説明

スタンド取付構造

【課題】 高い剛性のスタンドであっても、ハブ軸への装着が容易で、ハブ軸取付溝部の剛性低下を招くことのないスタンド取付構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 スタンドブラケット4におけるハブ軸2Aを受け入れるハブ軸取付溝4Cを後方に開放形状に構成し、該開放形状の開口端部4E、4Fの変形を抑制する抑制部材5をチェーン引き部材9により兼用して構成したことにより、抑制部材5の添設により効果的にハブ軸取付溝4の開放部の拡大および縮小方向の剛性確保がなされて、ハブ軸部におけるスタンドブラケット4とフレーム爪板1との強固で確実な取付けが実現できる。しかも、格別の抑制部材を準備しなくても、チェーン引き部材を構成する板金9に工夫を施すことによって、開放形状のハブ軸取付溝4における開口端部4E、4Fの拡開および縮小方向の剛性確保ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のフレーム爪板のハブ軸挿入溝にハブ軸が支持され、該ハブ軸に対してスタンド上端部のスタンドブラケットが装着されるスタンド取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車、特に自転車の駐輪時には略U字形のスタンドを安定した起立状態に維持する必要があった。安定した起立状態を維持できる倒れにくいスタンドとしては、(1)荷台に載置した荷物や補助椅子に乗せた幼児の重心が低くなるような自転車全体構成の設計、(2)スタンド接地幅を拡大(ただし、JIS規格の推奨寸法は幅320mm以内)することによる自転車の倒れ角度の向上、そして、(3)スタンド自体の剛性向上による外側方への変位の抑制、が主な設計上のポイントとなっている。前記(1)の設計に関しては、自転車車体における全体的な構成を考慮する必要があって大がかりな設計変更を伴う。また、前記(2)の設計に関しては、JIS規格との関連もあり上限が規制されている。そこで、前記(3)のスタンド自体の剛性向上により自転車の起立状態を安定させるものが比較的実現性のあるものとして多用されてきている。
【0003】
ところが、後輪ハブ軸については、フレーム爪板のハブ軸挿入溝に後方から挿入して組み付けることができるが、略U字形をしたスタンドをハブ軸に組み付けるには、図2(B)に示した従来例のもののように、スタンド上端部のスタンドブラケット139のハブ軸取付孔140をハブ軸141に挿入するために、両側のスタンドブラケット139をハブ軸141の幅まで拡開する必要があった。剛性のあまり高くない従来のスタンドについてはスタンドブラケットの拡開は容易であったが、上述したような近年の剛性の高いスタンドについてはスタンドブラケットのハブ軸の幅までの拡開は困難であった。使用者の修理の際はもとより、販売店におけるスタンドの組付けも円滑に行える必要があった。そのようなことから、スタンドブラケットにおけるハブ軸取付孔を開放部を有する取付溝とすることによって、スタンドブラケットの拡開の必要がなく、熟練を要することなく比較的簡単にスタンドを後輪ハブ軸に組み付けることを可能にしたものが提案された(例えば下記特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55−33874号公報(実用新案登録請求の範囲参照)
【特許文献2】実開昭51−160848号公報(実用新案登録請求の範囲参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示された自転車用のスタンドを図2に示して簡単に説明する。スタンド部材119の両端をそれぞれ軸着した取付体120、120には、外部に通ずる切欠溝131を連通させた各軸孔130をそれぞれ形成し、各取付体120には、軸孔130を中心として前部と後部に、それぞれフレームの軸着部下面に当接する突出部132、133を形成具備させるとともに、前記フレームの爪板115における軸挿溝116に嵌合可能に嵌合片134を突設させたことを特徴とするものである。このような構成により、前後の突出部132、133の存在によって、スタンドの取付体120がフレームの爪板115に対して前傾したり後傾することが効果的に防止される他、嵌合片134による上下方向の抜脱も抑制される。
【0006】
また、前記特許文献2に開示された自転車用スタンドを図3に示して簡単に説明する。本文献は略U字形スタンドに関するものではないが、特許文献1と同様にハブ軸端部から軸方向に組み付ける必要がなく、ハブ軸の直交方向から組付け位置に簡単に挿入することができる。スタンド203の取付板201に設けた取付用通孔206に連成して外部に通ずる切欠孔209を形成し、この切欠孔209の下方に、取付用通孔206に挿入した車軸213に対して前記切欠孔209内に挿入して切欠孔209を閉塞する挿入部210を一端に設けたストッパー211を回動自在に軸支212してなることを特徴とするものである。このような構成により、車軸213を取付用通孔206に挿入した図3(B)の状態から、ストッパー211を点線矢印ごとく回転させて、切欠孔209を挿入部210によって閉塞して図3(A)の状態とし、仮にハブナット等が緩んでも取付板201からの車軸213の自然脱落の虞れがなくなった。
【0007】
しかしながら、これらの従来例にあって、前記図3の第2従来例のものに僅かに切欠孔209を閉塞する挿入部210の存在により、閉じ(縮小)方向への変形が防止される技術が見られるものの、スタンドの取付板に形成されたハブ軸取付孔を開放部を有する取付溝としたことによる、開放部の拡大または縮小方向での剛性低下は免れ得ないものであった。
【0008】
そこで本発明は、前記従来の自転車用スタンド取付構造の課題を解決して、高い剛性のスタンドであっても、ハブ軸への装着が容易で、ハブ軸取付溝部の剛性低下を招くことのないスタンド取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため本発明は、一対のフレーム爪板のハブ軸挿入溝にハブ軸が支持され、該ハブ軸に対してスタンド上端部のスタンドブラケットが装着されるスタンド取付構造において、前記スタンドブラケットにおけるハブ軸を受け入れるハブ軸取付溝を開放形状に構成し、該開放形状の開口端部の変形を抑制する抑制部材を前記スタンドブラケットに添設するとともに、前記スタンドブラケットにおけるハブ軸取付溝が後方に開放形状とし、チェーン引き部材が抑制部材を構成したことを特徴とするもので、これを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一対のフレーム爪板のハブ軸挿入溝にハブ軸が支持され、該ハブ軸に対してスタンド上端部のスタンドブラケットが装着されるスタンド取付構造において、前記スタンドブラケットにおけるハブ軸を受け入れるハブ軸取付溝を開放形状に構成し、該開放形状の開口端部の変形を抑制する抑制部材を前記スタンドブラケットに添設するとともに、前記スタンドブラケットにおけるハブ軸取付溝が後方に開放形状とし、チェーン引き部材が抑制部材を構成したことにより、スタンド全体を高い剛性に維持しつつハブ軸取付溝を開放形状に構成したスタンドブラケットをハブ軸に対してスライドさせて挿入するだけで簡便に装着することができるものでありながら、抑制部材の添設により効果的にハブ軸取付溝の開放部の拡大および縮小方向の剛性確保がなされて、ハブ軸部におけるスタンドブラケットとフレーム爪板との強固で確実な取付けが実現できる。しかも、格別の抑制部材を準備しなくても、チェーン引き部材を構成する板金に工夫を施すことによって、開放形状のハブ軸取付溝における開口端部の拡開および縮小方向の剛性確保が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のスタンド取付構造の第1実施例を示す要部側面図および抑制部材を兼ねるチェーン引き板金の取付け前の分解斜視図である。
【図2】第1従来例の自転車用スタンドの説明図である。
【図3】第2従来例の自転車用スタンドの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明のスタンド取付構造の第1実施例を示す要部側面図および抑制部材を兼ねるチェーン引き板金の取付け前の分解斜視図である。本発明のスタンド取付構造の基本的な構成は、図1の第1実施例に示すように、一対のフレーム爪板1、1のハブ軸挿入溝1C、1Cに後輪ハブ軸2A、2A(車体右側のものは見えない。)が支持され、該ハブ軸2Aに対してスタンド上端部のスタンドブラケット4が装着されるスタンド取付構造において、前記スタンドブラケット4におけるハブ軸2Aを受け入れるハブ軸取付溝4Cを開放形状に構成し、該開放形状の開口端部4E、4Fの拡大および縮小方向の剛性確保のための抑制部材5を前記スタンドブラケット4に添設するとともに、前記スタンドブラケット4におけるハブ軸取付溝4Cが後方に開放形状とし、チェーン引き部材9が抑制部材5を構成したことを特徴とする.
【実施例1】
【0013】
以下に本発明のスタンド取付構造の第1実施例を詳述する。図示は省略されるが、スタンドは正面視U字形を呈しており、両脚の各上端部に形成されるスタンドブラケット4、4によって車体側のフレーム爪板1、1にハブ軸2Aとともに装着されて取り付けられる。各フレーム爪板1はチェーンステー1Aの後端部とバックホーク1Bの後部下端部との交差接合部に配設され、該フレーム爪板1には後方に向いたハブ軸挿入溝1C、1Cが形成されている。該ハブ軸挿入溝1C、1Cに後輪ハブ2の両側のハブ軸2A、2Aが車体後方から挿入されて装着される。ハブ軸2Aはチェーン引き部材によって車体前後方向位置が調整可能であり、図示省略の駆動ペダルとの間に懸回される駆動チェーンの張力を適切に行えるように構成される。
【0014】
スタンドブラケット4におけるハブ軸取付溝4Cが、フレーム爪板1のハブ軸挿入溝1Cと同様に、後方に開放形状とされるとともに、チェーン引き部材(板金)9を抑制部材5として機能せしめたものである。つまり、図1(A)に示すように、チェーン引き部材は、チェーン引き7を構成するハブ軸2Aに嵌合されるリング部7Aとこれから後方に延びる螺子部7Bと、該螺子部7Bを受け入れるボルト孔9Cを穿設した抑制部材5として機能する板金9とから構成される。
【0015】
板金9の前面には、図1(B)に示すように、前記フレーム爪板1のハブ軸挿入溝1Cの開口端部とスタンドブラケット4のハブ軸取付溝4Cの開口端部4E、4Fとをそれぞれ受け入れて収納する収納凹部9A、9Bが形成されており、板金9のボルト孔9Cを螺子部7Bに挿入した後にチェーン引きナット8の螺合により、スタンドブラケット4の後方への移動が規制されるとともに、スタンドブラケット4における開口端部4E、4Fの拡開および縮小方向の変形が規制されて補剛される。前記チェーン引きナット8の回転調整により、ハブ軸2Aの前後位置が調整されて駆動チェーンの張力が調整される。かくして、本実施例では、格別の抑制部材5を準備しなくても、チェーン引き部材を構成する板金9に工夫を施すことによって、開放形状のハブ軸取付溝4Cにおける開口端部4E、4Fの拡開および縮小方向の剛性確保ができる。
【0016】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、ハブ軸挿入溝の形状を含むフレーム爪板の形状、形式、スタンドの形状、形式およびその接地部における補剛形態、スタンドブラケットの形状、形式およびそのフレーム爪板との関連構成(スタンドブラケットの上部曲折片や下部曲折片の位置、スタンドブラケットにおけるハブ軸取付溝の開放形状、抑制部材とスタンドブラケットとの間の抜止め構造の形状、形式、スタンドブラケットにおけるハブ軸取付溝を後方に開放形状としてチェーン引き部材が抑制部材を構成する場合の、チェーン引き部材(板金)によるスタンドブラケットの開口端部の補剛形態等については適宜選定できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、自転車のみならず、二輪車一般のスタンド取付構造に適用が可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 フレーム爪板
1C ハブ軸挿入溝
2 後輪ハブ
2A ハブ軸
4 スタンドブラケット
4A 上部曲折片
4B 下部曲折片
4C ハブ軸取付溝
4E 開口端部
4F 開口端部
5 抑制部材
7 チェーン引き
7A リング部
7B 螺子部
8 チェーン引きナット
9 チェーン引き部材(板金)
9A 収納凹部
9B 収納凹部
9C ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフレーム爪板のハブ軸挿入溝にハブ軸が支持され、該ハブ軸に対してスタンド上端部のスタンドブラケットが装着されるスタンド取付構造において、前記スタンドブラケットにおけるハブ軸を受け入れるハブ軸取付溝を開放形状に構成し、該開放形状の開口端部の変形を抑制する抑制部材を前記スタンドブラケットに添設するとともに、前記スタンドブラケットにおけるハブ軸取付溝が後方に開放形状とし、チェーン引き部材が抑制部材を構成したことを特徴とするスタンド取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−105311(P2011−105311A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48511(P2011−48511)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【分割の表示】特願2006−348863(P2006−348863)の分割
【原出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000112978)ブリヂストンサイクル株式会社 (78)