説明

スクリーン

【課題】表示画像の劣化を抑制できるスクリーンを提供すること。
【解決手段】入射された光に応じた画像を表示するスクリーンであって、光が出射される出射面(入射面2)は、それぞれ所定方向に沿う複数の仮想の基準線SL(SL1〜SL4)に応じて設けられる複数のレンズ列LA(LA1〜LA4)を有し、それぞれのレンズ列LA(LA1〜LA4)は、光を出射する複数のレンズ要素3により構成され、レンズ列LAを構成する複数のレンズ要素3のうちの少なくともいずれかは、当該レンズ列LAが沿う基準線SLからずれて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が投射されるスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光が入射される入射面に、入射された光をそれぞれ反射させるレンズ要素が複数形成されたスクリーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のスクリーンでは、基板シートの表面に同一形状の複数の単位形状部が二次元的に規則的に配置され、当該単位形状部は、半球状又は凸レンズ状の凸状部により構成されている。これら単位形状部の表面には、予め想定された位置に配置されるプロジェクターから光が入射される位置に反射面が形成されている。そして、当該スクリーンの斜め前方から投影された投影光は、各単位形状部の反射面で拡散反射され、これにより、投影画像が広い観察範囲で観察可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−215162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の特許文献1に記載のスクリーンでは、単位形状部が二次元的に規則的に配列されているため、隣り合う単位形状部のそれぞれから出射されて所定の観察位置に到達する光の光路が略同じとなり、投影画像にモアレ(干渉縞)やシンチレーションが発生しやすい。このため、表示された画像が劣化しやすいという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、表示画像の劣化を抑制できるスクリーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明のスクリーンは、入射された光に応じた画像を表示するスクリーンであって、前記光が出射される出射面は、それぞれ所定方向に沿う複数の仮想の基準線に応じて設けられる複数のレンズ列を有し、それぞれの前記レンズ列は、前記光を出射する複数のレンズ要素を有し、前記レンズ列を構成する前記複数のレンズ要素のうちの少なくともいずれかは、当該レンズ列が沿う前記基準線からずれて配置されていることを特徴とする。
【0007】
このようなレンズ要素としては、凹状又は凸状の曲面を有する構成を例示できる。
本発明によれば、基準線に沿うレンズ列を構成する複数のレンズ要素のうち、少なくともいずれかは、当該基準線からずれて配置されている。これによれば、基準線からずれて配置されたレンズ要素から出射されて所定の観察位置に到達する光路の長さと、当該レンズ要素近傍の他のレンズ要素のうち、基準線からずれていないレンズ要素から出射されて所定の観察位置に到達する光路の長さとを異ならせることができる。すなわち、基準線からずれていないレンズ要素と、基準線からずれたレンズ要素との間の距離は、基準線からずれていないレンズ要素間の距離に対して異なるので、これらレンズ要素から出射される光の干渉を抑制できる。従って、モアレ(干渉縞)及びシンチレーションの発生を抑制でき、スクリーンに投射されて表示される画像の劣化を抑制できる。
【0008】
本発明では、前記レンズ列が沿う前記基準線と、当該基準線に隣り合う他の前記基準線との間には、当該基準線及び前記他の基準線に沿う仮想線が設定され、前記レンズ列を構成するそれぞれの前記レンズ要素は、当該レンズ列が沿う前記基準線と前記仮想線とのいずれかの線上に中心が位置するように配置されていることが好ましい。
【0009】
このようなレンズ要素の配列としては、1つの基準線に沿う1列のレンズ列を構成する複数のレンズ要素のうち、一部のレンズ要素の中心が当該基準線上に位置するように当該一部のレンズ要素が配置され、他の一部のレンズ要素の中心が仮想線上に位置するように当該他の一部のレンズ要素が配置される配列でもよく、1列のレンズ列を構成する全てのレンズ要素の中心が仮想線上に位置するように当該全てのレンズ要素が配置される配列でもよい。
本発明によれば、1列のレンズ列を構成するレンズ要素のうち、少なくとも一部のレンズ要素の中心が、基準線と当該基準線との間に設定された仮想線上に位置する。これによれば、ある1つのレンズ列において、所定の観察位置に到達する光の光路の長さが異なるレンズ要素を確実に形成できる。従って、表示画像の劣化を確実に抑制できる。
【0010】
ここで、このようなレンズ要素を有するスクリーンは、レンズ要素に応じた凹状のレンズ型を有する母型を製造し、当該母型、或いは、当該母型から製造された中間型のレンズ型を基材に転写することにより製造される場合がある。この際、母型にレンズ型をエッチングにより形成する場合には、レーザー照射等により、母型となる原板の表面に形成されたマスク層にエッチング液を注入する孔を前述の基準線に沿って形成する。
【0011】
しかしながら、1列のレンズ列を構成するレンズ要素の数が比較的多く、また、基準線からのレンズ要素のずれ量がそれぞれランダムに設定されていると、マスク層に孔を形成する孔形成装置の位置調整操作が複雑になる。
これに対し、仮想線及び基準線に沿って孔形成装置の位置調整を行えばよいため、当該孔形成装置の位置調整操作を簡略化できる。従って、本発明のスクリーンの製造工程を簡略化できる。
【0012】
本発明では、前記レンズ列におけるそれぞれの前記レンズ要素の配列は、それぞれの前記レンズ列で略同じであることが好ましい。
本発明によれば、各レンズ列におけるそれぞれのレンズ要素の配列が略同じであるので、スクリーン全体で当該各レンズ列が対応する基準線に沿うこととなる。これによれば、視野角及び明るさ等に基づいて設定された基準線に略一致するように、レンズ列が形成されるので、スクリーンの視野角及び明るさ等をほぼ設計値どおりとすることができる。
【0013】
本発明では、前記レンズ列におけるそれぞれの前記レンズ要素の配列は、当該レンズ列が沿う前記基準線に沿う方向においてランダムであることが好ましい。
本発明によれば、1列のレンズ列を構成する複数のレンズ要素は、当該レンズ列が沿う基準線に交差する方向にばらついて配置されるだけでなく、当該基準線に沿う方向にもばらついて配置される。これによれば、スクリーン全体において各レンズ要素の中心間距離を一層ばらつかせることができる。従って、モアレ及びシンチレーションの発生をより一層確実に抑制でき、ひいては、表示画像の劣化をより一層確実に抑制できる。
【0014】
本発明では、前記複数の基準線は、前記出射面及び当該出射面の延長面上に設定された基準点を中心とする円弧状にそれぞれ設定されていることが好ましい。
本発明によれば、スクリーンに入射される光の光源(例えば、プロジェクター等)が基準点近傍に設定されている場合には、当該基準点を中心とする円弧状に設定された基準線に沿うレンズ列を構成する各レンズ要素には、略同じ光路の長さ、及び、略同じ入射角で当該光が入射される。これによれば、各レンズ要素により、所定の観察位置に光を出射しやすくなるので、当該観察位置から観察した場合のスクリーンの明るさを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスクリーンを示す側面図。
【図2】前記実施形態におけるスクリーンを示す正面図。
【図3】前記実施形態におけるレンズ要素を示す斜視図。
【図4】前記実施形態におけるレンズ要素を示す斜視図。
【図5】(A)前記実施形態におけるレンズ要素の配列パターンを示す入射面の拡大図。(B)前記実施形態における入射面の断面図。
【図6】(A)本発明の第2実施形態に係るスクリーンのレンズ要素の配列パターンを示す入射面の拡大図。(B)前記実施形態における入射面の断面図。
【図7】前記実施形態におけるレンズ列を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るスクリーン1Aを示す側面図である。
本実施形態に係るスクリーン1Aは、図1に示すように、当該スクリーン1Aの正面側下方に位置するプロジェクター9から投射された光を正面側に反射して、当該光により形成される画像を表示する。具体的に、スクリーン1Aの正面は、投射光PLが入射される入射面2であり、当該入射面2の法線方向NMに入射された投射光PLを反射させる。これにより、当該法線方向NMに設定された観察位置VPに位置する観察者VRは、スクリーン1Aに表示された画像を観察できる。なお、入射面2は、入射された光を反射させて当該光を出射する出射面ということもできる。
【0017】
図2は、スクリーン1Aを示す正面図である。
入射面2は、図2に示すように、正面視略長方形状に形成されている。この入射面2は、当該入射面2の延長面2A上に予め設定された基準点SPを中心とした所定範囲内の領域21(図2における斜線部分)と、当該領域21外の領域22とを有する。これら各領域21,22には、後述するレンズ要素3(図3及び図4参照)が配置されている。
具体的に、領域21,22内には、それぞれ基準点SPを中心とする同心円(円及び楕円を含む)の一部を構成する円弧状の仮想の基準線SLに沿って、第1凹部4(図3参照)からなるレンズ要素3Aが配置される。また、領域22内には、第1凹部4と、当該第1凹部4に対して基準点SPの放射方向基端側(基準点SP寄りの位置)に隣接して形成される第2凹部5(図4参照)とにより構成されるレンズ要素3Bが配置される。
【0018】
これら領域21,22に設定される基準線SLの間隔は、基準点SPから離れるに従って大きくなるように設定されており、これにより、基準点SPから離れるに従って、レンズ要素3A,3Bの中心間距離は大きくなる。また、レンズ要素3A,3Bの基準点SPからの放射方向の寸法も、当該基準点SPから離れるに従って大きくなるように設定されている。
なお、図2においては、基準線SLのうち、代表的な基準線SLを図示しているが、実際には、より細かい間隔で当該基準線SLは設定されている。また、図2においては、図示された基準線SLの符号も一部省略している。更に、基準点SPは、本実施形態では、入射面2の中心点CPを通る仮想の直線である中心線CL上に設定されている。
【0019】
〔第1凹部の構成〕
図3は、レンズ要素3Aを示す斜視図である。
第1凹部4により構成されるレンズ要素3Aは、前述の基準線SLに沿って形成され、これにより、領域21には、当該基準線SLに沿う複数のレンズ要素3Aにより構成されるレンズ列が複数形成される。
このようなレンズ要素3Aは、図3に示すように、投射光が入射される所定の曲率の凹曲面をそれぞれ有し、当該凹曲面には、反射層41が形成されている。この反射層41が形成される領域内には、プロジェクター9から入射される投射光を入射面2の法線方向に反射可能な有効反射領域ARが含まれる。このような反射層41は、高反射性を有する白色塗料をスプレー等で塗布するか、或いは、アルミや銀を斜方から蒸着する等して形成される。
【0020】
〔第2凹部の構成〕
図4は、レンズ要素3Bを示す斜視図である。
第1凹部4及び第2凹部5により構成されるレンズ要素3Bは、前述の基準線SLに沿って形成され、これにより、領域22には、当該基準線SLに沿う複数のレンズ要素3Bにより構成されるレンズ列が複数形成される。
これらのうち、第2凹部5は、図4に示すように、第1凹部4に対して基準点SPからの放射方向(例えば、図4に示すA方向)基端側に当該第1凹部4に隣接して形成されている。これら第2凹部5は、当該第1凹部4(詳しくは、有効反射領域AR)に、投射光を入射させる機能を有する。
【0021】
ここで、図1に示したように、入射面2の下側に位置するプロジェクター9から投射光PLが当該入射面2に斜方入射される場合、投射光PLの軌跡(実線)と入射面2の法線方向NM(点線)との角度は、投射光の起点(プロジェクター9の設置位置)から当該投射光が入射される入射面2上の位置が離れるに従って大きくなる。図1の例では、当該角度は、下側から上側に向かうに従って大きくなる。
【0022】
このため、第2凹部5が形成されていないと、ある第1凹部4の有効反射領域ARに入射される予定の投射光が、当該第1凹部4の放射方向基端側に位置する他の第1凹部4の端縁により遮られてしまう。この場合、第1凹部4の有効反射領域ARに投射光が入射されないため、スクリーンの正面側の必要な範囲全体に投射光が反射されなくなり、当該スクリーンの視野角を確保することが困難になる。
このような問題から、第1凹部4における基準点SPからの放射方向基端側に、同じレンズ要素3Bを構成する第2凹部5を形成することにより、基準点SPから離れた位置の第1凹部4における有効反射領域ARに、投射光を適切に入射させることができ、スクリーン1Aの視野角を確保することができる。
【0023】
〔レンズ要素の配列〕
図5(A)は、レンズ要素3の配列パターンを示す入射面2の拡大図であり、図5(B)は、基準点SPからの放射方向における入射面2の断面図である。なお、図5においては、レンズ要素3を円形の要素として図示するが、見易さを考慮して、一部のレンズ要素3に対してのみ符号を付す。
1つの基準線SLに沿って配列される複数のレンズ要素3により構成されるレンズ列においては、当該レンズ列を構成する全てのレンズ要素3が基準線SL上に中心が位置するわけではなく、当該レンズ列を構成するレンズ要素3のうち少なくともいずれかは、中心が基準線SLからずれて配置される。そして、本実施形態では、図5に示すように、全てレンズ要素3の中心が基準線SL上に位置するレンズ列LAと、全てのレンズ要素3の中心が隣り合う他の基準線SLとの間に設定された仮想線VL上に位置するレンズ列LAとが、入射面2に形成されている。
【0024】
具体的に、図5(A)に示す例では、基準線SL(SL1〜SL4)のうち、基準線SL1,SL2,SL4に沿うレンズ列LA(LA1,LA2,LA4)においては、対応する基準線SL上に全てのレンズ要素3の中心が位置するように、当該全てのレンズ要素3が配置される。すなわち、基準線SL1に沿うレンズ列LA1を構成する全てのレンズ要素3の中心は当該基準線SL1上に位置し、基準線SL2,SL4に沿うレンズ列LA2,LA4を構成する全てのレンズ要素3の中心も、それぞれ基準線SL2,SL4上に位置する。
一方、基準線SL3に沿うレンズ列LA3においては、全てのレンズ要素3の中心が、基準線SL3と、当該基準線SL3に隣り合う基準線SL2との間に設定された仮想線VL上に位置するように、当該全てのレンズ要素3が配置される。このような仮想線VLは、当該仮想線VLを挟む基準線SL2,SL3に沿うように設定される。
【0025】
これにより、図5(A)及び図5(B)に示すように、レンズ列LA1,LA2間の距離を「P」とした場合、レンズ列LA2,LA3間の距離は、「P」より小さい「P’」となる。また、レンズ列LA3,LA4間の距離は、「P」より大きい「P’’」となる。従って、基準点SPからの放射方向(図5(A)における矢印A方向)において隣り合うレンズ要素3の中心間距離にばらつきを生じさせることができる。
【0026】
また、各レンズ列LA(LA1〜LA4)を構成する各レンズ要素3は、基準線SL(SL1〜SL4)に沿う方向においてはランダムに配置される。このため、当該各レンズ要素3の中心間距離にばらつきを生じさせることができる。
なお、本実施形態では、各レンズ列LAにおいて、対応する基準線SLに沿う方向の各レンズ要素3の配列をランダムとしたが、各レンズ列LAにおいて、当該各レンズ要素3の配列を揃えてもよい。すなわち、1つのレンズ列LAにおいては、各レンズ要素3の基準線SLに沿う方向の配列はランダムであるが、各レンズ列LAでは、同じ配列パターンによりレンズ要素3が配列されていてもよい。
【0027】
以上のように、入射面2に配置された隣り合うレンズ要素3の中心間距離(前記放射方向における中心間距離及び基準線SLに沿う方向における中心間距離)にばらつきを生じさせることができるので、各レンズ要素3により反射されて観察位置VPに到達する光の光路の長さにばらつきを生じさせることができ、光の干渉を抑制できる。従って、入射面2により反射されて視認される投射画像にモアレ(干渉縞)やシンチレーションが発生することを抑制できる。
【0028】
なお、本実施形態では、基準線SL3に沿うレンズ列LA3を構成するレンズ要素3の中心が位置する仮想線VLを、基準線SL3と、当該基準線SL3から前記放射方向先端側に位置する基準線SL2との間に設定した。しかしながら、これに限らず、基準線SL3と、当該基準線SLから放射方向基端側に位置する基準線SL4との間に設定してもよい。
【0029】
また、基準線SLと仮想線VLとの距離は、当該基準線SLと、この基準線SLに対して隣り合う基準線SLに至るまでの距離の50%以下とすることが好ましい。例えば、図5(A)及び図5(B)に示した例では、基準線SL3と仮想線VLとの距離は、基準線SL3と基準線SL2との距離「P」の50%以下とすることが好ましい。これは、当該距離「P」の50%を超えると、レンズ列LA3の各レンズ要素3が、基準線SL2に沿うレンズ列LA2のレンズ要素3に干渉してしまい、有効反射領域ARの面積が損なわれ、スクリーン1Aの輝度が低下する可能性があるためである。
更に、より好ましくは、基準線SLと仮想線VLとの距離は、当該基準線SLと、この基準線SLに対して隣り合う基準線SLに至るまでの距離の略10%である。このような距離とすることにより、各レンズ要素3において有効反射領域ARの面積を確保でき、スクリーン1Aの輝度低下を抑制できる他、筋状のむらが生じることを抑制できる。
【0030】
以上説明した本実施形態に係るスクリーン1Aによれば、以下の効果がある。
それぞれ対応する基準線SLに沿うレンズ列LAのうち、基準線SL3に沿うレンズ列LA3を構成するレンズ要素3は、当該基準線SL3からずれて配置されている。これによれば、レンズ列LA3のレンズ要素3と、当該レンズ要素3に前記放射方向において隣り合うレンズ要素3(レンズ列LA2,LA4において対応するレンズ要素3)との中心間距離は、それぞれ基準線SL1,SL2上に中心が位置するレンズ要素3(レンズ列LA1,LA2のレンズ要素3)の中心間距離と異ならせることができる。これにより、レンズ列LA3のレンズ要素3により反射されて観察位置VPに到達する光路の長さと、レンズ列LA2,LA4において当該レンズ要素3に隣り合うレンズ要素3により反射されて観察位置VPに到達する光路の長さを異ならせることができる。従って、これらレンズ要素3から出射される光の干渉を抑制できるので、モアレ(干渉縞)及びシンチレーションの発生を抑制でき、表示画像の劣化を抑制できる。
【0031】
基準線SL3からずれて配置されるレンズ要素3(レンズ列LA3を構成するレンズ要素3)は、当該基準線SL3と、この基準線SL3に隣り合う基準線SL2との間に設定された仮想線VL上に中心が位置する。このようなレンズ要素3を成形するための母型を製造する際に、当該レンズ要素3の形成位置に応じた孔をマスク層に形成する必要がある。この際、基準線SL又は仮想線VLに沿って孔形成装置の位置調整を行いつつ、当該孔を形成することができるので、当該孔形成装置の位置調整操作を簡略化できる。従って、スクリーン1Aの製造工程を簡略化できる。
【0032】
1列のレンズ列LAを構成する複数のレンズ要素3は、当該レンズ列LAが沿う基準線SLに交差する方向(前記放射方向)に当該基準線SLからばらついて配置されるだけでなく、当該基準線SLに沿う方向にもばらついて配置される。これによれば、スクリーン1A全体でそれぞれのレンズ要素3の中心間距離を一層ばらつかせることができる。従って、モアレ及びシンチレーションの発生をより一層確実に抑制でき、ひいては、表示画像の劣化をより一層確実に抑制できる。
【0033】
なお、基準線SLに対して配置される各レンズ要素3の配列パターンを、各レンズ列LAにおいて略同じとすることもできる。この場合には、視野角及び明るさ等に基づいて設定された各基準線SLに応じて、各レンズ列LAのレンズ要素3が配置されるので、スクリーン1Aの視野角及び明るさ等をほぼ設計値どおりとすることができる。
【0034】
スクリーン1Aに入射される光の光源の位置(すなわち、プロジェクター9の設置位置)が基準点SP近傍に設定されている場合、各基準線SLに沿うレンズ列LAを構成する各レンズ要素3には、略同じ光路の長さ、及び、略同じ入射角で当該光が入射される。これによれば、各レンズ要素3により、観察位置VPに光を反射させやすくなるので、当該観察位置VPから観察した場合のスクリーン1Aの明るさを向上できる。
【0035】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係るスクリーンについて説明する。
本実施形態に係るスクリーンは、前述のスクリーン1Aと同様の構成及び機能を有する。ここで、当該スクリーン1Aでは、基準線SL3に沿うレンズ列LA3を構成する全てのレンズ要素3の中心は、仮想線VL上に位置していた。これに対し、本実施形態に係るスクリーンでは、基準線に沿うレンズ列は、基準線上に中心が位置するレンズ要素と、仮想線上に中心が位置するレンズ要素とから構成されている。この点で、本実施形態に係るスクリーンと、スクリーン1Aとは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図6(A)は、本実施形態に係るスクリーン1Bの入射面2に配置されたレンズ要素3の配列パターンを示す図であり、図6(B)は、基準点SPからの放射方向における入射面2の断面図である。なお、図6においては、レンズ要素3を円形の要素として図示するが、見易さを考慮して、一部のレンズ要素3に対してのみ符号を付す。
本実施形態に係るスクリーン1Bは、レンズ要素3の配列パターンが異なる他は、前述のスクリーン1Aと同様の構成及び機能を有する。
このスクリーン1Bの入射面2には、図6(A)に示すように、各基準線SL(SL1〜SL4)に沿ってそれぞれ配列される複数のレンズ要素3により、複数のレンズ列LB(LB1〜LB4)が形成されている。そして、それぞれのレンズ列LBを構成する各レンズ要素3は、対応する基準線SLに対してずれて配置されている。
【0037】
図7は、レンズ列LB1,LB2を示す模式図である。
具体的に、レンズ列LBを構成するレンズ要素3は、対応する基準線SLと当該基準線SLに隣り合う基準線SLとの間に設定された仮想線VL、及び、当該基準線SLのいずれかの線状に中心が位置するように配置される。
例えば、図7に示す例では、基準線SL2に沿うレンズ列LB2を構成するレンズ要素3(321〜326)のうち、レンズ要素322,325の中心は、当該基準線SL2上に位置する。また、レンズ要素323,326の中心は、基準線SL2と当該基準線SL2に対して前記放射方向先端側に隣り合う基準線SL1との間に設定された仮想線VL21上に位置する。更に、レンズ要素321,324の中心は、基準線SL2と当該基準線SL2に対して前記放射方向基端側に隣り合う基準線SL3との間に設定された仮想線VL22上に位置する。
【0038】
同様に、基準線SL1に沿うレンズ列LB1を構成するレンズ要素3(311〜316)のうち、レンズ要素312,315の中心は、当該基準線SL1上に位置する。また、レンズ要素313,316の中心は、基準線SL1と当該基準線SL1に対して前記放射方向先端側に隣り合う基準線SL(図示省略)との間に設定された仮想線VL11上に位置する。更に、レンズ要素311,314の中心は、基準線SL1と当該基準線SL1に対して前記放射方向基端側に隣り合う基準線SL2との間に設定された仮想線VL12上に位置する。
【0039】
以上のように、1つのレンズ列LBを構成するレンズ要素3の少なくともいずれかは、対応する基準線SLに対して中心がずれ、当該中心が当該基準線SLと隣り合う基準線SLとの間に設定された仮想線上に位置するように配置される。これにより、同じレンズ列LBにおいて隣り合うレンズ要素3の中心間距離が一様でなく複数となり、当該中心間距離にばらつきを生じさせることができるので、投射画像にモアレ(干渉縞)やシンチレーションが生じることを抑制できる。
【0040】
ここで、基準線SLに対する仮想線VLのずれ量は、前述のスクリーン1Aと同様に、基準線SLから当該基準線SLに隣り合う基準線SLまでの距離の50%以下(より好ましくは略10%)に設定されている。しかしながら、当該仮想線VLのずれ量は、各基準線SLで略同じである。このため、あるレンズ列LBを構成するレンズ要素3と、当該レンズ要素3に対して前記放射方向で隣り合うレンズ要素3との中心間距離は、当該レンズ列LBにおいて略同じである。
具体的に、基準線SL2に対する仮想線VL21のずれ量と、基準線SL1に対する仮想線VL11のずれ量とは同じである。また、基準線SL2に対する仮想線VL22のずれ量と、基準線SL1に対する仮想線VL12のずれ量とは同じである。
【0041】
このため、基準線SL2と基準線SL1との距離を「P」とすると、当該基準線SL2上に中心が位置するレンズ要素322と、基準線SL1上に中心が位置し、かつ、当該レンズ要素322に対して前記放射方向で隣り合うレンズ要素312との中心間距離は「P」である。
また、仮想線VL21上に中心が位置するレンズ要素323と、仮想線VL11上に中心が位置し、かつ、レンズ要素323に対して前記放射方向で隣り合うレンズ要素313との中心間距離は「P」となる。
【0042】
更に、仮想線VL22上に中心が位置するレンズ要素321と、仮想線VL12上に中心が位置し、かつ、当該レンズ要素321に対して前記放射方向に隣り合うレンズ要素311との中心間距離は「P」となる。
同様に、レンズ要素324とレンズ要素314との中心間距離、レンズ要素325とレンズ要素315との中心間距離、及び、レンズ要素326とレンズ要素316との中心間距離も、それぞれ同じ「P」となる。
【0043】
従って、図6(A)、図6(B)及び図7に示すように、あるレンズ列LBを構成するレンズ要素3と、当該レンズ要素3に対して前記放射方向に隣り合うレンズ要素3との中心間距離は、同じレンズ列LBにおいて略同じ値となる。
このため、ある1列のレンズ列LBにおけるレンズ要素3の配列を見た場合、当該各レンズ要素3は、基準線SLに沿う方向においてはランダムに配置されるが、当該基準線SLに沿う方向の配列パターンは、各レンズ列LBで同じとなる。具体的に、図6(A)に示すように、各レンズ列LB1〜LB4におけるレンズ要素3の配列パターンは、それぞれ略同じとなる。
【0044】
しかしながら、図2に示したように、基準点SPに近い位置の基準線SLの軌跡は真円の一部を構成する円弧に近いが、基準点SPから離れた位置の基準線SLの軌跡は、入射面2の長手方向に長辺を有する楕円の一部を構成する円弧に近くなる。そして、当該長辺の長さは、基準線SLの位置が基準点SPから離れるに従って大きくなる。換言すると、基準線SLの軌跡は、当該基準線SLの位置が基準点SPから離れるに従って、入射面2の長手方向に延出する直線に近くなる。
このため、各レンズ列LBにおいては、レンズ要素3の位置が中心線CL(図2参照)から外側に向かうに従って、当該レンズ要素3に対して前記放射方向に隣り合うレンズ要素3との中心間距離は、僅かに大きくなる。
【0045】
以上説明した本実施形態に係るスクリーン1Bによれば、前述のスクリーン1Aと同様の効果を奏することができる他、以下の効果がある。
基準線SL2に沿う各レンズ列LB2には、当該基準線SL2上に中心が位置するレンズ要素322,325の他、基準線SL2と、当該基準線SL2に対して前記放射方向先端側で隣り合う基準線SL1との間に設定された仮想線VL21上に中心が位置するレンズ要素323,326、及び、基準線SL2と、当該基準線SL2に対して前記放射方向基端側で隣り合う基準線SL3との間に設定された仮想線VL22上に中心が位置するレンズ要素321,324が含まれる。これによれば、前述のスクリーン1Aに比べ、レンズ列LBを構成するレンズ要素3の配列を基準線SLに対して更にばらつかせることができるので、各レンズ要素3の中心間距離を更にばらつかせることができる。従って、投射画像にモアレ(干渉縞)やシンチレーションが生じることをより一層抑制でき、表示される画像の劣化をより確実に抑制できる。
【0046】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、各レンズ列LA,LBにおいて、対応する基準線SLに沿う方向のレンズ要素3の配列パターンはランダムであるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、1つのレンズ列において、隣り合うレンズ要素3間の距離がそれぞれ同じとなるように各レンズ要素3を配置してもよく、また、所定の規則性を持たせ、周期的な繰り返し配列となるように、各レンズ要素3を配列してもよい。
【0047】
前記第2実施形態では、レンズ列LBにおけるレンズ要素3の配列パターンは、各レンズ列LBで略同じであるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、レンズ列LAの場合と同様に、レンズ要素3の配列パターンを、各レンズ列LBでそれぞれ異ならせてもよい。また、前述のように、レンズ要素3の配列パターンを、レンズ列LAのそれぞれで略同じとしてもよい。
【0048】
前記第2実施形態では、各レンズ列LBを構成するレンズ要素3は、対応する基準線SLと当該基準線SLに隣り合う基準線SLとの間に設定された仮想線VLと、当該対応する基準線SLとから選択された線上に中心が位置するように配列されるとしたが、本発明はこれに限らない。換言すると、前記第2実施形態では、1列のレンズ列LBにおける各レンズ要素3の前記放射方向の位置は、ランダムに設定されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、当該各レンズ要素3を、所定の規則性を持たせ、周期的な繰り返しとなるように配列してもよい。例えば、前述のレンズ列LB2を構成する各レンズ要素3を、当該レンズ要素3の中心が、仮想線VL21、基準線SL2、仮想線VL22、基準線SL、仮想線VL21、…、の各線上に順に位置するように配列して、各レンズ要素3を基準線SLに対してジグザグとなるように配列してもよい。また、当該各レンズ要素3の中心が仮想線VL21、基準線SL2、仮想線VL22、仮想線VL21、…、の各線上に順に位置するようにレンズ要素3を配列してもよい。更に、各レンズ要素3の中心が仮想線VL22、基準線SL2、仮想線VL21、仮想線VL22、の各線上に順に位置するように、レンズ要素3を配列してもよい。他のレンズ列LBにおいても同様である。
【0049】
前記第2実施形態では、基準線SL2と、当該基準線SL2に前記放射方向先端側において隣り合う基準線SL1との間に1つの仮想線VL21を設定し、基準線SL2と、当該基準線SL2に前記投射方向基端側において隣り合う基準線SL3との間に1つの仮想線VL22を設定したが、本発明はこれに限らない。すなわち、基準線SLに応じて設定される仮想線VLは、当該基準線SLの放射方向先端側にのみ設定されてもよく、或いは、放射方向基端側にのみ設定されてもよい。更に、基準線SLに応じて設定される仮想線VLの数も、適宜設定可能である。
【0050】
前記各実施形態では、基準線SLは、基準点SPを中心とする円(真円及び楕円を含む)の一部を構成する円弧状に設定されていたが、本発明はこれに限らない。すなわち、入射面において各基準線が互いに平行に設定されていてもよい。また、当該基準線SLの形状も、円弧及び曲線と、直線との組み合わせであってもよく、基準点を中心として間隔を異にして設定されていればよい。
【0051】
前記各実施形態では、基準線SLの中心となる基準点SPは、入射面2の延長面2A上に設定されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、入射面2上に基準点SPを設定してもよい。
前記各実施形態では、スクリーン1A,1Bは、凹状のレンズ要素3を有する構成であったが、本発明はこれに限らない。すなわち、当該凹状のレンズ要素3に代えて、凸状のレンズ要素を有するスクリーンとして構成してもよい。
【0052】
前記各実施形態では、スクリーン1A,1Bは、正面側に位置するプロジェクター9から投射された光を正面側に反射する反射型スクリーンとして構成されていたが、本発明はこれに限らない。すなわち、背面側から入射される光を透過させて、当該光により形成される画像を表示する透過型スクリーンとして構成してもよい。この場合、スクリーンの背面が入射面として機能し、正面が出射面として機能する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、画像を表示するスクリーンに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1A,1B…スクリーン、2…入射面(出射面)、3(3A,3B)…レンズ要素、LA(LA1〜LA4),LB(LB1〜LB4)…レンズ列、SL(SL1〜SL4)…基準線、SP…基準点、VL(VL11,VL12,VL21,VL22)…仮想線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された光に応じた画像を表示するスクリーンであって、
前記光が出射される出射面は、それぞれ所定方向に沿う複数の仮想の基準線に応じて設けられる複数のレンズ列を有し、
それぞれの前記レンズ列は、前記光を出射する複数のレンズ要素を有し、
前記レンズ列を構成する前記複数のレンズ要素のうちの少なくともいずれかは、当該レンズ列が沿う前記基準線からずれて配置されている
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーンにおいて、
前記レンズ列が沿う前記基準線と、当該基準線に隣り合う他の前記基準線との間には、当該基準線及び前記他の基準線に沿う仮想線が設定され、
前記レンズ列を構成するそれぞれの前記レンズ要素は、当該レンズ列が沿う前記基準線と前記仮想線とのいずれかの線上に中心が位置するように配置されている
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスクリーンにおいて、
前記レンズ列におけるそれぞれの前記レンズ要素の配列は、それぞれの前記レンズ列で略同じである
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のスクリーンにおいて、
前記レンズ列におけるそれぞれの前記レンズ要素の配列は、当該レンズ列が沿う前記基準線に沿う方向においてランダムである
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のスクリーンにおいて、
前記複数の基準線は、前記出射面及び当該出射面の延長面上に設定された基準点を中心とする円弧状にそれぞれ設定されている
ことを特徴とするスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−185372(P2012−185372A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49126(P2011−49126)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】