説明

ステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計

【課題】回転状況に応じた回転検出動作を行うことによって回転検出精度を向上すること。
【解決手段】主駆動パルスによってステッピングモータを回転駆動した後の回転検出時間T2において、高インピーダンス素子及び前記ステッピングモータの駆動コイルを含む第1閉回路と低インピーダンス素子及び前記駆動コイルを含む第2閉回路とを所定時間比で交互に切り換えることによって前記ステッピングモータが発生する誘起信号VRsを検出し、誘起信号VRsが所定の基準しきい電圧Vcompを超えたか否かに基づいて前記ステッピングモータが回転したか否かを判定して前記ステッピングモータを回転制御するステッピングモータ制御回路において、回転検出時間T2を第1デューティ区間と前記第1デューティ区間よりも後の第2デューティ区間に区分し、前記第1閉回路と第2閉回路の構成時間比であるデューティ比を第1デューティ区間よりも第2デューティ区間において小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御回路及び前記ステッピングモータ制御回路を用いたアナログ電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロータ収容孔及びロータの停止位置を決める位置決め部を有するステータと、前記ロータ収容孔内に配設されたロータと、駆動コイルとを有し、前記駆動コイルに交番信号を供給して前記ステータに磁束を発生させることによって前記ロータを回転させると共に、前記位置決め部に対応する位置に前記ロータを停止するようにしたステッピングモータがアナログ電子時計等に使用されている。
【0003】
従来のステッピングモータ制御回路では、前記ステッピングモータが回転したか否かを検出する場合、主駆動パルスによってステッピングモータを回転駆動した後の回転検出時間において、高インピーダンス素子及び前記ステッピングモータの駆動コイルを含む第1閉回路と、低インピーダンス素子及び前記駆動コイルを含む第2閉回路とを所定時間比で交互に切り換えることによって前記ステッピングモータが発生する誘起信号VRsを増幅して検出するように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記ステッピングモータが回転したときには誘起信号VRsの最大値Vmaxが所定の基準しきい電圧Vcompを超え(図9参照)、回転しなかったときには誘起信号VRsが基準しきい電圧Vcomp以下となる(図10参照)。したがって、誘起信号VRsが基準しきい電圧Vcompを超えたか否かによって回転したか否かを判定し、非回転のときには、主駆動パルスP1よりも駆動エネルギの大きい補正駆動パルスP2により駆動することによって強制的に回転させ、正常運針を実現している。
【0005】
第1閉回路を構成する時間と第2閉回路を構成する時間との比(デューティ比)を大きく(即ち、第1閉回路を構成する時間を長く)して誘起信号VRsを出力させている間は、制動効果が小さくなる。
前記デューティ比が大きいときにモーメントの大きい時刻針を装着している場合、非回転の場合には本来は回転速度が遅く誘起信号VRs出力が小さくなるはずであるが、十分な制動をきかせることができないため、回転検出時間の後半において高い誘起信号VRsが生じてしまい、回転誤検出(非回転なのに回転と検出し、運針ミス)が生じるという問題がある(図11参照)。
【0006】
逆にデューティ比を小さく(即ち、第1閉回路を形成する時間を短く)した場合、本来であれば回転時には高い誘起信号VRsが生じるはずであるが、制動が大きいため誘起信号VRsの増幅効果が小さくなって十分な増幅ができず誘起信号VRsが低くなってしまい、回転誤検出(回転なのに非回転と検出し、無駄な補正駆動パルスP2による駆動出力で消費電流大)が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭55−87977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑み成されたもので、回転状況に応じた回転検出動作を行うことによって回転検出精度を向上することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、主駆動パルスによってステッピングモータを回転駆動した後の回転検出時間において、高インピーダンス素子及び前記ステッピングモータの駆動コイルを含む第1閉回路と低インピーダンス素子及び前記駆動コイルを含む第2閉回路とを所定時間比で交互に切り換えることによって前記ステッピングモータが発生する誘起信号を検出し、前記誘起信号が所定の基準しきい電圧を超えたか否かに基づいて前記ステッピングモータが回転したか否かを判定して前記ステッピングモータを回転制御する制御手段を備えたステッピングモータ制御回路において、前記回転検出時間を第1区間と前記第1区間よりも後の第2区間に区分し、前記制御手段は、前記第1閉回路と第2閉回路の構成時間比であるデューティ比を、前記第1区間と第2区間とで異ならせることを特徴とするステッピングモータ制御回路が提供される。
【0010】
また本発明によれば、時刻針を回転駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータを制御するステッピングモータ制御回路とを有するアナログ電子時計において、前記ステッピングモータ制御回路として、前記記載のステッピングモータ制御回路を用いたことを特徴とするアナログ電子時計が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るステッピングモータ制御回路によれば、回転状況に応じた回転検出動作を行うことが可能になる。
本発明に係るアナログ電子時計によれば、回転状況に応じた回転検出動作を行うことが可能になるため、正確な運針動作を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計に使用するステッピングモータの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計及びステッピングモータ制御回路の部分詳細回路図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計及びステッピングモータ制御回路の動作を説明するための説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計及びステッピングモータ制御回路の動作を説明するための説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計及びステッピングモータ制御回路の動作を説明するための信号波形図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計及びステッピングモータ制御回路の動作を説明するための信号波形図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係るアナログ電子時計及びステッピングモータ制御回路の動作を説明するための信号波形図である。
【図9】従来のアナログ電子時計の動作を説明するための信号波形図である。
【図10】従来のアナログ電子時計の動作を説明するための信号波形図である。
【図11】従来のアナログ電子時計の動作を説明するための信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路及びアナログ電子時計について説明する。尚、各図において同一部分には同一符号を付している。
図1は、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路を用いたアナログ電子時計のブロック図で、アナログ電子腕時計の例を示している。
図1において、アナログ電子時計は、ステッピングモータ制御回路101、時刻針等を回転駆動するステッピングモータ102、電池によって構成された電源103を備えている。
【0014】
ステッピングモータ制御回路101は、主駆動パルスP1によってステッピングモータ102を回転駆動した後の回転検出時間において、高インピーダンス素子及びステッピングモータ102の駆動コイルを含む第1閉回路と低インピーダンス素子及び前記駆動コイルを含む第2閉回路とを所定時間比(デューティ比)で交互に切り換えることによってステッピングモータ102が発生する誘起信号VRsを検出し、前記誘起信号VRsが所定の基準しきい電圧Vcompを超えたか否かに基づいてステッピングモータ102が回転したか否かを判定してステッピングモータ102を回転制御する方式のステッピングモータ制御回路である。
【0015】
ステッピングモータ制御回路101は、所定周波数の信号を発生する発振回路104、発振回路104で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する分周回路105、電子時計を構成する各電子回路要素の制御や駆動パルスの変更制御等の制御を行う制御回路106、制御回路106からの制御信号に対応する駆動パルスによってステッピングモータ102を回転制御する駆動パルス回路107、ステッピングモータ102が主駆動パルスP1によって回転駆動された場合に回転状況を表す誘起信号VRsを検出する回転検出手段108を備えている。
ここで、発振回路104、分周回路105、制御回路106、駆動パルス回路107及び回転検出手段108は制御手段を構成している。
【0016】
回転検出時間T2を第1区間と前記第1区間よりも後の第2区間に区分し、制御手段は、高インピーダンス素子及びステッピングモータの駆動コイルを含む第1閉回路と低インピーダンス素子及び前記駆動コイルを含む第2閉回路の構成時間比であるデューティ比を、前記第1区間と第2区間とで異ならせることができる。また制御手段は、前記デューティ比を前記第1区間よりも第2区間において小さくすることができる。また、回転検出時間T2の前に回転の有無判定に利用しないマスク時間T1を有することができる。また、制御手段は、マスク時間T1内において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したとき、回転検出時間T2の第2区間において、前記デューティ比を所定量小さくすることができる。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態に使用するステッピングモータ102の構成図で、アナログ電子時計で一般的に用いられている時計用ステッピングモータの例を示している。
図2において、ステッピングモータ102は、ロータ収容用貫通孔203を有するステータ201、ロータ収容用貫通孔203に回転可能に配設されたロータ202、ステータ201と接合された磁心208、磁心208に巻回されたコイル209を備えている。ステッピングモータ105をアナログ電子時計に用いる場合には、ステータ201及び磁心208はネジまたはカシメ(図示せず)によって地板(図示せず)に固定され、互いに接合される。コイル209は、第1端子OUT1、第2端子OUT2を有している。
【0018】
ロータ202は、2極(S極及びN極)に着磁されている。磁性材料によって形成されたステータ201の外端部には、ロータ収容用貫通孔203を挟んで対向する位置に複数(本実施の形態では2個)の切り欠き部(外ノッチ)206、207が設けられている。各外ノッチ206、207とロータ収容用貫通孔203間には可飽和部210、211が設けられている。
可飽和部210、211は、ロータ202の磁束によっては磁気飽和せず、コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなるように構成されている。ロータ収容用貫通孔203は、輪郭が円形の貫通孔の対向部分に複数(本実施の形態では2つ)の半月状の切り欠き部(内ノッチ)204、205を一体形成した円孔形状に構成されている。
【0019】
切り欠き部204、205は、ロータ202の停止位置を決めるための位置決め部を構成している。コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、図2に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204、205を結ぶ線分と直交するような位置(角度θ0位置)に安定して停止している。
いま、駆動パルス回路107から矩形波の駆動パルスをコイル209の端子OUT1、OUT2間に供給して(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)、図2の矢印方向に電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は図2の実線矢印方向に180度回転し、磁極軸Aが角度θ1方向を向いて安定的に停止する。
【0020】
次に、駆動パルス選択回路104から、逆極性の矩形波の駆動パルスをコイル209の端子OUT1、OUT2に供給して(前記駆動とは逆極性となるように、第1端子OUT1側を負極、第2端子OUT2側を正極)、図2の反矢印方向に電流を流すと、ステータ201には反破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向に180度回転し、磁極軸Aが角度θ0の位置で安定的に停止する。
以後、このように、コイル209に対して極性の異なる信号(交番信号)を供給することによって、前記動作が繰り返し行われて、ロータ202を180度ずつ矢印方向に連続的に回転させることができるように構成されている。
【0021】
図3は、駆動パルス回路107及び回転検出手段108の一部を示す詳細回路図である。また、図4及び図5はステッピングモータ102の回転を検出する回転検出動作の動作説明図である。
図3において、NチャネルMOSトランジスタQ1、Q2、PチャネルMOSトランジスタQ3、Q4は駆動パルス回路107の構成要素で、トランジスタQ1及びトランジスタQ3のドレイン接続点と、トランジスタQ2及びトランジスタQ4のドレイン接続点との間には、ステッピングモータ102のコイル209が接続されている。
【0022】
一方、PチャネルMOSトランジスタQ3〜Q6、トランジスタQ5に直列接続された高インピーダンス素子である検出用抵抗器301、トランジスタQ6に直列接続された高インピーダンス素子である検出用抵抗器302は回転検出手段108の構成要素である。
各トランジスタQ1〜Q6のゲートは制御回路106によって制御され、これによって各トランジスタQ1〜Q6はオン/オフ制御される。検出用抵抗器301とコイル209の接続点OUT2、及び、検出用抵抗器302とコイル209の接続点OUT1は、回転検出手段108内のコンパレータ(図示せず)の入力部に接続されている。また、前記コンパレータの基準入力部には、予め定めた所定の基準しきい電圧Vcompが入力され、前記コンパレータによって誘起信号VRsが前記基準しきい電圧Vcompを超えたか否かを判定する。
【0023】
尚、トランジスタQ3は第1スイッチ素子、トランジスタQ1は第2スイッチ素子、トランジスタQ4は第3スイッチ素子、トランジスタQ2は第4スイッチ素子、トランジスタQ5は第5スイッチ素子、トランジスタQ6は第6スイッチ素子、検出用抵抗301は第1検出用素子、検出用抵抗302は第2検出用素子を構成している。トランジスタQ5と検出用抵抗301は第1直列回路を構成し、又、トランジスタQ6と検出用抵抗302は第2直列回路を構成している。また、回転検出時にはトランジスタQ3、Q4は低インピーダンス素子として機能する。
【0024】
ステッピングモータ102を回転駆動する回転駆動時間においてステッピングモータ102を回転駆動する場合には、制御回路106からの回転駆動用制御信号に応答して、トランジスタQ2、Q3を同時にオン状態とする、あるいは、トランジスタQ1、Q4を同時にオン状態とすることによってコイル209に対して正方向あるいは逆方向に電流を供給し、これによってステッピングモータ102を回転駆動する。
前記回転駆動時間の後の回転検出時間T2において回転駆動によってステッピングモータ102に生じる誘起信号VRsを検出する場合、制御回路106からの回転検出用制御信号に応答して、トランジスタQ4、Q5をオンに保持した状態で、トランジスタQ3を所定周期でオン/オフスイッチング制御することによって検出用抵抗301に発生する誘起信号VRsを取り出して基準しきい電圧Vcompと比較する、あるいは、トランジスタQ3、Q6をオンに保持した状態で、トランジスタQ4を所定周期でオン/オフスイッチング制御することによって検出用抵抗302に発生する誘起信号VRsを取り出して基準しきい電圧Vcompと比較する。これにより、回転検出手段108はステッピングモータ102が発生する誘起信号VRsを増幅して検出し、基準しきい電圧Vcompと比較することによって回転したか否かの判定を行う。
【0025】
即ち、前者の回転検出時間においては、制御回路106からの回転検出用制御信号に応答して、トランジスタQ4、Q5をオンに保持した状態でトランジスタQ3をオフにする状態(高インピーダンス素子である抵抗301及びステッピングモータの駆動コイル209を含む第1閉回路を構成する状態(図4参照))と、トランジスタQ4、Q5をオンに保持した状態でトランジスタQ3をオンにする状態(低インピーダンス素子であるトランジスタQ3及び駆動コイル209を含む第2閉回路を構成する状態(図5参照))とを所定時間比で交互に切り換えることによってステッピングモータ102が発生する誘起信号VRsを増幅して検出し、誘起信号VRsが所定の基準しきい電圧Vcompを超えたか否かに基づいてステッピングモータ102が回転したか否かを判定してステッピングモータ102を回転制御する。
【0026】
本実施の形態では、主駆動パルスP1による回転駆動時間の直後に、回転したか否かの判定に利用しない期間であるマスク時間T1を設け、マスク時間T1の後に、回転判定に利用する時間である回転検出時間T2を設けている。回転検出時間T2を複数の区間(本実施の形態では第1区間(第1デューティ区間)と第1区間よりも後の第2区間(第2デューティ区間))に区分し、各デューティ区間において、第1閉回路構成時間と第2閉回路構成時間との比であるデューティ比が異なるように構成している。尚、マスク時間T1は回転駆動直後のノイズ等によって誤回転検出が生じるのを防止するためのものであり、必ずしも必要なものではない。
【0027】
図4の状態では、トランジスタQ4、Q5、検出用抵抗301、駆動コイル209によって第1閉回路が構成されるためステッピングモータ102には制動がかからない。その一方、図5の状態では、トランジスタQ3、Q4及びコイル209によって第2閉回路が構成されて駆動コイル209が短絡されるためステッピングモータ102に制動がかかることになる。
図6、図7は、本発明の実施の形態の動作を説明するための信号波形図で、図6はステッピングモータ102が回転した場合の信号波形図、図7はステッピングモータ102が回転しなかった場合の信号波形図である。
【0028】
図6において、主駆動パルスP1による駆動直度にマスク時間T1を設け、マスク時間T1の後に回転検出時間T2を設けている。マスク時間T1は前述したように、ステッピングモータ102が回転したか否かの判定に利用しない期間であり、マスク時間T1内で発生した誘起信号VRsが基準しきい電圧Vcompを超えている場合でも回転したとは判定しない。ステッピングモータ102の回転駆動直後に不安定な誘起信号VRsが発生する場合があり、これをマスク時間T1によって排除することにより、回転検出の精度を向上させている。また、後述するように、制御回路106はマスク時間T1内で発生した誘起信号VRsを利用してデューティ比を変化させている。
【0029】
制御回路106は、回転検出時間T2において、誘起信号VRsの最大値Vmaxが基準しきい電圧Vcompを超えた場合は回転と判定し、基準しきい電圧Vcompを超えなかった場合は非回転と判定する。
回転検出時間T2は、回転検出時のスイッチング動作のデューティ比が異なる2つの区間(第1デューティ区間、第2デューティ区間)に区分されている。本実施の形態では、デューティ比を第1デューティ区間よりも第2デューティ区間において小さくしている。
【0030】
制御回路106は、駆動パルス回路107が主駆動パルスP1によってステッピングモータ102を回転駆動終了した後、マスク時間T1及び回転検出区間T2の第1デューティ区間において第1デューティ比で回転検出動作を行うように回転検出手段108を制御し、これに応答して回転検出手段108が誘起信号VRsの検出を行う。制御回路106は、第1デューティ期間終了後の第2デューティ区間において第2デューティ比で回転検出動作を行うように回転検出手段108を制御し、これに応答して回転検出手段108が誘起信号VRsの検出を行う。
【0031】
図6に示すように、制御回路106は、回転検出手段108が回転検出時間T2において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した場合には回転と判定する。制御回路106は、回転検出手段108が回転検出時間T2において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出しなかった場合には非回転と判定する。相互に駆動エネルギの異なる複数の主駆動パルスP1及び前記各主駆動パルスP1よりも駆動エネルギの大きい補正駆動パルスP2を予め用意しておいて回転状況に応じて駆動パルスを選択して駆動するように構成した補正駆動方式の場合、制御回路106は非回転と判定すると、補正駆動パルスP2によって回転駆動した後、主駆動パルスP1を1ランク駆動エネルギの大きい主駆動パルスP1に変更して次回駆動する。
このように、主駆動パルスP1による駆動によって回転する正常な動作状態では、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsは第1デューティ区間内で発生する傾向があり、第1デューティ区間におけるデューティ比を大きく設定しておくことでステッピングモータ102の自由振動に制動をかけることなく正確な誘起信号VRsの検出が可能になる。
【0032】
一方、図7に示すように、制御回路106は、マスク時間T1において回転検出手段108が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した場合は、主駆動パルスP1の駆動エネルギに余裕がなくなってきたことを示しているため次回の主駆動パルスP1による回転駆動時に非回転となる可能性が高くなっているので、回転検出時間T2内の第2デューティ区間におけるデューティ比が小さくなるように駆動パルス回路107を制御して制動を大きくする。回転検出手段108は、マスク期間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが検出された場合、第2デューティ区間において、前回よりも所定量だけ小さいデューティ比でスイッチング動作を行うことにより回転検出を行う。これにより、回転誤検出を防止することができる。
【0033】
以上述べたように、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路によれば、主駆動パルスP1によってステッピングモータ102を回転駆動した後の回転検出時間T2において、高インピーダンス素子及びステッピングモータ102の駆動コイル209を含む第1閉回路と低インピーダンス素子及び駆動コイル209を含む第2閉回路とを所定時間比で交互に切り換えることによってステッピングモータ102が発生する誘起信号VRsを検出する回転検出手段108を有し、誘起信号VRsが所定の基準しきい電圧Vcompを超えたか否かに基づいてステッピングモータ102が回転したか否かを判定してステッピングモータ102を回転制御するステッピングモータ制御回路101において、制御回路106は、回転検出時間T2を第1デューティ区間と前記第1デューティ区間よりも後の第2デューティ区間に区分し、前記第1閉回路と第2閉回路の時間比であるデューティ比を前記第1デューティ区間よりも第2デューティ区間において小さくするように回転検出手段108を制御するように構成している。
したがって、複雑な制御を用いずに簡単な構成で、回転検出時間T2の前半部分では回転動作時の制動効果を下げて誘起信号VRs出力し易くし、後半部分では非回転動作時の制動効果を上げて誘起信号VRsを出力しにくくすることで、回転検出の安定性を向上させることができる。
【0034】
また、回転検出時間を第1デューティ区間と第2デューティ区間とに分割し、第1デューティ区間のデューティ比を例えば1/2、第2デューティ区間のデューティ比を例えば1/8以下にする。これにより、非回転挙動を起こした時の制動効果を増して、時刻針等を所定の位置に止めることと、非回転時の誘起信号VRsを低くして誤検出を防ぐこととの両方の効果を得ることができる。
また、マスク時間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが検出されたときには、駆動余裕が無くなってきていることを示しており、次回駆動時に非回転になる可能性が高くなっているので、回転検出時間T2内の第2デューティ区間におけるデューティ比をそれまでより小さくすることで、制動効果を上げ、回転の誤検出を防止することが可能になる。
【0035】
また、本実施の形態に係るアナログ電子時計によれば、複雑な制御を用いずとも簡単な構成で、回転動作時に第1デューティ区間における制動効果を小さくして誘起信号VRsを出力し易くし、その一方、非回転動作時の第2デューティ区間における制動効果を大きくして誘起信号VRsを出力しにくくすることで、回転検出の安定性を向上させることができ、正確な運針動作を行うことが可能になる。
【0036】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。本発明の他の実施の形態は、外部に直流磁界が存在する場合でも、ステッピングモータ102の回転検出を正確に行うことにより、誤動作を防止できるようにした点に特徴を有している。
図8は、本発明の他の実施の形態に係るアナログ電子時計及びステッピングモータ制御回路の動作を説明するための信号波形図であり、図7、図8と同一部分には同一符号を付している。
【0037】
本発明の他の実施の形態のブロック図、ステッピングモータ、第1デューティ区間及び第2デューティ区間の制御動作は、図1〜図5と同じである。以下、前記実施の形態と異なる部分について、図1〜図5、図8を用いて説明する。
先ず、アナログ電子時計の外部に、図2の状態でステッピングモータ102の回転を助ける方向に直流磁界が存在するものとする。
【0038】
図2の状態で、制御回路106の制御の下、駆動パルス回路107から一方の極性の駆動パルスP1をコイル209の端子OUT1、OUT2間に供給して(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)、図2の矢印方向に電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、ロータ202は図2の実線矢印方向に180度回転する。
【0039】
回転検出手段108は、この時に発生する誘起信号VRsの最大値Vmaxout1を検出する。ステッピングモータ102が正常に回転している場合には、外部直流磁界の影響でステッピングモータ102の回転が速まる。したがって、回転検出手段108は、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsの最大値Vmaxout1を、検出時間T2内の早い時刻に検出する(図8(a))。
【0040】
次に、駆動パルス選択回路104から、逆極性の駆動パルスP1をコイル209の端子OUT1、OUT2に供給して(前記駆動とは逆極性となるように、第1端子OUT1側を負極、第2端子OUT2側を正極)、図2の反矢印方向に電流を流すと、ステータ201には反破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、ロータ202は前記と同一方向に180度回転する。
【0041】
回転検出手段108は、この時に発生する誘起信号VRsの最大値Vmaxout2を検出する。ステッピングモータ102が正常に回転している場合、ロータ102の磁極と外部直流磁界の極性との関係で、外部直流磁界の影響でステッピングモータ102の回転が遅くなる。したがってこの場合、回転検出手段108は、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsの最大値Vmaxout2を、最大値Vmaxout1よりも遅れて検出することになる(図8(b))。
【0042】
制御回路106は、誘起信号VRsの最大値Vmaxout1の検出時刻Out1と最大値Vmaxout2の検出時刻Out2の差(例えば絶対値|Out1−Out2|)が所定時間よりも大きい場合、外部に所定値以上の直流磁界が存在すると判定し、第2デューティ区間において前記デューティ比を所定量小さくするように制御して、第2デューティ区間における制動を大きくする。
【0043】
次のサイクルでは、制御回路106は、次に逆極性(ここではOut1)で駆動したときに誘起信号VRsの最大値Vmaxout2の検出時刻Out2と前回駆動したときの最大値Vmaxout1の検出時刻Out1の差(例えば絶対値|Out2−Out1|)が所定時間よりも大きい場合、外部に所定値以上の直流磁界が存在すると判定し、第2デューティ区間において前記デューティ比を所定量小さくするように制御して、第2デューティ区間における制動を大きくする。
制御回路106は、極性が異なる駆動パルスP1によって交互にステッピングモータ102を駆動する毎に、デューティ比の制御動作を繰り返す。
【0044】
ステッピングモータ102の場合、外部磁界が存在する状態では、駆動後のブレーキ効果が小さいと、ロータ202が正規の静止位置を越え、外部磁界に押される形でロータ202が1周回転(即ち、1秒ではなく2秒運針)してしまう現象が発生する恐れがあるが、第2デューティ区間においてステッピングモータ102に対する制動が大きくなるため、1度の駆動でロータ202が1周回転してしまうことを防止することができる。
【0045】
以後、このように、コイル209に対して極性の異なる信号(交番信号)を供給することによって、前記動作が繰り返し行われて、ロータ202を180度ずつ矢印方向に連続的に回転させることができる。
制御回路106は、前述したようにして、相互に極性の異なる駆動パルスP1によって交互にステッピングモータ102を回転駆動すると共に、前記相互に極性の異なる駆動パルスP1によって駆動したときに発生する誘起信号VRs(Vmaxout1とVmaxout2)が所定時間以上離れている場合、第2デューティ区間においてデューティ比を所定量小さくする。これにより、所定強度以上の外部直流磁界が存在する場合でも、ステッピングモータ102の回転を正確に検出して、正常に回転駆動することができる。
【0046】
尚、時刻針以外にも、カレンダ等を駆動するためのステッピングモータに適用可能である。
また、ステッピングモータの応用例としてアナログ電子時計の例で説明したが、モータを使用する電子機器に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るステッピングモータ制御回路は、ステッピングモータを使用する各種電子機器に適用可能である。
また、本発明に係る電子時計は、カレンダ機能付きアナログ電子腕時計、カレンダ機能付きアナログ電子置時計等の各種カレンダ機能付きアナログ電子時計をはじめ、各種のアナログ電子時計に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
101・・・ステッピングモータ制御回路
102・・・ステッピングモータ
103・・・電源
104・・・発振回路
105・・・分周回路
106・・・制御回路
107・・・駆動パルス回路
108・・・回転検出手段
201・・・ステータ
202・・・ロータ
203・・・ロータ収容用貫通孔
204、205・・・内ノッチ
206、207・・・外ノッチ
208・・・磁心
209・・・駆動コイル
210、211・・・可飽和部
Q1〜Q6・・・トランジスタ
301、302・・・検出用抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主駆動パルスによってステッピングモータを回転駆動した後の回転検出時間において、高インピーダンス素子及び前記ステッピングモータの駆動コイルを含む第1閉回路と低インピーダンス素子及び前記駆動コイルを含む第2閉回路とを所定時間比で交互に切り換えることによって前記ステッピングモータが発生する誘起信号を検出し、前記誘起信号が所定の基準しきい電圧を超えたか否かに基づいて前記ステッピングモータが回転したか否かを判定して前記ステッピングモータを回転制御する制御手段を備えたステッピングモータ制御回路において、
前記回転検出時間を第1区間と前記第1区間よりも後の第2区間に区分し、
前記制御手段は、前記第1閉回路と第2閉回路の構成時間比であるデューティ比を、前記第1区間と第2区間とで異ならせることを特徴とするステッピングモータ制御回路。
【請求項2】
前記制御手段は、前記デューティ比を前記第1区間よりも第2区間において小さくすることを特徴とする請求項1記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項3】
前記回転検出時間の前に回転の有無判定に利用しないマスク時間を有することを特徴とする請求項1又は2記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項4】
前記制御手段は、前記マスク時間内において前記基準しきい電圧を超える誘起信号を検出したとき、前記第2区間において前記デューティ比を所定量小さくすることを特徴とする請求項3記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項5】
前記制御手段は、相互に極性の異なる駆動信号によって交互に前記ステッピングモータを回転駆動すると共に、前記相互に極性の異なる駆動信号によって駆動したときに発生する前記誘起信号が所定時間以上離れている場合、前記第2区間において前記デューティ比を所定量小さくすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項6】
時刻針を回転駆動するステッピングモータと、前記ステッピングモータを制御するステッピングモータ制御回路とを有するアナログ電子時計において、
前記ステッピングモータ制御回路として、請求項1乃至5のいずれか一に記載のステッピングモータ制御回路を用いたことを特徴とするアナログ電子時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−67086(P2011−67086A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160641(P2010−160641)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】