スタッカクレーンの昇降体落下防止装置およびスタッカクレーン
【課題】ワイヤロープを滑車に掛け終った後に行う、昇降体落下防止装置の調整作業および昇降体を水平に維持する調整作業が容易に行え、しかも、ワイヤロープが切断した場合の昇降体の落下を確実に防止することができる、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置およびこの昇降体落下防止装置を使用したスタッカクレーンを提供する。
【解決手段】スタッカクレーンの昇降体1を昇降させるワイヤロープ10a、10bが掛け回された定滑車15a、15bと、定滑車15a、15bの近傍のワイヤロープ10a、10bの両側に固定された一対のワイヤロープストッパ部材17a、17bおよび一対のワイヤロープストッパ部材18a、18bと、前記ワイヤロープストッパ部材の何れかの移動により作動して、ワイヤロープ10a、10bの切断を検知するリミットスイッチS1〜S8と、下降する前記ワイヤロープストッパ部材を受け止めて、昇降体1を停止させる受止め部材19a、19bとを備えている。
【解決手段】スタッカクレーンの昇降体1を昇降させるワイヤロープ10a、10bが掛け回された定滑車15a、15bと、定滑車15a、15bの近傍のワイヤロープ10a、10bの両側に固定された一対のワイヤロープストッパ部材17a、17bおよび一対のワイヤロープストッパ部材18a、18bと、前記ワイヤロープストッパ部材の何れかの移動により作動して、ワイヤロープ10a、10bの切断を検知するリミットスイッチS1〜S8と、下降する前記ワイヤロープストッパ部材を受け止めて、昇降体1を停止させる受止め部材19a、19bとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置およびスタッカクレーン、特に、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後に行う、昇降体落下防止装置の調整作業および昇降体を水平に維持する調整作業が容易に行え、しかも、ワイヤロープが切断した場合の昇降体の落下を確実に防止することができる、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置、および、この昇降体落下防止装置を使用したスタッカクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、立体駐車場等に設置されるスタッカクレーンのワイヤロープの切断検出装置の一例が特許文献1(特開平6−92595号公報)に開示されている。
【0003】
この特許文献1のスタッカクレーンは、図7に示すように、昇降体1に昇降体落下防止装置2を介してワイヤロープ3a、3bの一端を固定し、ワイヤロープ3a、3bの他端を、定滑車4、5を介してドラム6により巻取り、巻戻すことによって、昇降体1を水平状態を維持しながら昇降させる。
【0004】
上記従来昇降体落下防止装置2は、図8に示すように、昇降体1にピン1aにより回動自在に取り付けられ、端部にワイヤロープ3a、3bが固定された天秤7と、昇降体1に取り付けられた電気的に作動するリミットスイッチ8と、天秤9に取り付けられた、リミットスイッチ8を作動させる一対のドグ9a、9bとからなっている。
【0005】
従来昇降体落下防止装置2によれば、例えば、ワイヤロープ3bが切断した場合には、図9に示すように、天秤7が図中、A方向に傾いて、ドグ9aによってリミットスイッチ8が作動することによって、ワイヤロープ3bの切断が検出される。
【0006】
以上は、昇降体1を二本のワイヤロープ3a、3bによって昇降させるスタッカクレーンであるが、重量物を昇降させる場合には、図10に示すように、モータ(図示せず)によって駆動される後述するドラム11a、11bにより巻取り、巻戻される四本のワイヤロープ10a、10b、10c、10dによって、昇降体1を水平状態を維持しながら昇降させる。
【0007】
すなわち、図10に示すように、ワイヤロープ10a、10bの一端は、ドラム11aにより巻取り、巻戻され、ワイヤロープ10c、10dの一端は、ドラム11bにより巻取り、巻戻される。昇降体1の一方側には、動滑車12a、12bが取り付けられ、他方側には、動滑車13a、13bが取り付けられている。
【0008】
ワイヤロープ10aの他端は、定滑車14a、定滑車14b、および、昇降体1の動滑車13aを介して上記従来昇降体落下防止装置2と基本的に同じ構造の昇降体落下防止装置2bの天秤7bの他端に固定されている。天秤7bは、動滑車13a、13b間の上方に軸支されている。
【0009】
図11に、昇降体落下防止装置2aをその正面図で示し、図12に、図11のリミットスイッチ部分の拡大図を示す。昇降体落下防止装置2bも昇降体落下防止装置2aと同じである。
【0010】
ワイヤロープ10bの他端は、定滑車14c、および、昇降体1の動滑車12aを介して昇降体落下防止装置2bと同じ構造の昇降体落下防止装置2aの天秤7aの他端に固定されている。天秤7aは、動滑車12a、12b間の上方に軸支されている。
【0011】
ワイヤロープ10cの他端は、定滑車14d、および、昇降体1の動滑車12bを介して昇降体落下防止装置2aの天秤7aの一端に固定されている。
【0012】
ワイヤロープ10dの他端は、定滑車14e、定滑車14f、および、昇降体1の動滑車13bを介して昇降体落下防止装置2bの天秤7bの一端に固定されている。
【0013】
上述した従来スタッカクレーンによれば、昇降体1は、ドラム11a、11bによりワイヤロープ10a、10b、10c、10dを巻取り、巻戻すことによって、水平状態を維持しながら昇降する。
【0014】
そして、例えば、ワイヤロープ10bが図10および図11中、(P)で示す箇所で切断した場合には、昇降体落下防止装置2aの天秤7aが図11および図12中、A方向に回動する。これによって、天秤7aに設けられたドグ9a、9bの内のドグ9aによってリミットスイッチ8が作動して、ワイヤロープ10bの切断が電気的に検出される。
【0015】
【特許文献1】特開平6−92595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記昇降体落下防止装置2a、2bによれば、上述のようにして、ワイヤロープの切断を確実に検出することができるが、以下のような問題があった。
【0017】
昇降体落下防止装置2a、2bは、天秤式であるので、天秤7a、7bを図11に示すように、正確に水平位置(中立位置)に合わせないと、昇降体1を水平状態を維持して昇降させることができない。従って、スタッカクレーンの構築時あるいはワイヤロープの張替え時において、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後の天秤調整作業に長時間を要していた。
【0018】
すなわち、天秤調整作業は、先ず、ワイヤロープにかかる負荷をなくすために、昇降体1を置き台等に預ける。次に、ワイヤロープの端部を天秤7a、7bから外し、チェーンブロック等によってワイヤロープを引っ張り調整後、再度、ワイヤロープを天秤7a、7bに固定する。次に、ドラム15a、15bを回転させて天秤7a、7bが水平になるように微調整する。そして、ワイヤロープを完全に巻き上げて昇降体1を上昇させ、ワイヤロープにテンションをかけた状態で天秤7a、7bの水平度を確認する。水平になっていない場合には、最初からやり直す。
【0019】
このように、従来昇降体落下防止装置によれば、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後の天秤調整作業に長時間を要していた。
【0020】
従って、この発明の目的は、ワイヤロープを滑車に掛け終った後に行う、昇降体落下防止装置の調整作業および昇降体を水平に維持する調整作業が容易に行え、しかも、ワイヤロープが切断した場合の昇降体の落下を確実に防止することができる、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置およびスタッカクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とする。
【0022】
請求項1記載の発明は、スタッカクレーンの昇降体を昇降させるワイヤロープが掛け回された定滑車と、前記定滑車の近傍の前記ワイヤロープに固定された一対のワイヤロープストッパ部材と、前記一対のワイヤロープストッパ部材の何れかの移動により作動して、前記ワイヤロープの切断を検知するリミットスイッチと、下降する前記ワイヤロープストッパ部材を受け止めて、前記昇降体を停止させる受止め部材とを備えたことに特徴を有するものである。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の昇降体落下防止装置を備えたことに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後に行う、昇降体落下防止装置の調整作業および昇降体を水平に維持する調整作業が、従来の天秤式の昇降体落下防止装置に比べて容易に行え、しかも、ワイヤロープが切断した場合の昇降体の落下を確実に防止することができる、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置およびスタッカクレーンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、この発明の昇降体落下防止装置が取り付けられたスタッカクレーンの示す概略図、図2は、この発明の昇降体落下防止装置の取付け部分を示す正面図、図3は、図2のB部拡大図、図4は、図2のA−A矢視図、図5は、ワイヤロープ両端の張力が等しい場合の昇降体落下防止装置を示す概略図、図6は、ワイヤロープ両端の張力のバランスが崩れた場合の昇降体落下防止装置を示す概略図である。
【0027】
図1において、1は、スタッカクレーンの昇降体である。昇降体1の一方側には、動滑車12a、12bが取り付けられ、他方側には、動滑車13a、13bが取り付けられている。昇降体1は、二本のワイヤロープ10a、10bにより吊り下げられている。ワイヤロープ10a、10bは、モータ(図示せず)によって駆動されるドラム11a、11bによってそれぞれ巻取り、巻戻される。これによって、昇降体1は、水平状態を維持しながら昇降する。
【0028】
15aは、昇降体1の動滑車12a、12b間の上方に設けられた定滑車であり、ワイヤロープ10bが掛け回される。15bは、昇降体1の動滑車13a、13b間の上方に設けられた定滑車であり、ワイヤロープ10aが掛け回される。
【0029】
16aは、定滑車15aの直下に設けられた昇降体落下防止装置である。昇降体落下防止装置16aは、定滑車15aに掛け回されたワイヤロープ10bの両側に固定された一対のワイヤロープストッパ部材17a、17bと、ワイヤロープストッパ部材17a、17bの移動により作動して、ワイヤロープ10bの切断を電気的に検出するリミットスイッチS1、S2、S3、S4と、下降するワイヤロープストッパ部材17a、17bを受け止めて、昇降体1を停止させる受止め部材19aとからなっている。
【0030】
リミットスイッチS1、S2、S3、S4と受止め部材19aとは、予めスタッカクレーンの支柱22に固定されている。ワイヤロープストッパ部材17a、17bは、後述するように、昇降体1の水平度が維持された後にワイヤロープ10bに固定される。ワイヤロープストッパ部材17a、17bの各々と受止め部材19aとの間隔は等しい。
【0031】
16bは、定滑車15bの直下に設けられた昇降体落下防止装置である。昇降体落下防止装置16bは、定滑車15bに掛け回されたワイヤロープ10aの両側に固定された一対のワイヤロープストッパ部材18a、18bと、ワイヤロープストッパ部材18a、18bの移動により作動して、ワイヤロープ10aの切断を電気的に検出する検出するリミットスイッチS5、S6、S7、S8と、下降するワイヤロープストッパ部材18a、18bを受け止めて、昇降体1を停止させる受止め部材19bとからなっている。
【0032】
リミットスイッチS5、S6、S7、S8と受止め部材19bとは、予めスタッカクレーンの支柱22に固定されている。ワイヤロープストッパ部材18a、18bは、後述するように、昇降体1の水平度が維持された後にワイヤロープ10aに固定される。ワイヤロープストッパ部材18a、18bの各々と受止め部材19bとの間隔は等しい。
【0033】
図2および図3は、ワイヤロープ10aとワイヤロープストッパ部材18bとの固定部分を示すが、ワイヤロープ10aとワイヤロープストッパ部材18bとの固定部分、ワイヤロープ10bとワイヤロープストッパ部材17a、17bの各々との固定部分についても同様である。
【0034】
図2および図3に示されるように、ワイヤロープストッパ部材18bは、多数のボルト20によりワイヤロープ10aに固定されている。ワイヤロープストッパ部材18bは、リミットスイッチS7、S8を作動させる板状ドグ21を有している。ドグ21の上下コーナー部は、リミットスイッチS7、S8が円滑に作動するように斜めに切り欠かれている。
【0035】
ワイヤロープ10aは、ドラム11aから定滑車14a、定滑車14b、昇降体1の動滑車13a、定滑車15b、昇降体1の動滑車13b、定滑車14f、および、定滑車14eを介してモータ(図示せず)によって駆動されるドラム11bに至り、ドラム11a、11bによって巻取り、巻戻される。
【0036】
ワイヤロープ10bは、ドラム11aから定滑車14c、昇降体1の動滑車12a、定滑車15a、昇降体1の動滑車12b、および、定滑車14dを介してドラム11bに至り、ドラム11a、11bによって巻取り、巻戻される。
【0037】
このように構成されている、この発明の昇降体落下防止装置を用いたスタッカクレーンによれば、昇降体1は、ドラム11a、11bによりワイヤロープ10a、10bを巻取り、巻戻すことによって、水平状態を維持しながら昇降する。そして、以下のようにして、ワイヤロープの切断を検出することができ、しかも、ワイヤロープが切断した場合の昇降体の落下を確実に防止することができる。
【0038】
例えば、ワイヤロープ10bに切断がない場合には、図5に示すように、定滑車15aの両側のワイヤロープ10aの張力T1と張力T2とは等しいので(T1=T2)、ワイヤロープストッパ部材17a、17bの位置は変わらない。すなわち、ワイヤロープストッパ部材17a、17bは、受止め部材19aに対して同一間隔で離れて位置している。
【0039】
しかし、ワイヤロープ10bが図1中(P)箇所で切断した場合には、図6に示すように、定滑車15aの両側のワイヤロープ10bの張力T1と張力T2とのバランスが崩れて(T1≧T2)、ワイヤロープストッパ部材17aが下降し、受止め部材19aに当る。これによって、昇降体1の落下が確実に防止される。
【0040】
ワイヤロープストッパ部材17aが下降する過程で、ワイヤロープストッパ部材17aのドグ21の下部がリミットスイッチS2に当り、これを作動させる。これによって、ワイヤロープ10bの切断が電気的に検出される。
【0041】
一方、ワイヤロープストッパ部材17aが下降すると同時に、ワイヤロープストッパ部材17bが上昇する。これによって、ワイヤロープストッパ部材17bのドグ21の上部がリミットスイッチS3に当り、これを作動させる。これによっても、ワイヤロープ10bの切断が電気的に検出される。
【0042】
以上は、ワイヤロープ10bが切断した場合であるが、ワイヤロープ10aが切断した場合についても同様である。
【0043】
この発明の昇降体落下防止装置によれば、従来昇降体落下防止装置の天秤を定滑車15a、15bに代えることによって、以下のような効果が得られる。
【0044】
スタッカクレーンの構築時あるいはワイヤロープの張替え時において、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後、ドラム11a、11bを回転させて昇降体1を水平に維持し、この後、受止め部材19a上の同じ高さ位置にワイヤロープストッパ部材17a、17bをそれぞれボルト20で固定するのみで良い。従って、天秤を用いた従来昇降体落下防止装置と比べて、昇降体1を水平に維持する調整作業が大幅に簡略化される。
【0045】
上記効果は、昇降体落下防止装置16bにおいても同様に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の昇降体落下防止装置が取り付けられたスタッカクレーンの示す概略図である。
【図2】この発明の昇降体落下防止装置の取付け部分を示す正面図である。
【図3】図2のB部拡大図である。
【図4】図2のA−A矢視図である。
【図5】ワイヤロープ両端の張力が等しい場合の昇降体落下防止装置を示す概略図である。
【図6】ワイヤロープ両端の張力のバランスが崩れた場合の昇降体落下防止装置を示す概略図である。
【図7】従来昇降体落下防止装置を使用したスタッカクレーンを示す概略図である。
【図8】ワイヤロープ両端の張力が等しい場合の従来昇降体落下防止装置を示す正面図である。
【図9】ワイヤロープ両端の張力のバランスが崩れた場合の従来昇降体落下防止装置を示す概略図である。
【図10】従来昇降体落下防止装置を使用した従来スタッカクレーンを示す概略図である。
【図11】従来スタッカクレーンの昇降体落下防止装置を示す正面図である。
【図12】図11のリミットスイッチ部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0047】
1:昇降体
1a:ピン
2、2a、2b:昇降体落下防止装置
3a、3b:ワイヤロープ
4:定滑車
5:定滑車
6:ドラム
7、7a、7b:天秤
8:リミットスイッチ
9a、9b:ドグ
10a、10b:ワイヤロープ
11a、11b:ドラム
12a、12b:動滑車
13a、13b:動滑車
14a、14b、14c、14d、14e、14f:定滑車
15a、15b:定滑車
16a、16b:昇降体落下防止装置
17a、17b:ワイヤロープストッパ部材
18a、18b:ワイヤロープストッパ部材
19a、19b:ワイヤロープストッパ部材
20:ボルト
21:ドグ
22:支柱
【技術分野】
【0001】
この発明は、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置およびスタッカクレーン、特に、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後に行う、昇降体落下防止装置の調整作業および昇降体を水平に維持する調整作業が容易に行え、しかも、ワイヤロープが切断した場合の昇降体の落下を確実に防止することができる、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置、および、この昇降体落下防止装置を使用したスタッカクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、立体駐車場等に設置されるスタッカクレーンのワイヤロープの切断検出装置の一例が特許文献1(特開平6−92595号公報)に開示されている。
【0003】
この特許文献1のスタッカクレーンは、図7に示すように、昇降体1に昇降体落下防止装置2を介してワイヤロープ3a、3bの一端を固定し、ワイヤロープ3a、3bの他端を、定滑車4、5を介してドラム6により巻取り、巻戻すことによって、昇降体1を水平状態を維持しながら昇降させる。
【0004】
上記従来昇降体落下防止装置2は、図8に示すように、昇降体1にピン1aにより回動自在に取り付けられ、端部にワイヤロープ3a、3bが固定された天秤7と、昇降体1に取り付けられた電気的に作動するリミットスイッチ8と、天秤9に取り付けられた、リミットスイッチ8を作動させる一対のドグ9a、9bとからなっている。
【0005】
従来昇降体落下防止装置2によれば、例えば、ワイヤロープ3bが切断した場合には、図9に示すように、天秤7が図中、A方向に傾いて、ドグ9aによってリミットスイッチ8が作動することによって、ワイヤロープ3bの切断が検出される。
【0006】
以上は、昇降体1を二本のワイヤロープ3a、3bによって昇降させるスタッカクレーンであるが、重量物を昇降させる場合には、図10に示すように、モータ(図示せず)によって駆動される後述するドラム11a、11bにより巻取り、巻戻される四本のワイヤロープ10a、10b、10c、10dによって、昇降体1を水平状態を維持しながら昇降させる。
【0007】
すなわち、図10に示すように、ワイヤロープ10a、10bの一端は、ドラム11aにより巻取り、巻戻され、ワイヤロープ10c、10dの一端は、ドラム11bにより巻取り、巻戻される。昇降体1の一方側には、動滑車12a、12bが取り付けられ、他方側には、動滑車13a、13bが取り付けられている。
【0008】
ワイヤロープ10aの他端は、定滑車14a、定滑車14b、および、昇降体1の動滑車13aを介して上記従来昇降体落下防止装置2と基本的に同じ構造の昇降体落下防止装置2bの天秤7bの他端に固定されている。天秤7bは、動滑車13a、13b間の上方に軸支されている。
【0009】
図11に、昇降体落下防止装置2aをその正面図で示し、図12に、図11のリミットスイッチ部分の拡大図を示す。昇降体落下防止装置2bも昇降体落下防止装置2aと同じである。
【0010】
ワイヤロープ10bの他端は、定滑車14c、および、昇降体1の動滑車12aを介して昇降体落下防止装置2bと同じ構造の昇降体落下防止装置2aの天秤7aの他端に固定されている。天秤7aは、動滑車12a、12b間の上方に軸支されている。
【0011】
ワイヤロープ10cの他端は、定滑車14d、および、昇降体1の動滑車12bを介して昇降体落下防止装置2aの天秤7aの一端に固定されている。
【0012】
ワイヤロープ10dの他端は、定滑車14e、定滑車14f、および、昇降体1の動滑車13bを介して昇降体落下防止装置2bの天秤7bの一端に固定されている。
【0013】
上述した従来スタッカクレーンによれば、昇降体1は、ドラム11a、11bによりワイヤロープ10a、10b、10c、10dを巻取り、巻戻すことによって、水平状態を維持しながら昇降する。
【0014】
そして、例えば、ワイヤロープ10bが図10および図11中、(P)で示す箇所で切断した場合には、昇降体落下防止装置2aの天秤7aが図11および図12中、A方向に回動する。これによって、天秤7aに設けられたドグ9a、9bの内のドグ9aによってリミットスイッチ8が作動して、ワイヤロープ10bの切断が電気的に検出される。
【0015】
【特許文献1】特開平6−92595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記昇降体落下防止装置2a、2bによれば、上述のようにして、ワイヤロープの切断を確実に検出することができるが、以下のような問題があった。
【0017】
昇降体落下防止装置2a、2bは、天秤式であるので、天秤7a、7bを図11に示すように、正確に水平位置(中立位置)に合わせないと、昇降体1を水平状態を維持して昇降させることができない。従って、スタッカクレーンの構築時あるいはワイヤロープの張替え時において、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後の天秤調整作業に長時間を要していた。
【0018】
すなわち、天秤調整作業は、先ず、ワイヤロープにかかる負荷をなくすために、昇降体1を置き台等に預ける。次に、ワイヤロープの端部を天秤7a、7bから外し、チェーンブロック等によってワイヤロープを引っ張り調整後、再度、ワイヤロープを天秤7a、7bに固定する。次に、ドラム15a、15bを回転させて天秤7a、7bが水平になるように微調整する。そして、ワイヤロープを完全に巻き上げて昇降体1を上昇させ、ワイヤロープにテンションをかけた状態で天秤7a、7bの水平度を確認する。水平になっていない場合には、最初からやり直す。
【0019】
このように、従来昇降体落下防止装置によれば、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後の天秤調整作業に長時間を要していた。
【0020】
従って、この発明の目的は、ワイヤロープを滑車に掛け終った後に行う、昇降体落下防止装置の調整作業および昇降体を水平に維持する調整作業が容易に行え、しかも、ワイヤロープが切断した場合の昇降体の落下を確実に防止することができる、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置およびスタッカクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とする。
【0022】
請求項1記載の発明は、スタッカクレーンの昇降体を昇降させるワイヤロープが掛け回された定滑車と、前記定滑車の近傍の前記ワイヤロープに固定された一対のワイヤロープストッパ部材と、前記一対のワイヤロープストッパ部材の何れかの移動により作動して、前記ワイヤロープの切断を検知するリミットスイッチと、下降する前記ワイヤロープストッパ部材を受け止めて、前記昇降体を停止させる受止め部材とを備えたことに特徴を有するものである。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の昇降体落下防止装置を備えたことに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後に行う、昇降体落下防止装置の調整作業および昇降体を水平に維持する調整作業が、従来の天秤式の昇降体落下防止装置に比べて容易に行え、しかも、ワイヤロープが切断した場合の昇降体の落下を確実に防止することができる、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置およびスタッカクレーンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、この発明の昇降体落下防止装置が取り付けられたスタッカクレーンの示す概略図、図2は、この発明の昇降体落下防止装置の取付け部分を示す正面図、図3は、図2のB部拡大図、図4は、図2のA−A矢視図、図5は、ワイヤロープ両端の張力が等しい場合の昇降体落下防止装置を示す概略図、図6は、ワイヤロープ両端の張力のバランスが崩れた場合の昇降体落下防止装置を示す概略図である。
【0027】
図1において、1は、スタッカクレーンの昇降体である。昇降体1の一方側には、動滑車12a、12bが取り付けられ、他方側には、動滑車13a、13bが取り付けられている。昇降体1は、二本のワイヤロープ10a、10bにより吊り下げられている。ワイヤロープ10a、10bは、モータ(図示せず)によって駆動されるドラム11a、11bによってそれぞれ巻取り、巻戻される。これによって、昇降体1は、水平状態を維持しながら昇降する。
【0028】
15aは、昇降体1の動滑車12a、12b間の上方に設けられた定滑車であり、ワイヤロープ10bが掛け回される。15bは、昇降体1の動滑車13a、13b間の上方に設けられた定滑車であり、ワイヤロープ10aが掛け回される。
【0029】
16aは、定滑車15aの直下に設けられた昇降体落下防止装置である。昇降体落下防止装置16aは、定滑車15aに掛け回されたワイヤロープ10bの両側に固定された一対のワイヤロープストッパ部材17a、17bと、ワイヤロープストッパ部材17a、17bの移動により作動して、ワイヤロープ10bの切断を電気的に検出するリミットスイッチS1、S2、S3、S4と、下降するワイヤロープストッパ部材17a、17bを受け止めて、昇降体1を停止させる受止め部材19aとからなっている。
【0030】
リミットスイッチS1、S2、S3、S4と受止め部材19aとは、予めスタッカクレーンの支柱22に固定されている。ワイヤロープストッパ部材17a、17bは、後述するように、昇降体1の水平度が維持された後にワイヤロープ10bに固定される。ワイヤロープストッパ部材17a、17bの各々と受止め部材19aとの間隔は等しい。
【0031】
16bは、定滑車15bの直下に設けられた昇降体落下防止装置である。昇降体落下防止装置16bは、定滑車15bに掛け回されたワイヤロープ10aの両側に固定された一対のワイヤロープストッパ部材18a、18bと、ワイヤロープストッパ部材18a、18bの移動により作動して、ワイヤロープ10aの切断を電気的に検出する検出するリミットスイッチS5、S6、S7、S8と、下降するワイヤロープストッパ部材18a、18bを受け止めて、昇降体1を停止させる受止め部材19bとからなっている。
【0032】
リミットスイッチS5、S6、S7、S8と受止め部材19bとは、予めスタッカクレーンの支柱22に固定されている。ワイヤロープストッパ部材18a、18bは、後述するように、昇降体1の水平度が維持された後にワイヤロープ10aに固定される。ワイヤロープストッパ部材18a、18bの各々と受止め部材19bとの間隔は等しい。
【0033】
図2および図3は、ワイヤロープ10aとワイヤロープストッパ部材18bとの固定部分を示すが、ワイヤロープ10aとワイヤロープストッパ部材18bとの固定部分、ワイヤロープ10bとワイヤロープストッパ部材17a、17bの各々との固定部分についても同様である。
【0034】
図2および図3に示されるように、ワイヤロープストッパ部材18bは、多数のボルト20によりワイヤロープ10aに固定されている。ワイヤロープストッパ部材18bは、リミットスイッチS7、S8を作動させる板状ドグ21を有している。ドグ21の上下コーナー部は、リミットスイッチS7、S8が円滑に作動するように斜めに切り欠かれている。
【0035】
ワイヤロープ10aは、ドラム11aから定滑車14a、定滑車14b、昇降体1の動滑車13a、定滑車15b、昇降体1の動滑車13b、定滑車14f、および、定滑車14eを介してモータ(図示せず)によって駆動されるドラム11bに至り、ドラム11a、11bによって巻取り、巻戻される。
【0036】
ワイヤロープ10bは、ドラム11aから定滑車14c、昇降体1の動滑車12a、定滑車15a、昇降体1の動滑車12b、および、定滑車14dを介してドラム11bに至り、ドラム11a、11bによって巻取り、巻戻される。
【0037】
このように構成されている、この発明の昇降体落下防止装置を用いたスタッカクレーンによれば、昇降体1は、ドラム11a、11bによりワイヤロープ10a、10bを巻取り、巻戻すことによって、水平状態を維持しながら昇降する。そして、以下のようにして、ワイヤロープの切断を検出することができ、しかも、ワイヤロープが切断した場合の昇降体の落下を確実に防止することができる。
【0038】
例えば、ワイヤロープ10bに切断がない場合には、図5に示すように、定滑車15aの両側のワイヤロープ10aの張力T1と張力T2とは等しいので(T1=T2)、ワイヤロープストッパ部材17a、17bの位置は変わらない。すなわち、ワイヤロープストッパ部材17a、17bは、受止め部材19aに対して同一間隔で離れて位置している。
【0039】
しかし、ワイヤロープ10bが図1中(P)箇所で切断した場合には、図6に示すように、定滑車15aの両側のワイヤロープ10bの張力T1と張力T2とのバランスが崩れて(T1≧T2)、ワイヤロープストッパ部材17aが下降し、受止め部材19aに当る。これによって、昇降体1の落下が確実に防止される。
【0040】
ワイヤロープストッパ部材17aが下降する過程で、ワイヤロープストッパ部材17aのドグ21の下部がリミットスイッチS2に当り、これを作動させる。これによって、ワイヤロープ10bの切断が電気的に検出される。
【0041】
一方、ワイヤロープストッパ部材17aが下降すると同時に、ワイヤロープストッパ部材17bが上昇する。これによって、ワイヤロープストッパ部材17bのドグ21の上部がリミットスイッチS3に当り、これを作動させる。これによっても、ワイヤロープ10bの切断が電気的に検出される。
【0042】
以上は、ワイヤロープ10bが切断した場合であるが、ワイヤロープ10aが切断した場合についても同様である。
【0043】
この発明の昇降体落下防止装置によれば、従来昇降体落下防止装置の天秤を定滑車15a、15bに代えることによって、以下のような効果が得られる。
【0044】
スタッカクレーンの構築時あるいはワイヤロープの張替え時において、ワイヤロープを各滑車に掛け終った後、ドラム11a、11bを回転させて昇降体1を水平に維持し、この後、受止め部材19a上の同じ高さ位置にワイヤロープストッパ部材17a、17bをそれぞれボルト20で固定するのみで良い。従って、天秤を用いた従来昇降体落下防止装置と比べて、昇降体1を水平に維持する調整作業が大幅に簡略化される。
【0045】
上記効果は、昇降体落下防止装置16bにおいても同様に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の昇降体落下防止装置が取り付けられたスタッカクレーンの示す概略図である。
【図2】この発明の昇降体落下防止装置の取付け部分を示す正面図である。
【図3】図2のB部拡大図である。
【図4】図2のA−A矢視図である。
【図5】ワイヤロープ両端の張力が等しい場合の昇降体落下防止装置を示す概略図である。
【図6】ワイヤロープ両端の張力のバランスが崩れた場合の昇降体落下防止装置を示す概略図である。
【図7】従来昇降体落下防止装置を使用したスタッカクレーンを示す概略図である。
【図8】ワイヤロープ両端の張力が等しい場合の従来昇降体落下防止装置を示す正面図である。
【図9】ワイヤロープ両端の張力のバランスが崩れた場合の従来昇降体落下防止装置を示す概略図である。
【図10】従来昇降体落下防止装置を使用した従来スタッカクレーンを示す概略図である。
【図11】従来スタッカクレーンの昇降体落下防止装置を示す正面図である。
【図12】図11のリミットスイッチ部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0047】
1:昇降体
1a:ピン
2、2a、2b:昇降体落下防止装置
3a、3b:ワイヤロープ
4:定滑車
5:定滑車
6:ドラム
7、7a、7b:天秤
8:リミットスイッチ
9a、9b:ドグ
10a、10b:ワイヤロープ
11a、11b:ドラム
12a、12b:動滑車
13a、13b:動滑車
14a、14b、14c、14d、14e、14f:定滑車
15a、15b:定滑車
16a、16b:昇降体落下防止装置
17a、17b:ワイヤロープストッパ部材
18a、18b:ワイヤロープストッパ部材
19a、19b:ワイヤロープストッパ部材
20:ボルト
21:ドグ
22:支柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッカクレーンの昇降体を昇降させるワイヤロープが掛け回された定滑車と、
前記定滑車の近傍の前記ワイヤロープに固定された一対のワイヤロープストッパ部材と、
前記一対のワイヤロープストッパ部材の移動により作動して、前記ワイヤロープの切断を検知するリミットスイッチと、
下降する前記ワイヤロープストッパ部材を受け止めて、前記昇降体を停止させる受止め部材と
を備えたことを特徴とする、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の昇降体落下防止装置を備えたスタッカクレーン。
【請求項1】
スタッカクレーンの昇降体を昇降させるワイヤロープが掛け回された定滑車と、
前記定滑車の近傍の前記ワイヤロープに固定された一対のワイヤロープストッパ部材と、
前記一対のワイヤロープストッパ部材の移動により作動して、前記ワイヤロープの切断を検知するリミットスイッチと、
下降する前記ワイヤロープストッパ部材を受け止めて、前記昇降体を停止させる受止め部材と
を備えたことを特徴とする、スタッカクレーンの昇降体落下防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の昇降体落下防止装置を備えたスタッカクレーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−247568(P2008−247568A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92304(P2007−92304)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
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