説明

スチレン系樹脂押出発泡体およびその製造方法

【課題】 断熱性および環境適合性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体を提供する。
【解決手段】 本スチレン系樹脂押出発泡体は、スチレン系樹脂および非ハロゲン系発泡剤を溶融混練してなるスチレン系樹脂組成物を押出発泡して得られるスチレン系樹脂押出発泡体であって、
(i)上記スチレン系樹脂が多分岐状ポリスチレン単独、または、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンを含有してなるものであって、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンの重量比が100/0〜5/95であり、
(ii)上記非ハロゲン系発泡剤として、少なくとも炭素数が3〜5の飽和炭化水素を含むものである、スチレン系樹脂押出発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断熱性および環境適合性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂押出発泡体は、良好な施工性や断熱特性から、例えば、構造物の断熱材として用いられている。スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法としては、押出機などを用いてスチレン系樹脂組成物を加熱溶融し、次いで、発泡剤を添加し所定の樹脂温度に冷却し、これを低圧域に押し出すことにより、スチレン系樹脂押出発泡体を連続的に製造する押出発泡成形が用いられている。
【0003】
前述された押出発泡成形に用いられる発泡剤として、フロン類や炭化水素が公知である。フロン類として、例えば、塩素原子を含有するクロロフルオロカーボン(以下、「CFC」とも称される。)があげられる。CFCは良好な発泡体を形成すると共に、発泡体に残留しやすい傾向を有し、かつ、熱伝導率が低いため、優れた断熱性を発現に寄与するものとして使用されてきた。
【0004】
しかし、CFCがオゾン層を破壊する原因物質であることから、CFCに代替する発泡剤の使用が試みられている。CFCの代替品として、例えば、ハイドロクロロフルオロカーボン(以下、「HCFC」とも称される。)やハイドロフルオロカーボン(以下、「HFC」とも称される。)が提案されている。しかしながら、HFCやHCFCといったフロン類はCFCよりオゾン層への影響は小さいが、一方で地球温暖化への影響は依然として大きい。したがって、HCFCやHFCの使用量も削減することが望まれている。
特許文献1には、イソブタン及びノルマルブタンを組み合わせた発泡剤が開示されている。イソブタン及びノルマルブタンは、スチレン系樹脂に対して透過性が小さく、かつ、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数が低い。したがって、これらを発泡剤とするスチレン系樹脂押出発泡体は環境適合性に優れている。
【0005】
但し、イソブタンやノルマルブタンといった炭化水素は、CFCやHCFCに比較して、熱伝導率が高いため、発泡体の断熱性が低下する問題があった。特許文献2には、上記の問題を解決するために、発泡剤として水を用いて、添加剤の種類、押出発泡成形条件などを調整することにより、小気泡と大気泡が海島状に混在する特徴的な気泡構造を有する発泡体を得る手法が開示されている。これにより、発泡剤として炭化水素を使用しても、優れた断熱性を有し、かつ軽量で、押出発泡成形性も良好である発泡体が得られた。
【0006】
しかしながら、小気泡と大気泡が海島状に混在する特徴的な気泡構造を有する発泡体の製造方法にあっては、上記気泡構造を発現させる為の発泡時の樹脂温度・樹脂圧力等の押出条件幅が狭く、安定的な製造に関して、改善の余地があった。特に、一度発泡体にしたスチレン系樹脂組成物を再びペレット化して、押出発泡体の原料として利用しようとすると、再ペレット化による樹脂劣化に起因する押出条件の変動が大きく、安定的な製造に関して、改善の余地があった。
【0007】
また、特許文献3には、非線状スチレンポリマーを原料樹脂とし、発泡剤に主として二酸化炭素を使用することにより、低密度の独立気泡ポリマーフォームを製造する方法が開示されている。しかしながら、二酸化炭素はポリスチレンに対する透過係数が高く、発泡体製造後、速やかに発泡体外に逸散してしまい、結果、発泡体が収縮し低密度の発泡体を得ることが困難であった
【特許文献1】特開平1−174540号公報
【特許文献2】特開2001−200087号公報
【特許文献3】特開2005−330491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況の下、本発明が解決しようとする課題は、優れた断熱性能を有し、環境適合性にも優れたスチレン系樹脂押出発泡体を安定的に得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、原料樹脂として、多分岐状ポリスチレン単独、または、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンを含有してなるものを用い、発泡剤として少なくとも水および炭素数が3〜5の飽和炭化水素の1種を用いることにより、軽量で、外観性に優れる発泡体を安定的に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、
[1]本発明は、スチレン系樹脂と非ハロゲン系発泡剤とを溶融混練してなるスチレン系樹脂組成物を押出発泡して得られるスチレン系樹脂押出発泡体であって、
(i)上記スチレン系樹脂が多分岐状ポリスチレン単独、または、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンを含有してなるものであって、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンの重量比が100/0〜5/95であり、
(ii)上記非ハロゲン系発泡剤として、少なくとも、炭素数が3〜5の飽和炭化水素の1種および水を含むものである、スチレン系樹脂押出発泡体である。
[2]上記多分岐状ポリスチレンが、エステル結合、エーテル結合、およびアミド結合から選ばれる繰り返し単位を有する分岐構造からなる多分岐状マクロモノマーとスチレン系モノマーとの重合物であるものが好適である。
[3]上記スチレン系樹脂が、バージン樹脂の重量平均分子量をMW1とし、また、該バージン樹脂と発泡剤を溶融混練して押出発泡し得られる発泡体を再ペレット化してなるスチレン系樹脂組成物の重量平均分子量をMW2とする際、下記式(1)を満たすものであるものが好適である。
式(1):0.8≦ MW2/MW1 ≦1.0
[4]上記飽和炭化水素として、更に、プロパン、n−ブタン、i−ブタンよりなる群から選ばれる少なくとも1つを含むものが好ましい。
[5]上記非ハロゲン発泡剤として、更に、エーテルを含むもがあげられる。
[6]上記スチレン系樹脂押出発泡体を形成する気泡が主として、気泡径0.20mm以下の気泡と気泡径0.20〜1.0mmの気泡より構成され、気泡径0.20mm以下の気泡が発泡体断面積あたり10〜90%の占有面積を有することが好ましい。
[7]上記スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率が0.040W/mK以下であることが、好ましい。
[8]上記スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率が0.028W/mK以下であることが、好ましい。
[9]上記スチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が20〜60kg/m3であることが、好ましい。
[10]上記スチレン系樹脂押出発泡体の厚みが10〜150mmであることが、好ましい。
[11]上記スチレン系樹脂発泡体の製造方法が、スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に添加し、低圧域に押出発泡するスチレン系樹脂発泡体の製造方法であって、
(i)上記スチレン系樹脂が多分岐状ポリスチレン単独、または、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンを含有してなるものであって、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンの重量比が100/0〜5/95であり、
(ii)上記非ハロゲン系発泡剤として、少なくとも水および炭素数が3〜5の飽和炭化水素を含むことを特徴とする、スチレン系樹脂発泡体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた断熱性を有し、かつ環境適合性にも優れたスチレン系樹脂押出発泡体およびその製造方法が提供される。本発明のスチレン系樹脂発泡体は、その優れた断熱性の点から、種々の用途、特に建築用断熱材、保冷庫・保冷車用断熱材の用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、特に限定はなく、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等のスチレン系単量体の単独重合体または2種以上の単量体の組み合わせからなる共重合体や、前記スチレン系単量体とジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの単量体の1種または2種以上を共重合させた共重合体などが挙げられる。スチレン系単量体と共重合させるアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの単量体は、製造されるスチレン系樹脂押出発泡体の圧縮強度等の物性を低下させない程度の量を用いることができる。
【0013】
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、前記スチレン系単量体の単独重合体または共重合体に限られず、前記スチレン系単量体の単独重合体または共重合体と、前記他の単量体の単独重合体または共重合体とのブレンド物であってもよく、ジエン系ゴム強化ポリスチレンやアクリル系ゴム強化ポリスチレンをブレンドすることもできる。
【0014】
本発明においては、前記スチレン系樹脂のなかでも、経済性・加工性の面から、ポリスチレン樹脂が特に好適に使用することができる。また、押出発泡体により高い耐熱性が要求される場合には、スチレン‐アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレンを用いることが好ましい。また、押出発泡体により高い耐衝撃性が求められる場合には、ゴム強化ポリスチレンを用いることが好ましい。これらスチレン系樹脂は、単独で使用してもよく、共重合成分、分子量や分子量分布、分岐構造、MFRなどの異なるスチレン系樹脂を2種以上混合して使用してもよい。
【0015】
本発明におけるスチレン系樹脂としては、200℃におけるMFRが0.1〜50g/10分のものを用いることが、押出発泡成形する際の成形加工性に優れ、成形加工時の吐出量、得られた熱可塑性樹脂発泡体の厚みや幅、密度または独立気泡率を所望の値に調整しやすく、発泡性(発泡体の厚みや幅、密度、独立気泡率、表面性などを所望の状況に調整しやすいほど、発泡性が良い)、外観などに優れた熱可塑性樹脂発泡体が得られると共に、圧縮強度、曲げ強度または曲げたわみ量といった機械的強度や、靱性などの特性のバランスがとれた熱可塑性樹脂発泡体が得られる点から好ましい。さらに、スチレン系樹脂のMFRは、成形加工性および発泡性に対する機械的強度、靱性などのバランスの点から、0.3〜30g/10分がより好ましく、0.5〜20g/10分がさらに好ましい。
なお、本発明におけるMFRは、JIS K7210(1999年)のA法、試験条件Hにより測定される。
【0016】
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、多分岐状ポリスチレン単独、または、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンを含有してなるものを用い、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンの重量比が100/0〜5/95であるものを用いる。
上記スチレン系樹脂を使用することにより、押出運転性および発泡成形加工性が安定し、大気泡と小気泡が混在する特徴的な気泡構造を有する発泡体が安定して得ることができる。また、2種類以上の樹脂を混合することによって、後述するMW2/MW1が本発明の範囲内のものとなるように調整することもできる。
【0017】
本発明において、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンの重量比は、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンの比として、100/0〜5/95が好ましく、90/10〜10/90がより好ましく、80/20〜20/80がさらに好ましい。多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンとの重量比を上記範囲にすることにより、押出運転性および発泡成形加工性が安定し、大気泡と小気泡が混在する特徴的な気泡構造を有する発泡体が安定して得ることができる。
【0018】
本発明における多分岐状ポリスチレンとは、スチレン系モノマーに多分岐状マクロモノマーを共重合して得られるもの、ポリスチレン系樹脂に電子線照射することにより得られるもの、ポリスチレン系樹脂にラジカル重合開始剤およびラジカル重合性モノマーを添加して溶融混練することにより得られるもの、等があげられる。これらのなかでも、複数の分岐を効率よく得やすい点から、スチレン系モノマーに多分岐状マクロモノマーが共重合して得られるものが好ましい。
【0019】
本発明のスチレン樹脂組成物に含まれる多分岐状ポリスチレンの分岐構造には、特に制限はないが、電子吸引基と、該電子吸引基に結合する結合手以外の3つの結合手すべてが炭素原子に結合している飽和炭素原子とからなる分岐構造を含有するもの、および、エーテル結合、エステル結合およびアミド結合より選ばれる繰り返し構造単位からなる分岐構造を含有するものが好ましい。
【0020】
本発明において使用される多分岐状マクロモノマーには、多分岐鎖を有するモノマーであること以外には特に限定はないが、その好ましいものの一つとして、1分子中に電子吸引基と、該電子吸引基に結合する結合手以外の3つの結合手すべてが炭素原子に結合している飽和炭素原子とからなる分岐構造と、芳香環に直接結合する二重結合とを含有する多分岐状マクロモノマーがあげられる。この多分岐状マクロモノマーは、AB型モノマーから誘導されるハイパーブランチマクロモノマーである。
【0021】
本発明において使用される多分岐状マクロモノマーの好ましいものの他のものとして、エステル結合、エーテル結合およびアミド結合より選ばれる繰り返し構造単位からなる分岐構造と、分岐末端のエチレン性二重結合とを含有する多分岐状マクロモノマーがあげられる。
【0022】
本発明における線状ポリスチレンとは、分岐構造を有しないモノマー単位から構成されるポリスチレンである。
【0023】
本発明におけるスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、75,000ないし600,000が好ましく、100,000ないし500,000がより好ましく、150,000ないし400,000がさらに好ましい。
【0024】
本発明において、重量平均分子量Mwは、例えば、スチレン系樹脂5mgをクロロホルム5mlに溶解し、これを分別カラムに通して分子量を測定する、いわゆるゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により求めるものとする。詳しくは、上記分子量は、例えば、島津製作所社製GPC−LC6AD型と島津製作所社製示差屈折計検出機RID−10A型を使用し、カラム温度:室温、流速:1.0ml/分の測定条件にて測定される値を採用する。
【0025】
本発明で用いられるスチレン系樹脂としては、該バージン樹脂の重量平均分子量をMW1とし、該バージン樹脂と発泡剤を溶融混練して押出発泡し得られる発泡体を再ペレット化したスチレン系樹脂組成物の重量平均分子量をMW2とする際、下記式(1)を満たすものを用いることが好ましい。
式(1):0.8≦MW2/MW1≦1.0
【0026】
ここで、発泡体を再ペレット化したスチレン系樹脂組成物とは、以下の条件で得られたものである。
(イ)押出発泡条件:第1押出機での樹脂温度180〜230℃、第2押出機での樹脂温度110〜140℃、吐出量600〜1200kg/hr。
(ロ)再ペレット化条件:押出機温度160〜200℃、吐出150〜300kg/hr。
【0027】
MW2/MW1は、前述したように、原料樹脂である多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンの重量比を調整することにより、調節することができる。
【0028】
本発明では、MW2/MW1が上記範囲内にあるスチレン系樹脂からなるバージン樹脂を用いることにより、押出運転性が安定すると共に、大気泡と小気泡が混在する特徴的な気泡構造を有する発泡体を安定して得ることができる。
【0029】
本発明で用いられる発泡剤は、環境適合性、軽量性の観点から、少なくとも、炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた少なくとも1種および水を含む非ハロゲン物質であることが好適である。具体的には、(イ)炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種以上の飽和炭化水素、および(ロ)水、必要に応じて、(ハ)エーテル、(ニ)その他の非ハロゲン発泡剤を含有してなるものが使用される。非ハロゲン系発泡剤が用いられることにより、押出発泡成形時および得られた押出発泡体の環境適合性が向上される。また、(イ)および(ロ)の他に、(ハ)(ニ)の発泡剤が組み合わせて用いられることにより、得られるスチレン系樹脂押出発泡体の厚み、幅、密度、または独立気泡率、熱伝導率、気泡径、表面性を所望の値に調整しやすくなる。つまり、押出発泡体の成形性に優れる。
【0030】
発泡剤としての(イ)炭素数3〜5の飽和炭化水素としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタンなどが挙げられる。これらのうち、発泡性が良好であることから、プロパン、n−ブタン、i−ブタンよりなる群から選ばれる1種以上のものが好ましい。また、押出発泡体の断熱性が良好となることから、n−ブタン、i−ブタンから選ばれる1種以上のものが好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
【0031】
発泡剤としての炭素数3〜5の飽和炭化水素の使用量は、発泡剤全量100重量%に対して、99〜20重量%が好ましく、より好ましくは80〜30重量%、特に好ましくは60〜40重量%である。炭素数3〜5の飽和炭化水素の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と難燃性と両立させることができる。また、可塑性を適度な範囲として、押出機内におけるスチレン系樹脂と発泡剤との混練が均一となり、押出機の圧力制御が容易になる。
【0032】
発泡剤としての(ロ)水の使用量は、発泡剤全量100重量%に対して、1〜80重量%とすることが好ましく、より好ましくは3〜70重量%、特に好ましくは3〜30重量%、最も好ましくは5〜20重量%である。水の含有量を上記範囲とすることにより、高い断熱性と成形性とを併用し、良好な表面の押出発泡体が得られる。発泡剤として水が用いられることにより、発泡剤の種類、組成、使用量、後述される気泡径分布図において複数のピークをもつ気泡構造が得られる。これにより、単一のピークをもつ気泡構造に比べ、断熱性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができる。
【0033】
水を用いる場合、安定して押出発泡成形を行うために、吸水性物質が添加されことが好ましい。吸水性物質とは、それ自体が水を吸水するもの、吸収するもの、吸着するもの、水によって膨潤するもの、又は水と反応し水和物を形成する化合物をいう。吸水性物質は、スチレン系樹脂に対して相溶性の低い水を吸収、吸着、あるいは反応してゲルを形成し、ゲルの状態でスチレン系樹脂中に均一に分散するので、押出発泡体に気孔やボイドが生ずることなく、安定した押出発泡成形が実現されると考えられる。
【0034】
発泡剤としての(ハ)エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびメチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどが挙げられる。これらのうち、発泡性が良好であることから、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルからなる群から選ばれる1種以上のものが好ましい。
【0035】
発泡剤としてのエーテルの使用量は、発泡剤全量100重量%に対して0〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%である。上記化合物の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と難燃性、成形性を並立させることができる。また、上記化合物と同様に発泡剤として用いられるその他のエーテルとして、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどが挙げられる。
【0036】
その他の非ハロゲン発泡剤としては、二酸化炭素、アルコールよりなる群から選ばれるものが挙げられる。これらを発泡剤として用いることにより、(イ)炭素数3〜5の飽和炭化水素および(ハ)エーテルの使用量、すなわち可燃性の発泡剤の使用が減じられ、得られた発泡剤の難燃性が向上される。
【0037】
その他の非ハロゲン系発泡剤として二酸化炭素が用いられる場合には、発泡剤全量100重量%に対して3〜40重量%が好ましく、より好ましくは5〜30重量%である。二酸化炭素の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体の断熱性および成形性が良好となるので好ましい。
【0038】
本発明においては、更に他の発泡剤が用いられてもよい。他の発泡剤としては、具体的には、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールに例示されるアルコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンに例示されるケトン類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルなどの有機発泡剤、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの無機発泡剤、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤が挙げられる。
【0039】
スチレン系樹脂押出発泡体における他の発泡剤の添加量は、断熱性、発泡成形性、発泡体密度を考慮して適宜決めればよいが、発泡剤全量100重量%に対して0〜4重量%が好ましく、より好ましくは0〜3重量%である。
【0040】
本発明におけるスチレン系樹脂に対する発泡剤全量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、4.5〜10重量部とすることが好ましい。
【0041】
スチレン系樹脂押出発泡体に含まれる発泡剤の含有量は、得られた押出発泡体から、全ての表面を2mm以上切除した試験片を密閉容器中で加熱して、抽出される気体、又は、スチレン系樹脂の種類によっては溶剤に溶解して抽出される気体を試料として、ガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0042】
本発明で用いられる吸水性物質の具体例としては、表面にシラノール基を有する無水シリカ(酸化ケイ素)[例えば、日本アエロジル(株)製AEROSILなどが市販されている]等のように、表面に水酸基を有する粒子径1000nm以下の微粉末;スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性あるいは水膨潤性の層状珪酸塩あるいはこれらの有機化処理品;ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカゲル、多孔質ガラス、活性白土、けい藻土などの多孔性物質;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸アンモニウム、などの硫酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、などのリン酸塩、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、乳酸カルシウム、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸カリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化バリウムなどの金属塩、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウムなどのホウ素化合物、ポリアクリル酸塩系重合体、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール−アクリル酸塩系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリアクリロニトリル−メタクリル酸メチル−ブタジエン系共重合体、ポリエチレンオキサイド系共重合体およびこれらの誘導体などの吸水性高分子などが挙げられる。吸水性物質は単独で使用してもよく、あるいは、2種以上併用して用いることができる。
【0043】
前述された吸水性物質のうち、無水シリカ、ポリアクリル酸塩系重合体、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性あるいは水膨潤性の層状珪酸塩、硫酸金属塩、炭酸金属塩、リン酸金属塩、などの金属塩、ゼオライトなどの多孔性物質が、押出発泡成形時の安定性、気孔やボイドなどの発生を抑制する、小気泡と大気泡が混在した海島構造を有する特徴的な気泡構造を形成させ、優れた断熱性能を発現させるうえでより好ましい。
【0044】
本発明で用いられる吸水性物質の量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.1〜8重量部がより好ましく、0.2〜7重量部がさらに好ましくい。吸水性物質の含有量が0.1重量部未満の場合、吸水性物質による水の分散安定化効果が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔、ボイドが発生し発泡体の不良につながる場合がある。一方、10重量部をこえる場合、押出機内で吸水性物質の分散不良が発生し、気泡むらができ、発泡体の不良につながる場合があり、発泡体の断熱性能の悪化、品質のばらつきなどが大きくなるなどの問題が生じる場合がある。
【0045】
上記層状珪酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートからなり、該四面体シートと八面体シートが単位層を形成し、単位層単独、層間に陽イオンなどを介して複数個層状に積層して一次粒子を形成、あるいは、一次粒子の凝集体の粒子を形成(二次粒子)し、存在し得るものである。層状珪酸塩の例としては、例えばスメクタイト族粘土および膨潤性雲母などがあげられる。
【0046】
前記スメクタイト族粘土は、化学式(1):X0.2〜0.62〜3410(OH)2・nH2O(式中、Xは、K、Na、1/2Caおよび1/2Mgよりなる群から選ばれる1種以上であり、Yは、Mg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、AlおよびCrよりなる群から選ばれる1種以上であり、Zは、SiおよびAlよりなる群から選ばれる1種以上である。なお、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表わし、n=0.5〜10程度であるが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動するためこれらに限定されるわけではない)で表わされる、天然または合成されたものである。該スメクタイト族粘土の具体例としては、たとえばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトおよびベントナイトなど、これらの置換体、誘導体、またはこれらの混合物があげられる。
【0047】
また、上記膨潤性雲母は、化学式(2):X0.5〜1.02〜3(Z410)(F、OH)2 (式中、Xは、Li、Na、K、Rb、Ca、BaおよびSrよりなる群から選ばれる1種以上であり、Yは、Mg、Fe、Ni、Mn、AlおよびLiよりなる群から選ばれる1種以上であり、Zは、Si、Ge、Al、FeおよびBよりなる群から選ばれる1種以上である)で表わされる、天然または合成されたものである。これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、および水と該極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、たとえばリチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、およびナトリウム型四ケイ素雲母など、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物があげられる。
【0048】
上記膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、このようなバーミキュライト類相当品なども使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、化学式(3):(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+1/2)x・nH2O(式中、MはNaおよびMgなどのアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表わされるものがあげられる。
【0049】
これら層状珪酸塩は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
層状珪酸塩では、得られる発泡体中の分散性、水を用いた場合における押出発泡成形安定性の点などから、スメクタイト族粘土、膨潤性雲母が好ましく、さらに好ましくは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイトなどのスメクタイト族粘土、膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母である。
【0050】
ベントナイトの代表例としては、天然ベントナイト、精製ベントナイトなどがあげられる。また、有機化ベントナイトなども使用できる。ヘクトライトの代表例としては、合成ヘクトライトが挙げられる。スメクタイトには、アニオン系ポリマー変性モンモリロナイト、シラン処理モンモリロナイト、高極性有機溶剤複合モンモリロナイトなどのモンモリロナイト変性処理生成物もその範疇に含まれる。
【0051】
層状珪酸塩の含有量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.2〜7重量部である。層状珪酸塩の含有量が0.1重量部未満では、水の圧入量に対して層状珪酸塩による水の吸収あるいは吸着量が不足し、水の分散不良による気孔が発生し、良好な発泡体が得られにくくなる傾向がある。一方、10重量部をこえる場合、スチレン系樹脂中に存在する無機物粉体の量が過剰になるため、スチレン系樹脂中への均一分散が困難になり、気泡むらが発生する傾向にある。さらには、独立気泡を保持することが困難となる傾向にあり、これによって、発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生じ易くなる。水と層状珪酸塩の混合比率(重量比)は、好ましくは0.02〜20、さらに好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.15〜5、最も好ましくは0.25〜2の範囲である。
【0052】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、気泡径が均一な気泡構造、または、主として0.20mm以下の小さい気泡(小気泡)と、気泡径0.20〜1.0mmの大きな気泡(大気泡)が海島状に混在する特徴的な気泡構造を有する。
【0053】
押出発泡体の断熱性能および軽量化の観点から、小気泡と大気泡が海島状に混在する特徴的な気泡構造が好ましい。すなわち、押出発泡体が、常の均一な径の気泡のみからなる発泡体では、気泡径を小さくすることにより断熱性能をある程度向上させることは可能であるが、気泡径が小さくなると所定の厚さを出すために、より多くの樹脂が必要となり、結果的に密度が高くなり、押出時の圧力が高くなる、吐出量が少なくなるなど、成形性が低下してしまうという欠点を有する。これに対して、小気泡と大気泡が海島状に混在する特徴的な気泡構造は、小気泡の存在により断熱性能が向上できると共に、大気泡の存在により、容易に厚さを出すことが可能となり、低密度の発泡体が得られる。
【0054】
本発明で大小気泡からなる気泡構造を有する発泡体を目的とする場合、発泡体断面積あたりの小気泡の占有面積比は10〜90%が好ましく、より好ましくは20〜90%、更に好ましくは30〜80%である。
【0055】
本発明における、平均気泡径および小気泡の占有面積比は、以下のような測定方法で規定される。
スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面の所定範囲をサンプリングする。押出方向に沿った断面とは、発泡体の押出方向であって、厚み方向に拡がる断面である。この断面の所定範囲をそれぞれサンプリングする。サンプリングする所定範囲は、押出発泡体の端部の特殊な気泡構造の部分を除けば、押出法発泡体の何処でサンプリングしてもよいが、好ましくは、各断面の幅中央の位置で、厚さの中心および上下対称位置の3点程度をサンプリングする。
サンプリングされた各資料を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、SEM画像を得る。SEM画像の撮影倍率は30〜40倍程度に設置する。撮影範囲は、例えば、縦×横が数mm〜数cm程度である。各SEM画像を、厚み方向を縦方向、押出方向を横方向として、画像処理装置(例えば、(株)ピアス製、PIAS−II型)を用いて処理し、SEM画像中の個々の気泡の面積(以下、「気泡面積」と称される。)(a)を求める。また、各気泡の縦方向(厚み方向:Zf)および横方向(押出方向:Xf)の最大径(Feret径)を求める。なお、気泡面積および最大径の測定は、SEM画像中に気泡の全景が映し出された気泡のみを対象とし、SEM画像の端部で気泡の一部が欠落しているものや、SEM画像の端部ではなくとも気泡壁の一部が欠落したり、隣の気泡等と一体化している気泡は除かれる。この除外した部分は測定全面積からも除外される。測定対象となる気泡は、少なくとも200個以上であることが好ましい。従って、1つのSEM画像で200個以上の気泡を測定できる場合もあるが、そうでない場合は、2つ以上のSEM画像を用いてもよい。
SEM画像中の各気泡を楕円形と仮定し、次の式(2)および式(3)に従って、各気泡の厚み方向気泡径(Z)、押出方向気泡径(X)を求める。
式(2):X=[{(4×a)/(π×Xf×Zf)}1/2]×Xf
式(3):Z=[{(4×a)/(π×Xf×Zf)}1/2]×Zf
求められた各気泡の厚み方向の気泡径Z、押出方向の気泡径Xを式(4)に従って、相乗平均することにより、各気泡の代表気泡径(D)を求める。
式(4):D=(X×Z)1/2
測定対象となった全気泡について、代表気泡径を相加平均することによって、平均気泡径をもとめる。また、小気泡占有面積比は式(5)にしたがって、求める。
式(5):小気泡占有面積比(%)=(代表気泡径が0.20mm以下の気泡面積の総和/気泡面積の総和)×100
【0056】
本発明において、例えば建築用断熱材のようなスチレン系樹脂押出発泡体の用途における要求に応えるために、スチレン系樹脂に難燃剤が添加されてもよい。難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系化合物、窒素含有化合物などが挙げられる。
【0057】
ハロゲン難燃剤としては、具体的には、例えば、(a)テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、などの臭素化脂肪族化合物あるいはその誘導体、あるいは臭素化脂環式化合物あるいはその誘導体、(b)ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどの臭素化芳香族化合物あるいはその誘導体、(c)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、などの臭素化ビスフェノール類およびその誘導体、(d)テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどの臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、(e)ペンタブロモベンジルアクリレートポリマーなどの臭素化アクリル樹脂、(f)エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素および窒素原子含有化合物、(g)トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどの臭素および燐原子含有化合物、(h)塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環式化合物、などの塩素含有化合物、(i)臭化アンモニウムなどの臭素化無機化合物、などが挙げられる。これらの化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。さらには、本発明におけるスチレン系樹脂の1種である臭素化ポリスチレン樹脂も、難燃剤として用いることができる。
【0058】
これらの中でも、難燃性の観点から、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートのいずれかを含むことがより好ましい。
【0059】
ハロゲン系難燃剤のスチレン系樹脂発泡体中における含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対し、0.1〜20重量部が好ましい。但し、JIS A9511測定方法Aに規定される難燃性が得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、難燃相乗効果を有する添加剤などの種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されることがより好ましく、スチレン系樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜8重量部である。ハロゲン系難燃剤の量が0.1重量部未満では、発泡体として、目的とする難燃性などの良好な諸特性が得られがたい傾向があり、一方、20重量部を超えると、得られる発泡体の耐熱性や表面性、発泡体製造時の安定性などをかえって損う場合がある。
【0060】
本発明において、スチレン系樹脂発泡体の難燃性を向上させる目的で、上述したハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤を添加しても良い。このようなハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤としては、含鉄化合物、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物などが挙げられ、具体的には、酸化鉄や含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物(芳香族スルホン酸系化合物)などを用いれば良い。これらの中でも難燃性の観点から、含鉄化合物として酸化鉄、含燐化合物としてトリフェニルホスフェートやトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、含窒素化合物としてシアヌル酸やイソシアヌル酸およびこれらの誘導体、含ホウ素化合物として酸化ホウ素、含硫黄化合物としてスルファニル酸およびこの誘導体が最も好ましい。なお、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体としては、例えば、特開2002−30174号公報([0069]段落〜[0079]段落)記載のものを用いることができる。このようなハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤のスチレン系樹脂発泡体中における含有量は、ハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤の種類にもよるが、スチレン系樹脂100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましい。
【0061】
本発明においては、さらに、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で種々のシリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、前記以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有されてもよい。
【0062】
本スチレン系樹脂押出発泡体は、スチレン系樹脂を溶融混練手段に供給すると共に、核剤を含む添加剤および発泡剤を該溶融混練手段に供給してスチレン系樹脂と混練することによりスチレン系樹脂組成物とし、該スチレン系樹脂組成物を高圧領域からダイリップを通して低圧領域に押出発泡することにより得られる。
【0063】
スチレン系樹脂押出発泡体の気泡径および気泡構造を調整する手法としては、発泡剤に水を用い、他の発泡剤の種類および使用量、吸水性物質の種類および使用量、押出発泡の成形条件などにより調整できる。押出発泡の成形条件としては、例えば、溶融されたスチレン系樹脂組成物を大気中へ吐出する際の厚み拡大率の調整、つまり、ダイリップのスリットの厚みと矩形にするための成形金型の高さの調整が挙げられる。また、成形抵抗を調整する手法が挙げられる。
【0064】
スチレン系樹脂に各種添加剤を添加する手順として、例えば、スチレン系樹脂に対して各種添加剤を添加して混合した後、押出機に供給して加熱溶融し、更に発泡剤を添加して混合する手順が挙げられるが、各種添加剤をスチレン系樹脂に添加するタイミングや混練時間は特に限定されない。
スチレン系樹脂の加熱温度としては、使用されるスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、添加剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜260℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間当たりのスチレン系樹脂の押出量や溶融混練手段として用いる押出機の種類により異なるので一義的に規定することはできず、スチレン系樹脂と発泡剤や添加剤とが均一に分散混合されるに要する時間として適宜設定される。
溶融混練手段としては、例えば、スクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられるものであれば、特に制限されない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるためには、押出機のスクリュー形状を低せん断タイプのものとすることが好ましい。
【0065】
発泡成形方法は、例えば、押出整形用に使用される開口部が直線のスリット形状を有するスリットダイを通じて、高圧領域から低圧領域へ開放して得られた押出発泡体を、スリットダイと密着または接して設置された成形金型、および該成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する方法が用いられる。成形金型の流動面形状調整および金型温度調整によって、所望の発泡体の断面形状、発泡体の表面性、発泡体品質が得られる。
【0066】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば建築用断熱材や保冷庫用または保冷車用の断熱材として機能することを考慮すると、JIS A9511に準じて測定される熱伝導率が0.040W/mK以下であることが好ましく、より好ましくは0.034W/mK以下、更に好ましくは0.028W/mK以下である。
【0067】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として機能することを考慮した断熱性及び、軽量性の観点から、発泡体の密度が25〜65kg/mであることが好ましく、より好ましくは30〜55kg/mである。
【0068】
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体における厚みは特に限定はないが、例えば建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として機能することを考慮した断熱性、曲げ強度及び圧縮強度の観点から、10〜150mmであることが好ましく、より好ましくは15〜120mmであり、特に好ましくは20〜100mmである。
【0069】
かくして本発明により、優れた断熱性を有し、スチレン系樹脂押出発泡体を容易に得ることができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されないことは勿論である。また、以下の実施例および比較例においては、特に断られない限り、「%」は「重量%」を表すものとする。
【0071】
実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例3について、以下の評価法に従って、発泡体密度、独立気泡率、残存発泡剤量、熱伝導率、気泡径分布を評価した。
【0072】
(1)スチレン系樹脂の重量平均分子量MW
樹脂5mgをクロロホルム5mlに溶解したものを検体として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ[島津製作所社製、GPC−LC6AD型]および示差屈折計検出機[島津製作所社製、RID−10A型]を使用し、カラム温度:室温、流速:1.0ml/分の測定条件にて、重量平均分子量を測定した。
【0073】
(2)発泡体全体密度(kg/m
得られたスチレン系樹脂押出発泡体から、300mm(押出方向)×100mm(幅方向)×30mm(厚み方向)の直方体形状に切り出して重量を測定すると共に、ノギスを用いて、縦寸法、横寸法、高さ寸法を測定した。測定された重量および各寸法から、以下の式に基づいて発泡体密度を求め、単位をkg/mに換算した。
発泡体全体密度(g/cm)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm
【0074】
(3)発泡体外観
得られた発泡体を目視観察し、以下の基準により、評価した。
○:表皮が平滑であり、ボイドなど巨大気泡及び気泡むらが無く、発泡体の収縮が認められない。
×:表皮が平滑でなく、ボイドなどの巨大気泡または気泡むらが認められたり、発泡体の収縮が認められる。
【0075】
(4)独立気泡率(%)
マルチピクノメーター[湯浅アイオニクス(株)製]を用い、ASTM D−2856に準じて測定した。
【0076】
(5)熱伝導率(W/mK)
製造後30日経過したスチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率を、JIS A9511に準じて測定した。
【0077】
(6)平均気泡径および小気泡占有面積比
スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面において、前述された手法にて、SEM画像を得た。得られたSEM画像における平均気泡径および小気泡占有面積比を、前述された手法に従って求めた。
【0078】
(実施例1)
[押出発泡体の製造方法]
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、多分岐状ポリスチレン[DIC(株)製、商品名:HP−500M、MFR=2.5g/10分]を使用し、樹脂100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロムシクロドデカン[アルベマール・コーポレーション製、商品名:SAYTEX HP−900]4.0重量部、トリス(トリブチルネオペンチル)ホスフェート[大八化学工業(株)製、商品名:CR−900]1重量部、タルク[林化成(株)製、商品名:タルカンパウダー]0.2重量部、ステアリン酸バリウム[堺化学工業(株)製、商品名:ステアリン酸バリウム]0.5重量部、ベントナイト[(株)ホージュン製、商品名:ベンゲル23]1重量部、含水非晶質二酸化ケイ素[DSLジャパン株式会社、商品名:カープレックス]0.1重量部、エポキシ樹脂[旭電化工業株式会社、商品名:EP−13]0.2重量部、安定剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社、商品名:IRGANOX 245FF、化学名:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]]0.2重量部からなる混合物をドライブレンドして、スチレン系樹脂組成物とした。
該スチレン系樹脂組成物を第1押出機(口径90mmの単軸押出機)と第2押出機(口径65mmの単軸押出機、とを直列に連結した2段式押出機へ50kg/時間で供給した。第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、約200℃に加熱して混練し、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、ポリスチレン樹脂100重量部に対して水[水道水]0.7重量部、i−ブタン[三井化学(株)製]3.5重量部、ジメチルエーテル[三井化学(株)製]2重量部を溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。なお、使用した発泡剤の組成は、発泡剤全量に対して、水11%、i−ブタン57% 、ジメチルエーテル32%となる。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は8〜20MPaであり、これに対して発泡剤の圧入圧力は+0.5〜3MPaに設定した。第1押出機に連結された第2押出機および冷却機において、樹脂温度を約120℃ に冷却し、冷却機の先端に設けたダイリップより、スチレン系樹脂組成物を大気中へ押し出し、厚み約25〜40mm、幅約200mmの押出発泡体(バージン樹脂発泡体)を得た。
[再ペレット化]
次に、得られたバージン樹脂押出発泡体を粉砕し、1段式押出機(口径120mmの単軸押出機)に約200kg/時間で供給した。押出機内にて約180℃に加熱混練し、発泡剤を抜き、押出機先端に設けたダイリップより、スチレン系樹脂組成物を約50℃の水槽に押し出し、ペレタイザーにより再ペレット化して再生ペレット(MW2=3.6×10)した。
[再生ペレットを用いた押出発泡体の製造]
得られた再生ペレットを用いて、バージン樹脂の場合と同様の操作により、同量の添加剤および発泡剤を添加して押出発泡体(再生ペレット樹脂発泡体)を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量MW1は3.8×10であり、再ペレット樹脂の重量平均分子量MW2は3.6×10であった。したがって、重量平均分子量MW2/MW1の比は0.95であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は33kg/mであり、独立気泡率は97%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は45%、平均気泡径が0.24mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.027W/mKであった。
得られた再ペレット樹脂押出発泡体の密度は32kg/mであり、独立気泡率は95%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は45%、平均気泡径が0.22mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.028W/mKであった。
【0079】
【表1】

【0080】
(実施例2)
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、多分岐状ポリスチレンおよび線状ポリスチレン[PSジャパン(株)製、商品名:G9401、MFR=2.5g/10分]を使用し、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンを70/30%の比率で混合して使用した以外は、実施例1と同様にして、バージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量MW1は3.9×10であり、再生ペレット樹脂の重量平均分子量MW2は3.52×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW2/MW1は0.90あった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は34kg/mであり、独立気泡率は96%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は46%、平均気泡径が0.22mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.026W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は33kg/mであり、独立気泡率は94%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は43%、平均気泡径が0.23mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.027W/mKであった。
【0081】
(実施例3)
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、多分岐状ポリスチレンおよび線状ポリスチレンを使用し、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンを50/50%の比率で混合して使用した以外は、実施例1と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量MW1は4.0×10であり、再生ペレット樹脂の重量平均分子量MW2は3.6×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW2/MW1は0.90であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は32kg/mであり、独立気泡率は95%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は42%、平均気泡径が0.23mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.027W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は32kg/mであり、独立気泡率は95%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は42%、平均気泡径が0.23mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.027W/mKであった。
【0082】
(実施例4)
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、多分岐状ポリスチレンおよび線状ポリスチレンを使用し、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンを30/70%の比率で混合して使用した以外は、実施例1と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量MW1は4.1×10であり、再生ペレット樹脂の重量平均分子量MW2は3.5×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW2/MW1は0.85であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は33kg/mであり、独立気泡率は92%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は43%、平均気泡径が0.21mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.028W/mKであった。
得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は32kg/mであり、独立気泡率は92%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は40%、平均気泡径が0.22mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.028W/mKであった。
【0083】
(実施例5)
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、多分岐状ポリスチレンおよび線状ポリスチレンを使用し、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンを10/90%の比率で混合して使用した以外は、実施例1と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量MW1は4.3×10であり、再生ペレット樹脂の重量平均分子量MW2は3.5×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW1/MW2は0.81であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は31kg/mであり、独立気泡率は98%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は41%、平均気泡径が0.23mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.027W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は30kg/mであり、独立気泡率は95%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は36%、平均気泡径が0.23mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.028W/mKであった。
【0084】
(実施例6)
難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカンを4.5重量部添加し、その他添加剤として、ベントナイトを0.5重量部添加し、トリス(トリブチルネオペンチル)ホスフェート、および、含水非晶質ニ酸化ケイ素を添加せず、発泡剤として、水0.8重量部、イソブタン1.0重量部、ノルマルブタン2.6重量部、ジメチルエーテル3重量部を圧入した(なお、使用した発泡剤の組成は、発泡剤全量100重量%とすると、水11重量%、イソブタン14重量% 、ノルマルブタン35重量% 、ジメチルエーテル重量40%である)以外は、実施例1と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量は3.8×10であり、再生ペレット樹脂の重量平均分子量は3.3.6×10であった。したがって、重量平均分子量の比は0.95であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は26kg/mであり、独立気泡率は92%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は10%、平均気泡径が0.36mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.031W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は26kg/mであり、独立気泡率は90%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は10%、平均気泡径が0.40mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.031W/mKであった。
【0085】
(実施例7)
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、多分岐状ポリスチレンおよび線状ポリスチレンを使用し、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンを50/50%の比率で混合して、原料樹脂として使用した以外は、実施例6と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量MW1は4.0×10であり、再ペレット樹脂の重量平均分子量MW2は3.5×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW1/MW2は0.88であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は27kg/mであり、独立気泡率は91%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は10%、平均気泡径が0.35mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.030W/mKであった。
また、得られた再ペレット樹脂押出発泡体の密度は26kg/mであり、独立気泡率は90%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は10%、平均気泡径が0.38mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.031W/mKであった。
【0086】
(実施例8)
難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカンを2.5重量部添加し、その他添加剤としてベントナイトを0.5重量部添加し、タルク、トリス(トリブチルネオペンチル)ホスフェートおよび含水非晶質二酸化ケイ素を添加せず、発泡剤としてイソブタン0.6重量部、ノルマルブタン1.4重量部、ジメチルエーテル3重量部、二酸化炭素[昭和炭酸製]2重量部を圧入した(なお、使用した発泡剤の組成は、発泡剤全量100重量%とすると、イソブタン8.5重量% 、ノルマルブタン20重量% 、ジメチルエーテル43.9重量%、二酸化炭素28.6重量%である)以外は、実施例1と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
原料樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量は3.8×10であり、再生ペレット樹脂の重量平均分子量は3.6×10であった。したがって、重量平均分子量の比は0.89であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は28kg/mであり、独立気泡率は91%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体は単一の気泡径を有する構造で、小気泡面積比は100%、平均気泡径が0.18mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.032W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は27kg/mであり、独立気泡率は95%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体は単一の気泡径を有する構造で、小気泡面積比は100%、平均気泡径が0.20mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.033W/mKであった。
【0087】
(実施例9)
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、多分岐状ポリスチレンおよび線状ポリスチレンを使用し、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンを50/50%の比率で混合して、原料樹脂として使用した以外は、実施例8と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量MW1は4.0×10であり、再生ペレット樹脂の重量平均分子量MW2は3.5×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW1/MW2は0.88であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は29kg/mであり、独立気泡率は91%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体は単一の気泡径を有する構造で、小気泡面積比は100%、平均気泡径が0.17mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.032W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は28kg/mであり、独立気泡率は88%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体は単一の気泡径を有する構造で、小気泡面積比は100%、平均気泡径が0.19mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.033W/mKであった。
【0088】
(比較例1)
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、線状ポリスチレンのみを使用した以外は、実施例1と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。表1に示されるように、バージン樹脂の重量平均分子量MW1は4.3×10であり、再生ペレット樹脂の重量平均分子量MW2は3.2×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW2/MW1は0.74であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は34kg/mであり、独立気泡率は94%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は47%、平均気泡径が0.20mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.027W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は34kg/mであり、独立気泡率は89%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は12%、平均気泡径が0.30mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.032W/mKであった。
【0089】
(比較例2)
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、線状ポリスチレンのみを使用した以外は、実施例6と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。バージン樹脂の重量平均分子量MW1は4.3×10であり、再生ペレット樹脂MW2の重量平均分子量は3.1×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW2/MW1は0.72であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は27kg/mであり、独立気泡率は92%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体の小気泡面積比は10%、平均気泡径が0.34mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.033W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は26kg/mであり、独立気泡率は85%であった。発泡体の外観の評価は「×」であった。また、発泡体の小気泡面積比は5%、平均気泡径が0.40mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.036W/mKであった。
【0090】
(比較例3)
スチレン系樹脂(バージン樹脂)として、線状ポリスチレンのみを使用した以外は、実施例8と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。バージン樹脂の重量平均分子量MW1は4.3×10であり、再生ペレット樹脂MW2の重量平均分子量は3.2×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW2/MW1は0.74であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は28kg/mであり、独立気泡率は85%であった。発泡体の外観の評価は「○」であった。また、発泡体は単一の気泡径を有する構造で、小気泡面積比は100%、平均気泡径は0.18mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.035W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は28kg/mであり、独立気泡率は85%であった。発泡体の外観の評価は「×」であった。また、発泡体は単一の気泡径を有する構造で、小気泡面積比は100%、平均気泡径は0.18mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.037W/mKであった。
【0091】
(比較例4)
発泡剤として、ジメチルエーテルを2重量部、二酸化炭素を4重量部圧入した以外は、実施例8と同様にしてバージン樹脂押出発泡体および再生ペレット樹脂押出発泡体を得た。
樹脂および押出発泡体の評価結果を表1に示す。バージン樹脂の重量平均分子量MW1は3.8×10であり、再生ペレット樹脂MW2の重量平均分子量は3.6×10であった。したがって、重量平均分子量の比MW2/MW1は0.95であった。
得られたバージン樹脂押出発泡体の密度は27kg/mであり、独立気泡率は85%であった。発泡体の外観の評価は「×」であった。また、発泡体は単一の気泡径を有する構造で、小気泡面積比は100%、平均気泡径は0.15mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.037W/mKであった。
また、得られた再生ペレット樹脂押出発泡体の密度は26kg/mであり、独立気泡率は75%であった。発泡体の外観の評価は「×」であった。また、発泡体は単一の気泡径を有する構造で、小気泡面積比は100%、平均気泡径は0.17mmであり、JIS A9511に準じて測定された熱伝導率が0.038W/mKであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂および非ハロゲン系発泡剤を溶融混練してなるスチレン系樹脂組成物を押出発泡して得られるスチレン系樹脂押出発泡体であって、
(i)上記スチレン系樹脂が多分岐状ポリスチレン単独、または、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンを含有してなるものであって、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンの重量比が100/0〜5/95であり、
(ii)上記非ハロゲン系発泡剤として、少なくとも、炭素数3〜5の飽和炭化水素の1種および水を含むものである、スチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項2】
前記多分岐状ポリスチレンが、エステル結合、エーテル結合およびアミド結合から選ばれる繰り返し単位を有する分岐構造からなる多分岐状マクロモノマーとスチレン系モノマーとの重合物である、請求項1に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂が、スチレン系樹脂の重量平均分子量をMW1とし、また、該スチレン系樹脂と発泡剤を溶融混練して押出発泡し得られる発泡体を再ペレット化したスチレン系樹脂組成物の重量平均分子量をMW2とした際、下記式(1)を満たすものである、請求項1または2に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
式(1):0.8≦MW2/MW1≦1.0
【請求項4】
前記飽和炭化水素が、プロパン、n−ブタン、i−ブタンよりなる群から選ばれる少なくとも1つを含むものである、請求項1〜3に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項5】
上記非ハロゲン発泡剤が、更にエーテルを含むものである、請求項1〜4のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項6】
発泡体を形成する気泡が、主として、気泡径0.25mm以下の気泡と気泡径0.25〜1.0mmの気泡より構成され、気泡径0.25mm以下の気泡が発泡体断面積あたり10〜90%の占有面積を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項7】
上記スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率が0.040W/mK以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項8】
上記スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率が0.028W/mK以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項9】
上記スチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が20〜60kg/mである、請求項1〜8のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項10】
上記スチレン系樹脂押出発泡体の厚みが10〜150mmである、請求項1〜9のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項11】
スチレン系樹脂を加熱溶融させ、発泡剤を該スチレン系樹脂に添加し、低圧域に押出発泡するスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法であって、
(i)上記スチレン系樹脂が多分岐状ポリスチレン単独、または、多分岐状ポリスチレンと線状ポリスチレンを含有してなるものであって、多分岐状ポリスチレン/線状ポリスチレンの重量比が100/0〜5/95であり、
(ii)上記非ハロゲン系発泡剤として、少なくとも、炭素数3〜5の飽和炭化水素の1種および水を含むものである、スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法。


【公開番号】特開2012−229276(P2012−229276A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96521(P2011−96521)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】