説明

ストリーム切替方法およびデジタル放送送出システム

【課題】デジタル放送において、簡便な方法でコンテンツを切り換えることを目的とする。
【解決手段】デジタル放送において、複数系統のストリームを切り替えて、デジタル放送のコンテンツを送出するデジタル放送送出システム10であって、送出するコンテンツを切り替える時刻であるコンテンツ切替時刻と、送出装置2から送出される時刻である送出開始時刻と、が設定されており、送出開始時刻になると、コンテンツのデータをデジタル信号の形式で送出装置2へ送信するコンテンツ配信サーバ1と、コンテンツ切替時刻になると、現在送出されているコンテンツから、コンテンツ配信サーバ1から送信されたコンテンツへストリームを切り替える送出装置2とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリーム切替方法およびデジタル放送送出システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2003年より我が国ではデジタル放送が開始されており、デジタル放送の番組編成を容易に実現するために種々のストリーム切替技術が開示されている。
入力信号を符号化し、多重化・再多重化を行って、送信装置に放送トランスポートストリーム(以下、放送TS(Transport Stream))を送出するデジタル放送送出装置(以下、送出装置)に関し、例えば特許文献1では、符号化時に複数のストリームの位相を同期させることにより、複数のストリームを断絶させることなく選択的に送出するビットストリーム切替システムが開示されている。また、特許文献2では符号化部への入力信号を同期させることにより2重化されたシステムにおいて系統の切替をシームレスに行う系統切替システムが開示されている。
これらの切替システムは何れもNTSC(National Television System Committee)信号などのベースバンドレベル(アナログ信号)での切替を実現するシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−145022号公報
【特許文献2】特開2000−269864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、デジタル放送の放送番組を構成する素材にはオンラインで符号化を行うライブ素材と、あらかじめオフラインで符号化しMPEG(Motion Picture Experts Group)−2 TS形式で送出装置内に保存してある蓄積素材とがある。これらライブ素材と蓄積素材とを任意のタイミングで切替えて番組を構成するシステムを、前記した2つの開示技術で実現すると図7の様になる。
【0005】
つまり、コンテンツ配信サーバ710は蓄積素材(蓄積番組、コンテンツ)を逆符号化部711で一度逆符号化して再生し、ベースバンドレベル(NTSC信号)に変換してからストリームを送出装置720に出力する。送出装置720はコンテンツ配信サーバ710から入力された蓄積素材を符号化部725で符号化し、別系統から入力されたライブ素材を符号化部724で符号化する際に、外部同期クロック730で符号化部724,725から出力されるストリームの位相を同期させ、さらにスイッチャ721が外部同期クロック730に従って切替を行っている。
切り換えられたストリームは、多重化部722で多重化され、再多重化部723で再多重化されて放送TSとして送出される。
【0006】
このような切替システムにおいては、蓄積素材の符号化および逆符号化を繰り返すことによるコンテンツの品質低下が避けられないだけでなく、コンテンツ配信サーバ710の逆符号化部711、送出装置720の符号化部724,725およびスイッチャ721の複雑な同期処理が必要となる。
【0007】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、デジタル放送において、簡便な方法でコンテンツを切り換えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、デジタル放送において、複数系統のストリームを切り替えて、デジタル放送のコンテンツを送出する送出装置と、前記コンテンツを前記送出装置へデジタル信号の形式で送信するコンテンツ配信サーバと、で行うデジタル放送におけるストリーム切替方法であって、前記コンテンツ配信サーバは、送出する前記コンテンツを切り替える時刻であるコンテンツ切替時刻と、送出装置から前記コンテンツが送出される時刻である送出開始時刻と、が設定されており、前記送出開始時刻になると、前記コンテンツのデータを前記送出装置へ送信し、前記送出装置は、前記コンテンツ切替時刻になると、現在送出されているコンテンツを、前記コンテンツ配信サーバから送信されたコンテンツへとストリームを切り替えることを特徴とする。
その他の解決手段については、実施形態中で適宜説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、デジタル放送において、簡便な方法でコンテンツを切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係るデジタル放送送出システムの構成例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る時刻情報登録画面の例を示す図である。
【図3】本実施形態に係るコンテンツ切替時刻登録画面の例を示す図である。
【図4】本実施形態に係るコンテンツ送出処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係るコンテンツ切替処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る切替PTSの決定方法を説明するための図である。
【図7】従来におけるデジタル放送送出システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、本実施形態では1つの番組を放送する場合を例に挙げて説明するが、これに限らず任意の番組数(例えば2つ、あるいは3つ)を多重して送出する場合にも各番組毎に本発明を適用することができる。
【0012】
(システム構成)
図1は、本実施形態に係るデジタル放送送出システムの構成例を示す図である。
デジタル放送送出システム10は、複数系統の入力TSをMPEG−2 TSレベルで切替えて送出する送出装置2と、蓄積されたコンテンツ(蓄積素材)を配信するコンテンツ配信サーバ1とを有している。
本実施形態において番組(コンテンツ)は、それぞれ音声、映像、データからなり、それらの番組情報はPSI/SI(Program Specific Information/Service Information)に記録される。
【0013】
コンテンツ配信サーバ1は、コンテンツをTSストリーム(以下、ストリームと記載)の形式で送信し、さらに送出装置2は、コンテンツを放送TS形式でOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)変調器(図示せず)へ送出する。
ストリームは、TSパケット(以下、パケットと記載)の単位で送られる。パケットには、図示しない受信装置における再生時刻を同期するための基準時刻であるPCR(Program Clock Reference)や、該パケットに格納されているデータを再生表示する時刻に関する情報であるPTS(Presentaiotion Time Stamp)が付与されている。PCRは、送出装置2の内部クロックの時刻に基づいて付与される。
受信装置は、PCRに同期している内部クロックであるSTC(System Time Clock)を有しており、STCが刻む時刻がPTSと等しくなると、このパケットに保持されているデータを再生表示する。
【0014】
(コンテンツ配信サーバ)
コンテンツ配信サーバ1は、配信制御部101、コンテンツ取得部102、コンテンツ配信部103、記憶部104、入力部105、表示部106、時刻情報登録部107および通信部108を有している。
配信制御部101は、各部102〜108を制御する。
コンテンツ取得部102は、時刻情報登録部107で登録され、記憶部104に格納されている時刻情報に従って記憶部104からコンテンツを取得する。
コンテンツ配信部103は、時刻情報登録部107で登録され、記憶部104に格納されている時刻情報に従って、コンテンツ取得部102が取得したコンテンツを、そのコンテンツの形式によってRTP(Real-time Transport Protocol)ケーブル301や、ASI(Asynchronous Serial Interface)ケーブル302を介して、Mpeg−2 TSの形式で送出装置2のスイッチャ202へ配信する。RTPケーブル301を介して、Mpeg−2 TSを送信する際には、RTP形式に変換しインターネットあるいは専用回線などを介して送信を行う。
【0015】
入力部105は、キーボードやマウスなどの入力インタフェースである。
表示部106は、ディスプレイなどの出力インタフェースである。
時刻情報登録部107は、出力形式、送出開始時刻、送出時刻終了時刻などのスケジュール情報をスケジューラから取得したり、送出装置2のスケジューラ207へコンテンツを切り替える時刻であるコンテンツ切替時刻などの時刻情報を送信したりする。出力形式、送出開始時刻、送出時刻終了時刻、コンテンツ切替時刻については後記する。
通信部108は、送出装置2との情報の送受信を行う
また、記憶部104には、コンテンツと、図2や図3で後記する画面を介して登録された時刻情報が格納されている。
【0016】
(送出装置)
【0017】
送出装置2は、制御部201、スイッチャ202、多重化部203、再多重化部204、TS送出部205、PCR生成部206、スケジューラ207、通信部208、符号化部209およびコンテンツ記憶部210を有している。
制御部201は、コンテンツ(ストリーム)の切替処理を行うために、スケジューラ207、通信部208、およびスイッチャ202を制御する。
スイッチャ202は、スケジューラ207から送られるスケジュール情報に従ってストリームを切り替える。詳述すると、スケジューラ207から取得した送出開始時刻に、符号化部209、コンテンツ配信サーバ1のコンテンツ配信部103、コンテンツ記憶部210から入力されたMPEG−2 TSの形式で入力されたコンテンツを切替えて多重化部203へ出力する。ただし、コンテンツ配信部103からMPEG−2 TSの形式で入力されたコンテンツに切替える際には、コンテンツ配信サーバ1の時刻情報登録部107から取得した時刻情報を用いる。
【0018】
多重化部203は、スイッチャ202が取得したTS(ストリーム)を多重化し、MPEG−2 TS形式で出力する。詳述すると、多重化部203はスイッチャ202から入力された音声TS、映像TSと、これとは別にデータ放送用に準備したDSMCC(Digital Storage Media Command and Control)セクションTSの多重化を行い、MPEG−2 TS形式で再多重化部204へ出力する。
再多重化部204は、多重化部203から出力されるMPEG−2 TSにPSI/SI情報を多重化してISDB−T規格に準拠した放送TS形式に変換する。
TS送出部205は、再多重化部204から入力された放送TSをTS送出部205中のTSボードから図示されていないOFDM変調部へ出力する。OFDM変調部はTS送出部205から入力された放送TSをOFDM変調し、放送波として送信する。
【0019】
PCR生成部206は、内部クロックに従って放送TSに付加されるPCRを生成する。
スケジューラ207は、スイッチャ202における放送TSの切替タイミング(送出開始時刻)などのスケジュール情報を管理し、送出開始時刻の所定時間前に切替通知をスイッチャ202へ送信する。また、通信部208を介して切替処理開始通知などを時刻情報登録部107へ送信する。
符号化部209は、外部から例えばASIケーブル303を介して外部からNTSC信号入力されたライブ素材などの入力映像および入力音声をキャプチャし、符号化して、MPEG−2 TSに使用されるTS形式にパケタイズする。つまり、符号化部209は、入力された音声を、例えばAAC(Advanced Audio Coding)フォーマットに符号化し、さらに、TS形式に変換してスイッチャ202へ出力する。また、符号化部209は、ASIケーブル303を介してNTSC信号入力された映像を、例えばH.264フォーマットに符号化し、さらにTS形式に変換してスイッチャ202へ出力する。
【0020】
コンテンツ記憶部210には、あらかじめオフラインで符号化し、MPEG−2 TS形式でファイル保存されたコンテンツ(蓄積素材)が格納されている。コンテンツ記憶部210に格納されているコンテンツは、スイッチャ202が自由に読み出すことができる。
【0021】
コンテンツ配信サーバ1や、送出装置2は、PC(Personal Computer)などで実現され、コンテンツ配信サーバ1の各部101〜103,107および送出装置2の各部201〜207,209は、図示しないROM(Read Only Memory)や、HDD(Hard Disk Drive)に格納されたプログラムが、RAM(Random Access Memory)に展開され、CPU(Central Processing Unit)によって実行されることによって具現化する。
【0022】
(時刻情報登録画面)
図2および図3は、図4で後記するステップS101において行われる時刻情報登録の際の画面の説明を行う。なお、図2および図3は、コンテンツ配信サーバ1の表示部106に表示される画面である。
図2は、本実施形態に係る時刻情報登録画面の例を示す図である。
時刻情報登録画面350は、時刻情報登録表351と、変更ボタン352と、登録ボタン353とを有している。
時刻情報登録表351は、出力形式、送出開始時刻、送出終了時刻、コンテンツ名、コンテンツ切替時刻を有している。
このうち、出力形式、送出開始時刻および送出終了時刻は、時刻情報登録部107が送出装置2のスケジューラ207から取得したスケジュール情報である。
【0023】
出力形式は、コンテンツ配信サーバ1から送出装置2にストリーム(TS)を配信する際の通信方式である。
送出開始時刻および送出終了時刻は、該コンテンツを送出装置2が送出する開始時刻と終了時刻である。
コンテンツ名は、配信するコンテンツへのパスや、コンテンツのファイル名が格納されている。
コンテンツ切替時刻は、送出時刻において、スイッチャ202が対象となるコンテンツに切り替える際の、該コンテンツ内の時刻を示す。ここで、前記した送出開始時刻および送出終了時刻は、日本標準時における時刻を指すのに対し、コンテンツ切替時刻は、コンテンツが開始される時刻を「0」としたときの時刻である。
【0024】
図2に示す例において最初のレコードに入力されている情報は、出力形式が「ASI」で、2010年6月30日の18:00から、2010年6月30日の18:15まで「ContentA」が送出装置2から送出される(放映される)。この15分間に送出されるデータは、「ContentA」の開始より2分30秒経った時点から15分間のデータである。
なお、出力形式が「RTP」のレコードにおいて、コンテンツ名およびコンテンツ切替時刻が空欄なのは、これらの情報が未だ登録されていないことを示している。
【0025】
ユーザが、変更ボタン352を選択入力すると、時刻情報登録表351の内容を変更でき、登録ボタン353を選択入力すると、時刻情報登録表351の内容が時刻情報として記憶部104に格納される。
【0026】
図3は、本実施形態に係るコンテンツ切替時刻登録画面の例を示す図である。
コンテンツ切替時刻登録画面400は、ファイル名指定窓401と、映像表示エリア402と、フレーム表示エリア403と、登録ボタン405と、戻るボタン406と、参照ボタン407と、移動ボタン408とを有している。
【0027】
ファイル名指定窓401は、コンテンツ切替時刻の登録対象となるコンテンツのファイル名や、パスや、リンクを表示する窓であり、ユーザは、入力部105を介して直接入力したり、参照ボタン407を選択入力されると表示されるプルダウンメニューから選択するなどしてコンテンツを指定する。
映像表示エリア402には、ファイル名指定窓401で指定されているコンテンツにおいて、フレーム表示エリア403で選択されているIフレームの映像(静止画)が表示される。ここで、Iフレームとは、動画像を所定時間毎に区切った場合において、その所定時間毎の静止画成分である。
フレーム表示エリア403は、処理対象となるコンテンツに関する時間バーが表示されている。すなわち、符号413がコンテンツ開始を示し、符号414がコンテンツ終了を示している。時間バーは、Iフレーム毎に分割されており、ユーザが時間バーにおけるフレームを選択すると(符号411)、該当するIフレームの静止画像が映像表示エリア402に表示される。
また、Iフレームから、図2の送出開始時刻と、送出終了時刻とから算出される送出時間分のフレーム間が強調表示される(符号412)。
指定するIフレーム411は、移動ボタン408を選択入力することによって、Iフレーム間隔単位で移動可能である。ちなみに、Iフレーム間隔は、ワンセグ放送ではおよそ2秒間隔である。
【0028】
図3では、図2のおける出力形式が「ASI」のレコードに関するコンテンツの情報を表示している。従って、図2の送出開始時刻と、送出終了時刻とから算出される送出時間が15分であるので、Iフレーム411から15分間に相当するフレーム間412が強調表示されている。
そして、ユーザが登録ボタン405を選択入力すると、図3の内容が図2の時刻情報登録表351へ反映される。すなわち、ファイル名指定窓401に表示されているファイル名(リンクあるいはパス)が、図2のコンテンツ名に反映され、図3のIフレーム411の時刻が図2のコンテンツ切替時刻に反映される。
ユーザが戻るボタン406を選択入力すると、情報が変更前に戻る。
【0029】
このような時刻情報を登録することにより、送出開始時刻において、Iフレームで切り替えるための準備を行う。この例においては、切替対象ストリームをIフレームから始めることは、MPEG−2 TSをシームレスに切替えるための必要条件である。
【0030】
(処理)
図4は、本実施形態に係るコンテンツ送出処理の流れを示すフローチャートである。なお、これ以降、1つの番組として記載するときはコンテンツ、情報の流れとして記載するときはストリームと適宜区別して記載することとする。
まず、ユーザは、送出装置2の図示しない入力部から、図2の出力形式、送出開始時刻、送出終了時刻といったスケジュール情報を送出装置2のスケジューラ207に入力する。スケジューラ207は、入力されたスケジュール情報をコンテンツ配信サーバ1へ送信する。
ユーザから時刻情報登録起動の指示を受けたコンテンツ配信サーバ1の時刻情報登録部107は、スケジューラ207から受信したスケジュール情報を含む図2に示す時刻情報登録画面および図3に示す切替場面選択画面を表示部106に表示させ、ユーザは、入力部105を介して、コンテンツ切替時刻といった時刻情報の登録を行う(S101)。
ここで、時刻情報とは、図2の出力形式、送出開始時刻、送出終了時刻、コンテンツ名、コンテンツ切替時刻を含む情報である。
次に、スケジューラ207は、図示しないタイマが示す現在時刻と、切替場面時刻とを比較することで、現在時刻が切替準備開始時刻であるか否かを判定する(S102)。切替準備開始時刻は、図2の送出開始時刻より予め設定されている所定時間前の時刻である。
ステップS102の結果、現在時刻が切替準備開始時刻でない場合(S102→No)、スケジューラ207はステップS102へ処理を戻す。
【0031】
ステップS102の結果、現在時刻が切替準備開始時刻である場合(S102→Yes)、スケジューラ207は、スイッチャ202へ切替処理開始を通知するとともに、コンテンツ配信サーバ1の配信制御部101に切替処理開始を通知する(S103)。
次に、配信制御部101は、対象となるコンテンツのコンテンツ切替時刻を送出装置2の制御部201へ通知する(S104)。
コンテンツ切替時刻を受信した制御部201はコンテンツの受信準備を行い、受信準備が完了すると、コンテンツ受信準備完了をコンテンツ配信サーバ1の配信制御部101に通知する(S105)。
すると、配信制御部101は、記憶部104に登録された時刻情報(図2で登録された情報)に従って、コンテンツ取得部102にコンテンツを取得させ、コンテンツ配信部103にコンテンツをスイッチャ202へ配信させる(S106)。例えば、コンテンツ配信部103は、「ContentA」のコンテンツを、コンテンツ切替時刻2分30秒より少し前(2分29秒など)からASIケーブル302を介してスイッチャ202へMpeg−2 TSの形式で配信する。
コンテンツの配信が始まると、制御部201はコンテンツの切替処理を行う(S107)。コンテンツの切替処理は、図5を参照して後記する。
【0032】
コンテンツの切替処理が完了すると、スイッチャ202はコンテンツ配信サーバ1へ切替完了を通知し(S108)、コンテンツ配信サーバ1は切替処理終了通知を送出装置2へ通知する(S109)ことによってコンテンツ切替処理を終了する。
制御部201は、送出装置2が放送TSの送出を終了したか否かを判定する(S110)。
ステップS110の結果、放送TSの送出が完了していない場合(S110→No)、制御部201はステップS102へ処理を戻す。
ステップS110の結果、放送TSの送出が終了している場合(S110→Yes)、制御部201は処理を終了する。
【0033】
(コンテンツ切替処理)
図5は、本実施形態に係るコンテンツ切替処理(図4のステップS107)の詳細な手順を示すフローチャートである。ここでは、被切替対象ストリームから、切替対象ストリームにストリームが切り替えられる場合について説明する。
まず、制御部201は、切替対象ストリームと、被切替対象ストリームとををバッファに保存する(S201)。これにより、スイッチャ202は多重化部203に出力していた被切替ストリームの出力を一時的に中断することとなる。
次に、制御部201は、現時刻のPCRから、切替対象ストリームおよび被切替対象ストリームにおける切替時のPTSである切替PTSを決定する(S202)。
【0034】
ここで、ステップS202における切替PTSの決定を図6を参照して説明する。
図6において、縦軸はパケットに付与されている時刻を示し、横軸はTSパケットの順番を示す。
図6の線611は、TS送出部205から出力されているストリームのPCRを示し、線612はTS送出部205から出力されている、符合化されたストリームのPTSを示している。線612が上下に波打っているのは、符号化されたストリームにおける時間当たりのデータ量が異なるためである。線613は、線611からPTSとPCRの初期値の差分だけ時刻方向に平行移動したときの線である。
ステップS103で、切替T秒前にPCR生成部206で生成されるPCRの値が切替T秒前PCR601であったとすると、コンテンツ切替時刻におけるPCRの値は切替T秒前からT秒後の切替点PCR602の時刻となる。
そして、制御部201は、前記切替点PCR602の時刻からPTSとPCRの初期値の差分だけ時刻方向に平行移動したPTSを切替PTS603とする。つまり、制御部201は、PTSの時刻の初期値と、PCRの時刻の初期値との差分を切替点PCR602の時刻に加算したPTSを切替PTS603とする。
【0035】
図5の説明に戻り、制御部201は、図5のステップS104で通知されたコンテンツ切替時刻に対応するPTS(以下、切替コンテンツPTSと称する)と、ステップS202で決定された切替PTSの差分を取り、PTS補正値としてのストリームの時刻補正値(以下、ストリーム時刻補正値)を計算する(S203)。
続いて、制御部201は、バッファに保存されている切替対象ストリームの内、切替コンテンツPTSより前のPTSを有するストリームを削除する(S204)。これにより、切替対象ストリームは、ステップS101で登録した切替場面(図3のIフレーム411)で頭出しされる。
【0036】
次に、制御部201は、バッファに保存されている切替対象ストリームの各パケットにおけるPTSを、ストリーム時刻補正値を用いて補正する(S205)。具体的には、制御部201は、切替PTS以降のPTSを有するパケットのPTSのそれぞれに、ストリーム時刻補正値を加算する。これにより、切替対象ストリームの各パケットにおけるPTSを、送出装置2が管理するPCRに同期させることができる。これは、コンテンツ配信サーバ1から送信された段階での切替対象ストリームのPTSが、必ずしも送出装置2が管理するPCRに同期した値とはなっていないためである。図示しない受信装置側では、PTSはPCRに従っているものとしてストリームの再生を行うため、ステップS205を行わずに受信装置へ切替対象ストリームを送出すると受信装置での再生が不可能となってしまう。
そして、制御部201は、スイッチャ202に、バッファに保存されている被切替対象ストリームの内、切替PTSより前のストリーム(切替PTS前に対応するPTSを有しているパケット)を多重化部203に順次出力させる(S206)。
そして、被切替対象ストリームにおけるPTSが切替PTSになると、制御部201は、スイッチャ202にバッファに保存されている切替対象ストリームを多重化部203へ順次出力させる(S207)。
【0037】
ステップS205で、切替対象ストリームのPTSを補正することにより、切替前後におけるストリームのPTSは連続した値を取り、かつ切替対象ストリームの開始はIフレームから始まることになる。これにより、受信装置で視聴した際にストリームがシームレスに切替わって再生される。また、切替対象ストリームの開始となるIフレームは前もって指定してあった切替場面となる。
【0038】
(まとめ)
【0039】
本実施形態によれば、蓄積素材とライブ素材による複数の入力系統のストリームを切替えて一つの放送番組を構成するサービスをコンテンツ配信サーバ1と送出装置2とのシステムにより実現する場合に、切替時にコンテンツ配信サーバ1から配信されたコンテンツが始まる場面 (以下、切替場面)を簡便な構成で制御することができる。
すなわち、本実施形態によれば、コンテンツ配信サーバ1に保存されているコンテンツ自身が有している時刻情報(コンテンツ切替時刻)と、送出装置2側で管理する時刻情報(送出開始時刻)とを、コンテンツ配信サーバ1および送出装置2間で交換することにより、IPパケットのようなストリームの到着時間が保証されない手段を用いても、スイッチャによる切り替えを可能とすることができる。
また、デジタル信号をそのままコンテンツ配信サーバ1から送出装置2へ送信することができるため、コンテンツ配信サーバでデジタル信号をNTSC信号(アナログ信号)に逆符号化した後、送出装置で符号化してデジタル信号に再び戻すという処理が不要となるためコンテンツの品質低下を防ぐことができる。
また、デジタル信号の時刻情報を利用するので、NTSC信号を同期させることが不要となる。
【符号の説明】
【0040】
1 コンテンツ配信サーバ
2 送出装置
101 配信制御部
102 コンテンツ取得部
103 コンテンツ配信部
104 記憶部
105 入力部
106 表示部
107 時刻情報登録部
201 制御部
202 スイッチャ
203 多重化部
204 再多重化部
205 TS送出部
206 PCR生成部
207 スケジューラ
209 符号化部
210 コンテンツ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数系統のストリームを切り替えて、デジタル放送のコンテンツを送出する送出装置と、前記コンテンツを前記送出装置へデジタル信号の形式で送信するコンテンツ配信サーバと、で行うデジタル放送におけるストリーム切替方法であって、
前記コンテンツ配信サーバは、
送出する前記コンテンツを切り替える時刻であるコンテンツ切替時刻と、送出装置から前記コンテンツが送出される時刻である送出開始時刻と、が設定されており、
前記送出開始時刻になると、前記コンテンツのデータを前記送出装置へ送信し、
前記送出装置は、
前記コンテンツ切替時刻になると、現在送出されているコンテンツを、前記コンテンツ配信サーバから送信されたコンテンツへとストリームを切り替える
ことを特徴とするストリーム切替方法。
【請求項2】
前記コンテンツ配信サーバは、
コンテンツ切替時刻より所定時間前から前記コンテンツのデータを前記送出装置へ送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のストリーム切替方法。
【請求項3】
前記コンテンツのデータは、パケットの形式で前記コンテンツ配信サーバから送出装置へ送信され、
前記パケットには、受信装置における再生時刻を同期するための基準時刻であるPCRで管理され、該パケットに格納されているデータを再生表示する時刻に関する情報であるPTSが付与されており、
前記送出装置は、
前記PCRを生成し、前記受信装置へ情報を送出する際に、前記PCRを該受信装置へ送出する情報に付与しており、
前記コンテンツ切替時刻に該当するPCRに対し、前記PCRにおける時刻の初期値と、前記PTSにおける時刻の初期値と、の差分を加算したPTSを切替PTSとし、
前記コンテンツ切替時刻に対応するPTSと、前記切替PTSと、の差分であるPTS補正値を算出し、
前記コンテンツのデータのうち、前記切替PTSより前のPTSを有するパケットを削除し、
前記切替PTS以降のPTSを有するパケットのPTSのそれぞれに、前記PTS補正値を加算する
ことを特徴とする請求項2に記載のストリーム切替方法。
【請求項4】
デジタル放送において、複数系統のストリームを切り替えて、前記デジタル放送のコンテンツを送出するデジタル放送送出システムであって、
送出する前記コンテンツを切り替える時刻であるコンテンツ切替時刻と、送出装置から前記コンテンツが送出される時刻である送出開始時刻と、が設定されており、
前記送出開始時刻になると、前記コンテンツのデータをデジタル信号の形式で前記送出装置へ送信するコンテンツ配信サーバと、
前記コンテンツ切替時刻になると、現在送出されているコンテンツを、前記コンテンツ配信サーバから送信されたコンテンツへとストリームを切り替える送出装置と、
を有することを特徴とするデジタル放送送出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−142798(P2012−142798A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294384(P2010−294384)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】