説明

スタンドアローン型課金装置の構造

【課題】スタンドアローン型課金装置において、ビルバリとコインメックとの間の空間を削減するとともに、ビルバリから紙幣取り出し作業を簡単に行うことのできる課金装置の構造を提供する。
【解決手段】本スタンドアローン型課金装置の構造は、課金装置筐体11内で水平方向に滑動可能なビルバリ20と、課金装置筐体11内に収納された状態のビルバリ20を課金装置筐体11から一部または完全に引き出した状態まで水平方向に滑動させるスライド機構40を備える。スライド機構は40、課金装置筐体11の片側内壁に水平に設置されたビルバリ引き出し用案内レール41と、該案内レールに係合するようにビルバリ20に設置された係合部材42とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンドアローン型課金装置の構造に関し、より詳細には、課金装置に収容されるビルバリの操作性を維持しながら省スペースを可能にした前記課金装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機や住民票印刷装置等の横に設置されるスタンドアローン型の課金装置は、一般に、ビルバリと呼ばれる紙幣鑑別装置とコインメックと呼ばれる硬貨鑑別装置とで構成される。
【0003】
コインメックやビルバリの形状は、それらを発案したメーカーがデザインしたものが現在まで踏襲されてきたため、形状・寸法がほぼ類似している。そして、ビルバリやコインメックは、通常、自動販売機内で使用されるため、その取り付け方法に特徴を有する。具体的には、自動販売機の前面扉裏側にビルバリやコインメックが設置される。自動販売機等の前面扉の専用投入口から硬貨や紙幣が入れられ、前面扉のビルバリやコインメックがそれらを回収し、集金や釣銭合わせが行われる。
【0004】
自動販売機等で使用される上記の形状および設置形態を有するビルバリやコインメックを用いてスタンドアローン型課金装置を構築する従来例を図4に示す。図4の従来装置でビルバリやコインメックを接近した状態で配置すると、裏側から紙幣やコインの回収することが困難なため、通常、課金装置前面にビルバリおよびコインメックの現金回収扉が設置される。前記現金回収扉を前面に設けたくない場合は、ビルバリから紙幣を回収するためにビルバリとコインメックとの間に手を入れて紙幣を回収するスペースが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の課金装置の構造では、ビルバリに集められた紙幣を定期的に回収するために、ビルバリ専用の現金回収扉が必要であるか、あるいは、ビルバリとコインメックとの間に紙幣を回収するためのスペースが必要であった。
【0006】
本発明の目的は、スタンドアローン型課金装置の構造において、ビルバリとコインメックとで占める容積を削減するとともに、ビルバリから紙幣取り出し作業を簡単に行うことの可能な課金装置の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、ビルバリの設置構造を改変することで解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、スタンドアローン型の課金装置筐体内で水平方向に滑動可能なビルバリと、課金装置筐体内に収納された状態のビルバリを課金装置筐体から一部または完全に引き出した状態まで水平方向に滑動させるスライド機構を備えた課金装置の構造を提供する。本発明の課金装置の構造は、課金装置筐体に設置したスライド機構とビルバリとを連合させることにより、ビルバリを正確な位置かつ容易に移動させる。
【0008】
前記スライド機構は、前記課金装置筐体の片側内壁に水平に設置されたビルバリ引き出し用案内レールと、該案内レールに係合するように前記ビルバリに設置された係合部材とからなることが好ましい。
【0009】
前記スライド機構は、該ビルバリの上方および下方に設置されることが好ましい。
【0010】
本発明の課金装置の構造は、前記ビルバリの紙幣取り出し側に接近した状態でコインメックを配置する場合に有利である。
【0011】
前記係合部材は、例えば矩形レールからなる。
【0012】
本発明のスタンドアローン型課金装置の構造によれば、ビルバリの紙幣取り出し側にコインメックを配置した場合にビルバリとコインメックとの間隔を最小限に狭めても、従来のようなビルバリの紙幣回収用扉を設ける必要が無い。しかも、本発明の課金装置の構造では、ビルバリに収まった紙幣の回収が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従う一実施形態のスタンドアローン型課金装置の構造の部分斜視図であって、ビルバリが課金装置前面方向に引き出された状態を示す。
【図2】図1の課金装置の部分正面図であって、課金装置内部を示す図である。
【図3】図1の課金装置であって、扉を開けた状態の斜視図(A)と、正面図(B)を示す。
【図4】従来技術の課金装置の正面図(A)とその側面図(B)であって、課金装置内部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態を添付の図1〜3を用いて説明する。ただし、本発明は、これらの図に記載されるものに限定されない。図1において、スタンドアローン型課金装置10は、課金装置筐体11と、課金装置10に収容されるビルバリ20およびコインメック30と、ビルバリ20を課金装置前面に引き出すためのスライド機構40とを備える。
【0015】
課金装置筐体11は、ビルバリ20およびコインメック30を収納する専用ボックスである。課金装置筐体11の上部にビルバリ20とコインメック30とが接近した状態で収納され、下部には課金装置制御部15が設置される。
【0016】
ビルバリ20は、自動販売機等に設置される紙幣識別機ユニットであり、ビルバリデータとも呼ばれる。ビルバリ20は、課金装置筐体11の一側面に紙幣挿入口22が設けられるように課金装置筐体11内に収容される。ビルバリ20は、後述するスライド機構40により、課金装置筐体11内に水平方向に出し入れ可能である。ビルバリ20の裏面には、紙幣取り出し用フック21が取り付けられている。
【0017】
スライド機構40は、課金装置筐体11の片側内壁に水平に設置されたビルバリ引き出し用案内レール41と、該案内レールに係合するように前記ビルバリ20に設置された係合部材42とからなる。
【0018】
スライド機構40は、ほぼ水平に設置されるが、少し前傾または後傾していてもよい。ほぼ水平の場合はビルバリを引き出した状態での作業が容易となり、前傾の場合はビルバリを引き出しやすくなり、そして、後傾の場合はビルバリを収納しやすくなる。
【0019】
スライド機構40は、課金装置筐体11内に収納された状態のビルバリ20を課金装置筐体から一部または完全に引き出した状態まで水平方向に滑動させる。ビルバリ20のビルバリ紙幣取出フック21をコインメック側に開くために、スライド機構40は、課金装置筐体11内に収納されたビルバリ20を課金装置筐体前面方向に完全に引き出した状態まで滑動できることが好ましい。
【0020】
ビルバリ引き出し用案内レール41は、これと連合する係合部材42を水平に安定した状態で案内するためにある。案内レール41は、少なくともビルバリの奥行きの分だけ長尺であればよい。さらに、案内レール41は、図1に示すように、課金装置筐体11から伸縮可能に延在するようにしてもよい。これは、1本の案内レールにもう1本の案内レール(以下、中間レールという)を摺動自在に連結することにより達成できる。中間レールがあると、係合部材42を引き出す途中で中間レールがアームのように伸びてビルバリ20の荷重を支える点で有利である。
【0021】
案内レール41の断面形状は、平板、L形、コ形、U字形等であり得るが、案内レール41と係合部材42との係合を確実にするために上方に開放した断面L形または断面コ形のような矩形が好ましい。
【0022】
案内レール41は、ビルバリ20の荷重に耐えるための剛性を有する金属等でできており、例えばステンレス、鉄、アルミニウム等である。案内レール41は、課金装置筐体11の内側面にリベット、螺子等の適宜の緊締手段で固定されている。
【0023】
ビルバリ引き出し用案内レール41の前端近傍やビルバリ20の側面にリミットストッパやロック機構(図示せず)を設けてもよい。リミットストッパ等にビルバリの係合部材42の終端が当接することで、ビルバリ20を不用意に引き出し過ぎたり、さらに落下させたりすることがなくなる。
【0024】
ビルバリ引き出し用案内レール41と連合する係合部材42は、ビルバリ20を課金装置筐体11から前面に引き出す際に、ビルバリ20が案内レール41にしっかり保持される機能と形状を有するものであれば特に制限されない。図1では、矩形レールが採用されている。
【0025】
該矩形レールは、ビルバリ20本体、あるいはビルバリを取り付けるためのブラケット12に、ビルバリ引き出し用案内レール41と係合する位置に水平に設置される。係合部材42は、ビルバリ本体等にリベット、螺子等の適宜の緊締手段で固定される。
【0026】
ビルバリ引き出し用案内レール41と係合部材42との滑動をよりスムースにするために、案内レール41または係合部材42のいずれか一方にローラ、ベアリング(図示せず)等を敷設してもよい。ローラ等により走行面の摩擦が緩和され、ビルバリ20を引き出す力を低減し、スライド機構40の延命にもなる。
【0027】
スライド機構40の設置位置は、ビルバリ20と課金装置筐体11の内側面との接触する一または複数の場所であれば制限されない。図1のように、ビルバリ20の上方および下方であることが好ましい。上下の両スライド機構40によりビルバリ20を保持することにより、ビルバリの安定がより一層確保される。上下のスライド機構40は、同一または別種のものでよい。図1では、上下の係合手段42は矩形レールであるが、下方をローラにすることもできる。
【0028】
本発明のスタンドアローン型課金装置の構造は、ビルバリ20の紙幣取り出しフックの前面(ビルバリ20の裏面)に、ビルバリ20と接近した状態でコインメック30を配置することができる。コインメックの向きは特に制限されない。コインメック30は、釣銭機能内蔵の硬貨循環式セレクターである。コインメックは、コインチェンジャーやコインメカニズムとも呼ばれる。10円、50円、100円、500円等の硬貨の選別部には、電子式硬貨選別機が使用されている。この電子式硬貨選別機は、硬貨の真偽を機械的に検査するのではなく、センサと電子回路により正貨か否かを判別する。
【0029】
硬貨は、課金装置10の天板に設置された硬貨投入口31より入れられ、硬貨投入用通路32を通ってコインメック30に進入する。硬貨は、コインメック30で選別された後、10円、50円、100円、500円等のコインメック内の釣銭カセットチューブ(図示せず)に格納される。釣銭用カセットチューブ取り出しフック33を前へ引くことによりカセットが開けられ、釣銭カセットチューブに格納された硬貨が回収される。なお、釣銭カセットチューブに格納しきれなかった硬貨は、金庫36内に収容される。一方、課金装置10の天面に設置された硬貨返却レバー34により返却が希望されると、入れられた硬貨は硬貨返却口35に回される。そして、釣銭が必要とされるときも、釣銭用硬貨がモーター(図示せず)によって硬貨返却口35に出される。これらの機構は、従来のものと同様である。
【0030】
コインメック30は、課金装置筐体11内に螺子、ビス等の固定手段を用いて固定される。また、スライド機構40をコインメック側にも敷設して、コインメック30自体を課金装置の前面に引き出すようにしてもよい。これにより、コインメック専用の現金回収扉を設ける必要がなくなる。
【0031】
本発明のスタンドアローン型課金装置の構造の操作方法を、以下に説明する。まず、課金装置10の紙幣投入口20から紙幣が投入され、ビルバリ20に貯まる。紙幣が貯まった段階で、課金装置筐体11の扉13の鍵14を開けて、ビルバリ20を扉の解放側に完全に引き出す。次に、ビルバリ20の紙幣取り出しフック21をコインメック側に倒して、ビルバリ20の紙幣収容ボックスを開放する。ビルバリ20内の紙幣を回収した後、上記の逆の順に操作する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のスタンドアローン型課金装置の構造は、ビルバリおよびコインメックを具備する各種課金装置に使用することができる。具体的には、コピー機、住民票、謄本、印鑑証明、納税証明等の印刷装置、自動生ビールサーバー、娯楽機器等の横に設置する。本発明の課金装置の構造は、特に最小容積設計が必要とされる場所に好適である。
【符号の説明】
【0033】
10 課金装置
11 課金装置筐体
12 ビルバリ固定用ブラケット
13 課金装置扉
14 扉用鍵
15 課金装置制御部
20 ビルバリ
21 紙幣取り出しフック
22 紙幣投入口
30 コインメック
31 硬貨投入口
32 硬貨投入用通路
33 釣銭用カセットチューブ取り出しフック
34 コイン返却レバー
35 硬貨返却口
36 金庫
40 スライド機構
41 ビルバリ引き出し用案内レール
42 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
課金装置筐体内で水平方向に滑動可能なビルバリと、課金装置筐体内に収納された状態のビルバリを課金装置筐体から一部または完全に引き出した状態まで水平方向に滑動させるスライド機構を備えたスタンドアローン型課金装置の構造。
【請求項2】
前記スライド機構は、前記課金装置筐体の片側内壁に水平に設置されたビルバリ引き出し用案内レールと、該案内レールに係合するように前記ビルバリに設置された係合部材とからなる、請求項1に記載のスタンドアローン型課金装置の構造。
【請求項3】
前記スライド機構を、該ビルバリの上方および下方に設置した、請求項1に記載のスタンドアローン型課金装置の構造。
【請求項4】
前記ビルバリの紙幣取り出し側に接近した状態でコインメックを配置した、請求項2または3に記載のスタンドアローン型課金装置の構造。
【請求項5】
前記係合部材は、矩形レールからなる、請求項1〜4のいずれかに記載のスタンドアローン型課金装置の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−70637(P2011−70637A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106165(P2010−106165)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3155976号
【原出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(500320501)株式会社オクト (3)
【Fターム(参考)】