説明

ステッチが形成された穴あきシート材料の改善またはその関連

穴あき領域4と非穴あき領域5とを有するシート材料3を準備する工程を有するステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法である。シート材料は、非穴あき領域内であるが穴あき領域に隣接してシート材料にステッチが形成される。このようにすると、穴あき材料を貫通してステッチを形成することに伴う問題を回避しながら、全体的に穴の開いた外観が与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステッチが形成された穴あきシート材料(stitched perforated sheet material)の製造方法に関する。本発明は特に、限定されるものではないが、室内装飾材料(upholstery)及び自動車の座席用の椅子張り(upholstery for automotive seating)に関する。
【背景技術】
【0002】
穴あき革(perforated leather)等の材料は、室内装飾材料、特に自動車の座席の椅子張りに広く使用されている。穴(perforation)は、所望の装飾効果(decorative effect)を与えるとともに、装飾パターン(decorative pattern)の創作(create)に使用することができる。また、空気が穴あき材料を通過することが可能である。このことは、いくつかの用途(some applications)において望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、穴あき革または同様の材料にステッチが形成される場合には、次のような問題が生じる。すなわち穴の存在が、所望のステッチのライン(line of stitching)を歪める(distort)傾向がある。これは、縫機(sewing machine)の針(needle)が、材料を貫通するよりも、材料に既存の穴に優先して入る傾向があるために生じる。従って、実際には起こりえないことであるが、もし不可能でなければ、ステッチの方向及びピッチが、複数の穴からなる既存の穴のラインと正確に一致する場合を除いて、ステッチは、既存の穴の間をジグザグに進む傾向があり、最終的なステッチが形成された材料(finished stiched material)の美感(aesthetic appeal)が損なわれる。
【0004】
本発明の実施の形態は、このような問題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、穴あき領域(perforated region)と非穴あき領域(unperforated region)とを有するシート材料を準備する工程と、非穴あき領域内であるが穴あき領域に隣接してシート材料にステッチを形成する工程とを有するステッチが形成された穴あきシート材料(titched perforated sheet material)の製造方法が提供される。
【0006】
非穴あき領域において材料にステッチを形成することにより、所望のステッチの経路(path of stitching)と干渉する複数の穴により生じる問題は回避される。しかも、穴あき領域に隣接してステッチを形成することにより、材料を貫通するステッチ結果とこれに伴う複数の穴(resulting stiching and associated holes)は、既存の複数の穴と効果的に調和(blend in)して、従来の方法よりもより美的に好ましい結果(aesthetically pleasing result)を全体に与える。ステッチが目に見えない場合であっても、ステッチが所望の経路をより正確に追従する(follow)ことができるので、本発明は改良された結果を提供する。
【0007】
シート材料は、革(leather)、スエード(suede)、アルカンタラ(alcantara)、これらの模造品(imitation)、プラスチック材料または他の適当な材料から構成することができる。シート材料は、1層以上の材料から構成することができる。
【0008】
材料は、穴あき領域の端縁に略平行な方向にステッチが形成されていてもよい。材料は、形成されるステッチが、穴あき領域内の隣り合う穴の列(adjacent rows)の間の距離と略同一の距離だけ、穴あき領域の端縁から間隔をあけるようにステッチが形成されていてもよい。このようにすると、ステッチライン及びこれに関連する複数のステッチ穴は、追加の穴の列を非穴あき領域に効果的に形成する。達成すべき所望の効果によっては、規則的なパターン(regular pattern)とすることができる所望のパターンの形成と調和する適切な距離だけ、穴あき領域の端縁からステッチを離隔することができる。さらにステッチと穴あき領域の端縁との距離は、穴あき領域内の隣接する複数の穴の列の間の距離の略整数倍とすることができる。
【0009】
ステッチのピッチは、穴あき領域内の複数の穴のピッチと同じまたは異なるものとすることができる。
【0010】
非穴あき領域は、穴あき領域内に形成され、及び/または、2つの穴あき領域の間に位置することができる。2以上の穴あき領域及び/または2以上の非穴あき領域とすることができる。非穴あき領域は、穴あき領域を貫通して延びる非穴あき材料からなる1以上のストリップ(strip)またはバンド(band)から構成することができる。2以上の非穴あきバンドは、互いに平行に延びてもよく、これらは交差してもよい。非穴あき材料からなるバンド(unperforated band of material)の幅は、穴あき領域内の複数の穴からなる複数の列の隣り合う列の間の距離の略2倍とすることができる。このような場合には、ステッチのラインは、完全に穴のあいた外観を与えるために非穴あき領域に沿って非穴あき材料の中ほどに形成することができる。
【0011】
一つの実施の形態では、ダイヤモンドキルト効果(diamond quilted effect)を生じさせるために後にステッチが形成される複数の非穴あき領域によって分離されたダイヤモンド形状の複数の穴あき領域を有するダイヤモンドパターン(diamond pattern)を備えるようにシート材料が穴あけされる。同様の実施の形態では、2本の略平行なステッチのラインが、各非穴あき領域に沿って形成されている。
【0012】
材料のステッチに使用する糸(thread)は、材料の色に対応した色とすることができる。また材料の色と対照的な色とすることもできる。
【0013】
本発明の方法は、材料を折り畳むこと及び褶襞を材料にステッチを形成して(stiching folds into the material)所望の装飾効果、例えば丸溝ひだ(fluting)を創り出すことを含むことができる。
【0014】
ステッチが形成された材料は、室内装飾材料(upholstery)を構成することができる。本発明は、本発明の方法により形成された材料(materials)及び物品(articles)を含むものである。特に、本発明によってステッチが形成された材料は、自動車のシート及びトリム(automotive seating and trim)の形成に使用することができる。
【0015】
本発明をより明確に理解することができるように、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の穴あき革のステッチが形成されたピースの平面図である。
【図2】本発明の方法で使用する革の穴あきシートの一部の平面図である。
【図3】図2の材料を本発明の一実施の形態に従ってステッチを形成したキルト材料である。
【図4】図2の材料を本発明の他の実施の形態に従ってステッチを形成したキルト材料である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、材料を横切るステッチのライン2を有する従来の穴あき革シート(sheet of perforated leather)が示されている。材料1は、規則的なパターンで穴あけされている。この規則的なパターンは、平行に間隔をあけた複数の直線上(parallel spaced apart straight line)を延びる等間隔の複数の穴(evenly spaced perforaions)からなる。ステッチのライン2は、従来の縫機を用いて材料を横切って形成されている。ステッチは、材料の穴の間をジグザグに進む傾向にある。その結果、ステッチのラインは、均等または直線(even or straight)ではなくなるので、ステッチが形成された材料の外観が損なわれる。
【0018】
図2及び図3を参照すると、本発明の方法は、複数の非穴あき領域5によって分離された1以上の穴あき領域4を有するシート材料(sheet of material)3、本例の場合には革、を準備することを含む。本実施の形態においては、各穴あき領域は、略ダイアモンド形状であり、複数の穴からなり平行均一に間隔をあけて離された、複数の穴からなる一連の複数の穴の列によって形成されている。非穴あき領域5は、ダイヤモンド形状を形成する穴あき領域の間を延びる非穴あき材料からなるバンドから構成されている。非穴あきバンド(隣接する穴あき領域の間)の幅は、穴あき領域内の隣接する穴の列の間の間隔の略2倍である。この場合に、追加の複数の穴の列(extra line of perforations)が各非穴あきバンドに沿って中ほどに追加されたとすると、その結果物は、図1に示す態様のように全体的に穴あけされた材料が得られることになる。
【0019】
図2に示す材料は、ダイヤモンドキルト効果を形成するのに使用することを意図したものである。これを達成するために、この材料は、非穴あき材料のバンドのそれぞれ真ん中に略沿うように延びるステッチ6によって他の適当な材料の層とともにステッチが形成されて、図3に示す結果物が形成される。ステッチは、非穴あき材料に沿ってのみ形成されるので、ステッチの経路は既存の穴の存在に影響されない。そのため、所望の方向、この場合には直線方向にステッチを形成することが可能である。達成される効果によっては、ステッチは、図に示すように、材料と対比することができるとともに、材料中の既存の穴とは異なるピッチで形成することができる。得られるステッチが形成された材料は、図1に示す従来のステッチが形成された材料よりも、より均一であり、かつより美的に好ましい外観を有する。
【0020】
他の実施の形態においては、図2に概略的に示すシート材料では、ステッチが形成されない領域5を略平行な複数のステッチ6の列でステッチを形成して、図4に示すような別の最終的な外観を形成する。
【0021】
上記実施の形態は、例としてのみ記載したものである。本発明から外れることがなければ多くの変化が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法であって、
穴あき領域と非穴あき領域とを有するシート材料を準備する工程と、
前記非穴あき領域内であるが前記穴あき領域に隣接して前記シート材料にステッチを形成する工程とを有するステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項2】
前記シート材料は、革、スエード、アルカンタラ、これらの模造品またはプラスチック材料からなる請求項1のステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項3】
前記シート材料は、多層である請求項1または2のステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項4】
前記シート材料は、前記穴あき領域の端縁に略平行な方向にステッチが形成される請求項1乃至3のいずれか一つのステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項5】
形成される前記ステッチが、前記穴あき領域内の隣り合う穴の列の間の距離と略同一の距離だけ、前記穴あき領域の端縁から間隔をあけるように、前記シート材料はステッチが形成されている請求項1乃至4のいずれか一つのステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項6】
形成される前記ステッチが、前記穴あき領域内の隣り合う穴の列の間の距離の略整数倍の距離だけ、前記穴あき領域の端部から間隔をあけるように、前記シート材料はステッチが形成されている請求項1乃至4のいずれか一つのステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項7】
前記非穴あき領域は、前記穴あき領域内に形成され、及び/または、2つの前記穴あき領域の間に位置している請求項1乃至6のいずれか一つのステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項8】
前記非穴あき領域は、前記穴あき領域を貫通して延びる非穴あき材料からなる1以上のストリップまたはバンドからなる請求項1乃至7のいずれか一つのステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項9】
前記非穴あき材料からなる前記ストリップまたはバンドの幅は、前記穴あき領域内の複数の穴からなる複数の列の隣り合う列間の距離の略2倍である請求項8のステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項10】
ステッチのラインは、完全に穴があいた外観とするために、非穴あき領域に沿ってその中ほどに形成されている請求項9のステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項11】
ダイヤモンドキルト効果を生じさせるために後にステッチが形成される複数の非穴あき領域によって分離されたダイヤモンド形状の複数の穴あき領域を有するダイヤモンドパターンを備えるように前記シート材料が穴あけされる請求項1乃至10のいずれか一つのステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項12】
2本の略平行な前記ステッチのラインが、各非穴あき領域に沿って形成されている請求項11のステッチが形成された穴あきシート材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一つの方法で製造されたステッチが形成されたシート材料を有する椅子張り。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか一つの方法で製造されたステッチが形成されたシート材料を有する自動車トリム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−511636(P2012−511636A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520581(P2011−520581)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001867
【国際公開番号】WO2010/013001
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(502407266)ベントレー モーターズ リミテッド (9)
【Fターム(参考)】