説明

ステップボルトの滑り防止構造及び滑り防止方法

【課題】腐食防止のための塗装を行っても滑り止め機能が低減することなく、既存の鉄塔や電柱に適用可能なステップボルトの滑り止め構造を提供する。
【解決手段】鉄塔又は電柱に取り付けられるステップボルト20の滑り防止構造10は、ステップボルト20の周囲に螺旋状に巻き付けられたスパイラル11と、前記スパイラル11の両端をステップボルト20に固定する固定リング12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔や電柱に昇降のために取り付けられたステップボルトの滑り防止構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔や電柱には、補修作業の際に作業員が昇降するためのステップボルトが取り付けられている。従来、このようなステップボルトには、滑り止めを目的として表面に約1mmに満たない切り込みを形成していた。しかしながら、このようなステップボルトに対して腐食防止のための塗装を行うと、切り込みが塗料で埋まってしまい、滑り止め機能が低下してしまうという問題があった。
【0003】
このような滑り止め機能を持たせたステップボルトとして、例えば、特許文献1には、所望の形状の突伏部を多数形成したステップボルトが記載されている。かかるステップボルトを用いることで、腐食防止のための塗装などを行っても滑り止め機能が低下してしまうことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10―243536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のステップボルトを既存の鉄塔や電柱に適用するためには、全てのステップボルトを交換する必要があり、手間とコストがかかる。
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、腐食防止のための塗装を行っても滑り止め機能が低減することなく、既存の鉄塔や電柱に適用可能なステップボルトの滑り止め構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステップボルトの滑り防止構造は、鉄塔又は電柱に取り付けられるステップボルトの滑り防止構造であって、前記ステップボルトの周囲に螺旋状に巻き付けられた螺旋状部材と、前記螺旋状部材の両端を前記ステップボルトに固定する固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のステップボルトの滑り防止方法は、鉄塔又は電柱に取り付けられるステップボルトの滑り防止方法であって、前記ステップボルトの周囲に螺旋状部材を巻き付け、 前記螺旋状部材の両端を前記ステップボルトに固定部材により固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ステップボルトの周囲に巻き付けられた螺旋状部材が固定部材により固定されることで、ステップボルトのグリップを確保できるため、腐食防止のための塗装を施したステップボルトであっても表面に滑り止め機能を持たせることができる。また、ステップボルトの周囲に螺旋状部材を巻きつけ、固定部材により固定する構成であるため、既存の鉄塔や電柱に取り付けられたステップボルトにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ステップボルトの滑り止め構造を示す図である。
【図2】固定リングを示す図であり、(A)は開いた状態、(B)は閉じた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のステップボルトの滑り防止構造の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態のステップボルト20の滑り止め構造10を示す図である。ステップボルト20は、一端に頭部21を備え、他端の端部近傍に螺条部22を備えた棒状の鋼材からなる。ステップボルト20は、鉄塔を構成するアングル材1に形成されたボルト孔1Aに螺条部22が挿入された状態で、螺条部22に螺合する一対のナット23,24でアングル材1を挟みこむことで、アングル材1に固定されている。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の滑り止め構造10は、ステップボルト20の外周に巻き付けられたスパイラル11と、スパイラル11の両端を固定する固定リング12とにより構成される。スパイラル11は、例えば、アルミやアルミを含有する金属などの耐食性を有する材料からなり、間隔が2cm程度の螺旋状に形成され、表面に耐食加工が施されている。
【0012】
図2は、固定リング12を示す図であり、(A)は開いた状態、(B)は閉じた状態を示す。同図に示すように、固定リング12は、一対の円弧状部材13、14が回動可能に接続されてなる。これら円弧状部材13、14としては、耐久性・耐食性を有するプラスチック製のものを用いることができる。一対の円弧状部材13、14の互いに接続された側と逆側の端部には、夫々、雌雄の爪部15、16が形成されており、雄爪部16を雌爪部15に嵌め込むことで、円弧状部材13、14を円環状に接続することができる。
【0013】
また、一方の円弧状部材14の側面には切り欠き部14Aが形成されている。固定リング12は、切欠き部14Aにスパイラル11を収容した状態で、雌雄の爪部15、16を嵌め込み、周囲から圧力を加えられることで、スパイラル11の端部を挟みこんだ状態で強固にステップボルト20に固定されている。スパイラル11は、その両端が固定リング12により固定されることで、ステップボルト20に巻き付けられた状態で保持される。このようにステップボルト20にスパイラル11が巻き付けられることで、表面のグリップを確保することができ、ステップボルト20に滑り防止機能を持たせることができる。
【0014】
以下、ステップボルト20に腐食防止のための塗装を施すとともに滑り止め構造10を取り付ける方法について説明する。
まず、滑り止め構造10を取り付けるにあたり、ステップボルト20の表面に耐食加工を施す。
次に、スパイラル11をステップボルト20に巻き付ける。なお、スパイラル11の巻き付け作業は、ペンチなどを用いて行うことができる。
【0015】
次に、ステップボルト20のスパイラル11の両端部に相当する位置に、固定リング12を一対の円弧状部材13、14を開いた状態でスパイラル11の端部が切欠き部14A内に収容されるように配置し、一対の円弧状部材13、14を回動させて雄爪部16を雌爪部15に嵌め込む。さらに、例えば、ペンチでかしめて固定リング12に外周側から圧力を加える。これにより、固定リング12はステップボルト20に強固に固定されるとともに、スパイラル11の端部を強固に保持することとなる。
以上の工程によりステップボルト20に滑り止め構造10を固定することができる。
【0016】
本実施形態によれば、ステップボルト20の周囲にスパイラル11を巻き付け、このスパイラル11を固定リング12により固定することで、スパイラル11により表面のグリップが確保されるため、腐食防止のための塗装を施したステップボルト20であっても、ステップボルト20に滑り防止機能を持たせることができる。
【0017】
また、既存の鉄塔や電柱に設けられたステップボルト20にも取り付けることができ、ステップボルト20を耐食性及び滑り防止機能を備えたものに取り替えなくても、ステップボルト20に耐食性及び滑り防止機能を持たせることができ、コストを削減できる。また、滑り止め構造10の設置作業がステップボルト20を取り替えるのに比べて簡易であるため、施工性を向上できる。
【0018】
なお、本実施形態では、固定リング12によりスパイラル11の端部をステップボルト20に固定する構成としたが、これに限らず、スパイラル11の端部を強固にステップボルト20に固定できればその構成は問わない。
【符号の説明】
【0019】
1 アングル材 10 滑り防止構造
11 スパイラル 12 固定リング
13、14 円弧状部材 14A 切欠き部
15 雌爪部 16 雄爪部
20 ステップボルト 21 頭部
22 螺条部 23、24 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔又は電柱に取り付けられるステップボルトの滑り防止構造であって、
前記ステップボルトの周囲に螺旋状に巻き付けられた螺旋状部材と、
前記螺旋状部材の両端を前記ステップボルトに固定する固定部材と、を備えることを特徴とするステップボルトの滑り防止構造。
【請求項2】
鉄塔又は電柱に取り付けられるステップボルトの滑り防止方法であって、
前記ステップボルトの周囲に螺旋状部材を巻き付け、
前記螺旋状部材の両端を前記ステップボルトに固定部材により固定することを特徴とするステップボルトの滑り防止方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−1753(P2011−1753A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145720(P2009−145720)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】