説明

スズメバチ検知装置

【課題】山中、藪、草むら等で作業中であっても早期に、かつ、確実にスズメバチを検知することができる装置を提供すること。
【解決手段】スズメバチ検知装置10は、スズメバチの羽音を示す羽音情報を予め記憶する羽音記憶部21と、スズメバチの顎音を示す顎音情報を予め記憶する顎音記憶部22と、を備え、周囲の音声を測定し、測定した音声情報を第1音声記憶部31に記憶した後、所定時間後に、測定した音声情報を第2音声記憶部32に記憶する。そして、第1音声記憶部31に記憶した音声情報と、第2音声記憶部32に記憶した音声情報との差分を示す差分情報を出力し、出力した差分情報と、羽音記憶部21に記憶した羽音情報とが略一致すると判定した場合に、第1の態様で報知を行い、差分情報と、顎音記憶部22に記憶した顎音情報とが略一致すると判定した場合に、第2の態様で報知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズメバチ検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配電線の巡視業務等において、配電線路が施設してある箇所を徒歩により移動していると、山中、藪、草むら等において、スズメバチ等に刺される恐れがあった。スズメバチは、厚生労働省人口動態統計によると、刺傷による全国の死亡者数が毎年20〜30人にものぼっており、日本で最も危険な野生動物とも言われている。ところが、その対処法は、黒色に反応するので服装は白系のものにする、香水等の刺激物は使用しない、ハチが飛んでいるかどうか周囲をよく確認する等、の対処法にとどまっている。このため、毎年、配電線の巡視業務等において、ハチ刺傷による業務上災害が発生しており、特に活動の活発な9〜11月には、恐る恐る巡視業務をしているのが現状である。
【0003】
このような目視等による対処法の他に、スズメバチのような羽を有し、飛来する虫を識別して警報するシステムとして、羽を有する虫の存在を検出して警報することを課題とした特許文献1の技術が知られている。
【0004】
特許文献1では、特定の虫の羽音を示す第1音情報を予め記憶する第1記憶部と、周囲の環境音を示す第2音情報を予め記憶する第2記憶部とを備えている。そして、第2音情報と、周囲の観測音を示す第3音情報と、の差分を示す差分情報を出力し、出力した差分情報と、第1音情報とを比較し、第1音情報と差分情報とが略一致する場合、虫が周囲に存在することを示す警報を発生する。よって、特許文献1の技術は、羽を有する虫、例えばスズメバチ、の存在を羽音に基づいて検出して警報を発生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−289039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、環境音を予め記憶し、周囲の音から環境音を除いた差分情報を、予め記憶した特定の羽音と比較することにより、特定の羽音を検知するので、差分情報に、特定の羽音以外の羽音等の音が含まれている場合には、予め記憶した特定の羽音と比較しても特定の羽音を検知することができない場合がある。
【0007】
例えば、山中や藪、草むらには羽を有した多数の虫が生息しており、山中で測定した音にはそれら多数の羽音が混在するのが通常である。そうすると、山中、藪、草むら等を徒歩により移動する、配電線の巡視業務等の様な作業中に、予め記憶した環境音と測定した周囲の音との差分情報と、予め記憶したスズメバチの羽音とを比較する特許文献1の様な技術では、作業中にスズメバチを検知することができない場合がある。
【0008】
ここで、スズメバチの習性として、次の3点が知られている。(1)巣に10メートルほどの距離に近づくと、ハチが気づき始めて巣の表面に働きバチが出てくる。(2)更に近づくと、侵入者の周りを飛び回り、顎をカチカチとならして威嚇し始める。(3)更に近づいて間違って巣を揺らしたりしたら攻撃する。すなわち、スズメバチの被害を受けないようにするには、上記(3)に至らないうちに、できるだけ早期にスズメバチの存在を検知する必要がある。
【0009】
そこで、山中、藪、草むら等で作業中であっても、早期にスズメバチを検知することができる装置が求められている。
【0010】
本発明は、山中、藪、草むら等で作業中であっても早期に、かつ、確実にスズメバチを検知することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0012】
(1) スズメバチを検知するスズメバチ検知装置であって、前記スズメバチの羽音を示す羽音情報を予め記憶する羽音記憶部と、前記スズメバチの顎音を示す顎音情報を予め記憶する顎音記憶部と、周囲の音声を測定する音声測定部と、前記音声測定部により測定された音声情報を記憶する第1の音声記憶部と、前記第1の音声記憶部に記憶された後、所定時間後に、前記音声測定部により測定された音声情報を記憶する第2の音声記憶部と、前記第1の音声記憶部に記憶された音声情報と、前記第2の音声記憶部に記憶された音声情報との差分を示す差分情報を出力する差分出力部と、所定の態様で報知を行う報知部と、前記差分出力部により出力された前記差分情報と、前記羽音記憶部に記憶された前記羽音情報とが略一致するか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部により、前記差分情報と前記羽音情報とが略一致すると判定された場合に、前記報知部に第1の態様で報知を行わせる第1報知制御部と、前記差分出力部により出力された前記差分情報と、前記顎音記憶部に記憶された前記顎音情報とが略一致するか否かを判定する第2判定部と、前記第2判定部により、前記差分情報と前記顎音情報とが略一致すると判定された場合に、前記報知部に第2の態様で報知を行わせる第2報知制御部と、を備えるスズメバチ検知装置。
【0013】
(1)の構成によれば、本発明に係るスズメバチ検知装置は、スズメバチの羽音を示す羽音情報を予め記憶する羽音記憶部と、スズメバチの顎音を示す顎音情報を予め記憶する顎音記憶部と、周囲の音声を測定し、測定された音声情報を記憶する第1の音声記憶部と、第1の音声記憶部に記憶された後、所定時間後に、測定された音声情報を記憶する第2の音声記憶部と、所定の態様で報知を行う報知部と、を備える。そして、第1の音声記憶部に記憶された音声情報と、第2の音声記憶部に記憶された音声情報との差分を示す差分情報を出力し、出力された差分情報と、羽音記憶部に記憶された羽音情報とが略一致するか否かを判定する。そして、差分情報と羽音情報とが略一致すると判定された場合に、報知部に第1の態様で報知を行わせ、差分情報と、顎音記憶部に記憶された顎音情報とが略一致するか否かを判定し、差分情報と顎音情報とが略一致すると判定された場合に、報知部に第2の態様で報知を行わせる。
【0014】
すなわち、本発明に係るスズメバチ検知装置は、所定時間ごとに周囲の音声を測定し、測定された音声情報を記憶し、記憶された音声情報に基づいて差分情報を出力し、出力された差分情報と、羽音情報とが略一致する場合に、第1の態様で報知を行う。そして、差分情報と、顎音情報とが略一致する場合に、第2の態様で報知を行う。したがって、山中、藪、草むら等で作業中であっても、本発明に係るスズメバチ検知装置は、所定時間ごとに測定した周囲の音声から、直前の音声を除いた差分情報に基づいて早期に、スズメバチの羽音情報を検知し、スズメバチの顎音を検知することができる。
【0015】
(2) 前記第2判定部は、前記第1判定部により、前記差分情報と前記羽音情報とが略一致すると判定された場合に、前記差分情報と前記顎音情報とが略一致するか否かを判定する(1)に記載のスズメバチ検知装置。
【0016】
(2)の構成によれば、(1)に記載のスズメバチ検知装置は、差分情報と羽音情報とが略一致すると判定された場合に、差分情報と顎音情報とが略一致するか否かを判定するので、確実にスズメバチを検知することができる。
【0017】
(3) 長尺状部材を更に備え、前記音声測定部は、前記長尺状部材の先端側に設けられる(1)又は(2)に記載のスズメバチ検知装置。
【0018】
(3)の構成によれば、(1)又は(2)に記載のスズメバチ検知装置は、音声測定部が、長尺状部材の先端側に設けられるので、人体からより離れた位置で、作業を行おうとしている方向にスズメバチがいるかいないかを検知することができる。したがって、山中、藪、草むら等で作業中であっても早期に、かつ、確実にスズメバチを検知することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスズメバチ検知装置によれば、山中、藪、草むら等で作業中であっても早期に、かつ、確実にスズメバチを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る予め記憶したスズメバチの羽音情報及び顎音情報を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10が、周囲の音声を所定時間ごとに測定し、差分情報を作成していることを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10が、周囲の音声を所定時間ごとに測定し、作成した差分情報によってスズメバチの羽音情報を抽出したことを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10が、周囲の音声を所定時間ごとに測定し、作成した差分情報によってスズメバチの顎音情報を抽出したことを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】図7に続く処理内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10の一例を示す外観図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10の別の例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10の機能を示す機能ブロック図である。
【0023】
スズメバチ検知装置10は、スズメバチの羽音及び顎音を検知することによりスズメバチの接近を検知し、報知する装置である。スズメバチ検知装置10は、羽音記憶部21と、顎音記憶部22と、音声測定部11と、第1音声記憶部31と、第2音声記憶部32と、差分出力部12と、報知部41と、第1判定部13と、第1報知制御部14と、第2判定部15と、第2報知制御部16とを備えている。そして、音声測定部11が所定時間ごとに周囲の音声を測定し、測定された音声情報を第1音声記憶部31と、第2音声記憶部32とに記憶し、記憶された音声情報に基づいて差分出力部12が差分情報を出力し、第1判定部13によって差分情報と、羽音記憶部21に予め記憶された羽音情報とが略一致すると判定された場合に、第1報知制御部14が報知部41に第1の態様で報知を行わせる。そして、第2判定部15によって差分情報と、顎音記憶部22に予め記憶された顎音情報とが略一致すると判定された場合に、第2報知制御部16が報知部41に第2の態様で報知を行わせる。
【0024】
羽音記憶部21は、スズメバチの羽音を示す羽音情報を予め記憶する。すなわち、羽音記憶部21は、スズメバチの羽音を周波数分析した結果を示す羽音情報を予め記憶している。周波数分析されたスズメバチの羽音情報は、周波数帯域及び音圧によって記憶される(後述する図3(1)参照)。
【0025】
顎音記憶部22は、スズメバチの顎音を示す顎音情報を予め記憶する。すなわち、顎音記憶部22は、スズメバチの顎音を周波数分析した結果を示す顎音情報を予め記憶している。周波数分析されたスズメバチの顎音情報は、周波数帯域及び音圧によって記憶される(後述する図3(2)参照)。
【0026】
音声測定部11は、周囲の音声を測定する。音声測定部11は、周囲の音声を音響センサ2101(後述する図2参照)から取得し、取得した音声を周波数と音圧の関係を示す音声情報に変換する。なお、この変換には周知の周波数分析を用いることが出来る。周波数分析とは、所定の周波数範囲を、1/1オクターブや1/3オクターブ等の周波数帯域に分割し、その分割した帯域ごとの音圧を求めるものである。本実施形態では、周波数分析として、1/3オクターブ分析を使用することとする。周波数分析部は、1/3オクターブの規格(JIS C 1513参照)に定められたバンドパスフィルタ(図示せず)を有している。そして、音声測定部11は、周囲の音声をバンドパスフィルタに通して積分することにより、周囲の音声を音声情報に変換する。また、音声測定部11は、音声情報の音圧レベルの調整を行う音圧レベル調整機能を有しており、例えば、周囲の音声情報と予め記憶した羽音情報及び顎音情報との音圧の最大値を一致させるべく音声情報の音圧のスケーリングを調整する。
【0027】
第1音声記憶部31は、音声測定部11により測定された音声情報を記憶する。第2音声記憶部32は、第1音声記憶部31に記憶された後、所定時間後に、音声測定部11により測定された音声情報を記憶する。すなわち、音声測定部11は、測定した周囲の音声情報を第1音声記憶部31に記憶し、所定時間(例えば、1秒)後に、測定した周囲の音声情報を第2音声記憶部32に記憶する。例えば、音声測定部11は、後述する図4、図5、及び図6の図(1)のように、測定した周囲の音声情報を第1音声記憶部31に記憶し、所定時間(例えば、1秒)後に、後述する図4、図5、及び図6の図(2)のように、測定した周囲の音声情報を第2音声記憶部32に記憶する。
【0028】
差分出力部12は、第1音声記憶部31に記憶された音声情報と、第2音声記憶部32に記憶された音声情報との差分を示す差分情報を出力する。すなわち、差分出力部12は、所定時間(例えば、1秒)ごとに、第1音声記憶部31に記憶された音声情報と、第2音声記憶部32に記憶された音声情報との差分を示す差分情報を作成する。よって、差分情報は、所定時間(例えば、1秒)ごとに、変化した周囲の音声を示す音声情報である。例えば、差分出力部12は、後述する図4、図5、及び図6の図(3)のように第1音声記憶部31に記憶した音声情報と、第2音声記憶部32に記憶した音声情報との差分情報を作成する。
【0029】
報知部41は、所定の態様で報知を行う。例えば、報知部41は、後述する図2のスピーカ2201、発光素子2202,2203、ディスプレイ2204、振動素子2205等で構成され、スピーカ2201が鳴動すること、発光素子2202,2203が点灯すること、ディスプレイ2204が表示すること、振動素子2205が振動すること等の態様で報知を行う。
【0030】
第1判定部13は、差分出力部12により出力された差分情報と、羽音記憶部21に記憶された羽音情報とが略一致するか否かを判定する。そして、第1報知制御部14は、第1判定部13により、差分情報と羽音情報とが略一致すると判定された場合に、報知部41に第1の態様で報知を行わせる。すなわち、第1判定部13は、所定時間(例えば、1秒)ごとに、変化した周囲の音声を示す音声情報と、スズメバチの羽音情報とが略一致するか否かを判定し、第1報知制御部14は、第1判定部13により略一致すると判定された場合に、報知部41に第1の態様で報知を行わせる。
【0031】
第2判定部15は、差分出力部12により出力された差分情報と、顎音記憶部22に記憶された顎音情報とが略一致するか否かを判定する。そして、第2報知制御部16は、第2判定部15により、差分情報と顎音情報とが略一致すると判定された場合に、報知部41に第2の態様で報知を行わせる。すなわち、第2判定部15は、所定時間(例えば、1秒)ごとに、変化した周囲の音声を示す音声情報と、スズメバチの顎音情報とが略一致するか否かを判定し、第2報知制御部16は、第2判定部15により略一致すると判定された場合に、報知部41に第2の態様で報知を行わせる。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0033】
図2に示すように、スズメバチ検知装置10は、CPU(Central Processing Unit)2011、メモリ2012、操作部2013、表示部2014、補助記憶部2015、音声処理部2100及び報知処理部2200がバスラインBUSにより接続されて構成されている。
【0034】
CPU2011は、スズメバチ検知装置10を統括的に制御する部分であり、メモリ2012に記憶された各種プログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、本発明に係る各種機能を実現している。
【0035】
メモリ2012は、適宜読み出して実行されるプログラムを記憶し、プログラムの実行によって作成される種々の情報を記憶する。例えば、メモリ2012は、音声情報を記憶する第1音声記憶部31及び第2音声記憶部32を構成し、スズメバチの羽音又は顎音が検知されたことによる報知中であることを示す報知フラグ等を記憶する。
【0036】
操作部2013は、各種設定や入力操作を行う操作ボタン群、決定操作ボタン等を備えており、操作部2013による入力情報はCPU2011の制御下で処理される。すなわち、ユーザは、操作部2013を介して、必要な各種の設定操作、又は指定操作等が可能である。表示部2014は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)によって構成され、各種情報を表示する。
【0037】
補助記憶部2015は、フラッシュメモリ等により構成され、スズメバチ検知装置10が機能するための各種プログラム及び本発明の機能を実行するプログラムを記憶しており、更に、羽音記憶部21及び顎音記憶部22を構成し、予めスズメバチの羽音情報及び顎音情報等の各種データを記憶している。
【0038】
音声処理部2100は、音声を電気信号に変換する音響センサ2101から音声情報を受信し、受信した音声情報を周波数と音圧との関係を示す音声情報に変換する。
【0039】
報知処理部2200は、入力されたデータに基づいて電気信号に変換し、スピーカ2201、発光素子2202,2203、ディスプレイ2204、振動素子2205に出力する。
【0040】
図3は、本発明の一実施形態に係る予め記憶したスズメバチの羽音情報及び顎音情報を示す図である。図3(1)は、スズメバチの羽音情報の一例を示す模式図である。模式図は、1/3オクターブ幅毎の周波数帯域と音圧との関係を示す図である。なお、隣接する3つの周波数帯域(Hz)で1オクターブとなっている。同様に、図3(2)は、スズメバチの顎音情報の一例を示す模式図である。
【0041】
図4から図6は、本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10が、スズメバチの羽音情報及び顎音情報を検知する過程を示す図である。
【0042】
図4は、本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10が、周囲の音声を所定時間ごとに測定し、差分情報を作成していることを示す図である。図4(1)は、例えば、T1時に、音声測定部11が周囲の音声を測定し、第1音声記憶部31に記憶した音声情報を示している図である。図4(2)は、例えば、T1時から所定時間(例えば、1秒)後のT2時に、音声測定部11が周囲の音声を測定し、第2音声記憶部32に記憶した音声情報を示している図である。斜線の部分は、T1時の音声情報との差の部分を示している。図4(3)は、例えば、T1時に第1音声記憶部31に記憶した音声情報と、T2時に第2音声記憶部32に記憶した音声情報とに基づいて作成した差分情報を示している図である。図4(2)で示した斜線の差の部分が差分情報として抽出されることを示している。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10が、周囲の音声を所定時間ごとに測定し、作成した差分情報によってスズメバチの羽音情報を抽出したことを示す図である。図5(1)は、第1音声記憶部31に記憶した、図4(2)と同様の音声情報を示している図である。図5(2)は、例えば、T2時から所定時間(例えば、1秒)後のT3時に、音声測定部11がスズメバチの羽音を測定し、第2音声記憶部32に記憶した音声情報を示している図である。斜線の部分は、スズメバチの羽音が、T2時の音声情報に加わっていることを示している。図5(3)は、例えば、T2時に第1音声記憶部31に記憶した音声情報と、T3時に第2音声記憶部32に記憶した音声情報とに基づいて作成した差分情報を示している図である。図5(2)において斜線で示したスズメバチの羽音が差分情報として抽出されることを示している。
【0044】
図6は、本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10が、周囲の音声を所定時間ごとに測定し、作成した差分情報によってスズメバチの顎音情報を抽出したことを示す図である。図6(1)は、第1音声記憶部31に記憶した、図5(2)と同様の音声情報を示している図である。図6(2)は、例えば、T3時から所定時間(例えば、1秒)後のT4時に、音声測定部11がスズメバチの顎音を測定し、第2音声記憶部32に記憶した音声情報を示している図である。斜線の部分は、スズメバチの顎音が、T3時の音声情報に加わっていることを示している。図6(3)は、例えば、T3時に第1音声記憶部31に記憶した音声情報と、T4時に第2音声記憶部32に記憶した音声情報とに基づいて作成した差分情報を示している図である。図6(2)において斜線で示したスズメバチの顎音が差分情報として抽出されることを示している。
【0045】
図7は、本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10の処理内容を示すフローチャートである。
【0046】
ステップS101において、CPU2011(音声測定部11)は、音声を測定し第1音声記憶部31に記憶する。より具体的には、音響センサ2101が周囲の音声を電気信号に変換し、変換した電気信号を受信した音声処理部2100が周波数と音圧との関係を示す音声情報に変換し、CPU2011は、変換された音声情報をメモリ2012の第1音声記憶部31に記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS102に移す。
【0047】
ステップS102において、CPU2011は、ユーザによって設定された所定時間が経過するまで待機する。その後、CPU2011は、処理をステップS103に移す。
【0048】
ステップS103において、CPU2011(音声測定部11)は、ステップS101と同様に音声を測定し、メモリ2012の第2音声記憶部32に記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS104に移す。
【0049】
ステップS104において、CPU2011(差分出力部12)は、第1音声記憶部31と、第2音声記憶部32とから差分情報を作成する。より具体的には、CPU2011は、周波数帯域ごとに第1音声記憶部31に記憶した音圧と、第2音声記憶部32に記憶した音圧との差を算出し、メモリ2012に記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS105に移す。
【0050】
ステップS105において、CPU2011は、第1の報知中であるか否かを判断する。より具体的には、CPU2011は、第1の報知中又は第2の報知中であることを示す、メモリ2012の報知フラグを参照し、後述のステップS108で記憶した第1の報知中(すなわち、スズメバチの羽音を検知済み)であるか否かを判断する。この判断がYESの場合は処理をステップS110に移し、NOの場合は処理をステップS106に移す。
【0051】
ステップS106において、CPU2011は、第2の報知中であるか否かを判断する。より具体的には、CPU2011は、ステップS105と同様に、報知フラグを参照し、後述のステップS111で記憶した第2の報知中(すなわち、スズメバチの顎音を検知済み)であるか否かを判断する。この判断がYESの場合は処理を図8のステップS114に移し、NOの場合は処理をステップS107に移す。
【0052】
ステップS107において、CPU2011(第1判定部13)は、スズメバチの羽音か否かを判断する。より具体的には、CPU2011は、ステップS104で作成した差分情報と、補助記憶部2015の羽音記憶部21に予め記憶した羽音情報との音圧を周波数帯域ごとに比較し、所定の範囲内(例えば、差が15%以内)である場合に略一致すると判断する。あるいは、補助記憶部2015の羽音記憶部21に予め記憶したスズメバチの羽音情報の特徴を示す周波数帯域の音圧についてのみ比較し、所定の範囲内(例えば、差が10%以内)である場合に略一致すると判断する、としてもよい。この判断がYESの場合は処理をステップS108に移し、NOの場合は処理をステップS109に移す。
【0053】
ステップS108において、CPU2011(第1報知制御部14)は、第1の報知を発生させる。より具体的には、CPU2011は、スズメバチの羽音を検知したことをスピーカ2201、第1発光素子2202、ディスプレイ2204、又は振動素子2205等(後述する図9及び図10参照)により報知し、第1の報知を発生させたことを報知フラグに記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS109に移す。
【0054】
ステップS109において、CPU2011は、第2音声記憶部32から第1音声記憶部31に音声情報を移動し記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS102に移す。
【0055】
ステップS110において、CPU2011(第2判定部15)は、スズメバチの顎音か否かを判断する。より具体的には、CPU2011は、ステップS104で作成した差分情報と、補助記憶部2015の顎音記憶部22に予め記憶した顎音情報との音圧を周波数帯域ごとに比較し、所定の範囲内(例えば、差が15%以内)である場合に略一致すると判断する。あるいは、補助記憶部2015の顎音記憶部22に予め記憶したスズメバチの顎音情報の特徴を示す周波数帯域の音圧についてのみ比較し、所定の範囲内(例えば、差が10%以内)である場合に略一致すると判断する、としてもよい。この判断がYESの場合は処理をステップS111に移し、NOの場合は処理をステップS112に移す。
【0056】
ステップS111において、CPU2011(第2報知制御部16)は、第2の報知を発生させる。より具体的には、CPU2011は、スズメバチの顎音を検知したことをスピーカ2201、第2発光素子2203、ディスプレイ2204、又は振動素子2205等(後述する図9及び図10参照)により、第1の報知とは異なる態様で報知し、第2の報知を発生させたことを報知フラグに記憶する。その後、CPU2011は、処理をステップS109に移す。
【0057】
ステップS112において、CPU2011は、ステップS107と同様に、スズメバチの羽音か否かを判断する。この判断がYESの場合は処理をステップS113に移し、NOの場合は処理をステップS109に移す。
【0058】
ステップS113において、CPU2011は、第1の報知を解除する。より具体的には、CPU2011は、スズメバチの羽音を検知した第1の報知中に、差分情報として更に羽音を検知したので、スズメバチの羽音が無くなったと判断し、スピーカ2201、第1発光素子2202、ディスプレイ2204、又は振動素子2205等(後述する図9及び図10参照)による報知を中止し、第1の報知を示す報知フラグの記憶を消去する。その後、CPU2011は、処理をステップS109に移す。
【0059】
図8は、図7に続く処理内容を示すフローチャートである。
【0060】
ステップS114において、CPU2011は、ステップS110と同様に、スズメバチの顎音か否かを判断する。この判断がYESの場合は処理をステップS115に移し、NOの場合は処理を図7のステップS109に移す。
【0061】
ステップS115において、CPU2011は、第2の報知を解除する。より具体的には、CPU2011は、スズメバチの顎音を検知した第2の報知中に、差分情報として更に顎音を検知したので、スズメバチの顎音が無くなったと判断し、スピーカ2201、第2発光素子2203、ディスプレイ2204、又は振動素子2205等(後述する図9及び図10参照)による報知を中止し、第2の報知を示す報知フラグの記憶を消去する。その後、CPU2011は、処理を図7のステップS109に移す。
【0062】
図9は、本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10の一例を示す外観図である。
【0063】
図9に示すスズメバチ検知装置10は、ユーザである作業者200のズボンのベルト201に装着されるように構成されている。そして、第1の報知をする第1発光素子2202と、第2の報知をする第2発光素子2203と、ディスプレイ2204と、スピーカ2201と、音響センサ2101とを備えている。この例では、音響センサ2101をスズメバチ検知装置10の筐体101に内蔵するとしたが、音響センサ2101を筐体101内から分離し、例えば、ヘルメット202に装着し、配線により音声信号をスズメバチ検知装置10の音声処理部2100(図示せず)に接続するとしてもよい。スズメバチの羽音及び顎音をより確実に検知することができる。
【0064】
図10は、本発明の一実施形態に係るスズメバチ検知装置10の別の例を示す外観図である。
【0065】
図10に示すスズメバチ検知装置10は、長尺状の棒301に組み込まれている。長尺状の棒301の先端に取り付けられている音響センサ2101は、配線303により、スズメバチ検知装置10の音声処理部2100(図示せず)に接続されている。長尺状の棒301の先端側に音響センサ2101を取付けることにより、人体からより離れた位置で、作業を行おうとしている方向にスズメバチがいるかいないかを検知することができる。
【0066】
実施例によれば、スズメバチ検知装置10は、スズメバチの羽音を示す羽音情報を予め記憶する羽音記憶部21と、スズメバチの顎音を示す顎音情報を予め記憶する顎音記憶部22と、周囲の音声を測定し、測定された音声情報を記憶する第1音声記憶部31と、第1音声記憶部31に記憶された後、所定時間後に、測定された音声情報を記憶する第2音声記憶部32と、所定の態様で報知を行う報知部41と、を備える。そしてスズメバチ検知装置10は、第1音声記憶部31に記憶された音声情報と、第2音声記憶部32に記憶された音声情報との差分を示す差分情報を出力し、出力された差分情報と、羽音記憶部21に記憶された羽音情報とが略一致するか否かを判定する。そして、差分情報と羽音情報とが略一致すると判定された場合に、報知部41に第1の態様で報知を行わせ、差分情報と、顎音記憶部22に記憶された顎音情報とが略一致するか否かを判定し、差分情報と顎音情報とが略一致すると判定された場合に、報知部41に第2の態様で報知を行わせる。すなわち、本発明に係るスズメバチ検知装置10は、所定時間ごとに周囲の音声を測定し、測定された音声情報を記憶し、記憶された音声情報に基づいて差分情報を出力し、出力された差分情報と、スズメバチの羽音情報とが略一致する場合に、第1の態様で報知を行う。そして、差分情報と、スズメバチの顎音情報とが略一致する場合に、第2の態様で報知を行う。したがって、山中、藪、草むら等で作業中であっても、本発明に係るスズメバチ検知装置10は、所定時間ごとに測定した周囲の音声から、直前の音声を除いた差分情報に基づいて早期に、スズメバチの羽音情報を検知し、スズメバチの顎音を検知することができる。
【0067】
更に、スズメバチ検知装置10は、差分情報と羽音情報とが略一致すると判定された場合に、差分情報と顎音情報とが略一致するか否かを判定するので、確実にスズメバチを検知することができる。
【0068】
更に、スズメバチ検知装置10は、音響センサ2101が、長尺状部材の先端側に設けられるので、山中、藪、草むら等で作業中であっても、人体からより離れた位置で、作業を行おうとしている方向にスズメバチがいるかいないかを検知することができる。したがって、本発明に係るスズメバチ検知装置10を携帯することにより未然にスズメバチの刺傷被害が防げるため、作業員は、山中、藪、草むら等普段人の立ち入らないような場所に建っている電柱を巡視する場合でも、スズメバチに怯えずに巡視業務を行うことができる。
【0069】
実施例では、スズメバチの羽音を検知した後に、更に羽音を検知した場合に、スズメバチが飛び去ったと判断し、報知を自動的に解除するとしたが(図7のステップS113)、報知を自動的に解除しないで、ユーザが解除スイッチ(図示せず)を押下することにより報知を手動で解除するとしてもよい。ユーザが目視により周辺にスズメバチがいないことを確認した後に報知を手動で解除する、とすることによりユーザのスズメバチに対する注意を喚起することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
10 スズメバチ検知装置
11 音声測定部
12 差分出力部
13 第1判定部
14 第1報知制御部
15 第2判定部
16 第2報知制御部
21 羽音記憶部
22 顎音記憶部
31 第1音声記憶部
32 第2音声記憶部
41 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズメバチを検知するスズメバチ検知装置であって、
前記スズメバチの羽音を示す羽音情報を予め記憶する羽音記憶部と、
前記スズメバチの顎音を示す顎音情報を予め記憶する顎音記憶部と、
周囲の音声を測定する音声測定部と、
前記音声測定部により測定された音声情報を記憶する第1の音声記憶部と、
前記第1の音声記憶部に記憶された後、所定時間後に、前記音声測定部により測定された音声情報を記憶する第2の音声記憶部と、
前記第1の音声記憶部に記憶された音声情報と、前記第2の音声記憶部に記憶された音声情報との差分を示す差分情報を出力する差分出力部と、
所定の態様で報知を行う報知部と、
前記差分出力部により出力された前記差分情報と、前記羽音記憶部に記憶された前記羽音情報とが略一致するか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部により、前記差分情報と前記羽音情報とが略一致すると判定された場合に、前記報知部に第1の態様で報知を行わせる第1報知制御部と、
前記差分出力部により出力された前記差分情報と、前記顎音記憶部に記憶された前記顎音情報とが略一致するか否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部により、前記差分情報と前記顎音情報とが略一致すると判定された場合に、前記報知部に第2の態様で報知を行わせる第2報知制御部と、
を備えるスズメバチ検知装置。
【請求項2】
前記第2判定部は、前記第1判定部により、前記差分情報と前記羽音情報とが略一致すると判定された場合に、前記差分情報と前記顎音情報とが略一致するか否かを判定する請求項1に記載のスズメバチ検知装置。
【請求項3】
長尺状部材を更に備え、
前記音声測定部は、前記長尺状部材の先端側に設けられる請求項1又は2に記載のスズメバチ検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−227028(P2010−227028A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78917(P2009−78917)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】