ステレオ音響の拡幅
ステレオ音響の応答を拡幅することは、少なくとも2個のラウドスピーカを備えた再生システムで達成される。ステレオ信号入力はアクセスされるが、それは多数の周波数成分を含む。ラウドスピーカは互いに接近している。周波数成分のある周波数範囲は、例えばステレオ信号の前処理で、非相関にされる。音響再生システムのステレオ音響の応答は非相関性処理に基づいて広げられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連するアメリカ合衆国出願]
本出願は、2008年2月14日にギョーム・ポタード(Guillaume Potard)によって申請された、発明の名称がステレオ音響の拡幅(ドルビー・ラボラトリーズ参照番号D08003US01参照)である、同時出願中の関連する米国仮特許出願番号61028654への優先権を主張する。それは本出願の譲受人に譲渡され、参照によってここに完全に組込まれる。
【0002】
本発明は、一般的にオーディオ再生に関する。さらに詳しくは、本発明の実施態様はステレオ音響の拡幅(stereophonic widening)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
豊かさ、フルネス、奥行きおよび広大さのような音響心理学的に知覚されたオーディオ特質は、聴取者のオーディオ体験に関係のある「防音スタジオ」について説明する。そのような特質は、聴取者の防音スタジオの全体的な空間認知と同様に、聴取者の主観的なオーディオ関与に影響を与える。ステレオ音響のオーディオ(「ステレオ」)は、多数のラウドスピーカによる音の再生のために、少なくとも2個の別個の又は独立したオーディオ・チャンネルを使用する。ステレオ音声は音を、それが多数の方向から知覚されるように、再生する。
【0004】
ステレオ音声は、本質的に正常な両耳聴を持った人のために、ある意味では、聴覚的に充実したように考えられる、ある程度の自然な音のリスニング体験を提供する。ステレオ音声は、ステレオ音響の投影を使用するが、そこで、防音スタジオの要素あるいは成分を生成するために、オーディオ・コンテンツの録音された音成分に関連した相対的位置が、コード化され再生される。ラウドスピーカの配置と距離間隔は防音スタジオの認知に影響を与える。
【0005】
この節は、追求することができる手法を説明するが、必ずしも以前に着想されたか追求された手法であるとは限らない。したがって、他に指摘がない限り、この節に記述された手法が、単にこの節に述べているとの理由だけで先行技術となると考えられるべきでない。同様に、他に指摘がない限り、1つ以上の手段についての問題点が、この節に基づいて任意の先行技術中で認識されていると考えられるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明は、添付の図面内では、具体例として示されるもので、図面は発明の制限を目的とするものではない。添付の図面内で、同一の要素には同一の数字を付してある。
【0007】
【図1】図1は本発明の実施例による非相関(decorrelating)ステレオ拡幅システムの一例を示す。
【図2】図2は、本発明の実施例によるクロスオーバーフィルタを備えた非相関ステレオ拡幅システムの一例を示す。
【図3】図3は、本発明の実施例による全通過フィルタを備えた非相関ステレオ拡幅システムの一例を示す。
【図4】図4は、本発明の実施例によるクロスオーバーフィルタを使用する非相関ステレオ拡幅システムの一例を示す。
【図5】図5は本発明の実施例によるフィルタバンクの一例を示す。
【図6】図6は本発明の実施例による非相関フィルタの一例を示す。
【図7】図7は実施例による振幅と位相応答の画面例を示す。
【図8】図8は実施例による異なる利得設定でオーディオ・チャンネル間の位相応答差をプロットする画面例を示す。
【図9】図9は本発明の実施例によるクロスオーバーフィルタを示す。
【図10】図10は実施例によるクロスオーバーフィルタに関連した振幅と位相応答のプロットの画面例を示す。
【図11】図11は実施例による非相関フィルタとクロスオーバーフィルタにそれぞれ関連して、位相応答と振幅プロットの画面例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ステレオ音響の拡幅がここに説明される。以下の記述では、説明のために、多数の具体的詳細が、本発明についての完全な理解を得られるようにするために述べられる。しかしながら、本発明はこれらの詳細なしで実施されてもよいことは明らかである。他の場合では、本発明を不必要に複雑にし、難解にし、或いは不明瞭にすることがないようにするために、周知の構造と装置については余すところなく詳細には記述しない。
【0009】
I.概観
ここに説明された実施態様は、ステレオ音響の拡幅に関係がある。ステレオ音響の応答を拡幅することは、2つ以上のラウドスピーカがある音響再生システムで達成される。音響再生システムへのステレオ信号入力はアクセスされる(例えば、受け取られアクセスされる)。ステレオ信号入力は多数の周波数成分を含む。ラウドスピーカは互いの近くに配置されている。一連のステレオ信号の周波数成分が非相関にされる。例えば、実施例では比較的高周波領域を非相関にするが、しかしより低い周波数範囲を非相関にはしない。ステレオの信号の前処理により、周波数範囲が非相関にされてもよい。音響再生システムのステレオ音響の応答は非相関性に基づいて拡幅される。
【0010】
ラウドスピーカの距離間隔は10センチメートル未満から20センチメートル(10〜20cm)までである。ラウドスピーカの隣接間隔が狭すぎると、少なくとも一部分、音響再生システムのステレオ音響の応答でフルネスを低減する。しかしながら、実施例では非相関性を使用して、それが接近して隣接したスピーカでもステレオ音響の拡幅を許容するように機能する。非相関性処理(decorrelation)は、前処理機能としてステレオ拡幅と関係する処理に先立って行なわれる。周波数範囲は比較的高周波に相当する。従って、非相関性処理は、閾値周波数値を超える周波数上で行なわれる。一実施例では、閾値周波数値は、300ヘルツ(300Hz)と3キロヘルツ(3kHz)の間周波数範囲内にある。
【0011】
本発明の実施態様は、多少接近して置かれたスピーカ(例えば、20cm以下の距離間隔にある「左」と「右」の一組のスピーカ)として機能するのに適合する。例えば、位相キャンセル(phase cancellation)を回避して、適切な低音応答を生成するために、当該スピーカが実質的に低周波の同相であるそれぞれの信号で駆動される。(例えば300Hz−3kHzのしゃ断周波数を越えた)高周波での非相関は、時々中央画像シフト(例えば、オーディオ・コンテンツのセンターパニング)に関係しているような、気をそらす可能性があり望ましくない効果を低減する。中央画像シフトはステレオ拡幅を妨げたり減少させたりする場合があり、より低い周波数で非相関性を生じる。さらに、音響源のスペクトルは空間的に広げられるが、より低い周波数では多少中心に集められた位置にあり、より高い周波数では多少大きな空間の拡幅がある。したがって、高周波非相関性を使用する実施例では、聴覚的に認識可能な審美的音質を達成する。
【0012】
実施態様はステレオ拡幅システムに関係がある。図1は本発明の一実施例によるステレオ拡幅システム100を示す。ステレオ拡幅システム100には非相関フィルタモジュール(非相関器)102があり、これはステレオ信号を拡幅する前処理する。ステレオ信号入力はいくつかの信号成分を含んでいる。それは右チャンネル音声入力成分と左チャンネル音声入力成分を含んでいる。
【0013】
非相関器102は左チャンネル音声入力と右チャンネル音声入力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。非相関器102は、閾値周波数値を超える周波数で非相関性処理を行なう。低い周波数への非相関性処理は行なわれない。実施例では、閾値周波数値が、包括的に300Hzから3kHzの間にある範囲の周波数内にある。
【0014】
非相関器102は、さらに効果強化パラメータ(effect strength parameter)入力信号を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。効果強化パラメータ入力信号は、例えばシステム100のチャンネルや構成要素に関連して、非相関性処理(例えば非相関の強度)及び/又はスケーリング利得にある程度の関係がある。例えば、左チャンネルと右チャンネルの間の非相関の強度を高めることによって、差動チャンネル(difference channel)エネルギーに関連するエネルギーが増加され、したがって、システム100のステレオの拡幅実効性を強くする。非相関器102は非相関にされた音声信号をステレオ拡幅モジュール104に出力する。
【0015】
拡幅モジュール(拡幅器)104は、非相関器102の非相関にされた出力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。拡幅器104は、ステレオ信号を拡幅することに関係のある処理を行なう。拡幅モジュール104は、もとのステレオ入力信号から拡幅された出力ステレオ信号を生成する。したがって、ステレオ出力信号は右チャンネル音声出力成分と左チャンネル音声出力成分を含んでいる。
【0016】
拡幅モジュール104は、さらに効果強化パラメータ入力信号を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。効果強化パラメータ入力信号は、システム100のチャンネルや成分に関連するスケーリング利得、及び/又は非相関の強度に関係がある。例えば、スケーリング利得は合計チャンネルと差動チャンネルに関係がある。合計チャンネルに対して相対的に差動チャンネルを押し上げることは、ステレオ領域を拡幅するために使用される。
【0017】
本発明の実施態様は、携帯電話や携帯機器のような様々な電子オーディオ装置や機器に実施され、使用され、配置され及び/又は配列される。実施態様は、例えばスピーカ間隔が比較的狭い場合(例えば10〜20cm未満のスピーカの距離間隔が予期される場合)、及び/又は比較的低周波でロールオフする場合(例えば約1kHzなど)に、電子的オーディオ装置で表現されるステレオイメージの幅を著しく増加させるように機能する。
【0018】
実施態様は、非相関性処理とステレオ拡幅機能を行なうように、コンピュータ読取り可能な媒体で記憶された命令を実行し、コンピュータシステム又は実質的にコンピュータ化された(ディジタルなど)音響再生装置、通信装置、ネットワーク装置又は機器を制御する1つ以上のプロセッサで実施される。
【0019】
実施態様は、特定目的IC(ASIC)、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)あるいはプログラマブル論理デバイス(PLD)を含む(しかしこれらに制限されない)集積回路(IC)のような回路や装置で実施される。本実施態様に関連したステレオ拡幅機能と非相関機能は、ASICのような装置の構造と設計の態様で生じてもよい。その代わりに又は加えて、ステレオ拡幅機能と非相関機能は、プログラム命令、論理状態及び/又はマイクロコントローラ、PLD及びFPGAのようなプログラム可能なICに適用される論理ゲート配置でもたらされてもよい。
【0020】
II. 非相関ステレオ拡幅システムの例
実施態様は、高周波数の閾値よりも上方の、比較的高い音声周波数で非相関性を促進するように機能する。ここで、閾値はおよそ300Hzから3kHzまでの範囲内にある。一実施例では、高周波数で促進されることに加えて、より低い周波数については非相関がオプションである。
【0021】
A.クロスオーバーフィルタの例
一実施例では、周波数依存の非相関器はクロスオーバーフィルタ回路網(クロスオーバーフィルタ)で実施される。クロスオーバーフィルタ回路網は左・右の音声入力信号に作用する。図2は、本発明の一実施例に従って、クロスオーバーフィルタ202、204を備えた非相関ステレオ拡幅システム200の例を示す。システム200は左・右の音声入力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。システム200は、クロスオーバーフィルタ202を備えた左チャンネル音声入力にアクセスする。システム200は、クロスオーバーフィルタ204を備えた右チャンネル音声入力にアクセスする。
【0022】
クロスオーバーフィルタ202、204は、それぞれ左右のチャンネル入力に関連したオーディオスペクトラムを、多数の周波数帯に分割する。クロスオーバー202、204は、アクティブな高域通過フィルタと低域通過フィルタで有効にされる。高域フィルタ部品は、前もって定義した交差点周波数(crossover point frequency)値を超える周波数を通過させ、その値より下の周波数を減衰する。低域フィルタ部品は、交差点周波数値より下の周波数を通過させ、その値を越えた周波数を減衰する。
【0023】
クロスオーバーフィルタ202、204は、それぞれ左・右の音声入力を低周波数成分と高周波数成分に分離する。一実施例では、クロスオーバーフィルタ202、204は、類似しているか、あるいは実質的に同一である。例えば、ネットワーク202、204の各々の交差点は両方とも、1kHzで実施される。クロスオーバーフィルタ202、204の高域通過出力は、それぞれ第1の非相関器「A」と第2の非相関器「B」212に入力を供給する。非相関器A210と非相関器B212には同様の構造的特徴、及び/又は別の特性を有する。しかしながら、重要なことには、非相関器210と212は異なる動作特性で機能してもよい。例えば、非相関器210は、非相関器212によって行なわれた非相関性よりも、大きな程度(又はより少ない程度)に非相関にする。例えば、非相関器210は乗算パラメータ用の第1の値gに従って非相関にする。その一方で非相関器212によって行なわれた非相関性は、乗算パラメータg’に対する第2の値で非相関にする。これらは、例えば、図6と図7に関して式1で説明される。
【0024】
クロスオーバーフィルタ202の低域フィルタ成分の出力は、遅延要素206に供給される。クロスオーバーフィルタ204の低域フィルタ成分の出力は、遅延要素208に供給される。遅延要素206、208は同様の遅延を賦課する。
【0025】
クロスオーバーフィルタ202の高域フィルタ成分の出力は、非相関フィルタ(非相関器)210に供給される。クロスオーバーフィルタ204の高域フィルタ成分の出力は、非相関器212に供給される。非相関器210、212は、少なくともクロスオーバー閾値周波数値を超える周波数上で非相関性処理を行なう。より低い周波数の非相関性処理はオプションである。非相関器はすべての周波数にわたって作動してもよいが、クロスオーバーフィルタは低周波で非相関器を回避するように機能する。2つの非相関器は、お互いに対して非相関にする出力を、それぞれ提供するために使用される。その結果、非相関器210の出力は、非相関器212の出力から非相関にされる。非相関器210と非相関器212の各出力が非相関にされる程度は異なり、及び/又は可変であることは、認識されるべきである。
【0026】
非相関フィルタ210、212は、各々効果強化パラメータ入力信号を任意に受け取り、及び/又はこれにアクセスする。効果強化パラメータは非相関の強度に関係がある。左右チャンネルの間の非相関の強度を高めることは、差動チャンネルエネルギーに関連したエネルギーを増加させ、したがって、システム200に関してステレオ拡幅実効性を増加させる。
【0027】
遅延要素206と非相関フィルタ210は、左のオーディオ・チャンネルに相当するものであるが、その出力は加算器214で合計される。遅延要素208と非相関フィルタ212は、右のオーディオ・チャンネルに相当するものであるが、その出力は加算器216で合計される。加算器214、216は各々非相関にされた信号を出力するが、この非相関信号はステレオ拡幅器104に入力を供給する。ステレオ拡幅器104は、例えば図1に関して上記で実質的に説明されたように、機能する。拡幅モジュール104は、このように拡幅された左右のチャンネルの出力ステレオ信号を生成するもので、これはそれぞれの非相関ステレオ入力信号に対応する。
【0028】
B.位相補正フィルタの例
一実施例では、周波数に関連する(例えば、依存する)非相関器は、位相シフトフィルタで実施される。図3は、位相シフト(例えば位相補正)フィルタ302、304を備えた非相関ステレオ拡幅システム300の例を示す。ここに使用されるように、「位相シフト」、「位相補正」という用語は、フィルタに関して交換的に使用される。実施例では、位相シフトフィルタ302、304は全通過フィルタで実施される。図3に図示されるように、位相シフトフィルタ302、304の1つ以上が全通過位相シフトフィルタとして実施される一方で、オーディオ再生とステレオ音響に関係のある分野に熟練している技術者によって認識されるべき事として、(図3の位相フィルタ302、304としてここに表わされる)別のフィルタが、位相補正に使用される。
【0029】
システム300は左・右の音声入力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。システム300は、位相シフトフィルタ302を備えた左チャンネル音声入力にアクセスする。システム300は、位相シフトフィルタ304を備えた右チャンネル音声入力にアクセスする。位相シフトフィルタ302、304は、それらに対応する位相シフトされた音声信号出力を生成するように、それぞれ左・右の音声入力信号に関して作用する。位相補正フィルタでは、低周波数でのチャンネル間の位相差が実質的にゼロであるものが使用される。実施例では、例えば、特定の位相応答で、全通過フィルタを使用する。一実施例では(例えば低周波で)別のチャンネルの位相と調和するために、1つのチャンネル上で単一「位相補正」フィルタを使用する。一実施例では、位相補正またはクロスオーバー・ネットワークは除去される。例えば、非相関器は、きまって低周波には遭遇しない周波数範囲にわたって機能する。この場合は、図3に示される位相補正フィルタ302、304は、位相変化や振幅変化を導入しないか、導入がオプションであるか、あるいは存在しないと考えられる。位相補正フィルタ302、304では、クロスオーバーフィルタなしで周波数選択性の非相関性処理が許容される。
【0030】
位相シフトされた音声信号は、位相シフトフィルタ302から第1の非相関フィルタ(非相関器)「A」310に供給される。位相シフトされた音声信号は、位相シフトフィルタ304から第2の非相関器「B」312に供給される。非相関器A310と非相関器B312には同様の構造的特徴、及び/又は別の特性があってもよい。しかしながら、重要なことには、非相関器310、312は異なる動作特性で機能してもよい。例えば、非相関器310は、非相関器312によって行なわれた非相関性処理よりも、大きな程度(又はより少ない程度)に非相関にする。例えば、非相関器310は乗算パラメータ用の第1の値gに従って非相関にする。その一方で非相関器312によって行なわれる非相関性処理は、乗算パラメータg’に対する第2の値で非相関にする。これらは、例えば、図6と図7に関して式1で説明される。非相関器310と312は、少なくとも閾値周波数値を超える周波数で非相関性処理を行なう。位相シフトフィルタ302は非相関器310と共に機能する。また、位相シフトフィルタ304は非相関器312と共に機能する。この結果として、閾値が300Hzと3kHzの間にある場合に、閾値より下の周波数範囲にわたってほぼ適合する併用効果が得られる。
【0031】
非相関器310、312は各々効果強化パラメータ入力信号を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。効果強化パラメータは非相関の強度に関係がある。左チャンネルと右チャンネルの間の非相関の強度を高めることは、差動チャンネルエネルギーに関連したエネルギーを増加させ、したがって、システム300に関してステレオ拡幅実効性を増加させる。任意に、結果強度パラメータ(effect strength parameter)は入力として位相シフトフィルタ302、304にも供給される。
【0032】
非相関フィルタ310の出力信号は、左のオーディオ・チャンネルに対応するものであり、非相関フィルタ312の出力信号は、左のオーディオ・チャンネルに対応するものであるが、両者はステレオ拡幅器104への入力として機能する。ステレオ拡幅器104は実質的に(例えば図1に関して)上記で説明されるように機能する。拡幅器モジュール104はこのように拡幅された左チャンネルと右チャンネルの出力ステレオ信号を生成する。それらはそれぞれの非相関にされたステレオ入力信号に対応する。
【0033】
C. 和信号/差信号を備えた例に関するクロスオーバー作用
一実施例では、周波数依存性の非相関器はクロスオーバーフィルタで実施される。クロスオーバーフィルタは和信号と差信号に作用する。ここで、音声入力信号は、和と差に関連したドメインにある(「和ドメイン/差ドメイン」)ので、信号は、変換、転換又はその他同種のものに関係がある、追加の前処理にさらされる。例えば、和ドメイン/差ドメインの入力信号は、非相関性処理に先立ってオーディオ指向性に関連したドメイン(例えば左・右の方向、「左ドメイン/右ドメイン」)で変換されてもよい。一実施例では、ステレオ拡幅モジュールは和ドメイン/差ドメイン中で実施される。追加の実施例又は代替的実施例では、ステレオ拡幅モジュールは左ドメイン/右ドメイン中で実施される。
【0034】
図4は、本発明の実施例に従って、クロスオーバーフィルタをも使用する非相関ステレオ拡幅システム400の例を示す。システム400は、和ドメインと差ドメインの音声入力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。システム400は、クロスオーバーフィルタ402を備えた和チャンネル音声入力にアクセスする。システム400は、クロスオーバーフィルタ404を備えた差動チャンネル音声入力にアクセスする。
【0035】
クロスオーバーフィルタ402、404は、和チャンネルと差動チャンネルの入力に関連したオーディオスペクトラムを多数の周波数帯に、それぞれ分割する。クロスオーバーフィルタ402、404はアクティブな高域通過フィルタと低域通過フィルタでもたらされてもよい。高域フィルタ部品は、前もって定義した交差点周波数値を超える周波数を通過させると共に、その値より下の周波数を減衰させる。低域フィルタ部品は、交差点周波数値より下の周波数を通過させると共に、その値を越えた周波数を減衰させる。
【0036】
クロスオーバーフィルタ402、404は、和と差の音声入力を低周波数成分と高周波数成分に分離するように、それぞれ機能する。実施例では、クロスオーバーフィルタ402、404は、類似しているか、あるいは実質的に同一である。例えば、ネットワーク402、404の各々の交差点周波数は両方とも、1kHzで実施される。クロスオーバーフィルタ402、404の高域通過出力信号は、それの低域通過出力信号とはある程度異なる処理をされてもよい。
【0037】
クロスオーバーフィルタ402の低域フィルタ成分の出力は、遅延要素406に供給される。クロスオーバーフィルタ404の低域フィルタ成分の出力は、遅延要素408に供給される。遅延要素406、408は同様の遅延を課してもよい。
【0038】
ここに使用される場合、用語「シャッフル」は、2つのステレオ信号にアクセスすること(例えば、受け取りとアクセス)を指すもので、2つのステレオ信号には、例えば、左信号と右信号、また対応する和と差(例えば和信号と差信号)を左信号と右信号と同時に生成することがある。ここに使用される場合、用語「シャッフル器」は、上記のシャフリング機能を行なう(例えばステレオ拡幅システムの) 部品を指す。ここに使用される場合、用語「デシャッフル」は、先にシャッフルされた2個の信号にアクセスすること(例えば、受け取りとアクセス)を指すもので、例えば和信号と差信号、および和信号と差信号を左信号と右信号(または空間に正しく指向された他のもの)に回復させたものとがある。ここに使用される場合、用語「デシャッフル器」は、上記のデシャッフル機能を行なう(例えばステレオ拡幅システムの)部品を指す。クロスオーバーフィルタ402、404の高域通過出力は、デシャッフルモジュール(デシャッフル器)418に供給される。デシャッフル器418は、各クロスオーバーフィルタ402、404からの高域通過された和信号と差信号を、左ドメインと右ドメインへ(少なくとも一時的に)実質的に変換する(例えば転換など)。デシャッフル器418は、このように高域通過した和入力と差動入力の各々に対応して、第1非相関フィルタ(非相関器)「A」410と第2非相関器「B」412に、デシャッフルされた信号を供給する。非相関器A410と非相関器B412には同様の構造的特徴、及び/又は別の特性がある。しかしながら、重要なことには、非相関器410と412は異なる作業特性で機能してもよい。例えば、非相関器410は、非相関器412によって行なわれた非相関性処理より大幅に、又はより少ない程度に非相関にしてもよい。例えば、非相関器410は乗算パラメータ用の第1の値gに従って非相関にする。その一方で非相関器412によって行なわれた非相関性処理は、乗算パラメータg’に対する第2の値で非相関にする。これらは、例えば、図6と図7に関して式1で説明される。
【0039】
非相関器410と412への効果強化パラメータ入力に対して、実施例は、ステレオフィールド幅と関係するモードに影響を与える、使用者制御可能な入力を実装する。例えばハーフモードレベルと完全なモードレベルを含む2以上の幅モードレベルは、選択的に実装される。幅モード入力は非相関の強度を調整してもよい。左チャンネルと右チャンネルの間の非相関の強度を高めることは、差動チャンネルエネルギーに関連したエネルギーを増加させ、したがって、ステレオのフィールドを広げるためにシステム400と共に使用される。左ドメイン/右ドメイン実施では、左チャンネルと右チャンネルの間のより多くの非相関性が、差動チャンネルエネルギーのエネルギーをまた増加させ、そこで、ステレオ拡幅効果の強度を増加させる。
【0040】
非相関器410と412は、少なくとも閾値周波数値を超える周波数上で非相関性処理を行なう。より低い周波数の非相関性処理をオプションとして行うこともできる。一実施例では、閾値周波数値は、300Hzから3kHz迄の周波数内にある。非相関フィルタ410の出力信号は、左信号に対応するものである。また、非相関フィルタ412の出力は右信号に関連する。そして、非相関フィルタ410の出力信号と非相関フィルタ412の出力は、リシャッフルモジュール(シャッフル器)420に提供される。
【0041】
シャッフル器420は、非相関にされた和信号と差信号を処理して、非相関にされた和信号と差信号を生成する。シャッフル器420は、加算器414に非相関にされた和信号を供給し、加算器416に非相関にされた差信号を供給する。
【0042】
遅延要素406から遅延させて低周波フィルタされた和入力信号は、加算器414にて、非相関にされると共に再度混ぜられた和信号に、180°の位相シフトを伴って再注入される。遅延要素408から遅延させられて低域通過した差入力信号は、加算器416にて、非相関にされると共に再度シャッフルされた差信号に、180°の位相シフトを伴って再注入される。位相シフトはほぼ180°になる。位相シフトはこのように、実質的に位相が異なる(out of phase)。加算器414は、和乗算器422に組み合わせた信号を、そのすぐ後に提供する。加算器416は、差乗算器424に組み合わせた信号を、そのすぐ後に提供する。低域通過フィルタされた信号成分が、交差周波数で、最大の位相整合を備えた非相関性の高域通過フィルタされた信号成分と再結合するように、180°位相シフトが選択されている。非相関フィルタの振る舞いが交差周波数で異なる別の状況においては、(位相シフトの無使用を含む)位相シフトの別の選択を行うことが、適切である。選択が主観的な音質に基づいて行なわれる場合、適切な位相シフトの選択は聞くテストによって行なわれる。
【0043】
和乗算器422と差乗算器424は各々、加算器414と加算器416に提供される、和信号と差信号の組み合わせに対して、利得をスケールし、減衰し、又は加算する。例えば、差動チャンネルを増して和チャンネルを低減することは、ステレオのフィールドを広げるために使用される。和乗算器422からの和信号は和の有限インパルス応答(FIR)フィルタ426に提供される。差乗算器424からの差信号は差動FIRフィルタ428に提供される。
【0044】
効果強化パラメータ入力も、個々の乗算器422、424、そして個々のFIRフィルタ426、428によって、アクセスされる。実施例は、ステレオフィールド幅と関係するモードに影響を与える、使用者制御可能な入力を実装している。ハーフモードレベルと完全なモードレベルを含む、2以上の幅モードレベルは、選択的に実施される。幅モード入力は、インパルス応答あるいはFIRフィルタ426、428の別の特徴か機能と同様に、和チャンネルと差動チャンネルの利得を調整する。重要なことには、和と差にあてがわれた利得は異なってもよい。
【0045】
FIRフィルタ426は、修正済の和信号に関して機能する。FIRフィルタ428は、修正済の差信号に関して機能する。さらに各々のFIRフィルタ426、428は、クロストーク取り消しとスピーカ仮想化を提供するように機能する。FIRフィルタ426、428は、クロストーク取り消し機能によって、聴取者が左信号と右信号を2つのラウドスピーカ間の空間の外から放射するように知覚することを可能にする。
【0046】
D.FIRフィルタの例
図5は本発明の一実施例による、フィルタ・データフロー500の例を示す。和チャンネルと差動チャンネル用のFIRフィルタ(図4)係数の生成は、このように示される。クロストーク取り消しフィルタ504はヘッドシャドーモデル502で実施される。一実施例では、クロストーク取り消しフィルタ504はクロストーク取り消し技術に基づく。クロストーク取り消し技術は、シュレーダーによって提案されたか実施されたようなクロストーク取り消し技術と少なくとも同じようなものとして、一般にオーディオ技術および特にステレオ音響に関係のある技術に熟練している技術者によく知られている。
【0047】
頭部伝達関数(HRTF)506は、聴取者の前に置かれ、90°の間隔で置かれた仮想スピーカに相当するもので、クロストーク取り消しフィルタ506の上に付加される。重要なことには、クロストーク取り消しフィルタ504とHRTFフィルタ506は、フィルタ結合器508に機能的に組み合わせられるか、カスケードに接続される。組み合わせたフィルタは、等化補正器とラウドスピーカ保護器(EQ)510に入力を供給する。
【0048】
EQ510は、クロストーク取り消しフィルタ504とHRTFフィルタ506が等値化されると共に組み合わせられた特性を、最終フィルタ512に提供する。最終フィルタ512は低周波数成分(例えば200Hz未満の周波数値を備えた成分)を減衰するが、それはラウドスピーカに低周波数からの保護を与える。低周波は、比較的小型の形状、パワー処理容量あるいは別の小型の特性のスピーカでは再生するのが難しく、また、歪みや過負荷に帰着することを防止する。
【0049】
周波数に基づいた非相関性の例
実施例では、比較的高周波が非相関にされる様々な方法と技術で、ここに説明されるような周波数に基づいた(例えば、周波数依存性の)非相関性処理技術を実施する。一実施例では、比較的高周波は非相関にされるが、一方で、実質的に同時に、低周波は同相にしておかれる。周波数依存性の非相関性を達成するために、一実施例は、ここに(例えば図2と図4に関して)示した例でのように、非相関フィルタと共にクロスオーバーフィルタを使用する。その代わりに、例えば、図3に示されたように、一実施例では、補償補正フィルタの使用によって低周波数中の非相関性を除去するか低減することにより、周波数依存性の非相関性を達成してもよい。
【0050】
ある実施態様では、選択的に又は排他的に信号の位相に影響を与える全通過非相関性処理を使用する。図6は本発明の実施例による非相関フィルタ600の例を示す。非相関性処理は、ここに説明されたように、計算上の観点から比較的あるいは著しく効率的である。例えば、ここに説明された非相関器は、2つのタップ(例えば2つの乗算器と2つの加算器)、および遅延要素602で提供される1つの遅延線で機能する。加算器604は、非相関器600への入力にアクセスする。
【0051】
加算器604、606は加算を行なう。乗算器608、610は乗算を行なう。乗算器610は遅延要素602と入力を共有し、それと同時に加算器606に出力を供給する。遅延要素602の出力は、また乗算器608に入力を供給する。加算器604は、音声入力および遅延要素602からの乗算器608の出力からの入力を受け取る。加算器606は、非相関器600からの出力を提供する。
【0052】
一実施例では、非相関フィルタの伝達関数H(z)は、次の式1に従って説明される。
[数1]
H(z)=(g+Z−N)/(1+g・Z−N) (式1)
式1では、gは[−1,1]に対応する範囲中の実数で、乗算器608、610の機能に関連した値を表わす。また、Nは遅延要素602に関係しているディレイ値を表わす。例えば、周波数が48kHzの信号に関して得られた25個のサンプルに相当するディレイ値を備えた実施例では、音声入力を有効に非相関にするために、より高い周波数にわたって十分な位相変化を生成する。
【0053】
実施例の中で、gに対する異なる値を備えた関数と同様の非相関器、あるいは異なる非相関フィルタが、左右のチャンネル(または和チャンネルと差動チャンネル)で使用される。例えば上記の非相関器ペア210と212、310と312、又は410と412(それぞれ図2、図3と図4に関してここに説明された)中の非相関器の各ペア中の一つは値gで機能し、各ペア中の他方の非相関器はg'の値で機能する。非相関器210、310又は410の1つ以上は値gで機能する。そして、非相関器212、312又は412の1つ以上は値g'で機能する。非相関器210と212、310と312、410と412の各々には、同様の構造的特徴と別の特性があってもよい。しかしながら、重要なことには、それらは各々、各ステレオ拡幅システム内の別の非相関器とは異なっている動作特性で機能してもよい。ここで、絶対値|g−g’|=0の場合には、実質的に非相関性は生じない。gが式1に関して[−1,1]の範囲中の実数であり、ここで|g−g’|=2の場合には、非相関性の程度が最大化される。重要な非相関性は、|g−g’|の値が0.8〜1.6の範囲で存在する。実施例では、同様の(または同等の)遅延長さは、個々の非相関器と関連しており、それは一様で、実質的に一定の位相包絡を(例えば均等目盛上で)可能にする。一実施例では、gとg'に対して、実質的に等しい遅延で実質的に同等であるが、反対の符号である値、即ち一方の符号は正数で、他方の符号である負数を有する非相関器で機能する。一実施例では、各システムでの非相関器のうちの一方又は他方は、遅延機能と有効に置換される(例えば、交換される)。その場合には、周波数に関連する移相は、唯一の非相関器中で行なわれる。左・右の音声入力チャンネルを異なって非相関フィルタリングすることによって、周波数の全範囲で位相差が生成される。g(またはg')に対する異なる値の使用によって、異なる位相応答は、左チャンネルと右チャンネル(または和ドメインと差ドメイン)について得られる。左チャンネルと右チャンネルの位相応答の変更によって、チャンネル間の非相関が生成される。
【0054】
図7は、実施例における振幅と位相応答の画面例700を示す。画面例700は、左チャンネルと右チャンネル(それぞれ721、722)について、非相関の実施における振幅応答特性トレース710と位相応答プロット720を有する。ここで、方程式1中の値gは、左チャンネル非相関器用のg=0.8と、右チャンネル非相関器用のg’=0.8に相当する。トレース710では、振幅応答特性715は、左右のチャンネル応答の両方について実質的に全周波数範囲にわたって、約0デシベル(dB)を走る。プロット720では、トレース721は左オーディオ・チャンネルに対応し、トレース722は、オーディオ・チャンネルに対応する。トレース721、722は、左右のチャンネルがおよそ1kHzの周波数値で非相関の交差点(decorrelation crossover point)を共有することを示す。
【0055】
一実施例では、非相関性の程度は、乗算器608、610に関連した係数g、g'の変更により制御される。「g」係数の変更は、チャンネル間の位相差に影響を与える。効果強化パラメータと幅モードは、ここに説明されたように、アンプ608、610のゲイン係数への変更に関係している。したがって、一実施例では、ゲイン係数値の変更により非相関性の量(例えば強度)を制御するために機能する。例えば、選択可能(例えば、調整可能、プログラム可能)な幅モードはこのように実施される。
【0056】
図8は、一実施例における異なる利得設定の左チャンネルと右チャンネルの間の位相応答差をプロットする画面例800を示す。トレース801は、右チャンネルについて−0.8で、左チャンネルについて0.8のgの設定値を備えたオーディオ・チャンネル間の位相応答差の例を示す。トレース802は、右チャンネルについて−0.4で、左チャンネルについて0.4のgの設定値を備えたオーディオ・チャンネル間の位相応答差の例を示す。かくて、トレース801は「全幅モード」位相応答を表わす。かくて、トレース802は「幅モード」の半分位相応答を表わす。トレース801とトレース802は、各々およそ1kHzの1つの周波数値で交差点を共有する。
【0057】
クロスオーバーフィルタの例
ある実施態様では、クロスオーバーフィルタ回路(例えば、クロスオーバーフィルタ202、204と402、404;それぞれ図2と図4)を使用する。それは比較的高周波数領域成分と比較的低周波数領域成分を(例えば高周波成分の非相関性に先立って)分離する。図9は本発明の一実施例によるクロスオーバーフィルタ900を示す。
【0058】
クロスオーバーフィルタ900は全帯域音声入力信号を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。入力信号は、無限インパルス応答(IIR)フィルタ901と混合器(加算器)902に供給される。例えばより急勾配のフィルタの裾(filter skirt)で同時にオーバーラップのより少ないフィルタのような、IIR特性以外のものを備えたフィルタも使用される。一実施例では、IIRフィルタ901は二次のIIRフィルタとして実施される。一実施例では、IIRフィルタ901はバターワースの特性で実施される。一実施例では、IIRフィルタ901は二次のバターワースフィルタとして実施される。IIRフィルタは、またチェビチェフ(Chebyshev)、ベッセル、楕円や別のIIR特性で実施されてもよい。実施例の中で単一の二次のIIRフィルタ901と単一の混合器902を使用することは、実施するクロスオーバーフィルタ900に関連した計算上のリソースを節約する。クロスオーバーフィルタ900は、全帯域入力信号を低域通過信号成分と高域通過信号成分に分割する。
【0059】
図10は、実施例によるクロスオーバーフィルタに関連した振幅と位相応答のプロットの画面例1000を示す。画面例1000は振幅プロット1010と位相応答プロット1020を有する。振幅プロット1010は低域通過応答トレース1011、高域通過応答トレース1012およびトレース1015を有しており、トレース1015は復元された信号に対応する。位相応答プロット1020は低域通過応答トレース1021、高域通過応答トレース1022およびトレース1025を有しており、トレース1025は復元された信号に対応する。
【0060】
高域フィルタ応答は一次傾斜に接近する。ある実施態様では、交差点のために比較的高い周波数値を使用する。したがって、一次傾斜に接近する高域フィルタ応答は、それによる非相関性処理を実施する観点からみて十分である。
【0061】
図11は、一実施例による、非相関フィルタとクロスオーバーフィルタにそれぞれ関連して、位相応答と振幅のプロットの分離した画面例1100を示す。画面例セグメント1110では、左チャンネルトレース721と右チャンネルトレース722(図7)の非相関器に関連した位相応答をプロットする。
【0062】
ある実施態様では、実質的に直線的に間隔を置かれた位相包絡期間で実施された非相関フィルタを使用する。対数比でプロットされると、高周波数での位相差は、相対的に低い周波数と比較して、相対的に高周波数ではより急速に変わる。
【0063】
1kHz未満の周波数では、プロット1110において実質的に位相が異なる。音響心理学の視点から、非相関にされ位相の異なる左・右の低周波数信号は、人間の聴取者によって(例えば実質的に正常な両耳聴で)いくぶん弱められた低音コンテンツと知覚される。弱められた低音コンテンツは、少なくとも一部分が、位相の異なるチャンネル・コンテンツから得られる相殺的干渉による低音周波数の相殺に起因する。さらに、幻の(例えば、仮想の)防音スタジオセンターの位置は、片側(または別の片側)へ移されるように、知覚される。防音スタジオセンターを移すことによって、いくぶん不自然なリスニング体験が引き起こされると知覚される。したがって、一連の不適当な位相差1113が1kHz未満の周波数で生じる。
【0064】
一実施例は、比較的高周波で非相関にするよう機能し、そして比較的低周波の非相関性を低減し、最小化し、又は防ぐように機能する。一実施例は、48kHzの非相関器の遅延線で例えば25のサンプルの割合に対応する遅延を備えて、1kHzの周波数で交差点を実装する。1kHzの周波数の交差点では、左チャンネルと右チャンネルの間の非相関フィルタの位相差は最小である(例えば0、又は約0)。
【0065】
高周波フィルタ部品は、一次ロールオフ(あるいは一次に近似するロールオフ)で実施される。したがって、非相関フィルタは、1kHzのクロスオーバー周波数より下でも一定の効果を保持する。しかしながら、非相関器の影響は周波数とともに減少する。実施例では、非相関性効果の減少は、周波数の減少と共に著しい(例えば、恐らく実質的)。
【0066】
1kHzで、左・右の非相関器出力は実質的に同相である。しかしながら、1kHzで、左・右の非相関器出力は、非相関器入力に対して180°位相が異なる(あるいはほぼ、そのようである)。そこで一実施例は、非相関性の後に実質的に位相の異なる低周波を再注入する(例えば混合器214と216、及び/又は414と416と一緒に;それぞれ図2と図4参照)。
【0067】
かくて一実施例は、10cm以下でのように比較的小さな距離だけ離れているラウドスピーカで再生されたオーディオ・コンテンツを拡幅する(ステレオイメージ幅を拡大する)。かくて、ステレオ拡幅は、一実施例によれば、携帯電話、携帯情報端末、MP3プレーヤ(または別のコーデックと関係するか、別のフォーマットに一致するオーディオ・コンテンツのプレーヤ)およびゲーム機器のようなポータブル音声再生装置、関連する別の娯楽機器や携帯機器、ラップトップやパームトップ・コンピューターおよび同種のもの、のような装置と機器と共に、経済的に使用される。一実施例では、ラウドスピーカ周波数応答を補うフィルタは、FIRフィルタ(例えばFIRフィルタ426と428; 図4参照)に含まれている。したがって、実施例は、ステレオ拡幅効果を調整すること(例えば、最大化)、及び/又は様々なハンドセット、ヘッドセットおよびその他同種のものに仕立てるために、カスタマイズされる。様々なハンドセット、ヘッドセットおよびその他同種のものは、携帯電話および別の装置や機器と共に使用される。
【0068】
III 実施例
本発明の実施例は、下の段落中に列挙された実施例の1つ以上に関係がある。
【0069】
1. 少なくとも2個のラウドスピーカを有する音響再生システムへのステレオ信号入力にアクセスするステップであって、
前記ステレオ信号は複数の周波数成分を有しており、
前記少なくとも2個のラウドスピーカは互いの近くに配置されると共に、
前記周波数成分の周波数範囲を非相関にするステップと、
前記非相関ステップに基づいて前記音響再生システムのステレオ音響の応答を拡幅するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【0070】
2. 前記実施例1に記載される方法において、さらに
前記ステレオ信号を前処理するステップであって、前記前処理ステップは前記非相関ステップを有することを特徴とする方法。
【0071】
3. 前記実施例1に記載される方法において、
前記近く(proximity)が、前記非相関ステップに先立って、前記ステレオ音響の応答に関連したフルネス品質を部分的に低減するような、前記少なくとも2個のラウドスピーカの距離間隔に関連することを特徴とする方法。
【0072】
4. 前記実施例3に記載される方法において、前記距離間隔が20センチメートルを超えないことを特徴とする方法。
5. 前記実施例3に記載される方法において、前記距離間隔が10センチメートルを超えないことを特徴とする方法。
6. 前記実施例1に記載される方法において、前記周波数範囲が高周波に対応することを特徴とする方法。
7. 前記実施例6に記載される方法において、前記非相関ステップが閾値周波数値を超える前記高周波で行なわれることを特徴とする方法。
8. 前記実施例7に記載される方法において、前記閾値周波数値が300Hzから3kHzの間の周波数値の範囲内にあることを特徴とする方法。
【0073】
9. 少なくとも2個のラウドスピーカを有する音響再生システムへのステレオ信号入力にアクセスするための手段であって、
前記ステレオ信号は複数の周波数成分を有しており、
前記少なくとも2個のラウドスピーカは互いの近くに配置され、
前記周波数成分の周波数範囲を非相関にする手段と、
前記非相関手段の機能に基づいて前記音響再生システムのステレオ音響の応答を拡幅する手段と、
を備えるシステム。
【0074】
10. 前記実施例9に記載されるシステムにおいて、さらに
前記ステレオ信号を前処理する手段であって、前記前処理手段は前記非相関手段を有することを特徴とするシステム。
11. 前記実施例10に記載されるシステムにおいて、
前記前処理手段は、さらに、前記ステレオ信号入力をフィルタリングする手段を有することを特徴とするシステム。
【0075】
12. 前記実施例11に記載されるシステムにおいて、
前記フィルタリング手段は、クロスオーバーフィルタ又は位相補正フィルタの少なくとも一方を有し、前記フィルタリング手段は、別の周波数範囲から非相関性周波数範囲を分離することを特徴とするシステム。
【0076】
13. 前記実施例12に記載されるシステムであって、
前記別の周波数の成分は、非相関性周波数範囲の周波数値より低い周波数値を有する周波数成分を有し、
前記前処理手段は、さらに、前記非相関性周波数範囲の周波数値より低い前記周波数値に遅延を加えるための手段を有することを特徴とするシステム。
【0077】
14. 前記実施例13に記載されるシステムであって、
前記ステレオ入力に関係している指向性成分に基づくドメイン、又は、前記ステレオ入力に関係している和と差に基づくドメインの1つ以上について、前記システムが機能することを特徴とするシステム。
【0078】
15. 前記実施例14に記載されるシステムであって、前記ステレオ入力に関係している和と差に基づくドメインについて、前記システムがさらに
前記指向性のベースのドメイン内への前記非相関手段の機能に先立って、前記ステレオ入力をデシャッフルする(deshuffling)手段を有することを特徴とするシステム。
【0079】
16. 前記実施例15に記載されるシステムであって、前記システムがさらに
前記非相関手段から前記和と差のドメインに戻るように、非相関にされた信号を再シャッフリングする(reshuffling)手段を有することを特徴とするシステム。
【0080】
17. 前記実施例16に記載されるシステムであって、さらに
前記遅延させた周波数値と共に前記再シャッフリング手段から再シャッフリングされた信号を混ぜる手段であって、前記遅延させた周波数値は前記非相関性周波数範囲の周波数値よりも低い手段を有することを特徴とするシステム。
【0081】
18. 前記実施例17に記載されるシステムであって、
前記混ぜる手段は、前記再シャッフリングされた信号に対して相対的に180度の位相シフトで前記遅延させた周波数値を混ぜると共に、前記遅延させた周波数値は前記非相関性周波数範囲の周波数値よりも低いことを特徴とするシステム。
19. 前記実施例17に記載されるシステムであって、さらに
前記混ぜる手段から、混ぜられた信号をスケーリングする手段を有することを特徴とするシステム。
20. 前記実施例9又は実施例19の何れか一方又は双方に記載されるシステムであって、
前記拡幅手段が、拡幅するフィルタリング手段を有することを特徴とするシステム。
21. 前記実施例20に記載されるシステムであって、
前記拡幅するフィルタリング手段が有限インパルス応答フィルタで構成されることを特徴とするシステム。
【0082】
22. 前記実施例20に記載されるシステムであって、
前記拡幅するフィルタリング手段が、
前記システムで処理された少なくとも2個の信号に関連したクロストーク成分を相殺する手段、
スピーカ・アレイを仮想化する手段、又は
頭部伝達関数(head related transfer function)に応答する手段、
の一以上から構成されることを特徴とするシステム。
【0083】
23. 前記実施例22に記載されるシステムであって、
前記拡幅するフィルタリング手段が、さらに、ヘッドシャドーモデル又は等化補正成分の一以上から構成されることを特徴とするシステム。
【0084】
24. 前記実施例11に記載されるシステムであって、前記非相関手段が、
遅延要素、
前記フィルタリング手段から入力をとる第1の混合器、
遅延要素から入力をとる第2の混合器、
前記第1混合器から入力をとる第1のアンプ、
前記遅延要素から入力をとる、第2のアンプ、
とを備え、前記第1混合器は、前記フィルタリング手段からの入力を前記第2のアンプの出力と混ぜ、
前記第2の混合器は、前記遅延要素からの出力を非相関にされた信号を生成する前記第1のアンプの出力と混ぜる、
ように構成されることを特徴とするシステム。
【0085】
25. 前記実施例11に記載されるシステムであって、前記フィルタリング手段が、無限インパルス応答型フィルタを含むことを特徴とするシステム。
26. 前記実施例25に記載されるシステムであって、前記無限インパルス応答型フィルタがバターワースフィルタを含むことを特徴とするシステム。
27. 前記実施例25に記載されるシステムであって、前記無限インパルス応答型フィルタが二次のバターワースフィルタを含むことを特徴とするシステム。
28. 前記実施例25に記載されるシステムであって、前記無限インパルス応答型フィルタが低域フィルタ関数を行なうことを特徴とするシステム。
29. 前記実施例28に記載されるシステムであって、前記フィルタリング手段が高域フィルタ関数を行なう混合器を有し、
前記混合器は、前記ステレオ入力信号と実質的に位相の異なる前記無限インパルス応答型フィルタの出力を混ぜることを特徴とするシステム。
【0086】
30. 前記実施例9に記載されるシステムであって、
前記近く(proximity)が、前記非相関手段の機能に先立って、前記ステレオ音響の応答に関連したフルネス品質を部分的に低減するような、前記少なくとも2個のラウドスピーカの距離間隔に関連することを特徴とするシステム。
【0087】
31. 前記実施例30に記載されるシステムにおいて、前記距離間隔が20センチメートルを超えないことを特徴とするシステム。
32. 前記実施例30に記載されるシステムにおいて、前記距離間隔が10センチメートルを超えないことを特徴とするシステム。
33. 前記実施例9に記載されるシステムにおいて、前記周波数範囲が高周波に対応することを特徴とするシステム。
34. 前記実施例33に記載されるシステムにおいて、前記非相関手段が閾値周波数値を超える前記高周波で行なわれることを特徴とするシステム。
35. 前記実施例34に記載されるシステムにおいて、前記閾値周波数値が300Hzから3kHzの間の周波数値の範囲内にあることを特徴とするシステム。
【0088】
36. 1つ以上のプロセッサで実行された時、前記実施例9乃至35の何れか1項又はそれ以上に記載されるシステムを構成する命令を含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
37. 1つ以上のプロセッサで実行された時、コンピュータシステムにステレオ音響拡幅と関係するステップを行なわせる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記ステップは、前記実施例1乃至8の何れか1項以上に記載されるステップを含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【0089】
38. ステレオ音響拡幅に関係のあるステップを行なうように構成された集積回路装置であって、
前記ステップは、前記実施例1乃至8の何れか1項以上に記載されるステップを含むことを特徴とする集積回路装置。
39. ステレオ音響拡幅システムであるように構成された集積回路装置であって、
前記システムは、前記実施例9乃至35の何れか1項に記載されるシステムを構成することを特徴とする集積回路装置。
40. 前記実施例38又は39の一項以上に記載される集積回路装置であって、
前記集積回路装置は、プログラマブルロジックデバイス、又は特定用途向け集積回路の少なくとも一方を有することを特徴とする集積回路装置。
41. 前記実施例40に記載される集積回路装置であって、
前記プログラマブルロジックデバイスは、マイクロコントローラ、またはフィールドプログラマブルゲートアレイの少なくとも一方を有することを特徴とする集積回路装置。
【0090】
42. 処理エンティティ(processing entity)で実行された時、前記実施例38乃至41の何れか1項以上に記載される集積回路を構成する命令を含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
43. ステレオ音響拡幅に関係のあるステップを行なうように構成された装置であって、
前記ステップは、前記実施例1乃至8の何れか1項以上に記載されるステップを含むことを特徴とする装置。
44. ステレオ音響拡幅システムを構成する装置であって、
前記システムは、前記実施例9乃至35の何れか1項以上に記載されるステップを含むことを特徴とするシステム。
45. 前記実施例43又は44の一項以上に記載される装置であって、
前記装置は、通信装置、コンピュータデバイス、または娯楽装置の少なくとも一つであることを特徴とする集積回路装置。
46. 処理エンティティ(processing entity)で実行された時、前記実施例43乃至45の何れか1項以上に記載される装置を制御する命令を含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【0091】
47. 20cm未満の間隔である1組のラウドスピーカで再生された時、拡幅された印象を提供するために、左右の入力信号を有するステレオ入力を修正する方法であって、
非相関にされた左チャンネル信号と非相関にされた右チャンネル信号を生成するために、非相関処理により前記左右の入力信号を修正するステップであって、前記非相関にされた左チャンネル信号を、左チャンネル位相応答により前記左入力信号に関して相対的に位相変化させ、前記非相関にされた右チャンネル信号を、右チャンネル位相応答により前記右入力信号に関して相対的に位相変化させるステップと、
ステレオ拡幅処理によって、前記非相関にされた左チャンネル信号と前記非相関にされた右チャンネル信号を修正するステップと、
前記ステレオ拡幅処理から前記1組のラウドスピーカへ出力を供給するステップと、
を備え、前記左チャンネル位相応答は閾値周波数より低い周波数で前記右チャンネル位相応答にほとんど同じに接近し、前記左チャンネル位相応答は前記閾値周波数以上の周波数で前記右チャンネル位相と異なり、ここで前記閾値周波数は300Hzから3kHzの間にあることを特徴とする方法。
【0092】
等価物、拡張、代案、その他
ステレオ拡幅の実施例は以上のように記述される。上述の明細書では、本発明の実施例が態様毎に多数の特定の詳細を参照して記述された。したがって、何が発明であるかの唯一かつ排他的な標識であって発明であるとして出願人によって意図されるのは、本出願に基づいて許可される一組の請求項であって、いかなる後の補正も含まれる。そのような請求項に含まれる術語について明らかにここに明記されるいかなる定義も、請求項で使用される術語の意味を決定する。従って、請求項に明らかに記載されていないような、制限、要素、特性(property)、機能、利点あるいは属性は、形はどうあれ請求項の適用範囲を制限しない。従って、明細書と図面は、制限的な趣旨ではなく本発明を説明するものに過ぎない。
【技術分野】
【0001】
[関連するアメリカ合衆国出願]
本出願は、2008年2月14日にギョーム・ポタード(Guillaume Potard)によって申請された、発明の名称がステレオ音響の拡幅(ドルビー・ラボラトリーズ参照番号D08003US01参照)である、同時出願中の関連する米国仮特許出願番号61028654への優先権を主張する。それは本出願の譲受人に譲渡され、参照によってここに完全に組込まれる。
【0002】
本発明は、一般的にオーディオ再生に関する。さらに詳しくは、本発明の実施態様はステレオ音響の拡幅(stereophonic widening)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
豊かさ、フルネス、奥行きおよび広大さのような音響心理学的に知覚されたオーディオ特質は、聴取者のオーディオ体験に関係のある「防音スタジオ」について説明する。そのような特質は、聴取者の防音スタジオの全体的な空間認知と同様に、聴取者の主観的なオーディオ関与に影響を与える。ステレオ音響のオーディオ(「ステレオ」)は、多数のラウドスピーカによる音の再生のために、少なくとも2個の別個の又は独立したオーディオ・チャンネルを使用する。ステレオ音声は音を、それが多数の方向から知覚されるように、再生する。
【0004】
ステレオ音声は、本質的に正常な両耳聴を持った人のために、ある意味では、聴覚的に充実したように考えられる、ある程度の自然な音のリスニング体験を提供する。ステレオ音声は、ステレオ音響の投影を使用するが、そこで、防音スタジオの要素あるいは成分を生成するために、オーディオ・コンテンツの録音された音成分に関連した相対的位置が、コード化され再生される。ラウドスピーカの配置と距離間隔は防音スタジオの認知に影響を与える。
【0005】
この節は、追求することができる手法を説明するが、必ずしも以前に着想されたか追求された手法であるとは限らない。したがって、他に指摘がない限り、この節に記述された手法が、単にこの節に述べているとの理由だけで先行技術となると考えられるべきでない。同様に、他に指摘がない限り、1つ以上の手段についての問題点が、この節に基づいて任意の先行技術中で認識されていると考えられるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明は、添付の図面内では、具体例として示されるもので、図面は発明の制限を目的とするものではない。添付の図面内で、同一の要素には同一の数字を付してある。
【0007】
【図1】図1は本発明の実施例による非相関(decorrelating)ステレオ拡幅システムの一例を示す。
【図2】図2は、本発明の実施例によるクロスオーバーフィルタを備えた非相関ステレオ拡幅システムの一例を示す。
【図3】図3は、本発明の実施例による全通過フィルタを備えた非相関ステレオ拡幅システムの一例を示す。
【図4】図4は、本発明の実施例によるクロスオーバーフィルタを使用する非相関ステレオ拡幅システムの一例を示す。
【図5】図5は本発明の実施例によるフィルタバンクの一例を示す。
【図6】図6は本発明の実施例による非相関フィルタの一例を示す。
【図7】図7は実施例による振幅と位相応答の画面例を示す。
【図8】図8は実施例による異なる利得設定でオーディオ・チャンネル間の位相応答差をプロットする画面例を示す。
【図9】図9は本発明の実施例によるクロスオーバーフィルタを示す。
【図10】図10は実施例によるクロスオーバーフィルタに関連した振幅と位相応答のプロットの画面例を示す。
【図11】図11は実施例による非相関フィルタとクロスオーバーフィルタにそれぞれ関連して、位相応答と振幅プロットの画面例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ステレオ音響の拡幅がここに説明される。以下の記述では、説明のために、多数の具体的詳細が、本発明についての完全な理解を得られるようにするために述べられる。しかしながら、本発明はこれらの詳細なしで実施されてもよいことは明らかである。他の場合では、本発明を不必要に複雑にし、難解にし、或いは不明瞭にすることがないようにするために、周知の構造と装置については余すところなく詳細には記述しない。
【0009】
I.概観
ここに説明された実施態様は、ステレオ音響の拡幅に関係がある。ステレオ音響の応答を拡幅することは、2つ以上のラウドスピーカがある音響再生システムで達成される。音響再生システムへのステレオ信号入力はアクセスされる(例えば、受け取られアクセスされる)。ステレオ信号入力は多数の周波数成分を含む。ラウドスピーカは互いの近くに配置されている。一連のステレオ信号の周波数成分が非相関にされる。例えば、実施例では比較的高周波領域を非相関にするが、しかしより低い周波数範囲を非相関にはしない。ステレオの信号の前処理により、周波数範囲が非相関にされてもよい。音響再生システムのステレオ音響の応答は非相関性に基づいて拡幅される。
【0010】
ラウドスピーカの距離間隔は10センチメートル未満から20センチメートル(10〜20cm)までである。ラウドスピーカの隣接間隔が狭すぎると、少なくとも一部分、音響再生システムのステレオ音響の応答でフルネスを低減する。しかしながら、実施例では非相関性を使用して、それが接近して隣接したスピーカでもステレオ音響の拡幅を許容するように機能する。非相関性処理(decorrelation)は、前処理機能としてステレオ拡幅と関係する処理に先立って行なわれる。周波数範囲は比較的高周波に相当する。従って、非相関性処理は、閾値周波数値を超える周波数上で行なわれる。一実施例では、閾値周波数値は、300ヘルツ(300Hz)と3キロヘルツ(3kHz)の間周波数範囲内にある。
【0011】
本発明の実施態様は、多少接近して置かれたスピーカ(例えば、20cm以下の距離間隔にある「左」と「右」の一組のスピーカ)として機能するのに適合する。例えば、位相キャンセル(phase cancellation)を回避して、適切な低音応答を生成するために、当該スピーカが実質的に低周波の同相であるそれぞれの信号で駆動される。(例えば300Hz−3kHzのしゃ断周波数を越えた)高周波での非相関は、時々中央画像シフト(例えば、オーディオ・コンテンツのセンターパニング)に関係しているような、気をそらす可能性があり望ましくない効果を低減する。中央画像シフトはステレオ拡幅を妨げたり減少させたりする場合があり、より低い周波数で非相関性を生じる。さらに、音響源のスペクトルは空間的に広げられるが、より低い周波数では多少中心に集められた位置にあり、より高い周波数では多少大きな空間の拡幅がある。したがって、高周波非相関性を使用する実施例では、聴覚的に認識可能な審美的音質を達成する。
【0012】
実施態様はステレオ拡幅システムに関係がある。図1は本発明の一実施例によるステレオ拡幅システム100を示す。ステレオ拡幅システム100には非相関フィルタモジュール(非相関器)102があり、これはステレオ信号を拡幅する前処理する。ステレオ信号入力はいくつかの信号成分を含んでいる。それは右チャンネル音声入力成分と左チャンネル音声入力成分を含んでいる。
【0013】
非相関器102は左チャンネル音声入力と右チャンネル音声入力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。非相関器102は、閾値周波数値を超える周波数で非相関性処理を行なう。低い周波数への非相関性処理は行なわれない。実施例では、閾値周波数値が、包括的に300Hzから3kHzの間にある範囲の周波数内にある。
【0014】
非相関器102は、さらに効果強化パラメータ(effect strength parameter)入力信号を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。効果強化パラメータ入力信号は、例えばシステム100のチャンネルや構成要素に関連して、非相関性処理(例えば非相関の強度)及び/又はスケーリング利得にある程度の関係がある。例えば、左チャンネルと右チャンネルの間の非相関の強度を高めることによって、差動チャンネル(difference channel)エネルギーに関連するエネルギーが増加され、したがって、システム100のステレオの拡幅実効性を強くする。非相関器102は非相関にされた音声信号をステレオ拡幅モジュール104に出力する。
【0015】
拡幅モジュール(拡幅器)104は、非相関器102の非相関にされた出力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。拡幅器104は、ステレオ信号を拡幅することに関係のある処理を行なう。拡幅モジュール104は、もとのステレオ入力信号から拡幅された出力ステレオ信号を生成する。したがって、ステレオ出力信号は右チャンネル音声出力成分と左チャンネル音声出力成分を含んでいる。
【0016】
拡幅モジュール104は、さらに効果強化パラメータ入力信号を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。効果強化パラメータ入力信号は、システム100のチャンネルや成分に関連するスケーリング利得、及び/又は非相関の強度に関係がある。例えば、スケーリング利得は合計チャンネルと差動チャンネルに関係がある。合計チャンネルに対して相対的に差動チャンネルを押し上げることは、ステレオ領域を拡幅するために使用される。
【0017】
本発明の実施態様は、携帯電話や携帯機器のような様々な電子オーディオ装置や機器に実施され、使用され、配置され及び/又は配列される。実施態様は、例えばスピーカ間隔が比較的狭い場合(例えば10〜20cm未満のスピーカの距離間隔が予期される場合)、及び/又は比較的低周波でロールオフする場合(例えば約1kHzなど)に、電子的オーディオ装置で表現されるステレオイメージの幅を著しく増加させるように機能する。
【0018】
実施態様は、非相関性処理とステレオ拡幅機能を行なうように、コンピュータ読取り可能な媒体で記憶された命令を実行し、コンピュータシステム又は実質的にコンピュータ化された(ディジタルなど)音響再生装置、通信装置、ネットワーク装置又は機器を制御する1つ以上のプロセッサで実施される。
【0019】
実施態様は、特定目的IC(ASIC)、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)あるいはプログラマブル論理デバイス(PLD)を含む(しかしこれらに制限されない)集積回路(IC)のような回路や装置で実施される。本実施態様に関連したステレオ拡幅機能と非相関機能は、ASICのような装置の構造と設計の態様で生じてもよい。その代わりに又は加えて、ステレオ拡幅機能と非相関機能は、プログラム命令、論理状態及び/又はマイクロコントローラ、PLD及びFPGAのようなプログラム可能なICに適用される論理ゲート配置でもたらされてもよい。
【0020】
II. 非相関ステレオ拡幅システムの例
実施態様は、高周波数の閾値よりも上方の、比較的高い音声周波数で非相関性を促進するように機能する。ここで、閾値はおよそ300Hzから3kHzまでの範囲内にある。一実施例では、高周波数で促進されることに加えて、より低い周波数については非相関がオプションである。
【0021】
A.クロスオーバーフィルタの例
一実施例では、周波数依存の非相関器はクロスオーバーフィルタ回路網(クロスオーバーフィルタ)で実施される。クロスオーバーフィルタ回路網は左・右の音声入力信号に作用する。図2は、本発明の一実施例に従って、クロスオーバーフィルタ202、204を備えた非相関ステレオ拡幅システム200の例を示す。システム200は左・右の音声入力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。システム200は、クロスオーバーフィルタ202を備えた左チャンネル音声入力にアクセスする。システム200は、クロスオーバーフィルタ204を備えた右チャンネル音声入力にアクセスする。
【0022】
クロスオーバーフィルタ202、204は、それぞれ左右のチャンネル入力に関連したオーディオスペクトラムを、多数の周波数帯に分割する。クロスオーバー202、204は、アクティブな高域通過フィルタと低域通過フィルタで有効にされる。高域フィルタ部品は、前もって定義した交差点周波数(crossover point frequency)値を超える周波数を通過させ、その値より下の周波数を減衰する。低域フィルタ部品は、交差点周波数値より下の周波数を通過させ、その値を越えた周波数を減衰する。
【0023】
クロスオーバーフィルタ202、204は、それぞれ左・右の音声入力を低周波数成分と高周波数成分に分離する。一実施例では、クロスオーバーフィルタ202、204は、類似しているか、あるいは実質的に同一である。例えば、ネットワーク202、204の各々の交差点は両方とも、1kHzで実施される。クロスオーバーフィルタ202、204の高域通過出力は、それぞれ第1の非相関器「A」と第2の非相関器「B」212に入力を供給する。非相関器A210と非相関器B212には同様の構造的特徴、及び/又は別の特性を有する。しかしながら、重要なことには、非相関器210と212は異なる動作特性で機能してもよい。例えば、非相関器210は、非相関器212によって行なわれた非相関性よりも、大きな程度(又はより少ない程度)に非相関にする。例えば、非相関器210は乗算パラメータ用の第1の値gに従って非相関にする。その一方で非相関器212によって行なわれた非相関性は、乗算パラメータg’に対する第2の値で非相関にする。これらは、例えば、図6と図7に関して式1で説明される。
【0024】
クロスオーバーフィルタ202の低域フィルタ成分の出力は、遅延要素206に供給される。クロスオーバーフィルタ204の低域フィルタ成分の出力は、遅延要素208に供給される。遅延要素206、208は同様の遅延を賦課する。
【0025】
クロスオーバーフィルタ202の高域フィルタ成分の出力は、非相関フィルタ(非相関器)210に供給される。クロスオーバーフィルタ204の高域フィルタ成分の出力は、非相関器212に供給される。非相関器210、212は、少なくともクロスオーバー閾値周波数値を超える周波数上で非相関性処理を行なう。より低い周波数の非相関性処理はオプションである。非相関器はすべての周波数にわたって作動してもよいが、クロスオーバーフィルタは低周波で非相関器を回避するように機能する。2つの非相関器は、お互いに対して非相関にする出力を、それぞれ提供するために使用される。その結果、非相関器210の出力は、非相関器212の出力から非相関にされる。非相関器210と非相関器212の各出力が非相関にされる程度は異なり、及び/又は可変であることは、認識されるべきである。
【0026】
非相関フィルタ210、212は、各々効果強化パラメータ入力信号を任意に受け取り、及び/又はこれにアクセスする。効果強化パラメータは非相関の強度に関係がある。左右チャンネルの間の非相関の強度を高めることは、差動チャンネルエネルギーに関連したエネルギーを増加させ、したがって、システム200に関してステレオ拡幅実効性を増加させる。
【0027】
遅延要素206と非相関フィルタ210は、左のオーディオ・チャンネルに相当するものであるが、その出力は加算器214で合計される。遅延要素208と非相関フィルタ212は、右のオーディオ・チャンネルに相当するものであるが、その出力は加算器216で合計される。加算器214、216は各々非相関にされた信号を出力するが、この非相関信号はステレオ拡幅器104に入力を供給する。ステレオ拡幅器104は、例えば図1に関して上記で実質的に説明されたように、機能する。拡幅モジュール104は、このように拡幅された左右のチャンネルの出力ステレオ信号を生成するもので、これはそれぞれの非相関ステレオ入力信号に対応する。
【0028】
B.位相補正フィルタの例
一実施例では、周波数に関連する(例えば、依存する)非相関器は、位相シフトフィルタで実施される。図3は、位相シフト(例えば位相補正)フィルタ302、304を備えた非相関ステレオ拡幅システム300の例を示す。ここに使用されるように、「位相シフト」、「位相補正」という用語は、フィルタに関して交換的に使用される。実施例では、位相シフトフィルタ302、304は全通過フィルタで実施される。図3に図示されるように、位相シフトフィルタ302、304の1つ以上が全通過位相シフトフィルタとして実施される一方で、オーディオ再生とステレオ音響に関係のある分野に熟練している技術者によって認識されるべき事として、(図3の位相フィルタ302、304としてここに表わされる)別のフィルタが、位相補正に使用される。
【0029】
システム300は左・右の音声入力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。システム300は、位相シフトフィルタ302を備えた左チャンネル音声入力にアクセスする。システム300は、位相シフトフィルタ304を備えた右チャンネル音声入力にアクセスする。位相シフトフィルタ302、304は、それらに対応する位相シフトされた音声信号出力を生成するように、それぞれ左・右の音声入力信号に関して作用する。位相補正フィルタでは、低周波数でのチャンネル間の位相差が実質的にゼロであるものが使用される。実施例では、例えば、特定の位相応答で、全通過フィルタを使用する。一実施例では(例えば低周波で)別のチャンネルの位相と調和するために、1つのチャンネル上で単一「位相補正」フィルタを使用する。一実施例では、位相補正またはクロスオーバー・ネットワークは除去される。例えば、非相関器は、きまって低周波には遭遇しない周波数範囲にわたって機能する。この場合は、図3に示される位相補正フィルタ302、304は、位相変化や振幅変化を導入しないか、導入がオプションであるか、あるいは存在しないと考えられる。位相補正フィルタ302、304では、クロスオーバーフィルタなしで周波数選択性の非相関性処理が許容される。
【0030】
位相シフトされた音声信号は、位相シフトフィルタ302から第1の非相関フィルタ(非相関器)「A」310に供給される。位相シフトされた音声信号は、位相シフトフィルタ304から第2の非相関器「B」312に供給される。非相関器A310と非相関器B312には同様の構造的特徴、及び/又は別の特性があってもよい。しかしながら、重要なことには、非相関器310、312は異なる動作特性で機能してもよい。例えば、非相関器310は、非相関器312によって行なわれた非相関性処理よりも、大きな程度(又はより少ない程度)に非相関にする。例えば、非相関器310は乗算パラメータ用の第1の値gに従って非相関にする。その一方で非相関器312によって行なわれる非相関性処理は、乗算パラメータg’に対する第2の値で非相関にする。これらは、例えば、図6と図7に関して式1で説明される。非相関器310と312は、少なくとも閾値周波数値を超える周波数で非相関性処理を行なう。位相シフトフィルタ302は非相関器310と共に機能する。また、位相シフトフィルタ304は非相関器312と共に機能する。この結果として、閾値が300Hzと3kHzの間にある場合に、閾値より下の周波数範囲にわたってほぼ適合する併用効果が得られる。
【0031】
非相関器310、312は各々効果強化パラメータ入力信号を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。効果強化パラメータは非相関の強度に関係がある。左チャンネルと右チャンネルの間の非相関の強度を高めることは、差動チャンネルエネルギーに関連したエネルギーを増加させ、したがって、システム300に関してステレオ拡幅実効性を増加させる。任意に、結果強度パラメータ(effect strength parameter)は入力として位相シフトフィルタ302、304にも供給される。
【0032】
非相関フィルタ310の出力信号は、左のオーディオ・チャンネルに対応するものであり、非相関フィルタ312の出力信号は、左のオーディオ・チャンネルに対応するものであるが、両者はステレオ拡幅器104への入力として機能する。ステレオ拡幅器104は実質的に(例えば図1に関して)上記で説明されるように機能する。拡幅器モジュール104はこのように拡幅された左チャンネルと右チャンネルの出力ステレオ信号を生成する。それらはそれぞれの非相関にされたステレオ入力信号に対応する。
【0033】
C. 和信号/差信号を備えた例に関するクロスオーバー作用
一実施例では、周波数依存性の非相関器はクロスオーバーフィルタで実施される。クロスオーバーフィルタは和信号と差信号に作用する。ここで、音声入力信号は、和と差に関連したドメインにある(「和ドメイン/差ドメイン」)ので、信号は、変換、転換又はその他同種のものに関係がある、追加の前処理にさらされる。例えば、和ドメイン/差ドメインの入力信号は、非相関性処理に先立ってオーディオ指向性に関連したドメイン(例えば左・右の方向、「左ドメイン/右ドメイン」)で変換されてもよい。一実施例では、ステレオ拡幅モジュールは和ドメイン/差ドメイン中で実施される。追加の実施例又は代替的実施例では、ステレオ拡幅モジュールは左ドメイン/右ドメイン中で実施される。
【0034】
図4は、本発明の実施例に従って、クロスオーバーフィルタをも使用する非相関ステレオ拡幅システム400の例を示す。システム400は、和ドメインと差ドメインの音声入力を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。システム400は、クロスオーバーフィルタ402を備えた和チャンネル音声入力にアクセスする。システム400は、クロスオーバーフィルタ404を備えた差動チャンネル音声入力にアクセスする。
【0035】
クロスオーバーフィルタ402、404は、和チャンネルと差動チャンネルの入力に関連したオーディオスペクトラムを多数の周波数帯に、それぞれ分割する。クロスオーバーフィルタ402、404はアクティブな高域通過フィルタと低域通過フィルタでもたらされてもよい。高域フィルタ部品は、前もって定義した交差点周波数値を超える周波数を通過させると共に、その値より下の周波数を減衰させる。低域フィルタ部品は、交差点周波数値より下の周波数を通過させると共に、その値を越えた周波数を減衰させる。
【0036】
クロスオーバーフィルタ402、404は、和と差の音声入力を低周波数成分と高周波数成分に分離するように、それぞれ機能する。実施例では、クロスオーバーフィルタ402、404は、類似しているか、あるいは実質的に同一である。例えば、ネットワーク402、404の各々の交差点周波数は両方とも、1kHzで実施される。クロスオーバーフィルタ402、404の高域通過出力信号は、それの低域通過出力信号とはある程度異なる処理をされてもよい。
【0037】
クロスオーバーフィルタ402の低域フィルタ成分の出力は、遅延要素406に供給される。クロスオーバーフィルタ404の低域フィルタ成分の出力は、遅延要素408に供給される。遅延要素406、408は同様の遅延を課してもよい。
【0038】
ここに使用される場合、用語「シャッフル」は、2つのステレオ信号にアクセスすること(例えば、受け取りとアクセス)を指すもので、2つのステレオ信号には、例えば、左信号と右信号、また対応する和と差(例えば和信号と差信号)を左信号と右信号と同時に生成することがある。ここに使用される場合、用語「シャッフル器」は、上記のシャフリング機能を行なう(例えばステレオ拡幅システムの) 部品を指す。ここに使用される場合、用語「デシャッフル」は、先にシャッフルされた2個の信号にアクセスすること(例えば、受け取りとアクセス)を指すもので、例えば和信号と差信号、および和信号と差信号を左信号と右信号(または空間に正しく指向された他のもの)に回復させたものとがある。ここに使用される場合、用語「デシャッフル器」は、上記のデシャッフル機能を行なう(例えばステレオ拡幅システムの)部品を指す。クロスオーバーフィルタ402、404の高域通過出力は、デシャッフルモジュール(デシャッフル器)418に供給される。デシャッフル器418は、各クロスオーバーフィルタ402、404からの高域通過された和信号と差信号を、左ドメインと右ドメインへ(少なくとも一時的に)実質的に変換する(例えば転換など)。デシャッフル器418は、このように高域通過した和入力と差動入力の各々に対応して、第1非相関フィルタ(非相関器)「A」410と第2非相関器「B」412に、デシャッフルされた信号を供給する。非相関器A410と非相関器B412には同様の構造的特徴、及び/又は別の特性がある。しかしながら、重要なことには、非相関器410と412は異なる作業特性で機能してもよい。例えば、非相関器410は、非相関器412によって行なわれた非相関性処理より大幅に、又はより少ない程度に非相関にしてもよい。例えば、非相関器410は乗算パラメータ用の第1の値gに従って非相関にする。その一方で非相関器412によって行なわれた非相関性処理は、乗算パラメータg’に対する第2の値で非相関にする。これらは、例えば、図6と図7に関して式1で説明される。
【0039】
非相関器410と412への効果強化パラメータ入力に対して、実施例は、ステレオフィールド幅と関係するモードに影響を与える、使用者制御可能な入力を実装する。例えばハーフモードレベルと完全なモードレベルを含む2以上の幅モードレベルは、選択的に実装される。幅モード入力は非相関の強度を調整してもよい。左チャンネルと右チャンネルの間の非相関の強度を高めることは、差動チャンネルエネルギーに関連したエネルギーを増加させ、したがって、ステレオのフィールドを広げるためにシステム400と共に使用される。左ドメイン/右ドメイン実施では、左チャンネルと右チャンネルの間のより多くの非相関性が、差動チャンネルエネルギーのエネルギーをまた増加させ、そこで、ステレオ拡幅効果の強度を増加させる。
【0040】
非相関器410と412は、少なくとも閾値周波数値を超える周波数上で非相関性処理を行なう。より低い周波数の非相関性処理をオプションとして行うこともできる。一実施例では、閾値周波数値は、300Hzから3kHz迄の周波数内にある。非相関フィルタ410の出力信号は、左信号に対応するものである。また、非相関フィルタ412の出力は右信号に関連する。そして、非相関フィルタ410の出力信号と非相関フィルタ412の出力は、リシャッフルモジュール(シャッフル器)420に提供される。
【0041】
シャッフル器420は、非相関にされた和信号と差信号を処理して、非相関にされた和信号と差信号を生成する。シャッフル器420は、加算器414に非相関にされた和信号を供給し、加算器416に非相関にされた差信号を供給する。
【0042】
遅延要素406から遅延させて低周波フィルタされた和入力信号は、加算器414にて、非相関にされると共に再度混ぜられた和信号に、180°の位相シフトを伴って再注入される。遅延要素408から遅延させられて低域通過した差入力信号は、加算器416にて、非相関にされると共に再度シャッフルされた差信号に、180°の位相シフトを伴って再注入される。位相シフトはほぼ180°になる。位相シフトはこのように、実質的に位相が異なる(out of phase)。加算器414は、和乗算器422に組み合わせた信号を、そのすぐ後に提供する。加算器416は、差乗算器424に組み合わせた信号を、そのすぐ後に提供する。低域通過フィルタされた信号成分が、交差周波数で、最大の位相整合を備えた非相関性の高域通過フィルタされた信号成分と再結合するように、180°位相シフトが選択されている。非相関フィルタの振る舞いが交差周波数で異なる別の状況においては、(位相シフトの無使用を含む)位相シフトの別の選択を行うことが、適切である。選択が主観的な音質に基づいて行なわれる場合、適切な位相シフトの選択は聞くテストによって行なわれる。
【0043】
和乗算器422と差乗算器424は各々、加算器414と加算器416に提供される、和信号と差信号の組み合わせに対して、利得をスケールし、減衰し、又は加算する。例えば、差動チャンネルを増して和チャンネルを低減することは、ステレオのフィールドを広げるために使用される。和乗算器422からの和信号は和の有限インパルス応答(FIR)フィルタ426に提供される。差乗算器424からの差信号は差動FIRフィルタ428に提供される。
【0044】
効果強化パラメータ入力も、個々の乗算器422、424、そして個々のFIRフィルタ426、428によって、アクセスされる。実施例は、ステレオフィールド幅と関係するモードに影響を与える、使用者制御可能な入力を実装している。ハーフモードレベルと完全なモードレベルを含む、2以上の幅モードレベルは、選択的に実施される。幅モード入力は、インパルス応答あるいはFIRフィルタ426、428の別の特徴か機能と同様に、和チャンネルと差動チャンネルの利得を調整する。重要なことには、和と差にあてがわれた利得は異なってもよい。
【0045】
FIRフィルタ426は、修正済の和信号に関して機能する。FIRフィルタ428は、修正済の差信号に関して機能する。さらに各々のFIRフィルタ426、428は、クロストーク取り消しとスピーカ仮想化を提供するように機能する。FIRフィルタ426、428は、クロストーク取り消し機能によって、聴取者が左信号と右信号を2つのラウドスピーカ間の空間の外から放射するように知覚することを可能にする。
【0046】
D.FIRフィルタの例
図5は本発明の一実施例による、フィルタ・データフロー500の例を示す。和チャンネルと差動チャンネル用のFIRフィルタ(図4)係数の生成は、このように示される。クロストーク取り消しフィルタ504はヘッドシャドーモデル502で実施される。一実施例では、クロストーク取り消しフィルタ504はクロストーク取り消し技術に基づく。クロストーク取り消し技術は、シュレーダーによって提案されたか実施されたようなクロストーク取り消し技術と少なくとも同じようなものとして、一般にオーディオ技術および特にステレオ音響に関係のある技術に熟練している技術者によく知られている。
【0047】
頭部伝達関数(HRTF)506は、聴取者の前に置かれ、90°の間隔で置かれた仮想スピーカに相当するもので、クロストーク取り消しフィルタ506の上に付加される。重要なことには、クロストーク取り消しフィルタ504とHRTFフィルタ506は、フィルタ結合器508に機能的に組み合わせられるか、カスケードに接続される。組み合わせたフィルタは、等化補正器とラウドスピーカ保護器(EQ)510に入力を供給する。
【0048】
EQ510は、クロストーク取り消しフィルタ504とHRTFフィルタ506が等値化されると共に組み合わせられた特性を、最終フィルタ512に提供する。最終フィルタ512は低周波数成分(例えば200Hz未満の周波数値を備えた成分)を減衰するが、それはラウドスピーカに低周波数からの保護を与える。低周波は、比較的小型の形状、パワー処理容量あるいは別の小型の特性のスピーカでは再生するのが難しく、また、歪みや過負荷に帰着することを防止する。
【0049】
周波数に基づいた非相関性の例
実施例では、比較的高周波が非相関にされる様々な方法と技術で、ここに説明されるような周波数に基づいた(例えば、周波数依存性の)非相関性処理技術を実施する。一実施例では、比較的高周波は非相関にされるが、一方で、実質的に同時に、低周波は同相にしておかれる。周波数依存性の非相関性を達成するために、一実施例は、ここに(例えば図2と図4に関して)示した例でのように、非相関フィルタと共にクロスオーバーフィルタを使用する。その代わりに、例えば、図3に示されたように、一実施例では、補償補正フィルタの使用によって低周波数中の非相関性を除去するか低減することにより、周波数依存性の非相関性を達成してもよい。
【0050】
ある実施態様では、選択的に又は排他的に信号の位相に影響を与える全通過非相関性処理を使用する。図6は本発明の実施例による非相関フィルタ600の例を示す。非相関性処理は、ここに説明されたように、計算上の観点から比較的あるいは著しく効率的である。例えば、ここに説明された非相関器は、2つのタップ(例えば2つの乗算器と2つの加算器)、および遅延要素602で提供される1つの遅延線で機能する。加算器604は、非相関器600への入力にアクセスする。
【0051】
加算器604、606は加算を行なう。乗算器608、610は乗算を行なう。乗算器610は遅延要素602と入力を共有し、それと同時に加算器606に出力を供給する。遅延要素602の出力は、また乗算器608に入力を供給する。加算器604は、音声入力および遅延要素602からの乗算器608の出力からの入力を受け取る。加算器606は、非相関器600からの出力を提供する。
【0052】
一実施例では、非相関フィルタの伝達関数H(z)は、次の式1に従って説明される。
[数1]
H(z)=(g+Z−N)/(1+g・Z−N) (式1)
式1では、gは[−1,1]に対応する範囲中の実数で、乗算器608、610の機能に関連した値を表わす。また、Nは遅延要素602に関係しているディレイ値を表わす。例えば、周波数が48kHzの信号に関して得られた25個のサンプルに相当するディレイ値を備えた実施例では、音声入力を有効に非相関にするために、より高い周波数にわたって十分な位相変化を生成する。
【0053】
実施例の中で、gに対する異なる値を備えた関数と同様の非相関器、あるいは異なる非相関フィルタが、左右のチャンネル(または和チャンネルと差動チャンネル)で使用される。例えば上記の非相関器ペア210と212、310と312、又は410と412(それぞれ図2、図3と図4に関してここに説明された)中の非相関器の各ペア中の一つは値gで機能し、各ペア中の他方の非相関器はg'の値で機能する。非相関器210、310又は410の1つ以上は値gで機能する。そして、非相関器212、312又は412の1つ以上は値g'で機能する。非相関器210と212、310と312、410と412の各々には、同様の構造的特徴と別の特性があってもよい。しかしながら、重要なことには、それらは各々、各ステレオ拡幅システム内の別の非相関器とは異なっている動作特性で機能してもよい。ここで、絶対値|g−g’|=0の場合には、実質的に非相関性は生じない。gが式1に関して[−1,1]の範囲中の実数であり、ここで|g−g’|=2の場合には、非相関性の程度が最大化される。重要な非相関性は、|g−g’|の値が0.8〜1.6の範囲で存在する。実施例では、同様の(または同等の)遅延長さは、個々の非相関器と関連しており、それは一様で、実質的に一定の位相包絡を(例えば均等目盛上で)可能にする。一実施例では、gとg'に対して、実質的に等しい遅延で実質的に同等であるが、反対の符号である値、即ち一方の符号は正数で、他方の符号である負数を有する非相関器で機能する。一実施例では、各システムでの非相関器のうちの一方又は他方は、遅延機能と有効に置換される(例えば、交換される)。その場合には、周波数に関連する移相は、唯一の非相関器中で行なわれる。左・右の音声入力チャンネルを異なって非相関フィルタリングすることによって、周波数の全範囲で位相差が生成される。g(またはg')に対する異なる値の使用によって、異なる位相応答は、左チャンネルと右チャンネル(または和ドメインと差ドメイン)について得られる。左チャンネルと右チャンネルの位相応答の変更によって、チャンネル間の非相関が生成される。
【0054】
図7は、実施例における振幅と位相応答の画面例700を示す。画面例700は、左チャンネルと右チャンネル(それぞれ721、722)について、非相関の実施における振幅応答特性トレース710と位相応答プロット720を有する。ここで、方程式1中の値gは、左チャンネル非相関器用のg=0.8と、右チャンネル非相関器用のg’=0.8に相当する。トレース710では、振幅応答特性715は、左右のチャンネル応答の両方について実質的に全周波数範囲にわたって、約0デシベル(dB)を走る。プロット720では、トレース721は左オーディオ・チャンネルに対応し、トレース722は、オーディオ・チャンネルに対応する。トレース721、722は、左右のチャンネルがおよそ1kHzの周波数値で非相関の交差点(decorrelation crossover point)を共有することを示す。
【0055】
一実施例では、非相関性の程度は、乗算器608、610に関連した係数g、g'の変更により制御される。「g」係数の変更は、チャンネル間の位相差に影響を与える。効果強化パラメータと幅モードは、ここに説明されたように、アンプ608、610のゲイン係数への変更に関係している。したがって、一実施例では、ゲイン係数値の変更により非相関性の量(例えば強度)を制御するために機能する。例えば、選択可能(例えば、調整可能、プログラム可能)な幅モードはこのように実施される。
【0056】
図8は、一実施例における異なる利得設定の左チャンネルと右チャンネルの間の位相応答差をプロットする画面例800を示す。トレース801は、右チャンネルについて−0.8で、左チャンネルについて0.8のgの設定値を備えたオーディオ・チャンネル間の位相応答差の例を示す。トレース802は、右チャンネルについて−0.4で、左チャンネルについて0.4のgの設定値を備えたオーディオ・チャンネル間の位相応答差の例を示す。かくて、トレース801は「全幅モード」位相応答を表わす。かくて、トレース802は「幅モード」の半分位相応答を表わす。トレース801とトレース802は、各々およそ1kHzの1つの周波数値で交差点を共有する。
【0057】
クロスオーバーフィルタの例
ある実施態様では、クロスオーバーフィルタ回路(例えば、クロスオーバーフィルタ202、204と402、404;それぞれ図2と図4)を使用する。それは比較的高周波数領域成分と比較的低周波数領域成分を(例えば高周波成分の非相関性に先立って)分離する。図9は本発明の一実施例によるクロスオーバーフィルタ900を示す。
【0058】
クロスオーバーフィルタ900は全帯域音声入力信号を受け取り、及び/又はこれにアクセスする。入力信号は、無限インパルス応答(IIR)フィルタ901と混合器(加算器)902に供給される。例えばより急勾配のフィルタの裾(filter skirt)で同時にオーバーラップのより少ないフィルタのような、IIR特性以外のものを備えたフィルタも使用される。一実施例では、IIRフィルタ901は二次のIIRフィルタとして実施される。一実施例では、IIRフィルタ901はバターワースの特性で実施される。一実施例では、IIRフィルタ901は二次のバターワースフィルタとして実施される。IIRフィルタは、またチェビチェフ(Chebyshev)、ベッセル、楕円や別のIIR特性で実施されてもよい。実施例の中で単一の二次のIIRフィルタ901と単一の混合器902を使用することは、実施するクロスオーバーフィルタ900に関連した計算上のリソースを節約する。クロスオーバーフィルタ900は、全帯域入力信号を低域通過信号成分と高域通過信号成分に分割する。
【0059】
図10は、実施例によるクロスオーバーフィルタに関連した振幅と位相応答のプロットの画面例1000を示す。画面例1000は振幅プロット1010と位相応答プロット1020を有する。振幅プロット1010は低域通過応答トレース1011、高域通過応答トレース1012およびトレース1015を有しており、トレース1015は復元された信号に対応する。位相応答プロット1020は低域通過応答トレース1021、高域通過応答トレース1022およびトレース1025を有しており、トレース1025は復元された信号に対応する。
【0060】
高域フィルタ応答は一次傾斜に接近する。ある実施態様では、交差点のために比較的高い周波数値を使用する。したがって、一次傾斜に接近する高域フィルタ応答は、それによる非相関性処理を実施する観点からみて十分である。
【0061】
図11は、一実施例による、非相関フィルタとクロスオーバーフィルタにそれぞれ関連して、位相応答と振幅のプロットの分離した画面例1100を示す。画面例セグメント1110では、左チャンネルトレース721と右チャンネルトレース722(図7)の非相関器に関連した位相応答をプロットする。
【0062】
ある実施態様では、実質的に直線的に間隔を置かれた位相包絡期間で実施された非相関フィルタを使用する。対数比でプロットされると、高周波数での位相差は、相対的に低い周波数と比較して、相対的に高周波数ではより急速に変わる。
【0063】
1kHz未満の周波数では、プロット1110において実質的に位相が異なる。音響心理学の視点から、非相関にされ位相の異なる左・右の低周波数信号は、人間の聴取者によって(例えば実質的に正常な両耳聴で)いくぶん弱められた低音コンテンツと知覚される。弱められた低音コンテンツは、少なくとも一部分が、位相の異なるチャンネル・コンテンツから得られる相殺的干渉による低音周波数の相殺に起因する。さらに、幻の(例えば、仮想の)防音スタジオセンターの位置は、片側(または別の片側)へ移されるように、知覚される。防音スタジオセンターを移すことによって、いくぶん不自然なリスニング体験が引き起こされると知覚される。したがって、一連の不適当な位相差1113が1kHz未満の周波数で生じる。
【0064】
一実施例は、比較的高周波で非相関にするよう機能し、そして比較的低周波の非相関性を低減し、最小化し、又は防ぐように機能する。一実施例は、48kHzの非相関器の遅延線で例えば25のサンプルの割合に対応する遅延を備えて、1kHzの周波数で交差点を実装する。1kHzの周波数の交差点では、左チャンネルと右チャンネルの間の非相関フィルタの位相差は最小である(例えば0、又は約0)。
【0065】
高周波フィルタ部品は、一次ロールオフ(あるいは一次に近似するロールオフ)で実施される。したがって、非相関フィルタは、1kHzのクロスオーバー周波数より下でも一定の効果を保持する。しかしながら、非相関器の影響は周波数とともに減少する。実施例では、非相関性効果の減少は、周波数の減少と共に著しい(例えば、恐らく実質的)。
【0066】
1kHzで、左・右の非相関器出力は実質的に同相である。しかしながら、1kHzで、左・右の非相関器出力は、非相関器入力に対して180°位相が異なる(あるいはほぼ、そのようである)。そこで一実施例は、非相関性の後に実質的に位相の異なる低周波を再注入する(例えば混合器214と216、及び/又は414と416と一緒に;それぞれ図2と図4参照)。
【0067】
かくて一実施例は、10cm以下でのように比較的小さな距離だけ離れているラウドスピーカで再生されたオーディオ・コンテンツを拡幅する(ステレオイメージ幅を拡大する)。かくて、ステレオ拡幅は、一実施例によれば、携帯電話、携帯情報端末、MP3プレーヤ(または別のコーデックと関係するか、別のフォーマットに一致するオーディオ・コンテンツのプレーヤ)およびゲーム機器のようなポータブル音声再生装置、関連する別の娯楽機器や携帯機器、ラップトップやパームトップ・コンピューターおよび同種のもの、のような装置と機器と共に、経済的に使用される。一実施例では、ラウドスピーカ周波数応答を補うフィルタは、FIRフィルタ(例えばFIRフィルタ426と428; 図4参照)に含まれている。したがって、実施例は、ステレオ拡幅効果を調整すること(例えば、最大化)、及び/又は様々なハンドセット、ヘッドセットおよびその他同種のものに仕立てるために、カスタマイズされる。様々なハンドセット、ヘッドセットおよびその他同種のものは、携帯電話および別の装置や機器と共に使用される。
【0068】
III 実施例
本発明の実施例は、下の段落中に列挙された実施例の1つ以上に関係がある。
【0069】
1. 少なくとも2個のラウドスピーカを有する音響再生システムへのステレオ信号入力にアクセスするステップであって、
前記ステレオ信号は複数の周波数成分を有しており、
前記少なくとも2個のラウドスピーカは互いの近くに配置されると共に、
前記周波数成分の周波数範囲を非相関にするステップと、
前記非相関ステップに基づいて前記音響再生システムのステレオ音響の応答を拡幅するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【0070】
2. 前記実施例1に記載される方法において、さらに
前記ステレオ信号を前処理するステップであって、前記前処理ステップは前記非相関ステップを有することを特徴とする方法。
【0071】
3. 前記実施例1に記載される方法において、
前記近く(proximity)が、前記非相関ステップに先立って、前記ステレオ音響の応答に関連したフルネス品質を部分的に低減するような、前記少なくとも2個のラウドスピーカの距離間隔に関連することを特徴とする方法。
【0072】
4. 前記実施例3に記載される方法において、前記距離間隔が20センチメートルを超えないことを特徴とする方法。
5. 前記実施例3に記載される方法において、前記距離間隔が10センチメートルを超えないことを特徴とする方法。
6. 前記実施例1に記載される方法において、前記周波数範囲が高周波に対応することを特徴とする方法。
7. 前記実施例6に記載される方法において、前記非相関ステップが閾値周波数値を超える前記高周波で行なわれることを特徴とする方法。
8. 前記実施例7に記載される方法において、前記閾値周波数値が300Hzから3kHzの間の周波数値の範囲内にあることを特徴とする方法。
【0073】
9. 少なくとも2個のラウドスピーカを有する音響再生システムへのステレオ信号入力にアクセスするための手段であって、
前記ステレオ信号は複数の周波数成分を有しており、
前記少なくとも2個のラウドスピーカは互いの近くに配置され、
前記周波数成分の周波数範囲を非相関にする手段と、
前記非相関手段の機能に基づいて前記音響再生システムのステレオ音響の応答を拡幅する手段と、
を備えるシステム。
【0074】
10. 前記実施例9に記載されるシステムにおいて、さらに
前記ステレオ信号を前処理する手段であって、前記前処理手段は前記非相関手段を有することを特徴とするシステム。
11. 前記実施例10に記載されるシステムにおいて、
前記前処理手段は、さらに、前記ステレオ信号入力をフィルタリングする手段を有することを特徴とするシステム。
【0075】
12. 前記実施例11に記載されるシステムにおいて、
前記フィルタリング手段は、クロスオーバーフィルタ又は位相補正フィルタの少なくとも一方を有し、前記フィルタリング手段は、別の周波数範囲から非相関性周波数範囲を分離することを特徴とするシステム。
【0076】
13. 前記実施例12に記載されるシステムであって、
前記別の周波数の成分は、非相関性周波数範囲の周波数値より低い周波数値を有する周波数成分を有し、
前記前処理手段は、さらに、前記非相関性周波数範囲の周波数値より低い前記周波数値に遅延を加えるための手段を有することを特徴とするシステム。
【0077】
14. 前記実施例13に記載されるシステムであって、
前記ステレオ入力に関係している指向性成分に基づくドメイン、又は、前記ステレオ入力に関係している和と差に基づくドメインの1つ以上について、前記システムが機能することを特徴とするシステム。
【0078】
15. 前記実施例14に記載されるシステムであって、前記ステレオ入力に関係している和と差に基づくドメインについて、前記システムがさらに
前記指向性のベースのドメイン内への前記非相関手段の機能に先立って、前記ステレオ入力をデシャッフルする(deshuffling)手段を有することを特徴とするシステム。
【0079】
16. 前記実施例15に記載されるシステムであって、前記システムがさらに
前記非相関手段から前記和と差のドメインに戻るように、非相関にされた信号を再シャッフリングする(reshuffling)手段を有することを特徴とするシステム。
【0080】
17. 前記実施例16に記載されるシステムであって、さらに
前記遅延させた周波数値と共に前記再シャッフリング手段から再シャッフリングされた信号を混ぜる手段であって、前記遅延させた周波数値は前記非相関性周波数範囲の周波数値よりも低い手段を有することを特徴とするシステム。
【0081】
18. 前記実施例17に記載されるシステムであって、
前記混ぜる手段は、前記再シャッフリングされた信号に対して相対的に180度の位相シフトで前記遅延させた周波数値を混ぜると共に、前記遅延させた周波数値は前記非相関性周波数範囲の周波数値よりも低いことを特徴とするシステム。
19. 前記実施例17に記載されるシステムであって、さらに
前記混ぜる手段から、混ぜられた信号をスケーリングする手段を有することを特徴とするシステム。
20. 前記実施例9又は実施例19の何れか一方又は双方に記載されるシステムであって、
前記拡幅手段が、拡幅するフィルタリング手段を有することを特徴とするシステム。
21. 前記実施例20に記載されるシステムであって、
前記拡幅するフィルタリング手段が有限インパルス応答フィルタで構成されることを特徴とするシステム。
【0082】
22. 前記実施例20に記載されるシステムであって、
前記拡幅するフィルタリング手段が、
前記システムで処理された少なくとも2個の信号に関連したクロストーク成分を相殺する手段、
スピーカ・アレイを仮想化する手段、又は
頭部伝達関数(head related transfer function)に応答する手段、
の一以上から構成されることを特徴とするシステム。
【0083】
23. 前記実施例22に記載されるシステムであって、
前記拡幅するフィルタリング手段が、さらに、ヘッドシャドーモデル又は等化補正成分の一以上から構成されることを特徴とするシステム。
【0084】
24. 前記実施例11に記載されるシステムであって、前記非相関手段が、
遅延要素、
前記フィルタリング手段から入力をとる第1の混合器、
遅延要素から入力をとる第2の混合器、
前記第1混合器から入力をとる第1のアンプ、
前記遅延要素から入力をとる、第2のアンプ、
とを備え、前記第1混合器は、前記フィルタリング手段からの入力を前記第2のアンプの出力と混ぜ、
前記第2の混合器は、前記遅延要素からの出力を非相関にされた信号を生成する前記第1のアンプの出力と混ぜる、
ように構成されることを特徴とするシステム。
【0085】
25. 前記実施例11に記載されるシステムであって、前記フィルタリング手段が、無限インパルス応答型フィルタを含むことを特徴とするシステム。
26. 前記実施例25に記載されるシステムであって、前記無限インパルス応答型フィルタがバターワースフィルタを含むことを特徴とするシステム。
27. 前記実施例25に記載されるシステムであって、前記無限インパルス応答型フィルタが二次のバターワースフィルタを含むことを特徴とするシステム。
28. 前記実施例25に記載されるシステムであって、前記無限インパルス応答型フィルタが低域フィルタ関数を行なうことを特徴とするシステム。
29. 前記実施例28に記載されるシステムであって、前記フィルタリング手段が高域フィルタ関数を行なう混合器を有し、
前記混合器は、前記ステレオ入力信号と実質的に位相の異なる前記無限インパルス応答型フィルタの出力を混ぜることを特徴とするシステム。
【0086】
30. 前記実施例9に記載されるシステムであって、
前記近く(proximity)が、前記非相関手段の機能に先立って、前記ステレオ音響の応答に関連したフルネス品質を部分的に低減するような、前記少なくとも2個のラウドスピーカの距離間隔に関連することを特徴とするシステム。
【0087】
31. 前記実施例30に記載されるシステムにおいて、前記距離間隔が20センチメートルを超えないことを特徴とするシステム。
32. 前記実施例30に記載されるシステムにおいて、前記距離間隔が10センチメートルを超えないことを特徴とするシステム。
33. 前記実施例9に記載されるシステムにおいて、前記周波数範囲が高周波に対応することを特徴とするシステム。
34. 前記実施例33に記載されるシステムにおいて、前記非相関手段が閾値周波数値を超える前記高周波で行なわれることを特徴とするシステム。
35. 前記実施例34に記載されるシステムにおいて、前記閾値周波数値が300Hzから3kHzの間の周波数値の範囲内にあることを特徴とするシステム。
【0088】
36. 1つ以上のプロセッサで実行された時、前記実施例9乃至35の何れか1項又はそれ以上に記載されるシステムを構成する命令を含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
37. 1つ以上のプロセッサで実行された時、コンピュータシステムにステレオ音響拡幅と関係するステップを行なわせる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記ステップは、前記実施例1乃至8の何れか1項以上に記載されるステップを含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【0089】
38. ステレオ音響拡幅に関係のあるステップを行なうように構成された集積回路装置であって、
前記ステップは、前記実施例1乃至8の何れか1項以上に記載されるステップを含むことを特徴とする集積回路装置。
39. ステレオ音響拡幅システムであるように構成された集積回路装置であって、
前記システムは、前記実施例9乃至35の何れか1項に記載されるシステムを構成することを特徴とする集積回路装置。
40. 前記実施例38又は39の一項以上に記載される集積回路装置であって、
前記集積回路装置は、プログラマブルロジックデバイス、又は特定用途向け集積回路の少なくとも一方を有することを特徴とする集積回路装置。
41. 前記実施例40に記載される集積回路装置であって、
前記プログラマブルロジックデバイスは、マイクロコントローラ、またはフィールドプログラマブルゲートアレイの少なくとも一方を有することを特徴とする集積回路装置。
【0090】
42. 処理エンティティ(processing entity)で実行された時、前記実施例38乃至41の何れか1項以上に記載される集積回路を構成する命令を含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
43. ステレオ音響拡幅に関係のあるステップを行なうように構成された装置であって、
前記ステップは、前記実施例1乃至8の何れか1項以上に記載されるステップを含むことを特徴とする装置。
44. ステレオ音響拡幅システムを構成する装置であって、
前記システムは、前記実施例9乃至35の何れか1項以上に記載されるステップを含むことを特徴とするシステム。
45. 前記実施例43又は44の一項以上に記載される装置であって、
前記装置は、通信装置、コンピュータデバイス、または娯楽装置の少なくとも一つであることを特徴とする集積回路装置。
46. 処理エンティティ(processing entity)で実行された時、前記実施例43乃至45の何れか1項以上に記載される装置を制御する命令を含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【0091】
47. 20cm未満の間隔である1組のラウドスピーカで再生された時、拡幅された印象を提供するために、左右の入力信号を有するステレオ入力を修正する方法であって、
非相関にされた左チャンネル信号と非相関にされた右チャンネル信号を生成するために、非相関処理により前記左右の入力信号を修正するステップであって、前記非相関にされた左チャンネル信号を、左チャンネル位相応答により前記左入力信号に関して相対的に位相変化させ、前記非相関にされた右チャンネル信号を、右チャンネル位相応答により前記右入力信号に関して相対的に位相変化させるステップと、
ステレオ拡幅処理によって、前記非相関にされた左チャンネル信号と前記非相関にされた右チャンネル信号を修正するステップと、
前記ステレオ拡幅処理から前記1組のラウドスピーカへ出力を供給するステップと、
を備え、前記左チャンネル位相応答は閾値周波数より低い周波数で前記右チャンネル位相応答にほとんど同じに接近し、前記左チャンネル位相応答は前記閾値周波数以上の周波数で前記右チャンネル位相と異なり、ここで前記閾値周波数は300Hzから3kHzの間にあることを特徴とする方法。
【0092】
等価物、拡張、代案、その他
ステレオ拡幅の実施例は以上のように記述される。上述の明細書では、本発明の実施例が態様毎に多数の特定の詳細を参照して記述された。したがって、何が発明であるかの唯一かつ排他的な標識であって発明であるとして出願人によって意図されるのは、本出願に基づいて許可される一組の請求項であって、いかなる後の補正も含まれる。そのような請求項に含まれる術語について明らかにここに明記されるいかなる定義も、請求項で使用される術語の意味を決定する。従って、請求項に明らかに記載されていないような、制限、要素、特性(property)、機能、利点あるいは属性は、形はどうあれ請求項の適用範囲を制限しない。従って、明細書と図面は、制限的な趣旨ではなく本発明を説明するものに過ぎない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個のラウドスピーカを有する音響再生システムへのステレオ信号入力にアクセスするステップであって、
前記ステレオ信号は複数の周波数成分を有しており、
前記少なくとも2個のラウドスピーカは互いの近くに配置されると共に、
前記周波数成分の周波数範囲を非相関にするステップと、
前記非相関ステップに基づいて前記音響再生システムのステレオ音響の応答を拡幅するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載される方法において、さらに
前記ステレオ信号を前処理するステップであって、前記前処理ステップは前記非相関ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載される方法において、
前記近く(proximity)が、前記非相関ステップに先立って、前記ステレオ音響の応答に関連したフルネス品質を部分的に低減するような、前記少なくとも2個のラウドスピーカの距離間隔に関連することを特徴とする方法。
【請求項4】
少なくとも2個のラウドスピーカを有する音響再生システムへのステレオ信号入力にアクセスするための手段であって、
前記ステレオ信号は複数の周波数成分を有しており、
前記少なくとも2個のラウドスピーカは互いの近くに配置され、
前記周波数成分の周波数範囲を非相関にする手段と、
前記非相関手段の機能に基づいて前記音響再生システムのステレオ音響の応答を拡幅する手段と、
を備えるシステム。
【請求項5】
請求項4に記載されるシステムにおいて、さらに
前記ステレオ信号を前処理する手段であって、前記前処理手段は前記非相関手段を有し、前記前処理手段は、さらに、前記ステレオ信号入力をフィルタリングする手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載されるシステムにおいて、
前記フィルタリング手段は、クロスオーバーフィルタ又は位相補正フィルタの少なくとも一方を有し、前記フィルタリング手段は、別の周波数範囲から非相関性周波数範囲を分離することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載されるシステムであって、
前記別の周波数の成分は、前記非相関性周波数範囲の周波数値より低い周波数値を有する周波数成分を有し、
前記前処理手段は、さらに、前記非相関性周波数範囲の周波数値より低い前記周波数値に遅延を加えるための手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項4に記載されるシステムであって、
前記ステレオ入力に関係している指向性成分に基づくドメイン、又は、前記ステレオ入力に関係している和と差に基づくドメインの1つ以上について、前記システムが機能することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載されるシステムであって、前記ステレオ入力に関係している和と差に基づくドメインについて、前記システムがさらに
前記指向性のベースのドメイン内への前記非相関手段の機能に先立って、前記ステレオ入力をデシャッフルするための手段、
前記非相関手段から前記和と差のドメインに戻るように、非相関にされた信号を再シャッフリングする手段、又は
前記遅延させた周波数値と共に前記再シャッフリング手段から再シャッフリングされた信号を混ぜる手段であって、前記遅延させた周波数値は前記非相関性周波数範囲の周波数値よりも低い手段、
の一以上のステップから構成されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
20cm未満の間隔である1組のラウドスピーカで再生された時、拡幅された印象を提供するために、左右の入力信号を有するステレオ入力を修正する方法であって、
非相関にされた左チャンネル信号と非相関にされた右チャンネル信号を生成するために、非相関処理により前記左右の入力信号を修正するステップであって、前記非相関にされた左チャンネル信号を、左チャンネル位相応答により前記左入力信号に関して相対的に位相変化させ、前記非相関にされた右チャンネル信号を、右チャンネル位相応答により前記右入力信号に関して相対的に位相変化させるステップと、
ステレオ拡幅処理によって、前記非相関にされた左チャンネル信号と前記非相関にされた右チャンネル信号を修正するステップと、
前記ステレオ拡幅処理から前記1組のラウドスピーカへ出力を供給するステップと、
を備え、前記左チャンネル位相応答は閾値周波数より低い周波数で前記右チャンネル位相応答にほとんど同じに接近し、前記左チャンネル位相応答は前記閾値周波数以上の周波数で前記右チャンネル位相と異なり、ここで前記閾値周波数は300Hzから3kHzの間にあることを特徴とする方法。
【請求項1】
少なくとも2個のラウドスピーカを有する音響再生システムへのステレオ信号入力にアクセスするステップであって、
前記ステレオ信号は複数の周波数成分を有しており、
前記少なくとも2個のラウドスピーカは互いの近くに配置されると共に、
前記周波数成分の周波数範囲を非相関にするステップと、
前記非相関ステップに基づいて前記音響再生システムのステレオ音響の応答を拡幅するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載される方法において、さらに
前記ステレオ信号を前処理するステップであって、前記前処理ステップは前記非相関ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載される方法において、
前記近く(proximity)が、前記非相関ステップに先立って、前記ステレオ音響の応答に関連したフルネス品質を部分的に低減するような、前記少なくとも2個のラウドスピーカの距離間隔に関連することを特徴とする方法。
【請求項4】
少なくとも2個のラウドスピーカを有する音響再生システムへのステレオ信号入力にアクセスするための手段であって、
前記ステレオ信号は複数の周波数成分を有しており、
前記少なくとも2個のラウドスピーカは互いの近くに配置され、
前記周波数成分の周波数範囲を非相関にする手段と、
前記非相関手段の機能に基づいて前記音響再生システムのステレオ音響の応答を拡幅する手段と、
を備えるシステム。
【請求項5】
請求項4に記載されるシステムにおいて、さらに
前記ステレオ信号を前処理する手段であって、前記前処理手段は前記非相関手段を有し、前記前処理手段は、さらに、前記ステレオ信号入力をフィルタリングする手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載されるシステムにおいて、
前記フィルタリング手段は、クロスオーバーフィルタ又は位相補正フィルタの少なくとも一方を有し、前記フィルタリング手段は、別の周波数範囲から非相関性周波数範囲を分離することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載されるシステムであって、
前記別の周波数の成分は、前記非相関性周波数範囲の周波数値より低い周波数値を有する周波数成分を有し、
前記前処理手段は、さらに、前記非相関性周波数範囲の周波数値より低い前記周波数値に遅延を加えるための手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項4に記載されるシステムであって、
前記ステレオ入力に関係している指向性成分に基づくドメイン、又は、前記ステレオ入力に関係している和と差に基づくドメインの1つ以上について、前記システムが機能することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載されるシステムであって、前記ステレオ入力に関係している和と差に基づくドメインについて、前記システムがさらに
前記指向性のベースのドメイン内への前記非相関手段の機能に先立って、前記ステレオ入力をデシャッフルするための手段、
前記非相関手段から前記和と差のドメインに戻るように、非相関にされた信号を再シャッフリングする手段、又は
前記遅延させた周波数値と共に前記再シャッフリング手段から再シャッフリングされた信号を混ぜる手段であって、前記遅延させた周波数値は前記非相関性周波数範囲の周波数値よりも低い手段、
の一以上のステップから構成されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
20cm未満の間隔である1組のラウドスピーカで再生された時、拡幅された印象を提供するために、左右の入力信号を有するステレオ入力を修正する方法であって、
非相関にされた左チャンネル信号と非相関にされた右チャンネル信号を生成するために、非相関処理により前記左右の入力信号を修正するステップであって、前記非相関にされた左チャンネル信号を、左チャンネル位相応答により前記左入力信号に関して相対的に位相変化させ、前記非相関にされた右チャンネル信号を、右チャンネル位相応答により前記右入力信号に関して相対的に位相変化させるステップと、
ステレオ拡幅処理によって、前記非相関にされた左チャンネル信号と前記非相関にされた右チャンネル信号を修正するステップと、
前記ステレオ拡幅処理から前記1組のラウドスピーカへ出力を供給するステップと、
を備え、前記左チャンネル位相応答は閾値周波数より低い周波数で前記右チャンネル位相応答にほとんど同じに接近し、前記左チャンネル位相応答は前記閾値周波数以上の周波数で前記右チャンネル位相と異なり、ここで前記閾値周波数は300Hzから3kHzの間にあることを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−512110(P2011−512110A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546870(P2010−546870)
【出願日】平成21年2月11日(2009.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/033735
【国際公開番号】WO2009/102750
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(591102637)ドルビー・ラボラトリーズ・ライセンシング・コーポレーション (111)
【氏名又は名称原語表記】DOLBY LABORATORIES LICENSING CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月11日(2009.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/033735
【国際公開番号】WO2009/102750
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(591102637)ドルビー・ラボラトリーズ・ライセンシング・コーポレーション (111)
【氏名又は名称原語表記】DOLBY LABORATORIES LICENSING CORPORATION
【Fターム(参考)】
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