説明

ステップ減衰器

【課題】減衰回路の前後からスイッチング素子を排除して回路構成を簡単化でき、しかも減衰回路の切替え時に瞬断が生じないようにすること。
【解決手段】ステップ減衰器の入出力端子Ti−To間に複数の減衰回路5A〜5Dを並列接続すると共に、各減衰回路5A〜5Dの接地端とグランドとの間にPINダイオード6A〜6Dを接続し、PINダイオード6A〜6Dを相補的にオン又はオフして所要減衰量を段階的に切り替え可能にした。また、2つの減衰回路で1つの所要減衰量を設定し、隣接ステップの減衰量を設定する2つの減衰回路とは一部の減衰回路が共通するように組み合わされ、隣接ステップの減衰量への切り替え時に当該隣接ステップの減衰量に対応した減衰回路が全て短絡してから、不要となった減衰回路を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号の減衰量をステップ状に変化させるステップ減衰器に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号のレベルを所望の値に設定するための機器として、外部から与えられた直流電圧によりスイッチを開閉し、高周波信号の減衰量をステップ状に変化させるステップ減衰器が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1で開示されたステップ減衰器は、入力信号を通過、遮断するFETスイッチを入力端子と出力端子との間に設けると共に、FETスイッチと並列に任意の抵抗値の固定減衰器を設け、この構成の回路を縦続接続して、希望の減衰量が得られるように各FETスイッチを選択しオン/オフさせるようにしたものである。各固定減衰器の前後にはスイッチが設けられている。
【0003】
図12は、従来のステップ減衰器の回路図である。同図に示すステップ減衰器9は、入力端子Tiと出力端子Toとの間に接続したPINダイオード10と、PINダイオード10と並列に接続した減衰回路11と、減衰回路11の前後に接続した直流阻止用のコンデンサ15〜17と、減衰回路11を入出力端子Ti−To間に介挿するためのPINダイオード19及び20と、PINダイオード19及び20をオン/オフするコントロール回路21と、PINダイオード10及び19に流れる電流を制限するバイアス抵抗22と、PINダイオード20に流れる電流を制限するバイアス抵抗23と、エミッタ抵抗24及び25と、高周波阻止用のコイル26〜29とを備えている。
【0004】
減衰回路11は、3つの抵抗12〜14をT型に結線したものであり、その一端がコンデンサ15、PINダイオード19を介して入力端子Ti側に接続されており、他端がコンデンサ16及び17、PINダイオード20を介して出力端子To側に接続されている。また、接地端がグランドに接続されている。コントロール回路21は、3つのトランジスタ30〜32と抵抗33及び41とコントロール端子40とから構成され、コントロール端子40には制御用の直流電圧が供給される。また、バッテリ45から電源が供給される。
【0005】
コントロール回路21に制御用の直流電圧が供給されることで、トランジスタ30及び31がオンする。トランジスタ31がオンすることによってトランジスタ32がオフする。トランジスタ32がオフ状態になると、PINダイオード19及び20がゼロバイアスまたは逆バイアス状態となってオフし、減衰回路11が入出力端子Ti−To間から切り離された状態となる。一方、トランジスタ30がオン状態になると、高周波阻止用のコイル29を介してPINダイオード10に順方向バイアスが印加されるため、PINダイオード10がオン状態となって、入力された高周波信号が減衰されることなくそのまま出力される。
【0006】
制御用の直流電圧が供給されなくなると、トランジスタ30及び31は共にオフし、トランジスタ32はオンする。トランジスタ30がオフ状態になると、PINダイオード10がゼロバイアス又は逆バイアス状態となってオフする。一方、トランジスタ32がオン状態となると、高周波阻止用のコイル26を介してPINダイオード19に順方向バイアスが印加されるため、オン状態となる。またPINダイオード20にも順方向バイアスが印加されるため、オン状態となる。これにより、減衰回路11が入出力端子Ti−To間に介挿された状態となって、入力された高周波信号が減衰回路11にて減衰されて出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−249954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のステップ減衰器においては、PINダイオード10とPINダイオード19及び20とを交互にオン、オフさせるので、図13に示すように、PINダイオード10、19及び20の全てが同時にオフになってしまう瞬断が発生し、その際に高周波信号が通らなくなる問題もある。また、減衰回路11を入出力端子Ti−To間に介挿したり外したりするため、減衰回路11の前後にPINダイオード19及び20が必要となり、部品点数の増大を招くことになる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、減衰回路の前後からスイッチング素子を排除して回路構成を簡単化でき、しかも減衰回路の切替え時に瞬断が生じないステップ減衰器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のステップ減衰器は、高周波信号が入力する入力端子と、前記高周波信号が出力する出力端子と、前記入出力端子間に並列に接続された複数の減衰回路と、前記複数の減衰回路のそれぞれの接地端とグランドとの間に接続された複数の第1のスイッチング素子とを備え、前記複数の第1のスイッチング素子を相補的にオン又はオフすることにより減衰量を段階的に切替え可能にしたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、入出力端子間に複数の減衰回路を並列接続すると共に、各減衰回路の接地端とグランドとの間に第1のスイッチング素子を接続したので、減衰回路の入力段及び出力段にスイッチング素子を設ける必要がなくなり、スイッチング素子数を削減できる。また、第1のスイッチング素子は減衰回路の接地端とグランドとの間に接続されるので、第1のスイッチング素子を相補的にオン又はオフする際に過渡的に第1のスイッチング素子のオフ期間が重なったとしても信号の伝搬は遮断されないので、減衰回路を切替える際の瞬断を防止することもできる。
【0012】
また本発明は、上記ステップ減衰器において、前記入出力端子間に接続された第2のスイッチング素子を備え、前記第2のスイッチング素子をオンし、かつ、前記各第1のスイッチング素子をオフして高周波信号を減衰しないモードと、前記第2のスイッチング素子をオフし、かつ、前記各第1のスイッチング素子を相補的にオン又はオフして高周波信号を減衰するモードとを切替え可能にしたことを特徴とする。
【0013】
この構成により、第2のスイッチング素子のオン又はオフによって、減衰有りのモードと減衰無しのモードとを切り替えることができる。
【0014】
上記ステップ減衰器において、前記各減衰回路は、少なくとも1つの固定抵抗を含んで構成することができる。また、前記各減衰回路は、T型の固定抵抗減衰回路で構成することができる。
【0015】
上記ステップ減衰器において、段階的に異なる所要減衰量をそれぞれ対応する1つの前記減衰回路で設定し、前記複数の第1のスイッチング素子のうち所要の減衰量を設定する減衰回路に接続されたスイッチング素子をオンし、第2のスイッチング素子を含む他の全てのスイッチング素子をオフすることで、所要の減衰量を設定することができる。
【0016】
また上記ステップ減衰器において、段階的に異なる所要減衰量を、前記複数の減衰回路の数を増減することで設定し、所要減衰量を増大する場合、現在オン状態の第1のスイッチング素子に加えて、他の第1のスイッチング素子を追加的にオンし、所要減衰量を減少する場合、現在オン状態の第1のスイッチング素子の一部をオン状態に維持したまま他の第1のスイッチング素子をオフすることで、所要の減衰量を設定する。これにより、減衰回路の切替え時にも第1のスイッチング素子の少なくとも1つが必ずオンとなるので、出力信号のレベルが減衰回路の切り替え時に一時的に落ち込む現象を防止できる。
【0017】
また上記ステップ減衰器において、段階的に異なる各所要減衰量を2以上の所定数の減衰回路で設定すると共に、互いに隣接する所要減衰量をそれぞれ設定する複数の減衰回路は一部の減衰回路が共通するように組み合わされ、隣接する所要減衰量への切り替え時に当該隣接する所要減衰量を設定する各減衰回路に対応した全ての第1のスイッチング素子をオンしてから、不要となった減衰回路に対応した第1のスイッチング素子をオフする。これにより、減衰回路の切替え時に第1のスイッチング素子の少なくとも1つが必ずオンとなるので、出力信号のレベルが減衰回路の切り替え時に一時的に落ち込む現象を防止でき、しかも所要減衰量が大きい場合でも減衰回路数を増加する必要がないので、オン状態の第1のスイッチング素子数が増大することによる電流消費量の増大を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、減衰回路の前後からスイッチング素子を排除して回路構成を簡単化でき、しかも減衰回路の切替え時に瞬断が生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係るステップ減衰器を示す回路図である。
【図2】図1のステップ減衰器の各減衰回路を構成する抵抗の値の一例を示す図である。
【図3】図1のステップ減衰器の周波数特性を示す図である。
【図4】図1のステップ減衰器の減衰量設定時における各減衰回路の選択状態の一例を示す図である。
【図5】図4の減衰量設定時における減衰量の変化を示す図である。
【図6】図1のステップ減衰器の減衰量設定時における各減衰回路の選択状態の一例を示す図である。
【図7】図6の減衰量設定時における減衰量の変化を示す図である。
【図8】図1のステップ減衰器の減衰量設定時における各減衰回路の選択状態の一例を示す図である。
【図9】図8の各減衰回路を構成する抵抗の値の一例を示す図である。
【図10】図8の各減衰回路における切り替え時の動作を説明するための図である。
【図11】図8の減衰量設定時における減衰量の変化を示す図である。
【図12】従来のステップ減衰器を示す回路図である。
【図13】図12の従来のステップ減衰器の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るステップ減衰器を示す回路図である。同図において、本実施の形態のステップ減衰器1は、入力端子Tiと出力端子Toとの間に接続されたPINダイオード(第2のスイッチング素子)2と、PINダイオード2と並列に接続された減衰回路5A〜5Dと、減衰回路5A〜5Dのそれぞれに対し、接地端とグランドとの間に接続されたPINダイオード(第1のスイッチング素子)6A〜6Dと、各PINダイオード6A〜6Dのアノードとグランドとの間に接続された直流阻止用のコンデンサ7と、減衰回路5A〜5Dのそれぞれの出力側端と出力端子Toとの間に接続された直流阻止用のコンデンサ8と、各PINダイオード6A〜6Dのアノードとグランドとの間に接続された抵抗9と、入力端子Tiとグランドとの間に接続された電流制限用の抵抗10と、バイパスコンデンサ11を介して出力端子Toとグランドとの間に接続された高周波阻止用のコイル12と、各PINダイオード6A〜6Dをオン/オフするコントロール回路13と、コントロール回路13の各出力の否定論理和をとるNORゲート14と、NORゲート14の出力端とグランドとの間に接続された抵抗15とを備えている。なお、コントロール回路13とNORゲート14は、減衰量切り替え回路を構成する。
【0021】
PINダイオード2をオンすることで入出力端子Ti−To間がスルー状態となり、入力された高周波信号が減衰されることなく出力される。また、減衰回路5Aに対応するPINダイオード6Aをオンすることで、減衰回路5Aの接地端がグラウンドに接続されて減衰回路5Aを経由して伝搬する高周波信号が減衰される。減衰回路5B〜減衰回路5Dも同様で、それぞれに対応するPINダイオード6B〜6Dをオンすることで、対応する減衰回路の接地端がグラウンドに接続されて、減衰回路5B〜減衰回路5Dを経由して伝搬する高周波信号が減衰される。
【0022】
コントロール回路13は、2入力(I,I)4出力(O〜O)のロジック回路であり、コントロール信号の与え方によって出力信号形態が変化する。減衰回路5A〜5Dにおいて高周波信号を減衰しないスルーの場合、コントロール回路13の出力O〜Oの全てが”0”となる。また、減衰回路5Aのみで入出力端子Ti−To間を伝搬する信号を減衰させる場合は、コントロール回路13の出力Oのみが”1”となり、減衰回路5Bで入出力端子Ti−To間を伝搬する信号を減衰させる場合は、コントロール回路13の出力Oのみが”1”となり、減衰回路5Cで入出力端子Ti−To間を伝搬する信号を減衰させる場合は、コントロール回路13の出力Oのみが”1”となり、減衰回路5Dで入出力端子Ti−To間を伝搬する信号を減衰させる場合は、コントロール回路13の出力Oのみが”1”となる。
【0023】
ここで、減衰回路5A〜5Dを1つずつ選択することで2dBずつ減衰量を変えることができるように、減衰回路5Aの固定抵抗51A、52A及び53Aと、減衰回路5Bの固定抵抗51B、52B及び53Bと、減衰回路5Cの固定抵抗51C、52C及び53Cと、減衰回路5Dの固定抵抗51D、52D及び53Dの各値を決定する。この場合、減衰回路5Aを選択することで2dBの減衰量が設定され、減衰回路5Bを選択することで4dBの減衰量が設定され、減衰回路5Cを選択することで6dBの減衰量が設定され、減衰回路5Dを選択することで8dBの減衰量が設定される。図2に2dBずつ減衰量を変える場合の抵抗51A〜51D、52A〜52D、53A〜53Dの具体的な値を示す。また、図3にステップ減衰器1の周波数特性を示す。PINダイオードを使用することで、スルー、2dB、4dB、6dB、8dBの全てにおいてフラットな特性が得られる。
【0024】
また、図4は、減衰量設定時における減衰回路5A〜5Dの選択状態を示す図である。同図において、”−”線を引いている部分はPINダイオードがオンした短絡状態を示し、”×”を引いている部分はPINダイオードがオフした開放状態を示している。図4(a)はコントロール回路13の出力O〜Oの全てが”0”のときを示し、PINダイオード2のみオン状態となる。図4(b)はコントロール回路13の出力Oのみが”1”のときを示し、減衰回路5Aに接続されたPINダイオード6Aのみオン状態となる。図4(c)はコントロール回路13の出力Oのみが”1”のときを示し、減衰回路5Bに接続されたPINダイオード6Bのみオン状態となる。図4(d)はコントロール回路13の出力Oのみが”1”のときを示し、減衰回路5Cに接続されたPINダイオード6Cのみオン状態となる。図4(e)はコントロール回路13の出力Oのみが”1”のときを示し、減衰回路5Dに接続されたPINダイオード6Dのみオン状態となる。
【0025】
コントロール回路13は、所要減衰量の切り替え時にPINダイオード6A〜6D(減衰回路5A〜5D)を相補的に切り替える。
【0026】
上記した通り、入力された高周波信号に対して減衰をかけない場合は、コントロール回路13の出力O〜Oの全てが”0”となる入力をコントロール回路13に与え、2dBの減衰をかける場合は、コントロール回路13の出力Oのみ”1”になる入力をコントロール回路13に与え、4dBの減衰をかける場合は、コントロール回路13の出力Oのみ”1”になる入力をコントロール回路13に与え、6dBの減衰をかける場合は、コントロール回路13の出力Oのみ”1”になる入力をコントロール回路13に与え、8dBの減衰をかける場合は、コントロール回路13の出力Oのみ”1”になる入力をコントロール回路13に与える。
【0027】
以上のように、本実施の形態によれば、入出力端子Ti−To間に複数の減衰回路5A〜5Dを並列接続すると共に、各減衰回路5A〜5Dの接地端とグランドとの間にPINダイオード6A〜6Dを接続したので、減衰回路5A〜5Dの入力段及び出力段にスイッチング素子を設ける必要がなくなり、スイッチング素子数を削減できる。
【0028】
また、本実施の形態によれば、PINダイオード6A〜6Dは減衰回路5A〜5Dの接地端とグランドとの間に接続されるので、PINダイオード6A〜6Dを相補的にオン又はオフする際に過渡的にPINダイオード6A〜6Dのオフ期間が重なったとしても信号の伝搬は遮断されないので、減衰回路5A〜5Dを切替える際の瞬断を防止することもできる。
【0029】
ところで、減衰量の設定の仕方は上記以外にも様々なものを適用することができる。
例えば、全体の減衰回路5A〜5Dから1つの減衰回路のみを選択するのではなく、図5に示す切替えパターンのように、選択減衰回路を増加又は減少させていくことで所望の減衰量を設定するようにしても良い。図6においても、図4と同様に”−”線を引いている部分は短絡状態を示し、”×”を引いている部分は開放状態を示している。
【0030】
図6(a)はコントロール回路13の出力O〜Oの全てが”0”のときを示し、PINダイオード2のみオン状態となる。図6(b)はコントロール回路13の出力Oのみが”1”のときを示し、減衰回路5Aに接続されたPINダイオード6Aのみオン状態となり、2dBの減衰量が設定される。図6(c)はコントロール回路13の出力O及びOが”1”のときを示し、減衰回路5A及び5Bそれぞれに接続されたPINダイオード6A及び6Bが共にオン状態となり、4dBの減衰量が設定される。図6(d)はコントロール回路13の出力O〜Oの全てが”1”のときを示し、減衰回路5A〜5Cそれぞれに接続されたPINダイオード6A〜6Cがそれぞれオン状態となり、6dBの減衰量が設定される。図6(e)はコントロール回路13の出力O〜Oの全てが”1”のときを示し、減衰回路5A〜5Dそれぞれに接続されたPINダイオード6A〜6Dがそれぞれオン状態となり、8dBの減衰量が設定される。例えば、減衰回路5Aから減衰回路5Bに切り替える際に、減衰回路5Aを選択している状態で減衰回路5Bを選択し、その後、減衰回路5Aを非選択状態にする。このように相補的に切り替えることで、PINダイオード2及び6A〜6Dのうち、必ず1つがオン状態になるので、PINダイオード2及び6A〜6Dの全てが同時にオフになる瞬断が発生することがない。
【0031】
図6(a)〜(e)に示すように選択減衰回路を増加又は減少させた場合の減衰量の変化を図7に示す。同図に示すように、減衰量の切り替え時に信号レベルが選択減衰量よりも落ち込む現象が生じていないことが確認できる。
【0032】
このように、選択減衰回路の数を増加又は減少させることで所望の減衰量を設定することで、減衰量を切り替える際にPINダイオード2及び6A〜6Dの全てが同時にオフになる瞬断が発生しないので、減衰量の切り替え時に高周波信号のレベルが所望の減衰量よりも落ち込む現象を防止できる。
【0033】
図8は1dBずつ減衰量を設定する場合における減衰回路5A〜5Dの選択状態を示す図である。図8においても図4と同様に”−”線を引いている部分は短絡状態を示し、”×”を引いている部分は開放状態を示している。
【0034】
図8に示す切替えパターンは、2つの減衰回路で1つの減衰量を設定し、隣接ステップの減衰量を設定する2つの減衰回路とは一部の減衰回路が共通するように組み合わせ、隣接ステップの減衰量への切り替え時に当該隣接ステップの減衰量に対応した減衰回路が全て短絡してから、不要となった減衰回路を開放する。
【0035】
図8のステップ減衰器は、並列接続された5個の減衰回路5A〜5Fで構成されている。0dB、1dBの減衰量を除き、2つ減衰回路の組合せで所要の減衰量を設定する。図8(a)は減衰回路5A〜5Fのいずれも選択しないときの状態を示し、減衰量の設定が行われず、スルー状態となる。図8(b)は減衰回路5Aを選択したときの状態を示し、1dBの減衰量が設定される。図8(c)は減衰回路5A及び5Bを選択したときの状態を示し、2dBの減衰量が設定される。図8(d)は減衰回路5B及び5Cを選択したときの状態を示し、3dBの減衰量が設定される。図8(e)は減衰回路5C及び5Dを選択したときの状態を示し、4dBの減衰量が設定される。図8(f)は減衰回路5D及び5Eを選択したときの状態を示し、5dBの減衰量が設定される。図8(g)は減衰回路5E及び5Fを選択したときの状態を示し、6dBの減衰量が設定される。図9は1dBずつ減衰量を変える場合の減衰回路5A〜5Fそれぞれの抵抗51A〜51F、52A〜52F、53A〜53Fの具体的な値を示す図である。
【0036】
ここで、図10に示すように、ある減衰量A(図10では2dB)から隣接ステップの減衰量B(図10では3dB)へ切り替える際に、減衰量Aの設定に用いられ減衰量Bでは用いられない減衰回路5Aを短絡したまま、減衰量Bの設定に用いられる減衰回路5Cを短絡し、その後に減衰回路5Aを開放する。減衰量A及びBの双方の設定に共通して用いられる減衰回路5Bを短絡したままである。
【0037】
図11は図10に示す切替え方式を適用して、図8に示す切替えパターンで減衰量を段階的に切り替えた場合の減衰量変化を示す。このように、減衰量の切り替え時に、先に切替先の減衰回路を短絡してから切り外すべき減衰回路を開放するので、階段状に減衰量を切り替えることができると共に、小さな減衰量から大きな減衰量まで短絡する減衰回路の数は一定であるので、大きな減衰量を設定した際の電流消費量を抑制することができる。
【0038】
本発明は上記した本実施の形態に限定されるものでは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。たとえば、以上の説明では、減衰回路を3つの抵抗素子をT型に接続してなる構成を説明したが、π型減衰器の構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、テレビ受信機や無線通信機のチューナに適用可能に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ステップ減衰器 2 PINダイオード
5A〜5F 減衰回路 6A〜6F PINダイオード
7、8 直流阻止用のコンデンサ 11 バイパスコンデンサ
12 高周波阻止用のコイル 13 コントロール回路
14 NORゲート 9、15 抵抗
10 電流制限用の抵抗 51A〜51F 抵抗
52A〜52F 抵抗 53A〜53F 抵抗



【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が入力する入力端子と、
前記高周波信号が出力する出力端子と、
前記入出力端子間に並列に接続された複数の減衰回路と、
前記複数の減衰回路のそれぞれの接地端とグランドとの間に接続された複数の第1のスイッチング素子とを備え、
前記複数の第1のスイッチング素子を相補的にオン又はオフすることにより減衰量を段階的に切替え可能にしたことを特徴とするステップ減衰器。
【請求項2】
前記入出力端子間に接続された第2のスイッチング素子を備え、
前記第2のスイッチング素子をオンし、かつ、前記各第1のスイッチング素子をオフする高周波信号を減衰しないモードと、前記第2のスイッチング素子をオフし、かつ、前記各第1のスイッチング素子を相補的にオン又はオフする高周波信号を減衰するモードとを切替え可能にしたことを特徴とする請求項1記載のステップ減衰器。
【請求項3】
前記各減衰回路は、少なくとも1つの固定抵抗を含んで構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のステップ減衰器。
【請求項4】
前記各減衰回路は、T型の固定抵抗減衰回路であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のステップ減衰器。
【請求項5】
段階的に異なる各所要減衰量をそれぞれ対応する1つの前記減衰回路で設定し、
前記複数の第1のスイッチング素子のうち所要減衰量を設定する減衰回路に接続されたスイッチング素子をオンし、第2のスイッチング素子を含む他の全てのスイッチング素子をオフすることで、所要減衰量を設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のステップ減衰器。
【請求項6】
段階的に異なる所要減衰量を、前記複数の減衰回路の数を増減することで設定し、
所要減衰量を増大する場合、現在オン状態の第1のスイッチング素子に加えて、他の第1のスイッチング素子を追加的にオンし、所要減衰量を減少する場合、現在オン状態の第1のスイッチング素子の一部をオン状態に維持したまま他の第1のスイッチング素子をオフすることで、所要減衰量を設定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のステップ減衰器。
【請求項7】
段階的に異なる各所要減衰量を2以上の所定数の減衰回路で設定すると共に、互いに隣接する所要減衰量をそれぞれ設定する複数の減衰回路は一部の減衰回路が共通するように組み合わされ、隣接する所要減衰量への切り替え時に当該隣接する所要減衰量を設定する各減衰回路に対応した全ての第1のスイッチング素子をオンしてから、不要となった減衰回路に対応した第1のスイッチング素子をオフすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のステップ減衰器。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−192943(P2010−192943A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31969(P2009−31969)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】