説明

スタンドパイプの消火栓接続構造、消化栓接続補強材、及びスタンドパイプ

【課題】地下式消火栓の使用中に破損したり、外れたりすることを防ぎ、安全性に優れ、消火活動にも支障をきたすことのない、スタンドパイプの消火栓への接続構造を提供する。
【解決手段】スタンドパイプ下端において係止爪1Cを有した受け口部品1の先側に取り付けられ、スタンドパイプ10の軸方向に沿って、少なくとも受け口部品1の先部から受け口部品1よりも下方先側までを覆う枠体2を有し、受け口部品1の係止爪1Cが差し込み部品3に係止した係止状態において、枠体2が、係止爪1Cの係止部よりも先側すなわち軸方向基部寄りの位置にて、差し込み部品3を全周に亘って囲う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面下に設けられた地下式の消火栓に接続させるスタンドパイプの接続構造、この接続構造において使用される消火栓接続補強材、及び、地下式消火栓へ接続可能なスタンドパイプであって前記接続構造を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
地下式消火栓に消防用ホースを接続する際には通常、スタンドパイプが用いられる。スタンドパイプは一端を消火栓に接続することにより立設することが可能な剛性のあるパイプである。スタンドパイプの他端には消防用ホースの接続口が設けられている(特許文献1参照)。
【0003】
路面穴内に配置された床式路面穴内に配置された床式の消火栓に接続する消火用のスタンドパイプとして、従来、引き揚げ式の接続構造を備えたものが存在する(特許文献1参照)。また、特許文献2に開示されるスタンドパイプは、一端には導入口と接続するための雄ねじが切られており、他端には差し込み式の地下式消火栓の給水口に差し込むための差込部(差し込み式の雌の接続金具)が設けられている。このスタンドパイプは、保管時に場所をとらないように導入口に着脱可能としてもよい、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−12667号公報
【特許文献2】特開2010−189880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のスタンドパイプは、いわゆる町野式と呼ばれる継ぎ手の係止構造のみでその下端と消火栓とが接続されており、実質的には、消火栓接続端の周溝内へ弾性突出した爪体の突出力によって係止力を保つものであった。このように係止接続されたスタンドパイプにおいて上部先側の吸管を取りまわすと、構造上、パイプ下端の接続部に大きなモーメントがかかり、スタンドパイプ下部のシメ輪等が破損することがあった。特に、スタンドパイプの先の吸管は放水車に接続して使用する場合があり、接続部にかかるモーメントそのものを抑えることは困難である。地下式消火栓の使用中にシメ輪が破損すると、吸管が接続されたままスタンドパイプが消火栓から外れ、水圧によって路上に飛び出すといった事態にもなり、非常に危険である。このようなスタンドパイプの破損は消火活動にも支障をきたすものであり、消防庁においても訓練中の破損事故の情報が提供されるなど、接続構造の早急な改善が求められている。
【0006】
そこで本発明は、地下式消火栓の使用中に破損したり、外れたりすることを防ぎ、安全性に優れ、消火活動にも支障をきたすことのない、スタンドパイプの消火栓への接続構造及びこれを備えたスタンドパイプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成すべく本発明は以下(1)〜(6)の手段を講じている。
(1)本発明のスタンドパイプの消火栓接続構造は、スタンドパイプ下端において係止爪1Cを有した受け口部品1の先側に取り付けられ、スタンドパイプのパイプ10軸方向に沿って、少なくとも当該受け口部品1の先部から受け口部品1よりも下方先側までを覆う枠体2を有し、受け口部品1の係止爪1Cが差し込み部品3に係止した係止状態において、前記枠体2が、係止爪1Cの係止部よりも先側すなわち軸方向基部寄りの位置にて、差し込み部品を全周に亘って囲うことを特徴とする。
【0008】
上記構成における枠体2が、係止爪1Cの周囲(好ましくは係止爪1Cよりも上方位置)から、係止爪1Cよりも先方であって消火栓の差し込み部品3の基部寄りの位置までを周方向に覆うことで、図7に示すように、モーメントが発生した時、係止部より先側の枠体2下部にて差し込み部品3の周部に接触して枠体が係止部の係止構造の周囲から先側までを突っ張った状態となる。これにより、係止部の部品同士の極端な傾きの発生を抑え、スタンドパイプが極端に傾倒しないように支え、パイプ10の起立状態を維持することができる。
【0009】
(2)前記スタンドパイプの消火栓接続構造において、差し込み部品3は上方を向いた差し込み管からなり、その下部が外周側方へ張り出した支持材によって路面穴内に支持固定されるものであり、
前記枠体2は、パイプ10軸と並行に伸長して係止爪1Cの係止部よりも下方へ突出する筒状体と、この筒状体の下端を覆う孔開き板とから構成され、
差し込み部品3と受け口部品1の係止爪1Cとが係止した係止状態において、前記筒状体が受け口部品1を囲って吊設されると共に、前記孔開き板が差し込み部品3の周部を囲って前記支持材の上面4Fに載置された状態で設置されることが好ましい。
【0010】
具体的には例えば、筒状体はスタンドパイプ下部またはスタンドパイプ下端の受け口部品を挿通させ得る挿通孔が、パイプ10軸と並走形成され、この挿通孔の孔縁がスタンドパイプ10下部または受け口部品1に周方向から係止して抜け止め状態となる。また、筒状の枠体の下部は、差し込み部品を挿通させ得る下部孔を有した孔開き板によって孔開き状態で閉塞され、この下部孔の孔縁が差し込み部品3の周囲を囲った状態で孔開き板が支持材の上面4Fに載置された状態となる。
【0011】
(3)前記いずれかのスタンドパイプの消火栓接続構造において、差し込み部品3は上方を向いた差し込み管からなり、差し込み管の管端付近の外周に、係止爪を係止させ得る係止溝3Dと、係止溝3D内の係止爪1Cの係止をスライド移動によって解除させ得るスライド部材32とが設けられてなり、
また、前記枠体2は、パイプ10軸と並行に伸長して、パイプ10軸方向へスライド移動可能に吊設されてなり、
枠体2をパイプ10軸上方へスライド移動させると同時に又はその後に、スライド部材32を下部から係止溝3D上へスライド移動させることで、係止溝3D内へ突出係止した係止爪1Cを周方向へ押し出して係止解除させ得ることが好ましい。
【0012】
枠体2が受け口部品1を囲って吊設された状態から、受け口部品1と近接するようにパイプ10軸方向へスライド移動し得る。スライド部材32による係止解除操作の際に枠体2をスライド移動させることで、係止解除操作を容易に行うことができる。
【0013】
(4)前記(3)記載のスタンドパイプの消火栓接続構造において、スライド部材32は、差し込み管の周囲へ張り出した張り出し片を有するものであって、
前記枠体2は、パイプ10軸と並行に伸長して係止爪1Cの係止部よりも下方へ突出する筒状体と、この筒状体の下端を覆う孔開き板とから構成され、
差し込み部品3と受け口部品1の係止爪1Cとが係止した係止状態において、前記筒状体が受け口部品1を囲って吊設されると共に、前記孔開き板の下面が差し込み部品3の周部を囲って張り出し片の上面に接した状態で設置されることが好ましい。
【0014】
差し込み部品3の差し込み管にスライド部材32が周設され、このスライド部材32の張り出し片の上面に孔開き板の下面が面接触することで、孔開き板が、差し込み部品の周部に安定して配設される。スライド部材32は係止状態においては係止溝3Dよりも下方にスライド配置されるため、枠体の孔開き板が係止構造よりも下方の位置にて、張り出し片によって安定的に保持されることとなる。これにより、枠体2が、差し込み部品3の係止構造からその下部までを枠状に囲うことができる。
【0015】
(5)本発明の消化栓接続補強材は、前記いずれか記載の枠体2からなるものであって、既存のスタンドパイプの先部周囲に着脱可能な取り付け構造を有することが好ましい。すなわち前記いずれか記載の消火栓接続構造における枠体2が着脱可能な取り付け構造を有し、それ自体で消火栓接続補強材として成り立つ。
【0016】
消火栓接続補強材は後述の実施例のように、取り付け構造によってスタンドパイプの先部周囲に先に取り付けるものでもよく、係止状態にあるスタンドパイプと消火栓の係止部周囲に取り付けるものでもよい。なお実施例の消火栓接続補強材は、筒状体を受け口部品1へ係止させるための弾性係止材が、筒状体に対して分離可能となっており、係止によって受け口部品1に取り付けた弾性係止材を筒状体から分離させることで、スタンドパイプに対して消火栓接続補強材が取り外し可能となっている。係止爪1Cを有した既存のスタンドパイプに対して取り付ける消火栓接続補強材とすることで、新規な消火栓接続構造に交換する手間を要せず、従来の係止構造(接続構造)に後付けで設置するだけで安価かつ容易に接続構造の補強を行うことが可能である。また着脱自在とすることで、消火栓接続補強材の取り付け後に取り外して既存の係止構造のメンテナンスや状態のチェックを行うことができる。
【0017】
(6)本発明のスタンドパイプは、差し込み部品3を先端に有する地下式の消火栓に係止可能な、係止爪1Cを内蔵した受け口部品1を下端に有し、吸管への接続構造を上端に有した接続パイプ10からなり、受け口部品1と差し込み部品3とが係止することで路面上方にまで直立状態に設置されるものであって、受け口部品1の先側に前記いずれか記載の枠体2又は消火栓接続補強材が取り付けられてなることを特徴とする。
【0018】
消火栓側の係止構造を交換することなく、前記枠体2又は消火栓接続補強材を備えたスタンドパイプを取り付けることで、係止爪1Cによる係止構造の周囲を枠材によって枠保持することができ、係止構造の補強を容易かつ確実に行うものとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記手段を講じることで、枠体2が係止構造の周囲を軸方向先方まで枠保持し、接続部の角度の変位を枠囲によって制限することで、補強地下式消火栓の使用中に吸管の取り回しによって接続構造に大きなモーメントがかかった場合でも、接続構造が破損したり、接続部が外れたりすることを防ぎ、これによって安全性に優れ、消火活動にも支障をきたすことのない、スタンドパイプの消火栓への接続構造、消火栓接続構造補強材、あるいはこれを備えたスタンドパイプを提供するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の消火栓接続補強材を含むスタンドパイプの構成を示す断面説明図。
【図2】実施例1のスタンドパイプの消火栓接続構造の係止状態における断面説明図。
【図3】図2の消火栓接続補強材周りの拡大説明図。
【図4】実施例1のスタンドパイプの消火栓接続構造の係止解除状態における断面説明図。
【図5】実施例2のスタンドパイプの消火栓接続構造の係止状態における断面拡大説明図。
【図6】実施例2のスタンドパイプの消火栓接続構造の係止解除状態における断面拡大説明図。
【図7】本発明の実施例の消火栓接続補強材を含むスタンドパイプの使用状態例を示す部分断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を実施するための形態例につき、実施例として示す各図と共に説明する。図1〜図4は実施例1のスタンドパイプの消火栓接続補強材、消火栓接続構造及びスタンドパイプを示し、図5,6は実施例2のスタンドパイプの消火栓接続補強材、消火栓接続構造及びスタンドパイプを示し、図6は実施例1のスタンドパイプの使用状態例を示す。
【0022】
いずれの実施例においても、本発明のスタンドパイプの消火栓接続構造は基本的に、スタンドパイプ下端において係止爪1Cを有した受け口部品1の先側に取り付けられ、スタンドパイプのパイプ10軸方向に沿って、少なくとも当該受け口部品1の先部から受け口部品1よりも下方先側までを覆う枠体2を有し、受け口部品1の係止爪1Cが差し込み部品3に係止した係止状態において、前記枠体2が、係止爪1Cの係止部よりも先側すなわち軸方向基部寄りの位置にて、差し込み部品を全周に亘って囲うものである。
【0023】
(受け口部品1)
受け口部品1は、スタンドパイプのパイプ10の直管下端に固定された多段柱体からなり、パイプ10と同軸の断面円形の受け口を下端に有する。受け口の口端部近傍には口部内縁に沿って複数の係止爪1Cが内部拡径した内円柱状の収容空間内に収容され、その先側に下端枠11が螺合固定される。係止爪1Cは3個又は4個が軸周りに均等に配置された部分円弧板からなり、軸中央側が曲面状に面取りされて四半円形状の爪断面を有する。
【0024】
前記収容空間に収容された各係止爪1Cは、パイプ10の外周側にて垂直形成された端部が常時、軸中心側へ弾性付勢され、突出状態(S1)を維持する。この内部突出した係止爪1Cの爪先が、受け口部品1内に差し込まれた差し込み部品3の係止溝3D内に入り込むことで係止する。
【0025】
一方、突出状態の係止爪1Cの外周側の端部を保持する外側の保持枠が移動するか、或いは係止爪1Cの軸中央側(爪先側)にスライド部材23が押し込まれることによって、突出状態から一時的に非突出状態(S2)となる。この非突出状態は外部からの係止解除操作によって係止解除状態として一時的に保たれ、この係止解除状態のまま差し込み部品を受け口部品から引き抜くことで、受け口部品1と差し込み部品3との係止接続が解除される。
【0026】
(枠体2)
枠体2は、パイプ10軸と並行に伸長して係止爪1Cの係止部よりも下方へ突出する筒状体と、この筒状体の下端を覆う孔開き板とを有して構成され、枠体2全体が、パイプ10軸と並行に伸長して、パイプ10軸方向へスライド移動可能に吊設される。このうち枠体2の筒状体は、係止爪1Cによる係止位置と同一又はこれよりも上方位置から、係止爪1Cよりも先方(パイプ10軸方向下方)であって消火栓の差し込み部品3の基部寄りの位置までを周方向に覆う。より好ましくは、図3あるいは図5に示すように、係止爪1Cよりも上方位置にある受け口部品1の側部から、係止爪1Cよりも下方位置にある差し込み部品3の支持材4の上部までを、パイプ10軸方向に沿って枠体2の筒状体で側囲し、枠体2の下枠部を構成する孔開き板の内孔縁が、差し込み部品3と近接した位置にて差し込み部品3を覆う。これにより、図7に示すように吸管18が引っ張られてモーメントが発生した時、枠体2が係止部より先側の枠体2下部にて差し込み部品3の周部に接触して、係止部の係止構造の周囲から先側までを突っ張った状態となる。そして、係止部の部品同士の極端な傾きの発生を抑え、スタンドパイプが極端に傾倒しないように支え、パイプ10の起立状態を維持することができる。
【0027】
筒状体の筒孔の内部には、パイプまたは受け口部品1へ係止する係止材が軸中心方向へ突出形成されており、この係止材がパイプ又は受け口部品の周側部へ圧着して係止状態を維持することで、前記筒状体が受け口部品1を囲って吊設される。この吊設状態においては、図2〜4または図5に示すように、筒状体が下方にずれてその底部の前記孔開き板が差し込み部品3の周部を囲うように載置された状態となる。
【0028】
具体的には例えば、筒状体はスタンドパイプ下部またはスタンドパイプ下端の受け口部品のいずれかを挿通させ得る挿通孔が、パイプ10軸と並走して内部形成され、この挿通孔の孔縁がスタンドパイプ10下部または受け口部品1に周方向から係止して抜け止め状態となる。また、筒状の枠体の下部は、差し込み部品を挿通させ得る下部孔を有した孔開き板によって孔開き状態で閉塞され、この下部孔の孔縁が差し込み部品3の周囲を囲った状態で孔開き板が支持材の上面4Fに載置された状態となる(図2〜4及び図5)。
【0029】
あるいは、差し込み部品3と受け口部品1の係止爪1Cとが係止した係止状態において、前記筒状体が受け口部品1を囲って吊設されると共に、前記孔開き板の下面が差し込み部品3の周部を囲って張り出し片の上面に接した状態で設置された状態となる(図5)。ここで孔開き板の下面は、スライド部材32の張り出し片の上面に載置された状態、或いは前記したように、支持材の上面4Fに載置された状態の少なくともいずれかの状態であればよい。なお図5(実施例2)では孔開き板の下面中央側に切り欠き部2Dを設けることで、孔開き板の下面は、スライド部材32の張り出し片の上面、及びその外側の支持材4の上面の両方に接した状態で載置されている。
【0030】
枠体2はまた、受け口部品1を囲って吊設された状態から、受け口部品1と近接するようにパイプ10軸方向へスライド移動し得る。スライド部材32による係止解除操作の際に枠体2をスライド移動させることで、係止解除操作を容易に行うことができる。例えば図6に示すように、枠体2をパイプ10軸上方へスライド移動させると同時に又はその後に、スライド部材32を下部から係止溝3D上へスライド移動させることで、係止溝3D内へ突出係止した係止爪1Cを周方向へ押し出して係止解除させ得る。
【0031】
(差し込み部品3)
差し込み部品3は上方を向いた差し込み管からなり、その下部が外周側方へ張り出した支持材によって路面穴内に支持固定される。差し込み管の管端付近の外側面には、係止爪を係止させ得る係止溝3Dと、係止溝3Dの上部溝側部に形成された拡径端部31とが、管端にかけて隣接形成され、さらに、差し込み管の周部には、外周係止溝3D内の係止爪1Cの係止をスライド移動によって解除させ得るスライド部材32が、差し込み管に対して軸方向へスライド遊動可能に設けられる。
【0032】
(係止構造)
差し込み部品3と受け口部品1とを係止させる係止構造は、受け口部品1内に収容した複数の係止爪1Cが、受け口部品1内に差し込まれた差し込み部品3側へ係止するものとして構成され、係止爪1Cが係止溝3D内に突入し、溝側部の拡径端部31に引っ掛って係止状態が維持される。
【0033】
(消化栓接続補強材)
そして本発明の消化栓接続補強材は、図1に示すように、既存のスタンドパイプの先部周囲に着脱可能な取り付け構造を有する枠体2からなる。すなわち前記いずれか記載の消火栓接続構造における枠体2が着脱可能な取り付け構造を有し、それ自体で消火栓接続補強材として成り立つ。消火栓接続補強材として、係止爪1Cが係止溝3D内に突入した係止状態の係止部を、係止部よりも上方の軸方向位置から下方の軸方向位置にかけて枠体2で覆い、枠体2の端部によって支持接点を増やすことで、消火栓接続構造を補強するものとなっている。例えば、従来の補強材を備えない係止構造は、各係止爪1Cの爪先端のみで係止して消火栓の接続を部分的に周状保持していたところ、前記枠体2からなる接続補強材を取り付けることで、係止爪1Cの弾性突出力による係止に加え、枠体2の上下の枠部によっても受け口部品1、差し込み部品3を支えることとなり、係止爪1Cによる周上保持の上下位置を枠支持することで、消火栓の接続状態をより安定的に保持するものとなる。
【0034】
(スライド部材32)
スライド部材32は、差し込み管の周囲に遊挿された短筒部と、短筒部の長さ方向中央から周囲へ円形状に張り出した張り出し片とから一体的に構成される。係止解除操作時には、この張り出し片を外部から掴んでパイプ10軸方向上方へスライド移動させることで、短筒部が係止溝3Dから外れた下部位置から係止溝3D上に押し出され、短筒部上縁が、内部突出した係止爪1Cを外周方向へ押し出して係止解除状態(非係止状態S2)に強制移行させる(図6)。
【0035】
(スタンドパイプ)
本発明のスタンドパイプは、差し込み部品3を先端に有する地下式の消火栓に係止可能な、係止爪1Cを内蔵した受け口部品1を下端に有すると共に、吸管への接続構造15を上端に有した接続パイプ10からなる。スタンドパイプは下端から上部まで縦方向の管軸の直管で構成され、その上部が直管の管軸に対して直交する一側方へ折れ曲がったベンド管からなる。ベンド管は下端に受け口部品1が固定され、上端に吸管への接続構造15が設けられる。
【0036】
消火栓の差し込み部品3が受け口部品1内に差し込まれた状態で、受け口部品1内蔵の係止爪1Cが差し込み部品3側へ突出係止することで、ベンド管下端が消火栓に接続され、直立した直管部分の上半部及びこれに連なるベンド部分が路面上方に突出配置される。そして、このスタンドパイプ下端の受け口部品1の先側に、前記枠体2からなる消火栓接続補強材が取り外し可能に取り付けられる。消火栓側の係止構造を交換することなく、前記枠体2からなる消火栓接続補強材が係止爪1Cによる係止構造の周囲を先側まで一体的に枠保持することで、係止構造の補強を容易かつ確実に行うものとなる。
【0037】
なおスタンドパイプは管上部のベンド部外側に長円状にループ形成されたハンドル17が固定され、ベンド部の先側であって接続構造15よりも基部側には、接続構造15の接続解除用の第二スライド部材16が遊動可能に周設される。第二スライド部材16は筒状本体の中央部に円板状の張り出し片が周囲に張り出し形成され、この張り出し片を操作してスライド移動させ得るものとしている(図1)。
【0038】
(使用方法例)
上記構成の枠体を使用する際は、例えば図1のように受け口部品1の先端枠材11の外周を筒状体で囲うように覆い、係止材によって受け口部品またはパイプに係止させて筒状体を吊設させ、スタンドパイプの下端に取り付ける。そして取り付けた状態のまま差し込み部材3を受け口部品1に差し込むことで図2.3または図5のように、係止爪1Cによる係止状態とする。このとき、枠体2の筒状体が枠体2の自重によって下方へスライド移動するか、あるいは筒状体を外力によって下方へ強制的にスライド移動させることで、枠体2の下部が、差し込み部材を支持する支持材4の上面、またはスライド部材32の張り出し片の上面に面接触した載置状態とする(図2、3及び図5)。このように枠体2の孔開き板が載置することで、枠体2が差し込み部品の周部に安定して配設される。この係止接続状態においては、スライド部材32は係止溝3Dよりも下方にスライド配置されるため、枠体の孔開き板が係止構造よりも下方の位置にて、張り出し片によって安定的に保持されることとなる。これにより、枠体2が、差し込み部品3の係止構造からその下部までを枠状に囲うことができる。
【0039】
上記係止接続状態としてスタンドパイプを設置したのち、スタンドパイプ上端の接続構造15を接続継ぎ手18Cを介して吸管18に接続し、そして路面穴MH内のバルブキー4Kにバルブハンドルを取り付けて消火栓を開弁させることで、地下式消火栓を使用することができる(図7)。スタンドパイプに連結された吸管8は例えばポンプ車(放水車)に接続することで、消火放水に用いることができる。ここで、吸管18の取り回しの状態によって、例えば図7に示すように連結構造15を引っ張るようなモーメントが発生する場合がある。このようなモーメント発生時には、枠体2の下枠部を構成する孔開き板の下部孔の孔縁が差し込み部品と接触し、係止爪1Cの係止位置と異なる位置で受け口部品及び差し込み部品を一体的に枠支持する。
【0040】
互いに係止接続させたスタンドパイプと消火栓を係止解除して分離させるときは、スライド部材32を、差し込み管の管外周に沿って係止溝3Dの下方から溝上部へスライド移動させることで、係止溝3D内へ突出係止した係止爪1Cを外周方向へ押し出した非突出状態(係止解除状態)(S2)とし、この状態から差し込み部材3を引き抜くことで受け口部品1から分離させる(図6)。
【実施例1】
【0041】
図1〜4に示す実施例1においては、枠体2が、底部に孔開き板を有した筒状体によって一体成形された剛性の内部円筒体21と、内部円筒体21を外周側部から両側端にかけて取り外し可能に囲う弾性のカバー材22とが嵌め込みによって構成される。この枠体2は図3,4にて矢印で示すように、自重によって軸方向下方へスライド移動し、枠体2の下面が支持材4の上面またはスライド部材23の上面に当接した載置状態となる。
【0042】
より具体的には、内部円筒体は下端に孔開き板が形成され、孔開き板の中央に形成された下部孔がスライド部材23の短筒部の周囲近傍を囲い、孔開き板の下面がスライド部材23の張り出し片上に当接した状態で載置される。また、内部円筒体の側周部から孔開き板の周縁近傍までをカバー材22が外側に密着して覆い、このカバー材22の下面が支持材4の上端に形成されたフランジ枠4Fの上面4Tに当接した載置状態となる(図3、図4)。
【0043】
(枠体2(消化栓接続補強材))
実施例では、弾性のカバー材22からなる取り付け構造によってスタンドパイプの先部周囲へ取り付け又は取り外し可能な円筒体からなり、カバー材22の上端が軸方向内側に折り返されて円形の上部孔を構成し、この上部孔の孔縁が、抜け止め構造として受け口部品1の周部に係止した状態で取り付けられる。カバー材22の内側に嵌めこまれて固定される円筒体21は、カバー材22の上部孔によって。前記係止部分から下方へ吊設された状態となる。なお、この上部孔による係止部分を受け口部品1の円柱上で軸方向にずらすことで、枠体2が受け口部品1への取り付け後においてもパイプ10軸方向へスライド摺動可能となっている。
【0044】
接続補強材は、係止状態にあるスタンドパイプと消火栓の係止部周囲に取り付けるものでもよい。なお実施例の消火栓接続補強材は、筒状体を受け口部品1へ係止させるための弾性係止材が、筒状体に対して分離可能となっており、係止によって受け口部品1に取り付けた弾性係止材を筒状体から分離させることで、スタンドパイプに対して消火栓接続補強材が取り外し可能となっている。係止爪1Cを有した既存のスタンドパイプに対して取り付ける消火栓接続補強材とすることで、新規な消火栓接続構造に交換する手間を要せず、従来の係止構造(接続構造)に後付けで設置するだけで安価かつ容易に接続構造の補強を行うことが可能である。また着脱自在とすることで、消火栓接続補強材の取り付け後に取り外して既存の係止構造のメンテナンスや状態のチェックを行うことができる。
【0045】
また実施例1のスタンドパイプは、引き揚げレバー13とその連結バー12によって、係止爪1Cを非係止位置まで動かすことのできる、被係止操作式のスタンドパイプである。具体的にはパイプ10の直管部分から上部レバー14が両側方へ張り出し固定され、上部レバー14の下方の直管周部にて引き揚げレバー13が上部ハンドルと近接操作可能に張り出し配置される。引き揚げレバー13は左右それぞれの張り出し部の根元付近に連結バー12が固定され、引き揚げレバー13の近接動作と共に棒軸方向上方へ平行移動する。連結バー12はこの固定部分から下方へ伸長し、その先部がパイプ10の下端に設けられた受け口部品1内に突入して、係止爪1C外側の保持枠(図示せず)に連結される。引き揚げレバー13の操作によって連結バーが引き上げられることで、係止爪1Cを中央側に弾性付勢していた係止爪1C外側の保持枠が上方へ移動し、これによって係止爪1Cが軸中央への突出状態から非突出状態に移行することで、図4に示す被係止状態となる。
【0046】
なお、実施例のカバー材22の上部は、受け口部品1の円柱形の下部よりもわずかに小径、またはほぼ同径の上部孔を有し、この孔縁が受け口部品1の下部と接することによる弾性反力で、受け口部品1に係止して取り付けられる。受け口部品1の側部には段差部1Sを介した上半部が縮径の円柱外形を有してなり、カバー材22を上方へスライド移動させることで、その上部が前記縮径の上半部に到ったときに、枠体2が上方へ自由に移動可能な半取り外し状態(H)となる(図4の2点鎖線)。この半取り外し状態とすることでカバー材22内部の漏水状態を確認したり、内部円筒体21から取り外して清掃したりすることができる。
【実施例2】
【0047】
図5〜6に示す実施例2においては、枠体2が、底部に孔開き板を有した筒状体によって一体成形された剛性の内部円筒体21と、内部円筒体21の筒状体の上部内周面に形成された内溝に嵌めこみ固定された係止リング23とから構成される。係止リング23の係止部は受け口部品1の上半部を下端位置(L)(図5)から上方位置(H)(図6)まで摺動して両位置間の任意位置で係止状態を維持する。下端位置(H)では受け口部品1の側部であって高さ方向中央寄りの位置には、段差によってそれよりも下方を拡径した柱形状とする段差部1Sが設けられる。そして前記係止リング23は内径がこの段差部1Sよりも上部の縮径柱部と同一であるかこれよりもわずかに小径の内径縁からなり、受け口部品1の小径側部を高さ方向へ摺動可能であると共に、摺動の下端位置(L)が、この段差部1Sに係止した固定位置となっている。
【0048】
また実施例2では孔開き板の下面中央側に、半断面倒立L字状の切り欠き部2Dが設けられることで、孔開き板の下面の中央寄りが平面視円形の段差部を介して薄板状に形成される。そしてこの薄板状部分に、スライド部材32の張り出し片の上面が接して収容される(図5)。図5ではさらに、孔開き板が、張り出し片の上面とその外側の支持材4の上面の両方に接した状態で載置されている。
【0049】
実施例2のスタンドパイプは、差し込み部品3の周部に遊動設置したスライド部材23によって押し上げることでのみ係止解除操作を行う、いわゆる押し上げ操作式のスタンドパイプであって、実施例1のような引き揚げレバーや被係止操作用の構成を内部に有さない。係止解除操作時には、予め枠体2をパイプ10軸方向上方へスライド移動させて上方位置(H)にしたのち、スライド枠材23の張り出し片を上方へ押し上げ操作して、短筒部を係止爪1Cの突出部に割り込ませて、軸中央へ弾性付勢された係止爪1Cを外方へ押し広げ、非係止状態(S1)とする(図6)。
その他の特記しない構成および使用方法は実施例1,2共に共通である。
【0050】
その他本発明は上述した実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、一部構成の省略又は抽出、実施例間での構成の組み合わせ、他の構成の付加、別部材の組み合わせ或いは別部材同士の一体化構成或いは一部分の別部材による組み合わせ構成、一部構成材の形状又は全体形状の変更など、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1C 係止爪
1 受け口部品
10 パイプ
2 枠体
3 差し込み部品
4 支持材
4T 支持材の上面
MH 路面穴
3D 係止溝
32 スライド部材
31 拡径端
張り出し片
下部孔の孔縁
15 接続構造
4K バルブキー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンドパイプ下端において係止爪(1C)を有した受け口部品(1)の先側に取り付けられ、スタンドパイプのパイプ(10)軸方向に沿って、少なくとも当該受け口部品(1)の先部から受け口部品(1)よりも下方先側までを覆う枠体(2)を有し、受け口部品(1)の係止爪(1C)が差し込み部品(3)に係止した係止状態において、前記枠体(2)が、係止爪(1C)の係止部よりも先側すなわち軸方向基部寄りの位置にて、差し込み部品を全周に亘って囲うことを特徴とするスタンドパイプの消火栓接続構造。
【請求項2】
差し込み部品(3)は上方を向いた差し込み管からなり、その下部が外周側方へ張り出した支持部によってマンホール内に支持固定されるものであり、
前記枠体(2)は、パイプ(10)軸と並行に伸長して係止爪(1C)の係止部よりも下方へ突出する筒状体と、この筒状体の下端を覆う孔開き板とから構成され、
差し込み部品(3)と受け口部品(1)の係止爪(1C)とが係止した係止状態において、前記筒状体が受け口部品(1)を囲って吊設されると共に、前記孔開き板が差し込み部品(3)の周部を囲って前記支持部の上面(4F)に載置された状態で設置される請求項1記載のスタンドパイプの消火栓接続構造。
【請求項3】
差し込み部品(3)は上方を向いた差し込み管からなり、差し込み管の管端付近の外周に、係止爪を係止させ得る係止溝(3D)と、係止溝(3D)内の係止爪(1C)の係止をスライド移動によって解除させ得るスライド部材(32)とが設けられてなり、
また、前記枠体(2)は、パイプ(10)軸と並行に伸長して、パイプ(10)軸方向へスライド移動可能に吊設されてなり、
枠体(2)をパイプ(10)軸上方へスライド移動させると同時に又はその後に、スライド部材(32)を下部から係止溝(3D)上へスライド移動させることで、係止溝(3D)内へ突出係止した係止爪(1C)を周方向へ押し出して係止解除させ得る請求項1又は2記載のスタンドパイプの消火栓接続構造。
【請求項4】
前記スライド部材(32)は、差し込み管の周囲へ張り出した張り出し片を有するものであって、
前記枠体(2)は、パイプ(10)軸と並行に伸長して係止爪(1C)の係止部よりも下方へ突出する筒状体と、この筒状体の下端を覆う孔開き板とから構成され、
差し込み部品(3)と受け口部品(1)の係止爪(1C)とが係止した係止状態において、前記筒状体が受け口部品(1)を囲って吊設されると共に、前記孔開き板の下面が差し込み部品(3)の周部を囲って張り出し片の上面に接した状態で設置される請求項1、2又は3のいずれか記載のスタンドパイプの消火栓接続構造。
【請求項5】
前記いずれか記載の枠体(2)からなるものであって、既存のスタンドパイプの先部周囲に着脱可能な取り付け構造を有する消化栓接続補強材。
【請求項6】
差し込み部品(3)を先端に有する地下式の消火栓に係止可能な受け口部品(1)を下端に有し、吸管への接続構造を上端に有した接続パイプ(10)からなり、受け口部品(1)と差し込み部品(3)とが係止することで路面上方にまで直立状態に設置される消火栓接続用のスタンドパイプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−255309(P2012−255309A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129630(P2011−129630)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(509190598)寧波瀛震机械部件有限公司 (9)
【Fターム(参考)】