説明

ステータトランスボビンおよびブラシレス回転検出器

【課題】ブラシレス回転検出器において傾斜巻きを不要とすることができ、製造コストの低減を図ることの可能なボビンを提供する。
【解決手段】ブラシレス回転検出器のステータトランスに用いるステータトランスボビン10は、マグネットワイヤを巻く領域1と、リード線を収める領域3とが、隔壁5によって相互に区画されている。これにより、傾斜巻きを行う必要がなく、マグネットワイヤの自動巻きが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラシレス回転検出器のステータトランスボビンに係り、特にマグネットワイヤの自動巻を容易とし、コスト低減可能な、ステータトランスボビン等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のステータトランスボビンを使用した傾斜巻き状態のコイルを示す半断面図および端面図である。また図7は、図6に示すコイルの斜視図である。これらに図示するように従来のコイル610では、ステータトランスボビン68上にマグネットワイヤ62を巻く際、ボビン68上の片側の巻き数を徐々に減らすようにする傾斜巻きとすることで、リード線64を収納する空間が確保され、そこにリード線64が巻かれ、欠切部66を通してリード線64の引き出された状態が形成されていた。
【0003】
なお、電気機器におけるコイル用のボビンについては、従来技術的提案もなされている。後掲特許文献1に開示されている技術は、コイルの引出し線とリード線の接続作業を迅速・容易に行うことを目的として、巻胴の両端部に形成した一対の鍔部のうち、コイルの巻始め側に位置する鍔部には巻始め側の引出し線を導出するための導出通路と、引出し線とリード線との接続部を収容する角筒状の収容部と、リード線を抜脱不能に係止する鉤状の抜止部とを形成し、コイルの巻終り側に位置する鍔部にも同じく導出溝・収容部・抜止部を設け、さらに巻装したコイルが弛緩するのを防ぐ弛緩防止部を設けてコイルボビンを構成する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−324741号公報「電気機器用コイルボビン」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図6等で示した従来のステータトランスボビン68においては、リード線64を収納する空間が特段設けられていなかったために傾斜巻きがなされていたのであるが、かかるマグネットワイヤ62の傾斜巻きは、機械による自動巻が困難であるため、手作業でなされている。そしてこれは、製造コストを高くしてしまう要因の一つとなっている。ブラシレスシンクロ等のブラシレス回転検出器におけるこのような問題は、上記文献開示の技術も含めてこれまで採り上げられたことがない。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、ブラシレスシンクロ等のブラシレス回転検出器において、傾斜巻きを不要とすることができ、製造コストの低減を図ることの可能なボビン、およびブラシレス回転検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した結果、ステータトランスボビンにリード線を収納する空間を設けた構成とすることによって課題を解決できることに想到し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0008】
(1) ブラシレス回転検出器のステータトランスに用いるステータトランスボビンであって、マグネットワイヤを巻く領域とリード線を収める領域とが区画されている、ステータトランスボビン。
(2) マグネットワイヤをボビンに巻く際にリード線の設けられる端部方向への巻き数を徐々に減らす巻き方である傾斜巻きが不要であり、自動巻きが可能であることを特徴とする、(1)に記載のステータトランスボビン。
(3) 前記区画のための隔壁が設けられていることを特徴とする、(1)または(2)に記載のステータトランスボビン。
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載のステータトランスボビンを用いて構成される、ブラシレス回転検出器。
【発明の効果】
【0009】
本発明のステータトランスボビンおよびブラシレス回転検出器は上述のように構成されるため、これによれば、ブラシレスシンクロ等のブラシレス回転検出器においてマグネットワイヤの機械による自動巻が可能となる。したがって、手作業による傾斜巻きは不要となり、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のステータトランスボビンの構成を示す断面図および端面図である。
【図2】図1に示すステータトランスボビンを使用したコイルの半断面図および端面図である。
【図3】図2に示したコイルの斜視図である。
【図4】図1等に示した本発明スタータトランスボビンの正六面図である。
【図5】図4に示したスタータトランスボビンを使用したコイルの正六面図である。
【図6】従来のステータトランスボビンを使用した傾斜巻き状態のコイルを示す半断面図および端面図である。
【図7】図6に示すコイルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のステータトランスボビンの構成を示す断面図および端面図である。また、図2は、図1に示すステータトランスボビンを使用したコイルの半断面図および端面図である。また図3は、図2に示したコイルの斜視図である。これらに図示するように、ブラシレス回転検出器のステータトランスに用いる本ステータトランスボビン10は、マグネットワイヤ2を巻く領域1とリード線4を収める領域3とが区画されていることを、主たる構成とする。
【0012】
かかる構成により本発明ステータトランスボビン10を用いると、マグネットワイヤ2はこれを専用に巻くための領域1に巻かれ、一方リード線4はこれを専用に巻くための領域3に巻かれる。これによりマグネットワイヤ2の巻回において、リード線4を巻くための空間確保を目的として、リード線の設けられる端部方向への巻き数を徐々に減らす巻き方である傾斜巻きを行う必要がない。したがって、マグネットワイヤ2の自動巻きが可能となる。
【0013】
各図に示すように、マグネットワイヤ2を巻く領域1とリード線4を収める領域3との区画は、両領域1および3を隔てる隔壁5を設けることによって、簡単に形成することができる。なお図示するように隔壁5は、巻回される分量に応じてリード線4用の領域2が確保できる程度に、ボビン端部9寄りに設ければよい。なお、図2に示すとおり、隔壁5にはマグネットワイヤ2を領域3側に通すための欠切部が設けられるが、その位置や設ける個数は特に限定されない。以下も同様である。
【0014】
また隔壁5の高さは、図示するように各ボビン端部8、9と同じくしてもよいが、マグネットワイヤ2の自動巻とリード線4の巻回に支障がない限り、かかる構成に限定されるものではない。なおリード線4は、ボビンの欠切部6を通して外部に引き出された状態とされる。
【0015】
本発明のステータトランスボビンは、上述のとおり至って簡素な構造である。したがって製造も極めて容易なものである。
【0016】
図4は、図1等に示した本発明スタータトランスボビンの正六面図である。また図5は、図4に示したスタータトランスボビンを使用したコイルの正六面図である。
なお、以上説明した本発明ステータトランスボビンを用いて構成される、ブラシレスシンクロ等のブラシレス回転検出器もまた、本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明のステータトランスボビンおよびブラシレス回転検出器によれば、マグネットワイヤの自動巻が可能となるため手作業による傾斜巻きは不要となり、製造コストを低減することができる。しかもステータトランスボビン自体構造が簡素であって、きわめて製造容易である。したがって、センサ製造・利用の全分野において産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0018】
1…マグネットワイヤを巻く領域
2…マグネットワイヤ
3…リード線を収める領域
4…リード線
5…隔壁
6…欠切部
8、9…ボビン端部
10…ステータトランスボビン
62…マグネットワイヤ
64…リード線
66…欠切部
68…ステータトランスボビン
69…ステータトランスボビン縁部(リード線側)
610…コイル



























【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレス回転検出器のステータトランスに用いるステータトランスボビンであって、マグネットワイヤを巻く領域とリード線を収める領域とが区画されている、ステータトランスボビン。
【請求項2】
マグネットワイヤをボビンに巻く際にリード線の設けられる端部方向への巻き数を徐々に減らす巻き方である傾斜巻きが不要であり、自動巻きが可能であることを特徴とする、請求項1に記載のステータトランスボビン。
【請求項3】
前記区画のための隔壁が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のステータトランスボビン。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のステータトランスボビンを用いて構成される、ブラシレス回転検出器。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−249443(P2012−249443A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119802(P2011−119802)
【出願日】平成23年5月28日(2011.5.28)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】