説明

ステップ式印刷装置及びステップ式印刷方法

【課題】硝子基板や可撓性プラスチックフィルム基材上へ、高精細パタ−ンを連続的に形成する印刷方法にて、画像パターンが繰り返し配置された印刷パターンを高い位置精度で形成することができるステップ式印刷装置およびステップ式印刷方法を提供する。
【解決手段】画像パターンが繰り返し配置された印刷パターンを単位印刷パターンに分割し、フィルムブランケット31と被印刷基材33との位置を相対的にX−Y方向にステップ移動させ、印刷位置毎に被印刷基材とフィルムブランケットとを近接させて対向配置し、フィルムブランケット上に形成した剥離パターン32を被印刷基材に反転印刷することで単位印刷パターンを形成し、これを繰り返すことで全印刷パターンを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペーパーや液晶表示装置などのカラーフィルターや、電気配線や絶縁層などの電子部品の精細な印刷方法に関するものであり、特に、被印刷基材上に同一の画像パターンが繰り返し配置された印刷パターンを形成するステップ式印刷装置およびそれを使ったステップ式印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロニクス製品の製造においては、精細なパターニング方法としてフォトリソグラフィ法が用いられている。フォトリソグラフィ法では様々な光源を持つ露光装置が開発され、高精細なフォトマスクを使用することで、高い解像性で且つ高い位置精度でパターニングが可能である。その応用分野は、フラットパネルディスプレイのカラーフィルタ、電気配線や電子部品、その他機能性部材などのパターン形成などが知られている。また被形成基材としては硝子基板、プラスチック基板などの基材や、フィルムなどの可撓性の基材まで多岐に渡っている。
しかし、感光性樹脂膜の塗工、露光、現像、剥離などの工程毎に大掛かりな製造設備が必要であり、また高価な露光用のフォトマスクを使用する必要がある。
【0003】
フォトリソグラフィ法以外の工法の一つとして、インクジェット法が検討されている。インクジェット法は、所定の部分にのみ所定の材料をパターニングできることから材料の利用効率が高く、フォトマスクなどの版も使用しないことから、もっとも簡便なパターニング方法として期待されている。
しかしながら、インクジェット法は、着弾後のインク液滴の直径が数十μm程度と大きく、位置精度も十数μm程度と低いため、精細なパターン形成が難しかった。また均一な膜厚が得にくいなどの問題があった。
【0004】
以上のことから、基材上へ精細なパターンを簡単に形成する方法として、反転印刷法が提案された。図1は、従来の反転印刷法の工程を説明する模式図である。従来の反転印刷法は、シリンダー胴に巻き付けたブランケット上にインキを塗工・予備乾燥し、形成したインキ膜にパターン部を凹形状に加工した除去版を押圧してパターン部以外をブランケット上より除去し、ブランケット上に残った剥離パターンを被印刷基材に転写して印刷パターンを形成する印刷法である(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、従来の反転印刷は、シリコーンゴム層またはシリコーン樹脂層をフィルム基材上に形成した枚葉形態のブランケット材を、シリンダーに固定し、インキ塗工、反転印刷、ブランケットクリーニング再生を繰り返し使用していた。連続印刷をする場合、処理数の増加に伴いブランケット材がインキ中の溶剤を吸収し、ブランケット材表面のインキの乾燥性や転写性が変化するためブランケット内に浸透した溶剤を除去する必要があった。
【0006】
更に、転写処理後には毎回、ブランケット材に残ったインキのクリ−ニングが必要であり生産性の低さが問題であった。
また、先に形成した印刷パターンに対し重ね印刷する場合、ブランケット材が曲面のシリンダー胴に固定されているため、ブランケット材上と被印刷基材上の各々のパターンを画像認識装置にて監視することや、印刷開始位置を規定することが難しく、重ね合わせ精度の低さが問題であった。
【0007】
そこで、本発明者は、反転印刷用のブランケット材の構成に着目し、ブランケット材を
巻き取りロールから供給できるインキ剥離性のフィルム基材にシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂を塗工したブランケット(以下フィルムブランケット)を使用する反転印刷法を提案した。
【0008】
印刷処理毎に巻き出しロールより送り出された新しいブランケット面を使用することで、常にインキを塗工するブランケット表面が同じ状態に保て、インキの塗工乾燥条件が安定するとともに、印刷機上でフィルムブランケットのクリーニングや溶剤の乾燥を行う必要がなくなり生産性が向上した。
また、フィルムブランケットと被印刷基材とを平面状態で保持し近接させることで、フィルムブランケット上の画像パタ−ンと被印刷基材上の印刷パターンとを画像認識装置で監視することが可能となり、重ね合わせ位置精度が向上した。
【特許文献1】特開2001−56405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
被印刷基材上に同一の画像パターンが繰り返し配置された画像パターンを反転印刷法により単層ないし積層形成する場合、被印刷基材の印刷面積が広くなると、それにあわせてブランケットや除去版などの部材やそれらの製造装置を大型化する必要があった。またブランケットの大面積化に伴いブランケット材自体の伸縮による印刷パターンの伸縮や、印刷位置の精度の低下などの問題が発生し、大面積の印刷パターンを1回の印刷処理で精細にかつ高い位置精度で形成することが難しくなってきた。
本発明はこのような問題を解消する為になされたものであり、印刷パターンを分割して印刷する事により、大面積の精細な印刷パターンを高い位置精度で形成することができるステップ式印刷装置およびステップ式印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ステップ式印刷装置において、
1)前記ステップ式印刷装置は、フィルムブランケットを用いた反転印刷装置であり、
2)フィルムブランケット搬送ユニット部と、被印刷基材搬送ユニット部の2つのユニット部から構成され、
3)前記2つのユニット部を相対的にX−Y方向にステップ移動させ、剥離パターンを形成したフィルムブランケットと被印刷基材との位置を変更する機構と、
4)前記フィルムブランケットと前記被印刷基材とのギャップを制御する機構と、
5)前記フィルムブランケットと前記被印刷基材との位置を変更した印刷毎に、フィルムブランケットの剥離パターンと、被印刷基材の印刷パターンの位置あわせを行うアライメント機構とを、少なくとも備えていることを特徴とするステップ式印刷装置である。
【0011】
また、本発明は、請求項1記載のステップ式印刷装置を用いたステップ式印刷方法において、前記ステップ移動によるフィルムブランケットと被印刷基材との相対的なX−Y方向の位置の制御を印刷装置の送り量の制御により行い、所定の印刷位置に単位印刷パターンを形成し、これを繰り返すことで全印刷パターンを得ることを特徴とするステップ式印刷方法である。
【0012】
また、本発明は、上記発明によるステップ式印刷方法において、前記所定の印刷位置にて、フィルムブランケット上の剥離パターンのアライメントマークと被印刷基材上の印刷パターンのアライメントマークとを画像認識装置で監視し、被印刷基材を保持したステージのX−Y方向、印刷面に沿うθ方向の微動制御により位置あわせを行い、被印刷基材の所定の印刷位置に単位印刷パターンを形成し、これを繰り返すことで全印刷パターンを得ることを特徴とするステップ式印刷方法である。
【0013】
また、本発明は、上記発明によるステップ式印刷方法において、前記フィルムブランケット上に形成した剥離パターンの内、所定の印刷位置で印刷しない部分を除去基材にて除去した後、残った前記剥離パターンを被印刷基材に反転印刷し、単位印刷パターンを形成することを特徴とするステップ式印刷方法である。
【0014】
また、本発明は、上記発明によるステップ式印刷方法において、前記フィルムブランケットに剥離パターンを形成する際の除去版が、全印刷パターンと同じ配置の凹形状パターン、ないし所定の印刷位置で印刷する単位印刷パターンを含む配置の凹形状パターンからなり、被印刷基材上への印刷パターンの形成を、前記除去版を1版以上使用し、各印刷位置にて除去版の必要な凹形状パターン部を使用して単位印刷パターンを形成することを特徴とするステップ式印刷方法である。
【0015】
また、本発明は、上記発明によるステップ式印刷方法において、前記フィルムブランケットの張力の制御により、フィルムブランケット上に形成された剥離パターンのトータルピッチの制御を行い、被印刷基材に単位印刷パターンを形成することを特徴とするステップ式印刷方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、フィルムブランケットを用いた反転印刷装置であり、フィルムブランケット搬送ユニット部と被印刷基材搬送ユニット部の2つのユニット部から構成され、2つのユニット部を相対的にステップ移動させ、フィルムブランケットと被印刷基材との位置を変更する機構と、フィルムブランケットと被印刷基材とのギャップを制御する機構と、位置を変更した印刷毎に、フィルムブランケットの剥離パターンと、被印刷基材の印刷パターンの位置あわせを行うアライメント機構とを、少なくとも備えているので、大面積の精細な印刷パターンを高い位置精度で形成することができるステップ式印刷装置となる。
【0017】
請求項2〜6に係る発明によれば、所定の位置に、所定の単位印刷パターンを形成することで、被印刷基材上に繰り返し性のある全印刷パターンを得ることができる。また、所定の印刷位置毎に画像認識装置でフィルムブランケット上と被印刷基材上に形成したアライメントマークとを監視して位置あわせを行い、印刷位置を規定したのち印刷することで、先に被印刷基材上に形成した印刷パターンに対し位置ズレの少ない重ね合わせが可能となる。また、印刷位置においてフィルムブランケットに形成した剥離パターンのうち被印刷機材に印刷しない部分を、フィルムブランケット上の剥離パターンより除去基材を用いて除去することで、印刷位置毎に必要となる単位印刷パターンを形成することが可能である。また、除去版の該当する凹形状パターン部分を使用して、各印刷位置において必要となる剥離パターンをフィルムブランケット上に形成し、更に前記除去基材を併用し印刷しない部分を除去して印刷を繰り返すことで、被印刷基材上に印刷パターンを形成することが可能となる。また、フィルムブランケット上に形成された剥離パターンのトータルピッチの制御し、被印刷基材上に先に形成された印刷パターンの歪みにあわせたアライメント位置の合わせこみが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明によるステップ式印刷装置について説明する。
図2に示すように、本発明のステップ式印刷装置は、フィルムブランケット搬送ユニット部21と被印刷基材搬送ユニット部24からなり、2つのユニットの何れかをX−Y方向にステップ移動させて、所定の印刷位置に単位印刷パターンを形成し、被印刷基材上に全印刷パターンを形成することを特徴としている。
【0019】
ブランケット搬送ユニット部21とは、被印刷基材への転写剥離装置、及びその前後の
インキ塗工装置、除去版により前記インキ塗工膜の非画像パターン部を除去する装置、搬送装置、巻き出し巻き取り装置のことである。被印刷基材搬送ユニット部24とは、基材固定定盤及びその前後の搬送装置、巻き出し巻き取り装置のことである。
被印刷基材は硝子基板の様な枚葉形態のものやフィルム状の連続した形態のものが使用可能である。枚葉形態の場合、被印刷基材搬送ユニット部とは、基材固定装置のことである。
【0020】
フィルムブランケット22や連続性のあるフィルム状の被印刷基材23を搬送し、X−Y移動させる場合、X−Y軸方向の移動量や各基材の幅が広くなると、転写剥離装置部のみのX−Yステップ移動では印刷装置の前後の固定部との間での捩れや折れが生じる為、搬送部を含む全てのユニット全体を移動させるのが望ましい。
被印刷基材とフィルムブランケットとを相対的にX−Y方向にステップ移動させる場合、使用する部材の形態により、2つのユニットのうち何れか移動が容易な方を移動させれば良く、特に規定するものでは無い。
【0021】
本発明によれば、ブランケットにはフィルムブランケットの他に枚葉に切り出したブランケットも使用可能である。ブランケットが枚葉形態の場合、固定枠や曲面を持った装置に固定しされており、ブランケット固定装置単体でのX−Y方向のステップ駆動が可能である。インキ塗工装置や、除去版104によりインキ塗工膜を除去し剥離パターンを形成する装置は必要によりブランケット固定装置と共に移動させれば良い。
【0022】
被印刷基材とフィルムブランケットとのギャップ量は小さい程位置合わせ精度が高いが、フィルムブランケットの自重による撓みがある為80から300ミクロンの間が望ましい。これより小さいと被印刷基材とフィルムブランケットが接触し、これより大きいと転写時のZ軸方向の押し込み量や画像認識装置による監視が難しくなる。
本発明の印刷パターンとは被印刷基材上に印刷により形成されたパターンのことであり、各印刷位置に分割して印刷された単位印刷パターンと、前記単位印刷パターンを所定の位置に印刷して形成した全印刷パターンのことである。また、剥離パターンとは、除去版により印刷しないパターン部を除去してフィルムブランケット上に形成した印刷前のパターンのことである。
【0023】
請求項2に係る発明は、無地の被印刷基材上に印刷パターンを形成する方法に関するものである。無地の被印刷基材上に印刷位置を規定する場合、端面からの位置を基準として、最初の単位印刷パターンの位置を決定すればよい。その後の印刷位置は最初に形成した単位印刷パターンからの印刷装置のX−Y方向の送り量とその位置精度で管理することが可能である。こうして所定の位置に、所定の単位印刷パターンを形成することで、被印刷基材上に繰り返し性のある全印刷パターンを得ることができる。
【0024】
X−Y駆動の制御には、リニヤモーター機構や、X-Y送り方向に沿って延設されて幅方向の外側面にレーザー光が照射されるバーミラーからなる位置検出手段を備え、検出ズレ量を加味してX-Y方向移動ユニット部の位置を調整する機構が可能である。
図3(a)は、フィルムブランケット上に剥離パターンが形成された状態である。図3(b)は、被印刷基材搬送ユニット部のうち基材定盤と、フィルムブランケットとの相対位置を斜め方向にずらした場合の模式図である。固定したフィルムブランの搬送面に対して、基材定盤をステップ移動させた状態を説明したものである。
【0025】
請求項3に係る発明は、被印刷基材上に先に形成された印刷パターンに対してフィルムブランケット上の剥離パターンを重ね印刷する方法に関するものである。印刷装置の前記何れかの搬送ユニット部を所定の印刷位置迄ステップ移動させた後、所定の印刷位置毎に画像認識装置でフィルムブランケット上と被印刷基材上に形成したアライメントマークと
を監視して位置あわせを行い、印刷位置を規定したのち印刷することで、先に被印刷基材上に形成した印刷パターンに対し位置ズレの少ない重ね合わせが可能となる。
【0026】
フィルムブランケットが光学的に透過性の高い材料の場合、フィルムブランケットと被印刷基材とを対向配置した状態でフィルムブランケットの裏面より画像認識装置にて監視する方法が可能である。フィルムブランケットが光学的に透過性の低い材料の場合、被印刷基材とフィルムブランケットを対向配置した状態で両基材の間に上下視認可能な画像認識装置を挿入しアライメントマークを監視し位置あわせを行った後、監視装置を退避させ、フィルムブランケットと被印刷基材とを印刷位置まで近接させる方法も可能である。
【0027】
また、画像認識装置でアライメントマークを監視し位置あわせを行う際、最終的な数十ミクロンレベルの微調整を行うことも可能で、被印刷基材を保持したステージの局所的なX−Y方向、印刷面に沿うθ方向の微動制御を行う事で、位置あわせの制御を簡便にすることが可能である。
【0028】
請求項4に係る発明は、全印刷パターンを形成する為に必要となる単位印刷パターンが、印刷位置毎にことなる場合の印刷方法に関するものである。
各印刷位置においてフィルムブランケットに形成した剥離パターンのうち被印刷機材に印刷しない部分を、フィルムブランケット上の剥離パターンより除去基材を用いて除去することで、印刷位置毎に必要となる単位印刷パターンを形成することが可能である。
【0029】
フィルムブランケットはインキ転写性の高いシリコーン樹脂やシリコーンゴムを塗工してあり、凹凸のない前記除去基材を接触させる事でフィルムブランケット上の剥離パターンより印刷しない部分を容易に除去することが可能である。
除去基材の材質は特に規定するものでは無く、表面の平滑なものであればよい。また除去基材の形状は特に規定するものでは無く、ローラー状や円弧状のものや前記形状をもつ固定治具に前記材質からなる除去基材を固定したものが使用可能である。
【0030】
図4(a)〜(c)、及び図5(a)〜(c)は、本発明のステップ印刷方法における、除去版、除去基板、剥離パターン、形成された印刷パターンの関係を説明する模式図である。図4(a)は除去版の模式図である。図4(b)はフィルムブランケット上に剥離パターンを形成した模式図である。図4(c)は被印刷基材に図4(b)の画像パターンを転写剥離した状態の模式図である。図5(a)はフィルムブランケット上の剥離パターンのうち、下2面を除去基材で除去する処理の模式図である。図5(b)は、図5(a)の結果得られたフィルムブランケット上に剥離パターンを形成した模式図である。また、図5(c)は、図4(c)の被印刷基材をY軸方向にステップ移動させ、図5(b)の剥離パターンを転写剥離した状態の模式図である。
【0031】
請求項5に係る発明は、印刷パターンと同じ配置の凹形状パターン、ないし各印刷位置で印刷する単位印刷パターンを含む配置の凹形状パターンを有する除去版を使用することで、除去版の該当する凹形状パターン部分を使用して、各印刷位置において必要となる剥離パターンをフィルムブランケット上に形成し、更に前記除去基材を併用し印刷しない部分を除去して印刷を繰り返すことで、被印刷基材上に印刷パターンを形成する事が可能となる。この場合、必要となる凹形状パターンを2版以上の除去版上に分割し、フィルムブランケット上に剥離パターンを形成する際、随時入れ替えて使用することも可能である。
【0032】
また、2版以上の除去版を使用する事により、部分的に異なる画像パターンからなる印刷パターンを形成することも可能である。また、単位印刷パターンの配置からなる凹形状パターン部を有する除去版を使用することで、被印刷基材上に形成する印刷パターンと同等以上の面積の除去版を製版する必要が無くなり、除去版を小型化することが可能となる
。これにより、除去版の製造設備が小型化できると共に、ドライ法やウェット法などエッチング方式の選択枝が増え、除去版の品質の向上が容易になる。
【0033】
請求項6に係る発明は、フィルム基材の厚みは100から200ミクロンであり、フィルムブラン搬送ユニット部の基材に加える張力により、伸びや、フィルム基材の弾性による縮みの制御が可能である。除去版による転写剥離工程後の張力と、被印刷基材への印刷時の張力を制御することにより、フィルムブランケット上に形成された剥離パターンのトータルピッチの制御し、被印刷基材上に先に形成された印刷パターンの歪みにあわせたアライメント位置の合わせこみが可能となる。
フィルムブランケット上に形成された剥離パターンを転写する方法としては、ロールによる加圧法、スキージによる加圧法などが可能であり、特に規定するものでは無い。
一方、1度接触した被印刷基材とフィルムブランケットを剥離する方法としては、剥離時の速度の変動がムラやパターン欠損の原因となる為、剥離ローラーを剥離位置に接触させて剥離位置を前記剥離ローラーにより制御して一定の速度で行うのが望ましい。
【0034】
X−Yステップ移動毎の画像認識装置により監視するアライメントマークの位置は、フィルムブランケット上の剥離パターンの2点以上望ましくは4角4点で認識するのが望ましい。
各アライメントマーク位置で剥離パターンの伸縮を確認し、フィルムブランケットの張力の制御により調整することが望ましい。
【0035】
除去版用の基板としては、透明な基材として硝子、石英またはプラスチック基材が使用可能である。除去版はその表面に凹形状を形成したものや撥インキ剤をパターニングした平版が使用可能である。特に硝子、石英基板は、加工しやすく、熱膨張率が1〜5×10-6m/℃と低いことで寸法安定性が高く、版洗浄時の有機溶剤や有機アルカリなどの耐薬液性が高く、耐刷性が高いことより除去版の基材として望ましい。また、基材の厚みは特に限定するものではない。
【0036】
インキ膜の転写によって印刷パターンが形成される被印刷機材は、目的とする印刷物に応じて適宜選択することができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネートなどのフレキシブルなプラスチック材料、石英などの硝子基板やシリコンウェハーなどを挙げることができる。被印刷基材の形態により、反転印刷機の構成を選択することが可能であり、生産効率の向上のために長尺の基材を用い、連続して効率良く印刷を行うことが可能である。
【0037】
フィルムブランケットとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースなどのフィルム基材を用いることができる。
フィルム基材上にシリコーンゴム、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などのインキ離形性の高い材料を塗工したものが使用可能である。
【0038】
フィルムブランケットは、上記基材へシリコーンオイル、シリコーンワニスで代表される離型剤を塗っても良く、あるいはシリコーンゴムの薄膜層を形成してもよい。また同じ目的でフッ素系樹脂、フッ素系ゴムも利用可能で、フッ素樹脂微粉末をシリコーンゴムあるいは、普通のゴムに混ぜて剥離性を出すなどの使い方をしてもよい。これらシリコーン系の塗膜は通常フィルム基材との密着が低いが、熱硬化または紫外線硬化性のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、最表面に設けるシリコーン層に対して、より基材との接着性の高い樹脂層を、アンカー層としてあらかじめフィルム基材上に設け、その上層に設けること
もできる。
いずれも適度のインキ受容性を有すると同時に、一度受容したインキの完全なインキ剥離性を有することが望ましい。
【0039】
具体的なシリコーンとしては、ジメチルポリシロキサンの各種分子量のもの、その他メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、あるいはこれらポリシロキサンと有機化合物との共重合体など、変成したものを用いることができる。
シリコーンゴムとしては、二液型のジオルガノポリシロキサンと架橋剤としての三官能性以上のシラン、またはシロキサン及び硬化触媒を組み合わせたもの、あるいは一液型ではジオルガノポリシロキサンとアセトンオキシム、各種メトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等の組み合わせなどが用いられ、その他ゴム硬度を調節するためのポリシロキサンが適宜用いられる。
【0040】
以下、本発明の実施例を挙げて説明する。
【0041】
<実施例1>
印刷パターンとして、4インチカラーフィルタ、4×6面付け、BMパターン上に、Red,Green,Blueの3色入色、各カラーフィルタの周囲にアライメントマークを配置したものを使用した。
フィルムブランケットとして基材厚約120μmのシリコーン系離形ポリエステルフィルム:K1504(東洋紡績(株)製)の300mm幅、500mロール状のものを使用した。
【0042】
また、パターンの除去版としては、300×300mm上に、4インチカラーフィルタパターンを2×3面配置、BMパターン20μm幅、開口部80μm幅の連続したストライプパターンを形成した硝子凹版を使用した。
さらに、被印刷基材としてフィルム厚120μmの光透過性PET基材を500mm幅、20mロール状のものを使用した。
上記基材を使用して下記手順に従い、X−Y方向に2×2回のステップ印刷を行い、被印刷基材上に印刷パターンを形成した。
【0043】
1)まず、塗工部ステージ上に新しいフィルム面が来るようにフィルムブランケットを繰り出し、250mm幅のヘッドを用いたダイコーターにより、塗工長さ260mmでインキを塗工した。
2)つぎに、インキ塗工膜を乾燥させた後、除去版を設置した定盤部まで搬送を行った。
3)除去版にインキ塗工膜をゴムローラーにて押圧し、印刷するパターン部以外を除去版に転写した後、フィルムブランケット上の剥離パターン部が被印刷基材を固定した定盤上に来るように各ユニットを移動させた。
4)フィルムブランケットと被印刷基板を適度な間隔をもって保持し、各々のアライメントマークを重ね合わせ4台のアライメント用カメラで4角のアライメントマークを確認し、位置合わせを行った。
【0044】
5)さらにゴムローラーでフィルムブランケット上の画像パターンを被印刷基材へ転写し、フィルムブランケットを剥離して被印刷基材上に単位印刷パターンを形成した後、フィルムブランケットを巻き取り第1ステップの印刷を完了した。
6)次に、被印刷基材の搬送ユニットをX軸方向に200mm移動させた後、上記1)から5)の動作を繰り返して第2ステップの印刷を完了した。
7)次に、被印刷基材の搬送ユニットをX軸方向に−200mm、Y軸方向に−200mm移動させた後、上記1)から5)の動作を繰り返して第3ステップの印刷を完了した。
【0045】
8)次に、被印刷基材の搬送ユニットをX軸方向に200mm移動させた後、上記1)から5)の動作を繰り返して第4ステップの印刷を完了した。
印刷パターンが形成された被印刷基材を加熱装置部で硬化し、Red,Green,Blueを順に印刷することでカラーフィルタを形成した。
本発明の印刷方法を用いる事で、面内の各カラーフィルタのアライメントマークの位置精度を±2μmで制御する事ができ、色抜けの無い良好なパターン形状のロールフィルムカラーフィルタが得られた。
【0046】
<実施例2>
印刷パターンとして、3インチカラーフィルタ、6×7面付け、BMパターン上に、Red,Green,Blueの3色入色、各カラーフィルタの周囲にアライメントマークを配置したものを使用した。
フィルムブランケットとして基材厚約120μmのシリコーン系離形ポリエステルフィルム:K1504(東洋紡績(株)製)の300mm幅、500mロール状のものを使用した。
【0047】
また、パターンの除去版としては、300×300mm上に、3インチカラーフィルタパターンを3×4面配置、BMパターン10μm幅、開口部60μm幅の連続した格子パターンを形成した硝子凹版を使用した。
さらに、被印刷基材として400×500×0.7mmtの低膨張硝子を使用した。上記基材を使用して下記手順に従い、X−Y方向に2×2回のステップ印刷を行い、被印刷基材上に印刷パターンを形成した。
【0048】
1)まず、塗工部ステージ上に新しいフィルム面が来るようにフィルムブランを繰り出し、220mm幅のヘッドを用いたダイコーターにより、塗工長さ260mmでインキを塗工した。
2)つぎに、インキ塗工膜を乾燥させた後、除去版を設置した定盤部まで搬送を行った。
3)除去版にインキ塗工膜をゴムローラーにて押圧して、印刷するパターン部以外を除去版に転写した後、ブランケットケット上の剥離パターン部が被印刷基材を固定した定盤上に来るように各ユニットを移動させた。
4)フィルムブランケットと被印刷基板を適度な間隔をもって保持し、各々のアライメントマークを重ね合わせ4台のアライメント用カメラで4角のアライメントマークを確認し、位置合わせを行った。
【0049】
5)さらにゴムローラーでフィルムブランケット上の剥離パターンを被印刷基材へ転写し、フィルムブランケットを剥離して被印刷基材上に単位印刷パターンを形成した後、フィルムブランケットを巻き取り第1ステップの印刷を完了した。
6)次に、被印刷基材の定盤部をX軸方向に200mm移動させた後、上記1)から5)の動作を繰り返して第2ステップの印刷を完了した。
7)次に、被印刷基材の定盤部をX軸方向に−200mm、Y軸方向に−250mm移動させた後、上記1)から3)を繰り返し、3)の後 下側の2面を除去基板にて除去して、4)、5)の動作を行い、第3ステップの印刷を完了した。
【0050】
8)次に、被印刷基材の定盤部をX軸方向に200mm移動させた後、上記1)から3)を繰り返し、3)の後、下側の2面を除去基板にて除去して、4)、5)の動作を行い、第4ステップの印刷を完了した。
印刷パターンが形成された被印刷基材を加熱装置部で硬化し、Red、Green、Blueを順に印刷することでカラーフィルタを形成した。
本発明の印刷方法を用いる事で、面内の各カラーフィルタのアライメントマークの位置精
度を±2μmで制御する事ができ、色抜けの無い良好なカラーフィルタ基板が得られた。
【0051】
<比較例1>
比較例1として、硝子凹版を用いた反転印刷法を説明する。
印刷パターンとして、3インチカラーフィルタ、6×7面付け、BMパターン上に、Red、Green、Blueの3色入色、各カラーフィルタの周囲にアライメントマークを配置したものを使用した。
フィルムブランケットとして基材厚約120μmのシリコーン系離形ポリエステルフィルム:K1504(東洋紡績(株)製)の400mm幅、500mロール状のものを使用した。
【0052】
また、パターンの除去版としては、400×500mm上に、3インチカラーフィルタパターンを6×7面配置、BMパターン10μm幅、開口部60μm幅の連続した格子パターンを形成した硝子凹版を使用した。
さらに、被印刷基材として400×500×0.7mmtの低膨張硝子を使用した。上記基材を使用して下記手順に従い、1回の印刷処理により被印刷基材上に印刷パターンを形成した。
【0053】
1)まず、塗工部ステージ上に新しいフィルム面が来るようにフィルムブランケットを繰り出し、390mm幅のヘッドを用いたダイコーターにより、塗工長さ510mmでインキを塗工した。
2)つぎに、インキ塗工膜を乾燥させた後、除去版を設置した定盤部まで搬送を行った。
3)除去版にインキ塗工膜をゴムローラーにて押し当てし印刷したいパターン部以外を転写した後、フィルムブランケット上の剥離パターン部が被印刷基材を固定した定盤上に来るように各ユニットを移動させた。
【0054】
4)フィルムブランケットと被印刷基板を適度な間隔をもって保持し、各々のアライメントマークを重ね合わせ4台のアライメント用カメラで4角のアライメントマークを確認し、位置合わせを行った。
5)さらにゴムローラーでフィルムブランケット上の剥離パターンを被印刷基材へ転写し、フィルムブランケットを剥離して被印刷基材に印刷パターンを形成して、フィルムブランケットを巻き取り、印刷を完了した。
印刷パターンが形成された被印刷基材を加熱装置部で硬化し、Red、Green、Blueを順に印刷することでカラーフィルタを形成した。
【0055】
アライメント処理時、フィルムブランケット上の4角のアライメントマーク部が放射線状に12μmずつ伸びている事が確認された。得られたBM上に3色重ねたカラーフィルタは外周部ほど位置ズレが大きく、最大+6μmずれていた。3色のオーバーラップ量を5μmで設定していたが、部分的に色抜けが生じており、カラーフィルタ基板の性能としては不十分なものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)〜(c)は、従来の反転印刷法の工程を説明する模式図である。
【図2】本発明の印刷装置の構成を説明するための断面図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明のステップ印刷方法における、フィルムブランケット搬送ユニット部と、被印刷基材搬送ユニット部の関係を説明する模式図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明のステップ印刷方法における、除去版、除去基板、剥離パターンと、形成された印刷パターンの関係を説明する模式図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明のステップ印刷方法における、除去版、除去基板、剥離パターンと、形成された印刷パターンの関係を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0057】
11・・・ブランケット
12・・・シリンダー胴
13・・・インキ塗工膜
14、41、104・・・除去版
15、102・・・ダイコーター
16、32、43・・・剥離パターン
17、45・・・印刷パターン
18、23、33、44・・・被印刷基材
21・・・フィルムブランケット搬送ユニット部
22、31、42・・・フィルムブランケット
24・・・被印刷基材搬送ユニット部
46・・・除去基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップ式印刷装置において、
1)前記ステップ式印刷装置は、フィルムブランケットを用いた反転印刷装置であり、
2)フィルムブランケット搬送ユニット部と、被印刷基材搬送ユニット部の2つのユニット部から構成され、
3)前記2つのユニット部を相対的にX−Y方向にステップ移動させ、剥離パターンを形成したフィルムブランケットと被印刷基材との位置を変更する機構と、
4)前記フィルムブランケットと前記被印刷基材とのギャップを制御する機構と、
5)前記フィルムブランケットと前記被印刷基材との位置を変更した印刷毎に、フィルムブランケットの剥離パターンと、被印刷基材の印刷パターンの位置あわせを行うアライメント機構とを、少なくとも備えていることを特徴とするステップ式印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載のステップ式印刷装置を用いたステップ式印刷方法において、前記ステップ移動によるフィルムブランケットと被印刷基材との相対的なX−Y方向の位置の制御を印刷装置の送り量の制御により行い、所定の印刷位置に単位印刷パターンを形成し、これを繰り返すことで全印刷パターンを得ることを特徴とするステップ式印刷方法。
【請求項3】
前記所定の印刷位置にて、フィルムブランケット上の剥離パターンのアライメントマークと被印刷基材上の印刷パターンのアライメントマークとを画像認識装置で監視し、被印刷基材を保持したステージのX−Y方向、印刷面に沿うθ方向の微動制御により位置あわせを行い、被印刷基材の所定の印刷位置に単位印刷パターンを形成し、これを繰り返すことで全印刷パターンを得ることを特徴とする請求項2記載のステップ式印刷方法。
【請求項4】
前記フィルムブランケット上に形成した剥離パターンの内、所定の印刷位置で印刷しない部分を除去基材にて除去した後、残った前記剥離パターンを被印刷基材に反転印刷し、単位印刷パターンを形成することを特徴とする請求項2又は3記載のステップ式印刷方法。
【請求項5】
前記フィルムブランケットに剥離パターンを形成する際の除去版が、全印刷パターンと同じ配置の凹形状パターン、ないし所定の印刷位置で印刷する単位印刷パターンを含む配置の凹形状パターンからなり、被印刷基材上への印刷パターンの形成を、前記除去版を1版以上使用し、各印刷位置にて除去版の必要な凹形状パターン部を使用して単位印刷パターンを形成することを特徴とする請求項2、3、又は4記載のステップ式印刷方法。
【請求項6】
前記フィルムブランケットの張力の制御により、フィルムブランケット上に形成された剥離パターンのトータルピッチの制御を行い、被印刷基材に単位印刷パターンを形成することを特徴とする請求項2、3、4、又は5記載のステップ式印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−226678(P2009−226678A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73176(P2008−73176)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】