説明

ステンレス製熱交換器

【課題】 入口ヘッダー管1と出口ヘッダー管2との間に複数本の管体3を並置し、管体3の両端を両ヘッダー管1、2に接合して連通し、入口ヘッダー管1から各管体3を流通して出口ヘッダー管2に至る流体通路を形成したステンレス製熱交換器において、管体3の端部と両ヘッダー管1、2の開口とを接合するための継手形状を新規なものとし、両ヘッダー管1、2に薄肉管を用いても十分な接合強度が得られるステンレス製熱交換器を提案する。
【解決手段】 両ヘッダー管1、2の開口周縁をバーリング加工して突縁7を形成し、管体3の端部を突縁7内に挿通して周壁を突縁7の内周面に当接させ、ニッケルロウを用いてロウ接したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の熱関連装置や器具に組み込まれ、流体の吸熱や放熱作用を行う熱交換器に関し、流体通路の素材としてステンレス鋼を用いたステンレス製熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムに代表されるコンデンシングを伴う熱交換器は、一般にステンレス系の材料を用いて流体通路を形成し、ニッケルロウを用いたロウ接で製作されている。ステンレス鋼は耐食性、耐薬品性に優れるので、厳しい条件の熱交換器の素材として、銅やアルミに代わって適用される。
【0003】
図2に、こうしたステンレス製熱交換器の一例を示す。図示の熱交換器は、入口ヘッダー管1と出口ヘッダー管2との間に複数本の管体3を並置し、管体3の両端を両ヘッダー管1、2に接合して連通し、入口ヘッダー管1から各管体3を流通して出口ヘッダー管2に至る流体通路を形成している。そして、管体3の側壁に多数のフィンプレート4が接合され、管体3内を流通する流体と周囲の気体との間で熱交換し、吸熱又は放熱するものである。管体3の両端と両ヘッダー管1、2はニッケルロウを用いたロウ接で接合され、両ヘッダー管1、2の開口に管体3の端部を嵌入してニッケルロウを設置し、これを炉内に投入してロウ接する。
【0004】
この熱交換器において、両ヘッダー管1、2に薄肉管を用いた場合、管体3の端部と両ヘッダー管1、2との継手は図3に示す構造となり、接合強度を確保するために、両ヘッダー管1、2の開口と管体3の周壁との当接角部に、ロウによるフィレット5を形成させることとなる。しかし、ニッケルロウを用いてロウ接する場合、ロウの融点を下げるために添加する元素、例えばSi(珪素)と、基材であるニッケルとの間でニッケルシリケイドの硬くてもろい化合物が生成され、これがフィレット5の中央部に集中的に形成される。その結果、接合長さは一見確保されるものの曲げ応力に弱く、これはニッケルシリケイドの層を起点としたクラック6が広がることが原因である。
【0005】
これに対し、フィレット5の形成を抑制して接合長さを確保するために、両ヘッダー管1、2に厚肉管を用いる手段も考えられる。しかし、厚肉管の適用は、重量の増加を招き、造管その後の切削等の加工が薄肉管に比べて容易ではなく、製作コストが高価となる。また、特許文献1に示すように、ステンレス鋼のロウ接のための特種成分のロウ材も提案されているが、これはロウ材自体が高価となり、汎用性にも乏しいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−285888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、こうしたステンレス製熱交換器において、管体3の端部と両ヘッダー管1、2の開口とを接合するための継手形状を新規なものとし、両ヘッダー管1、2に薄肉管を用いても十分な接合強度が得られるステンレス製熱交換器を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
こうした目的を達成するため、この発明は、入口ヘッダー管1と出口ヘッダー管2との間に複数本の管体3を並置し、管体3の両端を両ヘッダー管1、2に接合して連通し、入口ヘッダー管1から各管体3を流通して出口ヘッダー管2に至る流体通路を形成したステンレス製熱交換器において、両ヘッダー管1、2の開口周縁をバーリング加工して突縁7を形成し、管体3の端部を突縁7内に挿通して周壁を突縁7の内周面に当接させ、ニッケルロウを用いてロウ接したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明のステンレス製熱交換器は、両ヘッダー管1、2の開口周縁に形成した突縁7内に管体3の端部を挿通し、ニッケルロウを用いてロウ接するので、炉内で溶融したロウが管体3の周壁と突縁7の内周面との間隙内に侵入してロウ接され、十分な接合長さが確保され、フィレットの形成を最小限としてニッケルシリケイドの集中的な形成を抑制することができる。その結果、両ヘッダー管1、2に薄肉管を用いても十分な接合強度を備えるものである。また、この発明のステンレス製熱交換器は、突縁7内に管体3の端部を挿通するので組立作業性に優れ、生産性の向上と接合不良の発生率の低下により、製作コストの低廉化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施例で、(イ)入口ヘッダー管の断面図、(ロ)入口ヘッダー管と管体とを接合した状態の断面図。
【図2】ステンレス製熱交換器の平面図。
【図3】(イ)従来例の断面図、(ロ)A部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、この発明の具体的な実施形態を図面の実施例に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施例で、(イ)に入口ヘッダー管1の断面図を示す。図に示すように、入口ヘッダー管1の開口周縁には、外方向へ突出した突縁7がバーリング加工により形成されている。この突縁7内に管体3の端部を挿通して周壁を突縁7の内周面に当接させ、入口ヘッダー管1と出口ヘッダー管2との間に複数本の管体3を並置させて組み立てる。
【0012】
次に、ニッケルロウを設置して組立品を炉内に投入する。炉内で溶融したロウが管体3の周壁と突縁7の内周面との間隙内に侵入してロウ接され、図1(ロ)に示すように、管体3の両端と両ヘッダー管1、2が接合され、入口ヘッダー管1から各管体3を流通して出口ヘッダー管2に至る流体通路を形成する。このようにして、十分な接合長さが確保され、フィレットの形成を最小限としてニッケルシリケイドの集中的な形成が抑制され、十分な接合強度を備えたステンレス製熱交換器が製作される。
【符号の説明】
【0013】
1 入口ヘッダー管
2 出口ヘッダー管
3 管体
7 突縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ヘッダー管1と出口ヘッダー管2との間に複数本の管体3を並置し、管体3の両端を両ヘッダー管1、2に接合して連通し、入口ヘッダー管1から各管体3を流通して出口ヘッダー管2に至る流体通路を形成したステンレス製熱交換器において、
両ヘッダー管1、2の開口周縁をバーリング加工して突縁7を形成し、管体3の端部を突縁7内に挿通して周壁を突縁7の内周面に当接させ、ニッケルロウを用いてロウ接したことを特徴とするステンレス製熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−127840(P2011−127840A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286984(P2009−286984)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000126632)株式会社アタゴ製作所 (31)
【Fターム(参考)】