説明

スタータ用電磁スイッチ

【課題】メイン電磁スイッチ4の第2の励磁端子31と補助電磁スイッチ6の励磁端子22との間を特別な加工を施すことなく、一般的なケーブル32で接続でき、且つ、防水性を付与することも可能な端子構造を提供する。
【解決手段】メイン電磁スイッチ4は、モータ通電用ソレノイドSL2の第2の励磁コイル12と補助電磁スイッチ6の励磁コイル23とに通電する第2のスイッチ用端子を有する。この第2のスイッチ用端子は、第2の励磁コイル12に接続される第2の接続金具28と、この第2の接続金具28に接続される第2の端子金具29とで構成される。第2の端子金具29は、他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐して形成され、第1の端子片は、バッテリ10より電力の供給を受ける第2の励磁端子31として使用され、第2の端子片は、補助電磁スイッチ6の励磁端子22にケーブル32を介して接続される接続端子33として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリよりモータに電力を供給する電源ラインに電気接点を配置し、電磁石のオン/オフ動作に連動して電気接点を開閉するスタータ用電磁スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スタータに搭載される電磁スイッチの端子構造として、特許文献1に開示された従来技術が公知である。この従来技術に示される端子構造は、樹脂カバーにインサート成型された平板状の励磁端子と、この励磁端子と励磁コイルとの間を電気的に接続する結線用ターミナルとで構成される。また、樹脂カバーを挿通して外部に引き出された励磁端子の周囲には、筒状の端子ガイド部が樹脂カバーと一体に設けられている。
この端子構造によれば、端子ガイド部の形状を、励磁端子に接続される外部配線のコネクタ形状に適合させ、且つ、ゴム等のシール部材を介在させることで防水性を付与することが可能である。
【0003】
ところで、近年、地球温暖化対策におけるCO2削減策の一つとして、車両のアイドリングストップが重要な手段とされている、このアイドリングストップは、例えば、交差点での信号停止や渋滞等により車両が一時停止した際に、エンジンの燃料噴射を停止してエンジンを自動的に停止させるシステムである。
しかし、アイドリングストップを採用すると、アイドリングストップを行わない一般車両と比較して、エンジンの停止および再始動が多くなるため、スタータの使用頻度が大幅に増加する。また、スタータによるエンジン始動時には、突入電流と呼ばれる大電流がモータに流れるため、バッテリの端子電圧が一時的に大きく低下して、メータ類、オーディオ、カーナビ等の電気機器が瞬間的に作動停止する「瞬断」と言われる現象が発生することがある。このため、アイドリングストップを採用する車両では、エンジンを再始動する度に「瞬断」が発生するため、ユーザが不快に感じることがある。
【0004】
これに対し、本出願人は、「瞬断」の発生を防止するために、モータの起動時に流れる突入電流を抑制できる補助電磁スイッチを搭載したスタータを提案している(特許文献2参照)。この補助電磁スイッチは、バッテリからモータに電力を供給する電源ラインに介在される抵抗体を内蔵し、この抵抗体を経由してモータに電流を流す第1の通電経路と、抵抗体をバイパスしてモータに電流を流す第2の通電経路とを電磁石のオン/オフ動作に連動して切り替えている。なお、特許文献1に示される補助電磁スイッチは、スタータハウジングにブラケットを介して固定されるが、必ずしもスタータに取り付ける必要はなく、スタータに近接して配置することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−135344号公報
【特許文献2】特開2010−225596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、補助電磁スイッチをスタータに搭載する場合、あるいは、スタータに近接して配置する場合でも、電磁スイッチと補助電磁スイッチの両方の励磁端子に車両側から給電する必要が生じる。この場合、スタータを車両に搭載した後に、電磁スイッチと補助電磁スイッチの双方へ配線を接続する必要があるため、スペースの関係で接続作業が難しくなることがある。これに対し、スタータを車両に搭載する前に、スタータ側で電磁スイッチの励磁端子と補助電磁スイッチの励磁端子とを予め接続しておくことが出来れば、車両側からの配線接続を従来(補助電磁スイッチを搭載していないスタータ)と同様に行うことが可能となる。
【0007】
しかし、従来の電磁スイッチは、特許文献1に記載した様に、樹脂カバーの外部に突き出る励磁端子が1本であるため、スタータ側で事前に電磁スイッチと補助電磁スイッチの励磁端子間を接続することは出来ない。双方の励磁端子間を接続するためには、接続金具を増設する必要があり、且つ、防水性が必要となる場合が多くあるため、有効な端子構造が望まれていた。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、スタータ用電磁スイッチと他の電磁スイッチとの励磁端子間を特別な加工を施すことなく、一般的なケーブルで接続でき、且つ、防水性を付与することも可能な端子構造を備えたスタータ用電磁スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1の発明)
本発明は、バッテリよりモータに電力を供給する電源ラインに電気接点を配置し、電磁石のオン/オフ動作に連動して電気接点を開閉するスタータ用電磁スイッチであって、一端側の端部が電磁石を形成する励磁コイルに接続され、他端側が電磁スイッチの樹脂カバーを挿通して外部に取り出される接続金具と、一端側の端部が接続金具の他端側の端部と電気的かつ機械的に接続され、他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐して設けられた第2の端子金具とを有し、第1の端子片は、バッテリより給電線を介して電力が供給される励磁端子として使用され、第2の端子片は、他の電磁スイッチに設けられる励磁端子に電気配線を介して接続される接続端子として使用されることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、スタータ用電磁スイッチと他の電磁スイッチに車両側から配線を接続する場合に、他の電磁スイッチが配線しにくい場所に配置される場合でも、スタータを車両へ搭載する前に、スタータ用電磁スイッチと他の電磁スイッチとの相互間の配線接続を事前に行っておくことができる。すなわち、スタータ用電磁スイッチの第2の端子金具には、第1の端子片と第2の端子片とが設けられ、第1の端子片がバッテリより給電線を介して電力の供給を受ける励磁端子として使用され、第2の端子片が他の電磁スイッチに設けられる励磁端子に電気配線を介して接続される接続端子として使用される。従って、スタータを車両へ搭載する前に、接続端子である第2の端子片と他の電磁スイッチの励磁端子とを予め電気配線によって接続しておくことができる。これにより、車両側からは他の電磁スイッチに直接配線する必要はなく、スタータ用電磁スイッチのみに配線を接続すれば良い、つまり、励磁端子である第1の端子片に給電線を接続すれば良いので、配線接続の作業性が向上する。
【0010】
(請求項2の発明)
請求項1に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、第2の端子金具は、樹脂カバーと一体に設けられる端子固定台にインサート成型され、且つ、第1の端子片と第2の端子片は、端子固定台より突出する互いの突出方向が異なることを特徴とする。
上記の構成によれば、第2の端子金具が端子固定台にインサート成型されるので、耐振性が向上する。また、端子固定台より突出する第1の端子片と第2の端子片との突出方向が異なるので、スタータに対する他の電磁スイッチの取付け位置に応じた方向に第2の端子片の突出方向を設定することが可能である。これにより、他の電磁スイッチに設けられる励磁端子と第2の端子片との間を無理なく最短距離で配線接続できる。その結果、配線抵抗を最小限に抑えることができると共に、スタータ用電磁スイッチと他の電磁スイッチとの間を繋ぐ電気配線を短くできるので、耐振性も向上する。
【0011】
(請求項3の発明)
請求項1または2に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、第1の端子片の周囲および第2の端子片の周囲には、それぞれコネクタ用ハウジングが端子固定台と一体に設けられていることを特徴とする。
上記の構成によれば、第1の端子片および第2の端子片に対する配線接続にコネクタを使用できるので、配線接続を容易にできる。特に、スタータ用電磁スイッチと他の電磁スイッチとの間、つまり、第2の端子片と他の電磁スイッチの励磁端子との間は、両端にコネクタを有するケーブルで接続が可能となるため、配線接続の作業性が向上する。さらに、コネクタ用ハウジングにゴム等のシール部材を配設して防水型にすることで耐水性も向上するため、信頼性の高い端子構造を提供できる。
【0012】
(請求項4の発明)
請求項3に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、端子金具は、第1の端子片と第2の端子片が、端子固定台より互いに軸方向の反対方向へ突出して設けられ、第1の端子片の周囲に設けられるコネクタ用ハウジングと、第2の端子片の周囲に設けられるコネクタ用ハウジングとは、軸方向から見た時に、少なくとも互いの外形の一部が重なっていることを特徴とする。
上記の構成によれば、両コネクタ用ハウジングを軸方向から見た時の投影面積を小さくできるので、エンジンへのスタータ搭載性が向上する。
【0013】
(請求項5の発明)
請求項1〜4に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、電磁スイッチは、電気接点の開閉によってモータの通電電流を断続するメイン電磁スイッチであり、他の電磁スイッチは、メイン電磁スイッチによって電気接点がオンした時に、モータに流れる起動電流を抑制する電流抑制用の補助電磁スイッチであることを特徴とする。
本発明によれば、メイン電磁スイッチと補助電磁スイッチとの相互間の配線を事前に、つまり、スタータを車両へ搭載する前に予め行っておくことができる。このため、車両側から補助電磁スイッチに配線する必要がないので、補助電磁スイッチが配線しにくい場所に設置される場合でも、車両側からはメイン電磁スイッチのみに配線すれば良いので、配線接続の作業性が向上する。なお、補助電磁スイッチは、例えば、スタータのハウジングにブラケット等を介して固定することもできるが、スタータに取り付けることなく、スタータに近接して配置することもできる。
【0014】
(請求項6の発明)
請求項1〜4に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、電磁スイッチは、電源ラインに介在される抵抗体を内蔵し、この抵抗体を通ってモータに電流を流す第1の通電経路と、抵抗体をバイパスしてモータに電流を流す第2の通電経路とを電気接点の開閉によって切り替える補助電磁スイッチであり、他の電磁スイッチは、電源ラインにメイン接点を有し、電磁石のオン/オフ動作に連動してメイン接点を開閉することでモータの通電電流を断続するメイン電磁スイッチであることを特徴とする。
本発明によれば、メイン電磁スイッチと補助電磁スイッチとの相互間の配線を事前に、つまり、スタータを車両へ搭載する前に予め行っておくことができる。このため、車両側からはメイン電磁スイッチに直接配線する必要はなく、補助電磁スイッチのみに配線すれば良いので、配線接続の作業性が向上する。なお、補助電磁スイッチは、例えば、スタータのハウジングにブラケット等を介して固定することもできるが、スタータに取り付けることなく、スタータに近接して配置することもできる。
【0015】
(請求項7の発明)
請求項1〜6に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、端子金具は、1枚の金属板よりプレス成型されていることを特徴とする。
他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐した本発明の端子金具は、例えば、銅等の金属板よりプレス加工によって容易に製造できる。また、請求項3に記載した様に、端子金具が端子固定台にインサート成型され、且つ、第1の端子片および第2の端子片の周囲にそれぞれコネクタ用ハウジングを端子固定台と一体に形成する場合は、第1の端子片および第2の端子片と、それぞれのコネクタ用ハウジングとの位置精度が重要となる。これに対し、本発明では、端子金具が1枚の金属板より形成されるので、第1の端子片と第2の端子片との位置精度を確保できる。これにより、第1の端子片および第2の端子片に対し、それぞれのコネクタ用ハウジングを高い位置精度で形成できるので、信頼性の高い端子構造を提供できる。
【0016】
(請求項8の発明)
請求項1〜7に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、端子金具は、前記第1の端子片の方が第2の端子片より断面積が大きいことを特徴とする。
上記の構成では、断面積が第2の端子片より大きい第1の端子片の方がより多くの電流を流すことができるので、端子金具の他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐した構造であっても、第2の端子片に電気配線を介して接続される他の電磁スイッチに必要な電流を供給できる。
【0017】
(請求項9の発明)
本発明は、第1の電磁石の吸引力を利用してスタータのピニオンをエンジンのリングギヤ側へ押し出すピニオン押出用ソレノイドと、バッテリよりモータに電力を供給する電源ラインにメイン接点を有し、第2の電磁石のオン/オフ動作に連動してメイン接点の開閉を行うことでモータの通電電流を断続するモータ通電用ソレノイドとを有するスタータ用電磁スイッチにおいて、一端側の端部が第1の電磁石を形成する第1の励磁コイルに接続され、他端側が電磁スイッチの樹脂カバーを挿通して外部に取り出される第1の接続金具と、一端側の端部が第2の電磁石を形成する第2の励磁コイルに接続され、他端側が樹脂カバーを挿通して外部に取り出される第2の接続金具と、一端側の端部が第1の接続金具の他端側の端部と電気的かつ機械的に接続され、他端側にバッテリより給電線を介して電力が供給される第1の励磁端子と、一端側の端部が第2の接続金具の他端側の端部と電気的かつ機械的に接続され、他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐して設けられる第2の端子金具とを有し、第1の端子片は、バッテリより給電線を介して電力が供給される第2の励磁端子として使用され、第2の端子片は、メイン接点がオンした時に、モータに流れる起動電流を抑制する電流抑制用の補助電磁スイッチに設けられる励磁端子に電気配線を介して接続される接続端子として使用されることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、スタータ用電磁スイッチと補助電磁スイッチに車両側から配線を接続する場合に、補助電磁スイッチが配線しにくい場所に配置される場合でも、スタータを車両へ搭載する前に、スタータ用電磁スイッチと補助電磁スイッチとの相互間の配線接続を事前に行っておくことができる。すなわち、スタータ用電磁スイッチの第2の端子金具には、第1の端子片と第2の端子片とが設けられ、第1の端子片がバッテリより給電線を介して電力の供給を受ける第2の励磁端子として使用され、第2の端子片が補助電磁スイッチに設けられる励磁端子に電気配線を介して接続される接続端子として使用される。従って、スタータを車両へ搭載する前に、接続端子である第2の端子片と補助電磁スイッチの励磁端子とを予め電気配線によって接続しておくことができる。これにより、車両側からは補助電磁スイッチに直接配線する必要はなく、スタータ用電磁スイッチのみに配線を接続すれば良い、つまり、第2の励磁端子である第1の端子片に給電線を接続すれば良いので、配線接続の作業性が向上する。
【0019】
(請求項10の発明)
請求項9に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、第1の励磁端子と第2の端子金具は、樹脂カバーと一体に設けられる端子固定台にインサート成型され、且つ、第1の端子片と第2の端子片は、端子固定台より突出する互いの突出方向が異なることを特徴とする。
上記の構成によれば、第2の端子金具が端子固定台にインサート成型されるので、耐振性が向上する。また、端子固定台より突出する第1の端子片と第2の端子片との突出方向が異なるので、スタータに対する補助電磁スイッチの取付け位置に応じた方向に第2の端子片の突出方向を設定することが可能である。これにより、補助電磁スイッチに設けられる励磁端子と第2の端子片との間を無理なく最短距離で配線接続できる。その結果、配線抵抗を最小限に抑えることができると共に、スタータ用電磁スイッチと補助電磁スイッチとの間を繋ぐ電気配線を短くできるので、耐振性も向上する。
【0020】
(請求項11の発明)
請求項10に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、第1の励磁端子と第1の端子片の周囲には、共通のコネクタ用ハウジングが端子固定台と一体に設けられ、第2の端子片の周囲には、専用のコネクタ用ハウジングが端子固定台と一体に設けられていることを特徴とする。
上記の構成によれば、第1の励磁端子および第1の端子片に対する配線接続を共通のコネクタで行うことができるので、配線作業を容易にできる。また、スタータ用電磁スイッチと補助電磁スイッチとの間、つまり、第2の端子片と補助電磁スイッチの励磁端子との間は、両端にコネクタを有するケーブルで接続が可能となるため、配線接続の作業性が向上する。さらに、コネクタ用ハウジングにゴム等のシール部材を配設して防水型にすることで耐水性も向上するため、信頼性の高い端子構造を提供できる。
【0021】
(請求項12の発明)
請求項11に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、第2の端子金具は、第1の端子片と第2の端子片が、端子固定台より互いに軸方向の反対方向へ突出して設けられ、第1の励磁端子と第1の端子片の周囲に設けられる共通のコネクタ用ハウジングと、第2の端子片の周囲に設けられる専用のコネクタ用ハウジングとは、軸方向から見た時に、少なくとも互いの外形の一部が重なっていることを特徴とする。
上記の構成によれば、両コネクタ用ハウジングを軸方向から見た時の投影面積を小さくできるので、エンジンへのスタータ搭載性が向上する。
【0022】
(請求項13の発明)
請求項9〜12に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、第2の端子金具は、1枚の金属板よりプレス成型されていることを特徴とする。
他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐した本発明の第2の端子金具は、例えば、銅等の金属板よりプレス加工によって容易に製造できる。また、請求項11に記載した様に、第2の端子金具が端子固定台にインサート成型され、且つ、第1の端子片および第2の端子片の周囲にそれぞれコネクタ用ハウジングを端子固定台と一体に形成する場合は、第1の端子片および第2の端子片と、それぞれのコネクタ用ハウジングとの位置精度が重要となる。これに対し、本発明では、第2の端子金具が1枚の金属板より形成されるので、第1の端子片と第2の端子片との位置精度を確保できる。これにより、第1の端子片および第2の端子片に対し、それぞれのコネクタ用ハウジングを高い位置精度で形成できるので、信頼性の高い端子構造を提供できる。
【0023】
(請求項14の発明)
請求項9〜13に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、第2の端子金具は、第1の端子片の方が第2の端子片より断面積が大きいことを特徴とする。
上記の構成では、断面積が第2の端子片より大きい第1の端子片の方がより大きい電流を流すことができるので、第2の端子金具の他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐した構造であっても、第2の端子片に電気配線を介して接続される補助電磁スイッチに必要な電流を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)実施例1に示すスタータ用電磁スイッチを樹脂カバー側から見た軸方向平面図、(b)同図(a)のA−A断面図である。
【図2】図1に示す樹脂カバーの斜視図である。
【図3】スタータ用電磁スイッチおよび補助電磁スイッチを搭載したスタータの側面図である。
【図4】スタータの電気回路図である。
【図5】実施例2に係るスタータ用電磁スイッチの端子構造を示す断面図である。
【図6】実施例3に係るスタータ用電磁スイッチの端子構造を示す斜視図である。
【図7】実施例4に係るスタータの電気回路図である(2コイル式)。
【図8】実施例4に係るスタータの電気回路図である(1コイル式)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
実施例1に示すスタータ1は、図3に示す様に、ピニオン2を軸方向(図示右方向)へ押し出してエンジンのリングギヤ3(図4参照)に噛み合わせる周知の電磁押し込み式スタータであり、以下に説明するメイン電磁スイッチ4と、モータ5の起動電流を抑制する電流抑制用の補助電磁スイッチ6とを搭載している。
メイン電磁スイッチ4は、軸方向の一端側(図3の右端側)に環状の底面を有し、他端側が開口するスイッチフレーム7(図1(b)参照)と、このスイッチフレーム7を共通の磁気通路として使用するソレノイドユニット(以下に説明する)と、スイッチフレーム7の開口部を閉塞する樹脂カバー8等より構成される。
スイッチフレーム7は、一端側の底面をスタータハウジング9の取付け面に当接して、2本のスタッドボルド(図示せず)によってスタータハウジング9に固定される。
【0027】
ソレノイドユニットは、図4に示す様に、ピニオン2を押し出すためのピニオン押出用ソレノイドSL1と、メイン接点(後述する)を開閉してモータ5の通電電流を断続するモータ通電用ソレノイドSL2とで構成される。
ピニオン押出用ソレノイドSL1とモータ通電用ソレノイドSL2は、それぞれバッテリ10より通電されて電磁石を形成する第1の励磁コイル11と第2の励磁コイル12を有する。両励磁コイル11、12は、スイッチフレーム7の内部に共通の固定鉄心(図示せず)を挟んで軸方向に直列に配置される。また、第1の励磁コイル11の内周には、固定鉄心の一方の端面に対向して軸心方向に可動する第1のプランジャ13が配置され、第2の励磁コイル12の内周には、固定鉄心の他方の端面に対向して軸心方向に可動する第2のプランジャ14が配置される。
【0028】
樹脂カバー8は、図1(b)に示す様に、筒状の胴体部8aを有する有底状に設けられ、スイッチフレーム7の内部に胴体部8aの先端側を挿入してスイッチフレーム7の開口部を閉塞し、樹脂カバー8の外周に設けられる段差部に対し、スイッチフレーム7の開口端部を折り曲げてかしめ固定されている。この樹脂カバー8には、図2に示す様に、バッテリ10からモータ5に電力を供給するための電源ラインに接続される2本の端子ボルト15、16と、後述するスイッチ用端子が取り付けられる。
2本の端子ボルト15、16は、電源ラインの高電位側(バッテリ10側)に接続されるB端子ボルト15と、電源ラインの低電位側(モータ5側)に接続されるM端子ボルト16であり、樹脂カバー8に形成される貫通孔を通って樹脂カバー8に挿通され、ワッシャ17によって樹脂カバー8に固定される。
【0029】
樹脂カバー8の内部には、図4に示す様に、前述のメイン接点を形成する一組の固定接点18と可動接点19とが配置される。一組の固定接点18は、端子ボルト15、16と別体に形成され、それぞれ、端子ボルト15、16と電気的かつ機械的に接続される。なお、一組の固定接点18を端子ボルト15、16と一体に設けることも可能であり、例えば、端子ボルト15、16の頭部を固定接点18に利用することもできる。
可動接点19は、第2のプランジャ14に固定される樹脂製のシャフト(図示せず)に支持され、第2のプランジャ14の動きに連動して一組の固定接点18間を電気的に断続する。メイン接点は、可動接点19が一組の固定接点18に当接して両固定接点18が電気的に導通することで閉成状態(オン)となり、可動接点19が一組の固定接点18から離れて両固定接点18間の導通が遮断されることで開成状態(オフ)となる。
【0030】
補助電磁スイッチ6は、図4に示す様に、メイン接点より上流側(バッテリ10側)の電源ラインに接続される抵抗体20と、電源ラインに抵抗体20と並列に設けられる補助接点21と、バッテリ10より電力の供給を受ける励磁端子22と、通電により電磁石を形成する励磁コイル23と、この励磁コイル23とアース間に配置されるタイマ回路24とを有する。
この補助電磁スイッチ6は、メイン接点がオンした時に、抵抗体20を通ってモータ5に電流が流れる第1の通電経路と、抵抗体20をバイパスしてモータ5に電流が流れる第2の通電経路とを補助接点21の開閉によって切り替える。
【0031】
補助接点21は、抵抗体20の両端に接続される一組の固定接点21aと、この一組の固定接点21aに対向して可動する可動接点21bとで構成され、この可動接点21bが電磁石のオン/オフ動作に連動して前記一組の固定接点21a間を電気的に断続する。なお、図4に示す補助電磁スイッチ6は、励磁コイル23が非通電の時に補助接点21が閉じている常閉タイプである。
タイマ回路24は、励磁コイル23の高電位側より分岐する電気配線を通じて励磁端子22に接続され、バッテリ10より励磁端子22に電力が供給されることでオン作動し、所定時間(例えば、30〜40ms)経過した時点でオフ作動する。すなわち、このタイマ回路24がオン作動している所定時間だけ励磁コイル23に通電されて、補助接点21が開成する。
【0032】
この補助電磁スイッチ6は、例えば、図3に示す様に、スタータハウジング9にボルト25を締結して取り付けることができる。あるいは、メイン電磁スイッチ4をスタータハウジング9にスタッドボルトで固定する際に、メイン電磁スイッチ4とスタータハウジング9の取付け面との間にブラケット(図示せず)を挟み込んで共締めし、そのブラケットに補助電磁スイッチ6をボルト等で固定する、あるいは溶接によって固定することもできる。さらには、補助電磁スイッチ6をスタータ1に取り付けることなく、スタータ1に近接した位置に配置することもできる。
【0033】
次に、スイッチ用端子について詳述する。
スイッチ用端子は、バッテリ10より電力の供給を受けて第1の励磁コイル11に通電する第1のスイッチ用端子と、バッテリ10より電力の供給を受けて、第2の励磁コイル12と補助電磁スイッチ6の励磁コイル23とに通電する第2のスイッチ用端子とを有する。
第1のスイッチ用端子は、長板状のブレード形接続金具(以下、第1の接続金具26と呼ぶ)と、この第1の接続金具26と電気的かつ機械的に接続される第1の端子金具27とで構成される。第2のスイッチ用端子は、第1の接続金具26と同じく、長板状のブレード形接続金具(以下、第2の接続金具28と呼ぶ)と、この第2の接続金具28と電気的かつ機械的に接続される第2の端子金具29とで構成される。
【0034】
第1のスイッチ用端子を構成する第1の接続金具26と第1の端子金具27および第2のスイッチ用端子を構成する第2の接続金具28と第2の端子金具29は、例えば、銅や黄銅(真鍮)等の金属板よりプレス加工によって製造することができる。
第1の接続金具26と第2の接続金具28は、図1(b)に示す様に、それぞれ、一端側の端部が樹脂カバー8の内部で第1の励磁コイル11および第2の励磁コイル12に接続され、他端側が樹脂カバー8に形成されたスリット状の貫通孔を通り抜けて樹脂カバー8の軸方向外側に引き出されている。なお、図1(b)では、第2の励磁コイル12のコイル端部と第2の接続金具28との接続個所を示しているが、この接続個所の紙面奥側に、第1の励磁コイル11のコイル端部と第1の接続金具26との接続個所が同様に設けられている。この第1の接続金具26と第2の接続金具28は、図1(a)および図2に示す様に、互いの幅方向に所定の間隔を空けて横並びに配置される。所定の間隔とは、例えば、各接続金具26、28の幅寸法と略同一の距離である。
【0035】
第1の端子金具27は、図2に示す様に、一端側の端部がL字形に折り曲げられ、その折り曲げられた一端側の端部と、樹脂カバー8の外側に突き出る第1の接続金具26の他端側の端部とが、互いの平面同士を突き合わせた状態、言い換えると、拝み合わせた状態で、例えば、抵抗溶接あるいはTIG溶接により接合される。なお、溶接以外の手段、例えば、ろう付け、半田付け等によって接合することも可能である。
第1の端子金具27の他端側は、一端側と同一方向(図示上方向)へL字形に折り曲げられている。この第1の端子金具27の他端側は、給電線を介してバッテリ10より電力の供給を受ける第1の励磁端子30として使用される。
【0036】
第2の端子金具29は、図2に示す様に、一端側の端部がL字形に折り曲げられ、その折り曲げられた一端側の端部と、樹脂カバー8の外側に突き出る第2の接続金具28の他端側の端部とが、互いの平面同士を突き合わせた状態、言い換えると、拝み合わせた状態で、例えば、抵抗溶接あるいはTIG溶接により接合される。なお、溶接以外の手段、例えば、ろう付け、半田付け等によって接合することも可能である。
第2の端子金具29の他端側は、第1の端子片と第2の端子片とに分岐して形成され、互いに反対方向へL字形に折り曲げられている。つまり、第1の端子片は、一端側と同一方向(図示上方向)へ折り曲げられ、第2の端子片は、第1の端子片と反対方向(図示下方向)へ折り曲げられている。
【0037】
第1の端子片は、バッテリ10より給電線を介して電力が供給される第2の励磁端子31として使用され、第2の端子片は、図3に示す様に、補助電磁スイッチ6に設けられる励磁端子22(図示せず)にケーブル32(本発明の電気配線)を介して接続される接続端子33として使用される。
この第2の励磁端子31と接続端子33は、互いの板厚が同一寸法であるのに対し、幅寸法は第2の励磁端子31の方が接続端子33より大きく形成されている。すなわち、第2の励磁端子31の方が接続端子33より断面積が大きく形成されている。
なお、第1の励磁端子30に接続される給電線および第2の励磁端子31に接続される給電線には、図4に示す様に、それぞれ、後述するECU34によって通電制御される駆動リレー35、36が介在される。
【0038】
上記の第1の端子金具27と第2の端子金具29は、図1に示す様に、樹脂カバー8と一体に設けられた端子固定台37にインサート成型されている。
端子固定台37は、樹脂カバー8の軸方向と直交する半径方向の外側へ突き出て設けられている。この端子固定台37には、半径方向の内側、つまり樹脂カバー8側に、樹脂カバー8の軸方向端面より軸方向に一段高く段付き状に形成された端子ガイド部37aが設けられている。以下、図1(b)に示す端子ガイド部37aの軸方向上面(図示上端面)をガイド上面、樹脂カバー8の軸方向端面と直交する端子ガイド部37aの側面(図示左側面)、つまり、端子ガイド部37aの立ち上がり面をガイド側面と呼ぶ。
【0039】
端子固定台37にインサート成型された第1の端子金具27および第2の端子金具29は、図1(b)に示す様に、ガイド上面と直交する端子固定台37の側面より、それぞれ一端側が突き出てガイド上面に支持され、その一端側の端部が、ガイド側面と反対方向(図示上方向)へ直角に折り曲げられている。また、第1の励磁端子30および第2の励磁端子31は、図2に示す様に、端子固定台37より図示上方へ突き出ており、接続端子33は端子固定台37より図示下方へ突き出ている。
一方、樹脂カバー8より軸方向に突き出る第1の接続金具26および第2の接続金具28の他端側は、ガイド側面によって支持され、そのガイド側面より図示上方へ突き出る他端側の端部が、第1の端子金具27および第2の端子金具29の一端側の端部と接合される。
【0040】
また、図1および図2に示す様に、端子固定台37より図示上方へ突き出る第1の励磁端子30と第2の励磁端子31の周囲には、共通のコネクタ用ハウジング38が端子固定台37と一体に形成され、同様に、端子固定台37より図示下方へ突き出る接続端子33の周囲には、コネクタ用ハウジング39が端子固定台37と一体に形成されている。
コネクタ用ハウジング39は、共通のコネクタ用ハウジング38より外形が小さく形成され、且つ、樹脂カバー8を軸方向から見た時に、図1(a)に示す様に、コネクタ用ハウジング39の外形(図中破線で示す)が、コネクタ用ハウジング38の外形より外側へ出ていない。言い換えると、コネクタ用ハウジング38の外形内にコネクタ用ハウジング39の外形が収まっている。
【0041】
さらに、第1の接続金具26と第1の端子金具27との接合部および第2の接続金具28と第2の端子金具29との接合部は、例えば、図2に示す樹脂製のキャップ40によって保護される。このキャップ40は、第1のスイッチ用端子および第2のスイッチ用端子が外部に露出している部分、つまり、樹脂カバー8の軸方向端面より外側に突き出る第1の接続金具26および第2の接続金具28の他端側と、ガイド上面と直交する端子固定台37の側面より突き出る第1の端子金具27および第2の端子金具29の一端側とを全体に覆っている(図1(b)参照)。
このキャップ40は、図2に示す様に、先端に係合爪40aを有する2本の腕部40bが設けられ、この腕部40bが端子ガイド部37aの両側を跨いで組み付けられ、端子固定台37の裏面角部に係合爪40aを係合させることで端子固定台37に固定される。なお、キャップ40に適当なシール用ゴム部材を併用することで防水性を確保することも可能である。
【0042】
次に、スタータ1の作動を説明する。
実施例1のメイン電磁スイッチ4は、ピニオン押出用ソレノイドSL1の作動およびモータ通電用ソレノイドSL2の作動をECU34によって独立に制御できる。
ECU34は、アイドリングストップを制御する電子制御装置であり、エンジンの運転状態を制御するエンジンECU(図示せず)より、エンジン回転信号、ミッションレバーの位置信号、ブレーキスイッチのオン/オフ信号等を入力し、これらの情報を基に、エンジンを停止させるための停止条件が成立したと判断すると、エンジンECUにエンジン停止信号を送信する。また、ECU34は、アイドリングストップが実施された後、運転者が車両を発進させようとする操作(例えばブレーキの解除操作、ドライブレンジ等へのシフト操作等)を行うと、再始動要求が発生したと判断して、再始動要求の信号をエンジンECUへ送信すると共に、駆動リレー35、36にオン信号を出力する。
【0043】
以下、アイドリングストップが実施された後、再始動要求が発生した場合の作動について説明する。
ECU34は、再始動要求が発生すると、駆動リレー35、36にオン信号を出力する。ECU34より出力されるオン信号を受けて駆動リレー35がオンすると、バッテリ10より第1の励磁端子30に電力が供給され、第1の励磁端子30に接続される第1の接続金具26を通じて第1の励磁コイル11に通電される。これにより、ピニオン押出用ソレノイドSL1が作動することで、シフトレバー41(図4参照)を介してピニオン2が反モータ方向へ押し出され、ピニオン2の側面がリングギヤ3の側面に当接して停止する。同様に、ECU34より出力されるオン信号を受けて駆動リレー36がオンすると、バッテリ10より第2の励磁端子31に電力が供給され、第2の励磁端子31に接続される第2の接続金具28を通じて第2の励磁コイル12に通電される。これにより、モータ通電用ソレノイドSL2が作動してメイン接点が閉成する。
【0044】
また、第2の励磁端子31は、同一の金属板(第2の端子金具29)によって接続端子33と分岐して形成されているので、バッテリ10より第2の励磁端子31に電力が供給されると、接続端子33からケーブル32を通じて補助電磁スイッチ6の励磁端子22に電力が供給される。これにより、励磁端子22に接続されるタイマ回路24がオン作動して励磁コイル23に通電され、電磁石の吸引力によって補助接点21が開成する。
補助接点21が開成すると、バッテリ10から抵抗体20を経由してモータ5に電流が流れる第1の通電経路が形成される。このため、モータ5に流れる電流が抵抗体20で抑制されて、低速度でモータ5が回転し、そのモータ5の回転を受けてピニオン2がリングギヤ3に噛み合う。
【0045】
タイマ回路24がオン作動してから所定時間を経過すると、タイマ回路24がオフ作動して励磁コイル23への通電が停止する。その結果、補助接点21が閉成して抵抗体20の両端が短絡され、抵抗体20をバイパスする第2の通電経路が形成される。これにより、バッテリ10からモータ5に流れる電流が抵抗体20によって抑制されることはなく、第1の通電経路を電流が流れるモータ5の起動時より高い電流がモータ5に流れるため、モータ5が高速度で回転する。このモータ5の回転がピニオン2からリングギヤ3に伝達されて、エンジンをクランキングする。
【0046】
(実施例1の効果)
実施例1に記載したメイン電磁スイッチ4は、第2の端子金具29の他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐して形成され、その第1の端子片は、バッテリ10より電力の供給を受ける第2の励磁端子31として使用され、第2の端子片は、補助電磁スイッチ6の励磁端子22とケーブル32を介して接続される接続端子33として使用される。上記の端子構造によれば、メイン電磁スイッチ4と補助電磁スイッチ6との相互間の配線接続を事前に行っておくことができる。
【0047】
すなわち、スタータ1を車両へ搭載する前に、図3に示す様に、接続端子33と補助電磁スイッチ6の励磁端子22とを予めケーブル32によって接続しておくことができる。これにより、車両側からは補助電磁スイッチ6に直接配線する必要はなく、メイン電磁スイッチ4のみ配線すれば良いので、配線接続の作業性が向上する。また、補助電磁スイッチ6に車両側から配線する必要がないので、補助電磁スイッチ6の搭載位置に係わりなく、メイン電磁スイッチ4と補助電磁スイッチ6との相互間の配線接続を容易に行うことができる。
【0048】
また、第2の励磁端子31を形成する第2の端子金具29は、第1の端子金具27と共に、樹脂カバー8と一体に設けられた端子固定台37にインサート成型されるので、耐振性の高い端子構造を提供できる。
さらに、ケーブル32を介して補助電磁スイッチ6の励磁端子22に接続される接続端子33は、端子固定台37より突出する方向が第2の励磁端子31の突出方向とは異なり、図3に示す様に、スタータ1をエンジンに取付ける方向(図示右方向)へ向かって突出している。一方、補助電磁スイッチ6は、スタータハウジング9に固定され、且つ、励磁端子22が反ハウジング方向(図示左方向)に突出して設けられるので、接続端子33と補助電磁スイッチ6の励磁端子22との間を適切な長さのケーブル32によって無理なく最短距離で接続することが可能である。これにより、配線抵抗を小さくでき、且つ、ケーブル32の長さを短くできるので、耐振性も向上する。
【0049】
また、接続端子33の周囲には、コネクタ用ハウジング39が形成されるので、接続端子33と補助電磁スイッチ6の励磁端子22との間を、両端にコネクタを有するケーブル32によって接続できる。これにより、配線接続を容易にでき、且つ、作業性も向上する。さらに、第1の励磁端子30と接続端子33とを形成する第2の端子金具29は、第2の励磁端子31の方が接続端子33より断面積が大きく形成されている。この場合、バッテリ10から電力の供給を受ける第2の励磁端子31により多くの電流を流すことができるので、接続端子33にケーブル32を介して接続される補助電磁スイッチ6の励磁端子22にも必要な電流を確実に供給できる。
【0050】
実施例1に記載したメイン電磁スイッチ4は、樹脂カバー8を軸方向から見た時に、第1の励磁端子30および第2の励磁端子31の周囲に形成されるコネクタ用ハウジング38の外形の範囲内に、接続端子33の周囲に形成されるコネクタ用ハウジング39の外形が収まっている。つまり、図1(a)に示す様に、コネクタ用ハウジング39の外形がコネクタ用ハウジング38の外形から外側へ出ていないので、軸方向から見た時の投影面積を小さくできる。これにより、エンジンへのスタータ1の搭載性が向上する。なお、実施例1では、コネクタ用ハウジング38の外形の範囲内にコネクタ用ハウジング39の外形が全て収まっているが、少なくとも互いの外形の一部が重なっている状態(オーバラップした状態)でも良い。
【0051】
また、第2の励磁端子31と接続端子33とを形成する第2の端子金具29は、1枚の金属板よりプレス加工によって容易に製造できる。特に、第2の励磁端子31および接続端子33が端子固定台37にインサート成型され、且つ、その端子固定台37と一体にコネクタ用ハウジング38、39を形成する場合は、第2の励磁端子31および接続端子33と、それぞれのコネクタ用ハウジング38、39との位置精度が重要となる。これに対し、実施例1では、第2の端子金具29が1枚の金属板より形成されるので、第2の励磁端子31と接続端子33との位置精度を確保できる。その結果、第2の励磁端子31および接続端子33に対し、それぞれのコネクタ用ハウジング38、39を高い位置精度で形成できるので、信頼性の高い端子構造を提供できる。
【0052】
(実施例2)
この実施例2に係るメイン電磁スイッチ4は、図5に示す様に、第1の励磁端子30および第2の励磁端子31の周囲に形成される共通のコネクタ用ハウジング38および接続端子33の周囲に形成されるコネクタ用ハウジング39にゴム等のシール部材42を配設した一例である。
シール部材42は、端子固定台37より図示上方に突き出る第1の励磁端子30および第2の励磁端子31の根元および端子固定台37より図示下方に突き出る接続端子33の根元に嵌合して端子固定台37に埋設されている。
上記の構成によれば、第1の励磁端子30および第2の励磁端子31と端子固定台37との間、および、接続端子33と端子固定台37との間をシール部材42によって液密にシールできるので、防水性が向上して、より信頼性の高い端子構造を提供できる。
【0053】
(実施例3)
実施例1では、第2の励磁端子31と接続端子33が端子固定台37より互いに軸方向の反対方向へ突出して設けられる一例を記載したが、端子固定台37より突き出る接続端子33の突出方向は、補助電磁スイッチ6の取付け位置に対応して適宜に変更することもできる。
図6は、端子固定台37より突出する接続端子33の突出方向を、メイン電磁スイッチ4の軸線方向(図示上下方向)と交差する方向に設定した一例である。
これにより、補助電磁スイッチ6の取付け位置に対応して、接続端子33と補助電磁スイッチ6の励磁端子22との間を無理なく最短距離で配線することが可能となる。その結果、配線抵抗を小さくできると共に、接続端子33と補助電磁スイッチ6の励磁端子22との間を接続するケーブル32の長さを短くできるので、耐振性も向上する。
【0054】
(実施例4)
実施例1に記載したメイン電磁スイッチ4は、ピニオン2の押し出しを行うピニオン押出用ソレノイドSL1と、モータ5の通電電流を断続するモータ通電用ソレノイドSL2とを備え、両ソレノイドSL1、SL2の作動を独立に制御できる構成であるが、この実施例4に示すメイン電磁スイッチ4は、図7および図8に示す様に、励磁コイル43と、この励磁コイル43の内周を軸心方向に可動するプランジャ44とを有し、このプランジャ44の動きに応じて、ピニオン2の押し出しとモータ5の通電とを連動して制御する一般的な構成である。
【0055】
なお、図7に示すメイン電磁スイッチ4は、吸引コイルと保持コイルの二つのコイルによって励磁コイル43を構成する2コイル式であり、図8に示すメイン電磁スイッチ4は、励磁コイル43を一つのコイルで構成する1コイル式であるが、スイッチ用端子の構造は、2コイル式と1コイル式とに係わらず、本発明の端子構造(端子金具の他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐した構造)を同様に適用できる。但し、実施例4に示すスイッチ用端子は、実施例1に記載した第2のスイッチ用端子と同一の構造を有しているので、図7および図8では、実施例1に記載した第2のスイッチ用端子と同一の符号を付している。
【0056】
(その他の実施例)
実施例1に記載した補助電磁スイッチ6は、励磁コイル23が非通電の時に補助接点21が閉成している常閉タイプであるが、励磁コイル23が非通電の時に補助接点21が開成している常開タイプの補助電磁スイッチ6を使用することもできる。なお、常開タイプの補助電磁スイッチ6を使用する場合は、実施例1に記載したタイマ回路24に替えて遅延回路が用いられる。遅延回路は、メイン接点がオンした後、所定時間を経過した時点でオン作動する。つまり、遅延回路は、メイン接点がオンした時点ではオフ状態であり、補助接点21が開成している。
【0057】
これにより、メイン接点がオンした時に、バッテリ10から抵抗体20を経由して電流が流れる第1の通電経路が形成されるため、モータ5に流れる電流が抵抗体20で抑制されて、低速度でモータ5が回転する。その後、遅延回路がオン作動すると、励磁コイル23に通電されて電磁石が形成され、補助接点21が閉成する。その結果、抵抗体20をバイパスする第2の通電径路が形成されるため、バッテリ10からモータ5に流れる電流が抵抗体20によって抑制されることはなく、起動時より高い電流がモータ5に流れることで、モータ5が高速度で回転する。
【0058】
実施例1では、本発明の端子構造(端子金具の他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐した構造)をメイン電磁スイッチ4に設けて、接続端子33と補助電磁スイッチ6の励磁端子22とをケーブル32によって接続する構成を記載したが、本発明の端子構造を補助電磁スイッチ6に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 スタータ
2 ピニオン
3 リングギヤ
4 メイン電磁スイッチ(スタータ用電磁スイッチ)
5 モータ
6 補助電磁スイッチ
8 電磁スイッチの樹脂カバー
10 バッテリ
11 第1の励磁コイル
12 第2の励磁コイル
18 固定接点(メイン接点)
19 可動接点(メイン接点)
20 抵抗体
21 補助電磁スイッチの補助接点(電気接点)
22 補助電磁スイッチの励磁端子
23 励磁コイル
26 第1の接続金具
28 第2の接続金具(接続金具)
29 第2の端子金具(端子金具)
30 第1の励磁端子
31 第2の励磁端子(第1の端子片)
32 ケーブル(電気配線)
33 接続端子(第2の端子片)
37 端子固定台
38 コネクタ用ハウジング
39 コネクタ用ハウジング
SL1 ピニオン押出用ソレノイド
SL2 モータ通電用ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリよりモータに電力を供給する電源ラインに電気接点を配置し、電磁石のオン/オフ動作に連動して前記電気接点を開閉するスタータ用電磁スイッチであって、
一端側の端部が前記電磁石を形成する励磁コイルに接続され、他端側が前記電磁スイッチの樹脂カバーを挿通して外部に取り出される接続金具と、
一端側の端部が前記接続金具の他端側の端部と電気的かつ機械的に接続され、他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐して設けられた端子金具とを有し、
前記第1の端子片は、前記バッテリより給電線を介して電力が供給される励磁端子として使用され、
前記第2の端子片は、他の電磁スイッチに設けられる励磁端子に電気配線を介して接続される接続端子として使用されることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記端子金具は、前記樹脂カバーと一体に設けられる端子固定台にインサート成型され、且つ、前記第1の端子片と前記第2の端子片は、前記端子固定台より突出する互いの突出方向が異なることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項3】
請求項2に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記第1の端子片の周囲および前記第2の端子片の周囲には、それぞれコネクタ用ハウジングが前記端子固定台と一体に設けられていることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記端子金具は、前記第1の端子片と前記第2の端子片が、前記端子固定台より互いに軸方向の反対方向へ突出して設けられ、
前記第1の端子片の周囲に設けられる前記コネクタ用ハウジングと、前記第2の端子片の周囲に設けられる前記コネクタ用ハウジングとは、軸方向から見た時に、少なくとも互いの外形の一部が重なっていることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項5】
請求項1〜4に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記電磁スイッチは、前記電気接点の開閉によって前記モータの通電電流を断続するメイン電磁スイッチであり、
前記他の電磁スイッチは、前記メイン電磁スイッチによって前記電気接点がオンした時に、前記モータに流れる起動電流を抑制する電流抑制用の補助電磁スイッチであることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項6】
請求項1〜4に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記電磁スイッチは、前記電源ラインに介在される抵抗体を内蔵し、この抵抗体を通って前記モータに電流を流す第1の通電経路と、前記抵抗体をバイパスして前記モータに電流を流す第2の通電経路とを前記電気接点の開閉によって切り替える補助電磁スイッチであり、
前記他の電磁スイッチは、前記電源ラインにメイン接点を有し、電磁石のオン/オフ動作に連動して前記メイン接点を開閉することで前記モータの通電電流を断続するメイン電磁スイッチであることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項7】
請求項1〜6に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記端子金具は、1枚の金属板よりプレス成型されていることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項8】
請求項1〜7に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記端子金具は、前記第1の端子片の方が第2の端子片より断面積が大きいことを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項9】
第1の電磁石の吸引力を利用してスタータのピニオンをエンジンのリングギヤ側へ押し出すピニオン押出用ソレノイドと、
バッテリよりモータに電力を供給する電源ラインにメイン接点を有し、第2の電磁石のオン/オフ動作に連動して前記メイン接点を開閉することで前記モータの通電電流を断続するモータ通電用ソレノイドとを有するスタータ用電磁スイッチにおいて、
一端側の端部が前記第1の電磁石を形成する第1の励磁コイルに接続され、他端側が前記電磁スイッチの樹脂カバーを挿通して外部に取り出される第1の接続金具と、
一端側の端部が前記第2の電磁石を形成する第2の励磁コイルに接続され、他端側が前記樹脂カバーを挿通して外部に取り出される第2の接続金具と、
一端側の端部が前記第1の接続金具の他端側の端部と電気的かつ機械的に接続され、他端側に前記バッテリより給電線を介して電力が供給される第1の励磁端子を形成する第1の端子金具と、
一端側の端部が前記第2の接続金具の他端側の端部と電気的かつ機械的に接続され、他端側が第1の端子片と第2の端子片とに分岐して設けられる第2の端子金具とを有し、
前記第1の端子片は、前記バッテリより給電線を介して電力が供給される第2の励磁端子として使用され、
前記第2の端子片は、前記メイン接点がオンした時に、前記モータに流れる起動電流を抑制する電流抑制用の補助電磁スイッチに設けられる励磁端子に電気配線を介して接続される接続端子として使用されることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項10】
請求項9に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記第1の端子金具と前記第2の端子金具は、前記樹脂カバーと一体に設けられる端子固定台にインサート成型され、且つ、前記第1の端子片と前記第2の端子片は、前記端子固定台より突出する互いの突出方向が異なることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項11】
請求項10に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記第1の励磁端子と前記第1の端子片の周囲には、共通のコネクタ用ハウジングが前記端子固定台と一体に設けられ、
前記第2の端子片の周囲には、専用のコネクタ用ハウジングが前記端子固定台と一体に設けられていることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項12】
請求項11に記載したスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記第1の端子片と前記第2の端子片は、前記端子固定台より互いに軸方向の反対方向へ突出して設けられ、
前記第1の励磁端子と前記第1の端子片の周囲に設けられる共通の前記コネクタ用ハウジングと、前記第2の端子片の周囲に設けられる前記専用のコネクタ用ハウジングとは、軸方向から見た時に、少なくとも互いの外形の一部が重なっていることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項13】
請求項9〜12に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記第2の端子金具は、1枚の金属板よりプレス成型されていることを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。
【請求項14】
請求項9〜13に記載した何れか一つのスタータ用電磁スイッチにおいて、
前記第2の端子金具は、前記第1の端子片の方が第2の端子片より断面積が大きいことを特徴とするスタータ用電磁スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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