説明

ステレオ3D映像特殊効果装置

【課題】高性能コンピュータ等は使用せずに、従来の映像特殊効果装置のアドレス回路に対する小規模な変更のみで3Dページめくりを含む3D特殊効果を実現できるステレオ3D映像特殊効果装置を提供することを目的とする。
【解決手段】二次元映像の曲面を、所定の角度で所定の間隔だけ離間して繰り返し曲折された複数の短冊状平面の連続として三次元映像を生成することで、曲面の三次元効果を実現し、好ましくは三次元映像として表現するべき映像の曲面は、ページめくりにより生成される映像の曲面であるステレオ3D映像特殊効果装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的安価で容易にステレオ3D特殊効果を実現するステレオ3D映像特殊効果装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像特殊効果装置(適宜、DVE(Digital Video Effects)と称する)は、「Crop」(画像の切り取り)、「Skew」(せん断)、「XY−rate」(X軸、Y軸方向の変化率)等の特殊効果をビデオ映像信号に与え、画像を変形させて表示することができる。
【0003】
例えば図7に示すDVEは、特殊効果をビデオ映像信号に付与することにより、直方体形状の立体3D表示画像(立体3面画像ともいう、以下適宜Brickと称する)71を生成し、動画像である目的画像72に厚みを加えて立体的に見せる「Slab」効果を得る。
【0004】
この場合、Brick71は立体図形としては現実には6面体であるが、モニターに映す場合には陰面側(隠れている面側)を表示することはなく、表示面としては3面であり、動画を映し出す目的画像(適宜、Objectと称する)72と静止画を映し出す側面画像(適宜、Sideと称する)73,74から構成されている。ここでObject72、Side73及びSide74の各面は、互いに90°の角度を形成する。
【0005】
Brick71では、例えばObject72に野球中継が映し出され、Side73に模様等が映し出され、さらにSide74に野球選手個人のデータ(アベレージ等)等が映し出されるように構成されてもよい。
【0006】
また図8は、1台のDVE85によつてBrick71を生成する方法の一例を説明する図である。1回目としてDVE85は、まず第1のビデオテープレコーダ(適宜、VTRと称する)86が再生したビデオ信号に対して、特殊効果を付与してBrick71のSide73を生成し、第2のVTR87でこのSide73を録画する。
【0007】
続いて2回目としてDVE85は、第1のVTR86が新たに再生したビデオ信号に特殊効果を付与してBrick1のSide74を生成して合成回路89に送出する。また第3のVTR88は、1回目の第2のVTR87で録画されたSide73を再生して合成回路89に送出する。さらに、合成回路89は、Side73とSide74とを合成し、第2のVTR87で合成された画像(Side73+Side74)を録画する。また、3回目としてDVE85は、第1のVTR86が新たに再生したビデオ信号に特殊効果を与えてBrick71のObject72を生成して合成回路89に送出する。
【0008】
また第3のVTR88は、2回目の第2のVTR87で録画された画像(Side73+Side74)を再生して合成回路89に送出する。合成回路89では、Object72と合成された画像(Side73+Side74)とをさらに合成してBrick71を生成し、第2のVTR87で録画する。上述した特殊効果装置は、例えば下記特許文献1において開示されている。
【0009】
特許文献1には、DVE85においては、Brick71のObject72とSide73、Side74とを別々に生成して合成しているために、Object72を3次元変換したときにSide73及びSide74を同時に追従させて3次元変換させることができないという問題があり、上述のBrick71を1台で生成するために、Object72、Side73及びSide74の3次元座標位置をそれぞれ個別に3回に分けて設定する必要があり、オペレータの操作が煩雑になるという問題があることが指摘されている。
【0010】
また、DVE85では、Crop、Skew、XY−rate等の特殊効果をObject72に与えた場合、Object72を変形させることはできるが、同時にObject72に連動させてSide73及びSide74を変形させることはできないという問題があるとともに、Brick71のObject72に応じて変形させたSide73及びSide74をマッピングする場合、変形によつてSide73及びSide74の画像を枠一杯にマッピングできないという問題がある点が指摘されており、これらの問題点を解決するために、立体3面表示画像の各面における変換処理を同時に実行して各面を互いに連動させ、特殊効果を与える際の操作性を向上し得る特殊効果装置を実現することが提案されている。
【0011】
さらに、入力ラインを介して取り込んだ第1の画像を第1の制御データに基づいて画像変換処理して目的画像を生成すると共に、入力ラインを介して取込まれた第2の画像を第2の制御データに基づいて目的画像に応じた形状に連動して画像変換処理して側面画像を生成し、目的画像と側面画像とを仮想の立体の隣接する面に貼り合わせるように合成することにより、各面の変換処理を同時に実行して多面表示画像を生成し、これにより特殊効果を与える際の操作性を向上し得る特殊効果装置を実現できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09−139886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
撮影時から複数のテレビカメラを用いて撮影するステレオ3D映像素材の制作には多額の費用が必要なため、3D映像を提供しようとする場合でも、現実には通常の二次元映像用として撮影された2D映像素材を使用せざるを得ない場合が少なくない。
【0014】
2D映像素材に対して立体感を付与するために、2チャンネルのDVE装置(Digital Video Effect装置:以下 適宜DVEと略称する)を用いる運用が為されるが、この運用においては2D映像の遠近感しか付与できない。このため、映像特殊効果として、しばしば用いられる例えばページめくり効果等の疑似3D効果については、対応できなかった。
【0015】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、高性能コンピュータ等は使用せずに、従来の映像特殊効果装置のアドレス回路に対する小規模な変更のみで3Dページめくりを含む3D特殊効果を実現できるステレオ3D映像特殊効果装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のステレオ3D映像特殊効果装置は、二次元映像の曲面を、所定の角度で所定の間隔だけ離間して繰り返し曲折された複数の短冊状平面の連続として三次元映像を生成することで、曲面の三次元効果を実現することを特徴とする。
【0017】
また、本発明のステレオ3D映像特殊効果装置は、好ましくは三次元映像として表現するべき映像の曲面は、ページめくりにより生成される映像の曲面であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のステレオ3D映像特殊効果装置は、さらに好ましくは二次元映像の曲面を、所定の角度で所定の間隔だけ離間して繰り返し曲折された複数の短冊状平面の連続として三次元映像を生成する場合に、近視点側と遠視点側とに分割して処理した後に合成処理することを特徴とする。
【0019】
また、本発明のステレオ3D映像特殊効果装置は、さらに好ましくは複数の短冊状平面の曲折境界ごとに、アドレス生成回路の制御パラメータを切り替えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のステレオ3D映像特殊効果装置は、さらに好ましくはアドレス生成回路が2.5Dアドレス生成回路であり、制御パラメータはレジスタに格納されており、レジスタファイルの中に予め格納されている複数のレジスタの中から選択されたレジスタに対応して、2.5Dアドレス生成回路にアドレスを生成させることを特徴とする。
【0021】
また、本発明のステレオ3D映像特殊効果装置は、さらに好ましくはレジスタファイルが、曲折境界を示すパラメータが記憶された第一のレジスタファイルと曲折角度を示すパラメータが記憶された第二のレジスタファイルとであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明のステレオ3D映像特殊効果装置は、さらに好ましくはオペレータからの入力指示に対応してアドレス生成回路の制御パラメータが切り替えられることを特徴とする。
【0023】
また、本発明のステレオ3D映像特殊効果装置は、さらに好ましくは短冊状平面の曲折処理に関する曲折アドレスから曲面外郭部分を判定し、抽出した曲面外郭部分に対してアンチエイリアス処理を遂行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
高性能コンピュータ等は使用せずに、従来の映像特殊効果装置のアドレス回路に対する小規模な変更のみで3Dページめくりを含む3D特殊効果を実現できるステレオ3D映像特殊効果装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)はページめくりのめくれ部分を近視点側(ページ裏側)と遠視点側(ページ表側)とに分割する処理を説明する概要図であり、(b)は近視点側と遠視点側とのそれぞれに対して、円筒部分(ページめくれ部分)を短冊状の複数の平面に分割することで、当該短冊状の連続した複数の平面で曲面を表現する処理を説明する概要図である。
【図2】ステレオ3D映像特殊効果装置が折り曲げ処理を遂行する手順概要を順次説明する図であって、(a)がページめくりによる平面の折り曲げ処理を説明する概要図であり、(b)が曲面の表面と裏面との判定について説明する概要図であり、(c)が近視点側と遠視点側とのそれぞれに対して座標変換行列を2.5Dアドレスパラメータへと変換し各対応するレジスタファイルへと格納する処理を説明する概要図である。
【図3】2.5Dアドレス生成回路への適用パラメータレジスタを曲面近似用の折り曲げ境界部分で切り替えるステレオ3D映像特殊効果装置の機能の一部について概要を説明する概念図である。
【図4】ポリゴンを用いた従来手法によるページめくり3D映像効果付与と本実施形態によるステレオ3D映像特殊効果装置によるページめくり3D映像効果付与との相違を処理項目ごとに対比して説明する図である。
【図5】n個の折り曲げ境界関数f(x)(但し、x=0乃至n,nは任意の自然数)を適宜切り替えて適用するステレオ3D映像特殊効果装置の概要を説明する構成概念図である。
【図6】曲面の平面折り曲げ近似用の平面パラメータ切替回路を備えたステレオ3D映像特殊効果装置の構成概要を説明する概念図である。
【図7】一般的なDVEを説明する図である。
【図8】1台のDVEによってBrickを生成する方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態では、スイッチャーが有する映像の縮小や回転等の効果をR/L計2台のDVEを用いても従来実現できなかった、ページめくり効果等を、コンピュータグラフィックスや2台×2で計4台のDVE等を使用することなく、実現できるステレオ3D映像特殊効果装置について説明する。
【0027】
このステレオ3D映像特殊効果装置は、ポリゴンを用いた演算処理をせずに、連続的に折り曲げ処理を施すことで、例えばR/L計2台でリアルタイムに各々曲面を生成する。
【0028】
このため、従来のように、2D映像素材に対して、ステレオR/Lに相当する2台のDVEを用いてRチャンネルとLチャンネルとのDVEポジション、回転角度をわずかに変更することにより、2D映像に対して奥行き感効果を付与する必要がない。
【0029】
すなわち、このような対応においては、2D映像素材の奥行き感を付与する程度のステレオ3D効果であれば実現できるがページめくり等の特殊効果を付与することはできない。
【0030】
また、処理対象となる2D映像を、三角形や凸四角形等多数の微小多角形(ポリゴン)で平面近似結合して円筒面等を生成する演算処理を行う機材(例えば、HVS−38DVE3D(通称F−527))を用いると、機材自体が高価なためにコストが増大する。このため、イベント用途等においてはコストの観点から不向きである。
【0031】
このようなポリゴンによる演算処理は、円筒面から微小多角形へ分解するため、微小多角形の境界処理や再合成時に隙間を生じないようにするための処理などに対応するため、機材には大量の演算処理回路が備えられており、このために比較的高価となる。
【0032】
また、2D映像素材を一端コンピュータに取り込んでCG制作手法により3D映像化する場合には、コンピュータへの取り込み処理等に比較的長い時間を要するので、ライブ運用ができず、リアルタイム映像処理に対応できない。
【0033】
実施形態のステレオ3D映像特殊効果装置は、円筒面に対して微小多角形に分割せず、平面を繰り返し所定角度で、折り曲げ処理を繰り返すことにより、3D映像の円筒面を生成する。例えば、2Dの円筒面に対して折り曲げ箇所をずらしながら1°折り曲げ処理を360回繰り返せば、3D円筒面が生成できる。
【0034】
このため、従来の微小多角形の分割演算を遂行する処理に対し、定回転演算の繰り返しとして演算処理を単純化できることとなるので、結局、円筒面の平面近似演算を単純化できることとなる。また、円筒面をポリゴンに分解せず、折り曲げ処理を繰り返すだけとなるので、ポリゴンを再構成する場合の欠けやポリゴン間の離間が生じず、いわゆる隙間処理が不要となる。
【0035】
より具体的には、従来のDVE効果装置が備えるアドレス発生回路の制御パラメータを折り曲げ境界毎に切り替え制御する構成とすることにより、円筒面への3D映像変形を実現でき、3Dページめくり効果を容易にかつ迅速に処理することが可能となる。また、折り曲げ角度を小さくするとともに折り曲げ処理を施す箇所をより緻密にする(ずらす間隔を小さくする)ことで、より精緻な3D映像表現とすることが可能となる。
【0036】
このようにページめくりやロールめくり(完全な円筒形)等の疑似3D−DVE効果のステレオ3D映像効果を容易に実現するDVE効果装置を、小規模な回路追加で実現できるので、製品開発費用を低減し製品コストを低減することができる。ポリゴン処理するようなポリゴン頂点の演算やポリゴン境界の演算が不要となり、折り曲げ境界の方程式で処理できることとなる。
【0037】
図1(a)は、ページめくりのめくれ部分を近視点側(ページ裏側)と遠視点側(ページ表側)とに分割する処理を説明する概要図である。ステレオ3D映像特殊効果装置は、近視点側と遠視点側とのそれぞれに対して、所定の間隔だけずらしながら所定の角度で順次折り曲げ処理を遂行した後、合成処理して3D映像を生成する。
【0038】
また、図1(b)は、近視点側と遠視点側とのそれぞれに対して、円筒部分(ページめくれ部分)を短冊状の複数の平面に分割することで、当該短冊状の連続した複数の平面で曲面を表現する処理を説明する概要図である。
【0039】
また、図2は、ステレオ3D映像特殊効果装置が折り曲げ処理を遂行する手順概要を順次説明する図である。図2(a)はページめくりによる平面の折り曲げ処理を説明する概要図であり、図2(b)は曲面の表面と裏面との判定について説明する概要図であり、図2(c)は近視点側と遠視点側とのそれぞれに対して座標変換行列を2.5Dアドレスパラメータへと変換し各対応するレジスタファイルへと格納する処理を説明する概要図である。
【0040】
図2(a)に示すように、ステレオ3D映像特殊効果装置は、ページめくり円筒面に対応する座標変換行列を生成して、平面の折り曲げ処理を遂行する。次に、図2(b)に示すように、ページめくり曲面の近視点側と遠視点側との分離について、短冊状の各折り曲げ平面の法線ベクトルN乃至Nと視線ベクトルと視線ベクトルS乃至Sとの比較により判定する。
【0041】
また、図2(c)に示すようにステレオ3D映像特殊効果装置は、CPUソフトにより、近視点側と遠視点側との各座標変換行列を2.5Dアドレス生成用パラメータへと変換し、変換した近視点側用2.5Dアドレス生成用パラメータと遠視点側用2.5Dアドレス生成用パラメータとを、各々対応する近視点側用レジスタファイルと遠視点側用レジスタファイルとに書き込む。
【0042】
図3は、2.5Dアドレス生成回路313への適用パラメータレジスタを曲面近似用の折り曲げ境界部分で切り替えるステレオ3D映像特殊効果装置の機能の一部について概要を説明する概念図である。
【0043】
図3において説明するように、ステレオ3D映像特殊効果装置は、近視点側用映像特殊効果処理回路310と遠視点側用映像特殊効果処理回路320とを備える。近視点側用映像特殊効果処理回路310は、映像メモリwrite側311と映像メモリread側312とを備え、外部から有線ワイヤを介して入力された2D映像入力は、一端映像メモリwrite側311に書き込まれ、2.5Dアドレス生成回路313で生成され指示されたアドレスに従って、映像メモリread側312から順次読み出される。
【0044】
また、レジスタファイル314には、予め格納された複数のレジスタ(レジスタ、レジスタ・・レジスタ)が記憶されており、切替回路315からの指示に対応するレジスタを2.5Dアドレス生成回路313へと出力する。
【0045】
ここで、2.5Dアドレス生成回路313へと適用するべきレジスタが異なれば、折り曲げ角度や折り曲げ境界の間隔(短冊状平面の幅)や、折り曲げ方向、ポジションが異なるものとできる。
【0046】
また、レジスタファイル314は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式やラインバイライン方式やサイドバイサイド方式などの多用される種々の映像データ入力形式のバリエーションに対して、例えばR用レジスタとL用レジスタとを適宜切り替えることにより対応できる。
【0047】
また、遠視点側用映像特殊効果処理回路320の構成及び処理は、近視点側用映像特殊効果処理回路310の構成及び処理と同一であるので、重複を避けるためここでは説明を省略する。
【0048】
近視点側用映像特殊効果処理回路310と遠視点側用映像特殊効果処理回路320との出力は、TOP/BOTTOM合成回路330で合成処理されて、DVE特殊効果が反映された映像としてステレオ3D映像特殊効果装置から出力される。
【0049】
レジスタ乃至レジスタには、映像メモリread側312からのデータの読み出し方(例えば、斜めに読み出せば出力映像は回転して見えるものとなる)や読み出しポジションを決定する指示が含まれ、すなわち折り曲げ処理する場合の曲折角度や曲折間隔等に対応する指示が含まれる。このため、適用するレジスタを適宜選択して切り替えることで、種々の折り曲げ処理に対応できるものとなる。
【0050】
また、ステレオ3D表示には、フィールドシーケンシャルやラインバイラインやサイドバイサイドの3手法が知られているが、いずれにおいてもRまたはLの切り替え処理が必要となるので、DVEアドレス生成回路レジスタにR/L切り替え機能を付加し、各表示手法に対応させてレジスタの切り替えをすることで対応できる。
【0051】
図4は、ポリゴンを用いた従来手法によるページめくり3D映像効果付与と本実施形態によるステレオ3D映像特殊効果装置によるページめくり3D映像効果付与との相違を処理項目ごとに対比して説明する図である。
【0052】
従来、3D曲面を直接生成することは困難であったので、多数の微小多角形に分解してポリゴンの結合(モデルリング)により演算処理して3D映像を生成していた。この場合には、3D曲面に必要な微小多角形の座標変換行列を得るため、各微小多角形の頂点座標と境界演算、分割した各微小平面間の重なり判定、アンチエイリアス(anti−aliasing)など膨大な演算処理が必要となる。
【0053】
実施形態で提案するステレオ3D映像特殊効果装置は、円筒形を微小多角形に分割することなく、平面に対して所定角度の折り曲げ処理を繰り返すことにより3D映像の円筒面を生成する。典型的には、ステレオ3D映像特殊効果装置は、折り曲げ箇所を適宜ずらしながら1°ずつ折り曲げ処理を360回繰り返せば、完全な円筒面を形成できることとなる。
【0054】
このため、ステレオ3D映像特殊効果装置は、従来のDVE効果装置のアドレス生成回路の制御パラメータ(レジスタ)を折り曲げ境界毎に切り替え制御することで、3D円筒面への映像変換処理をする。さらに、ステレオ3D映像特殊効果装置は、アンチエイリアス処理については微小多角形毎に遂行することなく、3D円筒面を生成後の曲面画郭(ページのエッジ)に対して、一括してアンチエイリアス処理を遂行する。これにより、アンチエイリアス処理の演算負荷が大きく低減されて、演算処理工程を簡略化して高速処理が可能となる。
【0055】
図4において、項番「1」項目「形状計算」に示すように、従来はポリゴンの頂点とポリゴンの境界とを全て座標計算する必要があったところ、本ステレオ3D映像特殊効果装置では、短冊状平面の折り曲げ座標変換行列が折り曲げ角度の回転行列演算の繰り返し処理となるので、形状演算が極めて容易となる。
【0056】
また、図4の項番「2」項目「微小多角形の隙間埋め処理」に示すように、平面の折り曲げ処理としてポリゴンの合成工程を必要としないので、本ステレオ3D映像特殊効果装置では、各短冊平面の隙間が生じることはなく隙間埋め処理が不要となる。このため演算工程の簡略化と高速化が図れることとなる。
【0057】
また、図4の項番「3」項目「画郭端の微小多角形の修正」についても、平面の折り曲げ処理として演算することで、不要となる。また、図4の項番「5」項目「陰面区間の消去」に示すように、分解されたポリゴン間の視点からの重複を調整して最前面を選択する必要がなく、陰面区間すなわち各面の重複については、短冊状平面の折り曲げ処理のためにこれを生じない。
【0058】
また、図4の項番「8」項目「微小多角形の画郭アンチ処理」に示すように従来、微小多角形毎に曲面画郭判定を遂行して画郭部分にアンチエイリアス処理(スムーシング)を行っていたが、本ステレオ3D映像特殊効果装置では、図4の項番「11」項目「曲面外郭部分のアンチ処理」に示すように、短冊平面の折り曲げ処理による曲面アドレスから画郭部分を判定してアンチ処理を遂行するので、短冊状平面ごとのアンチ処理は不要となる。
【0059】
さらに、図4の項番「9」項目「レンダリング」及び項番「10」項目「走査線メモリ」に示すように、本ステレオ3D映像特殊効果装置では、曲面の近視点側と園視点側とを各々別個に処理して合成してDVE出力するため、いずれの処理も不要となり演算量を大幅に低減させることができる。
【0060】
また、図4の項番「12乃至14」で説明するように、本ステレオ3D映像特殊効果装置では、アドレス生成回路に対する適用レジスタを切り替えることにより、ステレオ3D映像のいずれの方式にも対応できる。
【0061】
図5は、n個の折り曲げ境界関数f(x)(但し、x=0乃至n)を適宜切り替えて適用するステレオ3D映像特殊効果装置の概要を説明する構成概念図である。
【0062】
図5において、ステレオ3D映像特殊効果装置は、近視点側用映像特殊効果処理回路510と遠視点側用映像特殊効果処理回路520とを備える。近視点側用映像特殊効果処理回路510は、映像メモリwrite側511と映像メモリread側512とを備え、外部から有線ワイヤを介して入力された2D映像入力は、一端映像メモリwrite側511に書き込まれ、2.5Dアドレス生成回路513で生成され指示されたアドレスに従って、映像メモリread側512から順次読み出される。
【0063】
また、レジスタファイル514には、予め格納された複数のレジスタ(レジスタ、レジスタ・・レジスタ)が記憶されており、切替回路515からの指示に対応するレジスタを2.5Dアドレス生成回路513へと出力する。
【0064】
ここで、2.5Dアドレス生成回路513へと適用するべきレジスタが異なれば、折り曲げ角度や折り曲げ境界の間隔(短冊状平面の幅)や、折り曲げ方向、ポジションが異なるものとできる。
【0065】
また、レジスタファイル514は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式やラインバイライン方式やサイドバイサイド方式などの多用される種々の映像データ入力形式のバリエーションに対して、例えばR用レジスタとL用レジスタとを適宜切り替えることにより対応できる。
【0066】
また、遠視点側用映像特殊効果処理回路520の構成及び処理は、近視点側用映像特殊効果処理回路510の構成及び処理と同一であるので、重複を避けるためここでは説明を省略する。
【0067】
近視点側用映像特殊効果処理回路510と遠視点側用映像特殊効果処理回路520との出力は、TOP/BOTTOM合成回路530で合成処理されて、DVE特殊効果が反映された映像としてステレオ3D映像特殊効果装置から出力される。
【0068】
レジスタ乃至レジスタには、映像メモリread側512からのデータの読み出し方(例えば、斜めに読み出せば出力映像は回転して見えるものとなる)や読み出しポジションを決定する指示が含まれ、すなわち折り曲げ処理する場合の曲折角度や曲折間隔等に対応する指示が含まれる。このため、適用するレジスタを適宜選択して切り替えることで、種々の折り曲げ処理に対応できるものとなる。
【0069】
また、ステレオ3D表示には、フィールドシーケンシャルやラインバイラインやサイドバイサイドの3手法が知られているが、いずれにおいてもRまたはLの切り替え処理が必要となるので、DVEアドレス生成回路レジスタにR/L切り替え機能を付加し、各表示手法に対応させてレジスタの切り替えをすることで対応できる。
【0070】
また、図6は、曲面の平面折り曲げ近似用の平面パラメータ切替回路650を備えたステレオ3D映像特殊効果装置6000の構成概要を説明する概念図である。図6に示すように、曲面の平面折り曲げ近似用の平面パラメータ切替回路650は、折り曲げ境界線の粗分割関数回路651と、微小面切替判定回路652と、第一のレジスタファイル614(a)と、適用される細分化分割関数653と、第二のレジスタファイル614(b)とを備える。
【0071】
折り曲げ境界線の粗分割関数回路651は、オペレータから不図示のオペレータユニットを介してCPU641に指示された折り曲げモード(ページめくり方向や折り曲げ程度や角度等)や折り曲げポジションに対応する処理コマンドに応じて、予め回路で定義された粗分割関数による演算処理を遂行して、ページめくり曲面を粗く短冊状平面の折り曲げとする。
【0072】
微小面切替判定回路652は、粗く短冊状平面とされた各平面の境界を判断する。これにより、その後工程において第一のレジスタファイル614(a)に格納されているさらに精細な微小平面への分割関数653を適用する。第一のレジスタファイル614(a)には、例えば折り曲げ境界を決定するためのパラメータが格納されている。さらに、第二のレジスタファイル614(b)に格納されている折り曲げ角度を適宜適用する。
【0073】
ステレオ3D映像特殊効果装置6000は、近視点側用映像特殊効果処理回路610と遠視点側用映像特殊効果処理回路620とを備える。近視点側用映像特殊効果処理回路610は、映像メモリwrite側611と映像メモリread側612とを備え、外部から有線ワイヤを介して入力された2D映像入力は、一端映像メモリwrite側611に書き込まれ、2.5Dアドレス生成回路613で生成され指示されたアドレスに従って、映像メモリread側612から順次読み出される。
【0074】
映像メモリread側612から2.5Dアドレス生成回路613で生成され指示されたアドレスに従って順次読み出された映像データは、画郭アンチ処理部642において、短冊平面の折り曲げ処理による曲面アドレスから画郭部分を判定し、アンチエイリアス処理が為される。
【0075】
また、第一のレジスタファイル614(a)と第二のレジスタファイル614(b)と(以下、適宜レジスタファイル614と称する)には、予め格納された、各々異なる複数のレジスタ(レジスタ、レジスタ・・レジスタ)が記憶されており、曲面の平面折り曲げ近似用の平面パラメータ切替回路650からの指示に対応するレジスタを2.5Dアドレス生成回路613へと出力する。
【0076】
ここで、2.5Dアドレス生成回路613へと適用するべきレジスタが異なれば、折り曲げ角度や折り曲げ境界の間隔(短冊状平面の幅)や、折り曲げ方向、ポジションが異なるものとできる。
【0077】
また、レジスタファイル614は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式やラインバイライン方式やサイドバイサイド方式などの多用される種々の映像データ入力形式のバリエーションに対して、例えばR用レジスタとL用レジスタとを適宜切り替えることにより対応できる。
【0078】
また、遠視点側用映像特殊効果処理回路620の構成及び処理は、近視点側用映像特殊効果処理回路610の構成及び処理と同一であるので、重複を避けるためここでは説明を省略する。
【0079】
近視点側用映像特殊効果処理回路610と遠視点側用映像特殊効果処理回路620との出力は、TOP/BOTTOM合成回路630で合成処理されて、DVE特殊効果が反映された映像としてステレオ3D映像特殊効果装置から出力される。
【0080】
レジスタ乃至レジスタには、映像メモリread側612からのデータの読み出し方(例えば、斜めに読み出せば出力映像は回転して見えるものとなる)や読み出しポジションを決定する指示が含まれ、すなわち折り曲げ処理する場合の曲折角度や曲折間隔等に対応する指示が含まれる。このため、適用するレジスタを適宜選択して切り替えることで、種々の折り曲げ処理に対応できるものとなる。
【0081】
また、ステレオ3D表示には、フィールドシーケンシャルやラインバイラインやサイドバイサイドの3手法が知られているが、いずれにおいてもRまたはLの切り替え処理が必要となるので、DVEアドレス生成回路レジスタにR/L切り替え機能を付加し、各表示手法に対応させてレジスタの切り替えをすることで対応できる。
【0082】
上述したように、ステレオ3D映像特殊効果装置は、円筒面を微小多角形に分割することなく、平面を繰り返し一定角度の折り曲げ処理を繰り返して生成する。すなわち、折り曲げ箇所をずらしながら角度1°の折り曲げを360回繰り返せば円筒面となる。
【0083】
このような平面の折り曲げ表示を、従来のDVE効果装置のアドレス生成回路の制御パラメータを切り替えることで実現する。また、平面の折り曲げ境界がいかなる視点から見たとしても直線となるので、切替回路は、簡便な一次関数演算処理で実現できる。
【0084】
また、2.5Dアドレス生成回路を用いて、制御パラメータの適用切り替え処理を実現するので、平面折り曲げ繰り返し近似により円筒面を生成できる。また、円筒面生成の複雑なモデリング演算が不要となり、回転行列変換の単純繰り返し演算処理として平面折り曲げ演算処理により、円筒面近似平面のモデリング座標変換を遂行する。
【0085】
また、2.5Dアドレス生成回路の制御パラメータの切り替え処理については、2.5Dアドレス生成パラメータを円筒面近似平面毎に演算して予め複数のレジスタとしてレジスタファイルに格納しておき、円筒面近似平面折り曲げ境界に対応してレジスタ切り替えすることにより、円筒面アドレスを生成する。
【0086】
さらに、円筒面近似平面のモデリング座標変換については、円筒面近似用平面に入力映像をマッピング処理するための座標変換演算で、所要円筒面にあわせて回転座標変換の繰り返し処理を行う。
【0087】
実施形態で説明したステレオ3D映像特殊効果装置は、単面、ページターン、ロールターン、ジッパー、クオドラント効果に特に有効である。また、実施形態で提案した方法は、折り曲げ境界の工夫により、平面から球面への変形効果の拡張が期待できる。
【0088】
また、ステレオ3DのR/L画像をフィールドシーケンシャル、ラインバイライン、サイドバイサイド方式で処理する場合には、R/L制御パラメータを各々レジスタファイルに格納しておき、R/L用に適用するレジスタファイルを切り替えることで、1chのDVEでステレオ3D対応が可能となる。
【0089】
また、平面の折り曲げ表示用の2.5Dアドレスジェネパラメータを算出してレジスタファイルに格納しておく。平面折り曲げ境界線方程式に従い、折り曲げ平面に該当する2.5Dアドレスジェネパラメータのレジスタファイル切り替えをして、平面で円筒面近似表示を行う。
【0090】
円筒面の近視点面と遠視点面とは別々に処理を行い、エフェクトメモリの画郭アドレスを判定して、画郭アンチ処理を行った後、映像合成して出力する。
【0091】
上述したステレオ3D映像特殊効果装置は、実施形態での説明に限定されることはなく、自明な範囲でその構成や動作・処理を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、ステレオ3D映像編集やライブ映像切り替え用途における、放送業界やマルティメディア業界やアーカイブマーケット等において広く応用展開し利用できる。
【符号の説明】
【0093】
610・・近視点側用映像特殊効果処理回路、611・・映像メモリwrite側、612・・映像メモリread側、613・・2.5Dアドレス生成回路、614・・レジスタファイル、620・・遠視点側用映像特殊効果処理回路、630・・TOP/BOTTOM合成回路、641・・CPU、642・・画郭アンチ処理部、650・・曲面の平面折り曲げ近似用の平面パラメータ切替回路、651・・折り曲げ境界線の粗分割関数回路、652・・微小面切替判定回路、653・・精細な微小平面への分割関数、6000・・ステレオ3D映像特殊効果装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元映像の曲面を、所定の角度で所定の間隔だけ離間して繰り返し曲折された複数の短冊状平面の連続として三次元映像を生成することで、前記曲面の三次元効果を実現する
ことを特徴とするステレオ3D映像特殊効果装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステレオ3D映像特殊効果装置において、
三次元映像として表現するべき映像の前記曲面は、ページめくりにより生成される映像の曲面である
ことを特徴とするステレオ3D映像特殊効果装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のステレオ3D映像特殊効果装置において、
二次元映像の曲面を、所定の角度で所定の間隔だけ離間して繰り返し曲折された複数の短冊状平面の連続として三次元映像を生成する場合に、
近視点側と遠視点側とに分割して処理した後に合成処理する
ことを特徴とするステレオ3D映像特殊効果装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のステレオ3D映像特殊効果装置において、
前記複数の短冊状平面の曲折境界ごとに、アドレス生成回路の制御パラメータを切り替える
ことを特徴とするステレオ3D映像特殊効果装置。
【請求項5】
請求項4に記載のステレオ3D映像特殊効果装置において、
前記アドレス生成回路は2.5Dアドレス生成回路であり、
前記制御パラメータはレジスタに格納されており、
レジスタファイルの中に予め格納されている複数の前記レジスタの中から選択されたレジスタに対応して、前記2.5Dアドレス生成回路にアドレスを生成させる
ことを特徴とするステレオ3D映像特殊効果装置。
【請求項6】
請求項5に記載のステレオ3D映像特殊効果装置において、
前記レジスタファイルは、曲折境界を示すパラメータが記憶された第一のレジスタファイルと曲折角度を示すパラメータが記憶された第二のレジスタファイルとである
ことを特徴とするステレオ3D映像特殊効果装置。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載のステレオ3D映像特殊効果装置において、
オペレータからの入力指示に対応して前記アドレス生成回路の制御パラメータが切り替えられる
ことを特徴とするステレオ3D映像特殊効果装置。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載のステレオ3D映像特殊効果装置において、
前記短冊状平面の曲折処理に関する曲折アドレスから曲面外郭部分を判定し、抽出した前記曲面外郭部分に対してアンチエイリアス処理を遂行する
ことを特徴とするステレオ3D映像特殊効果装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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