11は、当該光を反射させる反射領域をそれぞれ有し、入射面11及び当該入射面11の延長面のいずれかの面上の基準点Aを中心とする略円状の複数の列に沿ってそれぞれ形成される複数の凹面部を有する。この複数の列のうち、基準点Aに最も近い列は、基準点Aと入射面11の中心点とを結ぶ仮想の基準線Bに沿う方向に長辺を有する楕円軌道に沿って形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターから投射された画像(投射光)を正面側に位置する観察者側に反射して、当該画像を表示するスクリーンが知られている。このようなスクリーンとして、画像が下側から斜方投射される正面に、凹状又は凸状の単位形状部が規則的に配列されたスクリーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のスクリーンは、当該単位形状部の表面のうち投射光が入射される部分に反射膜(反射層)が設けられており、これにより、入射された投射光をスクリーンの正面方向(すなわち、観察者側)に反射させる構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−192871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスクリーンでは、単位形状部の表面に、スクリーンへ下方から斜方入射される投射光を、観察者がいるスクリーンの正面方向に適切に反射させる領域(有効反射領域)と、それ以外の領域とを有することになる。このため、当該有効反射領域を多く確保することで、表示される画像の輝度を高めることが望まれる。
【0005】
本発明は、高輝度化を図ることができるスクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスクリーンは、画像を形成する光が入射される入射面を有するスクリーンであって、前記入射面は、前記光を反射させる反射領域をそれぞれ有し、前記入射面及び当該入射面の延長面のいずれかの面上の基準点を中心とする略円状の複数の列に沿ってそれぞれ形成される複数の凹面部を有し、前記複数の列のうち、前記基準点に最も近い列は、前記基準点と前記入射面の中心点とを結ぶ仮想の基準線に沿う方向に長辺を有する楕円軌道に沿って形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、基準点に最も近い列が、仮想の基準線に沿う方向に長辺を有する楕円(縦楕円)軌道に沿って形成されているため、同列における縦楕円の長辺方向の端部(基準線近傍)における凹面部の寸法を小さくできるので、基準点近傍では凹面部を密に配置できる。
【0008】
また、このような凹面部の列を基準点から設定した場合、スクリーンの隅部では、前述の基準線に直交する方向と凹面部の列の接線との傾斜角が大きくなる。このことから、前述の場合と同様に、当該スクリーンの隅部においても、有効反射領域を確保したまま凹面部の列に沿う方向において隣接する凹面部の寸法を小さくできるので、凹面部を密に配置できる。
従って、入射面全体に凹面部を密に配置することができるので、入射面における有効反射領域を多く確保して投射光をスクリーンの正面側に多く反射できるので、スクリーンの高輝度化を図ることができる。
【0009】
本発明では、前記入射面上における所定の位置を、前記基準線と、前記基準点及び前記所定の位置を通過する仮想の直線とがなす角度により定義する場合に、前記基準点を中心とする放射方向における前記凹面部のピッチは、前記角度が増大するに従って大きくなることが好ましい。
【0010】
ここで、スクリーンに投射光が斜方入射された場合に、スクリーンにより反射される範囲を左右方向に広くして観察者の利便性を高めた場合、凹面部の有効反射領域は、スクリーン上のどの位置の凹面部においても横長となる。スクリーンの正面から見た凹面部の平面形状は、前述した角度が増大するに従って傾いてくる。凹面部の平面形状が傾くほど、横長の有効反射領域を確保するには、凹面部の中心位置間を長くすることになる。
これに対し、本発明によれば、角度が増大するに従って放射方向における凹面部のピッチを増大させるため、スクリーンの正面に向けて効率良く投射光を進行させることができる。
【0011】
本発明では、前記凹面部の列の楕円軌道は、当該列が前記基準点から離れるに従って、前記入射面及び前記入射面の延長面のいずれかの面上で前記基準線に直交する方向に大きくなることが好ましい。
本発明によれば、凹面部の列の楕円軌道が、当該列が基準点から離れるに従って、入射面及び入射面の延長面のいずれかの面上で基準線に直交する方向に大きくなる設定とすることで、前述した角度が増大するに従って凹面部のピッチを大きくする場合と同様、スクリーンの正面に向けて効率良く投射光を進行させることができる。
【0012】
本発明では、前記基準点を中心とする放射方向に隣り合う前記凹面部の列間には、他の凹面部が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、基準点を中心とする放射方向に隣り合う凹面部の列間に、他の凹面部を形成することで、入射面に対する投射光の入射角が小さい場合であっても、基準点から離れた方の凹面部に投射光を入射させることができるので、入射面における有効反射領域を多く確保でき、スクリーンの正面側の必要な範囲全体に投射光が反射され、スクリーンの視野角を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るスクリーンを模式的に示す正面図。
【図2】前記実施形態における入射面の一部を示す拡大図。
【図3】前記実施形態における入射面の一部を示す拡大図。
【図4】前記実施形態における略円の形状の移り変わりを説明するグラフ。
【図5】前記実施形態におけるスクリーンの一部を模式的に示す図。
【図6】比較例におけるスクリーンの一部を模式的に示す図。
【図7】前記実施形態における凹面部の形状を示す図。
【図8】前記比較例における凹面部の形状を示す図。
【図9】前記実施形態における凹面部の形状を示す図。
【図10】前記比較例における凹面部の形状を示す図。
【図11】前記実施形態における凹面部の形状を示す図。
【図12】前記比較例における凹面部の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔スクリーンの全体構成〕
図1は、本実施形態に係るスクリーン1を模式的に示す正面図である。
本実施形態に係るスクリーン1は、当該スクリーン1の正面側の下方に配置されたプロジェクター(図示略)から斜方入射される画像をスクリーン1の正面側に主に反射して、当該画像を表示するものである。このスクリーン1は、図1に示すように、正面視略矩形状に形成されている。
スクリーン1の正面である入射面11は、プロジェクターから入射された光(画像を形成する光)を反射させる面であり、この入射面11には、凹面部2(図2及び図3)が形成されている。
【0015】
〔凹面部の構成〕
図2及び図3は、入射面11の一部を示す拡大図である。換言すると、図2及び図3は、凹面部2を正面側から見た斜視図である。具体的に、図2は、図1に示す基準点Aから近い位置に形成される凹面部2を示し、図3は、当該基準点Aから遠い位置に形成される凹面部2を示す。なお、基準点Aは、入射面11に対する凹面部2の形成位置を決定する際の基準となる点である。本実施形態では、基準点Aは、図1に示すように、入射面11の延長面上に設定されている。例えば、この基準点Aはプロジェクターの設置位置に合わせて設定される。
【0016】
図2及び図3に示すように、入射面11には、複数の凹面部2(凹面部2A,2B)が二次元的に密に形成されている。この凹面部2の表面のうち、プロジェクターからの投射光が入射される位置には、光を反射させる反射層21(反射領域)が形成されている。凹面部2に形成された反射層21は、前述したように、プロジェクターからの投写光を、スクリーン1の正面側にいる観察者に向けて反射させる。具体的に、この反射層21は、凹面部2の表面の有効反射領域(スクリーン1へ下方から斜方入射される投射光を、観察者がいるスクリーン1の正面方向に適切に反射させる領域)に形成される。
反射層21は、例えば、入射面11の表面に高反射性の白色塗料をスプレーなどで塗布するか、アルミや銀を斜方から蒸着することにより形成される。なお、凹面部2の表面のうち、反射層21以外の部分については、黒色に形成するなど、光を吸収する構成とすることで、スクリーン1の上方から斜方入射される蛍光灯の光等の外光の反射を防止できる。
【0017】
〔凹面部の配置〕
ここで、凹面部2が形成される位置について詳しく説明する。
入射面11には、図1から図3に示すように、基準点A(図1)を中心とした略円状の複数の列Mに沿って、互いに隣接するように凹面部2Aが形成されている。具体的には、凹面部2Aは、図2に示すように、当該略円の円周上(各列Mの上)に形成されている。また、凹面部2Aは、基準点Aを中心とする放射方向Dについても、互いに隣接するように形成されている。なお、略円には、「円(真円、正円)」の他にも、「円」を基準として変形させた形状(例えば、「楕円」や「自由曲線」によるもの、並びに、これらの組合せ)も含まれる。更には、「楕円」及び「自由曲線」を構成する曲線(例えば、円弧)と直線との組合せ等も含まれる。
ここで、入射面11の基準点Aから遠い位置では、図3に示すように、放射方向Dに隣り合う凹面部2Aの列M間に、他の凹面部2Bが形成されている。すなわち、各列Mに沿って凹面部2Aが形成されており、放射方向Dにおける凹面部2A間に、当該列Mに沿う他の列M1に沿って、他の凹面部2Bが形成されている。そして、放射方向Dに隣り合う一対の凹面部2Aと凹面部2Bとで、放射方向Dに沿って長形の凹部を構成している。なお、図3に示す境界部BDは、当該凹部における凹面部2Aと凹面部2Bの境界部分である。
【0018】
図1に示すように、複数の列Mのうち、当該基準点Aに最も近い列Mは、基準点Aと入射面11の中心点11Aとを結ぶ直線状の仮想の基準線Bに沿う方向に長辺を有する縦長の楕円軌道に沿って形成されている。また、複数の列Mは、基準点Aから離れるに従って、基準線Bに直交する仮想の直線Cに沿う方向の径が次第に大きくなっている。そして、入射面11における上端側に位置する凹面部2により形成される列Mは、当該直線Cに沿う方向に長辺を有する横長の楕円軌道に沿って形成されている。なお、本実施形態では、直線Cは、スクリーン1の高さ方向の中央を通っており、水平面(図示略)に対して平行となっている。
【0019】
〔凹面部の列の遷移〕
図4は、略円の形状の移り変わりを説明するグラフである。具体的に、図4の縦軸は、基準点Aを中心とする入射面11上における楕円軌道の半径の大きさを示し、横軸は、当該入射面11上における、基準点Aと、基準線B上における列M(または凹面部2)との距離を示す。図4中、三角印で示すグラフは、楕円軌道のX方向の径(半径)を示し、丸印で示すグラフは、楕円軌道のY方向の径(半径)を示している。
この図4を参照して、前述した列Mによる楕円軌道の径の変化について、以下に詳述する。
【0020】
略円状の列Mは、基準点A(0,0)に近い位置では、短辺よりも長辺の方が、Y方向に長い縦楕円であることがわかる。そして、基準点Aからの位置が離れるに従って、短辺と長辺の長さの差が縮まり、基準点AからのX方向及びY方向の位置がそれぞれ約500mmの位置で真円となり、短辺と長辺が入れ替わっていること、すなわち、縦長楕円から横長楕円に切り替わっていることがわかる。つまり、凹面部2の列Mの楕円軌道は、当該列Mが基準点Aから離れるに従って、入射面11上で基準線Bに直交する方向に大きくなるように設定されている。
【0021】
また、凹面部2は、図1に示すように、基準点Aからの放射方向Dに隣接する凹面部2同士のピッチ(以下、単に縦ピッチという。)を、基準点Aから離れるに従って増大させるように配列されている。具体的には、基準点Aに近い位置に形成された凹面部2の縦ピッチP1よりも、基準点Aから離れた位置に形成された凹面部2の縦ピッチP2の方が大きくなっている。
更に、凹面部2は、入射面11上の所定位置と基準点Aとを通過する仮想の直線と、基準線Bとがなす角度θが増大するに従って凹面部2の縦ピッチを増大させるように配列されている。具体的には、角度θが小さい位置に形成された凹面部2の縦ピッチP1より角度θが大きい位置に形成された凹面部2の縦ピッチP3の方が大きくなっている。
【0022】
また、凹面部2は、列Mに沿う方向において隣接する凹面部2同士のピッチ(以下、単に横ピッチという。)を、基準点Aから離れるに従って増大させるように配列されている。具体的には、基準点Aに近い位置に形成された凹面部2の横ピッチQ1よりも、基準点Aから離れた位置に形成された凹面部2の横ピッチQ2の方が大きくなっている。
【0023】
ここで、前述したように、角度θの増大に従って、縦ピッチを増大させると、基準点Aと凹面部2の中心点とを通る直線と、凹面部2を形成した楕円の円周の接線に対する垂直線との角度にずれが生じる。この角度ずれは、基準点Aから離れるほど大きく、外側の円周上に配列された凹面部2ほど大きくずれる。これにより、角度θを同一とする点であっても、内側の円周上に配列された凹面部2と外側の円周上に配列された凹面部2とで、有効反射領域の位置がずれることとなる。
しかしながら、このように基準点Aから離れるに従って、横ピッチを増大させることで、凹面部2同士の重なりを少なくすることができ、凹面部2の端部方向にずれた有効反射領域を確保できる。
【0024】
また、凹面部2は、角度θが略45度となる位置に形成された凹面部2の横ピッチが最大となり、角度θが略45度よりも小さくなるに従って、及び角度θが大きくなるに従って、凹面部2の横ピッチを減少させるように配列されている。具体的には、角度θが略0度や略180度となる位置に形成された凹面部2の横ピッチQ2,Q3よりも、角度θが略45度となる位置に形成された凹面部2の横ピッチQ4のほうが大きくなっている。
これによっても、前述した基準点Aから離れるに従って横ピッチを増大させるのと同様に、ずれが生じる有効反射領域を確保できる。
なお、横ピッチを最大とする角度θは、スクリーン1の大きさやプロジェクターとの位置関係等により変化する場合があり、本実施形態のような略45度に限られない。
【0025】
ここで、前述したように、スクリーン1は、基準点Aに最も近い列Mが、基準点Aと入射面11の中心点11Aとを結ぶ直線状の仮想の基準線Bに沿う方向に長辺を有する縦長の楕円軌道に沿って形成されている。
これによって、以下に説明するように、当該列Mが真円軌跡に沿って形成されていた場合と比較して、有効反射領域を確保するために必要な凹面部2の形状を小さくできる。
【0026】
図5は、スクリーン1の一部(基準線Bの右側部分)を模式的に示す図であり、図6は、本実施形態との比較例であるスクリーン31を模式的に示す図である。ここで、この比較例におけるスクリーン31は、基準点Aに最も近い列Nが真円に沿って形成されている点が、本実施形態のスクリーン1とは相違する。なお、他の構成は、スクリーン1と同様であるため、図6(以降の図も同様)においては、スクリーン1と同一または略同一であり、対応する部分については、同一の符号を付している。
【0027】
本実施形態では、前述したように、基準点Aに最も近い縦楕円の列Mに沿って凹面部2が配列されている。このため、図5に示すように、基準点Aから列MまでのX方向の距離Eは、図6に示す比較例における基準点Aから当該列Mに対応する列NまでのX方向の距離E1よりも小さくなる。
【0028】
図7及び図8は、図5及び図6に示す下端部T1(入射面11の下端側に位置する列M,Nの右端部)における凹面部2,32の形状を示す図である。具体的に、図7は、本実施形態の凹面部2の形状を示し、図8は、比較例における凹面部32の形状を示す。
前述したように、本実施形態における放射方向Dにおける凹面部2の長さ寸法Eが比較例の長さ寸法E1よりも小さくなることで、図7に示すように、有効反射領域22を確保できる凹面部2における放射方向Dの長さ寸法Fを、図8に示す比較例の長さ寸法F1よりも小さくできる。
【0029】
図9及び図10は、図5及び図6に示す下端部T2(入射面11の下端側に位置する列M,Nの上端部)における凹面部2,32の形状を示す図である。具体的に、図9は、本実施形態の凹面部2の形状を示し、図10は、比較例における凹面部32の形状を示す。
前述したように、下端部T1において本実施形態における長さ寸法Fが比較例の長さ寸法F1よりも小さくなることで、図9に示すように、下端部T2における凹面部2においても、有効反射領域22を確保したままで、Y方向の長さ寸法を、図10に示す比較例と比べて小さく設定することができる。特に、凹面部2の上端から有効反射領域22までの距離Gを、図10に示す比較例の距離G1よりも縮めることができる。
【0030】
図11及び図12は、図5及び図6に示す上端部T3(入射面11の上隅部分)における凹面部2,32の形状を示す図である。具体的に、図11は、本実施形態の凹面部2の形状を示し、図12は、比較例における凹面部32の形状を示す。
前述したように、基準点Aに最も近い縦楕円の列Mに沿って凹面部2が配列されているため、本実施形態では、図5に示すように、入射面11の上端部T3におけるX方向に対する傾斜角θ3を、図6に示す比較例の傾斜角θ4よりも大きくなる。
【0031】
すなわち、図11に示すように、X方向に対する凹面部2の傾斜角、すなわち、X方向と凹面部2の列の接線との傾斜角θ5を、図12に示す比較例の傾斜角θ6よりも大きくできる。従って、上端部T3における凹面部2で、有効反射領域22を確保したままで、列Mに沿う方向において隣接する凹面部2の寸法を、図12に示す比較例と比べて小さく設定することができる。特に、凹面部2の左端から有効反射領域22までの距離Hを、図12に示す比較例の距離H1よりも縮めることができる。
以上のように、凹面部2の表面全体に対する有効反射領域22が占める面積の比率を比較例よりも向上できる。また、有効反射領域22を確保する凹面部2を、比較例よりも多く入射面11に設けることができる。
【0032】
以上説明した本実施形態に係るスクリーン1によれば、以下の効果がある。
基準点Aに最も近い列Mが、基準線Bに沿う方向に長辺を有する楕円(縦楕円)軌道に沿って形成されているため、同列Mにおける縦楕円の長辺方向の端部(下端部T2)における凹面部2の寸法を小さくできるので、基準点A近傍では凹面部2を密に配置できる。
【0033】
また、このような凹面部2の列Mを基準点Aから設定した場合、スクリーン1の隅部(上端部T3)では、X方向と凹面部2の列Mの接線との傾斜角θ5が大きくなる。このことから、スクリーン1の隅部においても、有効反射領域22を確保したまま列Mに沿う方向において隣接する凹面部2の寸法を小さくできるので、凹面部2を密に配置できる。
従って、入射面11全体に凹面部2を密に配置することができるので、入射面11における有効反射領域22を多く確保して、投射光をスクリーン1の正面側に多く反射できるので、スクリーン1の高輝度化を図ることができる。
【0034】
また、入射面11上の所定位置と基準点Aとを通過する仮想の直線と、基準線Bとがなす角度θが増大するに従って放射方向Dにおける凹面部2のピッチを増大させるため、スクリーン1の正面に向けて効率良く投射光を進行させることができる。
更に、凹面部2の列Mの楕円軌道が、列Mが基準点Aから離れるに従って、入射面11上で基準線Bに直交する方向(X方向)に大きくなる設定としているので、スクリーン1の正面に向けて効率良く投射光を進行させることができる。
【0035】
更に、放射方向Dに隣り合う凹面部2の列M間に、他の凹面部2Bを形成することで、入射面11に対する投射光の入射角が小さい場合であっても、基準点Aから離れた方の凹面部2Aに投射光を入射させることができるので、入射面11における有効反射領域22を多く確保でき、スクリーン1の正面側の必要な範囲全体に投射光が反射され、スクリーンの視野角を確保することができる。
【0036】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、基準点Aを中心とする略円状の円周上に凹面部2を形成する構成を例示したが、凹面部2は、列Mに沿って形成されていればよく、列Mに沿う方向及び放射方向Dにおいて、それぞれ不規則にずらした位置に形成してもよい。これにより、モアレの発生を抑制し、画質の低下を防ぐことができる。
前記実施形態では、基準点Aを入射面11の延長面上に設けたが、基準点Aの位置は、これに限定されない。例えば、基準点Aは、入射面11上に設けてもよい。
前記実施形態では、列Mの楕円軌道は、当該列Mが基準点Aから離れるに従って、入射面11上で基準線Bに直交する方向に大きくなるとしたが、これに限らず、入射面11の延長面上で大きくなってもよい。
前記実施形態では、基準点Aから離れるにつれて、楕円軌道が縦楕円から横楕円に切り替わる構成としたが、楕円軌道の移り変わりはこれに限らない。例えば、縦楕円から真円に切り替わった位置からは真円にしてもよい。
前記実施形態では、他の凹面部2Bを凹面部2Aに対して1個設けたが、凹面部2Bの数は、これに限らず、複数設けてもよい。
前記実施形態では、基準点Aに最も近い列Mとして、図1、図5等において、列Mのうち、最も内側の列Mを例示したが、もっとも内側の列Mに近い位置の列Mであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係るスクリーンは、プレゼンテーションや動画を表示する場合に有用であり、特に、プロジェクターからの投写像を表示する場合に適している。
【符号の説明】
【0038】
1…スクリーン、2(2A,2B)…凹面部、11…入射面、11A…中心点、A…基準点、B…基準線、C…直線(基準線に直交する直線)、D…放射方向、M,M1…列、θ…角度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターから投射された画像(投射光)を正面側に位置する観察者側に反射して、当該画像を表示するスクリーンが知られている。このようなスクリーンとして、画像が下側から斜方投射される正面に、凹状又は凸状の単位形状部が規則的に配列されたスクリーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のスクリーンは、当該単位形状部の表面のうち投射光が入射される部分に反射膜(反射層)が設けられており、これにより、入射された投射光をスクリーンの正面方向(すなわち、観察者側)に反射させる構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−192871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスクリーンでは、単位形状部の表面に、スクリーンへ下方から斜方入射される投射光を、観察者がいるスクリーンの正面方向に適切に反射させる領域(有効反射領域)と、それ以外の領域とを有することになる。このため、当該有効反射領域を多く確保することで、表示される画像の輝度を高めることが望まれる。
【0005】
本発明は、高輝度化を図ることができるスクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスクリーンは、画像を形成する光が入射される入射面を有するスクリーンであって、前記入射面は、前記光を反射させる反射領域をそれぞれ有し、前記入射面及び当該入射面の延長面のいずれかの面上の基準点を中心とする略円状の複数の列に沿ってそれぞれ形成される複数の凹面部を有し、前記複数の列のうち、前記基準点に最も近い列は、前記基準点と前記入射面の中心点とを結ぶ仮想の基準線に沿う方向に長辺を有する楕円軌道に沿って形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、基準点に最も近い列が、仮想の基準線に沿う方向に長辺を有する楕円(縦楕円)軌道に沿って形成されているため、同列における縦楕円の長辺方向の端部(基準線近傍)における凹面部の寸法を小さくできるので、基準点近傍では凹面部を密に配置できる。
【0008】
また、このような凹面部の列を基準点から設定した場合、スクリーンの隅部では、前述の基準線に直交する方向と凹面部の列の接線との傾斜角が大きくなる。このことから、前述の場合と同様に、当該スクリーンの隅部においても、有効反射領域を確保したまま凹面部の列に沿う方向において隣接する凹面部の寸法を小さくできるので、凹面部を密に配置できる。
従って、入射面全体に凹面部を密に配置することができるので、入射面における有効反射領域を多く確保して投射光をスクリーンの正面側に多く反射できるので、スクリーンの高輝度化を図ることができる。
【0009】
本発明では、前記入射面上における所定の位置を、前記基準線と、前記基準点及び前記所定の位置を通過する仮想の直線とがなす角度により定義する場合に、前記基準点を中心とする放射方向における前記凹面部のピッチは、前記角度が増大するに従って大きくなることが好ましい。
【0010】
ここで、スクリーンに投射光が斜方入射された場合に、スクリーンにより反射される範囲を左右方向に広くして観察者の利便性を高めた場合、凹面部の有効反射領域は、スクリーン上のどの位置の凹面部においても横長となる。スクリーンの正面から見た凹面部の平面形状は、前述した角度が増大するに従って傾いてくる。凹面部の平面形状が傾くほど、横長の有効反射領域を確保するには、凹面部の中心位置間を長くすることになる。
これに対し、本発明によれば、角度が増大するに従って放射方向における凹面部のピッチを増大させるため、スクリーンの正面に向けて効率良く投射光を進行させることができる。
【0011】
本発明では、前記凹面部の列の楕円軌道は、当該列が前記基準点から離れるに従って、前記入射面及び前記入射面の延長面のいずれかの面上で前記基準線に直交する方向に大きくなることが好ましい。
本発明によれば、凹面部の列の楕円軌道が、当該列が基準点から離れるに従って、入射面及び入射面の延長面のいずれかの面上で基準線に直交する方向に大きくなる設定とすることで、前述した角度が増大するに従って凹面部のピッチを大きくする場合と同様、スクリーンの正面に向けて効率良く投射光を進行させることができる。
【0012】
本発明では、前記基準点を中心とする放射方向に隣り合う前記凹面部の列間には、他の凹面部が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、基準点を中心とする放射方向に隣り合う凹面部の列間に、他の凹面部を形成することで、入射面に対する投射光の入射角が小さい場合であっても、基準点から離れた方の凹面部に投射光を入射させることができるので、入射面における有効反射領域を多く確保でき、スクリーンの正面側の必要な範囲全体に投射光が反射され、スクリーンの視野角を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るスクリーンを模式的に示す正面図。
【図2】前記実施形態における入射面の一部を示す拡大図。
【図3】前記実施形態における入射面の一部を示す拡大図。
【図4】前記実施形態における略円の形状の移り変わりを説明するグラフ。
【図5】前記実施形態におけるスクリーンの一部を模式的に示す図。
【図6】比較例におけるスクリーンの一部を模式的に示す図。
【図7】前記実施形態における凹面部の形状を示す図。
【図8】前記比較例における凹面部の形状を示す図。
【図9】前記実施形態における凹面部の形状を示す図。
【図10】前記比較例における凹面部の形状を示す図。
【図11】前記実施形態における凹面部の形状を示す図。
【図12】前記比較例における凹面部の形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔スクリーンの全体構成〕
図1は、本実施形態に係るスクリーン1を模式的に示す正面図である。
本実施形態に係るスクリーン1は、当該スクリーン1の正面側の下方に配置されたプロジェクター(図示略)から斜方入射される画像をスクリーン1の正面側に主に反射して、当該画像を表示するものである。このスクリーン1は、図1に示すように、正面視略矩形状に形成されている。
スクリーン1の正面である入射面11は、プロジェクターから入射された光(画像を形成する光)を反射させる面であり、この入射面11には、凹面部2(図2及び図3)が形成されている。
【0015】
〔凹面部の構成〕
図2及び図3は、入射面11の一部を示す拡大図である。換言すると、図2及び図3は、凹面部2を正面側から見た斜視図である。具体的に、図2は、図1に示す基準点Aから近い位置に形成される凹面部2を示し、図3は、当該基準点Aから遠い位置に形成される凹面部2を示す。なお、基準点Aは、入射面11に対する凹面部2の形成位置を決定する際の基準となる点である。本実施形態では、基準点Aは、図1に示すように、入射面11の延長面上に設定されている。例えば、この基準点Aはプロジェクターの設置位置に合わせて設定される。
【0016】
図2及び図3に示すように、入射面11には、複数の凹面部2(凹面部2A,2B)が二次元的に密に形成されている。この凹面部2の表面のうち、プロジェクターからの投射光が入射される位置には、光を反射させる反射層21(反射領域)が形成されている。凹面部2に形成された反射層21は、前述したように、プロジェクターからの投写光を、スクリーン1の正面側にいる観察者に向けて反射させる。具体的に、この反射層21は、凹面部2の表面の有効反射領域(スクリーン1へ下方から斜方入射される投射光を、観察者がいるスクリーン1の正面方向に適切に反射させる領域)に形成される。
反射層21は、例えば、入射面11の表面に高反射性の白色塗料をスプレーなどで塗布するか、アルミや銀を斜方から蒸着することにより形成される。なお、凹面部2の表面のうち、反射層21以外の部分については、黒色に形成するなど、光を吸収する構成とすることで、スクリーン1の上方から斜方入射される蛍光灯の光等の外光の反射を防止できる。
【0017】
〔凹面部の配置〕
ここで、凹面部2が形成される位置について詳しく説明する。
入射面11には、図1から図3に示すように、基準点A(図1)を中心とした略円状の複数の列Mに沿って、互いに隣接するように凹面部2Aが形成されている。具体的には、凹面部2Aは、図2に示すように、当該略円の円周上(各列Mの上)に形成されている。また、凹面部2Aは、基準点Aを中心とする放射方向Dについても、互いに隣接するように形成されている。なお、略円には、「円(真円、正円)」の他にも、「円」を基準として変形させた形状(例えば、「楕円」や「自由曲線」によるもの、並びに、これらの組合せ)も含まれる。更には、「楕円」及び「自由曲線」を構成する曲線(例えば、円弧)と直線との組合せ等も含まれる。
ここで、入射面11の基準点Aから遠い位置では、図3に示すように、放射方向Dに隣り合う凹面部2Aの列M間に、他の凹面部2Bが形成されている。すなわち、各列Mに沿って凹面部2Aが形成されており、放射方向Dにおける凹面部2A間に、当該列Mに沿う他の列M1に沿って、他の凹面部2Bが形成されている。そして、放射方向Dに隣り合う一対の凹面部2Aと凹面部2Bとで、放射方向Dに沿って長形の凹部を構成している。なお、図3に示す境界部BDは、当該凹部における凹面部2Aと凹面部2Bの境界部分である。
【0018】
図1に示すように、複数の列Mのうち、当該基準点Aに最も近い列Mは、基準点Aと入射面11の中心点11Aとを結ぶ直線状の仮想の基準線Bに沿う方向に長辺を有する縦長の楕円軌道に沿って形成されている。また、複数の列Mは、基準点Aから離れるに従って、基準線Bに直交する仮想の直線Cに沿う方向の径が次第に大きくなっている。そして、入射面11における上端側に位置する凹面部2により形成される列Mは、当該直線Cに沿う方向に長辺を有する横長の楕円軌道に沿って形成されている。なお、本実施形態では、直線Cは、スクリーン1の高さ方向の中央を通っており、水平面(図示略)に対して平行となっている。
【0019】
〔凹面部の列の遷移〕
図4は、略円の形状の移り変わりを説明するグラフである。具体的に、図4の縦軸は、基準点Aを中心とする入射面11上における楕円軌道の半径の大きさを示し、横軸は、当該入射面11上における、基準点Aと、基準線B上における列M(または凹面部2)との距離を示す。図4中、三角印で示すグラフは、楕円軌道のX方向の径(半径)を示し、丸印で示すグラフは、楕円軌道のY方向の径(半径)を示している。
この図4を参照して、前述した列Mによる楕円軌道の径の変化について、以下に詳述する。
【0020】
略円状の列Mは、基準点A(0,0)に近い位置では、短辺よりも長辺の方が、Y方向に長い縦楕円であることがわかる。そして、基準点Aからの位置が離れるに従って、短辺と長辺の長さの差が縮まり、基準点AからのX方向及びY方向の位置がそれぞれ約500mmの位置で真円となり、短辺と長辺が入れ替わっていること、すなわち、縦長楕円から横長楕円に切り替わっていることがわかる。つまり、凹面部2の列Mの楕円軌道は、当該列Mが基準点Aから離れるに従って、入射面11上で基準線Bに直交する方向に大きくなるように設定されている。
【0021】
また、凹面部2は、図1に示すように、基準点Aからの放射方向Dに隣接する凹面部2同士のピッチ(以下、単に縦ピッチという。)を、基準点Aから離れるに従って増大させるように配列されている。具体的には、基準点Aに近い位置に形成された凹面部2の縦ピッチP1よりも、基準点Aから離れた位置に形成された凹面部2の縦ピッチP2の方が大きくなっている。
更に、凹面部2は、入射面11上の所定位置と基準点Aとを通過する仮想の直線と、基準線Bとがなす角度θが増大するに従って凹面部2の縦ピッチを増大させるように配列されている。具体的には、角度θが小さい位置に形成された凹面部2の縦ピッチP1より角度θが大きい位置に形成された凹面部2の縦ピッチP3の方が大きくなっている。
【0022】
また、凹面部2は、列Mに沿う方向において隣接する凹面部2同士のピッチ(以下、単に横ピッチという。)を、基準点Aから離れるに従って増大させるように配列されている。具体的には、基準点Aに近い位置に形成された凹面部2の横ピッチQ1よりも、基準点Aから離れた位置に形成された凹面部2の横ピッチQ2の方が大きくなっている。
【0023】
ここで、前述したように、角度θの増大に従って、縦ピッチを増大させると、基準点Aと凹面部2の中心点とを通る直線と、凹面部2を形成した楕円の円周の接線に対する垂直線との角度にずれが生じる。この角度ずれは、基準点Aから離れるほど大きく、外側の円周上に配列された凹面部2ほど大きくずれる。これにより、角度θを同一とする点であっても、内側の円周上に配列された凹面部2と外側の円周上に配列された凹面部2とで、有効反射領域の位置がずれることとなる。
しかしながら、このように基準点Aから離れるに従って、横ピッチを増大させることで、凹面部2同士の重なりを少なくすることができ、凹面部2の端部方向にずれた有効反射領域を確保できる。
【0024】
また、凹面部2は、角度θが略45度となる位置に形成された凹面部2の横ピッチが最大となり、角度θが略45度よりも小さくなるに従って、及び角度θが大きくなるに従って、凹面部2の横ピッチを減少させるように配列されている。具体的には、角度θが略0度や略180度となる位置に形成された凹面部2の横ピッチQ2,Q3よりも、角度θが略45度となる位置に形成された凹面部2の横ピッチQ4のほうが大きくなっている。
これによっても、前述した基準点Aから離れるに従って横ピッチを増大させるのと同様に、ずれが生じる有効反射領域を確保できる。
なお、横ピッチを最大とする角度θは、スクリーン1の大きさやプロジェクターとの位置関係等により変化する場合があり、本実施形態のような略45度に限られない。
【0025】
ここで、前述したように、スクリーン1は、基準点Aに最も近い列Mが、基準点Aと入射面11の中心点11Aとを結ぶ直線状の仮想の基準線Bに沿う方向に長辺を有する縦長の楕円軌道に沿って形成されている。
これによって、以下に説明するように、当該列Mが真円軌跡に沿って形成されていた場合と比較して、有効反射領域を確保するために必要な凹面部2の形状を小さくできる。
【0026】
図5は、スクリーン1の一部(基準線Bの右側部分)を模式的に示す図であり、図6は、本実施形態との比較例であるスクリーン31を模式的に示す図である。ここで、この比較例におけるスクリーン31は、基準点Aに最も近い列Nが真円に沿って形成されている点が、本実施形態のスクリーン1とは相違する。なお、他の構成は、スクリーン1と同様であるため、図6(以降の図も同様)においては、スクリーン1と同一または略同一であり、対応する部分については、同一の符号を付している。
【0027】
本実施形態では、前述したように、基準点Aに最も近い縦楕円の列Mに沿って凹面部2が配列されている。このため、図5に示すように、基準点Aから列MまでのX方向の距離Eは、図6に示す比較例における基準点Aから当該列Mに対応する列NまでのX方向の距離E1よりも小さくなる。
【0028】
図7及び図8は、図5及び図6に示す下端部T1(入射面11の下端側に位置する列M,Nの右端部)における凹面部2,32の形状を示す図である。具体的に、図7は、本実施形態の凹面部2の形状を示し、図8は、比較例における凹面部32の形状を示す。
前述したように、本実施形態における放射方向Dにおける凹面部2の長さ寸法Eが比較例の長さ寸法E1よりも小さくなることで、図7に示すように、有効反射領域22を確保できる凹面部2における放射方向Dの長さ寸法Fを、図8に示す比較例の長さ寸法F1よりも小さくできる。
【0029】
図9及び図10は、図5及び図6に示す下端部T2(入射面11の下端側に位置する列M,Nの上端部)における凹面部2,32の形状を示す図である。具体的に、図9は、本実施形態の凹面部2の形状を示し、図10は、比較例における凹面部32の形状を示す。
前述したように、下端部T1において本実施形態における長さ寸法Fが比較例の長さ寸法F1よりも小さくなることで、図9に示すように、下端部T2における凹面部2においても、有効反射領域22を確保したままで、Y方向の長さ寸法を、図10に示す比較例と比べて小さく設定することができる。特に、凹面部2の上端から有効反射領域22までの距離Gを、図10に示す比較例の距離G1よりも縮めることができる。
【0030】
図11及び図12は、図5及び図6に示す上端部T3(入射面11の上隅部分)における凹面部2,32の形状を示す図である。具体的に、図11は、本実施形態の凹面部2の形状を示し、図12は、比較例における凹面部32の形状を示す。
前述したように、基準点Aに最も近い縦楕円の列Mに沿って凹面部2が配列されているため、本実施形態では、図5に示すように、入射面11の上端部T3におけるX方向に対する傾斜角θ3を、図6に示す比較例の傾斜角θ4よりも大きくなる。
【0031】
すなわち、図11に示すように、X方向に対する凹面部2の傾斜角、すなわち、X方向と凹面部2の列の接線との傾斜角θ5を、図12に示す比較例の傾斜角θ6よりも大きくできる。従って、上端部T3における凹面部2で、有効反射領域22を確保したままで、列Mに沿う方向において隣接する凹面部2の寸法を、図12に示す比較例と比べて小さく設定することができる。特に、凹面部2の左端から有効反射領域22までの距離Hを、図12に示す比較例の距離H1よりも縮めることができる。
以上のように、凹面部2の表面全体に対する有効反射領域22が占める面積の比率を比較例よりも向上できる。また、有効反射領域22を確保する凹面部2を、比較例よりも多く入射面11に設けることができる。
【0032】
以上説明した本実施形態に係るスクリーン1によれば、以下の効果がある。
基準点Aに最も近い列Mが、基準線Bに沿う方向に長辺を有する楕円(縦楕円)軌道に沿って形成されているため、同列Mにおける縦楕円の長辺方向の端部(下端部T2)における凹面部2の寸法を小さくできるので、基準点A近傍では凹面部2を密に配置できる。
【0033】
また、このような凹面部2の列Mを基準点Aから設定した場合、スクリーン1の隅部(上端部T3)では、X方向と凹面部2の列Mの接線との傾斜角θ5が大きくなる。このことから、スクリーン1の隅部においても、有効反射領域22を確保したまま列Mに沿う方向において隣接する凹面部2の寸法を小さくできるので、凹面部2を密に配置できる。
従って、入射面11全体に凹面部2を密に配置することができるので、入射面11における有効反射領域22を多く確保して、投射光をスクリーン1の正面側に多く反射できるので、スクリーン1の高輝度化を図ることができる。
【0034】
また、入射面11上の所定位置と基準点Aとを通過する仮想の直線と、基準線Bとがなす角度θが増大するに従って放射方向Dにおける凹面部2のピッチを増大させるため、スクリーン1の正面に向けて効率良く投射光を進行させることができる。
更に、凹面部2の列Mの楕円軌道が、列Mが基準点Aから離れるに従って、入射面11上で基準線Bに直交する方向(X方向)に大きくなる設定としているので、スクリーン1の正面に向けて効率良く投射光を進行させることができる。
【0035】
更に、放射方向Dに隣り合う凹面部2の列M間に、他の凹面部2Bを形成することで、入射面11に対する投射光の入射角が小さい場合であっても、基準点Aから離れた方の凹面部2Aに投射光を入射させることができるので、入射面11における有効反射領域22を多く確保でき、スクリーン1の正面側の必要な範囲全体に投射光が反射され、スクリーンの視野角を確保することができる。
【0036】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、基準点Aを中心とする略円状の円周上に凹面部2を形成する構成を例示したが、凹面部2は、列Mに沿って形成されていればよく、列Mに沿う方向及び放射方向Dにおいて、それぞれ不規則にずらした位置に形成してもよい。これにより、モアレの発生を抑制し、画質の低下を防ぐことができる。
前記実施形態では、基準点Aを入射面11の延長面上に設けたが、基準点Aの位置は、これに限定されない。例えば、基準点Aは、入射面11上に設けてもよい。
前記実施形態では、列Mの楕円軌道は、当該列Mが基準点Aから離れるに従って、入射面11上で基準線Bに直交する方向に大きくなるとしたが、これに限らず、入射面11の延長面上で大きくなってもよい。
前記実施形態では、基準点Aから離れるにつれて、楕円軌道が縦楕円から横楕円に切り替わる構成としたが、楕円軌道の移り変わりはこれに限らない。例えば、縦楕円から真円に切り替わった位置からは真円にしてもよい。
前記実施形態では、他の凹面部2Bを凹面部2Aに対して1個設けたが、凹面部2Bの数は、これに限らず、複数設けてもよい。
前記実施形態では、基準点Aに最も近い列Mとして、図1、図5等において、列Mのうち、最も内側の列Mを例示したが、もっとも内側の列Mに近い位置の列Mであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係るスクリーンは、プレゼンテーションや動画を表示する場合に有用であり、特に、プロジェクターからの投写像を表示する場合に適している。
【符号の説明】
【0038】
1…スクリーン、2(2A,2B)…凹面部、11…入射面、11A…中心点、A…基準点、B…基準線、C…直線(基準線に直交する直線)、D…放射方向、M,M1…列、θ…角度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成する光が入射される入射面を有するスクリーンであって、
前記入射面は、前記光を反射させる反射領域をそれぞれ有し、前記入射面及び当該入射面の延長面のいずれかの面上の基準点を中心とする略円状の複数の列に沿ってそれぞれ形成される複数の凹面部を有し、
前記複数の列のうち、前記基準点に最も近い列は、前記基準点と前記入射面の中心点とを結ぶ仮想の基準線に沿う方向に長辺を有する楕円軌道に沿って形成されている
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーンにおいて、
前記入射面上における所定の位置を、前記基準線と、前記基準点及び前記所定の位置を通過する仮想の直線とがなす角度により定義する場合に、前記基準点を中心とする放射方向における前記凹面部のピッチは、前記角度が増大するに従って大きくなる
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスクリーンにおいて、
前記凹面部の列の楕円軌道は、当該列が前記基準点から離れるに従って、前記入射面及び前記入射面の延長面のいずれかの面上で前記基準線に直交する方向に大きくなる
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のスクリーンにおいて、
前記基準点を中心とする放射方向に隣り合う前記凹面部の列間には、他の凹面部が形成されている
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項1】
画像を形成する光が入射される入射面を有するスクリーンであって、
前記入射面は、前記光を反射させる反射領域をそれぞれ有し、前記入射面及び当該入射面の延長面のいずれかの面上の基準点を中心とする略円状の複数の列に沿ってそれぞれ形成される複数の凹面部を有し、
前記複数の列のうち、前記基準点に最も近い列は、前記基準点と前記入射面の中心点とを結ぶ仮想の基準線に沿う方向に長辺を有する楕円軌道に沿って形成されている
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーンにおいて、
前記入射面上における所定の位置を、前記基準線と、前記基準点及び前記所定の位置を通過する仮想の直線とがなす角度により定義する場合に、前記基準点を中心とする放射方向における前記凹面部のピッチは、前記角度が増大するに従って大きくなる
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスクリーンにおいて、
前記凹面部の列の楕円軌道は、当該列が前記基準点から離れるに従って、前記入射面及び前記入射面の延長面のいずれかの面上で前記基準線に直交する方向に大きくなる
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のスクリーンにおいて、
前記基準点を中心とする放射方向に隣り合う前記凹面部の列間には、他の凹面部が形成されている
ことを特徴とするスクリーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−145896(P2012−145896A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6246(P2011−6246)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]