説明

スタック型フィルター、及び、モジュール型フィルター

【課題】 耐久性を向上させることができるスタック型フィルター及びモジュール型フィルターを提供する。
【解決手段】電気絶縁性の隔壁10で仕切られることにより形成された空間11を備えるチャンバー3と、空間11に間隔をあけて複数配置された筒状のフィルター4と、複数のフィルター4をそれぞれ囲むように空間11に充填された導電性を有する緩衝材12と、を備え、各フィルター4は、電解質用グリーンシート31、電極用第2グリーンシート33及び電極用第1グリーンシート32を積層したグリーンシート積層体30を筒状に成形し、成形したグリーンシート積層体30を焼結することにより作製されている、スタック型フィルター2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出ガスを浄化するスタック型フィルター、及び、モジュール型フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中には、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)といった大気汚染物質が含まれており、これら排出ガスを浄化する為の排出ガス浄化装置について多様な研究がなされている。一例としてPM粒子を捕集するDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)やNOxを浄化するNOx浄化触媒を搭載した排出ガス浄化装置が使用されている。このNOx浄化触媒としては、三元触媒、NOx吸蔵還元型触媒、尿素を添加したSCR触媒(選択的接触触媒)、NOx直接還元型触媒等がある。
【0003】
これらのディーゼルエンジンの排出ガス浄化装置では、DPFやNOx浄化触媒の上流側に酸化触媒を配置している。そして、排出ガスの温度が低い場合に、ポスト直射や排気管噴射によって、HC等の還元剤を排出ガス中に供給している。このように、還元剤を酸化触媒で酸化することにより、酸化触媒および酸化触媒の下流側の排出ガスを昇温している。そして、酸化触媒を活性温度以上に保ちながら、下流側のDPFのPM燃焼を促進したり、更に下流側のNOx浄化触媒を活性温度以上に保つことが行われている。
【0004】
従来のディーゼルエンジンにおける排出ガスの浄化は、PM粒子を捕集するDPF、NOxを浄化するNOx浄化触媒を搭載した排出ガス浄化装置といった複数の装置により浄化処理が行われている。また、PM粒子の浄化方法に関しては、フィルターに堆積したPM粒子をいかに除去して再生させるかが課題とされており、これに対して連続再生式DPFでは、排出ガス中のNOをNOに酸化させ、このNOによってフィルターに堆積したPM粒子を酸化させている。しかし、排出ガス温度が250℃に達しない場合は、PM粒子の酸化が起こらないため、別途NOの浄化装置が必要になってくる。
【0005】
このほか、PM粒子を処理する方法として、DPNR(ディーゼル・パティキュレート・NOx・リダクションシステム)が提案されている。このDPNRは、多孔質セラミックフィルターにNOx還元触媒を担持させ、NOx吸蔵時に生成する酸素ラジカルによりPM粒子を酸化させ、定期的かつ瞬間的に燃料噴射量を増加させ、その際に排出されるCO,HCにより吸着させたNOxを還元する方法である。しかし、この方法は正確な燃料噴射制御が求められ、耐久性悪化・コスト高・燃費悪化の問題点を有している。
【0006】
これに対して、特許文献1には、排出ガスの複数工程化や、排出ガス温度の低温化といった課題を解決する浄化装置が提案されている。この浄化装置では、酸素イオン導電性を有する固体電解質の両面それぞれに、同じく酸素イオン導電性を有する電極材と浄化触媒とを混合させた電極を配置している。そして、両電極間に電圧を印加させることで、カソード側に捕捉したNOxをNへ還元し、この化学反応で生じた酸素イオンをカソード側からアノード側へ供給している。これにより、固体電解質のアノード側に存在するPM粒子を酸化させることができるため、1工程でPM粒子とNOxの低減が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−200520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のような浄化装置は、通常、ディーゼルエンジンの近傍に配置されているので、ディーゼルエンジンから排ガスが供給されると共に、ディーゼルエンジンの振動も浄化装置に伝達されている。これにより、浄化装置も振動することになり、振動が大きくなると浄化装置が損傷することがあった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、耐久性を向上させることができるスタック型フィルター及びモジュール型フィルターの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためのスタック型フィルターであり、電気絶縁性の隔壁で仕切られることにより形成された空間を備えるチャンバーと、前記空間に間隔をあけて複数配置された筒状のフィルターと、前記複数のフィルターをそれぞれ囲むように前記空間に充填された導電性を有する緩衝材と、を備え、前記各フィルターは、電解質用グリーンシート、電極用第1グリーンシート及び電極用第2グリーンシートを積層したグリーンシート積層体を筒状に成形し、成形した前記グリーンシート積層体を焼結することにより作製されている。
【0011】
ここで、本明細書において「筒状」とは、周囲の部材に囲まれることにより、内部に空洞が形成される形状を含む概念であり、断面形状が円形、楕円形、多角形等であってもよい。
【0012】
このような構成によれば、空間に配置されたフィルターが緩衝材に囲まれているので、振動等によりフィルターに荷重が作用しても、緩衝材でその荷重を吸収することができる。また、複数のフィルター同士が衝突するのを防ぐこともできる。これにより、フィルターの変形や損傷を防止することができる。したがって、個々のフィルターの耐久性が上がるので、スタック型フィルターの耐震性を向上させることができる。
【0013】
また、上記スタック型フィルターにおいて、前記緩衝材が、ニッケルウールから構成されており、この緩衝材が前記各フィルターの外面全体を囲んでいる構成にすると、柔軟性のある緩衝材によりフィルター全体を覆うことになるので、緩衝材による緩衝効果を更に高めることができる。
【0014】
また、本発明は上記課題を解決するためのモジュール型フィルターであり、並んで配置された上記のスタック型フィルターを複数備え、前記複数のスタック型フィルターは、互いのチャンバーの隔壁が対向するように配置されており、対向する前記隔壁の間に熱伝導性を有する中間部材が配置されており、前記隔壁は、絶縁性を有しているので、隔壁を介して設置しているスタック型フィルター同士を電気的に短絡することなく設置することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスタック型フィルター及びモジュール型フィルターによれば、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るモジュール型フィルターの縦断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】フィルターの製造方法を説明する図である。
【図4】他の実施形態に係るフィルターの断面図である。
【図5】更に他の実施形態に係るフィルターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るモジュール型フィルターの縦断面図である。図2は、図1におけるA−A断面図である。このモジュール型フィルター1は、ディーゼルエンジン等から排出される排ガスを浄化する装置であって、図1及び図2に示すように、上下に配置された板状の一対の集電板14と、一対の集電板14の間において鉛直方向(図1の上下方向)に延びる複数の隔壁10とを備えている。また、モジュール型フィルター1は、隔壁10によって仕切られることにより一対の集電板14の間に形成された空間11を備えている。本実施形態では、一対の隔壁10、10と、その間に形成された空間11によりチャンバー3が構成されており、このチャンバー3が水平方向(図1の左右方向)に並んで複数配置されている。また、モジュール型フィルター1は、空間11に配置された複数のフィルター4、及び、緩衝材12を備えている。すなわち、このモジュール型フィルター1では、各チャンバー3内に複数のフィルター4及び緩衝材12が収容されている。本実施形態では、1つのチャンバー3と、このチャンバー3内に配置された3つのフィルター4及び緩衝材12により、1つのスタック型フィルター2が構成されており、このスタック型フィルター2が水平方向に並んで複数配置されている。また、モジュール型フィルター1は、図示しないケーシング内に配置されている。
【0018】
各隔壁10は、壁面から空間11に向かって突出する突出部材13を複数備えており、この突出部材13は、対向する隔壁10から互いに向き合うように突出している。また、複数の突出部材13は、鉛直方向に間隔をあけて配置されることにより空間11を区切っており、突出部材13で仕切られた空間11にそれぞれフィルター4が配置されている。本実施形態では、鉛直方向に間隔をあけた2つの突出部材13により空間11を3つに仕切っており、3つの空間11にそれぞれフィルター4が配置されている。また、突出部材13は、空間11内の緩衝材12を支持している。
【0019】
隔壁10及び突出部材13の材質としては、電気絶縁性及び熱伝導性を有していれば特に限定されないが、優れた耐熱性の観点から、例えば、セラミックス系の材料や、アルミナ、マイカ材等が好ましい。
【0020】
水平方向に隣接するチャンバー3同士の間には、中間部材15が配置されている。中間部材15は、板状の部材から構成されており、チャンバー3の隔壁10と平行になるように配置されている。また、中間部材15は隣接する隔壁10に密着している。この中間部材15の材質としては、熱伝導性を有していれば特に限定されないが、例えば、金属材、合金材、金属フェルト材等を用いることができ、具体的な金属としては、銀、銅、金、ニッケル、鉄、アルミニウムを好ましく用いることができる。
【0021】
フィルター4は、筒状の固体電解質20と、固体電解質20の外面に配置されたカソード21と、固体電解質20の内面に配置されたアノード22とを備えており、これにより筒状に形成されている。また、フィルター4が筒状に形成されることにより、フィルター4の長手方向(図2の左右方向)に延びる排出ガス流路23が形成されている。つまり、排出ガス流路23は、固体電解質20、カソード21およびアノード22に囲まれることにより、内部の空洞として形成されている。また、2つの筒状のフィルター4が結合することにより8の字上のフィルター4が形成されている。2つの筒状フィルター4の結合部分には、アノード22とカソード21との短絡を防止するためにシール材24が設置されている。
【0022】
排出ガス流路23の一端部には、排出ガス導入部材50が接続されており、排出ガス導入部材50から排出ガス流路23に排出ガスが送られるように構成されている。また、排出ガス流路23の他端部には、排出ガス流路23を密封する端部密封材25が設置されており、排出ガス流路23に送られた排出ガスが他端部から流出しないように構成されている。
【0023】
固体電解質20、アノード22及びカソード21は、多孔質体から構成されており、ガス透過性を有している。したがって、排出ガス流路23に流入した排出ガスが、アノード22、固体電解質20及びカソード21を順に通過してゆき、空間11に流入するように構成されている。排出ガスはこの過程で浄化され、浄化ガスとなる。空間11に流入した浄化ガスは、この空間11からモジュール型フィルター1の外部に排出される。
【0024】
また、固体電解質20、アノード22及びカソード21は、公知のグリーンシートから作製されている。フィルター4の作製方法については、後述する。
【0025】
緩衝材12は、フィルター4同士の隙間や、フィルター4と隔壁10との隙間に充填されることにより、フィルター4の全体を囲むようにチャンバー3内に充填されており、フィルター4の外面全体にわたって接触するように配置されている。集電板14と緩衝材12との接触率は80%〜100%が好ましく、この接触率を下回ると導電率が低下する。緩衝材12の材質としては、電気伝導性及び柔軟性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、炭素繊維やニッケルウール、ニッケルフェルトを用いることができる。これにより、緩衝材12は、フィルター4とフィルター4との間を電気的に接続するインターコネクターの機能を果たす。
【0026】
また、モジュール型フィルターの上下端に設置された集電板14の材質としては、導電性かつ緻密性を有していれば特に限定されないが、例えば、金属板を用いることができ、本実施形態では、ニッケル板を用いている。集電板14は、緩衝材12と接触するように配置されており、これにより、各フィルター4のカソード21と集電板14とが緩衝材12を介して電気的に接続されている。またチャンバー3の排出ガス流入側の一端部は、排出ガス導入部材50で連結されている箇所を除いてシール材28で封止されている。また各フィルター4のアノード22の内面には各々集電体26が、アノード22に沿うように設置されており、集電体26に固定した集電線27は、端部密封材25に形成された孔(図示せず)からフィルター4の外へ取り出されている。また、一対の集電板14及び集電線27は、図示しない電源(印加手段)に接続されており、電源から集電板14と集電線27を介してアノード22及びカソード21に電圧を印加するように構成されている。
【0027】
次に、フィルターの材料について説明する。
【0028】
フィルター4の固体電解質20としては、従来より知られているイットリウム安定化ジルコニア(ジルコニア系電解質YSZ)、セリア系酸化物(GDC,SDC)、がある。ジルコニア系電解質の場合、350℃以上の高い排気温度下では十分な酸素イオン供給が可能になる、一方、250〜350℃の低温下では、後述するPM粒子の酸化反応を促進させるために、固体電解質20の形状、厚さを調整することで、イオン導電性を向上させることができる。例えば、固体電解質20はその厚さが1μm以上で5mm以下とするのがよく、好ましくは10μm以上で500μm以下である。固体電解質20の厚さが厚すぎると、流入した排出ガスの圧力損失が大きくなるおそれがある。多孔質である固体電解質20における孔の平均孔径は0.5μm以上100μm以下とするのが良く、好ましくは1μm以上30μm以下である。また、気孔率は10%以上80%以下とするのがよく、好ましくは40%以上60%以下である。これらの値が小さくなると導入されるガスの圧力損失が大きくなり、値が大きすぎると単位面積あたりのイオン導電率が小さくなるおそれがある。
【0029】
アノード22及びカソード21は、銀粒子に固体電解質材料を混合し、これを焼成することにより形成される。この際、銀粒子の粒径および固体電解質粒子を0.01μm以上10μm以下とするのが好ましく、例えば1μmの銀粒子と0.1μmの固体電解質粒子とを混合することができる。また、銀と固体電解質材料の混合比率は、固体電解質材料を全体の60vol%以下とするのが好ましく、より好ましくは固体電解質材料を全体において20vol%以上40vol%以下である。
【0030】
また、カソード21には、NOx吸蔵剤を含ませることができる。すなわち、アルカリ土類金属またはアルカリ金属などを含有させることができ、具体的にはカルシウム,ストロンチウム,バリウム,ラジウム,リチウム,ナトリウム,カリウム,ルビジウム,セシウム,フランシウムとすることができる。このうち、安定性等の性質やコスト面で好ましいのは、カルシウム,ストロンチウム,バリウム,カリウムである。
【0031】
アノード22は、厚さが1μm以上5mm以下とするのがよく、好ましくは10μm以上500μm以下である。この厚さが厚すぎると排ガスの圧力損失が大きくなる恐れがある。また、多孔質であるアノード22における孔の平均孔径は0.5μm以上100μm以下とするのがよく、好ましくは1μm以上30μm以下である。気孔率は10%以上80%以下とするのがよく、好ましくは40%以上60%以下である。これらの値が小さくなると流入する排出ガスの圧力損失が大きくなるおそれがある。
【0032】
カソード21は、厚さが1μm以上5mm以下とするのがよく、好ましくは10μm以上500μm以下である。この厚さが厚すぎると排ガスの圧力損失が大きくなる恐れがある。また、多孔質であるカソード21における孔の平均孔径は0.5μm以上100μm以下とするのがよく、好ましくは1μm以上30μm以下である。気孔率は10%以上80%以下とするのがよく、好ましくは40%以上60%以下である。これらの値が小さくなると流入する排出ガスの圧力損失が大きくなるおそれがある。
【0033】
前述した固体電解質20、アノード22およびカソード21は、固体電解質20を中央に挟んだ3層構成であり、3層の総合の厚みは、フィルター4の製造時に曲げる工程を考慮して機械的強度が必要なことから、100μm以上5mm以下とするのが良く、好ましくは500μm以上1mm以下である。これによりフィルター4の破損を防ぐことができる。
【0034】
シール材24の材質としては、BaO−SiO系ガラス,Al−MgO−ZnO−BaO−B−SiO2系ガラス,又は、CaO−MgO−Al−SiO系ガラスを好適に用いることができる。
【0035】
次に、フィルターの製造方法について説明する。
【0036】
図3は、フィルター4の製造方法を説明するための図である。
【0037】
フィルター4を製造するには、まず、固体電解質20、アノード22及びカソード21を作製するための電解質用グリーンシート31、電極用第1グリーンシート32、及び、電極用第2グリーンシート33を作製する。
【0038】
例えば、ドクターブレード法の場合、電極用第1グリーンシート32、あるいは、電極用第2グリーンシート33は、以下の方法で作製することができる。すなわち、上記アノードあるいはカソード材料の粉末に、造孔剤を添加し、バインダー、分散剤および可塑剤を加え、エタノール、2−プロパノールといったアルコール系溶媒からなる分散媒体に分散されているスラリーを作製する。造孔剤の添加量は、5〜20wt%が好ましい。添加されている造孔剤は、焼結の際に燃焼して気化するため、造孔剤が存在していた箇所には空孔が形成される。なお、造孔剤としては、カーボン系粉末や樹脂系粉末が挙げられるが、焼結の際に気化して空孔が形成可能な材料であれば、他の材料を用いるようにしてもよい。
【0039】
また、上記スラリー組成物あるいは混練組成物を作製する際に用いられるバインダーの種類にも制限はなく、公知の有機質もしくは無機質のバインダーを使用することができる。有機質バインダーとしては、エチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルアルコール系樹脂、エチルセルロース等のセルロース類、ワックス類等が例示される。
【0040】
次に、作製したスラリーを公知のドクターブレード法により成形してポリエチレンテレフタレートなどのフィルム上にスラリーの層を形成し、このスラリーの層より溶媒を除去することで乾燥させ、電極用第1或いは第2グリーンシートが形成された状態とする。溶媒としては、アルコール系溶媒に限らず、トルエン,キシレン,及びケトン系などの他の有機溶媒を用いてもよい。また、有機溶媒に限らず、上記混合粉末が、水に分散されたスラリーを用いるようにしてもよい。例えば、所定の分散剤を用いることで、上記混合粉末が水に分散された状態とすることができる。
【0041】
電解質用グリーンシート31は以下の方法で作製する。上記電解質材料の粉末に、バインダー及び分散剤および可塑剤、溶媒を加え、分散されているスラリーを作製する。作製したスラリーは上記電極用グリーンシート32、33と同様にドクターブレード法にてポリエチレンテレフタレートなどのフィルム上にスラリー層を形成する。このスラリーの層より溶媒を除去することで乾燥させ、電解質用グリーンシート31が形成された状態とする。
【0042】
次に、上記の電解質用グリーンシート31、電極用第1グリーンシート32、及び、電極用第2グリーンシート33を用いてフィルター4を作製する。
【0043】
具体的には、図3に示すように、電解質用グリーンシート31の上面に電極用第1グリーンシート32を積層し、下面に電極用第2グリーンシート33を積層し、熱プレスによりグリーンシート同士を融着させることにより、グリーンシート積層体30を作製する(図3(a))。この場合、電解質用グリーンシート31の上面および下面に積層した電極用グリーンシート32、33は各々、電解質用グリーンシート31よりも短く、両端部に電解質用グリーンシート31が露呈した構造となる。次に、グリーンシート積層体30を湾曲させることにより、グリーンシート積層体30の両端部を中心部に接近させ、8の字状のグリーンシート積層体30を作製する(図3(b))。これにより、グリーンシート積層体30を筒状に成形することができる。8の字状にすると、筒状のグリーンシート積層体30が2つ形成される。次に、グリーンシート積層体30の両端部と中心部との間にシール材24を配置する(図3(c))。続いて、グリーンシート積層体30を焼結することにより、筒状のフィルター4が作製される。その後、フィルター4の外面にあるカソード全体にNOx吸蔵剤を吹き付けることにより、NOx吸蔵剤が担持されたカソード21が作製される。本実施形態では、NOx吸蔵剤として、バリウムを用いている。また、フィルター4の内面はアノード22となる。
【0044】
以上のようにして、固体電解質20、アノード22及びカソード21を備える筒状のフィルター4が作製される。
【0045】
次に、以上のように構成されたモジュール型フィルターを用いて排ガスを浄化する方法について説明する。
【0046】
まず、図示しないディーゼルエンジンから排出された排出ガスを、図2に矢印で示したように、排出ガス導入部材50を介して排出ガス流路23に導入する。排出ガス流路23に流入した排出ガスは、アノード22、固体電解質20及びカソード21がガス透過性を有するので、これらを順に通過してゆき、空間11に導入される。このとき、排出ガス中に含まれるPM粒子は、アノード22の表面に捕捉されるため、排出ガスは、PM粒子が除去された状態でカソード21側へ排出される。そして、カソード21にはNOx吸蔵剤が担持されているため、排出ガス中に含まれるNOxが吸蔵される。こうして、排出ガスフィルター4を通過して空間11に排出された排出ガスからはPM粒子及びNOxが除去されるため、排出ガスを浄化し、浄化ガスを生成することができる。
【0047】
こうして、排出ガスの処理が行われている際には、アノード22の表面にPM粒子が堆積し、また、カソード21でNOxが吸蔵されていく。これに対しては、アノード22とカソード21との間に電圧を印加する。これにより、カソード21側に吸蔵したNOxをNへ還元することができるとともに、この化学反応で生じた酸素イオンをカソード21側からアノード22側へ供給することができる。その結果、固体電解質20のアノード22側に存在するPM粒子を酸化して分解することができる。こうして、アノード22及びカソード21でPM粒子及びNOxを除去することができるため、長期間に亘る排出ガスフィルター4の使用が可能になる。
【0048】
以上のようなモジュール型フィルター1によれば、空間11に配置されたフィルター4が緩衝材12に囲まれているので、ディーゼルエンジン等の振動がフィルター4に伝達されても、緩衝材12によりその振動を吸収することができる。また、複数のフィルター4同士が衝突するのを防ぐこともできる。これにより、フィルター4の変形や損傷を防止することができる。したがって、個々のフィルター4の耐久性が上がるので、スタック型フィルター2の耐久性を向上させることができる。
【0049】
また、緩衝材12にニッケルウールを用いて、フィルター4の外面全体を覆うと、緩衝材12による緩衝効果を更に高めることができる。
【0050】
また、隣接するチャンバー同士の間に熱伝導性を有する中間部材15を配置しているので、並列して配置されたスタック型フィルター2相互間において、熱を伝達することができる。したがって、複数のスタック型フィルター2における熱が均一になるように、各スタック型フィルター2に熱を分散させることができる。これにより、不均一な熱分布によるフィルター4の損傷を防止することができ、耐久性を更に向上させることができる。
【0051】
また、シール材24により、カソード21とアノード22との短絡を防止することができると共に、排出ガス流路23からガスが漏出するのを防ぐことができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、フィルター4は、8の字に形成されることにより、2つの筒状部分を備えていたが、筒状に形成されていればその構成は特に限定されず、図4に示すように、円筒状にすることもできる。また、楕円筒状等、種々の形状にすることができる。また、図5に示すように、メガネ形状のフィルター4にすることもできる。メガネ形状にすると、筒状のフィルター4が2つ形成される。このような各種の形状のフィルター4を作製する場合も上述したフィルター4の製造方法と同様に、グリーンシート積層体30を各形状に成形した後、焼結することにより筒状のフィルター4を作製し、その後、フィルター4の外面にNOx吸蔵剤を吹き付ける。
【符号の説明】
【0054】
1 モジュール型フィルター
2 スタック型フィルター
3 チャンバー
4 フィルター
10 隔壁
11 空間
12 緩衝材
14 集電板
20 固体電解質
21 カソード
22 アノード
30 グリーンシート積層体
31 電解質用グリーンシート
32 電極用第1グリーンシート
33 電極用第2グリーンシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性の隔壁で仕切られることにより形成された空間を備えるチャンバーと、
前記空間に間隔をあけて複数配置された筒状のフィルターと、
前記複数のフィルターをそれぞれ囲むように前記空間に充填された導電性を有する緩衝材と、を備え、
前記各フィルターは、電解質用グリーンシート、電極用第1グリーンシート及び電極用第2グリーンシートを積層したグリーンシート積層体を筒状に成形し、成形した前記グリーンシート積層体を焼結することにより作製されている、スタック型フィルター。
【請求項2】
前記緩衝材は、ニッケルウールから構成されており、前記各フィルターの外面全体を囲んでいる請求項1に記載のスタック型フィルター。
【請求項3】
並んで配置された請求項1又は2に記載のスタック型フィルターを複数備え、
前記複数のスタック型フィルターは、互いのチャンバーの隔壁が対向するように配置されており、
対向する前記隔壁の間に熱伝導性を有する中間部材が配置されており、
前記隔壁は、絶縁性を有している、モジュール型フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−163222(P2011−163222A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27377(P2010−27377)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】