説明

ステアリングコラムの支持構造

【課題】ステアリングコラムを支持する支持部材の強度及び剛性をさらに向上させることができるステアリングコラムの支持構造を得る。
【解決手段】ステアリングサポートブラケット22が、ステアリングサポートロア40とステアリングサポートアッパ38とを含んで構成されている。ステアリングサポートロア40は、インパネリインフォースメント26の車両下方に配置されており、断面形状において車両上方側が開放された矩形波形状を成し、インパネリインフォースメント26の外周面に固定されている。一方、ステアリングサポートアッパ38は、ステアリングサポートロア40の延設方向の一端側において車両上下方向に重なって当該ステアリングサポートロア40と共に閉断面を構成する。これにより、当該ステアリングサポートブラケット22において、開断面で構成されたステアリングサポートブラケットよりも強度及び剛性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングコラムの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングコラムの支持構造として、例えば特許文献1には、ステアリングコラムに設けられたメンバ取付部及びステアリングメンバ(インパネリインフォースメント)に設けられたコラム取付部材を介して、当該ステアリングメンバの下方にステアリングコラムが固定されるという構成が開示されている。また、特許文献2では、リインフォースメントに組み付けられたステアリングサポートを介して、当該リインフォースメントにステアリングコラムが支持されるという構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−149744号公報
【特許文献2】特開平8−183462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、近年では、ステリング操作のアシスト力は増加する傾向にあり、これに伴ってステアリングコラムに配設された電動パワーステアリング(EPS)を構成するモータの出力が増加している。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ステアリングコラムを支持する支持部材の強度及び剛性をさらに向上させることができるステアリングコラムの支持構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係るステアリングコラムの支持構造は、操舵力アシスト用のモータが配設されたステアリングコラムと、インストルメントパネル内に車両幅方向に沿って配置されたインパネリインフォースメントと前記ステアリングコラムとの間に介在され、当該ステアリングコラムを前記インパネリインフォースメントに支持させるステアリングサポートブラケットを備え、前記ステアリングサポートブラケットが、前記インパネリインフォースメントの車両下方に位置し当該インパネリインフォースメントの軸線と交差する方向に沿って延設され、当該インパネリインフォースメントの外周面に固定されたステアリングサポートロアと、前記ステアリングサポートロアの延設方向の一端側において車両上下方向に重なり当該ステアリングサポートロアと共に閉断面を構成し、当該インパネリインフォースメントの外周面に固定されると共に前記ステアリングコラムを揺動可能に支持するステアリングサポートアッパと、を含んで構成されている。
【0007】
請求項1記載の本発明に係るステアリングコラムの支持構造では、支持部材としてのステアリングサポートブラケットを介してステアリングコラムがインパネリインフォースメントに支持されるようになっており、当該ステアリングサポートブラケットが、ステアリングサポートロアとステアリングサポートアッパとを含んで構成されている。
【0008】
ステアリングサポートロアは、インパネリインフォースメントの車両下方に配置されており、インパネリインフォースメントの外周面に固定されている。一方、ステアリングサポートアッパは、ステアリングサポートロアの延設方向の一端側において車両上下方向に重なって当該ステアリングサポートロアと共に閉断面を構成し、インパネリインフォースメントの外周面に固定されると共にステアリングコラムを揺動可能に支持している。
【0009】
ここで、ステアリングサポートアッパとステアリングサポートロアとの間で閉断面を構成するステアリングサポートブラケットを用いることで、当該ステアリングサポートブラケットにおいて、開断面で構成されたステアリングサポートブラケットよりも強度及び剛性を向上させることができる。このため、操舵力アシスト用のモータの出力の増加に対応して必要な強度及び剛性を確保することができる。
【0010】
請求項2記載の本発明に係るステアリングコラムの支持構造は、請求項1に記載のステアリングコラム支持構造において、前記ステアリングサポートロアが、車両上下方向に沿った断面形状において車両上方側が開放された矩形波形状を成し、前記ステアリングサポートアッパが、車両上下方向に沿った断面形状において車両下方側が開放された矩形波形状を成している。
【0011】
請求項2記載の本発明に係るステアリングコラムの支持構造では、ステアリングサポートロア及びステアリングサポートアッパが、車両上下方向に沿った断面形状において矩形波形状を成している。このため、ステアリングサポートアッパ及びステアリングサポートロアの高さ寸法を容易に変えることができる。つまり、これによってステアリングサポートブラケットの断面係数を調整することができ、当該ステアリングサポートブラケットにおいて、操舵力アシスト用のモータの出力変化に対応して必要な強度及び剛性を確保した設計が可能となる。
【0012】
一方、ステアリングサポートアッパはステアリングコラムを揺動可能に支持するが、当該ステアリングサポートアッパは車両上下方向に沿った断面形状において矩形波形状を成しているため、対向して設けられた一対の側壁によってステアリングコラムが支持されることとなる。ステアリングコラムの支持手段として、例えばボルト等によりステアリングサポートアッパの側壁に当該ステアリングコラムを締結させる手法を用いた場合、ステアリングサポートアッパの側壁間の寸法が大きい場合、当該側壁とステアリングコラムとの間で隙間が生じ、締結用のボルト軸力が低減されボルトの緩みが生じる。一方、ステアリングサポートアッパの側壁間の寸法が小さい場合、当該側壁内にステアリングコラムが入らないという問題が生じる。つまり、ステアリングサポートアッパの側壁間の寸法は高い精度が必要とされる。
【0013】
一般的に、ステアリングコラムを支持するステアリングサポートブラケットは、鋼板等の金属のプレス加工によって形成されるため、複雑な形状の場合、高い精度での形成が困難となる。しかし、本発明では、ステアリングサポートブラケットを複数の部材で構成し、当該ステアリングサポートブラケットの形状を単純化させることによって、プレス加工によっても高い精度でステアリングサポートブラケットを形成することができる。つまり、ステアリングサポートアッパを折り曲げるだけなので、ステアリングサポートアッパの側壁間の寸法を高い精度で形成することができる。また、ステアリングサポートブラケットの形状を単純化させることで、プレス工程を削減することができるため、当該ステアリングサポートブラケットのコストダウンを図ることができる。
【0014】
また、ステアリングサポートアッパとステアリングサポートロアとで車両上下方向に重なることで、ステアリングサポートアッパの側壁とステアリングサポートロアの側壁とが重なり合うこととなる。つまり、見かけ上、ステアリングサポートブラケットの板厚が厚くなった状態となる。このため、当該ステアリングサポートブラケットにおいて強度及び剛性を向上させることができる。また、ステアリングサポートアッパの側壁とステアリングサポートロアの側壁とを例えば溶接により固定する場合、ステアリングサポートアッパ及びステアリングサポートロアの側壁の溶接時の熱ひずみによる変形を防止又は抑制することができる。
【0015】
請求項3記載の本発明に係るステアリングコラムの支持構造は、請求項1又は2記載のステアリングコラムの支持構造において、前記ステアリングサポートアッパの一端側が前記ステアリングコラムに連結され、当該ステアリングサポートアッパの他端側が前記インパネリインフォースメントの車両前方側の外周面に固定されている。
【0016】
ステアリングサポートブラケットの強度及び剛性を向上させるには、ステアリングサポートアッパとステアリングサポートロアとで構成される閉断面形状において、一例として高さ方向の寸法を長くすれば良い。つまり、ステアリングサポートアッパ及びステアリングサポートロアの側壁を高くすれば良い。ここで、ステアリングサポートアッパの車両上方にインパネリインフォースメントが配置されている場合、ステアリングサポートアッパの側壁を高くすると、当該ステアリングサポートアッパとインパネリインフォースメントとが干渉する可能性がある。この場合、この干渉を回避するため、ステアリングサポートアッパには切欠き部を形成しなければならなくなってしまい、稜線をカットすることとなり、ステアリングサポートアッパの強度及び剛性が低減されることとなる。
【0017】
しかし、請求項3記載の本発明に係るステアリングコラムの支持構造では、ステアリングサポートアッパの他端側がインパネリインフォースメントの車両前方側の外周面に固定される。このため、ステアリングサポートアッパの側壁を高くしても、当該ステアリングサポートアッパがインパネリインフォースメントと干渉することはなく、稜線がカットされることはない。なお、ここでの「干渉」とは、ステアリングサポートアッパがインパネリインフォースメントにぶつかって邪魔になることを意味する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るステアリングコラムの支持構造によれば、ステアリングコラムを支持する支持部材の強度及び剛性を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【0019】
請求項2に記載の本発明に係るステアリングコラムの支持構造によれば、操舵力アシスト用のモータの出力変化に対応して必要な強度及び剛性を確保した設計が可能となる、という優れた効果を有する。
【0020】
請求項3に記載の本発明に係るステアリングコラムの支持構造によれば、ステアリングサポートアッパの高さ寸法に拘わらず、当該ステアリングサポートアッパ自体の剛性及び強度は確保される、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係るステアリングコラムの支持構造の要部を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態に係るステアリングコラムの支持構造を構成するステアリングサポートブラケットを示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係るステアリングコラムの支持構造の要部の組付状態を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係るステアリングコラムの支持構造の要部の組付状態を示す車両側面図である。
【図5】図4の5−5線に沿った断面図である。
【図6】(A)、(B)は、本実施形態に係るステアリングコラムの支持構造を構成するステアリングサポートアッパの側壁の高さ寸法を変えた例を示す断面図である。車両側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1〜図6を用いて、本発明の一実施形態について説明する。なお、図中矢印FRは車体前方方向を示しており、矢印UPは車体上方方向を示している。
【0023】
(ステアリングコラムの支持構造の構成)
次に、本実施の形態に係るステアリングコラムの支持構造の構成について説明する。
【0024】
図4には、電動パワーステアリング装置10の組付状態の側面図が示されている。電動パワーステアリング装置10は、操舵力アシスト用のモータ12(以下、EPSモータ12)が配設されたステアリングコラム14を備えており、車両前後方向に沿って配置されている。そして、ステアリングコラム14は、筒状のコラムチューブ16と、このコラムチューブ16の軸芯部に配置されかつ図示しないベアリングを介して回転自在に支持されたステアリングメインシャフト18と、を含んで構成されている。
【0025】
このステアリングメインシャフト18の後端部には、図示しないステアリングホイールが固定されており、ステアリングメインシャフト18の前端部には、ジョイント20が取り付けられている。このジョイント20には、図示しないステアリングギヤボックスの入力軸と連結されたインターミディエイトシャフトが連結されている。そして、これにより、ステアリングホイールに付与された操舵力は、ステアリングメインシャフト18及びインターミディエイトシャフトを介して、ステアリングギヤボックスに伝達されるようになっている。
【0026】
また、ステアリングメインシャフト18には後述するステアリングサポートブラケット22が取付可能とされている。このステアリングサポートブラケット22には、ブレース部材としてのカウルトゥブレース24(図3参照)及びインパネリインフォースメント26が取付可能とされている。そして、ステアリングサポートブラケット22を介して、ステアリングコラム14がインパネリインフォースメント26によって支持される構成とされている。
【0027】
図1に示されるように、インパネリインフォースメント26は、パイプ状の金属製部材として構成されており、その長手方向の両端部は、左右のフロントピラー(図示省略)にボルト及びナットでそれぞれ締結固定されている。つまり、インパネリインフォースメント26が左右一対のフロントピラー間に車両幅方向に沿って架け渡されている。
【0028】
一方、カウルトゥブレース24は車両側面視で略三角形状を成す三角部28が設けられており、図3に示されるように、当該三角部28の底辺部30に相当する周壁30Aが、ステアリングサポートブラケット22の側壁40Aを被覆可能とされている。また、カウルトゥブレース24の三角部28の上部に位置する頂部32側は、図示はしないがインパネリインフォースメント26の車両前方側に車両幅方向に沿って延在されたカウルの後壁部にボルト及びナットで締結固定される。
【0029】
さらに、カウルトゥブレース24の三角部28の車両後方側に位置する斜辺部34の下端部からは当該斜辺部34に沿って延出部36が延出している。この延出部36の車両上下方向に沿った断面形状は矩形波形状を成しており、当該延出部36がステアリングサポートブラケット22に取付可能とされる。また、延出部36の車両下部には、インパネリインフォースメント26の外径寸法に合わせて円弧面36Aが形成されており、当該円弧面36Aがインパネリインフォースメント26の外周面に面接触された状態で、当該インパネリインフォースメント26に取付可能とされる。
【0030】
ここで、図2に示されるように、ステアリングサポートブラケット22は、ステアリングサポートアッパ38とステアリングサポートロア40とが一体化された状態で形成されている。ステアリングサポートロア40は、車両上下方向に沿った断面形状において車両上方側が開放された矩形波形状を成している。また、ステアリングサポートロア40は、車両前後方向に沿って配置されるようになっており、車両後方へ向かうにつれて徐々に拡幅している。
【0031】
ステアリングサポートロア40の底板42の幅方向の略中央部には、ステアリングサポートロア40の長手方向(車両前後方向)の略中央部から車両後端部へ亘って上面44Aが平らな台座44が突設されている。図3に示されるように、当該台座44の上面44A及び側壁44Bの一部には、カウルトゥブレース24の延出部36の先端部が接触可能とされている。
【0032】
そして、台座44の上面44A及び側壁44Bにカウルトゥブレース24の延出部36の先端部を接触させた状態で、当該カウルトゥブレース24の延出部36の先端部をステアリングサポートロア40の台座44に溶接固定させる。ここで、溶接として例えば、スポット溶接やアーク溶接が行われるが、ここでは一例としてスポット溶接を×印で示し、アーク溶接を斜線で示している。
【0033】
また、ステアリングサポートロア40の底板42の車両後端部には、台座44を間においてそれぞれ締結孔46が形成されており、図示しないボルト及びナットを介して、図4に示されるチルト操作シャフト48を支持するブレイクアウエイブラケット50が締結固定される。
【0034】
さらに、図2に示されるように、ステアリングサポートロア40の幅方向の両端部には、互いに対向する側壁40Aが設けられており、車両後端部へ向かうにつれて側壁40A同士の距離が徐々に離間している。この側壁40Aの車両前後方向の略中央部には、インパネリインフォースメント26の外径寸法に合わせて円弧状の切欠き部52がそれぞれ形成されている。
【0035】
この切欠き部52の周縁部には当該切欠き部52の形状に沿って、ステアリングサポートロア40の幅方向外側へ向かうフランジ部54がそれぞれ形成されている。そして、図3に示されるように、このフランジ部54がインパネリインフォースメント26の外周面に面接触可能とされており、フランジ部54にインパネリインフォースメント26の外周面が面接触された状態で、当該インパネリインフォースメント26の外周面にフランジ部54が溶接固定される。
【0036】
また、図1に示されるように、ステアリングサポートロア40の側壁40Aの車両前端部は、ステアリングサポートロア40の底板42の車両前端部から斜め下方へ向かって延出片56が延出している。この延出片56を含めステアリングサポートロア40の車両前方側には、当該ステアリングサポートロア40の上面を覆うようにして、ステアリングサポートアッパ38が取付可能とされている。
【0037】
ステアリングサポートアッパ38は、車両上下方向に沿った断面形状において車両下方側が開放された矩形波形状を成している。また、ステアリングサポートアッパ38は車両側面視で略逆L字状を成しており、カバー部58と当該カバー部58から垂下する軸板60とで構成されている。
【0038】
カバー部58は、ステアリングサポートロア40の車両前方側で当該ステアリングサポートロア40と車両上下方向に重なり、当該ステアリングサポートロア40と共に閉断面を構成するように設定されている。そして、図2に示されるように、カバー部58の側壁58Aとステアリングサポートロア40の側壁40Aとが面接触された状態で、側壁58Aが側壁40Aに溶接固定される。なお、ここでは、カバー部58の側壁58Aがステアリングサポートロア40の側壁40Aの内側に配置されるようになっているが、カバー部58の側壁58Aがステアリングサポートロア40の側壁40Aの外側に配置されるようにしても良い。
【0039】
また、カバー部58は、図3に示されるように、カバー部58の側壁58Aには、当該側壁58Aを覆うようにしてカウルトゥブレース24の底辺部30の周壁30Aが取付可能とされ、当該周壁30Aと側壁58Aとが面接触された状態で、側壁58Aが側壁58Aに溶接固定される。さらに、カバー部58の先端面が、インパネリインフォースメント26の車両前方側の外周面に固定されるように設定されている。
【0040】
一方、図1に示されるように、軸板60には締結孔62が形成されており、チルトヒンジボルト63を介してチルトブラケット64(図4参照)が軸支可能とされている。このチルトブラケット64を介して、ステアリングコラム14のチルト調整が可能となる。ここで、ステアリングサポートロア40に設けられた延出片56は、ステアリングサポートアッパ38の軸板60と対面可能となっており、当該軸板60においてもカバー部58と同様、ステアリングサポートロア40と共に閉断面が構成される。
【0041】
(ステアリングコラムの支持構造の作用・効果)
次に、本実施の形態に係るステアリングコラムの支持構造の作用・効果について説明する。
【0042】
図4に示されるように、ステアリングコラム14はステアリングサポートブラケット22を介してインパネリインフォースメント26に支持されるようになっている。そして、本実施形態では、図1〜図3に示されるように、ステアリングサポートブラケット22が、ステアリングサポートアッパ38とステアリングサポートロア40とを含んで構成されている。
【0043】
ステアリングサポートロア40は、インパネリインフォースメント26の車両下方に配置されており、車両上下方向に沿った断面形状において車両上方側が開放された矩形波形状を成している。一方、ステアリングサポートアッパ38は、車両上下方向に沿った断面形状において車両下方側が開放された矩形波形状を成している。そして、ステアリングサポートロア40の延設方向の一端側において、ステアリングサポートアッパ38が車両上下方向にステアリングサポートロア40と重なって、当該ステアリングサポートロア40と共に閉断面を構成し、インパネリインフォースメント26の外周面に溶接固定される。
【0044】
このように、ステアリングサポートアッパ38とステアリングサポートロア40との間で閉断面を構成するステアリングサポートブラケット22を用いることで、当該ステアリングサポートブラケット22において、開断面で構成されたステアリングサポートブラケット(図示省略)よりも強度及び剛性を向上させることができる。このため、EPSモータ12(図4参照)の出力の増加に対応して必要な強度及び剛性を確保することができる。
【0045】
ここで、一例として、図2に示されるように、カバー部58の側壁58Aとステアリングサポートロア40の側壁40Aとが面接触された状態で、側壁58Aが側壁40Aに溶接固定されるが、側壁58Aと側壁40Aとが重なり合うことで、見かけ上、ステアリングサポートブラケット22の板厚が厚くなった状態となる。このため、当該ステアリングサポートブラケット22において強度及び剛性を向上させることができる。特に、この場合、側壁58Aは側壁40Aに溶接固定されるため、側壁58A及び側壁40Aが重なり合うことで側壁58A及び側壁40Aの溶接時の熱ひずみによる変形を防止又は抑制することができる。
【0046】
また、ステアリングサポートアッパ38及びステアリングサポートロア40は、車両上下方向に沿った断面形状において矩形波形状を成しているため、図6(A)、(B)に示されるように、例えば、ステアリングサポートアッパ38の側壁58Aの高さ寸法を容易に変えることができる。つまり、これによってステアリングサポートブラケット22の断面係数を調整することができ、当該ステアリングサポートブラケット22において、必要な強度及び剛性を確保した設計が可能である。したがって、EPSモータ12(図4参照)の出力変化に対応して必要な強度及び剛性を確保した設計が可能となる。なお、ここでは、ステアリングサポートアッパ38の側壁58Aの高さ寸法を変えて説明したが、ステアリングサポートロア40の側壁40Aの高さ寸法を変えても良いし、ステアリングサポートアッパ38の側壁58A及びステアリングサポートロア40の側壁40Aの高さ寸法を変えても良い。
【0047】
このように、ステアリングサポートアッパ38の側壁58Aやステアリングサポートロア40の側壁40Aの高さ寸法を変えることで強度及び剛性を上げることができるため、ステアリングサポートアッパ38又はステアリングサポートロア40の強度及び剛性を上げるための補強リブをステアリングサポートアッパ38又はステアリングサポートロア40に形成する必要がなく、その分プレス工程が削減されコストダウンを図ることができる。
【0048】
ここで、例えば図示はしないがステアリングサポートブラケット22において、補強リブを設ける場合プレス工程ではその高さにおいて制限が設けられるが、本実施形態では補強リブを設ける必要がないため、プレス工程における制限が無く、生産の自由度が高くなる。但し、補強リブを設けても良いのは勿論のことであり、当該補強リブを設けた場合、補強リブに求められる補強の度合いを下げることができる。つまり、生産性を考慮した設計が可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、ステアリングサポートアッパ38の側壁58Aの高さ寸法を変えるだけでステアリングサポートブラケット22の強度及び剛性の調整が可能となるため、当該ステアリングサポートブラケット22の設計の自由度が高い。また、ME(質量軽減)及びVE(コスト低減)に対して柔軟に対応可能である。
【0050】
一方、図5に示されるように、ステアリングサポートアッパ38はチルトヒンジボルト63及びチルトブラケット64を介してステアリングコラム14が揺動可能に支持されているが、当該ステアリングサポートアッパ38は断面形状において矩形波形状を成しているため、対向して設けられた一対の軸板60によってチルトヒンジボルト63が支持されることとなる。
【0051】
ここでは、当該軸板60がステアリングコラム14の締結部位ということになるが、この締結部位において、ステアリングサポートアッパ38の軸板60間の寸法が大きい場合、軸板60とチルトブラケット64との間で隙間が生じ、当該軸板60にチルトヒンジボルト63を締結させる際、締結用のボルト軸力が低減されチルトヒンジボルト63の緩みが生じる。一方、ステアリングサポートアッパ38の軸板60間の寸法が小さい場合、当該軸板60内にチルトヒンジボルト63が入らないという問題が生じる。つまり、ステアリングサポートアッパ38の軸板60間の寸法を高い精度が必要とされる。
【0052】
一般的に、ステアリングサポートブラケット22は、鋼板等の金属のプレス加工によって形成されるため、複雑な形状の場合、高い精度で形成することは困難となる。しかし、本実施形態では、ステアリングサポートブラケット22を複数の部材(ステアリングサポートロア40及びステアリングサポートアッパ38)で構成し、当該ステアリングサポートブラケット22の形状を単純化させることによって、プレス加工によっても高い精度でステアリングサポートブラケット22を形成することができる。
【0053】
つまり、本実施形態では、ステアリングサポートアッパ38を折り曲げるだけなので、当該ステアリングサポートアッパ38の軸板60間の寸法を高い精度で形成することができる。また、ステアリングサポートブラケット22の形状を単純化させることで、プレス工程を削減することができるため、当該ステアリングサポートブラケット22のコストダウンを図ることができる。
【0054】
ところで、図3に示されるように、ステアリングサポートアッパ38のカバー部58の先端面がインパネリインフォースメント26の外周面に直接溶接固定されるため、ステアリングコラム14からの入力が直接インパネリインフォースメント26に伝達され易い構成となっている。ここで、ステアリングサポートブラケット22の強度及び剛性を向上させるには、上述したように、ステアリングサポートアッパ38とステアリングサポートロア40とで構成される閉断面形状において、例えば高さ方向の寸法を長くすれば良い(図5(B)参照)。
【0055】
つまり、ここでは、ステアリングサポートアッパ38の側壁58Aを高くする。一方、ステアリングサポートブラケット22の車両上方にはインパネリインフォースメント26が配置されているため、ステアリングサポートアッパ38の側壁58Aを高くした場合、当該側壁58Aがインパネリインフォースメント26と干渉する可能性がある。この場合、この干渉を回避するため、ステアリングサポートアッパ38には切欠き部を形成しなければならなくなってしまい、稜線をカットすることとなり、ステアリングサポートアッパ38の強度及び剛性が低減されることとなる。また、加工を施す分、別途コストも掛かってしまう。
【0056】
しかし、本実施形態では、当該ステアリングサポートアッパ38のカバー部58において、当該カバー部58の先端面が、インパネリインフォースメント26の車両前方側の外周面に固定されるように設定されている。このため、カバー部58の側壁58Aを高くしても、当該カバー部58がインパネリインフォースメントと干渉することはない。つまり、ステアリングサポートアッパ38に切欠きなどを形成する必要がなく、稜線がカットされることはない。したがって、ステアリングサポートアッパ38の側壁58Aの高さ寸法に拘わらず、当該ステアリングサポートアッパ38自体の剛性及び強度は確保される。なお、ここでの「干渉」とは、カバー部58がインパネリインフォースメント26にぶつかって邪魔になることを意味し、カバー部58の先端面がインパネリインフォースメント26の外周面に当接することを含むものではない。
【0057】
以上のように、本実施形態では、ステアリングサポートアッパ38及びステアリングサポートロア40の車両上下方向に沿った断面形状が矩形波形状を成しているが、ステアリングサポートアッパ38とステアリングサポートロア40とで閉断面を構成することができれば良いため、必ずしも断面形状が矩形波形状である必要はない。また、「矩形波形状」について補足すると、当該矩形波を構成する側壁と横壁とで成す角度が必ずしも90度である必要はなく、また、側壁及び横壁がフラット形状である必要はない。例えば、横壁が外側に突出する円弧状を成しても良い。
【0058】
以上、本発明を実施するための最良の形態について一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 電動パワーステアリング装置
12 EPSモータ(モータ)
14 ステアリングコラム
22 ステアリングサポートブラケット
26 インパネリインフォースメント
38 ステアリングサポートアッパ
40 ステアリングサポートロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵力アシスト用のモータが配設されたステアリングコラムと、
インストルメントパネル内に車両幅方向に沿って配置されたインパネリインフォースメントと前記ステアリングコラムとの間に介在され、当該ステアリングコラムを前記インパネリインフォースメントに支持させるステアリングサポートブラケットと、
を備え、
前記ステアリングサポートブラケットが、
前記インパネリインフォースメントの車両下方に位置し当該インパネリインフォースメントの軸線と交差する方向に沿って延設され、当該インパネリインフォースメントの外周面に固定されたステアリングサポートロアと、
前記ステアリングサポートロアの延設方向の一端側において車両上下方向に重なり当該ステアリングサポートロアと共に閉断面を構成し、当該インパネリインフォースメントの外周面に固定されると共に前記ステアリングコラムを揺動可能に支持するステアリングサポートアッパと、
を含んで構成されたステアリングコラムの支持構造。
【請求項2】
前記ステアリングサポートロアが、車両上下方向に沿った断面形状において車両上方側が開放された矩形波形状を成し、前記ステアリングサポートアッパが、車両上下方向に沿った断面形状において車両下方側が開放された矩形波形状を成している請求項1に記載のステアリングコラム支持構造。
【請求項3】
前記ステアリングサポートアッパの一端側が前記ステアリングコラムに連結され、当該ステアリングサポートアッパの他端側が前記インパネリインフォースメントの車両前方側の外周面に固定された請求項1又は2に記載のステアリングコラム支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−218609(P2012−218609A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87282(P2011−87282)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】