説明

スケールの除去方法及び給湯器

【課題】熱交換器の伝熱面に付着したスケールを簡易且つ効果的に除去することが可能なスケールの除去方法を提供する。
【解決手段】熱交換器の伝熱面に付着したスケールの除去方法であって、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種の水溶性高分子を溶解した水溶液を前記伝熱面に接触させて乾燥することにより、前記水溶液の水分蒸発に伴う体積収縮によって前記水溶性高分子の膜中に前記スケールを取り込みつつ前記スケールを前記伝熱面から剥離させることを特徴とするスケールの除去方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器などにおける熱交換器の伝熱面に付着したスケールの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、熱源からの熱を熱交換器の伝熱管を通る水又は伝熱管の周囲の水に与えて昇温することで給湯を行っている。しかし、水道水などを昇温する場合、水中のミネラル成分(例えば、カルシウムなど)が特定の条件下で濃縮され、伝熱管の表面にスケールとして付着する。このスケールの付着は、熱交換器の熱交換効率を低下させると共に、伝熱管の通水に支障をきたすこともある。
【0003】
スケール付着の問題を解決する方法として、様々な技術が提案されると共に実用化されている。例えば、付着したスケールを薬剤で処理することによって溶解除去する方法(例えば、特許文献1参照)や、付着したスケールを超音波振動などの物理的手法で除去する方法(例えば、特許文献2参照)などがある。その他、水中のミネラル成分を低減する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−154790号公報
【特許文献2】特開2010−175160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薬剤を用いる方法は、酸性の水溶液や特殊な薬液が必要になる場合が多く、一般家庭内で容易に使用することができないという問題がある。また、物理的手法を用いる方法は、複雑な構造を有する熱交換器の伝熱面に付着したスケールを確実且つ十分に除去することが難しいという問題がある。さらに、その他の方法でも、スケールの除去効果を確実且つ十分に得ることはできていない。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、熱交換器の伝熱面に付着したスケールを簡易且つ効果的に除去することが可能なスケールの除去方法及び給湯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の水溶性高分子を溶解した水溶液を熱交換器の伝熱面に接触させて乾燥することにより、水溶液の水分蒸発に伴う体積収縮を生じさせ、熱交換器の伝熱面に付着したスケールを水溶性高分子の膜と共に簡易且つ効果的に除去し得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、熱交換器の伝熱面に付着したスケールの除去方法であって、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種の水溶性高分子を溶解した水溶液を前記伝熱面に接触させて乾燥することにより、前記水溶液の水分蒸発に伴う体積収縮によって前記水溶性高分子の膜中に前記スケールを取り込みつつ前記スケールを前記伝熱面から剥離させることを特徴とするスケールの除去方法である。
また、本発明は、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種の水溶性高分子を溶解した水溶液と、空気とを熱交換器の伝熱面に供給するための少なくとも1つの注入口を具備することを特徴とする給湯器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱交換器の伝熱面に付着したスケールを簡易且つ効果的に除去することが可能なスケールの除去方法及び給湯器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1のスケールの除去方法を説明するための、熱交換器の伝熱管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
本実施の形態のスケールの除去方法(以下、「スケール除去方法」という。)は、熱交換器の伝熱面に付着したスケールを対象とする。
本明細書において「熱交換器」とは、温度の高い物体から低い物体へ効率的に熱を移動させる機器のことを意味する。この熱交換器は、給湯器、空気調和機、ボイラーなどにおいて一般に具備されているものであればよく、その種類は特に限定されない。また、本明細書において「熱交換器の伝熱面」とは、熱交換器の熱交換作用を担う伝熱部分(例えば、伝熱管など)の表面のことを意味する。この熱交換器の伝熱面も特に限定されず、例えば、管状、球状、円筒状、箱状などの伝熱部分の内表面又は外表面や、平面状の伝熱部分の表面などが挙げられる。
【0011】
給湯器において水道水などを昇温させる場合、水中のミネラル成分(例えば、カルシウムなど)の濃度が徐々に高くなり、飽和点を超えるとスケールとしてミネラル成分が熱交換器の伝熱面に析出する。このスケールは、初期段階において、熱交換器の伝熱面に微結晶として点状に付着するが、時間が経過するにつれてスケールが徐々に成長し、熱交換器の伝熱面の全体を厚く覆うようになる。本実施の形態のスケール除去方法は、熱交換器の伝熱面の全体を厚く覆うように付着したスケールではなく、初期段階のスケール(すなわち、熱交換器の伝熱面に微結晶として点状に付着したスケール)を対象とする。
【0012】
熱交換器の伝熱面におけるスケールの付着状態は、目視観察によって確認することが可能であるが、各種測定法によって確認することも可能である。測定法の例としては、反射率や透過率などの光学的な測定法、電気抵抗や電界などの電気的な測定法、熱容量や熱伝導度などの測定法が挙げられる。また、当業者であれば、水中のミネラル成分の量や経験に基づき、スケールの付着状態を予測することも可能である。
本実施の形態のスケール除去方法は、一定間隔で実施することによって所望の効果を得ることができるが、上記のようにしてスケールの付着状態を確認又は予測し、適切なタイミングで実施することによって無駄がなく所望の効果を得ることが可能になる。
【0013】
以下、図面を参照して本実施の形態のスケール除去方法を説明する。
図1(a)〜(d)は、熱交換器の伝熱管の断面図である。なお、この図では、伝熱面として伝熱管の内表面を想定したが、その他の部分(例えば、外表面など)であっても適用可能であることは言うまでもない。
熱交換器を備えた機器(例えば、給湯器)の使用により、熱交換器の伝熱管1の伝熱面(図1では内表面)にスケール2が付着する<図1(a)>。スケール2は、初期段階において、熱交換器の伝熱管1の内表面に微結晶として点状に付着する。熱交換器の伝熱管1の表面にスケール2が付着し続けると、スケール2が熱交換器の伝熱管1の内表面の全体を厚く覆うようになり、スケール2の除去が難しくなる。したがって、スケール2が熱交換器の伝熱管1の内表面の全体を厚く覆う前に、本実施の形態のスケール除去方法を行う必要がある。
【0014】
熱交換器の伝熱管1の内表面に微結晶として点状に付着した状態のスケール2を除去するために、まず、水溶性高分子を溶解した水溶液を伝熱管1の内表面に接触させる<図1(b)>。これにより、水溶性高分子を溶解した水溶液は、熱交換器の伝熱管1の内表面を被覆し、スケール2を取り込んだ液膜3を形成する。
【0015】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種が用いられる。これらの物質は、人体に対する安全性が高く、また金属などを腐食させないため、使用上の問題が少ない。また、これらの物質は、天然の親水性高分子のようにカルシウムイオンなどの存在によって不溶化することもないため、下記で詳述するような水溶性高分子の膜を水洗除去する場合に有利である。特に、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを組み合わせて用いた場合、水溶性高分子の膜の水洗除去を迅速に行うことが可能になる。
【0016】
ポリビニルアルコールは、水への溶解性の観点から、ケン化度が90%以下のものが好ましい。ケン化度が90%を超えると、水への溶解性が十分でないことがある。
また、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンは、重合度が300以上30,000以下であることが好ましい。重合度が300未満であると、水溶性高分子の膜の強度が小さくなる結果、スケール2の除去効果が十分に得られないことがある。一方、重合度が30,000を超えると、水溶性高分子の膜の水洗除去に時間がかかりすぎることがある。
【0017】
水溶性高分子を溶解した水溶液中の水溶性高分子の濃度としては、特に限定されないが、好ましくは1.5質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。水溶性高分子の濃度が1.5質量%未満であると、水溶性高分子の膜が薄くなり、スケール2の除去効果が十分に得られないことがある。一方、水溶性高分子の濃度が30質量%を超えると、水溶液の流動性が低下してしまい、水溶液を伝熱管1の表面に接触させることが困難になる場合がある。
【0018】
水溶液には、任意成分として、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤などの公知の成分を配合することができる。
キレート化剤は、スケール2を構成する金属をイオン化して溶解することにより、スケール2を除去し易くする効果を与える。また、キレート化剤は、水溶性高分子の不溶化を抑制する効果も与える。キレート化剤としては、特に限定されないが、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、及びこれらの誘導体や塩が挙げられる。また、キレート化剤に一般に分類されないものであっても、金属イオン成分と相互作用するもの、例えば、シュウ酸やポリアクリル酸などのカルボン酸類、各種のアミノ酸やタンパク質などを用いることもできる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶性高分子を溶解した水溶液中のキレート化剤の濃度は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、一般に0.1質量%以上5.0質量%以下である。
【0019】
pH調整剤は、スケール2を溶解し易くする効果を与える。スケール2には溶解し易いpH条件が存在し、例えば、炭酸カルシウムを主成分とするものは、pHを低くすることによってスケール2の溶解性が向上する。pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、シュウ酸、クエン酸などの有機酸が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶液中のpH調整の濃度は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。特に、この水溶液中のpH調整剤の含有量は、一般的なスケール除去剤中のpH調整剤の含有量に比べて少ないため、コスト、廃液処理、伝熱面の腐食発生などの問題を抑制することが可能である。pH調整剤の濃度が0.05質量%未満であると、配合量が少なすぎてしまい、pH調整剤の添加による効果が十分に得られない。一方、pH調整剤の濃度が2質量%を超えると、伝熱面に金属を使用している場合に腐食などの問題が生じることがある。
【0020】
スケール2の表面や伝熱面は、汚染などによって撥水化していることがあり、また、後述するように伝熱面を予め撥水化させることが有効な場合もある。撥水性の表面に対して水溶液を十分に接触させるために、界面活性剤を水溶液に配合することが好ましい。また、界面活性剤の起泡性を利用し、水溶液を泡立てた後に伝熱管1の内表面と接触させれば、当該水溶液の使用量を低減することも可能になる。
【0021】
界面活性剤としては、常温(25℃)で水に可溶であれば特に限定されないが、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。非イオン性界面活性剤の例としては、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、多価アルコール、アルキルアミン、油脂、ポリプロピレングリコールなどのポリエチレングリコール付加物、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ショ糖、多価アルコール、アルカノールアミンの脂肪酸エステル類などが挙げられる。陰イオン界面活性剤の例としては、カルボン酸塩類、硫酸エステル塩類、スルホン酸塩類、リン酸エステル類などが挙げられる。陽イオン界面活性剤の例としては、アミン塩型、第4級アンモニウム塩型などが挙げられる。両性界面活性剤の例とし、アミノ酸型、ベタイン型などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶液中の界面活性剤の濃度は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、一般に0.05質量%以上5.0質量%以下である。
【0022】
水溶液を伝熱管1の内表面に接触させる方法としては、特に限定されないが、伝熱管1の内部に水溶液を注入すればよい。なお、伝熱面が熱交換器の伝熱管1の外表面などである場合も、特に限定されないが、スプレー塗布や流し塗りなどの公知方法で水溶液を塗布すればよい。
伝熱管1の内表面に対する水溶液の接触の度合いは、特に限定されず、水溶液が伝熱管1の内表面を被覆し、スケール2を取り込んだ液膜3を形成し得る程度であればよい。
【0023】
次に、伝熱管1の内表面に形成された液膜3の乾燥を行い、流動性のない水溶性高分子の膜4を形成する<図1(c)>。このとき、スケール2は、液膜3中に取り込まれているために水溶性高分子との密着性が高く、水溶液の水分蒸発に伴う体積収縮によって、液膜3中に取り込まれたスケール2にも収縮力が作用する。その結果、スケール2が伝熱管1の内表面から剥離して除去される。また、スケール2と共に、水溶性高分子の膜4も伝熱管1の内表面から剥離して除去される。
水溶液から形成される液膜3の乾燥方法としては、特に限定されないが、伝熱管1の内部に空気を送り込んだり、熱交換器の加熱機能を利用して加熱して乾燥を促進させたりすればよい。
【0024】
液膜3を乾燥することによって形成される水溶性高分子の膜4の膜厚は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。ここで、当該膜厚は、約60℃の温度の気流下で液膜3を乾燥させて得られた水溶性高分子の膜4の膜厚を意味する。水溶性高分子の膜4の膜厚が1μm未満であると、スケール2に作用する収縮力が小さくなり、伝熱管1の内表面からスケール2を十分に除去することができない場合がある。
【0025】
次に、必要であれば、水溶性高分子の膜4を水と接触させる<図1(d)>。これにより、水溶性高分子の膜4が水に溶解し、水溶性高分子及びスケール2が水と共に伝熱管1の内表面から除去される。
水溶性高分子の膜4を水と接触させる方法としては、特に限定されないが、伝熱管1の内部に水を注入すればよい。なお、伝熱面が熱交換器の伝熱管1の外表面などである場合には、スプレー塗布や流し塗りなどの公知方法で水を適用すればよい。
【0026】
上記のようにして行われる本実施の形態のスケール除去方法は、水溶性高分子を含む水溶液の水分蒸発に伴う体積収縮によって、水溶性高分子の膜4と共にスケール2を除去することができるので、従来の物理的なスケール除去方法では処理できない複雑な構造を有する熱交換器の伝熱面に付着したスケール2を除去することが可能になる。
【0027】
また、本実施の形態のスケール除去方法では、スケール2や水溶性高分子の膜4を剥離し易くする観点から、伝熱面に撥水性被膜を予め形成しておくことが好ましい。
撥水性被膜の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、フッ素系のシランカップリング剤などの反応剤を用いた疎水化処理、PTFEを複合させたニッケルめっきなどの疎水化めっき処理、シリコーンやフッ素樹脂による塗装などが挙げられる。これらの中でも、熱交換器の耐水性や耐熱性を考慮すると、フッ素樹脂による塗装を行うことが好ましい。特に、フッ素系溶剤を溶剤とする各種フッ素樹脂コーティング剤、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)塗料、フッ化エチレンプロピレン(FEP)塗料、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)塗料、PTFE/PFA複合塗料、その他の変性塗料などを用いた焼付け塗装を行うことが好ましい。
【0028】
次に、本実施の形態のスケール除去方法を、給湯タンク内に注入された水を加熱する熱交換器を有する給湯器に適用する場合の実際の具体例を説明する。
給湯タンク内に設けられる熱交換器は、給湯タンク内の水を熱交換器によって加温するものであり、銅管から一般に形成され、銅管がコイル状になったり、導管表面に凹凸が形成されている。そのため、銅管の表面に形成されるスケール2の除去を物理的手法などによって行うことは困難である。
本実施の形態のスケール除去方法では、まず、給湯タンクの排水を行った後、水溶性高分子を溶解した水溶液を給湯タンクに導入して銅管の表面と接触させる。次に、銅管の表面に形成された液膜3の乾燥を行う。
銅管の表面に疎水性被膜が予め形成されている場合、スケール2を取り込んだ水溶性高分子の膜4は銅管の表面から自然に剥離するので、給湯タンクに開口部がある場合には、剥離した水溶性高分子の膜4を開口部から除去することができる。
銅管の表面に疎水性被膜が予め形成されていない場合、スケール2を取り込んだ水溶性高分子の膜4は銅管の表面から剥離し難いが、給湯タンク内に水を注入することにより、水溶性高分子の膜4を溶解して除去することができる。
【0029】
次に、本実施の形態のスケール除去方法を、管内を通る水を加熱する熱交換器を有する給湯器に適用する場合の実際の具体例を説明する。
本実施の形態のスケール除去方法としては、熱交換器の管を一旦取り外して行う方法、又は水溶性高分子を溶解した水溶液を注入するための専用の注入口を給湯器に設ける方法がある。
専用の注入口を設ける場合、管に満たされた水を排除した後に水溶液を注入することが好ましいが、水溶液を注入することによって管に満たされた水を押出し排除してもよい。水溶液の注入後、空気(必要であれば加温した空気)を管に導入することによって水溶性高分子の膜4を形成させる。このとき、加熱を行うことによって水溶性高分子の膜4の形成を促進させてもよい。次に、管に水を注入することによって、スケール2を取り込んだ水溶性高分子の膜4を溶解して除去すればよい。
【0030】
実施の形態2.
本実施の形態の給湯器は、上記のスケール除去方法を実施するのに最適な構造を有しており、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種の水溶性高分子を溶解した水溶液と、空気とを熱交換器の伝熱面に供給するための少なくとも1つの注入口を具備することを特徴とする。
注入口は、水溶性高分子及び空気の両方に共通のものであっても、水溶液及び空気のそれぞれに専用のものであっても構わない。
このように水溶液や空気を熱交換器の伝熱面に供給するための注入口を設けることにより、給湯器の熱交換器におけるスケール2の除去を効率良く実施することができるようになる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
熱交換器として、直径10mmの銅管から形成され、銅管の外側から沸騰水で加熱することによって銅管内を通る水を60℃に昇温できる熱交換器を用いた。熱交換器によって昇温させる水には、炭酸カルシウム微粉末を添加して混合した後、濾過した水道水を用いた。60分の通水後、銅管を切断して銅管の内表面を顕微鏡観察によって確認したところ、カルシウムスケール微結晶が多数付着していることが確認された。
【0032】
(実施例1〜7及び比較例2〜3)
上記のようにしてカルシウムスケールを付着させた銅管に、下記の表1に示す組成の水溶液を注入した後、空気を流して余剰な水溶液を排出し、さらに5分間空気を流すことによって銅管の内表面に水溶性高分子の膜を形成させた。
次に、銅管に水を60秒間流すことによって水溶性高分子の膜を溶解して除去した。
(比較例1)
水溶液による処理は行わず、上記のようにしてカルシウムスケールを付着させた銅管をそのまま用いた。
【0033】
カルシウムスケールの除去効果について、銅管を切断した後、顕微鏡を用い、銅管の内表面(1mm角)の観察面に残留するカルシウムスケール微結晶の個数を数えることによって評価した。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示されているように、水溶性高分子を溶解した水溶液を用いた実施例1〜7の方法は、銅管の内表面に付着したカルシウムスケール微結晶が少なく、カルシウムスケールを簡易且つ効果的に除去することできた。また、キレート剤、pH調整剤又は界面活性剤を添加した実施例5〜7の方法は、カルシウムスケールの除去効果がより一層大きくなった。
なお、表1において、1種類の水溶性高分子を用いた実施例1〜3の方法に対する2種類の水溶性高分子を用いた実施例4の方法の有意な結果は明らかではない。しかしながら、水溶性高分子の膜を溶解して除去する際に鋼管に水を30秒間流して評価したところ、実施例1〜3の方法では水溶性高分子の膜の溶け残りが確認されたものの、実施例4の方法では水溶性高分子の膜の溶け残りは確認されなかったことから、2種類の水溶性高分子を用いることで、水溶性高分子の膜の水洗除去効率が高まることがわかった。
一方、水溶性高分子を用いていない水溶液を用いた比較例2〜3の方法は、銅管の内表面に付着したカルシウムスケール微結晶が多く、カルシウムスケールを十分に除去することができなかった。
【0036】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、熱交換器の伝熱面に付着したスケールを簡易且つ効果的に除去することが可能なスケールの除去方法及び給湯器を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 伝熱管、2 スケール、3 液膜、4 水溶性高分子の膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の伝熱面に付着したスケールの除去方法であって、
ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種の水溶性高分子を溶解した水溶液を前記伝熱面に接触させて乾燥することにより、前記水溶液の水分蒸発に伴う体積収縮によって前記水溶性高分子の膜中に前記スケールを取り込みつつ前記スケールを前記伝熱面から剥離させることを特徴とするスケールの除去方法。
【請求項2】
前記水溶性高分子の膜を水と接触させることにより、前記水溶性高分子の膜を溶解しつつ、前記スケールを前記伝熱面から除去することを特徴とする請求項1に記載のスケールの除去方法。
【請求項3】
前記水溶液は、キレート剤、pH調整剤及び界面活性剤から選択される少なくとも1種の成分をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のスケールの除去方法。
【請求項4】
前記水溶液中の水溶性高分子の濃度は、1.5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスケールの除去方法。
【請求項5】
前記熱交換器の伝熱面には、撥水性被膜が予め形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスケールの除去方法。
【請求項6】
ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1種の水溶性高分子を溶解した水溶液と、空気とを熱交換器の伝熱面に供給するための少なくとも1つの注入口を具備することを特徴とする給湯器。

【図1】
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