説明

ステント作製用口腔模型の製造方法、ステント製造方法、ステント作製用口腔模型の製造装置およびステント作製用口腔模型の製造システム

【課題】高精度な形状のサージカルステントを簡単に、かつ実際の使用状態に近い状態をシミュレートしながら、製造することのできるステント作製用口腔模型の製造方法を提供する。
【解決手段】顎骨形状データ上でインプラントの埋入位置に、仮想的な棒の形状の軸線方向と埋入されるインプラントの軸線方向とを一致させるようにして、インプラントの埋入位置および軸線方向を決定し、仮想的なドリルガイド部品を、棒の形状データに挿入させて位置合わせすることによって、顎骨形状データに対するドリルガイド部品の位置及び方向を決定し、顎骨形状データに対して位置合わせされた口腔形状データから、位置決定した棒の形状データおよびドリルガイド部品の形状データを差し引くことによって、ステント作製用口腔模型データを作成し、ステント作製用口腔模型データに基づいて、ステント作製用口腔模型を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用のインプラント埋入手術時に使用するサージカルステント(以下、単にステントと称する)の製造時に用いるステント作製用口腔模型の製造方法、ステント作製用口腔模型を用いたステントの製造方法、ステント作製用口腔模型の製造装置およびステント作製用口腔模型の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯の欠損箇所に入れ歯(義歯)を取り付ける技術として、インプラント法が広く用いられている。インプラント法は、患者の歯の欠損箇所の床(歯茎等の肉質部)および顎骨に穴を開け、その穴に棒状のインプラントを埋入し、そのインプラントの端部に入れ歯を取り付けるものである。
【0003】
インプラント法においては、インプラントを顎骨で支持するため、インプラントの埋入位置における顎骨の強度が十分あり、かつ形状がインプラント埋入に適していることが望まれる。
従来、インプラント埋入位置の決定は、手術により床を切り開いて顎骨形状を目視で確認して行われていた。しかし、この方法では、顎骨の一部のみが目視できるだけで、正確な顎骨形状やその厚み等の把握が難しく、また患者への肉体的負担が大きいという問題がある。
【0004】
そこで、近年は、CTスキャン等の技術を用いて患者の顎骨の三次元形状をスキャンして顎骨形状データを生成し、顎骨形状データにより表される顎骨形状を、コンピュータの制御部により実現される三次元形状処理手段を用いてディスプレイして、その顎骨形状に基づいてインプラントの埋入位置を決定する手法が普及しつつある。
この方法では、顎骨の正確な三次元形状を把握できるからインプラントの埋入位置を適切に決定できる上、床を切り開く方法に比較して患者への肉体的負担が小さいという利点がある。
【0005】
特許文献1には、患者の顎骨のCTスキャン画像を用いてインプラントの埋入位置を決定する技術、および、施術時の埋入穴の位置決め用のステントの製造方法を含む、インプラント埋入穴開け施術の方法が記載されている。
以下、特許文献1に記載されたインプラント埋入穴開け施術の方法を説明する(特許文献1 段落0041−0048,0062−0070参照)。
【0006】
まず、インプラント施術の対象とする患者の歯牙列の印象を作製する。そして、その印象から患者の歯牙列の石膏模型(口腔模型)を作製し、これに透明アクリル樹脂等を冠せてステントを作製する。
続いて、ステントに3次元位置決め用マーカを設置する。
次に、マーカ付きステントを患者の口腔に装着した状態で、患者の顎部をX線CT撮影(CTスキャン)する。
続いて、コンピュータ上で、顎部X線CT画像を表示し、顎骨に対するインプラント埋入位置方向を決定する。顎骨に対するインプラントの埋入位置が決まると、顎部とともにCTスキャンされたステントに対する、インプラント埋入ガイド孔(ガイド穴)の開設位置も決まる。このステントに対するガイド孔の開設位置を表すガイド孔加工データを、コンピュータにより算出する。
続いて、ステントをガイド孔加工装置(フライス盤)にセットし、算出したガイド孔加工データに基づいてガイド孔加工装置を制御して、ステントにインプラント埋入ガイド孔を形成する。
そして、ステントを患部に装着し、インプラント埋入ガイド孔を用いて、患者の顎部にインプラント埋入穴を加工する施術を行う。
【0007】
特許文献1に記載された技術では、ステント本体の形状を石膏模型(口腔模型)に合わせて形成した後、患者の口腔内にステントを取り付けて、顎部をステントごとCTスキャンするから、CTスキャンで生成される顎骨形状データとステントの形状データとは、正確に位置合わせされている。したがって、コンピュータ上で、顎骨形状データが表す顎骨形状上のインプラントの埋入位置を決めれば、ステントのガイド孔の形成位置も正確に求めることができる。
【0008】
また、従来、インプラントに取り付けられる入れ歯(義歯)の製造には、特許文献1の段落0019等に記載されているように、上記のような構成で製造されたステントが用いられる。詳しくは、ステントのガイド孔の位置に合わせて、入れ歯本体にインプラント取り付け部としての開口部を形成し、さらに、ステントのガイド孔に前記インプラント取り付け部を位置合わせした際にステント本体に当接する前記入れ歯本体の当接箇所を、そのステント本体の形状に合わせて形成する技工処理を行う。ステント本体は患者の口腔内の形状に合わせて形成されているから、入れ歯の形状をステント形状に合わせることにより、入れ歯はインプラントに取り付けた際に患者の口腔内の形状に合う。
また、インプラントに取り付けられる入れ歯の従来の形成方法として、患者の口腔を型取った口腔模型の形状に合わせる方法もある。
【0009】
【特許文献1】特開2003−245289号公報(段落0041−0048,0062−0070)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されたステントの製造方法では、ステントを患者に装着してCTスキャンをとるといった手間が掛かり、手軽に複数のステントを製造したりステントを何回も作り直したりすることができないという課題がある。
【0011】
本願発明は、上記課題を解決すべく成され、その目的とするところは、高精度な形状のステントを簡単に、かつ実際の使用状態に近い状態をシミュレートしながら、製造することのできるステント作製用口腔模型の製造方法、ステントの製造方法、ステント作製用口腔模型の製造装置およびステント作製用口腔模型の製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るステント作製用口腔模型の製造方法は、上記課題を解決するために、以下の構成を備える。
すなわち、顎骨にインプラント埋入用の穴を開けるためのドリルを進入させるガイド孔が形成されており、インプラント埋入時に患者の口腔内に配置してインプラント埋入用の穴を開けるための補助に用いるステントを製造する際に用いるステント作製用口腔模型を製造する方法において、患者の顎骨をスキャンして顎骨の三次元位置を示す顎骨形状データを生成するステップと、患者の口腔を型取った口腔模型をスキャンして口腔内形状の三次元位置を示す口腔形状データを生成するステップと、前記ステントに取り付ける部品であって、前記ガイド孔が形成されている筒状のドリルガイド部品の形状データが記憶部内に記憶されているコンピュータを用い、コンピュータの制御部により実現される三次元形状処理手段を用いて顎骨形状データと口腔形状データとを相対的に位置合わせすることによって、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置を決定して記憶するステップと、前記ガイド孔の径と同一の径を有する棒の形状データを予め記憶させておき、前記三次元形状処理手段を用いて、該棒の形状データを前記顎骨形状データ上でインプラントの埋入位置に、棒の形状の軸線方向と埋入されるインプラントの軸線方向とを一致させるようにして、インプラントの埋入位置および軸線方向を決定するステップと、前記記憶部に記憶されているドリルガイド部品の形状データを読み出し、前記三次元形状処理手段を用いて、読み出したドリルガイド部品の形状データのガイド孔を、前記位置を決定した棒の形状データに挿入させると共に、ドリルガイド部品の形状データの下面又は上面を顎骨形状データの上面又は下面に当接させるように位置合わせすることによって、顎骨形状データに対するドリルガイド部品の形状データの位置及び方向を決定して記憶するステップと、前記顎骨形状データに対して位置合わせされた口腔形状データから、前記顎骨形状データに対して位置合わせされた棒の形状データおよびドリルガイド部品の形状データを差し引くことによって、ステント作製用口腔模型データを作成するステップと、前記ステント作製用口腔模型データに基づいて、棒の形状とドリルガイド部品の形状とがインプラント埋入位置において差し引かれた形状のステント作製用口腔模型を作製するステップと、を含むことを特徴としている。
これによれば、仮想的な顎骨形状と仮想的な口腔形状を位置合わせして、その顎骨形状を基準としてインプラントの埋入位置を決定した上で、口腔形状からそのインプラントが埋入されるはずの穴と、その穴の周囲に配置されるドリルガイド部品との形状を差し引いた口腔形状を表す口腔模型を形成する。したがって、顎骨形状を基準としたインプラントの埋入位置と、床を含む口腔形状との相対的な位置とを正確に表した口腔模型を得ることができる。
【0013】
また、本発明にかかるステントの製造方法によれば、請求項1に記載された製造方法によって製造されたステント作製用口腔模型の、棒の形状が差し引かれて形成された穴に挿入可能であってドリルガイド部品を配置する際にガイドとして用いるガイドピンを、ドリルガイド部品のガイド孔に挿入し、該ガイドピンを棒の形状が差し引かれて形成された穴に挿入させることによりステント作製用口腔模型にドリルガイド部品を配置し、該ドリルガイド部品の周囲にステントの生成材料を密着・固化させることによって、ドリルガイド部品がインプラント埋入位置に設けられたステントを製造することを特徴としている。
これによれば、顎骨形状との位置関係を正確に表した口腔模型によって、ステントを製造することができるので、インプラントを埋入する施術がより正確に行えるようなステントを得ることができる。
【0014】
本発明にかかるステント作製用口腔模型の製造装置によれば、顎骨にインプラント埋入用の穴を開けるためのドリルを進入させるガイド孔が形成されており、インプラント埋入時に患者の口腔内に配置してインプラント埋入用の穴を開けるための補助に用いるステントを製造する際に用いるステント作製用口腔模型を製造する装置において、顎骨スキャン装置によって測定された患者の顎骨の三次元位置を示す顎骨形状データが記憶される顎骨形状データ記憶部と、口腔模型スキャン装置によって測定された口腔内形状の三次元位置を示す口腔形状データが記憶される口腔形状データ記憶部と、インプラントの埋入位置及び埋入されるインプラントの軸線方向を示すと共に、前記ガイド孔の径と同一の径を有する仮想的な棒の形状データが記憶されている棒の形状データ記憶部と、前記ステントに取り付ける部品であって、前記ガイド孔が形成されている筒状のドリルガイド部品の形状データが記憶されているガイド部品形状データ記憶部と、画像を表示する表示手段と、前記顎骨形状データ、口腔形状データ、棒の形状データおよびドリルガイド部品の形状データに基づいて、顎骨形状、口腔形状、棒の形状およびドリルガイド部品の形状を三次元的に前記表示手段に表示させる三次元形状処理手段と、前記三次元形状処理手段によって、顎骨形状データと口腔形状データとを相対的に位置合わせすることによって、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置を決定した場合に、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置データを記憶する口腔形状位置記憶部と、前記三次元形状処理手段によって、前記顎骨形状データ上で、棒の形状データ記憶部に記憶された仮想的な棒を、棒の形状の軸線方向と埋入されるインプラントの軸線方向とを一致させるようにして、インプラントの埋入位置および軸線方向を決定した場合に、顎骨形状データに対する棒の形状データの位置データを記憶する棒の形状位置記憶部と、前記三次元形状処理手段によって、前記顎骨形状データ上で、前記部品形状データ記憶部に記憶されているドリルガイド部品の形状データを、決定されたインプラントの埋入位置および軸線方向に合わせると共に、ドリルガイド部品の下面又は上面を顎骨の上面又は下面に当接させるように位置合わせすることによって、顎骨形状データに対するドリルガイド部品の形状データの位置及び方向を決定した場合に、ドリルガイド部品の位置データおよび軸線方向データを記憶するガイド部品位置記憶部と、前記口腔形状位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされた口腔形状と、前記棒の形状位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされた棒の形状と、前記ガイド部品位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされたドリルガイド部品の形状とを前記表示手段に表示させ、口腔形状データから棒の形状データとドリルガイド部品の形状データとを差し引いた形状のステント作製用口腔模型データを作成する口腔模型データ作成手段と、を具備することを特徴としている。
この構成を採用することによる作用は以下のとおりである。
すなわち、仮想的な顎骨形状と仮想的な口腔形状を位置合わせして、その顎骨形状を基準としてインプラントの埋入位置を仮想的な棒状のデータを用いて決定した上で、その穴の周囲に配置されるドリルガイド部品も顎骨形状を基準として決定する。そして、棒の形状とドリルガイド部品の形状とを差し引いた口腔形状を表す口腔模型を形成する。したがって、顎骨形状を基準としたインプラントの埋入位置と、床を含む口腔形状との相対的な位置とを正確に表したステント作製用口腔模型を得ることができる。
【0015】
また、本発明に係るステント作製用口腔模型の製造システムによれば、顎骨にインプラント埋入用の穴を開けるためのドリルを進入させるガイド孔が形成されており、インプラント埋入時に患者の口腔内に配置してインプラント埋入用の穴を開けるための補助に用いるステントを製造する際に用いるステント作製用口腔模型を製造するシステムにおいて、患者の顎骨をスキャニングする顎骨スキャン装置と、患者の口腔模型をスキャニングする口腔模型スキャン装置と、顎骨スキャン装置によって測定された患者の顎骨の三次元位置を示す顎骨形状データが記憶される顎骨形状データ記憶部と、口腔模型スキャン装置によって測定された口腔内形状の三次元位置を示す口腔形状データが記憶される口腔形状データ記憶部と、インプラントの埋入位置及び埋入されるインプラントの軸線方向を示すと共に、前記ガイド孔の径と同一の径を有する仮想的な棒の形状データが記憶されている棒の形状データ記憶部と、前記ステントに取り付ける部品であって、前記ガイド孔が形成されている筒状のドリルガイド部品の形状データが記憶されているガイド部品形状データ記憶部と、画像を表示する表示手段と、前記顎骨形状データ、口腔形状データ、棒の形状データおよびドリルガイド部品の形状データに基づいて、顎骨形状、口腔形状、棒の形状およびドリルガイド部品の形状を三次元的に前記表示手段に表示させる三次元形状処理手段と、前記三次元形状処理手段によって、顎骨形状データと口腔形状データとを相対的に位置合わせすることによって、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置を決定した場合に、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置データを記憶する口腔形状位置記憶部と、前記三次元形状処理手段によって、前記顎骨形状データ上で、棒の形状データ記憶部に記憶された仮想的な棒を、棒の形状の軸線方向と埋入されるインプラントの軸線方向とを一致させるようにして、インプラントの埋入位置および軸線方向を決定した場合に、顎骨形状データに対する棒の形状データの位置データを記憶する棒の形状位置記憶部と、前記三次元形状処理手段によって、前記顎骨形状データ上で、前記部品形状データ記憶部に記憶されているドリルガイド部品の形状データを、決定されたインプラントの埋入位置および軸線方向に合わせると共に、ドリルガイド部品の下面又は上面を顎骨の上面又は下面に当接させるように位置合わせすることによって、顎骨形状データに対するドリルガイド部品の形状データの位置及び方向を決定した場合に、ドリルガイド部品の位置データおよび軸線方向データを記憶するガイド部品位置記憶部と、前記口腔形状位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされた口腔形状と、前記棒の形状位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされた棒の形状と、前記ガイド部品位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされたドリルガイド部品の形状とを前記表示手段に表示させ、口腔形状データから棒の形状データとドリルガイド部品の形状データとを差し引いた形状のステント作製用口腔模型データを作成する口腔模型データ作成手段と、前記ステント作製用口腔模型データに基づいて、棒の形状とドリルガイド部品の形状とがインプラント埋入位置において差し引かれた形状のステント作製用口腔模型を作製する三次元モデル作製手段と、を具備することを特徴としている。
【0016】
さらに、前記三次元モデル作製手段は、ラピッドプロトタイピング装置であることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るステント作製用口腔模型の製造方法、製造装置および製造システムによれば、インプラントの埋入位置やその軸線方向、およびドリルガイド部品の位置も正確に特定できる口腔模型を得ることができる。
また本発明に係るステントの製造方法によれば、インプラントの埋入位置やその軸線方向、およびドリルガイド部品の位置も正確に特定できるステントを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るステント作製用口腔模型の製造方法、これを用いたステントの製造方法、ステント作製用口腔模型の製造装置およびステント作製用口腔模型の製造システムの最良の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
インプラントを患者に埋入する施術を実行する際には、インプラント埋入位置を特定し、この位置に正確にインプラント埋入穴を形成しなくてはならない。そこで、施術時には治具であるステントが用いられる。
【0020】
ステントの一例を図20に示す。
ステント55は、インプラントの埋入施術の際に、患者の口腔内にセットされ、患者のインプラント埋入位置における顎骨にインプラント埋入穴をあけるためのドリルのガイド孔が形成されている治具である。
したがって、ステントを正確に製造することによって、それを用いたインプラントの埋入の施術も正確に行える。
【0021】
本実施形態では、ステント55に設けるガイド孔を、金属製の筒状の部材によって構成するようにしている。この筒状の部材を、ドリルガイド部品54と称し、この部品54をステント55に埋め込んで用いることによって、ガイド孔は正確にまっすぐにさせることができ、ドリルによる顎骨の穴あけ施術を正確な位置に施すことができる。
【0022】
まず、図1のフロー図に沿って、本実施形態に係るステント作製用口腔模型の製造方法およびステントの製造方法について概略的な流れを説明する。
【0023】
まず、インプラント施術を行う患者の口腔内の型取りを行う(ステップS1)。
続いて、前記型取りに基づいて口腔模型40(図3参照)を作製する(ステップS2)。
続いて、この口腔模型40を用いて、図4に示すような基準治具2を作製する(ステップS3)。
【0024】
続いて、口腔模型40の三次元形状をレーザスキャンして(ステップS4)、患者の口腔形状を表す口腔形状データを生成し、コンピュータ4の口腔形状データ記憶部24(図2参照)に記憶する(ステップS5)。
さらに、患者の顎部をX線CTスキャンして(ステップS6)、患者の顎骨形状を現す顎骨形状データを生成し、コンピュータ4の顎骨形状データ記憶部22に記憶する(ステップS7)。
【0025】
続いて、コンピュータ4の制御部12により実現される三次元形状処理手段20を用いて、前記顎骨形状データが表す仮想的な顎骨形状44の三次元位置と、前記口腔形状データが表す仮想的な口腔形状42の三次元位置とを相対的に位置合わせする(ステップS8)。
【0026】
続いて、三次元形状処理手段20を用いて、仮想的な顎骨形状44上におけるインプラントの埋入位置を決定する(ステップS9)。インプラントの埋入位置には、顎骨を削る際に用いるドリルが進入するドリル用進入孔が形成されるよう、三次元形状処理手段20がデータ処理を実行する。
【0027】
続いて、三次元形状処理手段20を用いて、仮想的な顎骨形状44上におけるドリルガイド部品の配置位置を決定する(ステップS10)。
ドリルガイド部品とは、上述したように、ステントのガイド孔を形成するための金属製の筒状の部品である。
【0028】
次に、仮想的な顎骨形状に位置合わせされた仮想的な口腔形状42から、インプラントの埋入位置におけるドリル用進入孔の形状と、ドリルガイド部品の形状を差し引くことで、ステント作製用の口腔形状データを生成する(ステップS11)。
【0029】
続いて、前記口腔形状データに基づいて、光造形等の三次元モデル作製手段10を用いて、インプラントの埋入位置におけるドリル用進入孔と、インプラントの埋入位置における仮想的なドリルガイド部品の形状が差し引かれた口腔形状を表す、口腔模型50を形成する(ステップS12)。
【0030】
そして、口腔模型50を利用して、ステント55を製造する(ステップS13)。
【0031】
このように、本実施形態のステント作製用口腔模型の製造方法、ステントの製造方法では、顎骨形状を基準に決定された埋入位置にドリル進入孔の位置と、ドリルガイド部品の配置位置が正確に特定されたステント作製用口腔模型50を製造できる。このため、このステント作製用口腔模型50を用いてステント55を作製すると、正確な位置にドリルガイド部品54が配置されたステント55を得ることができる。
【0032】
続いて、本実施形態に係るインプラント埋入時に用いるステントの製造に用いるステント作製用口腔模型の製造システムについて、図2を参照して説明する。
ステント作製用口腔模型の製造システム(以下、単に製造システムと称する場合もある)Sは、通常用いられるコンピュータ4を備えており、このコンピュータ4は、CTスキャン装置6と、レーザスキャン装置8と、ラピッドプロトタイピング装置10とデータ通信可能に接続されている。
なお、特許請求の範囲でいうステント作製用口腔模型の製造装置が、本実施形態のコンピュータ4に該当する。
【0033】
コンピュータ4は、ハードディスクやメモリ等の記憶部11と、CPUを有し、記憶部11等に記憶(インストール)されたソフトウェアプログラムを実行することで、三次元形状処理手段20等の各種の機能を実現する制御部12と、ディスプレイ等の表示手段14と、マウスやキーボード等の入力手段16と、CTスキャン装置6、レーザスキャン装置8、およびラピッドプロトタイピング装置10との間でデータ通信する通信手段18とを備える。
【0034】
なお、製造システムSは、三次元形状処理手段20を実現するコンピュータ4と、CTスキャン装置6、レーザスキャン装置8、およびラピッドプロトタイピング装置10とが、必ずしも直接通信可能に接続されていたり、近接して設けられていたりする構成に限定されるものではなく、コンピュータ4と各装置間のデータのやり取りを、例えば補助記憶装置を用いて行うよう構成されていても良い。
【0035】
本実施形態のCTスキャン装置6が、特許請求の範囲でいう顎骨スキャン装置に該当し、本実施形態のレーザスキャン装置8が、特許請求の範囲でいう口腔模型スキャン装置に該当する。
また、本実施形態のラピッドプロトタイピング装置10としては、光造形装置や三次元プリンター装置(石膏等の粉末を層状に敷いてインクジェット方式で一面の形状を描いて固め、それを複数枚積層して所望の三次元形状を作製する装置)等、公知の装置を任意に用いることができる。
さらに、三次元モデル作製手段としては、ラピッドプロトタイピング装置には限定されることはなく、他の装置であってもよい。例えば、CAM制御の加工装置によって、石膏塊を機械加工して所望の形状を成形する装置であってもよい。
【0036】
コンピュータ4の記憶部11上には、CTスキャン装置6によって測定された顎骨形状の三次元位置を示す顎骨形状データが記憶される顎骨形状データ記憶部22が構成される。
【0037】
また、コンピュータ4の記憶部11上には、レーザスキャン装置8によって測定された口腔模型の三次元位置を示す口腔形状データが記憶される口腔形状データ記憶部24が構成される。
【0038】
また、コンピュータ4の記憶部11上には、インプラントの埋入位置を表示手段上で指示するための仮想的な棒の形状データが記憶される棒の形状データ記憶部26が構成される。ここで、仮想的な棒は、インプラントの埋入位置を決定する際に表示手段14上で補助的に用いられる補助具であり、その径はドリルの径(ドリルガイド部品のガイド孔の径)と同一である。ドリルの径が複数種類想定される場合には、棒の形状データは径が異なるごとに複数種類、棒の形状データ記憶部26に記憶させておいてもよい。
【0039】
また、コンピュータ4の記憶部11上には、ドリルガイド部品の形状データが記憶されるガイド部品形状データ記憶部28が構成される。
【0040】
また、コンピュータ4の記憶部11上には、三次元形状処理手段20によって、顎骨形状データと口腔形状データとが位置合わせされた場合に、顎骨形状データに対して位置合わせされた口腔形状データの位置をデータとして記憶する口腔形状位置記憶部30が構成される。
【0041】
また、コンピュータ4の記憶部11には、三次元形状処理手段20によって、棒の形状データ記憶部26に記憶されている仮想的な棒を顎骨形状データ上でインプラントの埋入位置に移動させて埋入位置と軸線方向を決定した場合に、顎骨形状データに対して位置合わせされた棒の形状データの位置をデータとして記憶する棒の形状位置記憶部32が構成される。
【0042】
また、コンピュータ4の記憶部11上には、三次元形状処理手段20によって、ガイド部品形状データ記憶部28に記憶されているドリルガイド部品を顎骨形状データ上でインプラントの埋入位置に移動させて埋入位置と軸線方向を決定した場合に、顎骨形状データに対して位置合わせされたドリルガイド部品の位置をデータとして記憶するガイド部品位置記憶部34が構成される。
【0043】
コンピュータ4の三次元形状処理手段20は、コンピュータ4にインストールされたソフトウェアプログラムが制御部12に実行されることで実現される。
三次元形状処理手段20は、顎骨形状データ、口腔形状データ、棒の形状データ、ドリルガイド部品の形状データ等の三次元形状データが示す三次元形状を、二次元的な画像に変換して表示手段14に表示させる。
また、三次元形状処理手段20は、三次元形状の観察方向を連続的に変更(例えば回転など)させたり、複数の三次元形状の間の相対的な位置関係を変更(移動)させたり、表示された複数の三次元形状の間でブーリアン演算を行って一方の三次元形状から他方の三次元形状を差し引いたりするなどの立体形状処理を行うことができる。
【0044】
また、コンピュータ4は、顎骨形状データに対して位置合わせされた口腔形状から、顎骨形状データに対して位置合わせされた棒の形状と、顎骨形状データに対して位置合わせされたドリルガイド部品の形状を差し引いた形状のステント作製用口腔模型データを生成する口腔模型データ作成手段36を備えている。
口腔模型データ作成手段36は、コンピュータ4にインストールされたソフトウェアプログラムが制御部12に実行されることで実現される。なお、このような口腔模型データ作成手段36は、三次元形状処理手段20の一機能として設けられていてもよい。
【0045】
口腔模型データ作成手段36によって作製されたステント作製用口腔模型データにおいては、インプラントの埋入位置に形成された棒の形状の痕が、上述したドリル用進入孔となる。
【0046】
図1に示した本実施形態に係るステント作製用口腔模型の製造方法およびこれを用いたステントの製造方法について、さらに以下に詳細に説明する。
【0047】
インプラント施術を行う患者の口腔内の型取りを行うステップ(ステップS1)では、シリコン材を付けたトレーを患者の口腔内に入れ、患者がトレーを噛むことでシリコン材に患者の口腔形状を印象する(歯型を取る)。
続いて、シリコン材に石膏を流し込んで、石膏を固化させることで、石膏製の口腔模型40を作製する(ステップS2)。口腔模型40の形状は、図3に示す。
この型取り(ステップS1)および口腔模型40の作製(ステップS2)の方法は周知技術であるので詳しい説明は省略する。
【0048】
続いて、この石膏製の口腔模型12を用いて、図4に示すような基準治具2を作製する(S3)。基準治具2は、マウスピース部2aと、基準形状部2bとを備える。
マウスピース部2aは、患者の口腔形状、特に好適には上顎部の形状に、合致するよう形成する。マウスピース部2aは、例えば、口腔模型40の上顎部の表面に樹脂等を被せ固化させることで形成することができる。なお、図4に示した基準治具2のマウスピース部2aは、レーザやX線を透過しやすい透明樹脂で構成されている。
【0049】
基準形状部2bは、レーザスキャンやX線CTスキャンで撮像可能なように造影剤を混合した樹脂で構成され、マウスピース部2aに対して固定して設けられる。また、特に限定されないが、基準形状部2bは、患者がマウスピース部2aを口腔内に装着した際に、口外に突出する位置に設けると良い。また、基準形状部2bの形状は、特に限定されるものではないが、マウスピース部2aから水平に延び、長さ数cmの箇所で直角に下方へ屈曲するアーム部と、アーム部から患者を基準として左右に真っ直ぐに延びる延出部とが形成されている。延出部の形状は角柱状であり、延出部には、円状の貫通孔が、長手方向に複数並んで形成されている。
【0050】
続いて、レーザスキャン装置8で口腔模型40の三次元形状をレーザスキャンして(ステップS4)、患者の口腔形状を表す口腔形状データを生成し、通信手段18を介してコンピュータ4の口腔形状データ記憶部24に記憶する(ステップS5)。このスキャンの方式は、レーザスキャンに限定されるものではなく、例えばX線CTスキャンや、レーザスキャン以外の光学スキャン等を採用することもできる。特に患者のX線CTを測定する装置と同一のCTスキャン装置を用いて測定することは、形状データの取り扱いを統一的に行えるため有益である。
このレーザスキャン(ステップS4)を行う際には、図5に示すように、口腔模型40に基準治具2を取り付け、口腔模型40を基準治具2ごとスキャンする。
【0051】
図6は、図5に示した口腔模型40と基準治具2とをスキャンしてコンピュータ4の口腔形状データ記憶部24に記憶された口腔形状データが表す仮想的な口腔形状42および基準治具形状3aを、三次元形状処理手段20が二次元画像化して表示手段14に表示した画像を示す。
なお、図5,図6には写っていないが、口腔模型40および口腔形状データには図7に示すように歯弓部の内側の形状も反映されている。
【0052】
次に、顎骨のスキャン(ステップS6)および顎骨形状データの生成(ステップS7)について説明する。なお、これらの工程は、口腔模型40のスキャン(ステップS4)および口腔形状データの生成(ステップS5)との工程の時間的な前後関係の制約はない。
まず、CTスキャン装置6で患者の顎骨の三次元形状をX線CTスキャンして(ステップS6)、患者の顎骨形状を表す顎骨形状データを生成し、通信手段18を介してコンピュータ4の顎骨形状データ記憶部22に記憶する(ステップS7)。このスキャンの方式は、X線CTスキャンに限定されるものではなく、例えばMRI等の他のスキャン方法を採用することもできる。
このX線CTスキャン(ステップS6)を行う際には、図8に示すように、患者の口腔部に基準治具2を取り付け、患者の顎部を基準治具2ごとスキャンする。
【0053】
図9は、患者の顎骨と基準治具2とをスキャンしてコンピュータ4の顎骨形状データ記憶部22に記憶された顎骨形状データが表す仮想的な顎骨形状44および基準治具形状3bを、三次元形状処理手段20が二次元画像化して表示手段14に表示した画像を示す。
【0054】
なお、口腔模型と患者の顎部の各スキャンS4,S6において、基準治具2は、患者の口腔の形状に形成されたマウスピース部2aを介して、それぞれ口腔模型と患者の口腔とに、相対的に等しく位置合わせされる。
【0055】
続いて、コンピュータ4の制御部12により実現される三次元形状処理手段20を用いて、図10に示すように、前記顎骨形状データが表す仮想的な顎骨形状44の三次元位置と、前記口腔形状データが表す仮想的な口腔形状42の三次元位置との相対的な位置を位置合わせする(ステップS8)。
【0056】
この際、位置合わせの基準として、顎骨形状データおよび口腔形状データのそれぞれに含まれる仮想的な基準治具形状3a,3bを利用する。具体的には、位置合わせステップS8では、顎骨形状データに含まれる基準治具の形状3bの三次元位置と、口腔形状データに含まれる基準治具の形状3aの三次元位置とを位置合わせすることで、仮想的な顎骨形状44の三次元位置と仮想的な口腔形状42の三次元位置とを位置合わせする。すなわち、顎骨形状データに含まれる基準治具の形状3bの三次元位置と、口腔形状データに含まれる基準治具の形状3aの三次元位置とが、完全に重なり合うように、両データの三次元位置を、三次元形状処理手段20上で相対的に移動させる。
なお、基準治具の形状3a,3bの位置を合わせる際、基準治具2の前記延出部に形成された円状の貫通孔に対応する形状を合わせることにより、位置合わせが容易かつ正確になる。
【0057】
なお、このとき、両基準治具の形状3a,3bのスケール(サイズ)が相対的に等しくない場合には、両基準治具の形状3a,3bが完全に重なり合うように、基準治具の形状3a,3bを含む仮想的な顎骨形状44と仮想的な口腔形状42とのスケールを相対的に拡大または縮小する。
本発明における位置合わせステップでの位置合わせは、仮想的な三次元空間内の移動だけでなく、このような拡大/縮小の概念も含む。
【0058】
位置合わせステップS8は、三次元形状処理手段20が顎骨形状データおよび口腔形状データのそれぞれから基準治具の形状3a,3bを自動認識して、両者が完全に重なるように移動および拡大/縮小の画像処理を行うよう構成すると良い。または、ユーザがマウスやキーボード等の入力手段16を操作して、仮想的な顎骨形状44および仮想的な口腔形状42を移動および拡大/縮小させて行うよう設けても良い。
【0059】
続いて、基準治具を省略した図面に基づいて、インプラントの埋入位置の決定ステップ等を詳細に説明していく。
図11は、三次元形状処理手段20によって、基準治具を含まない顎骨形状データが表す仮想的な顎骨形状44を表示手段14に表したところを示している。
図12は、三次元形状処理手段20によって、基準治具を含まない顎骨形状データが表す仮想的な顎骨形状44に対して、基準治具を含まない口腔形状データが表す仮想的な口腔形状42を、位置合わせしたところを示している。
【0060】
三次元形状処理手段20によって、仮想的な顎骨形状44に対する仮想的な口腔形状42の位置合わせが完了すると、決定した仮想的な口腔形状42の仮想的な顎骨形状44に対する位置は、口腔形状位置記憶部30に記憶される。
【0061】
次に、図13に示すように、三次元形状処理手段20によって、表示手段14に表示される画像を仮想的な顎骨形状44のみとし、この顎骨形状44に対してインプラントの埋入位置を決定する(ステップS9)。
インプラントの埋入位置の決定の際には、仮想的な棒45を用いる。棒45の形状データは、棒の形状データ記憶部26に記憶されている。インプラント埋入位置の決定に仮想的な棒45を用いることによって、埋入位置と、その方向が操作者にとってわかりやすくなる。
【0062】
三次元形状処理手段20によって、インプラントの埋入位置に仮想的な棒45を埋め込むように仮想的な棒45を移動させ、この棒の軸線方向をインプラントの軸線方向に合わせるように配置することによって、インプラントの埋入位置およびインプラントの軸線方向が決定される。三次元形状処理手段20は、決定された仮想的な棒45の位置を棒の形状位置記憶部32に記憶させる。
【0063】
仮想的な棒45の径は、ドリルガイド部品54に形成されたガイド孔の径と同一である。すなわち、棒45の径は、インプラントの埋入施術時に顎骨に穴をあけるドリルの径と同一であるということもできる。
【0064】
次に、図14に示すように、三次元形状処理手段20によって、表示手段14に表示される仮想的な棒45が配置された顎骨形状44に対してドリルガイド部品の配置位置を決定する(ステップS10)。
ドリルガイド部品の形状データは、ガイド部品形状データ記憶部28に記憶されており、三次元形状処理手段20によって、ガイド部品形状データ記憶部28から読み出した仮想的なドリルガイド部品46が表示手段14上で配置位置が決定される。
【0065】
なお、仮想的なドリルガイド部品46の配置位置については、すでに仮想的な棒45によってインプラントの埋入位置が決定されているので、仮想的なドリルガイド部品46のガイド孔を、棒45に挿入するように配置する。こうすることで、ドリルガイド部品の配置位置および軸線方向が容易に決定できる。
【0066】
また、図14のように下顎に対してインプラントを施術する場合には、仮想的なドリルガイド部品46の下面を、仮想的な顎骨形状44の上面に当接するように配置する。
なお、上顎に対してインプラントを施術する場合には、仮想的なドリルガイド部品46の上面を、仮想的な顎骨形状44の下面に当接するようにして配置する。
【0067】
そして、三次元形状処理手段20は、決定された仮想的なドリルガイド部品46の位置をガイド部品位置記憶部34に記憶させる。
【0068】
次に、図15に示すように、三次元形状処理手段20は、表示手段14に表示されている仮想的な顎骨形状44を表示手段14から消し、表示手段14には、仮想的な棒45と仮想的なドリルガイド部品46とが表示されている状態となる。このときの表示手段14における仮想的な棒45と仮想的なドリルガイド部品46とは、仮想的な顎骨形状44の位置に対して位置あわせされた位置を保持している。
【0069】
続いて、図16に示すように、三次元形状処理手段20は、先に顎骨形状と位置合わせしておいた口腔形状データの位置を口腔形状位置記憶部30から読み出し、口腔形状データ記憶部24に記憶された仮想的な口腔形状42を位置合わせした位置に表示させる。
すると、仮想的な口腔形状42に対して、仮想的な棒45と仮想的なドリルガイド部品46との位置が決定される。
【0070】
そして、図17に示すように、口腔模型データ作成手段36は、表示手段14に表示されている仮想的な口腔形状42から、仮想的な棒45の形状と仮想的なドリルガイド部品46の形状を差し引く(ステップS11)。これにより、口腔形状42において、仮想的な棒45の形状が差し引かれた部位はドリルが進入するためのドリル進入孔47として形成され、仮想的なドリルガイド部品46の形状が差し引かれた部位は、ドリルガイド部品46が配置される凹部48として形成される。
【0071】
なお、仮想的な口腔形状42から仮想的な棒45の形状と仮想的なドリルガイド部品46の形状を差し引く処理は、ブーリアン演算処理で行うことができる。ブーリアン演算の処理内容については周知事項であるため説明を省略する。
【0072】
口腔模型データ作成手段36が作成したステント作製用口腔模型データは、通信手段18を介してラピッドプロトタイピング装置10に送信される。
ラピッドプロトタイピング装置10では、送信されてきたステント作製用口腔模型データに基づいて、光造形法によって樹脂製のステント作製用口腔模型50を形成する(ステップS12)。
【0073】
なお、ステント作製用口腔模型50の形成は、光造形に限られることはなく、上述したように、石膏を層状に積み重ねる方式で行ってもよい。
【0074】
次に、図18〜図19に基づいて、ステント作製用口腔模型50を用いてステントを作製する方法について説明する。
図18では、形成されたステント作製用口腔模型50に、現実のガイドピン52と、現実のドリルガイド部品54を配置している所を示している。ガイドピン52は、ドリルガイド部品54をステント作製用口腔模型50に形成された凹部48に配置固定させるための治具である。ガイドピン52の径は、ドリルの径とほぼ同一の径であってドリル進入孔47に容易に挿入可能である。ガイドピン52は、ドリルガイド部品54のガイド孔に挿入され、ドリルガイド部品54を凹部48に配置せしめる。
【0075】
続いて、図19に示すように、ステント作製用口腔模型50に配置されたドリルガイド部品54の周囲をステントの生成材料で囲むとともに、ステント作製用口腔模型50にステント55の生成材料を密着させる。
本実施形態では、複数のドリルガイド部品54がステント作製用口腔模型50に配置されているので、複数のドリルガイド部品54が一体となるように生成材料が密着される。
【0076】
生成材料の具体例としては、即時重合レジン等を用いることができる。即時重合レジンは、粉材と液材とからなり、これらを混合することで粘性のあるスラリー状となるが、数分程度で固化するものである。
ただし、生成材料としては、即時重合レジンに限定するものではない。
【0077】
生成材料が固化した後、ガイドピン52をステント作製用口腔模型50から取り外す。すると、ドリルガイド部品54をインプラント埋入位置に正確に配置して形成されたステント55が完成する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のステント作製用口腔模型の製造方法およびステントの製造方法の概略的な流れを示すフロー図である。
【図2】本発明のステント作製用口腔模型の製造システムのブロック図である。
【図3】口腔模型を示す図である。
【図4】基準治具を示す図である。
【図5】口腔模型と、口腔模型に取り付けた基準治具とを示す図である。
【図6】口腔形状データが表す仮想的な口腔形状を表示した画像を示す図である。
【図7】口腔形状データが表す仮想的な口腔形状を表示した画像を示す図である。
【図8】患者と、患者に取り付けた基準治具とを示す図である。
【図9】顎骨形状データが表す仮想的な顎骨形状を表示した画像を示す図である。
【図10】仮想的な顎骨形状と仮想的な口腔形状とを位置合わせした状態の画像を示す図である。
【図11】基準治具を用いていない顎骨形状データが表す仮想的な顎骨形状を表示した画像を示す図である。
【図12】基準治具を用いていない仮想的な顎骨形状と、基準治具を用いていない仮想的な口腔形状とを位置合わせした状態の画像を示す図である。
【図13】仮想的な顎骨形状に対して仮想的な棒の形状を用いてインプラントの埋入位置を決定した状態の画像を示す図である。
【図14】仮想的な顎骨形状に対して仮想的な棒の形状を用いてインプラントの埋入位置を決定した後、仮想的なドリルガイド部品の配置位置を決定した状態の画像を示す図である。
【図15】仮想的な棒と仮想的なドリルガイド部品の位置をそのままにして仮想的な顎骨形状の画像を消したところを示す図である。
【図16】仮想的な口腔形状を表示させて仮想的な棒と仮想的なドリルガイド部品を位置合わせしたところを示す図である。
【図17】仮想的な口腔形状から、仮想的な棒の形状と仮想的なドリルガイド部品の形状とを差し引いて作成した、ステント作製用口腔模型データを示す図である。
【図18】ステント作製用口腔模型データから作製したステント作製用口腔模型に、ガイドピンによってドリルガイド部品を配置した所を示す図である。
【図19】ステント作製用口腔模型上でドリルガイド部品の周囲をステント生成材料で固めて患者の口腔形状に合わせたステントを形成しているところを示す図である。
【図20】ステントを示す図である。
【符号の説明】
【0079】
2,3 基準治具
4 コンピュータ
6 スキャン装置
8 レーザスキャン装置
10 ラピッドプロトタイピング装置
11 記憶部
12 口腔模型
12 制御部
14 表示手段
16 入力手段
18 通信手段
20 三次元形状処理手段
22 顎骨形状データ記憶部
24 口腔形状データ記憶部
26 形状データ記憶部
28 ガイド部品形状データ記憶部
30 口腔形状位置記憶部
32 形状位置記憶部
34 ガイド部品位置記憶部
36 口腔模型データ作成手段
40 口腔模型
42 仮想的な口腔形状
44 仮想的な顎骨形状
45 仮想的な棒
46 仮想的なドリルガイド部品
47 ドリル進入孔
48 凹部
50 ステント作製用口腔模型
52 ガイドピン
54 ドリルガイド部品
55 ステント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顎骨にインプラント埋入用の穴を開けるためのドリルを進入させるガイド孔が形成されており、インプラント埋入時に患者の口腔内に配置してインプラント埋入用の穴を開けるための補助に用いるステントを製造する際に用いるステント作製用口腔模型を製造する方法において、
患者の顎骨をスキャンして顎骨の三次元位置を示す顎骨形状データを生成するステップと、
患者の口腔を型取った口腔模型をスキャンして口腔内形状の三次元位置を示す口腔形状データを生成するステップと、
前記ステントに取り付ける部品であって、前記ガイド孔が形成されている筒状のドリルガイド部品の形状データが記憶部内に記憶されているコンピュータを用い、コンピュータの制御部により実現される三次元形状処理手段を用いて顎骨形状データと口腔形状データとを相対的に位置合わせすることによって、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置を決定して記憶するステップと、
前記ガイド孔の径と同一の径を有する棒の形状データを予め記憶させておき、前記三次元形状処理手段を用いて、該棒の形状データを前記顎骨形状データ上でインプラントの埋入位置に、棒の形状の軸線方向と埋入されるインプラントの軸線方向とを一致させるようにして、インプラントの埋入位置および軸線方向を決定するステップと、
前記記憶部に記憶されているドリルガイド部品の形状データを読み出し、前記三次元形状処理手段を用いて、読み出したドリルガイド部品の形状データのガイド孔を、前記位置を決定した棒の形状データに挿入させると共に、ドリルガイド部品の形状データの下面又は上面を顎骨形状データの上面又は下面に当接させるように位置合わせすることによって、顎骨形状データに対するドリルガイド部品の形状データの位置及び方向を決定して記憶するステップと、
前記顎骨形状データに対して位置合わせされた口腔形状データから、前記顎骨形状データに対して位置合わせされた棒の形状データおよびドリルガイド部品の形状データを差し引くことによって、ステント作製用口腔模型データを作成するステップと、
前記ステント作製用口腔模型データに基づいて、棒の形状とドリルガイド部品の形状とがインプラント埋入位置において差し引かれた形状のステント作製用口腔模型を作製するステップと、を含むことを特徴とするステント作製用口腔模型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された製造方法によって製造されたステント作製用口腔模型の、棒の形状が差し引かれて形成された穴に挿入可能であってドリルガイド部品を配置する際にガイドとして用いるガイドピンを、ドリルガイド部品のガイド孔に挿入し、該ガイドピンを棒の形状が差し引かれて形成された穴に挿入させることによりステント作製用口腔模型にドリルガイド部品を配置し、
該ドリルガイド部品の周囲にステントの生成材料を密着・固化させることによって、ドリルガイド部品がインプラント埋入位置に設けられたステントを製造することを特徴とするステントの製造方法。
【請求項3】
顎骨にインプラント埋入用の穴を開けるためのドリルを進入させるガイド孔が形成されており、インプラント埋入時に患者の口腔内に配置してインプラント埋入用の穴を開けるための補助に用いるステントを製造する際に用いるステント作製用口腔模型を製造する装置において、
顎骨スキャン装置によって測定された患者の顎骨の三次元位置を示す顎骨形状データが記憶される顎骨形状データ記憶部と、
口腔模型スキャン装置によって測定された口腔内形状の三次元位置を示す口腔形状データが記憶される口腔形状データ記憶部と、
インプラントの埋入位置及び埋入されるインプラントの軸線方向を示すと共に、前記ガイド孔の径と同一の径を有する仮想的な棒の形状データが記憶されている棒の形状データ記憶部と、
前記ステントに取り付ける部品であって、前記ガイド孔が形成されている筒状のドリルガイド部品の形状データが記憶されているガイド部品形状データ記憶部と、
画像を表示する表示手段と、
前記顎骨形状データ、口腔形状データ、棒の形状データおよびドリルガイド部品の形状データに基づいて、顎骨形状、口腔形状、棒の形状およびドリルガイド部品の形状を三次元的に前記表示手段に表示させる三次元形状処理手段と、
前記三次元形状処理手段によって、顎骨形状データと口腔形状データとを相対的に位置合わせすることによって、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置を決定した場合に、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置データを記憶する口腔形状位置記憶部と、
前記三次元形状処理手段によって、前記顎骨形状データ上で、棒の形状データ記憶部に記憶された仮想的な棒を、棒の形状の軸線方向と埋入されるインプラントの軸線方向とを一致させるようにして、インプラントの埋入位置および軸線方向を決定した場合に、顎骨形状データに対する棒の形状データの位置データを記憶する棒の形状位置記憶部と、
前記三次元形状処理手段によって、前記顎骨形状データ上で、前記部品形状データ記憶部に記憶されているドリルガイド部品の形状データを、決定されたインプラントの埋入位置および軸線方向に合わせると共に、ドリルガイド部品の下面又は上面を顎骨の上面又は下面に当接させるように位置合わせすることによって、顎骨形状データに対するドリルガイド部品の形状データの位置及び方向を決定した場合に、ドリルガイド部品の位置データおよび軸線方向データを記憶するガイド部品位置記憶部と、
前記口腔形状位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされた口腔形状と、前記棒の形状位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされた棒の形状と、前記ガイド部品位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされたドリルガイド部品の形状とを前記表示手段に表示させ、口腔形状データから棒の形状データとドリルガイド部品の形状データとを差し引いた形状のステント作製用口腔模型データを作成する口腔模型データ作成手段と、を具備することを特徴とするステント作製用口腔模型の製造装置。
【請求項4】
顎骨にインプラント埋入用の穴を開けるためのドリルを進入させるガイド孔が形成されており、インプラント埋入時に患者の口腔内に配置してインプラント埋入用の穴を開けるための補助に用いるステントを製造する際に用いるステント作製用口腔模型を製造するシステムにおいて、
患者の顎骨をスキャニングする顎骨スキャン装置と、
患者の口腔模型をスキャニングする口腔模型スキャン装置と、
顎骨スキャン装置によって測定された患者の顎骨の三次元位置を示す顎骨形状データが記憶される顎骨形状データ記憶部と、
口腔模型スキャン装置によって測定された口腔内形状の三次元位置を示す口腔形状データが記憶される口腔形状データ記憶部と、
インプラントの埋入位置及び埋入されるインプラントの軸線方向を示すと共に、前記ガイド孔の径と同一の径を有する仮想的な棒の形状データが記憶されている棒の形状データ記憶部と、
前記ステントに取り付ける部品であって、前記ガイド孔が形成されている筒状のドリルガイド部品の形状データが記憶されているガイド部品形状データ記憶部と、
画像を表示する表示手段と、
前記顎骨形状データ、口腔形状データ、棒の形状データおよびドリルガイド部品の形状データに基づいて、顎骨形状、口腔形状、棒の形状およびドリルガイド部品の形状を三次元的に前記表示手段に表示させる三次元形状処理手段と、
前記三次元形状処理手段によって、顎骨形状データと口腔形状データとを相対的に位置合わせすることによって、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置を決定した場合に、顎骨形状データに対する口腔形状データの位置データを記憶する口腔形状位置記憶部と、
前記三次元形状処理手段によって、前記顎骨形状データ上で、棒の形状データ記憶部に記憶された仮想的な棒を、棒の形状の軸線方向と埋入されるインプラントの軸線方向とを一致させるようにして、インプラントの埋入位置および軸線方向を決定した場合に、顎骨形状データに対する棒の形状データの位置データを記憶する棒の形状位置記憶部と、
前記三次元形状処理手段によって、前記顎骨形状データ上で、前記部品形状データ記憶部に記憶されているドリルガイド部品の形状データを、決定されたインプラントの埋入位置および軸線方向に合わせると共に、ドリルガイド部品の下面又は上面を顎骨の上面又は下面に当接させるように位置合わせすることによって、顎骨形状データに対するドリルガイド部品の形状データの位置及び方向を決定した場合に、ドリルガイド部品の位置データおよび軸線方向データを記憶するガイド部品位置記憶部と、
前記口腔形状位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされた口腔形状と、前記棒の形状位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされた棒の形状と、前記ガイド部品位置記憶部に記憶されている顎骨形状データに対して位置合わせされたドリルガイド部品の形状とを前記表示手段に表示させ、口腔形状データから棒の形状データとドリルガイド部品の形状データとを差し引いた形状のステント作製用口腔模型データを作成する口腔模型データ作成手段と、
前記ステント作製用口腔模型データに基づいて、棒の形状とドリルガイド部品の形状とがインプラント埋入位置において差し引かれた形状のステント作製用口腔模型を作製する三次元モデル作製手段と、を具備することを特徴とするステント作製用口腔模型の製造システム。
【請求項5】
前記三次元モデル作製手段は、ラピッドプロトタイピング装置であることを特徴とする請求項4記載のステント作製用口腔模型の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−142491(P2010−142491A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324544(P2008−324544)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】